説明

センサーマウント付き使い捨て接線流ろ過ライナー

【課題】使い捨て可能なセンサーマウント付き接線流ろ過ライナーを備えたろ過装置の提供。
【解決手段】次の構成:頂部プレートと、該頂部プレートとは間隔を置いて配置された底部プレートと、該頂部プレートと該底部プレートとの間に配置されたろ過部材と、該頂部プレートと該ろ過部材との間に配置された少なくとも1個の使い捨てライナーであって、流体入口と、流体出口と、該ライナー内にある少なくとも1個の流路と、該流路と流体連通した少なくとも1個のセンサーポートとを有するものと、該少なくとも1個のセンサーポートに密封されるダイアフラムと、該流路内の流体を接触させることなく該ダイアフラムを介して該少なくとも1個の流路内の圧力を感知するための、該センサーポートに取り外し可能に連結されたセンサーとを備えるろ過装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月29日に出願された米国仮出願第61/217323号(引用によりその開示をここに含めるものとする)を基礎とする優先権を主張する。
本発明は、接線流ろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
接線流ろ過(TFF)とは、サイズや分子量の相違に基づき溶液又は懸濁液中の成分を分離するために膜を使用する分離方法のことである。適用方法としては、蛋白質並びにヌクレオチド、抗原及びモノクローナル抗体といった他の生体分子の濃縮、清澄化及び脱塩;緩衝液の交換;プロセス開発;膜選択の検討;コロイド粒子を除去するための予備クロマトグラフィー清澄化;デキストロース及び抗生物質などの小分子の発熱物質除去(depyrogenation);細胞培養液、溶菌液、コロイド懸濁液及びウイルス培養液の採取、洗浄又は清澄化;及び試料の調製が挙げられる。
【0003】
TFFでは、ろ過される溶液又は懸濁液は、クロスフローモードで膜の表面にわたって通される。ろ過の原動力は、通常使い捨てTFF用途における蠕動ポンプにより創り出される膜間圧力である。また、ろ過液が膜表面を横断する速度もろ過速度を制御し、かつ、膜の詰まりを妨げるのに役立つ。TFFは、膜表面を横断して保持液を再循環させるため、膜の汚れが最低限に抑えられ、高いろ過速度が維持され、そして生成物の回収が向上する。
【0004】
従来のTFF装置は、ポンプ、供給溶液リザーバー、ろ過モジュール及びこれらの部材を連結するためのコンジットを含め、多数の部材から形成されている。使用時に、供給溶液は、供給溶液リザーバーからろ過モジュールに向かうと同時に、ろ過モジュールからの保持液は、所望の容量の保持液が得られるまでろ過モジュールから供給溶液リザーバーに再循環される。膜は、頂部マニホルド(又はホルダー)と底部マニホルド(又はホルダー)との間に挟まれており、これらは、装置の内部水圧に対する正確な機械的拘束を与えるのに役立ち、また、該装置内の複数の流路にわたってろ過流れを分配するのにも役立つ。これらのマニホルド又はホルダーは、典型的にはステンレス鋼から作られており、特に生物医薬用途及び他の衛生用途においては使用する前にその都度清浄化及び確認をしなければなならない。これは、高価でかつ時間のかかる方法である。
【0005】
ろ過媒体を交換するときに浄化工程及び確認工程を省くことが望ましい場合には、再利用可能なステンレス鋼製ライナーの代わりに使い捨てライナーを使用することができる。これらのライナーは、これまでにマニホールド内に存在していた流路と入口及び出口ポートとを取り入れており、しかもTFFホルダーと接触することからこのプロセスを隔離する。これらのライナーは、安価な材料から作製できるため、1回使用した後に処分することができ、従来のマニホルドを洗浄するよりもこれらを処分した方が費用効果がある。さらに、ライナーは、予め滅菌できる。これらのライナーは、操作条件下で十分な強度及び剛性を与えるように、クランプ力下でライナーがトルキングしないようにすることを補助するためにホルタープレート同士を接触させるリブのグリッドパターンを有することができる。
【0006】
また、ろ過媒体及び/又はライナーを交換するときにセンサーを洗浄又は滅菌する必要なしに圧力のような様々なプロセスパラメーターを測定するために該ライナー中にセンサーを取り入れることも望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
