説明

センサー

本出願は、焦電または圧電ポリマー基板、例えば、PVDF(3)と、該基板の表面上における透明電極層(4)とを有する変換器(10)、透明電極層上におけるパリレンの層(12)、および変換器に固定された試薬(17)(試薬は分析物または分析物の誘導体と結合しうる結合部位を有する)を含んでなる、分析物の検出に用いるためのセンサー(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本発明は、センサー、特に、改善された感度と再現性とを提供する、被覆された変換器を用いるセンサーに関する。
【0002】
背景技術
バイオアッセイ、例えば免疫アッセイで溶液中の分析物、例えば生物学的に重要な化合物の測定は、広い適用性を有している。免疫アッセイとは、生体液中における分析物の存在、または更に一般的には濃度を測定する試験である。それは典型的には抗体に対する抗原の特異的結合に関係している。抗体はポリクローナルでもまたはモノクローナルでもよく、分析物の一つのエピトープに対する結合性の作出および抑制の再現性を含めて、モノクローナル抗体はいくつかの利点を有する。分析物の濃度の定量的測定を行うために、応答は既知濃度の標準サンプルと比較される。抗体または抗原の濃度は様々な方法で測定されるが、最多のうち一つは抗原または抗体を標識して、その標識の存在を検出することである。
【0003】
免疫アッセイは競合的でもまたは非競合的でもよい。競合免疫アッセイにおいて、未知サンプル中の抗原は、典型的には固相に固定された抗体と結合する上で、標識された抗原と競合する。抗体部位へ結合した標識抗原の量が、次いで、通常固相へ結合した標識抗原を分離して測定することにより、測定される。明らかに、応答は未知サンプル中における抗原の濃度と反比例する。類似したアッセイ原理でも、溶液中の標識抗体が固相に固定され、そしてサンプル中に存在する抗原と競合して、類似した反比例を呈する。免疫測定アッセイとも称される非競合免疫アッセイでは、未知サンプル中の抗原が過剰の固定抗体(“キャプチャー”抗体)と結合して、結合抗原の量が測定される。競合法と異なり、非競合法の結果は抗原の濃度と正比例する。 “サンドイッチアッセイ”とも称されるいわゆる“二部位”免疫測定アッセイにおいて、抗原はキャプチャー抗体部位と結合し、次いでキャプチャー抗体へ結合した抗原と結合する標識抗体が導入される。その後、該部位における標識抗体の量が測定される。
【0004】
典型的なサンドイッチ免疫アッセイでは、対象の抗原に特異的な抗体がポリスチレンのシートのようなポリマー担体に付着される。試験されるサンプル、例えば、細胞抽出物または血清もしくは尿のサンプルの一滴が該シート上に置かれ、それが抗体‐抗原複合体の形成後に洗浄される。抗原の異なる部位に特異的な抗体が次いで加えられ、担体が再び洗浄される。この第二抗体は標識を保有し(標識レポーター)、そのためそれは高感度で検出されうる。シートへ結合した第二抗体の量はサンプル中における抗原の量と比例する。このアッセイおよびこの種のアッセイに関連した他の態様もよく知られている(例えば、“The Immunoassay Handbook,2nd Ed.”,David Wild,Ed.,Nature Publishing Group,2001参照)。
【0005】
様々な分析および診断装置が免疫アッセイを行うために利用しうる。該装置は、対象の分析物と、選択的に結合するセンサーとを含んでおり、結合事象がそこで定量される。多くの装置は、検出される分析物の存在下で検出可能な変化、例えば変色を生じる試薬をセンサーとして用いている。
【0006】
WO90/13017号公報には、ストリップ形をとる焦電または他の熱電変換素子について開示されている。薄膜電極が用意され、1種以上の試薬が変換器表面に堆積される。試薬は検出される種と接触したときに、選択的色調変化を生じる。該装置は次いで典型的には検出器へ挿入され、そこでは変換器が通常LED光源により下から照射されて、試薬による光吸収が変換器表面で顕微的発熱として検出される。変換器からの電気シグナルアウトプットが、検出される種の濃度を算出するように処理される。
【0007】
WO90/13017号公報のシステムは、試薬との反応または組合せで試薬に変色をもたらす種の分析について提供する。例えば、試薬としては、pHおよび重金属指示色素、パラセタモールアッセイでアミノフェノールを検出するための試薬(例えば、アンモニア性銅溶液中のo‐クレゾール)、および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)でオキシドレダクターゼ酵素を検出するためのテトラゾリウム色素がある。しかしながら、このシステムはある用途に有用であるが、それは分析される種が試薬で変色を生じさせる分析のみに適すると考えられており、それが変換器の表面に置かれた試薬であるためである。したがって、このシステムは、試薬で変色を生じさせないか、または変色が変換器の表面上ではない場合だと、種の分析に適用できない。
【0008】
WO2004/090512号公報は、WO90/13017号公報において開示されたテクノロジーに基づく装置を開示しているが、電磁放射線の照射により試薬で無放射減衰により生じるエネルギーが、試薬が変換器と接触しない場合でも変換器により検出されること、および電磁放射線の照射と変換器により生じる電気シグナルとの時間遅延が膜の表面からの試薬の距離の関数であること、という知見に依存している。この知見は、変換器の表面へ結合した分析物とバルク液中の分析物とを装置に識別させられる、“デプスプロファイリング”(depth profiling)しうる装置をもたらしたのである。したがって、この出願は、結合事象の実行と、その事象の結果の検出との間に別な洗浄工程を行わずとも、アッセイ、典型的にはバイオアッセイで用いられうる装置について開示しているのである。
