説明

センサー装置

【課題】測定対象物のpH変化に伴う状態変化をより高精度に測定することができるセンサー装置および測定方法を提供すること。
【解決手段】本発明のセンサー装置1は、不動態膜を形成する第1の金属材料で構成された第1の電極3と、第1の電極3に対して離間して設けられ、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極4とを有し、pH変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極3と第2の電極4との電位差が変化する。また、第1の電極3と第2の電極4との電位差を測定し、その測定された電位差に基づいて、測定対象物(コンクリート構造物100)の測定対象部位のpHが設定値以下か否かを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサー装置としては、例えば、コンクリート中の鉄筋の腐蝕状態を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
施工直後のコンクリート構造物中のコンクリートは、通常、強アルカリ性を呈する。そのため、施工直後のコンクリート構造物中の鉄筋は、その表面に不動態膜が形成されるため、安定である。しかし、施工後に酸性雨や排気ガス等の影響を受けたコンクリート構造物は、コンクリートが徐々に酸性化していくため、鉄筋が腐食することとなる。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に係るセンサー装置では、コンクリート構造物中の鉄筋と同種材料からなる細線をコンクリート構造物中に埋設し、腐蝕による細線の断線の有無を検知することにより、コンクリート中の鉄筋の腐蝕状況を予測する。
しかし、特許文献1に係るセンサー装置では、細線が腐蝕し始めてから断線するまでの間のコンクリート構造物中の鉄筋やコンクリートの状態(より具体的には、例えばpHや塩化物イオン濃度)を知ることができない。また、細線が腐蝕し始めてから断線するまでの間に、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食が進行してしまう。そのため、コンクリート構造物中の鉄筋の腐蝕を完全には回避することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−153568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るセンサー装置では、細線が切断されたタイミングにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食が始まった時期を知ることは可能である。しかし、特許文献1に係るセンサー装置では、鉄筋が施工された後、腐食が始まるまでの期間、時間の経過とともに変化する鉄筋やコンクリートの状態を把握することはできないという課題があった。
本発明の目的は、鉄筋が施工された後、腐食が始まるまでの期間、測定対象物の状態変化を測定し、得られた情報をコンクリート構造物の計画的な保全に活用することができるセンサー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のセンサー装置は、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記第1の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の不動態膜の有無により前記第1の電極と前記第2の電極との電位差が変化することを特徴とする。
このように構成されたセンサー装置によれば、第1の電極の設置環境のpH変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
また、第1の電極の設置環境の塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜消失により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することもできる。
【0007】
本発明のセンサー装置では、前記機能素子は、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能を有することが好ましい。
これにより、第1の電極と第2の電極との電位差に基づいて、第1の電極および第2の電極の設置環境のpHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知することができる。
【0008】
本発明のセンサー装置は、前記第2の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第2の不動態膜を消失する金属であることを特徴とする。
これにより、第2の電極の不動態膜の有無、あるいは不動態膜破壊によっても、第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。この結果、第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する2点で、pHまたは塩化物イオン濃度が設定値以下か否か、より正確に検知することができる。
【0009】
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料は、測定部位のpHが第1のpHになったとき、表面に前記第1の不動態膜を形成するかまたは表面に存在した前記第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第2の金属材料は、測定部位のpHが第2のpHになったとき、表面に前記第2の不動態膜を形成するかまたは表面に存在した前記第2の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1のpHと前記第2のpHとは異なることが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極が設置された環境のpHが第1のpH以下か否かおよび第2のpH以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
【0010】
本発明のセンサー装置では、前記第1のpHは、8以上10以下であり、
前記第2のpHは、7以下であることが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極の設置環境が中性状態に近付いていることを事前に知ることができる。このようなことから、例えば、センサー装置をコンクリートの状態測定に用いた場合、コンクリート中の鉄筋の腐食防止の対策を事前に行うことができる。また、第1の電極および第2の電極の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることもできる。
