説明

センサーデバイス、力検出装置およびロボット

【課題】力検出装置への組み込みにおいても、センサー素子の位置ずれが発生せず、高いセンサー感度が維持されるセンサーデバイス、および力検出装置を提供する。
【解決手段】センサーデバイス100は、圧電体40と、電極50とを積層して形成されるセンサー素子60と、前記センサー素子を収納する、第1容器10と第2容器20と、を備え、前記第1容器10および第2容器20により、前記圧電体40および前記電極50の積層方向に前記センサー素子を押圧する押圧部30と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーデバイス、力検出装置およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電材料を用いた力センサーとしては特許文献1のものが知られていた。すなわち特許文献1の図15に示されている、信号電極15を圧電材料である結晶円板16により挟持し、さらに金属カバー円板17によって挟持された測定素子を、複数配置した力センサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−231827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の測定素子では、力を検出する方向に対して信号電極をはさむ2枚の結晶円板が、結晶の方向を正確に揃えて測定素子を形成する点の開示が無い。力センサーとして精度の高い出力信号を得るために、結晶円板の結晶方向を精度高くそろえてセンサー素子を形成することが困難であった。さらに、センサー素子を複数配置して力センサーとして用いる場合に、装置へセンサー素子を配置する際のセンサー素子の移動、装置への固定などの作業の間に、軽微な衝撃が加わるだけで素子間の位置ずれが発生してしまい、センサー感度を低下させてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、力検出装置への組み込みにおいても、センサー素子の位置ずれが発生せず、高いセンサー感度が維持されるセンサーデバイス、力検出装置およびロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0007】
〔適用例1〕本適用例のセンサーデバイスは、圧電体と、電極とを積層して形成されるセンサー素子と、前記センサー素子を収納する、第1容器と第2容器と、を備え、
前記第1容器および第2容器により、前記圧電体および前記電極の積層方向に前記センサー素子を押圧する押圧部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、センサー素子が第1容器と第2容器とにより形成される内部空間に収納されている状態において、センサー素子が圧電体と電極の積層方向に押圧されることにより、センサーデバイスを持ち運ぶ際の振動や、装置へ組み込む際の外力などによる圧電体と電極の組込み位置のずれを抑制し、センサーデバイスの高い検出精度を安定して維持させることができる。
【0009】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記押圧部は、前記第1容器および前記第2容器によって押圧される弾性部材であることを特徴とする。
【0010】
上述の適用例によれば、最適な弾性力を有する弾性部材を選択使用することにより、センサー素子への押圧力の調整を容易にすることができ、センサー素子に対して過大な押圧力の付加を抑制する緩衝材として機能し、センサー素子、特に圧電体の損傷を防止することができる。
【0011】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記弾性部材が、ゴム、弾性エラストマーもしくは金属により形成されたパッキンであることを特徴とする。
【0012】
上述の適用例によれば、パッキンの材質、サイズ、断面形状を適宜選択することにより適切な押圧力の設定が可能となり、センサー素子に対して過大な押圧力の付加を抑制することができ、センサー素子、特に圧電体の損傷を防止することができる。
【0013】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記押圧部が、前記第1容器もしくは前記第2容器に形成された蛇腹部であることを特徴とする。
【0014】
上述の適用例によれば、伸縮性に優れた蛇腹形状を備えることにより、センサー素子への押圧力の調整が容易に行え、センサー素子に対して過大な押圧力の付加を抑制することができ、センサー素子、特に圧電体の損傷を防止することができる。
【0015】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記第1容器および前記第2容器は、前記第1容器と前記第2容器と、を接続する接続部を有することを特徴とする。
【0016】
