説明

センサの較正のための硫化水素発生器

本発明は、硫化水素センサのための較正用ガスとしての内部発生する硫化水素の使用に関する。本発明はまた、硫化水素センサの自己較正のための装置および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年1月25日に出願された米国特許出願第11/339,748号の一部継続出願であり、さらには、2005年5月24日に出願された米国特許出願第10/908,737号の一部継続出願である。これらの両方の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
長い間、水素、酸素、一酸化炭素などの様々なガスを検出するためにガスセンサが使用されてきた。ガスセンサの1つの形態には、検出するガスを電子の交換により酸化または還元するために触媒電極を使用する電気化学電池がある。この場合、ガスの酸化または還元による電流の流れが、検出されるガスの濃度の測定値として検出される。
【0003】
しかし、ガスセンサの既知の欠点は、ガスセンサが経時的に感度を失っていくことである。例えば、電気化学電池の可使時間は、センサ内のガスを検出するのに使用される電池の触媒電極の活動度に応じて決まる。この活動度は、汚染ガスおよび毒物質により経時的に徐々に減少していき、その結果、センサの感度が徐々に低下する。
【0004】
ぺリスター(pellistor)センサ、バイオミメティック(biomimetic)センサ、および、薄膜、厚膜、焼結された装置あるいはMOSFETの装置として形成される酸化スズセンサなどの他のタイプのガスセンサにも類似の問題が存在する場合がある。
【0005】
ガスセンサを組み込こんだ計器が定期的に較正される場合、鈍化方向への感度の変化は、ガスセンサの利得を調整することによって補償され、さらには、欠陥のある任意のガスセンサは速やかに交換される。しかし、計器が修理するのに困難な位置にある場合、あるいはそれ以外に、ガスセンサの較正を円滑に行うことができない場合、ガスセンサが正常に機能しているかどうかを確認することがしばしば不可能になる。したがって、ガスセンサが可使時間の限界まで達したとき、検出用電池の出力が警報状態を生み出すのに不十分になる可能性がある。その結果、ガスが毒性状態にあるような状況が起こり、それにもかかわらず、ガスセンサは必要な警告を発することができない。
【0006】
外部で生成される較正用ガスを必要とすることなく電気化学電池などのガスセンサの機能を検査することを可能にする方法の決定には、かなりの労力が費やされている。例えば、ガスセンサを通る導電性通路を検査するために追加の電子部品を使用することが提案されている。これらの方法は壊れた接続部を発見することができるが、検出されるガスと反応する能力に関する電極状態の情報を一切提示しない。
【0007】
外部ガス供給源を使用する場合、工業用のガス検出器は、通常、ずれを修正するために較正される。有毒ガス検出器は、通常、大抵の場合において有毒ガスが非常に低い水準である50ppmより低い職業的被曝レベルを主に測定するために較正される。このような希釈度においてガス/空気混合気を調製することが困難であることにより、硫化水素および二酸化硫黄などのいくつかの有毒ガスが、較正用ガスシリンダハウジングを作るのに使用される物質によって容易に吸収されることから、さらには、これらの混合気の安定性に問題がある場合があることから、較正用ガスシリンダの貯蔵寿命には限界がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、硫化水素センサのための較正用ガスとしての内部発生する硫化水素の使用に関する。本発明はまた、硫化水素センサの自己較正のための装置および方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、自己較正ガスセンサは、硫化水素検出器および硫化水素発生器を含み、この硫化水素発生器は、加熱器、ならびに金属硫化物と固体酸との混合物を含み、較正中に加熱器が通電されている場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を解放し、加熱器が通電されていない場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を実質的に解放しないように、混合物は加熱器の近傍にある。
【0010】
本発明の別の態様によると、自己較正ガスセンサは、ガス検出器と、硫化水素発生器であって、加熱器、ならびに金属硫化物と固体酸との混合物を含み、較正中に加熱器が通電されている場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を解放し、加熱器が通電されていない場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を実質的に解放しないように、混合物が加熱器の近傍にある硫化水素発生器と、硫化水素発生器および検出器を中に収容する連続ハウジングとを含む。
【0011】
