説明

センサネットワークシステム、組織行動情報収集方法、組織行動分析サーバ及び携帯用センサノード

【課題】ユーザに携行させた携帯用センサノードによりユーザの行動情報を収集し、その物理的なインタラクションを収集・分析するための計測システムにおいて、センサノードのID情報と、そのIDを割り当てたユーザとの対応付け作業を大幅に効率化したセンサネットワークシステムを提供する。
【解決手段】近接検知部と識別用IDを有する携帯用センサノードをユーザに、両者の対応付けを行うことなく割り当ててユーザに携行させ、所要期間収集したユーザ行動情報と、ユーザスケジュール、勤怠管理データ等のユーザ情報とを比較して、携帯用センサノードIDと、ユーザとの関連性を自動的に判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば組織の就労者に携帯用センサノードを携行させ、各所に配置した設置用センサノード等を介して就労者の行動情報を収集し、その物理的なインタラクションを収集・分析するためのセンサネットワークシステム及び行動情報収集方法、それらに使用するサーバ、センサノードに関する。
【背景技術】
【0002】
組織における就労者(以下、「ユーザ」又は「利用者」と称する)の行動情報を取得・分析して、経営の改善やユーザ自身の振り返りに利用するサービスについての研究が行われている(非特許文献1)。これは、行動情報の中でも特に、ユーザ相互間の物理的インタラクションは組織の創造性、あるいは生産性に重要な影響を与えていると考えられるからである。ここで、物理的インタラクション(interaction)とは、ユーザ同士の会話、あるいは会議に同席する頻度等、他のユーザとの接近頻度等の物理的なインタラクション(相互作用、相互交流等)を広く意味する。
物理的インタラクションの収集・分析・表示を行うための計測システムとしては、例えば、場所を検知するRF(Radio Frequency)IDタグや音声マイクセンサ、加速度センサ等の利用者の言動・行動を記録する行動情報収集装置(センサ端末、センサノードとも云う)をユーザに携行させ、施設内の複数箇所にRFIDタグから発せられる無線信号を受信する受信装置を配置し、そのデータをデータ収集・分析用サーバに伝送するよう構成したものが知られている。
【0003】
このようなシステムに関して、例えば特許文献1には、センサ端末を身につけた人物間のインタラクション(相互交流)データを表示する装置について開示されている。
この文献では、実際に重要な意志決定や交渉のように、組織を動かすための決定はface−to−faceのインタラクションで行うことが最も効果的であるとの観点から、特に、組織形成メンバの対面状態と活動に関するセンシングを常時、大量に行い、その分析・評価を行うための、インタラクションデータ表示装置、処理装置及び表示方法が開示されている。
また特許文献2には、固有IDを割り当てた発信装置に音声検出センサを付加し、利用者の発話情報を合わせて収集することによって、例えば、当人が会議中に発話中であるか否かを判断し、発話中の呼出を防止するように利用できる発話状態検出装置および方法が提案されている。
更に、特許文献3には、センサとネットワークを利用したシステムにおいて、センサノードを装着したユーザの個人認証を行うことを目的として、センサノードに加速度センサを含め、加速度センサから得られる情報を収集することによってユーザの身体的特徴、例えば歩幅や水平移動速度等を算出して個人認証を行う技術、更には、加速度センサを使用して、ユーザが移動した際の位置情報の履歴情報を管理してビジュアライズすることで、ユーザの位置情報をリアルタイムに確認できる個人認証システムが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、組織改革の効果や進展を「業績」ではなく「行動」の変化として捉えることにより、改革施策の効果を迅速に把握することを目的としたリアル組織行動分析サービスシステムに関する研究が発表されている。
なお、これらのセンサネットワークシステムにおいて、センサノード同士が、直接無線通信を行う(アドホックな無線通信)ことにより、センサノードにおいてユーザ間の物理的なインタラクションを計測し、その情報をデータ収集サーバへ送信すれば、データ収集サーバにおいてユーザ間の近接状態を検出する場合に比べて、サーバのインタラクション分析処理に関する負担が大幅に軽減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなセンサネットワークシステムでは、ユーザ等の行動情報を計測するためには、各ユーザにセンサノードを割り当てて配布する際に、どのユーザにどのIDをもったセンサノードを割り当てたかを明確に関連付けたデータを作成して管理する必要があるが、従来、それはすべて手作業で行われていた。
小規模組織であればユーザとセンサノードID情報との関連付けを手作業で済ますことも可能であるが、大規模組織で物理的インタラクションを計測するには、大勢のユーザにセンサノードを配布することが必要であり、配布時の関連付作業に時間とコストを要するという問題があった。配布したユーザにセンサノードのID情報を登録させる方法も考えられるが、ユーザがID情報を間違えて登録すると、組織における物理的インタラクション情報が不正確になり、信頼性に欠けたものとなる。
更に、一旦配布し、ユーザが携帯中のセンサノードが故障した場合には新規のセンサノードに交換する必要があるが、従来のシステムでは、その際にも、新規センサノードにユーザに割り当てたID情報を再設定するか、あるいは、新たなセンサノードIDとの対応付けを行う作業についても、煩雑な手作業が強いられるものであった。
特に、センサネットワークシステムの使用場所が遠隔地である場合は、システム担当者が故障したユーザが属する組織へ出向いてセンサノードを交換するとともに、センサノードのID情報とユーザ情報との関連付け作業を行うか、故障したセンサをメンテナンスセンタに搬送して修理を行うことになるので、故障時の復旧コストが増大するのみならず、復旧完了時までに要する長期間にわたってそのユーザの行動情報が計測できなくなるという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ユーザ等の利用者に携帯用センサを携行させ、各所に配置した設置用センサノードを介してユーザ等の行動情報を収集し、その物理的なインタラクションを収集・分析するための計測システムにおいて、センサノードのID情報とそのIDを割り当てたユーザ(センサノードを割り当てたユーザを特定する社員番号等の情報と考えて構わない)とを自動的に関連付ける機能を付加することによって、ユーザにセンサノードを配布する際のセンサノードID情報とユーザとの関連付け作業を自動化したセンサネットワークシステムを提供することを目的とする。