【0011】
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料は、測定部位の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度よりも大きい環境になったとき、前記第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第2の金属材料は、測定部位の塩化物イオン濃度が第2の塩化物イオン濃度よりも大きい環境になったとき、前記第2の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の塩化物イオンと前記第2の塩化物イオン濃度とは異なることが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極が設置された環境の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度以下か否かおよび第2の塩化物イオン濃度以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
【0012】
本発明のセンサー装置では、前記第1の塩化物イオン濃度は、1.0kg/m以上1.5kg/m以下であり、前記第2の塩化物イオン濃度は、前記第1の塩化物イオン濃度よりも大きいことが好ましい。
これにより、例えば、センサー装置をコンクリートの状態測定に用いた場合、コンクリート中の鉄筋の腐食防止の対策を事前に行うことができる。
【0013】
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料は、鉄または鉄系合金であることが好ましい。
鉄または鉄系合金(鉄系材料)は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、第1の金属材料をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料とすることが可能であり、第1の金属材料を鉄筋と同一材料とすることにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐蝕状態を効果的に検知することができる。
【0014】
本発明のセンサー装置では、前記第2の金属材料は、鉄または鉄系合金であることが好ましい。
鉄または鉄系合金(鉄系材料)は比較的安価で入手が容易である。また、例えば、センサー装置をコンクリート構造物の状態測定に用いた場合、第2の金属材料をコンクリート構造物中の鉄筋と同一材料とすること可能であり、第2の金属材料を鉄筋と同一材料とすることにより、コンクリート構造物中の鉄筋の腐蝕状態を効果的に検知することができる。
【0015】
本発明のセンサー装置では、前記第2の金属材料は、不動態膜を形成しないことが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極の設置環境が強アルカリ状態から中性状態へ変化するとき、その変化を1段階で高精度に検知することができる。
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料は、pHが8以上10以下のpHよりも大きい環境下で前記第1の不動態膜を形成することが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極の設置環境が中性状態になってしまったことを知ることができる。このようなことから、例えば、センサー装置をコンクリートの状態測定に用いた場合、コンクリート中の鉄筋の腐食防止の対策を事前に行うことができる。
【0016】
本発明のセンサー装置では、前記第1の金属材料は、塩化物イオン濃度が1kg/mよりも大きい環境下で前記第1の不動態膜が消失することが好ましい。
これにより、例えば、センサー装置をコンクリートの状態測定に用いた場合、第1の電極と第2の電極との電位差に基づいて、第1の電極および第2の電極の設置環境の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知することができる。
【0017】
本発明のセンサー装置は、前記基板と、
前記基板上に設けられ、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記基板上に前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記基板上に載置され、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子と、
前記機能素子を覆う封止部とを有し、
前記第1の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の不動態膜の有無により前記第1の電極と前記第2の電極との電位差が変化することを特徴とする。
このように構成されたセンサー装置によれば、第1の電極の設置環境のpH変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
また、第1の電極の設置環境の塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜破壊により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することもできる。
【0018】
本発明のセンサー装置では、前記測定対象物は、コンクリートであることが好ましい。
これにより、コンクリートのpH変化に伴う状態変化を検知することができる。
本発明の測定方法は、本発明のセンサー装置の前記第1の電極および前記第2の電極を測定対象物内にそれぞれ埋設し、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象物の状態を測定することを特徴とする。
このような測定方法によれば、第1の電極および第2の電極の設置環境のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することができる。
【0019】
本発明の測定方法は、測定対象物内に、不動態膜を形成する第1の金属材料で構成された第1の電極と、前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極とをそれぞれ埋設し、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象物の状態を測定することを特徴とする。