本発明の別の態様によると、自己較正ガスセンサは、電気化学電池を含むガス検出器と、硫化水素発生器であって、加熱器、ならびに金属硫化物と固体酸との混合物を含み、較正中に加熱器が通電されている場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を解放し、加熱器が通電されていない場合には混合物が検出器に対して硫化水素の過圧力を実質的に解放しないように、混合物が加熱器の近傍にある硫化水素発生器とを含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様によると、装置が、少なくとも1つのガス流入ポートと、較正用流れまたは非較正用流れのうちの1つを供給するオリフィスとを有するガスセンサと、オリフィスが較正用流れを供給する場合に硫化水素を供給する硫化水素供給源とを含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様によると、較正可能なガス検出器が、内部ガス流れ路が接続されている少なくとも1つのガス流入ポートを含むハウジングと、ガス流れ路と流通している硫化水素の供給源と、周囲空気が流れ込むガスセンサと、ガス流れ路に接続されているポンプと、流入ポートに接続されている多状態オリフィスであって、流れ路に入る流れを制限する収縮状態および別の第2の状態を有するオリフィスとを含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様によると、一方法が、選択されたキャリア流体の制限された流れを供給するステップと、硫化水素を感知領域に拡散させるステップと、硫化水素の濃度を読み取るステップとを含む。
【0015】
本発明の別の態様によると、硫化水素ガスセンサを較正する方法が、硫化水素ガス検出器と、この硫化水素ガス検出器に隣接しさらに加熱要素およびこの加熱要素と熱伝導状態にある金属硫化物と固体酸との混合物を含む硫化水素発生器とを用意するステップと、既知の量の硫化水素ガスを放出させるために加熱要素を用いて混合物を加熱するステップと、硫化水素検出器から出力値を提示するために硫化水素検出器を用いて既知の量の硫化水素を検出するステップと、既知の量の硫化水素ガスに基づいて出力値を較正するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、硫化水素センサを較正するための硫化水素参照ガスの内部発生に関する。
一実施形態では、図1に示すように、自己較正硫化水素ガスセンサ10が、カバーによって開口端が覆われている例えばカン12の形態であってよいハウジングを有する。カン12およびカバーは、例えばニッケルメッキ鋼で作られていてよい。カン12は、消毒液の中に水または水性ゲルあるいは親水性酸化物のシリカゲルなどの物質14を保有する。物質14は、自己較正ガスセンサ10に水蒸気源を供給する。図1に示すように、物質14は液位16を有してよいが、カン12はこれより多いあるいは少ない物質14を収容することもできる。自己較正ガスセンサ10に対しての特定の使用温度領域に応じて、物質14の代わりに他の物質を使用してもよい。
【0017】
支持プレート18が、カン12内で物質14の液位16の上方に設けられる。支持プレート18は支持プレート18を通る穴20を有しており、物質14からの蒸気の流れが支持プレート18を通ることが可能となる。支持プレート18は例えばステンレス鋼ワッシャであってよい。
【0018】
硫化水素検出器22が支持プレート18によって支持される。硫化水素検出器22は、例えば電気化学電池の形態であってよい。その場合、硫化水素検出器22は、下側および上側電池プレート24および26、固体電解質膜28、ならびに、上側および下側触媒電極30および32を有する。下側および上側電池プレート24および26は、例えば疎水性テフロン(登録商標)ディスクであってよい。
【0019】
下側電池プレート24は支持プレート18と下側触媒電極30との間に挟まれ、さらに、下側触媒電極30は固体電解質膜28と下側電池プレート24との間に挟まれ、さらに、上側触媒電極32は固体電解質膜28と上側電池プレート26との間に挟まれる。触媒電極30および32は、例えば、Au、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os、Agなどのグループからの要素、あるいは、このグループから要素の合金または混合物、あるいは、カーボンブラックと混合されるこのグループの多孔質要素、あるいは、カーボンブラックおよびナフィオン粒子と混合されるこのグループの多孔質要素を含んでよい。固体電解質膜28は、ナフィオン、または、ナフィオンの複合材料であるNafion/7SiO−2P−ZrOおよびNafion/ZrP粒子であってよく、あるいは、高温の用途ではサンディア固体高分子代替型(Sandia Polymer Electrolyte Alternative(SPEA))であってよい。ガス検出器22は、米国特許第4,025,412号明細書、第4,123,700号明細書、および第4,171,253号明細書のうちの1つまたは複数で示されているタイプであってよい。