また、センサノードのID情報とユーザ情報とを自動的に関連付ける機能を提供することによって、センサノードが故障した際などの交換作業時にも手動による関連付け作業が必要なく、簡易に、しかも迅速に復旧作業が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、該無線信号に含まれる検知した携帯用センサノードの識別情報を検出する近接検出手段と、固有の識別情報を保持する識別情報保持手段と、検知した携帯用センサノードの識別情報及び検知した時間とを対応付けた情報である行動情報を保持するデータ保持手段と、を有する複数の場所に設置された設置用センサノードと、前記複数の設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するユーザ行動情報収集手段と、ユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報を保持するユーザ情報保持手段と、を有し、前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付ける識別情報関連付け手段と、を備えたセンサネットワークシステムを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記携帯用センサノードは、前記設置用センサノード及び他の携帯用センサノードとの間で識別情報の送信及び/又は受信する手段と、受信した他のセンサノードの識別情報と受信時刻情報とを記憶する手段と、加速度センサ手段と、該加速度センサ手段にて検出した加速度情報を記憶する手段と、記憶した他のセンサノード識別情報及び受信時刻情報と、前記加速度情報と、を外部端末に送信する手段と、を備えたセンサネットワークシステムを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のセンサネットワークシステムにおいて、前記設置用センサノードを設置した場所情報と、各設置用センサノードが保持している識別情報と、を対応付けて保持する設置場所情報保持手段を含むセンサネットワークシステムを特徴とする。
また、請求項4の発明は、複数の場所に設置された設置用センサノードと、ユーザ行動情報収集手段と、ユーザ情報保持手段と、識別情報関連付け手段と、を有するセンサネットワークシステムにおける組織行動情報収集方法であって、前記設置用センサノードが、ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、前記無線信号に含まれる前記検知したセンサノードの識別情報及び検知した時間とを対応付けた情報である行動情報を保持するステップと、前記ユーザ行動情報収集手段が、複数の前記設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するステップと、識別情報関連付け手段が、前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付けるステップと、を備えた組織行動情報収集方法を特徴とする。
【0009】
また、請求項5の発明は、ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、該無線信号に含まれる検知した携帯用センサノードの識別情報を検出する近接検出手段と、固有の識別情報を保持する識別情報保持手段と、検知した携帯用センサノードの識別情報と検知した時間とを対応付けた情報を示す行動情報を保持するデータ保持手段と、を有する複数の場所に設置された設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するユーザ行動情報収集手段と、前記ユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報を保持するユーザ情報保持手段と、を有し、前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付ける識別情報関連付け手段と、を備えた組織行動分析サーバを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサネットワークシステム、請求項4に記載の組織行動情報収集方法、又は請求項5に組織行動分析サーバにおいて使用される携帯用センサノードを特徴とする。
また、請求項7の発明は、無線信号を検知可能な設置用センサノードにより近接を検知されて前記無線信号に含まれる識別情報を検出されて、前記識別情報を、検知された時間と対応付けた行動情報としてユーザ行動情報収集手段に保持され、ユーザ情報保持手段に保持されるユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報と、前記行動情報と、に基づいて、前記識別情報を、該携帯用センサノードを携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定される携帯用センサノードを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明においては、ユーザ等に携帯用センサを携行させ、これらの携帯用センサノードから、又は、各所に配置した設置用センサノードを介してユーザ等の行動情報を収集し、その物理的なインタラクションを収集・分析するための計測システムにおいて、携帯用センサノード(のID情報)とユーザ(情報)とを自動的に関連付ける機能を付加したので、ユーザにセンサノードを配布する際には、両者の関連付けを行う必要が無く、所要期間ユーザ等の行動情報を収集することによって、自動的にこれらの関連が後付けされるため、センサノード(ID情報)とユーザ情報(ユーザID等)の関連付け作業が大幅に効率化したものとなり、センサネットワークシステムの導入時の運用コストを削減することができる他、システム立ち上げに要する時間の短縮効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態例に係るセンサネットワークシステムを説明する概要構成図。
【図2】本発明において使用するセンサノードの構成例を示すブロック図。
【図3】本発明のセンサネットワークシステムを使用したオフィスレイアウトの実施形態例を説明するための図。
【図4】本発明における設置用センサノード(基地局)の一例を示す構成概要図。
【図5】本発明にける設置用センサノードIDと設置場所との対応例を示す図。
【図6】本発明におけるユーザ情報保持手段に記憶されるユーザ情報データ一の例を示すユーザスケジュール情報図。
【図7】本発明におけるユーザ情報の一例として示すユーザの勤怠管理情報データ図。