上述の適用例によれば、接続部によって第1容器と第2容器とを接続し、センサー素子の収納容器を形成することで、押圧部によって付加されるセンサー素子への押圧力を維持した状態で機器、装置へ組み込むことができるため、センサーデバイスを持ち運ぶ際の振動や、装置へ組み込む際の外力などによる圧電体と電極の組込み位置のずれを抑制し、センサーデバイスの高い検出精度を安定して維持させることができる。
【0017】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記センサー素子の前記積層方向をZ方向とした場合、前記Z方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれX方向、Y方向とした場合、少なくとも前記X方向の力を検出する第1センサー素子と、前記Y方向の力を検出する第2センサー素子と、前記Z方向の力を検出する第3センサー素子と、を備えることを特徴とする。
【0018】
上述の適用例によれば、X,Y,Z方向、いわゆる3軸方向の力を検出するセンサー素子を、相互の位置ずれが抑制されることにより、3軸方向の力を検出するセンサーデバイスであっても高い検出精度を損なうことなく、安定して維持させることができる。
【0019】
〔適用例7〕上述の適用例において、前記圧電体が水晶であることを特徴とする。
【0020】
上述の適用例によれば、圧電体として水晶を用いることにより、わずかなひずみであっても電荷量を多く発生させることができる高い検出能力のセンサー素子を備えるセンサーデバイスを得ることができる。また、水晶結晶のカット方向によって、様々な方向のひずみを検出する圧電体を容易に得ることができる。
【0021】
〔適用例8〕本適用例の力検出装置は、上述のセンサーデバイスを備える。
【0022】
本適用例の力検出装置は、電荷量および電荷の正負によって、容易に外力負荷を演算計測することができる。また、簡単な構成によって3軸力検出センサーを得ることができ、更に、上述の適用例のセンサーデバイスを複数用いることで、たとえばトルク計測も含む6軸力検出装置などを容易に得ることができる。
【0023】
〔適用例9〕本適用例のロボットは、上述の力検出装置を備える。
【0024】
本適用例のロボットは、作動するロボットアームあるいはロボットハンドに対して、所定動作中に起こる障害物への接触の検出、対象物への接触力を、力検出装置により確実に検出し、ロボット制御装置へデータをフィードバックすることで、安全で細かな作業を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係るセンサーデバイスを示し、(a)は積層方向の概略断面図、(b)は(a)に示すA−A´部の断面図、(c)は(a)に示すB部の拡大断面図。
【図2】第1実施形態に係るセンサー素子を示す、(a)は概略断面図、(b)は水晶板の積層方向を説明する模式図。
【図3】その他の実施形態に係るセンサーデバイスの、(a)は接続部の部分断面図、(b)は蛇腹部の側面、断面図。
【図4】第1実施形態に係るセンサーデバイスの、(a)は配線説明図、(b)は(a)に示すD部の部分拡大図。
【図5】第2実施形態に係る力検出装置を示す、(a)は平面図、(b)は(a)に示すE−E´部の断面図。
【図6】第2実施形態に係る力検出装置のトルク検出を説明する模式図。
【図7】第3実施形態に係るロボットを示す外観図。
【図8】その他の実施形態のセンサーデバイスを示す、(a)は概略断面図、(b)は筒状容器の嵌合説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るセンサーデバイスを示し、図1(a)は積層方向の概略断面図、図1(b)は図1(a)に示すA−A´部の断面図、図1(c)は図1(a)に示すB部の拡大断面図である。図1に示すように、センサーデバイス100は第1容器10と第2容器20とが、接続部としてのフランジ部10a,20aによって押圧手段としてのパッキン30を押圧して接続され、第1容器10と第2容器20によって形成される内部空間内に図1(b)に示すように、外形が円形の圧電体40と電極50とが交互に積層されたセンサー素子60が収納されている。
【0028】
センサー素子60は、圧電性を有する、例えば水晶、チタン酸ジルコン酸鉛<PZT:Pb(Zr,Ti)O3>、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などから形成される板状基板であり、本実施形態では水晶基板を円盤状に形成した圧電体40(以下、水晶板40という)を用いている。水晶板40は図2(a)に示すように電極50によって挟まれ、複数積層されてセンサー素子60が形成される。図2(a)に示すように、センサー素子60は、水晶板41a,41b,42a,42b,43a,43bと、各水晶板41a,41b,42a,42b,43a,43bを挟持するように電極51a,51b,51b,51c,51d,52,53,54と、が積層され、センサー素子60を形成している。
【0029】