このような測定方法によれば、第1の電極および第2の電極の設置環境のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極と第2の電極との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極および第2の電極の設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
【0020】
本発明の測定方法では、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象物の前記第1の電極および前記第2の電極が埋設された部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知することが好ましい。
これにより、測定対象物のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
【0021】
本発明の測定方法では、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象物の品質を測定することが好ましい。
これにより、測定対象物のpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う品質変化を検知することができる。
本発明の測定方法では、前記測定対象物は、コンクリートであることが好ましい。
これにより、コンクリートのpH変化あるいは塩化物イオン濃度変化に伴う状態変化を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。
【図2】図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す第1の電極、第2の電極および機能素子を説明するための平面図である。
【図4】図2に示す第1の電極、第2の電極を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)である。
【図5】図2に示す機能素子を説明するための断面図(図3中のB−B線断面図)である。
【図6】図2に示す機能素子に備えられた差動増幅回路を示す回路図である。
【図7】(a)は、図2に示す第1の電極(Fe)のpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図、(b)は、図2に示す第2の電極(FeAl)のpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図である。
【図8】図1に示すセンサー装置の作用の一例を説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のセンサー装置および測定方法の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図、図2は、図1に示すセンサー装置の概略構成を示すブロック図、図3は、図2に示す第1の電極、第2の電極および機能素子を説明するための平面図、図4は、図2に示す第1の電極、第2の電極を説明するための断面図(図3中のA−A線断面図)、図5は、図2に示す機能素子を説明するための断面図(図3中のB−B線断面図)、図6は、図2に示す機能素子に備えられた差動増幅回路を示す回路図、図7(a)は、図2に示す第1の電極(Fe)のpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図、図7(b)は、図2に示す第2の電極(FeAl)のpHおよび電位と状態との関係の一例を示す図、図8は、図1に示すセンサー装置の作用の一例を説明するための図である。
【0024】
なお、以下では、本発明のセンサー装置および測定方法をコンクリート構造物の品質測定に用いる場合を例に説明する。
図1に示すセンサー装置1は、コンクリート構造物100の品質を測定するものである。
コンクリート構造物100は、コンクリート101内に複数の鉄筋102が埋設されている。そして、センサー装置1は、コンクリート構造物100のコンクリート101内の鉄筋102付近に埋設されている。なお、センサー装置1は、コンクリート構造物100の打設する際に、コンクリート101の硬化前に鉄筋に固定して埋め込んでもよいし、打設後に硬化したコンクリート101に穿孔して埋め込んでもよい。
【0025】
このセンサー装置1は、本体2と、その本体2の表面に露出した第1の電極3および第2の電極4とを有する。本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、電極面がコンクリート構造物100の外表面に平行または略平行となるように設置されている。そして、第1の電極3および第2の電極4は、pH変化に伴って、これらの間の電位差が変化するように構成されている。なお、第1の電極3および第2の電極4については、後に詳述する。
また、センサー装置1は、図2に示すように、第1の電極3および第2の電極4に電気的に接続された機能素子51と、電源52と、温度センサー53と、通信用回路54と、アンテナ55と、発振器56とを有し、これらが本体2内に収納されている。
【0026】
以下、センサー装置1を構成する各部を順次説明する。
(本体)
本体2は、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51等を支持する機能を有する。
このような本体2は、図4および図5に示すように、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51を支持する基板21を有する。なお、基板21は、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56をも支持するが、図3〜5では、説明の便宜上、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の図示を省略している。
【0027】
この基板21は、絶縁性を有する。基板21としては、特に限定されず、例えば、アルミナ基板、樹脂基板等を用いることができる。
この基板21上には、例えばソルダーレジストのような絶縁性の樹脂組成物で構成された絶縁層23が設けられている。そして、この絶縁層23を介して基板21上には、第1の電極3、第2の電極4および機能素子51が実装されている。
【0028】
図5に示すように、この基板21上には、機能素子51(集積回路チップ)が保持され、第1の電極3と第2の電極4と機能素子51の導体部61、62(電極パッド)が接続されている。
この導体部61は、第1の電極3と導体部516a、516d、および、トランジスタ514aのゲート電極とを電気的に接続している。また、導体部62は、第2の電極4と導体部516b、516e、および、トランジスタ514bのゲート電極とを電気的に接続している。第1の電極3と第2の電極4は、各々、トランジスタ514a、514bのゲート電極と接続しているためフローテイング状態にある。515aと515bは、集積回路の層間絶縁膜であり、25は、集積回路の保護膜である。