【図8】本発明においてデータ収集サーバに蓄積されているユーザの行動情報(近接データ)の一例を示す図。
【図9】本発明においてデータ収集サーバに蓄積されているユーザの行動データ情報(加速度センサデータ)の一例を示す図。
【図10】本発明においてデータ収集サーバに蓄積されているユーザの行動情報(音声データ)の一例を示す図。
【図11】本発明の実施形態に係るセンサノードIDとユーザ情報との関連付けを行う処理の一例を示す説明図。
【図12】本発明におけるセンサノードIDとユーザ情報との関連付けの例を示す図。
【図13】本発明におけるユーザ行動情報とユーザ情報(スケジュール)からユーザを判定する処理例を示す説明図。
【図14】本発明においてユーザ行動情報から作成されたユーザ行動履歴の時系列情報を示す図であり、(a)はユーザ行動情報、(b)、(c)、(d)は夫々、センサノードIDが001、002、003に関する時系列情報を示す図。
【図15】本発明においてユーザとセンサの度IDとの関連付け処理を行うための時系列図であり、(a)はスケジュールから作成した時系列図、(b)、(c)、(d)は夫々、関連するセンサノードID001、002、003についての行動履歴の時系列図。
【図16】本発明において算出した関連ユーザ情報と近接ID情報との一致率の一例を示す図であり、(a)、(b)、(c)は夫々、センサノードIDが001、002、003の一致率の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るセンサネットワークシステムは、センサノードを各ユーザに配布、又は交換する際に、センサノードの識別情報とそのセンサノードを携帯するユーザとを関連付けする処理において、以下の特徴を有する。
ユーザとそのユーザに携行させる携帯用センサノードとの識別情報との対応付けがなされていない状態で各ユーザに割り当てるとともに、例えば数日乃至一週間程度の所要期間、携帯用センサノードを携行させながら個々のセンサノードの動き情報(行動情報)を、各所に配置した設置用センサノード等を介して収集する。
この収集したセンサノードの動き情報は、それを携行したユーザの行動情報である。また、ユーザが自分のユーザ情報としてセンサネットワークシステム内の所要のデータベースに登録しているスケジュール情報、会議情報、勤怠情報、出社・退社時刻等から、各ユーザの特徴量情報(そのユーザを特定するための特徴的な行動情報)を算出する。
この状態において、上記一所要期間収集された各ユーザ行動情報と、ユーザの特徴量情報とを比較することによって、携帯用センサノード(の識別情報)とユーザ(情報)とを自動的に対応付ける。
すなわち、本発明のセンサネットワークシステムにおける識別情報関連付け手段は、
ステップ(1)組織内のシステム等で取得されているユーザの履歴情報(スケジュール情報:会議の場所時間、外出情報や勤怠情報:出社、退社情報)からユーザの特徴量情報を算出し、
ステップ(2)所要期間ユーザが携帯して行動する携帯用センサノードから得られるユーザの行動情報を計測し、
ステップ(3)上記ステップ(1)の特徴量情報とステップ(2)の行動情報とを比較することによって携帯用センサノードを携帯しているユーザ(情報)を特定(ユーザを推定)し、
ステップ(4)上記ステップ(3)で特定されたユーザ情報を参照して、携帯用センサノードの識別情報とユーザ情報とを自動的に関連付けするものである。
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明に係るセンサネットワークシステムの一実施態様例を示すシステム概要図である。
この例に示すセンサネットワークシステムは、行動情報の計測対象者となるユーザ(就労者)1、2、3夫々が携行する携帯用センサノード4、5、6と、PC端末7、8、9と、データ収集サーバ10と、ユーザ情報サーバ11と、データ分析及び識別情報関連付け処理サーバ(以下、識別情報関連付け処理サーバと略称する)12と、設置用センサノード13、14、15を備えている。
これらは、図示を省略したLAN(Local Area Network)やインターネット等の有線通信手段や無線LAN等の無線通信手段により適宜接続されている。
なお、携帯用センサノード4、5、6は、互いに他の携帯用センサノード及び/又は、設置用センサノード13、14、15と近接検知部によって、互いの識別情報あるいは蓄積したインタラクション情報のやり取りを行うことができるようになっている。
【0014】
携帯用センサノードと設置用センサノードとの間の信号授受方法は種々のものを適用し得る。
例えば、携帯用センサノードから間欠的に送信されるセンサノードの識別情報信号を設置用センサノードが受信し、データ収集サーバ10に伝送する方法がある。また逆に、設置用センサノードから間欠的に送信する設置場所情報とセンサ識別情報を携帯用センサノードが受信して内部メモリに保存し、別途用意したデータ収集用手段を介して、データ収集サーバ10に伝送するようにしてもよい。
また、携帯用センサノードと設置用センサノード間の情報授受処理のトリガとしては、例えば、電力供給に負担の少ない設置用センサノードから間欠的(周期的)に質問信号を送信し、その質問信号が所定値レベル以上で到達する領域に入った携帯用センサノードが自分の識別情報や、自己のメモリに保存している情報を応答信号として送信し、設置用センサノードはこれらの情報をデータ収集サーバ10に伝送するようにしてもよい。携帯用センサノード同士が互いに情報の授受を行う場合は、双方が、間欠的に自己の識別情報を含む質問信号を送信しながら移動し、これを受信した側が、自己の識別情報を送信するようにしてもよい。
この構成において、ユーザ1、2、3夫々が携行する携帯用センサノード4、5、6が互いに他の携帯用センサノードや設置用センサノードと通信することによって、既に説明した各特許文献や非特許文献等で説明されているように、あるいは後述するように、これを携行するユーザの行動情報を生成し、その行動情報はデータ収集サーバ10へ送信され保管される。
【0015】
PC端末7、8、9は、各ユーザが組織内で業務を行うためにユーザ情報サーバ11にLAN等で接続されおり、このPC端末7、8、9で作成された各ユーザのスケジュール情報や、出勤時間、退社時間等の業務勤怠情報などのユーザ情報がユーザ情報サーバ11へ送信され保管される。なお、PC端末7、8、9は、ここではパーソナル・コンピュータ(Personal Computer)を例示するが、情報入力機能、LAN等の無線通信が可能な通信機能、及び、PC端末装置7、8、9の機能を満たすものであれば、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話であっても良い。