従来技術の不利益は、中に1個以上のセンサーが配置された1個以上の好ましくは使い捨てのライナーを備える接線ろ過アセンブリを有する、ここで開示する実施形態によって克服される。このセンサーは、流体からは隔離されており、しかもライナーから取り外すことができる。結果として、使用後にライナーを配置することができ、センサーを洗浄する必要なしにセンサーを再利用することができる。
【0008】
所定の実施形態に従って、接線流ろ過装置が提供される。当該装置において、1個以上のライナーがろ過部材と頂部及び底部ホルダー又はマニホルドとの間に配置されている。これらのライナーは、これまでにステンレス鋼製マニホルドに存在していた流路と入口及び出口ポートとを取り入れている。これらのライナーは安価な材料から作られているため、1回の使用後に処分することができ、従来のマニホルドを洗浄するよりもこれらを処分した方が費用効果が高くなる。さらに、ライナーは予め滅菌できる。ライナーは、操作条件下で十分な強度及び剛性を与えるために、クランプ力下でライナーがトルキングしないように保持するためにホルダープレート同士を接触させるリブのグリッドパターンを有することができる。
【0009】
1個以上のライナーは、センサーをライナーに取り外せるように固定するための1個以上のセンサーポート又はマウントを備える。ライナー中のセンサーと流路との間にはダイアフラムが設置され、センサー部材が流路内の流体と直接接触しないようになっている。このセンサーは、流路内の流体の圧力を感知することができる状態を保持しているが、ダイアフラムが存在することでセンサーが流体によって汚染されないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、所定の実施形態に従う接線流ろ過アセンブリの斜視図である。
【図2】図2は、図1の分解図である。
【図3】図3は、所定の実施形態に従うセンサー及びセンサーポートを示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
まず図1をみると、所定の実施形態に従うろ過装置10が示されている。装置10は、頂部ホルダープレート12と、間隔を開けて底部ホルダープレート13とを備える。これらのホルダープレート12、13は、好ましくはステンレス鋼から作られており、内部作動水圧(例えば50〜60psi)に対して正確でかつ効果的な機械的拘束を与える程度に十分に剛体でありかつ永続性がある。ホルダープレート12、13及びアセンブリの各層には、タイロッド又はネジピン又はボルト14その他の締め付け装置を収容してアセンブリを全体として固定するための開口28が設けられている。スペーサー(図示しない)を備えることができ、そしてこれはバネで留めることができる。ホルダープレート12、13には、ろ過流通路は存在しない。
【0012】
組み立てられた状態でホルダープレート12の下に位置するのは、使い捨てライナー16である。ライナー16は、好ましくは、用途に適した、すなわち特定のアッセイ、例えば薬学的アッセイに許容できる(及び政府認可の)安価な材料から作られている。好適な構成材料としては、プラスチック、例えばポリスチレン、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、それらの共重合体及び混合物が挙げられる。ポリスルホンがその強度及び剛性の観点から特に好ましい。ライナー16は、好ましくは通路及び開口と共に形作られている。或いは、さほど好ましくはないが、該ライナーは、切削加工、穿孔などの方法によって成形できる。
【0013】
ろ過部材20は、ライナー16と第2使い捨てライナー22とに挟み込まれている。ろ過部材20は、単一膜であることができ、好ましくは積層限外ろ過膜や積層精密ろ過膜などの複数の積層膜であり、最も好ましくはカセットの形態で設けられる。単一の膜カセットが示されているが、当業者であれば、複数のカセットを使用できることが分かるであろう。好適なカセットは、PELLICON(商標)という商品名で販売されており、ミリポア・コーポレイションから市販されている。
【0014】
当該技術分野においては一般的であるが、ライナー22は、第1ポート17Aと、1個以上のサブポート17Cと、第2ポート17Bと、1個以上のサブポート17Dとを備える(図2)。ポート17Aは、アセンブリ内のその方向に応じて供給液を導入し又は保持液を取り出すためのものであり、ポート17Bは透過液を除去するものであると共に、従来通りろ過液と保持液又は供給液とが混合するのを防ぐためものものである。ポート17Aは、1個以上のサブポート17Cと流体連通した状態にある。ポート17Aは、17C及びそれに最も近いセンサーポートと流体連通した状態にある。また、ポート17Aは、カセット、例えば、PELLICON(商標)カセットの供給ポートとも流体連通した状態にある。ポート17Bは、1個以上のサブポート17Dと流体連通した状態にある。ポート17Bは、17D及びカセットの透過液排出ポートとのみ流体連通した状態にある。ポート17A及び17Bは、適切な間隔を与えかつ他の部品による干渉を回避するために、ライナーの反対側に設置できる。しかし、間隔が十分な場合又は干渉が生じない場合には、これらのものを同じ側に設置することができる。それぞれのポート17A、17Bは、従来通り、供給液、保持液又は透過液の流れを収容するためのそれぞれの開口と連絡しそれによって該装置内にろ過流れのための複数の流路を画定する、ライナー本体内にある流路又は通路と流体連通した状態にある。
