説明

センサ、センシング装置及びセンシング方法

【課題】蛍光標識から発せられる蛍光を高効率且つ高S/N比で検出することができ、検出に複雑な光学系を要しないセンサを提供する。
【解決手段】センサ1は、特定の被検出物質Rのみが結合可能なセンシング面1sを有し、少なくとも一部がセンシング面1s上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部20を有するものである。センサ1は、被検出物質Rを、被検出物質Rと選択的に結合する蛍光標識Luにて標識し、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシングに用いられ、センシング面1sに対して、金属部20において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光L1が照射されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出物質を、該被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識し、該蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシングに用いられるセンサ、及びそれを用いたセンシング装置とセンシング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生化学分野における免疫測定等で行われる蛍光分析において、特定の被検出物質が結合可能なセンシング面を有するセンサを用い、被検出物質に結合された蛍光標識をエバネッセント波あるいは表面プラズモンで励起して、被検出物質のセンシングを行う蛍光測定法が提案されている。
【0003】
これらの方法では、センシング面に被検出物質が結合された時にのみ蛍光が発せられるので、リアルタイム計測が可能である。また、検出器に励起光が到達しないため、検出したい蛍光のバックグランド光が少なく、比較的高いS/N比で測定を行うことができる。
【0004】
しかしながら、上記蛍光測定法においては、試料中に被検出物質と共存する物質、例えば水,血清蛋白,及び酵素等が励起光を吸収することがあり、さらに物質によっては不要な蛍光を発することがある。また、表面プラズモンで蛍光標識を励起する場合には、表面プラズモンを起こす金属薄膜を形成したプリズムからなるセンサに被検出物質を結合させるが、プリズムが励起光を吸収し、場合によっては不要な蛍光を発することがある。検出対象ではない共存物質等による励起光の吸収と蛍光は、本来検出したい蛍光の検出精度を低下させてしまう。
【0005】
共存物質等による励起光の吸収と蛍光を抑制し、より高いS/N比で蛍光測定を行う方法として、蛍光標識として2光子励起が可能なものを用いる2光子励起蛍光測定法がある。2光子励起蛍光は、通常の蛍光の励起光の2倍の波長を有する励起光を用いる蛍光であることから、励起光の波長と共存物質等の吸収波長とをずらすことができ、ノイズの少ない蛍光測定をすることができる。また、使用される励起光の波長が近赤外域であるために、被検出物質が生体組織等である場合も、測定中に被検出物質が破壊される恐れがない。
【0006】
しかしながら、2光子励起の吸収断面積は1光子励起に比して数十桁程度小さく、従って、通常は充分な蛍光を得るためには非常に高価な尖頭値の高いパルスレーザが用いられている。このようなパルスレーザを用いることなく、充分な蛍光強度を得る方法として、表面プラズモンにより2光子励起蛍光を励起する方法が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−21565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、表面プラズモンによる電場により2光子励起蛍光を励起することにより、二桁以上遷移確率が向上して蛍光効率が格段に高まることが記載されている。しかしながら、表面プラズモンを用いる場合には、表面プラズモンを起こす金属薄膜を形成したプリズムからなるセンサが必要であり、測定光の照射と検出光の検出に複雑な光学系を要するため、センシング装置が高価で複雑なものとなってしまう。また、吸収断面積から考慮した場合、二桁程度の遷移確率の向上では、充分な蛍光効率が得られているとは言えず、未だ蛍光効率向上の課題を有している。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、蛍光標識から発せられる蛍光の蛍光効率が高く、蛍光標識から発せられる蛍光を高S/N比で検出することができ、センサ自体の構成が簡易で、しかも測定光の照射と検出光の検出に複雑な光学系を要しないセンサ、及びそれを用いたセンシング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のセンサは、特定の被検出物と結合可能なセンシング面を有し、前記被検出物質を、該被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識し、該蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシングに用いられるセンサにおいて、少なくとも一部が前記センシング面上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部を有し、前記センシング面に対して、前記金属部において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光が照射されるものであることを特徴とするものである。
【0010】
本明細書において、「2光子励起蛍光」は通常の蛍光の励起光の2倍の波長を有する励起光を用いる蛍光であり、「多光子励起蛍光」は通常の蛍光の励起光の3倍以上の整数倍の波長を有する励起光を用いる蛍光である。
【0011】