このようにしてデータ収集サーバ10に保管された行動情報と、ユーザ情報サーバ11に保管されたユーザ情報は、識別情報関連付け処理サーバ(データ分析及び識別情報関連付け処理サーバ)12へ送信される。
識別情報関連付け処理サーバ12は、送信された行動情報とユーザ情報を比較するとともに、携帯用センサノードの識別情報とユーザ情報(ユーザの識別情報)との関係を検出することによって、センサノードを携行しているユーザを推定し、そのセンサノードの識別情報とユーザ(情報)との関連付け処理を自動的に行う。
センサネットワークシステムを構成するセンサノード装置4、5、6、PC端末装置7、8、9、データ収集サーバ10、ユーザ情報サーバ11、識別情報関連付け処理サーバ12の有する各手段は、各装置又はサーバが備えるCPUが、ROM(Random Access Memory)、又はHDD(Hard Disc Drive)に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現される形態とするか、あるいは、各手段に関する処理をハードウェアで実現するように構成されている。
【0016】
図2は、ユーザ等が携行する携帯用センサノード4、5、6の実施形態例を示す概要構成図である。
この例に示す携帯用センサノードは、オフィスで一般的に使われている社員証のようにユーザの首に紐で吊り下げられる形態であっても、クリップ等によって胸の辺りに取り付けられて使用される形態であっても良い。この携帯用センサノード4(5、6)は図2に示すように、近接検知部(近接検知手段)21、識別情報保持部22、加速度検出部23、データ送信部24、RTC(Real-Time Clock)25、データ保持部26、電池部27を含んで構成される。
近接検知部21は、無線通信モジュールを備え、無線信号の届く範囲内に存在する他のセンサノード(携帯用、設置用)と互いの識別情報を無線パケット信号として送受信することにより、互いの接近を検知する機能を有している。所定距離以内に近接したか否かの判断はこの例に限定されないが、受信した無線パケットの信号強度が閾値より大きいか否かを判定するのが一般的である。
【0017】
識別情報保持部22は、各々固有の識別情報を保持する機能を有し、割り振られたユーザ等を特定・判別する識別子として使用される。本発明では、携帯用センサノードの識別情報とユーザ(情報)とを自動的に関連付けるので、携帯するユーザに依存することなく、単にセンサノード夫々に割り振ることが可能であり識別情報の管理が簡素化できる。
加速度検出部23は、加速度センサモジュールを備え、3軸の加速度センサでユーザの移動方向や速度情報等の動き情報を計測する機能を有するもので、この例では、少なくともユーザが一定場所に留まっているか否かを判断するのに利用する。
データ送信部24は、後述する設置用センサノード(端末装置)にデータ保持部26が保持するデータを送信する機能を有する。このデータ送信部24が備える通信インタフェースは、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、WiFi等の標準化された無線通信インタフェース、又は、標準化されていない他の無線通信インタフェースを使用可能であるが、USB(Universal Serial Bus)などの有線の通信手段であっても良い。
RTC25は、現在時刻を計測するRTCモジュールである。
【0018】
データ保持部26は、図示を省略した音声検知部で検知した音声データ、加速度検知部23で検知したユーザの動き情報を表す加速度センサデータ、近接検知部21で検知した他のセンサノードの識別情報や、検知した時刻情報等を記録するデータ保存機能を有する。また、場合によっては、近接検知部21により検知した別の行動情報収集装置の識別情報を検出した時刻情報とともに記録する機能を付加することもできる。
なお、特許文献4に開示されているように、対面検知手段を含み、携帯用センサノード同士が対面状態にあることを検出して記録するものであってもよい。また、近接検知部21と、データ送信部24とは、個別の手段として構成する場合を説明したが、両者を同一の無線通信手段とすることも可能であり、その場合は、夫々の目的を達成するように、例えば、信号形式や送信出力を適宜切替える等の手段を用いることもできる。
【0019】
電池部27は、センサノードの各部に電源を供給するための電池であり、二次電池を充電するための充電機構を備えるもの、あるいは太陽電池による電力チャージ機能を有するものであっても良い。
なお、携帯用センサノードは計測対象となるユーザ等が携行すればよいので、社員証に一体に組み込まれたもの、あるいは、各人が肌身離さず持ち歩くまでに普及した携帯電話やPDA等の携帯通信機器に携帯用センサノード機能を組み込んだもの、更には、そのような携帯機器に携帯用センサノード機能ユニットを後付けする形態であっても良い。
特に、携帯電話機は、相当高機能のCPUやメモリ機能、近接無線通信機能を備えることが可能であるので、本発明に係る携帯用センサノード、あるいは、後述する設置用センサノードとして利用する上で適している。その場合、携帯電話機が備える公衆通信機能をそのまま利用することも可能である。
【0020】
図3は、以上説明したセンサネットワークシステムを用いて、実際にユーザ(就労者)の動向調査を行う場合のオフィスレイアウトの例を示す概要図である。
この例では、複数のユーザ用机が置かれた事務室であるA−301居室と、必要に応じて使用される二つのイベント会場であるA−302会議室、A−303会議室がある場合を示しており、図中の符号31はA−302会議室の出入口、符号32はA−303会議室の出入口、符号33はA−301居室の出入口である。
更に、A−302会議室のドア31の内外に第1の設置用センサノード34と第2の設置用センサノード35が、A−303会議室のドア32の内外に第3の設置用センサノード36と第4の設置用センサノード37が、A−301居室のドア33の内外に第5の設置用センサノード38と第6の設置用センサノード39が、夫々、出入口のドアを挟むように設置されている。
ここで、設置用センサノード34乃至39は、図示はしないが、図2に示した携帯用センサノードと同様に近接検知部(近接検知手段)21、識別情報保持部22、加速度検出部23、データ送信部24、RTC(Real-Time Clock)25、データ保持部26、電池部27を含んで構成され、所定範囲以内に接近した携帯用センサノードから送信される無線信号を、近接検知部21を介して受信し、信号に含まれる夫々の携帯用センサノードに固有の識別情報、場合によっては携帯用センサノード内蔵のメモリに蓄積された各種行動情報を検出して、データ収集サーバ10にデータ送信部24から(無線または有線伝送手段を介して)伝送する。なお、携帯用センサノードと設置用センサノード間の情報の授受に関しては、その他の方法が有り得ることは既に説明したとおりであるので、適宜、利用することができる。