【0009】
WO90/13017号公報およびWO2004/090512号公報で開示された装置は広い適用性を見い出せ、更なる態様がWO2006/079795号公報、WO2007/107716号公報、WO2007/129064号公報、およびWO2007/141581において開示されている。
【0010】
共通の主題は、エネルギーの変化を電気シグナルへ変換しうる、焦電または圧電素子と、電極を有した変換器とをセンサーが内蔵していることである。図1はこの化学的感知装置1の原理を示している。装置1は電磁放射線で物質2の照射に際する物質2の発熱に依存している。装置1は、電極コーティング4、5を有する焦電または圧電変換器3を含んでなる。変換器3は好ましくは膜、例えば、分極ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜である。電極コーティング4、5は好ましくは約35nmの厚さを有する酸化インジウムスズ(ITO)から形成されるが、それ以下では電気伝導度が低すぎる1nmの下限から、それ以上では光透過度が低すぎる100nmの上限まで(それは95%T未満にすべきでない)、ほぼいかなる厚さも可能である。物質2はいずれか適切な技術を用いて変換器3にまたはその近くに保持され、ここでは上部電極コーティング4に付着して示されている。試薬はいかなる適切な形でもよく、複数種の試薬が堆積させうる。好ましくは、物質2は上部電極へ吸着され、例えば、イオン結合、水素結合、またはファンデルワールス力のような分子間力を介して共有カップリングまたは結合される。
【0011】
この装置の重要な特徴は、物質2が光、好ましくは可視光のような電磁放射線源6により照射された場合に熱を発することである。光源は、例えばLEDである。光源6は適切な波長の光(例えば、補色)で物質2を照射する。理論には拘束されないが、物質2は光を吸収して励起状態になり、次いで無放射減衰をうけ、それにより図1で円弧により示されたエネルギーを発生する、と考えられている。このエネルギーは主に熱の形(即ち、環境中の熱運動)をとるが、他の形のエネルギー、例えば衝撃波を生じてもよい。しかしながら、エネルギーは、変換器により検出されて、電気シグナルへ変換される。
【0012】
装置は測定される具体的試薬について較正されており、そのため無放射減衰により生じたエネルギーの正確な形は調べる必要がない。特記されない限り、用語“熱”はここでは無放射減衰により生じたエネルギーを意味するために用いられている。光源6は物質2を照射するように位置する。好ましくは、光源6は変換器3および電極4、5と実質上垂直に位置し、物質2は変換器3および電極4、5を介して照射される。光源は変換器内の内部光源でもよく、その場合は光源がガイドウェーブシステムである。ウェーブガイドは変換器自体でもよく、またはウェーブガイドは変換器に付着された追加層でもよい。照射の波長は用いられる標識に依存する。例えば、40nm金標識の場合に好ましい波長は525nmであり、炭素標識の場合に好ましい波長は650nmである。
【0013】
物質2により生じたエネルギーは変換器3により検出され、電気シグナルへ変換される。電気シグナルは検出器7により検出される。光源6および検出器7は双方とも制御器8の制御下にある。
【0014】
一つの態様において、光源6は“チョップ光(chopped light)”と称される一連の光パルス(ここで用いられている用語“光”は、具体的な波長が述べられていない限り、あらゆる形の電磁放射線を意味する)を発生する。原則として、単一の閃光、即ち1パルスの電磁放射線があれば、変換器3からシグナルを発生させる上で十分であろう。しかしながら、再現性あるシグナルを得るためには複数回の閃光が用いられ、実際にはチョップ光を要する。電磁放射線のパルスが適用される周波数は変えられる。下限として、パルス間の時間遅延は各パルスと求める電気シグナルの発生との時間遅延にとり十分でなければならない。上限として、各パルス間の時間遅延は、データを記録する際に要する期間が不合理に伸びるほど大きくてはならない。好ましくは、パルスの周波数は2〜50Hz、更に好ましくは5〜15Hz、最も好ましくは10Hzである。これは20〜500ms、66〜200ms、および100msのパルス間時間遅延に各々相当する。加えて、いわゆる“マーク‐スペース”比、即ちシグナル対オフシグナルの比率は好ましくは1であるが、他の比率もある状況下では有利となるために用いうる。チョッピングの異なる周波数または異なるマーク‐スペース比でチョップ光を発生する電磁放射線源は当業界で知られている。検出器7は、光源6からの光の各パルスと、変換器3から検出器7により検出された対応電気シグナルとの時間遅延(または“相関遅延”)を測定する。この時間遅延は距離dの関数である。
【0015】
光の各パルスと、再現性ある結果を呈する対応電気シグナルとの時間遅延を測定するために、どのような方法も用いうる。好ましくは、光の各パルスの開始から、熱の吸収に対応する電気シグナルで最大が検出器7により検出される時点まで、時間遅延が測定される。
【0016】
このように、物質2は変換器表面から離れてもよく、シグナルはそれでもなお検出しうる。更に、エネルギーを変換器3へ伝達しうる介在媒体を介してシグナルが検出しうるだけでなく、異なる距離dも識別でき(これは“デプスプロファイリング”と称されていた)、受け取ったシグナルの強度は変換器3の表面から具体的距離dにおける物質2の濃度と比例する。
【0017】