図2(b)の模式図に示すように、水晶板41a,41b,42a,42bは、いわゆるYカット板より形成される。センサー素子60の積層方向をγ、γと直交し且つ互いに直交する方向をα,βとした場合、水晶板41a,41bは水晶板のY軸がγ方向となるように積層され、X軸は本例では水晶板41aがα(+)方向、水晶板41bがα(−)方向になるように配置される。この水晶板41a,41bを電極51a,52,51bにより挟持するように配置することにより、水晶板41a,41bによってα方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子61を形成する。
【0030】
同様に、水晶板42a,42bは水晶板のY軸がγ方向となるように積層され、X軸は本例では水晶板42aがβ(+)方向、水晶板42bがβ(−)方向になるように配置される。この水晶板42a,42bを電極51b,53,51cにより挟持するように配置することにより、水晶板42a,42bはβ方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子62を形成する。
【0031】
水晶板43a,43bは、いわゆるXカット板より形成され、水晶板43aは水晶板のX軸がγ(−)方向、水晶板43bは水晶板のX軸がγ(+)方向、となるように積層される。またY,Z軸は水晶板43a,43bにおいて互いに直交するように配置される。この水晶板43a,43bを電極51c,54,51dにより挟持するように配置することにより、水晶板43a,43bによってγ方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子63を形成する。そしてセンサー素子61,62,63によって、いわゆる3軸方向の力を検出することができるセンサー素子60が形成される。
【0032】
センサー素子60は、上述した水晶板41a,41b,42a,42b,43a,43bと、電極51a,51b,51b,51c,51d,52,53,54と、が積層方向に載置されているに過ぎず、例えば接着などの固着手段は用いられていない。しかし、上述した図2(b)に示すように、水晶板41a,41b,42a,42b,43a,43bのそれぞれの積層方向が正確に維持されていなければ、変位検出方向すなわち力検出方向に誤差を生じてしまう虞がある。そこで、図1(a)に示す、第1容器10と第2容器20との接続によって、センサー素子60をセンサー素子60の積層方向に押圧する手段を備える。
【0033】
図1(a)に示すセンサーデバイス100の第1容器10と第2容器20との接続は次のように行われる。図1(c)は第1容器10と第2容器20との接続部である図1(a)におけるB部の詳細断面図である。図1(c)に示すように、第1容器10の開口端部にはフランジ部10aが形成されている。第2容器20の開口端部にはフランジ部20aと、フランジ部20aに繋がって筒状部20bが形成されている。筒状部20bの内周20cには第1容器10のフランジ部10aの外形10bが挿入できるように形成されている。
【0034】
第1容器10と第2容器20とを、第1容器10と第2容器20との内側にセンサー素子60を収納するように被せながら、第1容器10のフランジ部10aを第2容器20の筒状部20bの内周20cに挿入する。その後、フランジ部10aにパッキン30を載置し、筒状部20bの開口側の一部を図示矢印方向に倒し込み、いわゆるカシメ部20dを形成し、カシメ部20dによってパッキン30を圧縮する。このようにして、第1容器10と第2容器20とが接続され、この時、パッキン30はカシメ部20dによって圧縮され矢印fの反発力が生じている。この反発力fによって第1容器10と第2容器20とは、矢印f´方向に引き付けられた状態となり、図1(a)に示す第1容器10のセンサー押え部10c、第2容器20のセンサー押え部20eを介してセンサー素子60を積層方向に押圧、固定する。すなわちパッキン30がセンサーデバイス100の押圧手段として備えられる。パッキン30は弾性を有するものであれば良く、例えばゴム、弾性エラストマーなどから形成される。あるいは、パッキン形状に限定されず、ばね座金、波型座金などのばね性を備える座金状の形態であっても良い。また、パッキンを介して第一、第二容器をカシメ構造とすることにより、容器のカシメ部寸法も過度な精度が不要で、組立も容易であるため、センサーデバイスを安価に構成することが可能である。
【0035】
上述の押圧手段としてのパッキン30を圧縮し、その反発力によって第1容器10と第2容器20に収納されるセンサー素子60を押圧、固定することにより、安定した押圧力を得ることが可能となる。更に、後述するセンサーデバイス100を用いた力検出装置においては、例えば潤滑油、水や薬品などの液体、などに曝される環境下での使用であってもパッキン30はシール部材としての機能も有し、内部のセンサー素子60を保護することもできるため、信頼性の高いセンサーデバイス100を得ることができる。
【0036】