なお、設置用センサノードでは、加速度検出部23は必須の構成ではないため、適宜省略することができる。また、電池部27を固定用の電源としても良い。
【0021】
図4は、図1の本発明のセンサノードシステムの構成例において示した設置用センサノード13乃至15を、PC端末40とセンサノードにより無線基地局として構成した例を示す図である。
この例では、PC端末40とセンサノード34をUSBケーブル41で接続することにより設置用センサノードを構成している。基地局となるPC端末40にはUSB接続された基地局用(設置用)センサノード34に保存されたデータを受け取り、データ収集サーバ10に送信するためのソフトウェアをインストールしておく。
ここでは、PC端末40と設置用センサノードの接続例としてUSBケーブルを使用した例を記載したが、USBケーブルの代わりにLANケーブルを使用しても良いし、設置用センサノードに無線LANモジュールを取り付けて、直接、データ収集サーバへ送信する形態にしても良い。設置用センサノードはユーザが携帯する携帯用センサノードのデータ送信部から送信された行動情報を受信し、保存する。PC端末40は設置用センサノードに保存されたユーザの行動情報をデータ収集サーバ10へ送信する。
このように構成すれば、電源供給関係を若干変更することによって、設置用センサノードと携帯用センサノードをほぼ同一のセンサノードとすることができる。即ち、携帯用センサノードを設置用センサノードにも使用できるので、量産効果により設備コストの低減が可能である。
【0022】
図5は、図3及び図4に示したオフィスレイアウト例における設置用センサノード34乃至39の識別情報と、その設置場所との対応データベースの一例を示す図である。
なお、識別情報としては、各設置用センサノードにユニークに割り当てられた文字列(ID情報)が使用出来、また、携帯用センサノードの識別情報についても、同様のID情報を使用できる。
このデータの設置用センサノードに登録されているID情報(S001乃至S006のID情報:設置用センサノードID番号には「S」を付して、携帯用センサノードIDと区別する)は、各部屋の出入口等に設置される設置用センサノード34乃至39夫々の識別情報保持部に記録されたID番号情報であり、場所情報は、設置用センサノードが設置された部屋情報である。設置用センサノードのID情報と、場所情報との対応付けは、設置用センサノードを設置した際に設置担当者(ユーザ)がデータベースに場所情報を入力することにより対応付けられる。
すなわち、設置用センサノードのID情報が分かれば、その設置場所が分かるので、ID情報の授受のみでユーザ行動情報を収集する目的を達成可能である。
【0023】
図6は、ユーザ情報サーバ11のデータベース(DB)に蓄積されているユーザのスケジュール情報の一例を示す図である。
この例では、スケジュール情報はユーザ情報、時間情報、場所情報、関連ユーザ情報から構成される。ユーザ情報はこの例では、社員番号などのID情報形式で保存され、時間情報はユーザのスケジュールの開始時間と終了時間として保存されている。場所情報はスケジュール情報に記述されたイベントが開催される会議室等の場所情報が保存され、例えば、会議を行うスケジュールであれば会議の開催場所が登録される。関連ユーザ情報は当該ユーザのスケジュールにおけるイベントに同席する他のユーザ情報を示すもので、他の関連ユーザ情報も社員番号などのID情報形式で登録される。
【0024】
図7は、ユーザの勤務管理情報の一例を示す図である。
このユーザの勤務管理情報は、図示を省略した組織内サーバのデータベースに格納され、ユーザ情報サーバ11を介して本発明のセンサネットワークシステムに供給されるか、若しくは直接ユーザ情報サーバ11のデータベースに蓄積されている。勤務管理情報はユーザ情報、日程情報、開始時刻情報、終了時刻情報から構成される。ユーザ情報は社員番号などのID情報形式で保存され、日程情報、開始時刻情報、終了時刻情報は実際の勤務実績に基づいてユーザが入力した勤怠管理情報から生成される。
これによれば、組織において日常作成・管理されるスケジュール情報又は勤怠管理情報をユーザ情報として利用することができるので、本発明の実施に際して、特別にユーザ情報を構築する手間や労力が少なくなる。
【0025】
図8は、データ収集サーバ10のDBに蓄積されているユーザの行動情報(近接データ)の一例を示す図である。
この行動情報は、実際にユーザが携帯用センサノードを携行し、その情報が設置用センサノードを介して収集された結果得られた情報である。この実施形態に係る近接データ情報はID情報、時間情報、近接ID情報から構成され、ID情報は携帯用センサノードの識別情報保持部に保持されたID番号を設置用センサノードにより読み出したものが保存され、時間情報は設置用センサノードにおいて、近接した携帯用センサノードから送信される無線電波を受信した時間情報が保存される。近接ID情報には、近接した他の携帯用センサノードのID情報が配列形式で保存される。即ち、ユーザと同時に行動した他のユーザのIDが記録される。
【0026】
図9は、データ収集サーバ10のDBに蓄積されているユーザの行動情報のうちの加速度センサデータの一例を示す図である。
この例に示す加速度情報はID情報、時間情報、加速度センサ情報から構成される。ID情報には携帯用センサノードの識別情報保持部に保持されたID番号が、時間情報は携帯用センサノードの加速度センサから加速度センサ値を検出した際の時間情報が、加速度センサ情報は加速度センサで検知した3軸の加速度センサ値が、夫々保存される。
【0027】
図10は、データ収集サーバ10に蓄積されたユーザの行動情報の一つとして蓄積された音声情報データの一例を示す図である。音声情報は、携帯用センサノードID情報、その音声を検出したときの時間情報、音声情報を記録した音声ファイル情報から構成される。ID情報は他のデータと同様に携帯用センサノードに保持されたID番号であり、音声情報を保存するファイルの一例としてWave形式のファイルが考えられるが、他のものでも構わない。なお、音声センサで検出する目的が単に、当該ユーザが発言中であるか否かを判断するものである場合は、音声ファイルを保存することなく、発言中であるか否かを示すデータを保存するのみでも構わない。
【0028】
図11は、センサノードのID情報とユーザ(即ち、ユーザ情報)との関連付けを行う処理の一実施例を示す説明図である。