本発明のセンサにおいて、前記金属部は、前記測定光の波長よりも小さい凹凸構造を有することが好ましく、前記金属部の表面には、前記被検出物質と選択的に結合する表面修飾が施されていることが好ましい。
本明細書において、「測定光の波長よりも小さい凹凸構造」とは、凸部及び凹部の平均的な大きさ(ここで言う「大きさ」は最大幅を示す。)と平均的なピッチが測定光の波長よりも小さいことを意味する。凹部に金属はあってもなくてもよい。
【0012】
本発明のセンサの好適な態様としては、前記金属部の下地が、内部に複数の微細孔を有し、且つ少なくとも前記センシング面側の表面にて該複数の微細孔が開口した誘電体であり、前記金属部が、前記誘電体の前記微細孔内に充填された充填部と、該充填部上に前記誘電体表面より突出して形成され、該充填部の径よりも大きい突出部とからなる複数の金属部からなるものが挙げられる。
【0013】
前記誘電体は、被陽極酸化金属体の少なくとも一部を陽極酸化して得られる金属酸化物体からなり、前記複数の微細孔は、前記陽極酸化の過程で該金属酸化物体内に形成されたものであってもよい。
【0014】
本発明のセンサの他の好適な態様としては、前記金属部が、表面が粗面化された金属層であるもの、あるいは前記金属部の下地が誘電体であり、前記金属部が該誘電体の表面に固着された複数の金属粒子からなる金属粒子層であるものが挙げられる。また、本発明のセンサのさらに他の好適な態様としては前記金属部の下地が誘電体であり、前記金属部が該誘電体の表面にパターン形成された金属パターン層であるものが挙げられる。
【0015】
本発明のセンサにおいて、前記金属部の局在プラズモン共鳴波長と、前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長とが略一致しており、前記測定光として、該波長の光が用いられるものであることが好ましい。
【0016】
本発明のセンサにおいて、前記金属部の表面に、透明絶縁体層が形成されていてもよい。なお、「透明絶縁体層」とは、具体的にはSiOなどの無機物あるいはポリマーなどの有機物等から構成される層であり、センサ表面に照射される光をほぼ透過する絶縁体層であればよい。
【0017】
また、前記金属部の表面に、直接あるいは前記透明絶縁体層を介して、前記被検出物質と選択的に結合する表面修飾が施されていてもよい。
【0018】
本発明のセンサは、前記センシング面が一つのセンシング領域を有してもよいし、前記センシングが独立して行われる複数のセンシング領域に分割されていてもよい。複数のセンシング領域に分割されている場合は、センシング領域単位で被検出物質に応じた異なる種類の表面修飾を施すことにより、異なる種類の前記被検出物質をセンシングすることができる。
【0019】
本発明の試料セル付きセンサは、上記本発明のセンサが、少なくとも、前記測定光と、前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を含む前記センシング面からの出射光が通る部分が透光性を有する試料セルに取り付けられた試料セル付きセンサであって、前記センサの前記金属部が前記試料セル内の試料に接触するよう、前記センサが前記試料セルに取り付けられたものであることを特徴とするものである。
【0020】
本発明のセンシング装置は、上記本発明のセンサと、前記センサに前記測定光を照射する光照射手段と、前記センサからの出射光に含まれる前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出する検出手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明のセンシング装置において、前記センサと前記検出手段との間の光路に、前記測定光の波長の光を取り除く波長選択手段をさらに備えることが好ましい。
【0022】
本発明のセンシング装置では、前記被検出物質の有無及び/又は量を分析することができる。
【0023】
本発明のセンシング方法は、被検出物質を、該被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識し、該蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシング方法において、前記蛍光標識を局在プラズモン電場により励起して、2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を生じさせ、該2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセンサは、特定の被検出物質が結合可能なセンシング面を有し、少なくとも一部がセンシング面上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部を有するものである。
【0025】
本発明のセンサは、被検出物質を、被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識して、蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出することによりセンシングが行われるものである。
【0026】
かかる構成においては、センシング面の金属部において局在プラズモンを励起可能な波長の測定光が入射されると、金属部において局在プラズモンが励起され、局在プラズモン効果による電場増強効果により金属部付近の測定光のパワーが強められるので、金属部に結合された蛍光標識の遷移確率が向上し、蛍光効率を効果的に高めることができる。
【0027】
また、本発明のセンサは、蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を利用するものであるので、測定光の波長を1光子励起の2倍以上の波長とすることができる。従って、共存物質等による測定光の吸収と蛍光を抑制し、より高いS/N比で蛍光を検出することができる。
【0028】