【0020】
硫化水素発生器34は内部で硫化水素ガスを発生させ、この硫化水素ガスは検出器22に供給され、その結果、硫化水素検出器が自己較正できるようになる。硫化水素発生器34は、硫化水素発生チャンバ36およびガス拡散制御プレート38を含む。ガスセンサ10はまた活性炭フィルタ40を含む。ガス拡散制御プレート38は、硫化水素発生チャンバ36および活性炭フィルタ40を硫化水素検出器22から分離し、さらに、上側電池プレート26に当接する。
【0021】
図2に示すように、硫化水素発生チャンバ36は、加熱器42、および加熱器42の近傍にある混合物44を収容する。混合物44は加熱時に硫化水素ガスを発生させる。例えば混合物44は金属硫化物および固体酸を含んでおり、加熱器42が通電されている場合、既知の温度まで加熱されてその結果硫化水素ガスの過圧力を発生させる。過圧力により、硫化水素ガスはガス拡散制御プレート38内の穴48bを通ってガス検出22の中まで直接に流れる。
【0022】
混合物44に好適な金属硫化物には、例えば、硫化カルシウム、硫化亜鉛、硫化銅、および硫化銀が含まれる。適切な固体酸には、50℃より低い温度において固形でありさらに硫化水素より強い酸性を有する、鉱酸、有機酸、ポリ酸およびルイス酸など固体酸が含まれる。好適な固体酸には、例えば、クエン酸、フタル酸C(COOH)、安息香酸、これらの酸性誘導体、ならびに、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリリン酸、ポリホスホン酸、ポリマレイン酸およびこれらの酸性誘導体などのポリ酸が含まれる。また、混合物は、センサを較正する必要がないときに環境条件の影響を排除するために封入されてよい。好適な封入材料には、例えば重合体類、金属類、および誘導体が含まれる。
【0023】
したがって、自己較正ガスセンサ10が較正されるとき、加熱器42は通電されて所定の時間で混合物44を所定の温度まで加熱し、それにより、混合物44が硫化水素の過圧力を解放し、この過圧力は硫化水素検出器22に送られる。検出器22は硫化水素を感知すると、下側および上側触媒電極30および32から参照信号を発する。この信号は自己較正に使用される。この自己較正の後、加熱器42は電源を切られて、硫化水素ガスの過圧力が影響を及ぼさないレベルまで下げられる。自己較正ガスセンサ10のこの自己較正は、所望の場合には断続的に繰り返されてよい。
【0024】
図1に示すように、カン12は、硫化水素検出器22および硫化水素発生器34を収容する連続ハウジングを形成する。したがって、この実施形態のこの構成では、検出器22および硫化水素発生器34は個別のハウジング内で分離された状態で収容されない。
【0025】
図3に示すように、制御装置50が、検出器22によって検出される硫化水素に基づく出力52を備えており、硫化水素検出器22を較正するために硫化水素発生器34を制御する。出力52は種々の装置に接続されてよい。例えば、出力52は、検出された硫化水素のレベルが所定の限界値を超えた場合に警報を発するための警報指示器に接続されてよく、あるいは、出力52は、検出される硫化水素の影響を制御するための換気装置などの装置に接続されてもよい。自己較正は、1年に2回あるいは1年に1回作動するように予めプログラムすることができる。また、外部ボタンを押すことによって較正を開始することもできる。自己較正の処理中は、制御装置50は、自己較正が実行されていることならびに制御装置50が一時的に機能停止中であることの警報/警告を発しなければならない。
【0026】
下側および上側触媒電極30および32は電源端末の間で抵抗器54を通して接続される。抵抗器54と硫化水素検出器22との間の接続部は、増幅器56の周りのフィードバック回路内に利得制御要素58を有する増幅器56に接続される。増幅器56の出力は出力52を備えるプロセッサ60に接続され、このプロセッサ60は、利得制御要素58を制御し、さらに、硫化水素発生器34を通電させるために電源Sを加熱器42に選択的に接続させるようにスイッチ62を制御する。
【0027】
通常作動時では、プロセッサ60は増幅器56の出力に基づいた出力52を有し、スイッチ62が開いているようにスイッチ62を制御する。したがって、硫化水素発生器34が電源を切られると、出力52が、通常はガス検出器22によって検出される周囲ガスのレベルを指示する。通常はガス検出器22によって検出されるこの周囲ガスは、カン12内の1つまたは複数の適当な穴(図示せず)を通ってガスセンサ10に入り、さらに、活性炭フィルタ40を通って流れ、さらにその後、ガス拡散制御プレート38の1つまたは複数の穴48aを通って硫化水素検出器22内まで流れる。
【0028】
自己較正中、プロセッサ60はスイッチ62が閉じているようにスイッチ62を制御する。それにより、硫化水素参照ガス発生器34が通電されて硫化水素参照ガスを発生させ、さらに、上述したようにこの硫化水素参照ガスを硫化水素ガス検出器22に供給する。プロセッサ60は、増幅器56の出力を受信し、それに応じて、増幅器56の出力が所望の較正レベルになるまで利得制御要素58を制御する。それにより、自己較正ガスセンサ10が較正される。