しかしながら、改善されたシグナル強度および再現性については希求されている。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明は:
焦電または圧電ポリマー基板と、該基板の表面上における透明電極層とを有する変換器、
透明電極層上におけるパリレン(parylene)の層、および
変換器に固定された試薬(試薬は分析物または分析物の誘導体と結合しうる結合部位を有する)、
を含んでなる、分析物の検出に用いるためのセンサーを提供する。
【0019】
パリレン層は、試薬の後付着のために改善された表面をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は以下の図面を参照して記載される。
【図1】図1はWO2004/090512号公報による装置を示す。
【図2】図2および3は本発明のセンサーの概略図を示す。
【図3】図2および3は本発明のセンサーの概略図を示す。
【図4】図4〜6は、パリレン層保有(図6)および非保有(図4および5)における基板のXPSスペクトルを示す。
【図5】図4〜6は、パリレン層保有(図6)および非保有(図4および5)における基板のXPSスペクトルを示す。
【図6】図4〜6は、パリレン層保有(図6)および非保有(図4および5)における基板のXPSスペクトルを示す。
【図7】図7は、パリレンC被覆PVDF/ITOの異なるシートの異なるエリアで測定された前進接触角を図で示す。
【図8】図8は、本発明のセンサーを内蔵したサンプルチャンバーを示す。
【図9】図9は本発明のセンサーを示す。
【図10】図10は、PBS緩衝液中で炭素粒子を用いた1ng/mL TSHに関する、光で刺激されたピエゾ膜アッセイ性能を示す(エラーバー=1標準偏差,リピートの数=12)。
【発明の具体的説明】
【0021】
図1に関して記載された装置から得られたシグナルの強度と、再現性とは、パリレンの層で変換器の表面を被覆することにより改善しうることを見出した(図2参照)。図2は、変換器10を有するセンサー9について示す。変換器10は、図1に関して前記されたタイプの焦電または圧電ポリマー基板と、該基板の表面上における透明電極層とから構成されている。
【0022】
基板は焦電または圧電ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン膜から形成される。ポリフッ化ビニリデンは周知の焦電/圧電ポリマーである。基板の表面は透明電極層で被覆されている。透明とは、少なくとも分析物と、試薬との結合事象の検出に用いられる電磁放射線の波長で層が透明であることを意味する。この層は、好ましくは酸化インジウムスズ(ITO)を含む。好ましい態様において、変換器10はITO被覆ポリフッ化ビニリデン膜である。
【0023】
変換器10は平面状変換器として図2で示されており、変換器10はパリレンの層12で被覆された第一表面11を有している。例えば両表面がサンプルと接触する個所では、変換器10の他の表面も被覆してよい(示さず)。
【0024】
パリレン層12はタンパク質の層13で更に被覆される。タンパク質は当業界でよく知られたタイプのビオチニル化疎水性タンパク質として示される。該タンパク質は、タンパク質主鎖14が変換器10に付着され、かつビオチン部分15が露出されて、図2に示されている。変換器10は、タンパク質層13を被覆するストレプトアビジン層16を更に含んでなる。ストレプトアビジン層16は試薬17をそこに結合させている。
【0025】
固定された試薬17は、検出される分析物または分析物の誘導体と結合することができる。結合事象が次いで前記のように検出される。サンプルが導入された場合、試薬17は好ましくは分析物または分析物の誘導体と選択的に結合するように産生された抗体である。
【0026】
図3は図2に関して記載されたものと類似したセンサー9を示しているが、但しパリレン層12はポリストレプトアビジン層16をそこに直接付着させている。ビオチニル化抗体17が次いでポリストレプトアビジン層16へ結合されている。
【0027】
表面は、該表面を安定化させる別なコーティング、例えばSurModics Inc.,Eden Prairie,MN,USAのStabilcoatで被覆してもよい(示さず)。
【0028】
パリレンは、〔2,2〕パラシクロファン類から誘導されるポリマーの種類を表す総称である。通常、パリレンはコーティング前に初期重合されず、むしろ熱分解堆積工程により被覆される表面へ堆積される。この工程は〔2,2〕パラシクロファンの蒸発を伴い、これが次いで熱分解で開裂されてジラジカルモノマーを形成し、その後、被覆される基板上にモノマーで堆積されてポリマーを形成する。開裂は〔2,2〕パラシクロファンの内部歪により促進される。蒸発条件は用いられる〔2,2〕パラシクロファンに依存するが、典型的には約50〜200℃および100〜200Nm−2、例えば150℃および135Nm−2で行われる。熱分解は典型的には400〜700℃の温度および40〜100Nm−2、例えば680℃および65Nm−2である。堆積は室温〜75℃および5〜50Nm−2、例えば35℃および15Nm−2で行われる。該工程は(パリレンCを用いて)下記スキームで要約されている:
【化1】

【0029】
本発明で用いられるパリレン類は、典型的には下記構造を有する〔2,2〕パラシクロファン類から得られる:
【化2】

(上記式中、