【0015】
これらの通路を先細にして、これらの流路がそれらの各ポートから離れて進むに従って狭くし、サブポート17C及び17Dのそれぞれで圧力を統一することができる。
【0016】
所定の実施形態では、ライナー16、22の一方又は両方の片側は、複数の内部結合リブを備えることができる。これらのリブは、ライナーに追加の剛性を与えるが、これは成形プロセスで成形できる。これらのリブは、存在するならば、ホルダープレート12又は13を接触させるライナーの側に位置する。リブは、ライナーの一方の側から他方の側に延びるが、ただし、ポートにより中断される場合は除く。組み立てたときに、フィルター部材20及びライナーにはかなりのクランプ力が加わり、ライナー16、22及びフィルター部材20の平坦な面間で密封が生じる。これらのリブは、リブと結合させるためにホルダープレートに対応する溝を作る必要なしに、圧力を加えることによる密封嵌合で本発明のろ過装置におけるライナーを効果的に組み立てるのに役立つ。そのため、ライナーのグリッドと隣接するホルダープレートの各表面は平坦であることができ、ライナーを嵌め合わせるために特別に設計する必要はない。
【0017】
所定の実施形態では、1個以上のセンサー、供給液圧力センサー50A及び保持液圧力センサー50Bなどの好ましくは2個のセンサーが、使い捨てライナーの1個以上においてマウントポートに取り外し可能に連結されている。例示の目的で、2個のポート30A、30Bがライナー22内に示されている。1個のポート又は複数のポート30A、30Bは、流路と連通するように設置されているため、該流路内の流体の特性(例えば圧力)を測定することができる。例えばPVDF又はポリオレフィン、好ましくはポリエチレンから作られたダイアフラムのような膜又はダイアフラム40は、操作中に流路中の流体をセンサー部材から隔離するようにポート30A(又は30B)にわたって設置されている。Oリング41などを使用してダイアフラム40をポートに封止することができる。この膜又はダイアフラムは、所望ならばポートに永久的に固定できる。
【0018】
所定の実施形態では、図2及び3で最もよく分かるように、センサーは、ダイアフラム圧迫ナット52を使用してライナー22に固定されている。ナット52は、内部にネジが形成されており、この内部のネジは、センサー50Aをナット52にネジ締めできるように、センサー50A上に位置したセンサー圧迫ナット51上の外部ネジに対応する。センサー圧迫ナット51は、センサーフランジをそれよりも大きなダイアフラム圧迫ナット52に押しつける。また、ナット52は外部にネジが形成されており、その外部ネジは、ナット52をポートにネジ締めできるようにポート30B内のネジに対応している。図のように、圧迫ナット52とダイアフラムとの間にスリップワッシャー53を設置することができる。ナット52は、Oリング41と、ダイアフラム40と、ワッシャー53とを所定の位置で圧迫する。当業者であれば、センサーをマウントポートに固定する他の手段、例えば、ポートへの圧入又はポートに装着された好適な容器、センサーを所定の位置で保持するクランプ又はファスナーなどを使用できることが分かるであろう。
【0019】
組み立てられた状態では、センサーの機能部分は、膜又はダイアフラムに直接接して配置される。膜又はダイアフラムは、圧力に応答して歪み、連続的な状態を維持し、しかもセンサーを流路から隔離することができる能力を中断したり失ったりしないように、十分に柔軟な材料から作られる。膜又はダイアフラムは、半透過性又は透過性であることができる。このものは、好ましくは滅菌グレードのものである。
【0020】
2個のセンサー50A、50B、一方の測定供給液圧力及び他方の保持液圧力の存在により、膜間圧力を推定することが可能になる。膜間圧力は、供給液圧力及び保持液圧力からろ過液圧力を減じたものの平均だからである。ろ過液圧力は、当業者には周知の慣用法で決定できる。使用時に、取り外し可能なセンサーは、好ましくは、供給液圧力、保持液圧力、膜間圧力などの関連するプロセスパラメーターを記録することができかつそれに応じてこれらのパラメーターを制御することができるコントロールユニットと電気通信した状態にある。