【0029】
また、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を収納する機能を有する。
特に、本体2は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を液密的に収納するように構成されている。
具体的には、図4および図5に示すように、本体2は、封止部24を有する。この封止部24は、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を封止する機能を有する。これにより、センサー装置1を水分やコンクリートの存在下に設置した場合に、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56の劣化を防止することができる。
【0030】
ここで、封止部24は、開口部241を有し、この開口部241から第1の電極3および第2の電極4を露出させつつ、第1の電極3および第2の電極4以外の各部を覆うように設けられている(図3および図4参照)。これにより、封止部24が第1の電極3および第2の電極4以外の各部の劣化を防止しつつ、センサー装置1が測定を行うことができる。なお、開口部241は、第1の電極3の少なくとも一部および第2の電極4の少なくとも一部を露出するように形成されていればよい。
【0031】
封止部24の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部24は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0032】
(第1の電極、第2の電極)
第1の電極3および第2の電極4は、図4に示すように、それぞれ、前述した本体2の外表面上(より具体的には基板21上)に設けられている。特に、第1の電極3および第2の電極4は、同一平面上に設けられている。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の差が生じるのを防止することができる。
【0033】
また、第1の電極3および第2の電極4は、互いに電位の影響を受けない程度(例えば数mm)に離間している。
本実施形態では、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、薄膜状をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4の平面視形状は、それぞれ、四角形をなしている。また、第1の電極3および第2の電極4は、平面視にて、互いの形状および面積が等しくなっている。
【0034】
このような第1の電極3は、不動態膜を形成する第1の金属材料(以下、単に「第1の金属材料」とも言う)で構成されている。このように構成された第1の電極3は、pHの変化によって不動態膜が形成されたり破壊されたりする。このような第1の電極3に不動態膜が形成された状態(消失した状態)では不活性(貴)であり、自然電位が高くなる(貴化する)。一方、第1の電極は、不動態膜が破壊された状態(消失された状態)では活性(卑)である。そのため、第1の電極3の電位は、pH変化に伴う不動態膜の有無により急峻に変化する。
【0035】
第1の金属材料としては、不動態膜が形成される限り、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Mg、Znまたはこれらを含む合金等が挙げられる。
Feは、pHが9よりも大きいときに不動態膜を形成する(図7(a)参照)。また、FeAl(Al0.8%)系炭素鋼は、pHが4よりも大きいときに不動態膜を形成する(図7(b)参照)。また、Niは、pHが8〜14であるときに不動態膜を形成する。また、Mgは、pHが10.5よりも大きいときに不動態膜を形成する。また、Znは、pHが6〜12であるときに不動態膜を形成する。
【0036】
中でも、第1の金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料(炭素鋼、合金鋼)であるのが好ましい。鉄系材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、第1の金属材料をコンクリート構造物100の鉄筋102と同一材料とすることが可能であり、第1の金属材料を鉄筋102と同一材料とすることにより、鉄筋102の腐蝕環境状態を効果的に検知することができる。例えば、第1の電極3がFeで構成されている場合、pHが9以上か否かの判断ができる。
【0037】
一方、第2の電極4は、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料(以下、単に「第2の金属材料」とも言う)で構成されている。このように構成された第2の電極4は、前述したように不動態膜の有無により第1の電極3の電位が変化する際に、不導体膜の形成や破壊(消失)が無く、急激な電位の変化がない。そのため、前述したように不動態膜の有無により第1の電極3の電位が変化する際に、第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境(本実施形態ではコンクリート101の鉄筋102付近)のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
【0038】
第2の金属材料としては、第1の金属材料とは異なる金属材料であり、電極として機能し得るものであれば、特に限定されず、各種金属材料を用いることができる。
また、第2の金属材料は、前述した第1の金属材料と異なる金属材料であれば、不動態膜を形成するものであってもよいし、不動態膜を形成しないものであってもよい。
第2の金属材料が不動態膜を形成するものである場合、第2の金属材料として、上述の第1の金属材料として例示した金属を挙げることができる。
【0039】
本発明の好ましい態様においては、第1の金属材料が不動態膜を形成するpHの範囲の下限値を第1のpH(第1の不動態化pH)とし、第2の金属材料が不動態膜を形成するpHの範囲の下限値を第2のpH(第2の不動態化pH)としたとき、第1のpHおよび第2のpHが互いに異なる。すなわち、第1の金属材料は、第1のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成し、第2の金属材料は、第1のpHとは異なる第2のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成する。これにより、第1の電極3および第2の電極4が設置された環境のpHが第1のpH以下か否かおよび第2のpH以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