は、ハロゲン、アミノ、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10シクロアルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cシクロアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキレン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、またはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリンで置換されていることもある芳香族炭素環式またはヘテロ環式環、例えばフェニレン(好ましくは1,4‐フェニレン)、ナフタレン、ピリジンなどを表し、および
およびAは同一でもまたは異なってもよく、水素、ハロゲン、アミノ、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10シクロアルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cシクロアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキレン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、またはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリンを表す)。
【0030】
好ましくは、本発明によるパリレン類は下記構造を有する〔2,2〕パラシクロファン類から得られる:
【化3】

(上記式中、
およびAは前記と同義であり、S、S、S、およびSは同一でもまたは異なってもよく、水素、ハロゲン、アミノ、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10シクロアルキル、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cシクロアルキル、ハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキレン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐Cアルキル、またはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリン、好ましくはハロゲンで場合により置換されたC‐C10アルキリンを表す)。
【0031】
更に好ましくは、A、A、S、S、S、およびSは同一でもまたは異なってもよく、水素またはハロゲンを表す。ハロゲンは、好ましくはフッ素または塩素である。
【0032】
本発明で用いられるパリレンが得られる〔2,2〕パラシクロファン類の具体例としては、以下がある:
【化4】

【0033】
上記から明らかなように、本発明で用いられるように得られたパリレンポリマーは、以下の構造を有したポリマーである:
【化5】

(上記式中、

、A、およびAは前記と同義である)。
【0034】
一端堆積されると、パリレンは基板から容易には除去できない。これは、パリレンの低溶解性と相まって、一般的液相技術を用いて堆積パリレンを特徴づけることを困難としている。したがって、パリレンの重合度は変換器がパリレンモノマーへ曝された時間の長さで典型的に決められ、これは結果的にパリレン層の厚さに影響する。本発明のパリレン層は、好ましくは10nm〜100μm、更に好ましくは100nm〜10μm、最も好ましくは250nm〜1μmの厚さを有する。パリレン層が厚すぎると熱エネルギーは変換器へ十分に到達せず、それが薄すぎると層は脆弱であり、穴を形成する傾向も有する。
【0035】
好ましくは、本発明で用いられるパリレンは以下の構造を有する:
【化6】

(上記式中、A、A、S、S、S、およびSは前記と同義である)。
【0036】
特に好ましくは、A、A、S、S、S、およびSは同一でもまたは異なってもよく、水素またはハロゲンを表す。
【0037】
本発明で用いられるパリレン類の具体例としては、以下がある:
【化7】

【0038】
パリレンCが特に好ましい。
【0039】
タンパク質の層が、好ましくは、パリレン層と固定された試薬との間に組み込まれる。タンパク質層は変換器の表面、即ちパリレン層へ試薬を繋ぐ上で役立つ。タンパク質は典型的には非共有相互作用、主にファンデルワールス力のような疎水性相互作用により、パリレン層へ吸着される。タンパク質は天然でもまたは合成のポリペプチドでもよい。タンパク質はパリレン層へ非共有的に結合しうるほど十分疎水性にする。これは、タンパク質に疎水性領域を組み込むことによりなしうる。タンパク質が疎水性および疎水性領域を双方とも含有している場合、疎水性領域をパリレン層へ結合させて疎水性領域をパリレン層から外方へ向けさせる三次構造をタンパク質が形成しうる。この位置の場合、試薬へ結合させるために疎水性領域が用いられる。
【0040】
適切なタンパク質の例としては、α‐マクログロブリン(MW820,000)、ウシ血清アルブミン/ヒト血清アルブミン(MW約70,000)、卵アルブミン、α HS‐糖タンパク質(MW約49,000)、β1c/β1a‐グロブリン、免疫グロブリン(MW約150,000)、およびトランスフェリン(MW約90,000)がある。
【0041】
ヒト血清アルブミンまたはα HS‐糖タンパク質が用いられる場合、それらは好ましくは疎水性にされ、より高い分子量のポリマー分子を生じるように処理されるべきである。トランスフェリンが用いられる場合、この物質を本発明で有用にさせるには架橋で十分である。α‐マクログロブリンが用いられる場合、該分子は疎水性にさせるのみでよい。前処理なしで適したタンパク質としては、例えば、β‐リポタンパク質(MW約3,200,000)およびα‐リポタンパク質(MW約5,000,000〜20,000,000)がある。
【0042】