【0029】
制御装置50は、必要とされる回数だけあるいは所望の回数だけ上述の較正を断続的に繰り返すことができる。この繰り返し較正の時間の間隔は周期的であっても非周期的であってもよく、さらに、所望される任意の長さでよい。
【0030】
回路50はチップまたは別の物としてカン12内の基盤または他の支持体上に実装されてよい。したがって、出力52はカン12の外部まで延びていてよい。
本発明のいくつかの修正点を上で考察してきた。本発明の技術分野に従事している人は他の修正点も思いつくであろう。例えば、上述の硫化水素検出器22は電気化学電池であってもよい。別法として、検出器22は、ペリスター(pellistor)センサ、バイオミメティック(biomimetic)センサ、および酸化スズセンサ、または、他のガスセンサであってもよい。
【0031】
さらに、図1は本発明の一実施形態を示しており、ここでは、カン12が、硫化水素検出器22および硫化水素発生器34を収容する連続ハウジングを形成する。しかし、代わりに、硫化水素検出器22および硫化水素発生器34は個別のハウジング内で分離された状態で収容されてもよい。
【0032】
また、硫化水素発生チャンバ36は、必ずではないが好ましくは密封される。密封される場合、硫化水素発生チャンバ36内の過圧力が過剰になることが可能となる。この場合、適当な圧力逃し弁または他の補償装置が、過圧力を許容限度より低く維持するために設けられる。
【0033】
また、自己較正硫化水素ガス検出器も設けられており、これは、流れ路をガス入り口端部およびそれに付随するオリフィスに組み込む。上述したように金属硫化物と固体酸との混合物を加熱することによって硫化水素を発生させる硫化水素発生器、ならびに、硫化水素センサは、この流れ路に接続される。最後に、所望の場合、ポンプもこの流れ路に接続されてよい。
【0034】
較正処理を実行するために、オリフィスは、流れ路の入り口を制限するまたは収縮させる状態に移行されるあるいは切り替えられる。これにより、センサへの周囲空気の流れが制限される。
【0035】
ポンプおよび硫化水素の供給源は両方とも作動させることができる。作動されたポンプにより、周囲空気が、硫化水素センサを通過する通常作動時の流れと比較して減少した流量で硫化水素センサの感知領域を通過する。作動された硫化水素の供給源は既知の量の硫化水素を発生させる。
【0036】
当業者は、較正処理をさらに向上させるために、周囲空気、湿度および圧力を測定する追加のセンサが組み込まれてよいことを理解するであろう。というのは、これらの変数が、硫化水素などのガスの感知される濃度に影響を及ぼす場合があるからである。また、流れ路の入り口を覆いそれによりセンサに損害を与える可能性がある有害粒子またはガスの流入を防止するために、フィルタまたは選択性透過膜が設けられてもよい。
【0037】
硫化水素は、流れ路を移動する流入周囲空気内を拡散する。この混合気は、次に、水素センサの感知領域内に流れ込むあるいはそこを通過するように流れる。センサはそれに反応して、較正およびセンサの性能特性に関する判定に使用されてよいそれに応じた出力信号を発する。
【0038】
本発明によると、1から100cc/分の範囲の減少された流量は、この処理において必要とされる硫化水素の量を縮小させることから、特に有利である。これにより、硫化水素発生器のサイズが縮小されてさらに電力消費が低下する。
【0039】
本発明を具体化する検出器は自己検査式でもある。例えば、周囲空気が引き込まれるときに通る流れ路が空いているかどうか、あるいは、流れ路が閉塞される兆候を示しているがどうかを判断することができる。また、サンプリングポンプが予定通りに機能しているかどうかを判断することも可能である。
【0040】
本発明の別の態様では、流れ路は、機械的に可動のオリフィスによって制限されてもよい。オリフィスは、入り口を部分的に閉鎖する較正位置まで移動することができ、これにより、流れ路またはサンプリング用経路を通るガス流れが著しく縮小される。較正処理が完了すると、オリフィスを通常の作動位置に移動することができる。
【0041】
本発明の別の態様によると、サンプルポンプは、蠕動ポンプ、膜ポンプ、または、別法として、電子制御ポンプであってよいが、これらに限定されない。
図4に、本発明による硫化水素検出器70を示す。検出器70は、流れ路71を入り口端72および出口端部73に組み込む。通常の作動では、周囲空気が、流れ路71の入り口端72から出口端73まで方向74で流れることができる。
【0042】
検出器70は、少なくとも2つの異なる状態を示すことができるオリフィス75を組み込むことができる。一状態では、オリフィス75は、流れ路71に流入する周囲空気を制限する。この状態では、図4に示すように、周囲空気が通常作動時と比較して減少した流量で流れ路71を通過することを予測することができる。較正機能を実行しない場合、オリフィス75は入り口72から機械的に摺動または回転することができる。
【0043】