【0040】
この場合、第1のpHが8以上10以下であり、かつ、第2のpHが7以下であるのが好ましい。これにより、第1のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が中性状態に近付いていることを事前に知ることができる。このようなことから、本実施形態にように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、鉄筋102の腐食防止の対策を事前に行うことができる。また、第2のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることもできる。
【0041】
また、この場合、第2の金属材料は、FeまたはFeを含む合金(Fe系合金)、すなわち鉄系材料であるのが好ましい。鉄系材料は安価で入手が容易である。また、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、第2の金属材料を鉄筋102と同一材料とすることが可能であり、第2の金属材料を鉄筋102と同一材料とすることにより、鉄筋102の腐蝕状態を効果的に検知することができる。
【0042】
一方、第2の金属材料が不動態膜を形成しないものである場合、第2の金属材料として、Pt、Au等を挙げることができる。第2の金属材料が不動態膜を形成しないものである場合、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が強アルカリ状態から強酸性状態へ変化するとき、その変化を1段階で高精度に検知することができる。
この場合、第1の金属材料は、3以上5以下のpH、または、8以上10以下のpHよりも大きいpHとなったときに不動態膜を形成するものであるのが好ましい。3以上5以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態になってしまったことを知ることができる。また、8以上10以下のpH以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境が酸性状態に近付いていることを事前に知ることができる。
【0043】
本発明の他の態様によれば、第2の金属材料が不動態膜を形成するものである場合、第1の金属材料の不動態膜破壊が始まる塩化物イオン濃度下限値を第1の塩化物イオン濃度とし、第2の金属材料の不動態膜破壊が始まる塩化物イオン濃度下限値を第2の塩化物イオン濃度としたとき、第1の塩化物イオン濃度および第2の塩化物イオン濃度が互いに異なる。すなわち、第1の金属材料は、第1の塩化物イオン濃度よりも大きくなったときに不動態膜破壊が始まり、第2の金属材料は、第1の塩化物イオン濃度とは異なる第2の塩化物イオン濃度よりも大きくなったときに不動態膜の破壊が始まる。これにより、第1の電極3および第2の電極4が設置された環境の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度以下か否かおよび第2の塩化物イオン濃度以下か否かをそれぞれ正確に検知することができる。
【0044】
この場合、第1の塩化物イオン濃度が1.0kg/m以上1.5kg/m以下(好ましくは1.2kg/m程度)であり、かつ、第2の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度より大きいことが好ましい。これにより、第1の塩化物イオン濃度以下か否かを検知することにより、第1の電極3および第2の電極4の設置環境に塩化物イオンが侵入してきているかどうかを知ることができる。例えば、第1の金属材料に、第1の塩化物イオン濃度が約1.2kg/mの炭素鋼(SD345)を用い、第2の金属材料に第2の塩化物イオン濃度が約20kg/mであるSUS304を用いる。このように構成された第2の電極4は、塩化物イオン濃度が1.2kg/mを超えて不動態膜破壊が始まることにより第1の電極3の電位が変化する際に、不動態膜の破壊(消失)が無く、急激な電位の変化がない。そのため、不動態膜の有無により第1の電極3の電位が変化する際に、第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境(本実施形態ではコンクリート101の鉄筋102付近)の塩化物イオン濃度が設定値1.2kg/mを超えているか否かを正確に検知することができる。第2の金属材料に耐性に優れたSUS316やSUS329J4Lを用いることもできる。
【0045】
このようなことから、本実施形態のように、センサー装置1をコンクリート構造物100の状態測定に用いた場合、外部からコンクリート101内に侵入するCO(中性化)や塩素イオンをコンクリート構造物100中の鉄筋102に届く前に検知できる。従って、鉄筋102が腐食する前に腐食防止の対策を行うことができる。
このような第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
【0046】
(機能素子)
機能素子51は、前述した本体2の内部に埋設されている。なお、機能素子51は、前述した本体2の基板21に対して第1の電極3および第2の電極4とは、同一面に設けても、反対側に設けても良い。
この機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差を測定する機能を有する。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、第1の電極3および第2の電極4の設置環境のpHが設定値以下か否かを検知することができる。
【0047】
また、機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定対象部位のpHが設定値以下か否かを検知する機能をも有する。これにより、コンクリート構造物100のpH変化に伴う状態変化を検知することができる。
このような機能素子51は、例えば、集積回路である。より具体的には、機能素子51は、例えば、MCU(マイクロコントロールユニット)であり、図2に示すように、CPU511と、A/D変換回路512と、差動増幅回路514とを有する。
【0048】
より具体的に説明すると、機能素子51は、図5に示すように、基板513と、基板513上に設けられた複数のトランジスタ514a、514b、514cと、トランジスタ514a、514b、514cを覆う層間絶縁膜515a、515bと、配線および導体ポストを構成する導体部516a、516b、516c、516d、516e、515fと、保護膜25と、電極パッドを構成する導体部61、62とを有する。
【0049】
基板513は、例えばSOI基板であり、CPU511およびA/D変換回路512が形成されている。基板513としてSOI基板を用いることにより、トランジスタ514a〜514cをSOI型MOSFETとすることができる。