例えば、熱の使用、酸、変性剤、および/またはカオトロピックイオンでの処理、および/または疎水性化合物との化学的カップリングにより、疎水化が行われる。分子量の増加は、例えば、熱の使用、酸、変性剤および/またはカオトロピックイオンでの処理、および/または二または多官能性タンパク質試薬との架橋により行える。分子量500,000以上のタンパク質ポリマーが得られるまで処理が行われる。分子量100,000〜20,000,000、更に好ましくは500,000〜5,000,000のタンパク質ポリマーを用いることが、特に好ましい。
【0043】
架橋が必要とされる場合、疎水化は架橋前、架橋中、または架橋後に行われる。例えば、Biochem.Biophys.Acta,1980,624,13-20において記載されているように、1分間〜10時間にわたる40〜95℃の温度が加熱による疎水化に用いうる。酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、または塩酸が用いられる。通常の濃度は10分間〜16時間の作用期間にわたり1〜100mmol/Lである。適切なカオトロピックイオンとしては、例えば、チオシアン酸、ヨウ化物、フッ化物、臭化物、過塩素酸、および硫酸イオンがある。適切な変性剤としては、例えば、塩酸グアニジンおよび尿素がある。10mmol/L〜6mol/Lの濃度が通常用いられる。疎水性化合物の誘導体化では、好ましくは、可溶性脂肪酸、低および高分子量形の脂質、および合成ポリマー、例えばポリプロピレングリコール、またはポリスチレンの可溶性コポリマーが用いられる。誘導体化は周知の方法に従い行われる。二または多官能性化合物による架橋は、既知のタンパク質結合試薬で行われる。これらは、同一でもまたは異なってもよい少なくとも二つの官能基を含んだ化合物であり、これらの官能基を介してタンパク質の官能基と反応しうる。例えば、スクシンイミド、マレイミド、および/またはアルデヒド基が端部に存在するアルキル鎖からなる化合物が、好ましく用いられる。可溶性タンパク質と二または多官能性化合物を一緒に反応させることにより、タンパク質が二または多官能性化合物と常法で架橋される。疎水化および/または架橋では、分子量10,000〜700,000の前駆体タンパク質が好ましくは用いられ、ウシ血清アルブミン、リパーゼおよび免疫γ‐グロブリンが特に好ましい。更なる詳細に関しては米国特許第5,061,640号公報参照。
【0044】
本発明によれば、焦電または圧電ポリマー基板と該基板の表面上における透明電極層を有する変換器を用意し、基板上へパリレンモノマーの蒸着により透明電極層をパリレンで被覆し、レセプターを変換器へ付着させる工程を含んでなる、センサーを作製する方法を更に提供する。好ましくは、レセプターをパリレン層へ付着させる工程の前に、パリレン層はタンパク質で処理される。堆積させる量の物質を制御するために水晶マイクロバランスを用いてセンサー堆積が測定される。
【0045】
パリレンによる基板の表面の処理で、未処理表面と比較してより連続したタンパク質コーティングをもたらす、と考えられている。これは結果的に測定間でより強いシグナルと大きな再現性につながる。これはXPS(X線光電子分光法)を用いて研究されてきた。XPSでは、基板の表面がX線で照射されて、基板の表面で原子から電子を放出させる。放出された電子は、それらが放出された原子および軌道のタイプに応じて、特徴的なエネルギーを有している。したがって、膜の表面の化学的性質を調べるために該技術が用いられる。
【0046】
図4は、プラズマエッチングでクリーニング後におけるITO被覆PVDF膜のXPSスペクトルを示し、インジウム、スズおよび酸素の予想ピークを表している。図5は、その後で数日間にわたる大気への暴露後における膜を示す。インジウム、スズ、および酸素の予想ピークに加えて、まさに300eV下の特徴的ピークが炭素原子の存在を示す。大気VOCのような炭素含有種で汚染されてきた基板の領域へタンパク質が優先的に付着するが、VOCが膜表面に堆積されることに制御はほとんどない、と考えられている。図6はパリレンCで被覆された同基板のXPSスペクトルを示す。炭素および塩素に関する大きなピークがパリレンCについて予想される比率で観察される。これらのデータも下記表で要約されている。
【0047】
【表1】

【0048】
パリレンの連続コーティングは、基板の表面に対するタンパク質の結合を促進する、と考えられる。したがって、本発明のセンサーがパリレン層と、試薬との間にタンパク質層を更に含んでなることは好ましい。
【0049】
パリレンは、いわゆる浸漬被覆ポリスチレン膜と比較して厚さの変動が少ない、適切な薄膜も作製するが、これはパリレン膜からの光干渉パターンを測定することで証明されてきた。加えて、約95°の水滴接触角(変動は少ない)が疎水性タンパク質の吸着にほぼ最適であり、これは図7で示されたようなパリレンC被覆PVDF/ITOの異なるシートの異なるエリアで測定された前進接触角により証明されている。図7は93.9±1.3°(1標準偏差)の平均水接触角を示す。測定はISO15989:2004による動的セシルドロップ法によって行われた。
【0050】
好ましい態様において、本発明のセンサー9は図1に関して前記された装置へ組み込まれる。
【0051】
図8は、本発明のセンサー9を用いた典型的キャプチャー抗体アッセイを示す。本発明のセンサー9は、分析物20を溶解または懸濁された液体19を収容するためのウェル18を更に含有している。変換器はチャンバー、即ちウェルと一体化している。センサー9は試薬、即ち抗体17をそこに付着させている。センサーは、電磁放射線源と、図1に関して前記された電気シグナルとを検出するための検出器(示さず)を更に含んでなる。