更に、本発明のセンサは、少なくとも一部がセンシング面上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部を有していればよく、センサ自体の構成が簡易であり、また測定系にも複雑な光学系を要さないため、センシング装置も簡易な構成とすることができる。
【0029】
また、金属部の表面に透明絶縁体層が形成される場合、被検出物質と選択的に結合する表面修飾は、この透明絶縁体層を介して、金属部の表面へ修飾される。このため、表面修飾と結合した蛍光標識から金属部表面への直接電荷移動が防止されるので、蛍光標識から発せられる蛍光がこの直接電荷移動により弱まる虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
「センサ」
図面を参照し、本発明に係る一実施形態のセンサの構造について説明する。図1(a)は全体斜視図、図1(b)はセンシング時の厚み方向断面図である。図1(b)には、センシング時のセンシング面での結合の様子を模式的に示した図を併せて示している。図2は本実施形態のセンサの製造工程を示す図である。
【0031】
本実施形態のセンサ1は、被検出物質Rを、被検出物質Rと選択的に結合する蛍光標識Luにて標識し、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシングに用いられ、特定の被検出物質Rのみが結合可能なセンシング面1sを有するものである。
【0032】
本実施形態において、センサ1は、少なくとも一部がセンシング面1s上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部20を有し、センシング面1sに対して、金属部20において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光L1が照射されるものである。
測定光L1は、レーザ等の光源から出射される単波長光である。
【0033】
局在プラズモン効果が大きいことから、センシング面1sをなす金属部20は、測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有することが好ましい。
【0034】
図1(a)に示されるように、センサ1は、導電体13の上に、多数の微細孔12が表面において開口して略規則配列した誘電体基材11を備え、微細孔12内に充填されている充填部21と、微細孔12上に基材表面11sより突出して形成され、充填部21の径よりも大きく、且つ、局在プラズモンを励起しうる大きさの径を有する突出部22とからなる金属部20を更に備えている。
【0035】
センサ1において、金属部20の突出部22側の表面がセンシング面1sである。すなわち、本実施形態では、センシング面1sは、基材表面11sと突出部22の表面22sとにより構成されている。
【0036】
センサ1において、微細孔12は誘電体基材11の表面から厚み方向に略ストレートに基板裏面11rに到達して開孔された貫通孔である。
【0037】
誘電体基材11は、図2に示すように、アルミニウム(Al)を主成分とし、微少不純物を含んでいてもよい被陽極酸化金属体10の一部を陽極酸化して得られたアルミナ(Al)層(金属酸化物層)である。導電体13は、陽極酸化されずに残った被陽極酸化金属体10の非陽極酸化部分により構成されている。
【0038】
被陽極酸化金属体10の形状は制限されず、板状等が挙げられる。また、支持体の上に被陽極酸化金属体10が層状に成膜されたものなど、支持体付きの形態で用いることも差し支えない。
【0039】
陽極酸化は、例えば、被陽極酸化金属体10を陽極とし、カーボンやアルミニウム等を陰極(対向電極)として、これらを陽極酸化用電解液に浸漬させ、陽極と陰極の間に電圧を印加することで実施できる。電解液としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0040】
図2(a)に示す被陽極酸化金属体10を陽極酸化すると、図2(b)に示すように、表面10s(図示上面)から該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、アルミナ層11が生成される。
【0041】
陽極酸化により生成されるアルミナ層11は、平面視略正六角形状の微細柱状体14が隣接して配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体14の略中心部には、表面10sから深さ方向に微細孔12が開孔される。また、各微細孔12及び微細柱状体14の底面は、図示する如く、丸みを帯びた形状を有している。陽極酸化により生成されるアルミナ層の構造は、益田秀樹、「陽極酸化法によるメソポーラスアルミナの調製と機能材料としての応用」、材料技術Vol.15,No.10、1997年、p.34等に記載されている。
【0042】
規則配列構造のアルミナ層11を生成する場合の好適な陽極酸化条件例としては、電解液としてシュウ酸を用いる場合、好適な条件例としては、電解液濃度0.5M、液温15℃、印加電圧40Vが挙げられる。電解時間を変えることで、任意の層厚のアルミナ層11を生成できる。
【0043】
通常、互いに隣接する微細孔12同士のピッチは10〜500nmの範囲で、また微細孔の孔径は、5〜400nmの範囲でそれぞれ制御可能である。特開2001−9800号公報や特開2001−138300号公報には、微細孔の形成位置や孔径をより細かく制御する方法が開示されている。これらの方法を用いることにより、上記範囲内において任意の孔径及び深さを有する微細孔を略規則的に配列形成することができる。
【0044】
充填部21と突出部22とからなる金属部20は、誘電体基材11の微細孔12に電気メッキ処理等を施すことにより形成される。