上述のセンサーデバイス100ではパッキン30が押圧手段としての要素であるが、これに限定されず、図3に示すような形態であっても良い。図3(a)は、図1(a)に示す接続部(B部)のその他の形態を示す断面図である。図3(a)に示す接続部は第1容器11の開口部に形成されたフランジ部11aが、第2容器21にカシメ部21aによってカシメ固定されることによって、フランジ部11aの弾性変形の範囲内でδのたわみを発生させ、そのたわみδが元に戻ろうとする力、すなわち弾性力f1がセンサー素子60を押圧、固定する力としての押圧手段となる。フランジ部11aのたわみδに対して弾性力f1が大きくなり過ぎないよう、P方向矢視図に示すように分割されたフランジ部11aの形態とすることもできる。
【0037】
また、図3(b)に示すように第1容器12の筒状部に押圧手段としての蛇腹部12aを設け、蛇腹部12aの伸縮性によってセンサー素子60を押圧、固定することもできる。このように構成することによって、第1容器12を薄板材から形成して蛇腹部12aの伸縮性を向上させても、筒状外形側からの外力Fに対して高い強度を備える容器を形成することができる。なお、蛇腹部12aは本実施形態に限定はされないが、蛇腹部12aが収縮する際に、少なくとも内部に収容されるセンサー素子60とは干渉しない内径形状とする。
【0038】
図4(a)は図1(b)に示すC−C´部の断面図、図4(b)は図4(a)に示すD部拡大図である。図1(b)に示す、センサー素子60の外形部と、第1容器10および第2容器20の内部空間と、の間隙に、図4(a)に示すように外部に備える演算装置200へ繋がる配線71,72,73,74を配置する。図2によって説明したように、センサー素子60は、α方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子61、β方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子62、およびγ方向に掛かる力による変位を検出することができるセンサー素子63により構成されている。これらの検出データを演算装置200に備えるα方向演算部210にはセンサー素子61の電極52からの配線71が接続されている。β方向演算部220にはセンサー素子62の電極53からの配線72が接続され、γ方向演算部230にはセンサー素子63の電極54からの配線73が接続されている。これら演算部210,220,230により各方向に掛かる力を演算する。また、各センサー素子61,62,63の接地電極51a,51b,51c,51dは演算装置200に備えるグランド(GND)240に配線74により接続されている。
【0039】
各配線71,72,73,74の第2容器20の挿通部(D部)は、図4(b)に示すようにシール部材80を介して配線されていることが好ましい。シール部材80は、例えばゴムなどの弾性部材を用い、内部に配線を挿通できる配線孔80aを備え、第2容器20の配線孔20fに外形部80bとシール可能な締め代を備えて嵌合される。本形態ではシール部材80の両端部には第2容器20の配線孔20fの内形より大きい外形を備える抜け防止部80cを備えているが、配線孔20fと外形部80bとの締め代によってシール部材80が容易に脱落しなければ備えなくても良い。
【0040】
上述したセンサーデバイス100において、圧電体としての水晶板40と電極50とを単に積み重ねるように形成されるセンサー素子60を、第1容器10と第2容器20により水晶板40と電極50との積上げ(積層)方向に対して押圧する。第1容器10と第2容器20、および第1容器10と第2容器20との接続部に配置した押圧部が、センサー素子60を押圧しながら第1容器10、第2容器20を接続することによって、センサー素子60を構成する圧電体としての水晶板40および電極50の位置ずれを防止することができる。これにより、装置へのセンサーデバイス100の組み込み作業などにおける振動、衝撃によって水晶板40と電極50との位置ずれを原因とする感度の低下を抑制し、高い感度が維持できるセンサーデバイス100を得ることができる。
【0041】
なお、上述の水晶板40と電極50との位置ずれを、図2(b)により説明する。図2(b)に示すように、水晶板41a,41b、水晶板42a,42b、水晶板43a,43b、は各々α、β、γ方向の力成分を検出する。例えば水晶板42a,42bにおいては、α方向の力を検出するには正確にX軸方向が一致させるように積層されなければならい。従って、水晶板41a,41bのX軸方向のずれをいう。また、水晶板41a,41b、水晶板42a,42b、水晶板43a,43b、それぞれが正確に積層されていても、水晶板41a,41bと水晶板42a,42bとがγ軸に対して回転方向にずれることも位置ずれという。このように、同一力検出軸方向の力を検出する水晶板同士のずれ、および異なる力検出軸方向の力を検出する水晶ユニット同士のずれを、位置ずれという。
【0042】
また、水晶板と電極とはγ軸に対する回転方向のずれの影響は少ないが、α,β方向へ水晶板と電極が相対的にずれることによりセンサーとしての機能領域が減少し、所定の精度を得られなくなる虞があるため、電極がα,β方向へ水晶板と相対的にずれることも位置ずれという。
【0043】
