説明

センサシステムの校正方法

【課題】 新たに補助的手段を設けることなく,センサシステムの自動校正及び自動検査可能なセンサシステムの校正方法を提供する。
【解決手段】 センサシステムにより対象の特徴的なデータを検出する工程と,車両の固有運動を考慮して静止対象あるいは準静止対象として認識されたデータを校正ユニットに供給する工程と,対象の実測データとモデルデータの偏差をエラーベクトルとして求める工程と,偏差を最小にする方向でモデルデータを補正する工程と,を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,センサシステムの校正方法に関し,さらに詳細には,車両のコース推移内の対象検出及び評価を実行するセンサシステムの校正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 従来においては,道路交通の車両安全システム装置として,例えば画像記録センサシステム及び他のセンサシステムを使用すること自体は既知である。かかる装置においては,常に,他の対象(即ち,他の車両)及び道路条件に対する車両の距離及び相対速度に関する情報が処理される。
【0003】画像記録システム及び必要に応じてレーダセンサも,車両周囲の環境の幾何学的値を測定するために使用される。かかるレーダセンサは,例えばドイツ公開公報第DE4242700A1号により既知である。
【0004】かかる装置により,例えば車両速度制御を拡張して,センサシステムにより低速の先行車両が車両の予測コース領域内に検出された場合であっても,走行速度を低速先行車両に適合することができる。なお,かかるコース領域は,例えばヨーレートセンサ,操舵角度センサ,横加速度センサを使用して,車輪速度を介して,あるいは上記画像処理システムあるいはナビゲーションシステムにより決定される。
【0005】かかるシステム機能を完全なものとするためには,距離,速度などの幾何学的値を正確に測定することが最も重要であり,センサシステム又は各センサを車両周囲の環境に応じて予め校正しておく必要がある。かかる校正は,通常,センサを車両に搭載する前あるいは搭載した後に実験室レベルで行われる。
【0006】例えば道路地図により既知である環境情報を利用してハイブリッド型ナビゲーションシステムを校正することは,EP0602013B1号に開示されている。上記公報においては,固有の車両状態に関する情報は,地図により既知となっている環境情報と組み合わせて処理される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のような実験室レベルの校正では,センサやセンサの検出対象を所望に移動させなければならない。さらに,校正フィールドと称される特殊な人工対象を使用して考察することが必要とされる。さらに,センサを永続的に正確に機能することを保証するためには,あらゆる変化(変更)に対して校正を繰り返し管理することが必要であり,きわめて煩雑な作業となる。
【0008】したがって,本発明の目的は,新たに補助的手段を設けることなく,センサシステムの自動校正及び自動検査可能な新規かつ改良されたセンサシステムの校正方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため,請求項1に記載の発明では,車両のコース推移内の対象検出及び評価を実行するセンサシステムの校正方法であって,前記センサシステムにより対象の特徴的なデータを検出する工程と,前記車両の固有運動を考慮して静止対象あるいは準静止対象として認識されたデータを校正ユニットに供給する工程と,前記対象の実測データとモデルデータの偏差をエラーベクトルとして求める工程と,前記偏差を最小にする方向でモデルデータを補正する工程と,を有することを特徴とする,センサシステムの校正方法が提供される。
【0010】本項記載の発明では,新たに補助的手段を設けることなく,センサシステムを自動的に校正できると共に,一度獲得した校正を後に自動的に検査することができる。また,従来はに独自に実施されていた,車両の特殊運動に対する校正も省略することができる。これは,駆動における車両の固有運動と,三次元空間の対象は通常固定されており,全体として移動し,比較的長期間にわたりセンサの校正が安定しているという知見を利用している。センサの校正は,例えば低速で変化するなど準静的である。実際の使用においてエラー機能をもたらす恐れのある,他の車両運転手の通常走行(例えば車線維持)に関する発見的な仮定もこの方法にとっては不要である。また本項記載の発明では,測定値を正確に検出する校正をおこなうことができる。実験室レベルの校正で必要であったいわゆる真実の校正に対する要請は,ここでは余り重要ではない。製造技術的には,センサの校正は,機械的負荷又は熱的負荷に敏感であるため,未校正のセンサを組み込むのが特に好ましい。したがって,製造が簡単になるだけでなく,組み込みの影響やセンサあるいは車両の他の変化の影響を,簡単な校正方法で後に考慮することができる。さらに,校正をいつでも検査することができる。