電気メッキを行う場合には、導電体13が電極として機能し、電場が強い微細孔12の底部から優先的に金属が析出する。この電気メッキ処理を継続して行うことにより、微細孔12内に金属が充填されて金属部20の充填部21が形成される。充填部21が形成された後、更に電気メッキ処理を続けると、微細孔12から充填金属が溢れるが、微細孔12付近の電場が強いことから、微細孔12周辺に継続して金属が析出していき、充填部21上に基材表面11sより突出し、充填部21の径よりも大きい径を有する突出部22が形成される。
【0045】
金属部20を電気メッキにより成長する際に、条件によっては微細孔12の底面と被陽極酸化金属体10の非陽極酸化部分からなる導電体13との間の薄い層が破られて、金属部20の充填部21が基板裏面11rまで到達して本実施形態の構成が得られる(図2(c))。
【0046】
本実施形態では、金属部20の突出部22が粒子状であり、センサ1の表面から見れば、基材表面11sに金属粒子層が形成された構造になっている。かかる構成では、突出部22が金属部20の凸部であるので、その平均的な径及びピッチが測定光L1の波長よりも小さく設計されることが好ましい。金属部20は、突出部22の大きさが、局在プラズモンを励起可能な大きさであればよいが、使用する測定光の波長を考慮すると、突出部22の径が10nm以上300nm以下の範囲であることが好ましい。
【0047】
互いに隣接する突出部22同士は離間されていることが好ましく、その平均離間距離wは、数nm〜10nmの範囲であることがより好ましい。平均離間距離が上記範囲内である場合は、局在プラズモンによる電場増強効果を効果的に得ることができる。
【0048】
局在プラズモン現象は、凸部の自由電子が光の電場に共鳴して振動することで凸部周辺に強い電場を生じる現象であるので、金属部20は、自由電子を有する任意の金属でよい。センサ1は、センシング面1sに対して、センシング面1s上の金属部20、すなわち、突出部22において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ、蛍光標識Luが2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光L1が照射されるものである。従って、蛍光標識Luが高効率で蛍光を発するように、蛍光標識Luと金属部20の組み合わせを決定することが好ましい。金属部20としては、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長と略一致する波長において局在プラズモンを生じる金属が好ましく、後記する蛍光標識Luの励起光の波長を考慮すれば、Au,Ag,Cu,Pt,Ni,Ti等が好ましい。
【0049】
蛍光標識Luは、試料中の共存物質等による励起光の吸収と蛍光によるノイズを考慮すると、近赤外域あるいはそれ以上の長波長に吸収を持ち、2光子励起又は多光子励起可能な蛍光標識が好ましい。そのような蛍光標識としては、R6GやCye5等が挙げられる。
【0050】
図1(b)に示されるように、センシング面1s上の突出部22の表面22sは、被検出物質Rと選択的に結合可能な表面修飾A2が施されている。本実施形態のセンサ1では、あらかじめ被検出物質Rと結合された蛍光標識Luにて標識されて、センシングが行われる。蛍光標識Luには、被検出物質Rと選択的に結合する表面修飾A1が施されている。
【0051】
被検出物質Rと蛍光標識Luとの結合反応、突出部22と被検出物質Rとの反応は特に制限なく、抗原抗体反応等の特異結合反応が挙げられる。
【0052】
例えば被検出物質Rが抗原である場合、蛍光標識Luは被検出物質Rと特異的に結合する第1の抗体により表面修飾し(表面修飾A1)、突出部22は被検出物質Rと特異結合する第2の抗体により修飾しておけばよい(表面修飾A2)。図1(b)に示すように、蛍光標識Luに表面修飾される第1の抗体と、突出部22に表面修飾される第2の抗体とは、抗原である被検出物質Rに対して互いに別の部位に結合するものが用いられる。すなわち、図1(b)に示すように、突出部22及び蛍光標識Luは、突出部22の表面修飾A2と被検出物質Rと蛍光標識Luの表面修飾A1とが結合するように、表面修飾が施される。
【0053】
以下、本実施形態のセンサ1を用いたセンシングの手順について説明する。
まず、センシング面1s上に試料に流す。試料中に被検出物質Rが含まれていると、突出部22の表面修飾A2に被検出物質Rが結合される。次に、センシング面1s上に、あらかじめ表面修飾A1が施された蛍光標識Luを含む液を流す。検出部31に被検出物質Rが結合されていれば、この被検出物質Rに蛍光標識Luが結合される。
【0054】
試料と蛍光標識Luを含む液とを順次流す代わりに、試料中にあらかじめ蛍光標識Luを添加して、試料中に被検出物質Rが含まれている場合には被検出物質Rと蛍光標識Luとがあらかじめ結合されるようにし、センシング面1s上にこの試料だけを流してセンシングを行うこともできる。
【0055】
突出部22に蛍光標識Luが結合されたセンシング面1sに、測定光L1が入射すると、蛍光標識Luは、ある遷移確率で2光子励起又は多光子励起されて蛍光を発する。この蛍光を検出することにより被検出物質Rをセンシングすることができる。センサ1では、測定光L1により、蛍光標識Luが励起されて蛍光を発すると同時に、突出部22の構成金属では局在プラズモンが励起される。金属で局在プラズモンが励起されると、金属の表面近傍の電場が増強される。従って、突出部22近傍で測定光L1のパワーが増強されて、蛍光標識Luの遷移確率が高められる。遷移確率が高くなると、蛍光強度が増強されるため、より感度の良いセンシングを行うことができる。
【0056】
例えば、通常の1光子吸収による遷移確率は励起光のパワーに比例するが、2光子吸収においては、励起光のパワーの二乗に比例する。従って、遷移確率には、局在プラズモンによる電場増強効果の二乗の効果が得られることになる。
【0057】
局在プラズモンによる電場増強効果は、局在プラズモン共鳴波長においては、100倍以上といわれている。従って、測定光L1として、突出部22において局在プラズモン共鳴を生じる波長の光を用いることが好ましく、その場合、遷移確率を4桁以上向上させることが可能となる。