この例に示す処理は、ステップS11では、センサノードからユーザの行動情報を計測する。行動情報としては、上述した近接データ、音声データ、加速度データを計測する。近接データはセンサノードの近接検知部によって近接する他のセンサノードのID情報が検出できるので、ID情報からセンサノードを携行しているユーザが誰と近接していたかを計測できる。また、図3のオフィスレイアウト図に示すように部屋の出入口などにセンサノードを設置することにより、ユーザが部屋の出入口付近に近接したことが計測できるので、ユーザがどの部屋にいるかを知ることができる。音声データはセンサノードの音声検出部によってユーザが発話した際の時間情報が記録される。
加速度データはセンサノードの加速度検出部によってユーザの動き情報を検出するもので、この例では、加速度データに基づいてユーザが移動している状態であるか、席などに座り停止している状態であるかを計測できる。
【0029】
ステップS12では、ステップS11にて各センサノードで計測したユーザの行動情報をデータ収集サーバへ送信する。行動情報の送信方法としては、図4に示すPC端末とセンサノードを接続することにより作成した基地局(設置用センサノード)を経由して、センサノードで計測された行動情報をデータ収集サーバ10に送信しても良いし、ユーザが携帯している携帯用センサノードをPC端末にUSBケーブルで直接接続して、携帯用センサノードの内蔵メモリに保存された行動情報をデータ収集サーバ10へ送信する形態にしても良い。この形態について例えば、特開2008−301071号公報にセンサノードの電供給方法に関する工夫が開示されているので参照することができる。
ステップS13では、ユーザPC端末7、8、9で入力されたスケジュール情報をユーザ情報サーバ11へ送信する。上述したようにスケジュール情報はユーザが入力することにより生成されるが、もし、社内システムサーバ等でスケジュール情報が共有されている場合には、その蓄積されたスケジュール情報をユーザ情報サーバへ送信する。ユーザ情報サーバ11のデータベースに保存されたスケジュール情報は、例えば、既述の図6に示すような形式で保存される。
ステップS14では、データ収集サーバ10に保存されたユーザの行動情報とユーザ情報サーバに11保存されたユーザ情報を、ID関連付け処理サーバ12に送信する。
ステップS15では、行動情報からユーザ情報と一致するユーザを検出するが、その詳細なユーザ検出処理例に関しては後述する。
ステップS16では、検出されたユーザ情報と携帯用センサノードのID情報とを関連付けるために関連付け処理を行って、データ分析及び識別情報関連付け処理サーバに保存する。関連付け処理を行った結果、携帯用センサノードのID情報とユーザ情報とを関連付ける図12に例示するようなデータベースが得られる。この図12に基づけば、携帯用センサノードのID情報とユーザ情報とを自動的に関連付けを行うことができる。
【0030】
センサノードのID情報とユーザ情報とを自動的に関連付けされることで、センサノードが故障した際などの交換作業時にも手動による関連付け作業が不要となるので、担当者が関連事業部門に出向いて手作業によるセッティング処理も不要となり、復旧作業コストが低減される。しかも迅速に復旧作業が可能となり、センサノード故障による行動情報の欠損時間を短縮する効果もある。
更に、センサノードの交換作業が簡易化されることから、センサノードにデータを蓄積するようなシステム構成で計測を行う際には、センサノード端末のメモリ装置の蓄積データ記録容量が限界に達したときに、適宜、新規のセンサノードに交換することが容易となるので、センサノードの蓄積データ記録容量を気にすることなく計測時間を延長できる。なお、上述したセンサノード故障時の交換の場合も同様であるが、交換用のセンサノードは分析対象となる組織に予め所要数量保管しておき、必要に応じて交換すると云った運用も可能となる。
また、携帯用センサノードの管理が極めて簡素化され、その製造や供給方法、センサネットワークシステムの維持管理、保守・メンテナンス等の広い範囲に亘って効率的なシステム運用が可能となる。
【0031】
図12は、携帯用センサノードID情報とユーザ情報との関連付けデータベースの一例を示す図であり、センサノードのID情報は、携帯用センサノードの識別情報保持部に保持されたID番号情報、ユーザ情報はユーザ情報サーバ11に保存されたユーザを特定する社員番号などのID情報である。
【0032】
図13は、ユーザ行動情報とユーザ情報であるスケジュール情報とから、ユーザを特定(推定)する処理の一例を示す説明図である。
この例では、加速度センサを使用することにより、ユーザが会議室に滞在した時間や、同席した他のユーザの存在等を検出して、ユーザと携帯用センサノードIDとの対応決定精度を向上させている。
図13においても図11に示した例と同様に、携帯用センサノードから計測されたユーザの行動情報とユーザのスケジュール情報とを比較して一致するユーザ情報を検出するものである。
【0033】
ステップS21では、ユーザの行動情報内にある近接データから、携帯用センサノードを携行する計測対象ユーザが他のユーザと近接していた時間情報と近接ID情報を検出する。例えば、図8に示した近接データの一行目からは、ID情報001の携帯用センサノードがID情報002、003、004の携帯用センサノードを携行するユーザと2009年09月07日の12:55:00〜15:10:00までの期間において近接していたことが検出される。これより、各センサノードに対して近接していたセンサノードの近接ID情報の時系列情報を作成することができる。
ステップS22では、ユーザ行動情報内にある近接データと加速度センサから携帯用センサノードを携帯していたユーザが存在した場所情報を検出する。図3に示すオフィスレイアウト図のように部屋の出入口などに設置された設置用センサノードのID情報(S001乃至S006)を検出した場合には、センサノードを携帯していたユーザがどの部屋に滞在しているかを検出可能である。また加速度センサデータのデータ値を規定の閾値と比較することにより、ユーザが移動しているか又は停止しているかを検出できる。このように、近接データと加速度センサデータを使用すれば、ユーザがどの部屋に滞在しているかを一層正確に検出することが可能となる。
【0034】
ステップS23では、ユーザのスケジュール情報からユーザが存在していた場所情報・時間情報・近接していたユーザ情報を検出する。例えば、図6のスケジュール情報の一行目のデータからは、社員番号01101のユーザが2009年09月07日の13:00〜15:00までの期間、A−301会議室において、社員番号が01201、01203、03202のユーザと一緒に居たことが検出できる。これより、スケジュール情報からユーザの場所・時間・近接していたユーザの社員番号が時系列形式データとして作成可能である。
ステップS24では、上記ステップS21、22から検出されるユーザの時間情報・場所情報・近傍に居た携帯用センサノードのID情報と、ステップS23から検出されるユーザの時間情報・場所情報・近傍に居た関連ユーザ情報を比較することにより、2つの時系列データが一致するセンサノードID情報とユーザ情報を検出する。