【0011】また,請求項2に記載の発明のように,予め設定されるパラメータによる初期化行程の後に,対象データの第1の検出を実行し,モデルデータとして格納する工程と,周期的に連続する全ての測定において,各々実際の対象データが従前に検出され格納されているモデルデータと共に校正ユニットで処理され,エラーベクトルを形成する工程と,を有する如く構成するのが好ましい。
【0012】また,請求項3に記載の発明のように,校正ユニットでのデータ処理の間に,先行する測定で取得された対象データが選択され,再検出されない対象データは消去され,各新たに付加する対象データが取り入れられ,かつ,異なる車両位置で繰り返し測定した後,信頼区間の縮小を有する対象データが,静止対象あるいは準静止対象に属するデータとして特徴づけられる,如く構成するのが好ましい。
【0013】また,請求項4に記載の発明では,互いに連続する対象データから,略同一の相対速度の対象及び車両の固有運動が求められ,かつ,前記略同一相対速度の対象に対応する対象データが,静止対象あるいは準静止対象に属するデータとして特徴づけられる,如く構成するのが好ましい。
【0014】また,請求項5に記載の発明のように,前記車両の固有運動として,ピッチング及び/又はカーブ走行による車両の回転運動が利用される,如く構成するのが好ましい。
【0015】また,請求項6に記載の発明のように,前記センサシステムは,センサとして画像記録システムを有しており,前記画像記録システムの非線形コンバータ特性曲線を有する電子カメラにより,記録間隔内で各シリアルの画点が検出されて評価される,如く構成すれば,各画点の任意の記録時点と非同期のセンサデータで作動するので,通常はその画点をシリアルに記録する,非線形特性曲線を有する高解像のビデオカメラを校正することができる。なお,多くの従来の画像記録方法は,いわゆる基礎マトリクスを迂回して校正を実施し,画素の時間的記録(キュービックイメージラスター)と同期センサデータに依存する。
【0016】また,請求項7に記載の発明のように,前記センサシステムのセンサの校正結果が,車両に設置された1つ又は2以上の他のセンサに伝達されて,前記他のセンサが校正される,如く構成すれば,特殊な周辺条件を必要とすることなく,組み込み後に多くの車両センサを共通に校正することができる。特にカメラ,レーダ,車輪センサ,加速度センサなどのセンサの組合せが効果的である。また,ライダーセンサ又は超音波センサに関連して使用することも可能である。
【0017】また,請求項8に記載の発明のように,前記センサシステム内の1又は2以上のセンサが矛盾した測定データを形成した場合に,前記評価ユニットあるいは車両運転者に信号が伝達される,如く構成するのが好ましい。このことにより,特殊な校正装置又は一連の校正作業を必要とせずに,好適かつ効果的に校正することができる。センサシステムあるいは評価システムは,完全にあるいはほぼ自動的に校正して,校正の精度及び信頼性を決定することができる。校正されないあるいはまだ校正されていないパラメータは,無限の不確実性により特徴づけられる。例えば熱的負荷又は機械的負荷より可能となる校正の大まかな変化を認めている。
【0018】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施の形態について,添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚,以下の説明及び添付図面において,同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0019】(第1の実施の形態)まず,図1を参照しながら,第1の実施の形態にかかるセンサシステムの校正方法を説明する。なお,図1は,第1の実施の形態にかかるセンサシステムを搭載した車両を示す断面図である。
【0020】まず,図1に示すように,本実施形態にかかるセンサ装置は,車両1内の車両環境を検出するシステムに一体的に組み込まれており,センサシステムによりセンサ装置の自己校正を実行することができる。