【0052】
使用に際して、ウェル18は分析物20を含有した液体19(または何らかの流体)で充填される。分析物20はそのとき抗体17へ結合する。追加の標識抗体21が液体へ加えられ、サンドイッチ複合体が結合抗体17、分析物20、および標識抗体21の間で形成される。一方、追加標識抗体21は液体と予め混合してもよく、最終結果は同一である。過剰の標識抗体21が加えられ、そのため結合分析物20のすべてがサンドイッチ複合体を形成する。したがって、サンプルは結合標識抗体21aと、溶液中でフリーの未結合標識抗体21bとを含有している。
【0053】
サンドイッチ複合体の形成中または形成後、光のような電磁放射線の一連のパルスを用いてサンプルが照射される。各パルスと、変換器3による電気シグナルの発生との時間遅延が検出器により検出される。結合標識抗体21aにより生じた熱のみを測定するように、適切な時間遅延が選択される。時間遅延は変換器3からの標識の距離の関数であるため、結合標識抗体21aは未結合標識抗体21bから識別される。
【0054】
標識は、無放射減衰によりエネルギーを発生するように、放射線源により発生された電磁放射線と相互作用しうる物質であればよい。好ましくは、標識は炭素粒子、着色ポリマー粒子(例えば、着色ラテックス)、色素分子、酵素、蛍光分子、金属(例えば、金)粒子、ヘモグロビン分子、磁気粒子、不導性コア物質と少なくとも一つの金属シェル層を有するナノ粒子、赤血球、およびそれらの組合せから選択されるが、それらに限定されない。
【0055】
磁気粒子の場合、電磁放射線は高周波放射線である。上記された他の標識のすべてが、IRまたはUV放射線を含めた光を用いる。好ましくは、標識は金粒子または炭素粒子である。炭素粒子は、それらが対象の全波長で本質的に均一に吸収し、ほとんどの金属粒子よりかなり低密度であるためアッセイ時にそれらの沈降を最少化しうる、という利点を有している。金粒子は市販されているか、または既知法を用いて作製しうる(例えば、G.Frens,Nature,1973,241,20-22参照)。ナノ粒子標識の更に詳細な説明に関しては、米国特許第6,344,272号公報およびWO2007/141581号公報参照。炭素粒子は例えばDegussa,Essen,Germanyから市販されており、タンパク質および小分子とのそれらの接合のための方法は、例えばVan Doornら(米国特許第5,641,689号公報)により、当業界で知られている。
【0056】
好ましくは、本発明は20〜1000nm、更に好ましくは100〜500nmの粒径を有した粒子を用いる。粒径とは最大個所における粒子の直径を意味する。
【0057】
結合事象が起きた場合、標識は変換器の近くに存在する。即ち、サンプルの照射で標識により発生されたエネルギーを変換器が検出しうるほど、標識は変換器の表面に十分近いのである。しかしながら、標識と、変換器の表面との実距離は、いくつかの可変要素、例えば標識の大きさおよび性質、第一および第二抗体と分析物の大きさおよび性質、サンプル媒体の性質、電磁放射線の性質、および検出器の対応セッティングに依存することになる。電磁放射線の性質に関して、本発明のセンサーは電磁放射線の一連のパルスを発生するように調整された放射線源を内蔵してもよく、放射線源からの電磁放射線の各パルスと、電気シグナルの発生との時間遅延を測定し、それにより図1に関して記載されたように変換器に対する標識の位置を正確に決定しうるように検出器は調整される。
【0058】
試薬は好ましくは抗体であるが、他の試薬も用いうる。抗体‐抗原反応の代わりとして、試薬および分析物は、第一および第二核酸が相補的である第一および第二核酸でも、あるいはアビジンまたはその誘導体を含有する試薬と、ビオチンまたはその誘導体とを含有する分析物、またはその逆でもよい。該システムはしかも生物学的アッセイに限定されず、例えば水中における重金属の検出にも適用しうる。該システムは液体に限定する必要がなく、いかなる流体系も、例えば空気中における酵素、細胞、およびウイルスなどの検出にも用いうる。
【0059】
未知サンプルは分析物を含有していると予想されるが、もちろん本発明のアッセイは分析物の存在または非存在を調べるためにも用いうる。分析物は好ましくは小分子であり、アッセイがこのような分子に理想的に適する限りであるが、本発明はそれに限定されない。ここで用いられている用語“小分子”とは当業界の用語であり、タンパク質および核酸のような高分子から該分子を区別するために用いられる。小分子は、タンパク質のように大きな担体へ付着されたときに免疫応答を誘発しうる小分子である、“ハプテン”として免疫アッセイの分野でよく称されており、ホルモンおよび合成薬のような分子も含む。この種の小分子は、典型的には2000以下、多くは1000以下、更には500以下の分子量を有している。試薬は分析物自体と結合するように調整しうるが、分析物が試薬との結合前に化学反応または初期複合化事象を受けてもよい。例えば、分析物は、アッセイ条件のpHで、または標識抗体のような第二試薬と結合後に、プロトン化/脱プロトン化される。このように、試薬と、結合される分析物とは分析物自体でもまたは分析物の誘導体でもよい、双方とも本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