以上のようにして本実施形態のセンサ1によりセンシングすることができる。
【0058】
本実施形態のセンサ1は、特定の被検出物質Rのみが結合可能なセンシング面1sを有し、少なくとも一部がセンシング面1s上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部20を有するものである。本実施形態のセンサ1は、被検出物質Rを、被検出物質Rと選択的に結合する蛍光標識Luにて標識して、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出することによりセンシングが行われるものである。
【0059】
かかる構成においては、センシング面1sの金属部20において局在プラズモンを励起可能な波長の測定光L1が入射されると、金属部20において局在プラズモンが励起され、局在プラズモン効果による電場増強効果により金属部20付近の測定光L1のパワーが強められるので、金属部20に結合された蛍光標識Luの遷移確率が向上し、蛍光効率を効果的に高めることができる。
【0060】
また、本実施形態のセンサ1は、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を利用してセンシングを行うものであるので、測定光L1の波長を1光子励起の2倍以上の波長とすることができる。従って、共存物質等による測定光L1の吸収と蛍光を抑制し、より高いS/N比で蛍光を検出することができる。
【0061】
更に、本実施形態のセンサ1は、少なくとも一部がセンシング面1s上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部20を有していればよく、センサ自体の構成が簡易である。
【0062】
本実施形態のセンサ1は、センシング面1sが一つのセンシング領域を有するものであってもよいし、センシングが独立して行われる複数のセンシング領域に分割されていてもよい。複数のセンシング領域に分割されている場合は、センシング領域単位で被検出物質Rに応じた異なる種類の表面修飾A2を施すことにより、異なる種類の被検出物質Rをセンシングすることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、蛍光標識Luから発せられる蛍光の蛍光効率が高く、蛍光標識Luから発せられる蛍光を高S/N比で検出することができ、センサ自体の構成が簡易で、しかも測定光の照射と検出光の検出に複雑な光学系を要しないセンサ1を提供することができる。
【0064】
<設計変更>
上記実施形態では、被陽極酸化金属体10の一部を陽極酸化して得られたアルミナ層を誘電体基材11、非陽極酸化部分を導電体13とし、誘電体基材11の内部の微細孔12に、電気メッキ法により金属を析出させて金属部20を形成する方法について説明したが、被陽極酸化金属体10をすべて陽極酸化する、若しくは被陽極酸化金属体10の一部を陽極酸化した後、非陽極酸化部分とその近傍部分を除去することで、貫通孔からなる微細孔12を有する誘電体基材11を得、別途蒸着等により導電体13を成膜してもよい。この場合、導電体13の材料は制限なく、任意の金属やITO(インジウム錫酸化物)等の導電性の材料が挙げられる。
【0065】
また、基材裏面11rに導電体13を備えた場合について説明したが、金属部20を微細孔12に充填する方法として、電気メッキ等の電極を必要とする方法を用いない場合は、導電体13は備えてなくてよい。また、金属部20の形成後に導電体13を除去した構成としてもよい。
【0066】
上記実施形態では、微細孔12が貫通孔である場合について説明したが、微細孔12は非貫通孔であってもよい。
【0067】
上記実施形態において、誘電体基材11の製造に用いる被陽極酸化金属体10の主成分としてAlのみを挙げたが、陽極酸化可能であれば、任意の金属が使用できる。Al以外では、Ti、Ta、Hf、Zr、Si、In、Zn等が使用できる。被陽極酸化金属体10は、陽極酸化可能な金属を2種以上含むものであってもよい。
【0068】
用いる被陽極酸化金属の種類によって、形成される微細孔12の平面パターンは変わるが、平面視略同一形状の微細孔12が隣接して配列した構造を有する誘電体基材11が形成されることには変わりない。
【0069】
また、陽極酸化を利用して微細孔12を規則配列させる場合について説明したが、微細孔12の形成方法は、陽極酸化に制限されない。表面全面を一括処理でき、大面積化に対応でき、高価な装置を必要としないことから、陽極酸化を利用した上記実施形態は好ましいが、陽極酸化を利用する以外に、樹脂等の基板の表面にナノインプリント技術により規則配列した複数の凹部を形成する、金属等の基板の表面に、集束イオンビーム(FIB)、電子ビーム(EB)等の電子描画技術により規則配列した複数の凹部を描画する等の微細加工技術が挙げられる。
【0070】
センサ1のその他の好適な態様としては、図3、図4及び図5に示されるセンサ1A〜1Fが挙げられる。図3、図4及び図5を参照して、センサ1のその他の好適な態様について説明する。図3は斜視図、図4及び図5は断面図である。
【0071】
図3(a)に示すセンサ1Aは、平坦な誘電体11の上に、複数の金属粒子20aがアレイ状に固着されたデバイスである。この例では、金属部20は、複数の金属粒子20aからなる金属粒子層である。金属粒子20aの配列パターンは適宜設計でき、略規則的であることが好ましい。かかる構成では、個々の金属粒子20aが凸部であり、金属粒子20aの平均的な径及びピッチが測定光L1の波長よりも小さく設計される。
【0072】
図3(b)に示すセンサ1Bは、平坦な誘電体11の上に、金属細線20bが格子状にパターン形成された金属パターン層からなる金属部20が形成されたデバイスである。金属パターン層のパターンは適宜設計でき、略規則的であることが好ましい。かかる構成では、金属細線20bの平均的な線幅及びピッチが測定光L1の波長よりも小さく設計される。