複数のトランジスタ514a、514b、514cは、それぞれ例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、差動増幅回路514の一部を構成するものである。
【0050】
差動増幅回路514は、図6に示すように、3つのトランジスタ514a〜514cと、カレントミラー回路514dとで構成されている。
導体部516aは、その一端がトランジスタ514aのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516dに接続されている。導体部516dは、導体部61を介して第1の電極3に電気的に接続されている。これにより、トランジスタ514aのゲート電極と第1の電極3とが電気的に接続されている。そのため、第1の電極3の電位の変化に応じて、トランジスタ514aのドレイン電流が変化する。
【0051】
同様に、導体部516bは、その一端がトランジスタ514bのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516eに接続されている。導体部516eは、導体部62を介して第2の電極4に電気的に接続されている。これにより、トランジスタ514bのゲート電極と第1の電極4とが電気的に接続されている。そのため、第2の電極4の電位の変化に応じて、トランジスタ514bのドレイン電流が変化する。
【0052】
また、導体部516cは、その一端がトランジスタ514cのゲート電極に接続され、他端が前述した導体部516fに接続されている。
また、機能素子51は、電源52からの通電により作動する。電源52は、機能素子51を動作可能な電力を供給できるものであれば、特に限定されず、例えば、ボタン型電池のような電池であってもよいし、圧電素子のような発電機能を有する素子を用いた電源であってもよい。
【0053】
また、機能素子51は、温度センサー53の検知温度情報を取得し得るように構成されている。これにより、測定部位の温度に関する情報も得ることができる。このような温度に関する情報を用いることにより、測定部位の状態をより正確に測定したり、測定部位の変化を高精度に予想したりすることができる。
温度センサー53は、測定対象物であるコンクリート構造物100の測定部位の温度を検知する機能を有する。このような温度センサー53としては、特に限定されず、例えば、サーミスター、熱電対等の公知の様々な種類の温度センサーを用いることができる。
【0054】
また、機能素子51は、通信用回路54を駆動制御する機能をも有する。例えば、機能素子51は、第1の電極3と第2の電極4との電位差に関する情報(以下、単に「電位差情報」ともいう)と、測定部位のpHが設定値以下か否かに関する情報(以下、単に「pH情報」ともいう)とをそれぞれ通信用回路54に入力する。また、機能素子51は、温度センサー53によって検知された温度に関する情報(以下、単に「温度情報」ともいう)も併せて通信用回路54に入力する。
【0055】
通信用回路54は、アンテナ55に給電する機能(送信機能)を有する。これにより、通信用回路54は、入力された情報をアンテナ55を介して無線送信することができる。送信された情報は、コンクリート構造物100の外部に設けられた受信機(リーダー)で受信される。
この通信用回路54は、例えば、電磁波を送信するための送信回路、信号を変調する機能を有する変調回路等を有する。なお、通信用回路54は、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を復調する機能を有する復調回路等を有していてもよい。
【0056】
また、アンテナ55は、特に限定されないが、例えば、金属材料、カーボン等で構成され、巻線、薄膜等の形態をなす。
また、機能素子51は、発振器56からのクロック信号を取得し得るように構成されている。これにより、各回路の同期をとったり、各種情報に時刻情報を付加したりすることができる。
【0057】
発振器56は、特に限定されないが、例えば、水晶振動子を利用した発振回路で構成されている。
以上説明したように構成されたセンサー装置1を用いた測定方法(本発明の測定方法の一例)は、第1の電極3および第2の電極4を測定対象物であるコンクリート構造物100内にそれぞれ埋設し、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、コンクリート構造物100の状態を測定する。
【0058】
以下、第1の電極3がFeで構成され、第2の電極4がFeAlで構成されている場合を一例として、センサー装置1の作用を説明する。
打設直後のコンクリート構造物100において、通常、適切に打設されていれば、コンクリート101は強アルカリ性を呈する。そのため、このとき、図7(a)、(b)に示すように、第1の電極3および第2の電極4は、それぞれ、安定な不動態膜を形成する。すなわち、図8(a)に示すように、第1の電極3は、その表面に不動態膜31が形成され、第2の電極4は、その表面に不動態膜41が形成される。これにより、第1の電極3および第2の電極4の自然電位がそれぞれ上がっている(貴化している)。その結果、コンクリートの打設直後における第1の電極3と第2の電極4との電位差は小さくなる。
【0059】
その後、コンクリート構造物100は、二酸化炭素、酸性雨、排気ガス等の影響により、コンクリート101のpHが徐々に酸性側に変化していく。
そして、コンクリート101のpHが9程度にまで下がると、図8(b)に示すように、第2の電極4は、その不動態膜41が安定であり、自然電位の変化が少ないものの、第1の電極3は、その不動態膜が崩壊し始め、自然電位が下がる(卑化する)。これにより、第1の電極3と第2の電極4との電位差が大きくなる。
【0060】
また、コンクリート101のpHが4程度まで下がると、図8(c)に示すように、第2の電極4も、その不動態膜が崩壊し始め、自然電位が下がる。このとき、第1の電極3および第2の電極4は、ともに自然電位が下がっているので、第1の電極3と第2の電極4との電位差は、再び小さくなる。なお、このとき、第1の電極3および第2の電極4の腐蝕がそれぞれ進む。
【0061】
このように、pHが9程度となるタイミングと、pHが4程度となるタイミングとの2つのタイミングで、第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、測定部位のpHが9程度となったこと、および、測定部位のpHが4程度となったことをそれぞれ高精度に検知することができる。
このような検知結果を利用することにより、コンクリート構造物100の打設後の品質の経時変化をモニタリングすることができる。そのため、鉄筋102が腐蝕する前に、コンクリート101の劣化(中性化や塩分侵入)を把握することができる。これにより、鉄筋102が腐食する前に、コンクリート構造物100に塗装や防腐剤混入モルタル等による補修工事を行うことが可能となる。