対象の分析物を含有しているまたは含有していないサンプルは通常流体サンプル、一般的には生物学的サンプル(したがって、水性)、例として体液、例えば、血液、血漿、唾液、血清、または尿である。サンプルは懸濁粒子を含有することもあり、全血でもよい。本発明の方法の利点は、アッセイの結果へ過度に影響することなく、懸濁粒子を含有したサンプルでもアッセイが行えることである。サンプルは、典型的にはマイクロリットルのオーダーである(例えば1〜100μL、好ましくは1〜10μL)。流体サンプルを収容するために、変換器は好ましくはサンプルチャンバー、更に好ましくはウェルに置かれる。好ましい態様において、変換器はチャンバーと一体化しており、即ちそれはチャンバーを画定する壁の一つを形成している。サンプルは、例えば毛細管内に、単に表面張力で保持されうる。
【0061】
ここで記載された装置は、把持携帯式リーダーと、変換器を内蔵した使い捨てセンサーの形態をとる。サンプルは本質的に閉じられたシステムに集められ、他の試薬と混合され、リーダーに置かれて、そこでサンプルの照射と得られた電気シグナルの検出を行う。
【実施例】
【0062】
実施例1
アクティブピエゾ/ピロ膜センサーの作製
下記実施例で感知装置として用いられる、酸化インジウムスズで被覆された分極化圧電ポリフッ化ビニリデン(PVDF)バイモルフ膜を、Model PDS 2010 LABCOTER2コーター(Specialty Coating Systems,Indianapolis,Indiana,USA)で当業者に知られた方法(例えば、R.Wood,2000,To Protect and Preserve,Materials World,Vol.8,No.6,pp.30-32参照)により公称厚さ500nmのパリレンCでコンフォーマルに被覆した。これを次いで室温で一晩のインキュベーションによりポリストレプトアビジン溶液(2.7mmol/L KCl、137mmol/L NaClおよび0.05% Tweenを含有した10mmol/Lリン酸緩衝液-PBS中200μg/mL)で被覆した。ポリストレプトアビジンはTischerら(米国特許第5,061,640号公報)において記載されているように調製した。
【0063】
“キャプチャー”表面を作製するために、ポリストレプトアビジン表面をビオチニル化抗TSH(甲状腺刺激ホルモン)とインキュベートして、抗体被覆表面を得た。(下記方法でビオチニル化された)PBS中10μg/mLのビオチニル化抗TSH(Anti-TSH 5409 SPTNE-5,product code:100034;Medix Biochemica,Kauniainen,Finland)を室温で一晩インキュベートし、次いで過剰PBSで洗浄し、Stabilcoat(SurModics Inc.,Eden Prairie,MN,USA)で被覆してから、40℃で乾燥させた。
【0064】
抗体は当業者に知られた方法でビオチニル化した。例えば、PBS(NaCl 150mmol/L、リン酸20mmol/L、pH7.5)中抗体の5mg/mL溶液を、凍結乾燥抗体を溶解させるか、または希釈により調製する。この溶液が他のタンパク質またはトリス(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)または他の干渉剤を含有していれば、透析またはゲル濾過により精製する。次いで無水DMSO中20mmol/LでNHS‐ビオチン溶液を調製し、NHS‐ビオチンの溶液15μLを抗体(1mL)へ加える。室温で1時間インキュベートし、次いでナトリウムアジド(0.01%)を含有したPBSに対して抗体を透析する。ビオチニル化抗体は、−20℃または+4℃で貯蔵用に、0.1%ナトリウムアジドおよび20%のグリセロールで1mg/mLに希釈しうる。ビオチニル化のレベルはIgG当たり1〜3ビオチンの範囲にすべきである。これはビオチンの定量によりまたは高ビオチニル化率の場合はアミン類の分別定量により評価しうる。得られたセンサーが図3で示されている。
【0065】
パリレンC被覆ピエゾ膜と比較するために、プラズマエッチング“クリーン”ITOおよび暴気“ダーティ”ITOピエゾ膜バイモルフを有するセンサーも(正確には上記のように)作製した。これら基板のXPSスペクトルは、既に図4〜6で前記されている。
【0066】
実施例2
レポーター複合体の作製
炭素標識レポーター複合体を本質的にVan Doornら(米国特許第5,641,689号公報)で記載されているように作製した。抗体被覆レポーター複合体を作製するために、pH6.2の5mmol/Lリン酸緩衝液中Special Black-4 RCC公称150nm炭素粒子(Degussa,Essen,Germany)1mLを振盪しながら室温で一晩200μg/mLポリストレプトアビジン溶液とインキュベートし、ストレプトアビジン被覆表面(A1)を得た。得られた炭素複合体を(遠心、ペレット化および再懸濁により)洗浄した。PBS中、TSHに対して反応性のビオチニル化レポーター二次モノクローナル抗体(Anti-TSH 5407 SPTN-1,product code:100032;Medix Biochemica,Kauniainen,Finland,前記のようにビオチニル化されている)10μg/mLを次いで振盪しながらこのストレプトアビジン被覆炭素粒子懸濁液1mLと一晩インキュベートした。得られた炭素複合体をpH8.5の0.05mol/Lホウ酸緩衝液で(遠心、ペレット化および再懸濁により)3回洗浄し、この緩衝液中暗所下4℃で貯蔵した。
【0067】
実施例3
アッセイ-抗体被覆ピエゾ/ピロ膜センサー
図9で示されているように、アッセイを行うために装置22を作製した。装置22は、1枚の抗体被覆ピエゾ膜9(前記)と、1枚の透明ポリカーボネートリッディング膜23とから作製した。二つの非同一サイズのチャンバー25、26を形成するように打ち抜かれた1枚の感圧接着剤被覆ポリエステル膜、アッセイ反応向けに寸法約30×10×0.5mmの一つのチャンバー25およびコントロール反応向けに寸法10×10×0.5mmの小さな第二チャンバー26から構成されるスペーサー24を用いて、約500ミクロンの距離で両膜にスペースを設ける。発生した電荷を検出するためにピエゾ膜のトップおよびボトム表面を電気的に接続させる手段が施されている。