別法として、オリフィス75は電気的に非収縮状態になることができる。非収縮状態は、オリフィスを物理的に動かす電気作動式の変換装置によって実現されてよい。当業者には理解できるように、オリフィス75は、収縮状態から非収縮状態へ電子的に切り替えることができる。
【0044】
検出器70はまた、硫化水素ガス発生器78および硫化水素ガスセンサ79を組み込む。
硫化水素発生器78は、概して80で示した所定の量の硫化水素を流れ路71内に発生させるために、電気的に作動されてよい。硫化水素ガス80は、流れ路71内を流れる周囲空気の流れ内で拡散する。ポンプ81は、流れ路71を通る周囲空気および硫化水素ガス80の流れを生み出すために出口73に接続されてよい。
【0045】
発生器78を作動させてセンサ79からの入力を受信しさらにポンプ81を作動させるために、制御回路82が設けられてよい。当業者には理解できるように、検出器71は、1つまたは複数のバッテリーなどの電源も収容することができるハウジング83内で担持されてよい。
【0046】
図5は、本発明を具体化する検出器70’の正面図である。図4の検出器71の要素に対応する図5の検出器70’の要素には同じ参照符号が割り当てられている。図5に示すように、本発明の一実施形態では、オリフィス77を有する可動プレート76が設けられてよく、これは図6に最もよく示されている。
【0047】
プレート76は、流れ路71に対して、概して84で示した第1および第2の方向に移動可能である。較正位置すなわち収縮位置では、プレート76は流れ路71を部分的に閉鎖する。プレート76は、周囲空気がオリフィス77のみを通って流入するのを可能にする。この状態では、制御エレクトロニクス82が硫化水素発生器78ならびにポンプ81を作動させることでき、これにより、開口部77を通って引き込まれた周囲空気と発生器78からの硫化水素80との混合気が形成される。この混合気は流れ路71を介して硫化水素センサ79に送られる。硫化水素80はセンサ79内であるいはセンサ79を通って拡散することができ、センサ79によって検出される。
【0048】
制御エレクトロニクス82に接続されたセンサ79からの出力が、硫化水素80に対するセンサ79の反応を示す電気信号を発する。エレクトロニクス82は、センサ79から受信した信号に応答してセンサ79の較正を自動式あるいは半自動式のどちらかで実施することができる。
【0049】
エレクトロニクス82は、所望されるときに硫化水素の濃度を提示するディスプレイ85を作動させることができる。別法として、ディスプレイ85は、図5および6に示すようにプレート77が非収縮状態に位置している通常作動時に、例えば百万分率で、検出した周囲ガスの指示を表示することができる。当業者には理解できるように、電源86は、再充電バッテリーまたは取替え式バッテリーを用いて導入することができる。
【0050】
開口部77を有するプレート76を使用することにより、流れ路またはサンプリング用経路71を通るガス流れが著しく縮小される。これにより、特定の濃度を達成するのに必要となる硫化水素の量が減少する。これにより、硫化水素発生器78ならびに電源86の必要とされるサイズおよび電力が縮小される。
【0051】
さらに、硫化水素ガスセンサを較正する方法を開示する。この方法は、硫化水素検出器、および、硫化水素検出器に隣接する硫化水素ガス発生器を用意するステップを含む。硫化水素ガス発生器は、加熱要素と、上述したように加熱要素付近にある混合物を含む。この方法は、既知の量の硫化水素ガスを放出させるために加熱要素を用いて混合物を加熱するステップと、硫化水素検出器から出力値を提示するために硫化水素検出器を用いて既知の量の硫化水素を検出するステップとをさらに含む。出力値はその後、放出された既知の量の硫化水素に基づいて較正される。
【0052】
一実施形態では、加熱ステップは、既知の量の硫化水素ガスを放出させるために混合物を熱分解するステップを含む。
別の実施形態では、混合物は、重合体、金属、および誘導体から選択される物質内に封入される。
【0053】
一実施形態では、金属硫化物は、硫化カルシウム、硫化亜鉛、硫化銅、硫化銀、硫化ナトリウム、二硫化炭素、硫化ポリフェニレン、二硫化モリブデン、硫化カドミウム、および硫化鉛から選択される。追加の実施形態では、固体酸は、クエン酸、フタル酸C(COOH)、安息香酸、これらの酸性誘導体、ならびに、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリリン酸、ポリホスホン酸、ポリマレイン酸およびこれらの酸性誘導体などのポリ酸から選択される。
【0054】
一実施形態では、用意ステップは、電気化学硫化水素ガス検出器、および、この硫化水素検出器に隣接する硫化水素ガス発生器を用意するステップを含む。
別の実施形態では、加熱ステップは、既知の量の硫化水素を開放させるために既知の量のエネルギーを加熱要素に供給するステップを含む。
【0055】
一実施形態では、この方法は、較正ステップの後に、第2の既知の量の硫化水素ガスを放出させるために加熱要素を用いて混合物を再加熱するステップと、硫化水素検出器から出力値を提示するために硫化水素検出器を用いて第2の既知の量の硫化水素ガスを検出するステップと、第2の既知の量の硫化水素ガスに基づいて出力値を較正するステップとをさらに含む。