また、第1容器10と第2容器20とによって、センサー素子60を覆うように収納することによって、外部環境、例えば水、薬品、油などの容器内への浸入を防止することができ、特に図1に示すようにパッキン30を押圧部として用いることにより、更にシール効果を得ることができる。したがって、外部環境の悪い状態で用いられるロボットに用いることで、信頼性の高いロボットを実現できる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態として、上述のセンサーデバイス100を組み込んだ力検出装置を説明する。図5は、第2実施形態に掛かる力検出装置1000を示す、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)に示すE−E´部の断面図である。図5(a)および図5(b)に示すように、力検出装置1000は、第1基台310と第2基台320とにより、本形態においては4個のセンサーデバイス100が挟持されている。第1基台310と第2基台320とは、固定部材としてのボルト400を、第1基台310に形成したねじ孔にねじ固定してセンサーデバイス100を押圧する。これによりセンサーデバイス100に約1tの与圧が付加される。
【0045】
力検出装置1000は、組み込まれる装置に備える検出装置装着部2000に図示しない装着手段によって装着され、検出装置装着部2100と検出装置装着部2200の間の力を検出する。本形態に係る力検出装置1000は、センサーデバイス100を4個固定した構成としたことにより、図示するx,y,z方向の力の検出に加え、配置された4個のセンサーデバイス100のデバイス間の距離から、第1基台310と第2基台320との間に加わる回転トルクTx,Ty,Tzを、図6に示す模式図および以下の計算式に基づいて求めることができる。
【0046】
【数1】

【0047】
上述の力検出装置1000はセンサーデバイス100を4個備える、いわゆる6軸力検出装置であるが、これに限定されず、検出すべき力によって、例えばセンサーデバイス100を1個、あるいは2個以上を備える力検出装置であっても良い。
【0048】
(第3実施形態)
第3実施形態として、上述の力検出装置1000を備えるロボットについて説明する。図7は、上述の実施形態に係る力検出装置1000を用いたロボット3000の構成を示す外観図である。ロボット3000は、本体部3100、アーム部3200およびロボットハンド部3300などから構成されている。本体部3100は、たとえば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。アーム部3200は、本体部3100に対して可動に設けられており、本体部3100にはアーム部3200を回転させるための動力を発生させる図示しないアクチュエーターや、アクチュエーターを制御する制御部等が内蔵されている。
【0049】
アーム部3200は、第1フレーム3210、第2フレーム3220、第3フレーム3230、第4フレーム3240および第5フレーム3250から構成されている。第1フレーム3210は、回転屈曲軸を介して、本体部3100に回転可能または屈曲可能に接続されている。第2フレーム3220は、回転屈曲軸を介して、第1フレーム3210および第3フレーム3230に接続されている。第3フレーム3230は、回転屈曲軸を介して、第2フレーム3220および第4フレーム3240に接続されている。第4フレーム3240は、回転屈曲軸を介して、第3フレーム3230および第5フレーム3250に接続されている。第5フレーム3250は、回転屈曲軸を介して、第4フレーム3240に接続されている。アーム部3200は、制御部の制御によって、各フレーム3210〜3250が各回転屈曲軸を中心に複合的に回転または屈曲し動く。
【0050】
アーム部3200の第5フレーム3250のうち、第4フレーム3240の接続部とは他方の側には、ロボットハンド部3300が取り付けられており、対象物を把握することができるロボットハンド3310が、回転動作させるモーターを内蔵するロボットハンド接続部3320によって第5フレーム3250に接続されている。
【0051】
ロボットハンド接続部3320には、モーターに加えて第2実施形態に係る力検出装置1000が内蔵されており、ロボットハンド部3300が制御部の制御によって所定の動作位置まで移動させたとき、障害物への接触、あるいは所定位置を超えての動作命令による対象物との接触、などを力検出装置1000によって力として検出し、ロボット3000の制御部へフィードバックし、回避動作を実行させることができる。
【0052】
このようなロボット3000を用いることにより、従来からの位置制御では対処できなかった、障害物回避動作、対象物損傷回避動作などを容易に行える、安全で細かな作業が可能なロボットを得ることができる。また、本例に限定されず双腕ロボットにも適用することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