【0021】本実施形態にかかるセンサとして,例えば電子カメラなどの画像記録センサ2,レーダセンサ3,加速度センサ4及び他の車輪センサ5が搭載されている。かかるセンサ2,3,4,5は,機械的変量を検出する放射領域と矢印と共に示されるように,車両1の動きと前方の車両環境を検出するように構成することができる。
【0022】通常の使用条件においては,検出領域内あるいは車両環境内には,対象6あるいは長い検知期間にわたって変形せず全体移動する対象6のグループが存在する。かかる対象として,例えば走行路,ガードレールあるいは他の車両などが該当する。
【0023】センサ2,3,4,5により取得されたデータは,1又は2以上の,校正ユニットを有する評価ユニット7に供給され,車両環境に関する情報を評価し,校正を実行する。評価ユニット7は,通常は車両環境情報を求めるために設置されものであり,校正パラメータの決定に利用できる。
【0024】評価ユニット7は,対象データをメモリ8から取り出して,センサ校正を実行する。評価ユニット7においては,対象データの評価により,メモリ8内の各校正情報が後述する方法で修正される。
【0025】評価ユニット7で校正されて評価された車両環境に関する情報は,アクチュエータ装置9により車両1を調節するために変換される。また,かかる情報は,人間−機械インターフェイス10(例えばラウドスピーカーあるいはディスプレイ)を介して車両運転者に伝達することもできる。アクチュエータ装置9は,例えば車両ブレーキのための操作信号を処理する。
【0026】次に,図2に基づいて,本実施形態かかるセンサシステムの校正方法を説明する。なお,図2は,本実施形態にかかるセンサシステムの第1の校正処理フローを示すフローチャートである。
【0027】まず,図2に示すように,ステップS20では,現実空間内での処理が開始される(ステップS20)。ステップS21では,センサ装置2,3,4,5により現実空間での変量を測定する(ステップS21)。
【0028】一方,ステップS22では,モデル空間内での処理が開始される(ステップS22)。ステップS23では,モデル空間での変量のモデリングをおこなう(ステップS23)。
【0029】次いで,ステップS24では,現実空間の測定量とモデル空間のモデリング量を対比して差を求める(ステップS24)。
【0030】さらに,ステップS25では,上記測定量とモデリング量と差により,エラーベクトルが形成される(ステップS25)。このとき,評価ユニット7内での校正は,エラーベクトルが可能な限り小さくなるように(即ち,モデル空間が現実空間にできるだけ好適に一致するように),実行される。
【0031】画像記録センサ2としてカメラを使用する例においては,空間を画像列上に投影したものである。測定可能な変量は,パラメトリックモデル空間に基づいて決定されると共に,センサ装置2によっても測定される。測定可能な変量のこの2つの決定の差は,エラーベクトルに区分される。
【0032】一方,センサ装置2,3,4,5の対象データから得られた校正データは,ステップS26で,パラメトリックモデル空間のモデルデータと共に,車両環境の記述に応じて,パラメータベクトルも形成する(ステップS26)。このとき,モデルは,空間のパラメトリックな記述の他に,センサ装置2,3,4,5により測定可能な変量上への空間の結像も有している。
【0033】その後,ステップS26内のパラメータベクトルが,ステップS27で示す好適な方法により,エラーベクトルが最小となるように調節される。即ち,エラーベクトルは,実際の測定量と,その時のパラメータベクトルに関連して定められたモデル変量とが,できるだけ好適に良好に一致するように減少される(ステップS27)。
【0034】かかる公知の最小化方法を実行するために,変量の好適な一致についての好適な判断基準は,例えば偏差の平方和である。最小化方法の十分に好適な結果は,例えばいわゆる最小自乗法,他の大まかな評価方法,いわゆる拡張カルマンフィルタ,あるいは同様の数式を使用することができる。かかる全ての公知の方法は,パラメータの精度と信頼性の決定及び測定を許可する。
【0035】本発明は,上記のように,固定対象6あるいは対象6のグループが,車両環境内に存在するという仮定に基づいている。したがって,かかる運動は,3つの回転パラメータと3つの並進パラメータにより完全に示される。さらに,少なくとも2以上の対象6が,例えば車両1の固有運動により車両1に対して相対的に移動すると仮定される。かかる仮定は,十分に満たされるので,短い間隔で,校正の計算あるいは検査を行うことができる。