【0056】
一実施形態では、加熱ステップと再加熱ステップとの間には少なくとも1週間の時間が置かれる。別の実施形態では、加熱ステップと再加熱ステップとの間には少なくとも1ヶ月の時間が置かれる。
【0057】
結果的に、本発明の説明は単に例示的なものであると解釈され、当業者に本発明を実施するための最良の形態を教示するためのものである。細部については本発明の主旨から逸脱することなく各種の変更が可能であり、これらの修正形態の独占使用は、特許請求の範囲で確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態による自己較正硫化水素ガスセンサを示す図である。
【図2】図1に示した自己較正ガスセンサの硫化水素参照ガス発生器の細部を付加的に示す図である。
【図3】自己較正処理で使用されてよい回路を示す図である。
【図4】本発明による自己較正硫化水素ガス検出器の概略的ブロック図である。
【図5】本発明による独立型であり可搬式である硫化水素ガス検出器の正面図である。
【図6】図5の検出器の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素検出器と、
硫化水素発生器であって、加熱器、ならびに金属硫化物と固体酸との混合物を含み、較正中に前記加熱器が通電されている場合には前記混合物が前記検出器に対して硫化水素の過圧力を解放し、前記加熱器が通電されていない場合には前記混合物が前記検出器に対して硫化水素の過圧力を実質的に解放しないように、前記混合物が前記加熱器の近傍にある硫化水素発生器と
を有する自己較正ガスセンサ。
【請求項2】
前記検出器によって検出される周囲ガスを濾過するフィルタをさらに含む、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項3】
前記硫化水素発生器が、一方の側では前記加熱器と前記混合物との間にさらに他方の側では前記加熱器と前記検出器との間にガス拡散制御装置を有し、前記ガス拡散制御装置が、前記硫化水素発生器から前記検出器への硫化水素の拡散を制御する、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項4】
較正中に前記加熱器を通電させさらに前記検出器に硫化水素が供給される時間において前記検出器の出力に反応して前記ガスセンサを較正する回路をさらに含む、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項5】
前記混合物が、重合体、金属および誘導体からなる群から選択される物質内に封入される、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項6】
前記金属硫化物が、硫化カルシウム、硫化亜鉛、硫化銅、硫化銀、硫化ナトリウム、二硫化炭素、硫化ポリフェニレン、二硫化モリブデン、硫化カドミウム、および硫化鉛からなる群から選択される、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項7】
前記固体酸が、クエン酸、フタル酸C(COOH)、安息香酸、これらの酸性誘導体、およびポリ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項8】
前記ポリ酸が、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリリン酸、ポリホスホン酸、ポリマレイン酸、およびこれらの酸性誘導体からなる群から選択される、請求項7に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項9】
前記ガス検出器が電気化学電池を有する、請求項1に記載の自己較正ガスセンサ。
【請求項10】
少なくとも1つのガス流入ポートと、較正用流れまたは非較正用流れのうちの1つを供給するオリフィスとを有する硫化水素センサと、
前記オリフィスが較正用流れを供給する場合に硫化水素を供給する硫化水素供給源と
を有する装置。
【請求項11】
前記供給源が所定の量の硫化水素を供給する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ガスセンサ内への周囲空気の流れを促進する要素を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記ガスセンサ内へ流れる周囲空気が硫化水素と混合される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ガスセンサ内へ流れる周囲空気が所定の量の硫化水素と混合される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記要素がガスポンプを有する、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記ガスセンサが少なくとも1つの内部流れ路を含んでおり、ここでは、硫化水素がガス感知領域に入る前に周囲空気の流れに入るように供給源が配置されている、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記オリフィスが、制御信号に反応して、較正用流れを供給する状態から非較正用流れを供給する状態に変形する、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