【0021】
ここで開示した実施形態に従ってセンサーを使い捨てライナー(1個又は複数個)上のマウントポートに取り外し可能に連結することによって、該センサーは、流路から隔離された状態を保持し、ライナーから容易に取り外すことができ、しかも再利用できると同時に、ライナーを使用後に処分することができる。これによってシステムのセットアップが迅速かつ容易になる。
【0022】
ポート30A及びBの長さは、好ましくはセンサーポートのダイアフラムと、感知される流体が通るコンジットとの間には殆ど又は全くデッドレッグが存在しないようなものである。これは、いかなる流体も失われず又は停滞した状態にならないことを保証する。
【0023】
好適なセンサーとしては、コスト、精度、信頼性及び入手のしやすさの関係のため電気機械センサーが挙げられる。電気機械センサーとしては、薄い金属ダイアフラムに結合した歪みゲージが挙げられる。ダイアフラムの変形は、歪みゲージの変形をもたらし、比例電気信号をコントロールユニットに送る。当業者であれば、異なる技術を使用して作動するセンサーを使用できることが分かるであろう。
【符号の説明】
【0024】
10 ろ過装置
12 頂部ホルダープレート
13 底部ホルダープレート
16 使い捨てライナー
17A 第1ポート
17B 第2ポート
17C サブポート
17D サブポート
20 ろ過部材
22 第2使いすいてライナー
30A ポート
30B ポート
40 ダイアフラム
41 Oリング
50A 供給液圧力センサー
50B 保持液圧力センサー
51 センサー圧迫ナット
52 ダイアフラム圧迫ナット
53 スリップワッシャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構成:
頂部プレートと、
該頂部プレートとは間隔を置いて配置された底部プレートと、
該頂部プレートと該底部プレートとの間に配置されたろ過部材と、
該頂部プレートと該ろ過部材との間に配置された少なくとも1個の使い捨てライナーであって、流体入口と、流体出口と、該ライナー内にある少なくとも1個の流路と、該流路と流体連通した少なくとも1個のセンサーポートとを有するものと、
該少なくとも1個のセンサーポートに密封されたダイアフラムと、
該流路内の流体を接触させることなく該ダイアフラムを介して該少なくとも1個の流路内の圧力を感知するための、該センサーポートに取り外し可能に連結されたセンサーと
を備えるろ過装置。
【請求項2】
前記ライナーが少なくとも第2流路と、第2センサーポートと、該第2センサーポートに密封された第2ダイアフラムとをさらに備え、該フィルターアセンブリが該第2流路内の流体を接触させることなく該第2ダイアフラムを介して該第2流路内の圧力を感知するための、該第2センサーポートに取り外し可能に連結された第2センサーをさらに備える、請求項1に記載のフィルターアセンブリ。
【請求項3】
ホルダープレートとフィルター部材とを密封するように構成されたろ過装置用のライナーであって、
該ライナーは、該フィルター部材と隣接するように構成された平坦面と該ホルダープレートと隣接するように構成された担体面とを備え、
該ライナーは、流体入口と、流体出口と、該ライナー内にある少なくとも1個の流路と、該流路と流体連通した少なくとも1個のセンサーポートとを有し;
該少なくとも1個のセンサーポートに密封されたダイアフラムと;
該流路内の流体を接触させることなく該ダイアフラムを介して該少なくとも1個の流路内の圧力を感知するための、該センサーポートに取り外し可能に連結されたセンサーと
を備える前記ライナー。
【請求項4】
少なくとも第2流路と、第2センサーポートと、該第2センサーポートに密封された第2ダイアフラムと、該第2流路内の流体を接触させることなく該第2ダイアフラムを介して該第2流路内の圧力を感知するための、該第2センサーポートに取り外し可能に連結された第2センサーと、をさらに備える、請求項3に記載のライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−274260(P2010−274260A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−124907(P2010−124907)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】