【0068】
0.150mol/L MgClを含有する0.1mol/L トリス緩衝液およびTSHに対して反応性の(前記のような)ビオチニル化抗体で(0.0025%固体物の最終濃度で)被覆された150nmコロイド炭素粒子を含有する0.075% Tween 20溶液の混合液と、1ng/mLの最終TSH濃度にしたPBS中TSH標準で、(充填穴27から)大きなチャンバー25を満たすことにより、アッセイが行われる。コントロールチャンバー26も、TSH標準がPBSに代えられた、アッセイ用チャンバーの場合と同一の反応ミックスで同時に満たす。入口および出口穴を塞ぎ、ピエゾ膜3がチャンバーの側面と垂直に向くように(他の向きも可能である)チャンバーアセンブリーを試験機器へ接続する。ピエゾ膜を次いで(波長625nmの)4LEDでチョップLED光により順次照射するが、そのうち3つはアッセイ用チャンバーの表面の異なるエリアを照射し、一つはコントロールチャンバーのピエゾ膜表面を照射する。各LEDパルスについて、ロックイン増幅器とアナログ-デジタル(ADC)変換器を用いてピエゾ膜の電圧を測定する。反応チャンバーにおいて、TSHの存在は拡散制御下でピエゾ膜への炭素粒子結合につながり、経時的なシグナルの増大を導く。ネガティブコントロールチャンバーにおいて、TSHの非存在は表面への炭素結合が観察されないことを意味する。ADCシグナルを経時的にプロットし、経時的なシグナルの勾配をTSH濃度の尺度として用いる。平均値と標準偏差を求めるためにこの実験は12回繰り返す。パリレンC表面、“クリーン”ITOセンサーおよび“ダーティ”ITOセンサーを用いて、この実験を繰り返した。平均シグナル(カウント/min×20で表示)が1本の標準偏差エラーバーと一緒に図10で記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電または圧電ポリマー基板と、該基板の表面上における透明電極層とを有する変換器、
透明電極層上におけるパリレンの層、および
変換器に固定された試薬(試薬は分析物または分析物の誘導体と結合しうる結合部位を有する)、
を含んでなる、サンプル中の分析物の検出に用いるためのセンサー。
【請求項2】
パリレン層が10nm〜100μmの厚さを有するものである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
パリレンが、パリレンN、パリレンC、パリレンD、パリレンF、およびパリレンVT-4から選択されるものである、請求項1または2に記載のセンサー。
【請求項4】
焦電または圧電ポリマー基板がポリフッ化ビニリデン膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項5】
透明電極層が酸化インジウムスズ層である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項6】
変換器が酸化インジウムスズ被覆ポリフッ化ビニリデン膜である、請求項4および5に記載のセンサー。
【請求項7】
センサーが、パリレン層と、固定された試薬との間にタンパク質の層を更に含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項8】
タンパク質が非共有相互作用でパリレン層に吸着されているものである、請求項7に記載のセンサー。
【請求項9】
試薬が、抗体または核酸もしくはそのアナログである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項10】
変換器と接触してサンプルを収容するためのサンプルチャンバーを更に含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項11】
電磁放射線源と、変換器からの電気シグナルを検出するための検出器とを更に含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のセンサー。
【請求項12】
放射線源が電磁放射線の一連のパルスを発生するように調整され、検出器が放射線源からの電磁放射線の各パルスと、電気シグナルの発生との時間遅延を測定できるように調整されている、請求項11に記載のセンサー。
【請求項13】
焦電または圧電ポリマー基板と、該基板の表面上における透明電極層とを有する変換器を用意し、基板上へパリレンモノマーの蒸着により透明電極層をパリレンで被覆し、レセプターを変換器へ付着させる工程を含んでなる、センサーを作製する方法。
【請求項14】
パリレン層が、レセプターをパリレン層へ付着させる工程の前に、タンパク質で処理される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−523702(P2011−523702A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510047(P2011−510047)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050313
【国際公開番号】WO2009/141637
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(507251192)ビバクタ、リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】VIVACTA LIMITED
【Fターム(参考)】