流れ誘発ポンプを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記オリフィスが前記ガスセンサと流通している、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記ポンプが、前記オリフィスを通りさらに前記供給源を通過して前記ガスセンサに入るガス流れを誘発する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
少なくとも前記ポンプおよび前記オリフィスに接続される制御回路を含む、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記制御回路が前記供給源に接続される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記オリフィスが、前記制御回路からの少なくとも1つの信号に反応して、少なくとも部分的に、較正用流れを供給する状態から非較正用流れを供給する状態に移行する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記制御回路が、硫化水素を供給するために前記供給源を作動させる、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記供給源が金属硫化物と固体酸との混合物を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項26】
前記オリフィスが、前記流入ポートに接続される多状態オリフィスであり、前記オリフィスが、流れ路内への流れを制限する収縮状態および別の第2の状態を有する、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
複数の状態の間で前記オリフィスを切り替えるための制御回路を含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記制御回路が、前記オリフィスが収縮状態にある間に硫化水素を供給するために前記供給源を作動させる、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
少なくとも、前記供給源が作動される間、前記ポンプが作動される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
選択されたキャリア流体の制限された流れを感知領域に供給するステップと、
所定の量の硫化水素を前記感知領域へ送るために、前記硫化水素を前記キャリア流体内で拡散させるステップと、
前記感知領域で前記硫化水素の濃度を読み取るステップと
を含む方法。
【請求項31】
前記供給ステップが、硫化水素ガス検出器と、前記硫化水素検出器に隣接する硫化水素ガス発生器とを用意するステップを含み、前記硫化水素ガス発生器が、加熱要素、ならびに前記加熱要素と熱伝導状態にある金属硫化物と固体酸との混合物を含み、
前記拡散ステップが、既知の量の硫化水素ガスを放出させるために前記加熱要素を用いて前記混合物を加熱するステップを含み、
前記読取りステップが、前記硫化水素検出器から出力値を提示するために前記硫化水素検出器を用いて前記既知の量の硫化水素ガスを検出するステップを含む方法であって、
前記既知の量の硫化水素ガスに基づいて前記出力値を較正するステップをさらに含む、
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記較正ステップの後に、第2の既知の量の硫化水素ガスを放出させるために前記加熱要素を用いて前記混合物を再加熱するステップと、
前記硫化水素検出器から出力値を提示するために前記硫化水素検出器を用いて前記第2の既知の量の硫化水素ガスを検出するステップと、
前記第2の既知の量の硫化水素ガスに基づいて前記出力値を再較正するステップと
をさらに含む、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−530646(P2009−530646A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501676(P2009−501676)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/064272
【国際公開番号】WO2007/109598
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】