【0062】
また、コンクリート構造物100の打設時に異常があった否かを判断することもできる。そのため、コンクリート構造物100の初期トラブルを防止し、コンクリート構造物100の品質を向上させることができる。
以上説明したように第1実施形態のセンサー装置1およびこれを用いた測定方法によれば、第1の電極3および第2の電極4の設置環境(すなわちコンクリート101)のpH変化に伴う不動態膜の有無により第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。
【0063】
また、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の第1の電極3および第2の電極4が埋設された部位のpHが設定値以下か否かを検知することができる。また、第1の電極3と第2の電極4との電位差に基づいて、測定対象物であるコンクリート構造物100の品質を測定することができる。これにより、コンクリート構造物100のpH変化に伴う状態変化を検知することができる。
また、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の塩化物イオン濃度変化に伴う不動態膜破壊(消失)により第1の電極3と第2の電極4との電位差が急峻に変化する。そのため、第1の電極3および第2の電極4の設置環境の塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを正確に検知することができる。
【0064】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係るセンサー装置の使用状態の一例を示す図である。
以下、第2実施形態について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態のセンサー装置は、第1の電極および第2の電極の平面視形状および数が異なる以外は、第1実施形態のセンサー装置とほぼ同様である。なお、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0065】
本実施形態のセンサー装置1Aは、本体2Aと、その本体2Aの表面に露出した複数の第1の電極3a、3b、3cおよび複数の第2の電極4a、4b、4cとを有する。
本実施形態では、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cは、互いに離間して設けられている。また、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cは、それぞれ、電極面がコンクリート構造物100の外表面に対して垂直または略垂直となるように設置されている。
【0066】
また、複数の第1の電極3a、3b、3cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに異なる。具体的には、コンクリート構造物100の外表面側から内側へ、複数の第1の電極3a、3b、3cがこの順に並んで設けられている。
同様に、複数の第2の電極4a、4b、4cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに異なる。具体的には、コンクリート構造物100の外表面側から内側へ、複数の第2の電極4a、4b、4cがこの順に並んで設けられている。
【0067】
さらに、第1の電極3aおよび第2の電極4aは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。また、第1の電極3bおよび第2の電極4bは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。第1の電極3cおよび第2の電極4cは、コンクリート構造物100の外表面からの距離が互いに等しくなるように設置されている。
【0068】
このような第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cでは、第1の電極3a、3b、3cが、それぞれ、第1の金属材料で構成され、第2の電極4a、4b、4cが、それぞれ、第2の金属材料で構成されている。そして、第1の電極3aと第2の電極4aとが対をなし、第1の電極3bと第2の電極4bとが対をなし、第1の電極3cと第2の電極4cとが対をなす。
【0069】
本実施形態では、センサー装置1Aは、第1の電極3aと第2の電極4aとの電位差、第1の電極3bと第2の電極4bとの電位差、および、第1の電極3cと第2の電極4cとの電位差をそれぞれ図示しない機能素子により測定することができるように構成されている。
このような第2実施形態に係るセンサー装置1Aによれば、第1の電極3aおよび第2の電極4aの設置環境、第1の電極3bおよび第2の電極4bの設置環境、および、第1の電極3cおよび第2の電極4cの設置環境のpHがそれぞれ設定値以下か否かを正確に検知することができる。電位差をそれぞれ測定し、そのため、第1の電極3a、3b、3cおよび第2の電極4a、4b、4cの設置環境のpHが設定値以下か否かを正確に検知することができる。すなわち、コンクリート構造物100の外表面からの深さが異なる位置でのpHがそれぞれ設定値以下か否かを正確に検知することができる。これにより、コンクリート101のpHが酸性側に変化する速度を知ることができる。そのため、コンクリート構造物100の中性化(や塩害)の深さ方向への侵入予測を効果的に行うことができる。
以上、本発明のセンサー装置および測定方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
例えば、本発明のセンサー装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、例えば、本発明の測定方法では、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ基板上に設けられた場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、第1の電極および第2の電極は、例えば、センサー装置の本体の封止樹脂で構成された部分の外表面上に設けてもよい。
【0071】
また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極がそれぞれ薄膜状をなす場合を例に説明したが、これに限定されず、第1の電極および第2の電極の形状は、それぞれ、例えば、ブロック状、線状等をなしていてもよい。また、前述した実施形態では第1の電極および第2の電極をそれぞれセンサー装置の本体の外表面に沿って設けているが、第1の電極および第2の電極をそれぞれセンサー装置の本体の外表面から突出させてもよい。また、第1の電極および第2の電極の設置位置、大きさ(大小関係)等についても、前述したような測定が可能であれば、前述した実施形態に限定されず、任意である。