【0036】次に,図3及び図4に基づいて,本実施形態にかかる対象データの評価方法を,いわゆるピンホールカメラモデルを例に説明する。なお,図3は,いわゆるピンホールカメラモデルとしてのセンサのための簡単な公知の結像モデル示す説明図である。また,図4は,本実施形態にかかるセンサシステムの第2の校正処理フローを示すフローチャートである。
【0037】まず,図3に示すように,センサ装置2,3の校正パラメータは,図2を用いて説明したように,車両環境を示すパラメトリックモデル空間のモデル変量と共に,パラメータベクトルにまとめられる。
【0038】図3に示すモデルは,空間のパラメトリックな記載の他に,センサ2,3により測定可能な変量への空間の結像も有している。カメラ3(あるいは図4のピンホールカメラ)については,画像列への空間の投影である。変量は,パラメトリックモデルから決定されると共に,センサ装置によっても測定される。変量の2つの決定値の差は,エラーベクトルとされる。パラメータベクトルは,好適な方法により,エラーベクトルが最小にされるように(即ち,実際の測定とモデルによりその時のパラメータベクトルとの関連において定められた変量とが,できるだけ良好に一致するように),調節される。
【0039】図3において,投影中心を示す点Cは,センサ2の全ての結像ビームが投影中心(点C)を通過する。投影中心Cを通過する画像平面の垂線は,光学軸(Z軸)である。かかるZ軸は,画像平面Bと画像主要点PBHで交差する。
【0040】画像主要点PBHは,画像列と画像行により形成されるコンピュータ座標システムの座標(x_r,y_r)に対応する,(x_h,y_h)を有する。かかる座標システムのX軸及びY軸は,コンピュータ座標システムの各軸に対して平行に延びている。
【0041】カメラ定数cは,画像主要点PBHからの投影中心の距離を,画像列の2つの画点間の距離で除算した値である。また,軸比sは,画像行の内部の距離と画像列の内部の2つの画点の距離との比である。
【0042】図3に示すピンホールカメラモデルについて,上記4つのパラメータ(x_h,Y_h,c,s)が,校正のいわゆる真性パラメータを形成する。従って画像平面への対象点Poの投影(画像点PB)は,次の式により示すことができる。
【0043】
x_r=x_h+s*c*X/Zy_r=Y_h+c*Y/Z (1式)
【0044】図3に示すように,カメラ(センサ2)は,簡易なピンホールカメラであって,その真性の校正は,パラメータ画像点PBH,カメラ定数c及び画像軸スケーリングを有するものと仮定する。
【0045】レーダセンサ4については,さらに,レーダ座標システムとカメラ座標システムとの間の移動ベクトルTと回転Rが校正される。それによりカメラ座標システム(X,Y,Z)とレーダ座標システム(X_R,Y_R,Z_R)との間に,次のような関係が生じる。
【0046】
(X,Y,Z)+R*((X_R,Y_R,Z_R)−T) (2式)
【0047】センサ2,3の校正パラメータが,求められる校正ベクトルp_kを形成する。例えばカメラ(センサ2)により測定される変量は,静止対象6の特徴点(コーナなど)の画像座標である。一方,レーダセンサ3により測定される変量は,レーダ座標システムでの静止対象6の距離,角度及び相対速度である。ここでは,幾何学的パラメータは,モデルパラメータp_mである。この幾何学的パラメータに基づいて,図4に示す結像モデルによる校正を使用して測定可能な変量が定められる。これは,選択された例については,特徴点の(カメラ−)座標と対象の座標との相対速度である。
【0048】なお,結像モデルは,カメラ(センサ2)については式(1)により,レーダセンサ3については式(2)により与えられる。モデルパラメータp_mは,校正パラメータp_kと共に,パラメータベクトルp(図2中のステップS26参照)を形成する。
【0049】次に,図4に基づいて,本実施形態かかるセンサシステムの校正方法を説明する。本実施形態にかかるセンサシステムの校正処理フローを示す第2フローチャートである。
【0050】まず,図4に示すように,スップS30で,パラメータベクトルpが初期化される(ステップS30)。このとき,例えば画像主要点PBHが任意に画像中心点上にセットされ,カメラ定数cと軸比としては,例えばカメラメーカが示すような概略値が使用される。
【0051】移動ベクトルTと回転ベクトルRは,大略,例えばメートル尺度により測定される。これまでは特徴的な画像点も対象も測定されていないので,モデルパラメータベクトルp_mは,まだパラメータを有していないので測定可能な変量値はブランクとして初期化される。