【0073】
センサ1は、センシング面1sが局在プラズモンを励起しうる金属部20のみにより構成されてもよい。
図4(a)に示すセンサ1Cは、図2(a),(b)に示すように陽極酸化を実施し、陽極酸化により形成されたアルミナ層11を除去して、被陽極酸化金属体の非陽極酸化部分のみを残したデバイスである(特開2006-250924号公報を参照)。かかるデバイスでは、金属部20が表面に複数のディンプル状の凹部20cを有する非陽極酸化部分からなる導電体13により構成されている。
【0074】
図4(b)に示すセンサ1Dは、上記センサ1Cの表面に、その凹凸形状に沿って金属層20dを成膜したものである(特開2006-250924号公報を参照)。
【0075】
図4(c)に示すセンサ1Eは、上記センサ1Dの金属層20dをアニール処理により粒子化して、被陽極酸化金属体の非陽極酸化部分13上に金属粒子20eを形成したものである(特願2006-198009号(本件特許出願時において未公開)を参照)。
【0076】
図3及び図4に示したセンサ1A〜1Eでは、略規則的な凹凸構造の金属部20が得られるので、局在プラズモン効果がデバイスの面全体でばらつきなく得られ、好ましい。
【0077】
金属部20は、表面が粗面化された金属層により構成してもよい。粗面化方法としては、酸化還元等を利用した電気化学的な方法等が挙げられる。
【0078】
図5に示すセンサ1Fは、図1に示すセンサ1の表面に、その凹凸形状に沿って透明絶縁体層24を成膜したものである。この場合、表面修飾A2は透明絶縁体層24を介して、金属部20の突出部22を修飾する。透明絶縁体層24は、厚さ50nm以下のSiO膜であり、センサ1の表面に照射される測定光L1をほぼ透過するものである。透明絶縁体層24の主な機能は、表面修飾A2と結合した被検出物質Rと結合した表面修飾A1に結合している蛍光標識Luから、突出部22への直接電荷移動を防止することである。一般に金属の近傍に存在する物質から金属へのエネルギー移動の程度は、金属が半無限の厚さを持つ平面なら距離の3乗に反比例して、金属が無限に薄い平板なら距離の4乗に反比例して、また、金属が微粒子なら距離の6乗に反比例して小さくなる。センサ1においては、蛍光標識Luから突出部22への直接電荷移動を防止し得る透明絶縁体層24の厚さは、突出部22の材料、大きさおよび形状などに左右され、数nm〜数十nm程度である。透明絶縁体層24の膜厚としては、直接電荷移動を防止し得る厚さ以上の膜厚を確保することが好ましい。一方、局在プラズモン効果による電場増強効果は、金属表面からの距離に応じて指数関数的に減衰することが知られている。また、この電場増強効果の強度も金属表面の形状等により左右される。従って、本実施形態における突出部22の径や形状を考慮すると、透明絶縁体層24の膜厚は、効果的な電場増強効果が得られように、50nm以下であることが好ましい。
【0079】
さらに、透明絶縁体層24の材料は、SiO膜、に限定されるものではない。好ましい材料の他の具体例としては、ポリマーが挙げられる。また、透明絶縁体層の好ましい材料としてより詳しくは、疎水性高分子、無機酸化物を挙げることができる。
【0080】
疎水性高分子は、水に対する溶解度が20重量%以下であるモノマーを50重量%以上含むことが好ましい。水に対する溶解度が20重量%以下であるモノマーの具体例としては、ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、オレフィン類、スチレン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アリル化合物類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等から任意に選ぶことができ、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヘキサフルオロプロパン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが好ましく用いられる。疎水性高分子化合物としては、1種類のモノマーから成るホモポリマーでも、2種類以上のモノマーから成るコポリマーでもよい。
【0081】
さらに、水に対する溶解度が20重量%以上であるモノマーを共重合した高分子化合物を併用してもよい。水に対する溶解度が20重量%以上であるモノマーの具体例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、アクリル酸、アリルアルコール等が挙げられる。疎水性高分子としては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリスチレンがより好ましい。そうすることによって、膜形成が容易になりかつ表面に生理活性物質を固定化するための官能基を露出させることも容易になる。例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステルで形成された膜は表面を酸や塩基で加水分解することによって表面にカルボキシル基とヒドロキシル基を露出することが容易であり、またポリスチレンで形成された膜はUV/オゾン処理などの酸化処理施すことによってカルボキシル基を露出させることが容易である。
【0082】
透明絶縁体層の材料として使用可能な無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フェライト及びその複合材料や誘導体を選択することができる。
【0083】
透明絶縁体層24の成膜方法としては常法によって行うことができ、例えばゾルゲル法、スパッタ法、蒸着法、めっき法などの手法を採用することができる。
【0084】
「試料セル付きセンサ」
図6を参照して本発明に係る実施形態の試料セル付きセンサの構成について説明する。図6は図1(b)に対応した断面図である。