【0072】
また、前述した実施形態では機能素子がCPU、A/D変換回路および差動増幅回路を有する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、機能素子には、ROM、RAM、各種駆動回路等の他の回路が組み込まれていてもよい。
また、前述した実施形態では第1の電極と第2の電極との電位差に関する情報をアクティブタグ通信により無線送信によりセンサー装置外部へ送信する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、パッシブタグ通信を用いて情報をセンサー装置の外部へ送信してもよいし、有線により情報をセンサー装置の外部へ送信してもよい。
【0073】
また、前述した実施形態では機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を本体2内に収納し、これらを第1の電極3および第2の電極4とともに測定対処物であるコンクリート構造物100内に埋設する場合を例に説明したが、機能素子51、電源52、温度センサー53、通信用回路54、アンテナ55および発振器56を測定対象物の外部に設けてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1‥‥センサー装置 1A‥‥センサー装置 2‥‥本体 2A‥‥本体 3‥‥第1の電極 4‥‥第2の電極 21‥‥基板 22a‥‥導体部 22b‥‥導体部 22c‥‥導体部 23‥‥絶縁層 24‥‥封止部 25‥‥保護膜 3a、3b、3c‥‥第1の電極 31‥‥不動態膜 4a、4b、4c‥‥第2の電極 41‥‥不動態膜 51‥‥機能素子 52‥‥電源 53‥‥温度センサー 54‥‥通信用回路 55‥‥アンテナ 56‥‥発振器 61‥‥導体部 62‥‥導体部 100‥‥コンクリート構造物 101‥‥コンクリート 102‥‥鉄筋 241‥‥開口部 512‥‥変換回路 513‥‥基板 514‥‥差動増幅回路 514a‥‥トランジスタ 514b‥‥トランジスタ 514c‥‥トランジスタ 514d‥‥カレントミラー回路 515a、515b‥‥層間絶縁膜 516a‥‥導体部 516b‥‥導体部 516c‥‥導体部 516d‥‥導体部 516e‥‥導体部 516f‥‥導体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子とを有し、
前記第1の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の不動態膜の有無により前記第1の電極と前記第2の電極との電位差が変化することを特徴とするセンサー装置。
【請求項2】
前記機能素子は、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差に基づいて、前記測定対象部位のpHあるいは塩化物イオン濃度が設定値以下か否かを検知する機能を有する請求項1に記載のセンサー装置。
【請求項3】
前記第2の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第2の不動態膜を消失する金属であることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサー装置。
【請求項4】
前記第1の金属材料は、測定部位のpHが第1のpHになったとき、表面に前記第1の不動態膜を形成するかまたは表面に存在した前記第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第2の金属材料は、測定部位のpHが第2のpHになったとき、表面に前記第2の不動態膜を形成するかまたは表面に存在した前記第2の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1のpHと前記第2のpHとは異なる請求項3に記載のセンサー装置。
【請求項5】
前記第1のpHは、8以上10以下であり、
前記第2のpHは、7以下である請求項4に記載のセンサー装置。
【請求項6】
前記第1の金属材料は、測定部位の塩化物イオン濃度が第1の塩化物イオン濃度よりも大きい環境になったとき、前記第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第2の金属材料は、測定部位の塩化物イオン濃度が第2の塩化物イオン濃度よりも大きい環境になったとき、前記第2の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の塩化物イオンと前記第2の塩化物イオン濃度とは異なる請求項3に記載のセンサー装置。
【請求項7】
前記第1の塩化物イオン濃度は、1.0kg/m以上1.5kg/m以下であり、前記第2の塩化物イオン濃度は、前記第1の塩化物イオン濃度よりも大きい請求項6に記載のセンサー装置。
【請求項8】
前記第1の金属材料は、鉄または鉄系合金である請求項1ないし7のいずれかに記載のセンサー装置。
【請求項9】
前記第2の金属材料は、鉄または鉄系合金である請求項1ないし8のいずれかに記載のセンサー装置。
【請求項10】
前記第2の金属材料は、不動態膜を形成しない請求項1または2に記載のセンサー装置。
【請求項11】
前記第1の金属材料は、pHが8以上10以下のpHよりも大きい環境下で前記第1の不動態膜を形成する請求項10に記載のセンサー装置。
【請求項12】
前記第1の金属材料は、塩化物イオン濃度が1kg/mよりも大きい環境下で前記第1の不動態膜が消失する請求項10に記載のセンサー装置。
【請求項13】
前記基板と、
前記基板上に設けられ、第1の金属材料で構成された第1の電極と、
前記基板上に前記第1の電極に対して離間して設けられ、前記第1の金属材料とは異なる第2の金属材料で構成された第2の電極と、
前記基板上に載置され、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差を測定する機能を有する機能素子と、
前記機能素子を覆う封止部とを有し、
前記第1の金属材料は、測定部位の環境変化に伴って、表面に第1の不動態膜が形成するかまたは表面に存在した第1の不動態膜を消失する金属であり、
前記第1の不動態膜の有無により前記第1の電極と前記第2の電極との電位差が変化することを特徴とするセンサー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−198120(P2012−198120A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62763(P2011−62763)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】