【0052】次いで,ステップS31で,センサ2,3により測定が実施される(ステップS31)。その後,ステップS32で,特に時間的に先行する測定においてすでに求められている変量が再び求められる(いわゆるトラッキングされる)。(ステップS32)。
【0053】さらに,ステップS33に示すように,測定可能な変量のその時の値が,新しく付加すべき測定可能な変量だけ(例えば新しく画像内へ入った特徴点だけ),拡大される(ステップS33)。トラッキングの際に再検出されなかった変量は,測定可能な変量の量から除去される。
【0054】全ての測定可能な変量について,先行する測定時点のモデルパラメータp_mと車両固有運動が,従属する信頼区間により,公知の標準化方法により決定される。このとき,例えば特徴的な対象Poが最初に測定された後に,信頼区間はさらに少なくとも1つの直線を有する。
【0055】異なる位置から同一の特徴的な対象点Poを複数回測定した後に,モデルパラメータp_mと車両固有運動は,常に,正確に測定されるようになるので,それに応じた信頼区間は短くなる。小さい信頼区間と時間的に安定した座標とを有する対象点Poは,静止対象6に属するものとして特徴づけられて,モデルパラメータベクトルに入れられる。
【0056】反対に,座標が変化することにより,静止していないあるいは静止していないとみなされる点は,モデルパラメータベクトルから除去される。同様に,車両固有運動が,レーダセンサ3により測定された全ての対象6の相対速度から大まかな評価方法により求められ,この相対速度で移動する対象のみが静止対象として受け入れられて,その位置がモデルパラメータベクトルに対応づけられる。
【0057】したがって,いわゆるアクティブシーイング領域に基づく方法とは異なり,本実施形態においては,車両1の意図的な運動は必要とされず,車両1の存在している運動が求められて評価される。
【0058】次いで,ステップS34で,上記結像式(1式)と(2式)を使用して,測定可能な変量が,パラメータベクトルpに基づいてモデル空間から求められる(ステップS34)。
【0059】次いで,ステップS35で,センサ測定による変量値とモデリングによる変量値との差が,エラーベクトルとされる(ステップS35)。モデリング値が校正に従属するので,エラーベクトルも校正パラメータに従属する。
【0060】さらに,ステップS36で,上記説明の調整計算方法により,例えば最小自乗法により,エラーベクトルが小さくなるようにパラメータベクトルpを変化させることができる(ステップS36)。
【0061】次に,ステップS37で,センサ2,3の新しい測定を付加することができるので,全体として反復校正方法が得られる(ステップS37)。このとき,上記処理ステップを実施する際に,校正パラメータが幾何学的な測定にとって良好な値に比較的迅速に収束する。このとき,例えば実際のピッチングあるいはカーブ走行により発生する車両1の回転運動を基礎にすることが,校正の品質にとって特に好ましい。
【0062】以上,本発明に係る好適な実施の形態について説明したが,本発明はかかる構成に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術思想の範囲内において,各種の修正例および変更例を想定し得るものであり,それらの修正例および変更例についても本発明の技術範囲に包含されるものと了解される。
【0063】
【発明の効果】本項記載の発明では,新たに補助的手段を設けることなく,センサシステムを自動的に校正できると共に,一度獲得した校正を後に自動的に検査することができる。また,従来はに独自に実施されていた,車両の特殊運動に対する校正も省略することができる。これは,駆動における車両の固有運動と,三次元空間の対象は通常固定されており,全体として移動し,比較的長期間にわたりセンサの校正が安定している,という知見を利用している。センサ技術の校正は,例えば低速で変化するなど準静的である。実際の使用においてエラー機能をもたらす恐れのある,他の車両運転手の通常走行(例えば車線維持)に関する発見的な仮定も,この方法にとっては不要である。本項記載の発明では,測定値を正確に検出する校正をおこなうことができる。実験室レベルの校正で必要であった,いわゆる真実の校正に対する要請は,ここでは余り重要ではない。製造技術的には,センサの校正は,機械的負荷又は熱的負荷に敏感であるため,未校正のセンサの組み込みが特に好ましい。したがって,製造が簡単になるだけでなく,組み込みの影響やセンサあるいは車両の他の変化の影響を,簡単な校正方法で後に考慮することができる。さらに,校正をいつでも検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態にかかるセンサシステムを搭載した車両を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるセンサシステムの第1の校正処理フローを示すフローチャートである。