この比較方法の一例としては、例えば、ステップS21、22で検出される時間・場所・近接ID情報から図14に示すユーザ行動履歴の時系列情報を作成する。
【0035】
図14は、上述したユーザ行動情報として得られたデータから作成したユーザ行動履歴の時系列情報データの例を示す図である。
これらのデータは、図8のユーザの行動情報(近接データ)や、図9の加速度センサデータ等から作成することができる。図14(a)は携帯用センサノードIDが001である行動履歴を3日間分作成している。これを棒グラフとして表わしたのが図14(b)である。
これらのデータは携帯用センサノードのID情報毎に作成できるので、複数のユーザ行動履歴の時系列情報が得られる。図14(c)、(d)は同様にしてID情報が002、003である携帯用センサノード(を携行するユーザ)について作成した行動履歴と時系列データを棒グラフにした例である。
このようにして得られたユーザ行動履歴の時系列情報にある場所・時間情報と、図6のデータベースに蓄積されたユーザのスケジュール情報の場所・時間情報とを比較して、一致している率が高いものから順に並び替える。また、比較処理にはユーザ行動履歴から検出されるオフィスへの入退出時間と、図7に示すユーザの勤務管理情報の開始時刻・終了時刻とを比較しても良い。一例として、1週間程度にわたる期間についてユーザ行動履歴情報が計測された時点で、上述した比較処理を行い、場所・時間情報が一致している率の高い上位3番目までのユーザ行動履歴の時系列情報を検出し、そのユーザ行動履歴の近接ID情報と、スケジュール情報内の関連ユーザ情報とを比較する。
このときの比較方法の一例としては、スケジュール情報内の関連ユーザ情報から任意のユーザ情報を取得して時系列情報を作成し、ユーザ行動履歴の時系列情報からユーザのスケジュール情報と一致している部分の時系列情報だけを図15に示すように抽出する。
【0036】
図15は、スケジュール情報の関連ユーザ情報とユーザ行動情報における近接ID情報の比較処理に使用するための時系列情報を示す図であり、図(a)は、ユーザのスケジュール情報から作成した時系列データ、(b)、(c)、(d)は夫々、IDが001、002、003である携帯用センサノードセンサノードを携行するユーザの行動履歴の時系列データである。
これらのデータは、例えば、複数のユーザが出席する会議出開催情報が含まれるので、それらに出席したユーザの関連性が近接情報として抽出される。従って、抽出した部分から近接ID情報と関連ユーザ情報との履歴情報を時系列に参照することにより、最もよく一致する近接ID情報と関連ユーザ情報を検出すれば、ユーザとその行動、即ち、携帯用センサノードIDとユーザの関連性を把握することが可能である。
【0037】
例えば、図6のスケジュール情報とセンサノードのID情報001との比較によれば、スケジュール情報の関連ユーザ情報01012、01013と最もよく一致するセンサノードのID情報が003、004であり、関連ユーザ情報01014と最もよく一致するセンサノードのID情報が002であり、関連ユーザ情報02011と最もよく一致するセンサノードのID情報が011であることが分かる。これらの一致率をセンサノードのID情報毎に算出したものが図16に示す一覧表である。この一覧表から最も一致率の高いセンサノードのID情報をユーザ情報として検出すればよい。
即ち、図16は、携帯用センサノードのID情報毎に関連ユーザ情報と近接ID情報との一致率を算出したグラフの一例を示した図であり、図16(a)、(b)、(c)は、夫々、携帯用センサノードIDが001、002、003についての関連ユーザ情報と近接ID情報との一致率を示したものである。関連ユーザ情報はスケジュール情報内にある関連ユーザの社員番号情報であり、近接ID情報は携帯用センサノードのID情報を示す。関連ユーザ情報と近接ID情報との対応付けは、スケジュール情報の時系列情報と行動情報の時系列情報とを比較して最も一致率の高い近接ID情報を対応付ける。一致率はスケジュール情報から算出される関連ユーザと近接していた時間帯と行動情報から算出される時間帯とが一致している率を示す。
【0038】
図16に示す一例では、(a)のセンサノードのID情報001に対しては、ユーザ情報、即ち社員番号01012(95%)が最も一致率の高いユーザ情報として検出され、(b)、(c)によれば、センサノードのID情報002、003に対しては、ユーザ情報、即ち社員番号01014(93%)、01013(95%)が最も一致率の高いユーザ情報として検出される。このようにして、センサノードから計測された行動情報とユーザのスケジュール情報とを比較して、一致するユーザ情報を検出することができる。
【0039】
以上説明したように、本発明は、就労者等のユーザに携帯用センサを携行させ、これらの携帯用センサノードからユーザ等の行動情報を収集し、その物理的なインタラクションを収集、分析する計測システムにおいて、携帯用センサノードID情報とユーザとを自動的に関連付ける機能を付加したので、ユーザにセンサノードを配布する際の、両者の関連付けを行う必要が無い。従って、センサノード(ID情報)とユーザ情報(ユーザID等)の関連付け作業が大幅に効率化したものとなり、センサネットワークシステムの導入時の運用コストを削減することができることが明らかである。
なお、以上説明した構成や方法は一例であって、説明の中でも示したように種々変形が可能である。
また、本発明は、携帯用センサノードとそれを携行するユーザとの対応付けを自動的に行うものであるので、これらの携帯用センサノードからユーザの行動情報を収集する装置や方法には、なんら限定はなく、種々の方法や装置が利用可能である。例えば、携帯用センサノードからユーザ行動情報を収集する際に、設置用センサノードを介して行う他、携帯用センサノードのメモリにユーザ行動情報を記憶しておき、適宜、そのメモリ内容をデータ収集サーバに伝達できるものであればどのような装置や方法であっても構わない。
更に、本発明では、携帯用センサノードとユーザとの関連つけがなされない状態で、計測対象ユーザに配布されることが一つの特徴であるので、そのように使用されるセンサノードも本発明の実施に当たる。
【0040】
また、本発明は、携帯用センサノードとそれを携行するユーザとの対応付けを自動的に行うものであるので、その処理方法や、その処理方法を実施するための処理サーバの発明としても特徴を有するので、それらについての実施や装置構築等も本発明の実施に該当する。
また、本実施形態では、本発明のセンサネットワークシステムを実現するための構成としてデータ収集サーバ10、ユーザ情報サーバ11、ID関連付けサーバ12をそれぞれ自律した独立の装置として記載しているが、これには限らず、それぞれの装置の機能を集約した単一の組織行動分析サーバとして構成することも出来る。