【0085】
本実施形態の試料セル付きセンサ2は、センサ1の金属部20が試料セル30内の試料に接触するように、上記実施形態のセンサ1が試料セル30に固定されたものである(固定構造については図示略。)。
【0086】
試料セル30は、試料Xが充填可能な金属等の非透光性材料からなるセル本体31を主とし、セル本体31に透光性の窓32が嵌め込まれたものである。窓32は、センサ1のセンシング面1sの対向側に嵌め込まれている。
【0087】
試料セル30は、試料Xの注入及び排出が可能であり、試料Xを連続的に注入、排出するフローセルであってもよい。
【0088】
試料セル付きセンサ2において、センサ1は、センシング面1sが試料セル30内に充填された試料Xに接触するように固定されていればよく、図示のように試料セル30の内部にセンサ全体が収容されていてもよいし、試料セル30の窓32と反対側の壁に嵌め込まれていてもよい。センサ1は試料セル30に対して完全固定でもよいし着脱自在であってもよい。
【0089】
試料セル付きセンサ2では、測定光L1が、試料セル30の外側から透光性の窓32を介してセンサ1のセンシング面1sに入射され、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を含むセンシング面1sからの出射光L2が窓32を介して試料セル30の外側に出射されて検出される。
【0090】
測定光L1の透光性の窓32における正反射成分はパワーが強く、出射光L2と混ざって検出されると、S/N比の低下要因となる。従って、試料セル付きセンサ2は、正反射成分と出射光L2とが分離されて検出されるように、窓32とセンシング面1sとのなす角度が調整可能であることが好ましい。
【0091】
「センシング装置」
図7に基づいて、本発明に係る一実施形態のセンシング装置の構成について説明する。図7に示すセンシング装置3は、上記実施形態のセンサ1と、センサ1に測定光L1を照射する光照射手段40と、センサ1からの出射光L2に含まれる蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出する検出手段50とから構成されている。
【0092】
センサ1は、センシング面1sに対して、金属部20において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光L1が照射されるものである。従って、光照射手段40は、金属部20において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の光を照射可能な、レーザや発光ダイオード等の単波長光源41を備えている。光照射手段40は、必要に応じて、単波長光源41からの出射光を平行光束とするコリメータレンズ及び/又は集光レンズ等を含む導光光学系が備えられる。
【0093】
検出手段50は、フォトダイオード等の光強度検出器51とデータ処理部52とを備えている。光強度検出器51は、出射光L2内の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するものである。発せられた蛍光をより感度良く検出されるには、強いバックグラウンド光となってしまう測定光L1の正反射成分等の測定光L1と同波長の光が検出されないことが好ましい。測定光L1と同波長の光が検出されないようにするには、光強度検出器51として、測定光L1と同波長の光が検出されないものを用いる、あるいは、検出手段50とセンサ1との間の光路上に、測定光L1の波長の光を取り除く波長選択手段53をさらに備えた構成とすればよい。
【0094】
センシング装置3は、上記実施形態のセンサ1を用いてセンシングを行うものであるので、被検出物質Rを、被検出物質Rと選択的に結合する蛍光標識Luにて標識し、蛍光標識Luの2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を蛍光効率が高く、蛍光標識Luから発せられる蛍光を高S/N比で検出してセンシングをすることができる。また、センシング装置3は、図示されるように、測定系にも複雑な光学系を要さないため構成が簡易である。センシング装置3では、被検出物質Rの有無及び/又は量を分析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のセンサは、生化学分野における免疫測定等で行われる蛍光分析に好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明に係る一実施形態のセンサの構造を示す全体斜視図、(b)は、センシング時における厚み方向断面図
【図2】図1のセンサの製造工程を示す図
【図3】(a)及び(b)は図1のセンサの設計変更例
【図4】(a)〜(c)は図1のセンサの設計変更例
【図5】図1のセンサの変更例
【図6】本発明に係る一実施形態の試料セル付きセンサの構成を示す概略断面図
【図7】本発明に係る一実施形態のセンシング装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0097】
1 センサ
1s センシング面
10 被陽極酸化金属体
11 誘電体基材(金属酸化物層,誘電体)
11s 基材表面
11r 基材裏面
12 微細孔
13 導電体(非陽極酸化部分)
20 金属部
20a 金属粒子
21 充填部
22 突出部
24 透明誘電体層
2 試料セル付きセンサ
30 試料セル
3 センシング装置
40 光照射手段
50 検出手段
53 波長選択手段
L1 測定光
Lu 蛍光標識
L2 出射光
w 突出部同士の離間距離
R 被検出物質
A1,A2 表面修飾
X 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の被検出物質と結合可能なセンシング面を有し、