第1実施形態に係るセンサーデバイス100は、図8に示すセンサーデバイス110の形態であっても良い。図8(a)はその他の実施形態に係るセンサーデバイス110の断面図、図8(b)はその他の実施形態に係るセンサーデバイス110の組込み状態を説明する断面図である。図8(a)に示すように、センサーデバイス110は、第1容器としてのキャップ13と、第2容器としてのキャップ23と、押圧手段としての筒状容器90と、により形成される内部に、センサー素子60が収納されている。
【0054】
筒状容器90は弾性材、例えばゴム、弾性エラストマー、プラスチックなどから形成され、両端の開口部に内周段部90a,90bが形成されている。キャップ13の外周には嵌合部13aが形成され、キャップ23の外周には嵌合部23aが形成される。キャップ13,23がセンサー素子60の積層方向両端部に載置された状態において、嵌合部13a,23aによって嵌合領域mが構成される。この嵌合領域mは、筒状容器90の内周段部90aと内周段部90bとの間隔nに対して大きくなるように設定され、筒状容器90をセンサー素子60に載置したキャップ13,23に嵌合させることで、筒状容器90は引き伸ばされる。
【0055】
筒状容器90が引き伸ばされてキャップ13,23に嵌合装着されることにより、筒状容器90によってキャップ13,23が引き付けられ、センサー素子60に押圧力が付加される。これにより、常にセンサー素子60には押圧力が付加され、力検出装置への組込みなどの作業の際に、センサー素子60を構成する水晶板40および電極50に、位置ずれが生じない高い精度を得ることができるセンサーデバイス110となる。更に、センサーデバイス110のように構成することにより、センサー素子60が密封され、外部環境の影響を受けない信頼性の高いセンサーデバイス110を得ることができる。
【0056】
筒状容器90は、図3(b)で説明した蛇腹部を形成することで、筒状容器90の弾性変形領域を大きくすることができ、また金属製の筒状容器90とすることができる。また、筒状容器90を樹脂アウトサート成形によってセンサー素子60と、キャップ13,23と、を一体的に成形しても良い。アウトサート一体成形によると、センサーデバイス110の内部気密性は格段に高くなり、高信頼性のセンサーデバイスを得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…第1容器、20…第2容器、30…パッキン、40…圧電体(水晶板)、50…電極、60…センサー素子、100…センサーデバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、電極とを積層して形成されるセンサー素子と、
前記センサー素子を収納する、第1容器と第2容器と、を備え、
前記第1容器および第2容器により、前記圧電体および前記電極の積層方向に前記センサー素子を押圧する押圧部と、を有する、
ことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項2】
前記押圧部は、前記第1容器および前記第2容器によって押圧される弾性部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサーデバイス。
【請求項3】
前記弾性部材が、ゴム、弾性エラストマーもしくは金属により形成されたパッキンである、
ことを特徴とする請求項2に記載のセンサーデバイス。
【請求項4】
前記押圧部が、前記第1容器もしくは前記第2容器に形成された蛇腹部である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサーデバイス。
【請求項5】
前記第1容器および前記第2容器は、前記第1容器と前記第2容器と、を接続する接続部を有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサーデバイス。
【請求項6】
前記センサー素子の前記積層方向をZ方向とした場合、前記Z方向に直交し且つ互いに直交する方向をそれぞれX方向、Y方向とした場合、少なくとも前記X方向の力を検出する第1センサー素子と、前記Y方向の力を検出する第2センサー素子と、前記Z方向の力を検出する第3センサー素子と、を備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサーデバイス。
【請求項7】
前記圧電体が水晶であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサーデバイス。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のセンサーデバイスを備える力検出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の力検出装置を備えるロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−220462(P2012−220462A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89841(P2011−89841)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】