その際、組織行動分析サーバを、組織内に設置されている可能性の高いユーザ情報サーバ11をベースに他のサーバの機能を追加するように構成すれば、実現が容易である。
【符号の説明】
【0041】
1、2、3 ユーザ(就労者、利用者)、4、5、6 携帯用センサノード、7、8、9、40 PC端末、10 行動情報収集用サーバ、11 ユーザ情報サーバ、12 データ分析及び識別情報関連付け処理サーバ、13、14、15、34、35、36、37、38、39 設置用センサノード、21 近接検知部、22 識別情報保持部、23 加速度検出部、24 データ送信部、25 RTC(Real−Time Clock)、26 データ保持部、27 電池部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2008−176573号公報
【特許文献2】特開2007−172423号公報
【特許文献3】特開2006−146736号公報
【特許文献4】特開2009−301227号公報
【非特許文献】
【0043】
【非特許文献1】「リアル組織行動分析サービス‘ROBAS’の概要と分析事例」、富士ゼロックステクニカルレポート、No.17、2007、http://www.fujixerox.co.jp/company/tr/17/pdf/t_02.pdf

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、該無線信号に含まれる検知した携帯用センサノードの識別情報を検出する近接検出手段と、固有の識別情報を保持する識別情報保持手段と、検知した携帯用センサノードの識別情報及び検知した時間とを対応付けた情報である行動情報を保持するデータ保持手段と、を有する複数の場所に設置された設置用センサノードと、
前記複数の設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するユーザ行動情報収集手段と、
ユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報を保持するユーザ情報保持手段と、を有し、
前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付ける識別情報関連付け手段と、
を備えたことを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサネットワークシステムにおいて、
前記携帯用センサノードは、前記設置用センサノード及び他の携帯用センサノードとの間で識別情報の送信及び/又は受信する手段と、
受信した他のセンサノードの識別情報と受信時刻情報とを記憶する手段と、
加速度センサ手段と、
該加速度センサ手段にて検出した加速度情報を記憶する手段と、
記憶した他のセンサノードの識別情報及び受信時刻情報と、前記加速度情報と、を外部端末に送信する手段と、を備えたことを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサネットワークシステムにおいて、
前記設置用センサノードを設置した場所情報と、各設置用センサノードが保持している識別情報と、を対応付けて保持する設置場所情報保持手段を含むことを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項4】
複数の場所に設置された設置用センサノードと、ユーザ行動情報収集手段と、ユーザ情報保持手段と、識別情報関連付け手段と、を有するセンサネットワークシステムにおける組織行動情報収集方法であって、
前記設置用センサノードが、ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、前記無線信号に含まれる前記検知したセンサノードの識別情報及び検知した時間とを対応付けた情報である行動情報を保持するステップと、
前記ユーザ行動情報収集手段が、複数の前記設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するステップと、
識別情報関連付け手段が、前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付けるステップと、を特徴とする組織行動情報収集方法。
【請求項5】
ユーザが携帯する携帯用センサノードが近接したことを無線信号により検知して、該無線信号に含まれる検知した携帯用センサノードの識別情報を検出する近接検出手段と、固有の識別情報を保持する識別情報保持手段と、検知した携帯用センサノードの識別情報と検知した時間とを対応付けた情報を示す行動情報を保持するデータ保持手段と、を有する複数の場所に設置された設置用センサノードから前記行動情報を収集して保持するユーザ行動情報収集手段と、
各ユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報を保持するユーザ情報保持手段と、を有し、
前記ユーザ行動情報収集手段が保持する行動情報と、前記ユーザ情報保持手段が保持するユーザ情報と、に基づいて、前記携帯用センサノードに割り当てた識別情報と該携帯用センサノードと携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定して関連付ける識別情報関連付け手段と、を備えたことを特徴とする組織行動分析サーバ。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のセンサネットワークシステム、請求項4に記載の組織行動情報収集方法、又は請求項5に組織行動分析サーバにおいて使用されることを特徴とする携帯用センサノード。
【請求項7】
無線信号を検知可能な設置用センサノードにより近接を検知されて前記無線信号に含まれる識別情報を検出されて、前記識別情報を、検知された時間と対応付けた行動情報としてユーザ行動情報収集手段に保持され、
ユーザ情報保持手段に保持されるユーザに係るスケジュール情報または勤怠情報を含むユーザ情報と、前記行動情報と、に基づいて、前記識別情報を、該携帯用センサノードを携行しているユーザのユーザ情報との関連性を判定されることを特徴とする携帯用センサノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−197768(P2011−197768A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61036(P2010−61036)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】