前記被検出物質を、該被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識し、該蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシングに用いられるセンサにおいて、
少なくとも一部が前記センシング面上に露出し、局在プラズモンを励起しうる金属部を有し、
前記センシング面に対して、前記金属部において局在プラズモンを励起可能な波長であり、且つ前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長の測定光が照射されるものであることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記金属部は、前記測定光の波長よりも小さい凹凸構造を有すること特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記金属部の下地が、内部に複数の微細孔を有し、且つ少なくとも前記センシング面側の表面にて該複数の微細孔が開口した誘電体であり、
前記金属部が、前記誘電体の前記微細孔内に充填された充填部と、該充填部上に前記誘電体表面より突出して形成され、該充填部の径よりも大きい突出部とからなる複数の金属部からなることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記誘電体は、被陽極酸化金属体の少なくとも一部を陽極酸化して得られる金属酸化物体からなり、前記複数の微細孔は、前記陽極酸化の過程で該金属酸化物体内に形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記金属部が、表面が粗面化された金属層であることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項6】
前記金属部の下地が誘電体であり、
前記金属部が該誘電体の表面に固着された複数の金属粒子からなる金属粒子層であることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項7】
前記金属部の下地が誘電体であり、
前記金属部が該誘電体の表面にパターン形成された金属パターン層であることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項8】
前記金属部の局在プラズモン共鳴波長と、前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を発する吸収波長とが略一致しており、前記測定光として、該波長の光が用いられるものであることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
前記金属部の表面に、透明絶縁体層が形成されていることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
前記金属部の表面に、前記被検出物質と選択的に結合する表面修飾が施されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセンサ。
【請求項11】
前記センシング面は、前記センシングが独立して行われる複数のセンシング領域に分割されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のセンサ。
【請求項12】
前記金属部の表面に、前記被検出物質と選択的に結合する表面修飾が施されており、
且つ、前記センシング面が、異なる種類の前記被検出物質を対象とした異なる種類の前記表面修飾が施され、前記センシングが独立して行われる複数のセンシング領域を有していることを特徴とする請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のセンサが、
少なくとも、前記測定光と、前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を含む前記センシング面からの出射光が通る部分が透光性を有する試料セルに取り付けられた試料セル付きセンサであって、
前記センサの前記金属部が前記試料セル内の試料に接触するよう、前記センサが前記試料セルに取り付けられたものであることを特徴とする試料セル付きセンサ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のセンサと、
前記センサに前記測定光を照射する光照射手段と、
前記センサからの出射光に含まれる前記蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出する検出手段とを備えたことを特徴とするセンシング装置。
【請求項15】
前記センサと前記検出手段との間の光路に、前記測定光の波長の光を取り除く波長選択手段をさらに備えたことを特徴とする請求項14に記載のセンシング装置。
【請求項16】
前記被検出物質の有無及び/又は量を分析するものであることを特徴とする請求項14又は15に記載のセンシング装置。
【請求項17】
被検出物質を、該被検出物質と選択的に結合する蛍光標識にて標識し、該蛍光標識の2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出するセンシング方法において、
前記蛍光標識を局在プラズモン電場により励起して、2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を生じさせ、該2光子励起蛍光又は多光子励起蛍光を検出することを特徴とするセンシング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−170418(P2008−170418A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248990(P2007−248990)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】