【図3】いわゆるピンホールカメラモデルとしてのセンサのための簡単な公知の結像モデル示す説明図である。
【図4】第1の実施の形態にかかるセンサシステムの第2の校正処理フローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両
2 画像記録センサ
3 レーダセンサ
4 加速度センサ
5 車輪センサ
6 対象
7 校正ユニット
8 メモリ
9 アクチュエータ装置
10 人間−機械インターフェイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両のコース推移内の対象検出及び評価を実行するセンサシステムの校正方法であって,前記センサシステムにより対象の特徴的なデータを検出する工程と,前記車両の固有運動を考慮して静止対象あるいは準静止対象として認識されたデータを校正ユニットに供給する工程と,前記対象の実測データとモデルデータの偏差をエラーベクトルとして求める工程と,前記偏差を最小にする方向でモデルデータを補正する工程と,を有することを特徴とする,センサシステムの校正方法。
【請求項2】 予め設定されるパラメータによる初期化行程の後に,対象データの第1の検出を実行し,モデルデータとして格納する工程と,周期的に連続する全ての測定において,各々実際の対象データが従前に検出され格納されているモデルデータと共に校正ユニットで処理され,エラーベクトルを形成する工程と,を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項3】 校正ユニットでのデータ処理の間に,先行する測定で取得された対象データが選択され,再検出されない対象データは消去され,各新たに付加する対象データが取り入れられ,かつ,異なる車両位置で繰り返し測定した後,信頼区間の縮小を有する対象データが,静止対象あるいは準静止対象に属するデータとして特徴づけられる,ことを特徴とする請求項2に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項4】 互いに連続する対象データから,略同一の相対速度の対象及び車両の固有運動が求められ,かつ,前記略同一相対速度の対象に対応する対象データが,静止対象あるいは準静止対象に属するデータとして特徴づけられる,ことを特徴とする請求項2又は3に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項5】 前記車両の固有運動として,ピッチング及び/又はカーブ走行による車両の回転運動が利用される,ことを特徴とする請求項1,2,3あるいは4項のうちいずれか1項に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項6】 前記センサシステムは,センサとして画像記録システムを有しており,前記画像記録システムの非線形コンバータ特性曲線を有する電子カメラにより,記録間隔内で各シリアルの画点が検出されて評価される,ことを特徴とする請求項1,2,3,4あるいは5項のうちいずれか1項に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項7】 前記センサシステムのセンサの校正結果が,車両に設置された1つ又は2以上の他のセンサに伝達されて,前記他のセンサが校正される,ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5あるいは6項のうちいずれか1項に記載のセンサシステムの校正方法。
【請求項8】 前記センサシステム内の1又は2以上のセンサが矛盾した測定データを形成した場合に,前記評価ユニットあるいは車両運転者に信号が伝達される,ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6あるいは7項のうちいずれか1項に記載のセンサシステムの校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−227982(P2001−227982A)
【公開日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−389874(P2000−389874)
【出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG