説明

センサ内蔵型電力ケーブル

【目的】 簡易かつ安価なシステムにて温度と浸水の検知ができるケーブルを提供する。
【構成】 電力ケーブルのシース8の下に、平均温度係数が5×10-3(1/℃)以上の金属線6を配置し、これに吸湿により抵抗が低下する絶縁材料(不織布7)を添設した。金属線6の抵抗を測定し、抵抗値の上昇により異常発熱を、抵抗値の低下により浸水を検知する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電力ケーブルの温度または浸水状態を検知するセンサ内蔵型電力ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より電力ケーブルの温度や浸水状態の検知には、次のような技術が提案されている。
(温度検知)
■電力ケーブル沿いに光ファイバを布設し、この光ファイバの端部から光パルスを入射して、後方散乱光の強度から温度を測定する。
■電力ケーブル沿いの温度測定を行う箇所に熱電対やサーミスタを取り付けて温度測定を行う。
【0003】(浸水検知)
■電力ケーブルの金属遮蔽層上に2本の水検知線を配線し、この検知線の絶縁被覆を含水により抵抗が低下する材料とする。そして、2本の検知線間の抵抗を監視し、絶縁被覆の含水により両検知線間の抵抗が低下することから浸水を検知する(実公平3-38899 号公報)。
■ケーブルに光ファイバと吸水膨張材を添設し、浸水時、吸水膨張材の膨張により光ファイバに局部的な歪みを与え、光ファイバの伝送損失が増加することから浸水を検知する(特公平3-71060 号公報,特開平3-75543 号公報など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の技術には次のような問題がある。
■光ファイバを用いたものは、ケーブル長手方向の温度分布や浸水状況が監視でき、非常に便利であるが、光ファイバが高価な上、測定システムも高価である。
■熱電対やサーミスタなどの計測部を用いた場合、ケーブル温度をスポット的にしか測定できない。ケーブル沿いの温度分布を監視しようとすれば、多数の計測部を配置する必要がある。
■いずれの技術も温度と浸水を併せて監視することができない。従って、本発明の目的は、安価なシステムにて温度または浸水の検知ができ、さらには温度と浸水を併せて検知できるセンサ内蔵型ケーブルを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、電力ケーブルのシースの下に、平均温度係数{0℃における体積抵抗率をρ0 ,100℃における体積抵抗率をρ100とした場合、平均温度係数α=(ρ100 −ρ0 )/100ρ0 }が5×10-3(1/℃)以上の金属線を少なくとも1本配置したことを特徴とする。金属線の配置は、縦添えでも巻回でもよい。ここで、金属線には、吸湿により抵抗が低下する絶縁材料を被覆または添設することで、温度測定に併せて浸水状態も検知できる。また、金属線と吸湿により抵抗が低下する材料との間に半導電性ビニルの被覆を設けることで、金属線の腐食を防止できる。
【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
(構 成)図1に本発明CVケーブルの概略図を示す。このケーブルは、中心から順に、導体1,内部半導電層2,絶縁体3,外部半導電層4,遮蔽銅テープ5,一対の金属線6が添設された不織布7,シース8からなる。ここで、金属線6が添設された不織布7が温度と浸水状態の検知線である。そして、温度と浸水の監視は、この金属線6の抵抗を測定することでを行う。
【0007】金属線6は不織布7の上に縫い付けや接着により固定され、温度係数が5×10-3(1/℃)以上の材料で構成される。具体的にはFe(温度係数=6.5×10-3)やNi(温度係数=6.6×10-3)が好適である。温度係数をこのように限定したのは、測定精度が0.5%程度の抵抗測定器を用いた場合、温度分解能を1℃とできるよう考慮したからである。すなわち、温度係数α,固有抵抗ρ,抵抗R,温度tとすると、R=αρtとなるが、t=1℃とすると、上記の式はR=αρと表される。また、0.5%の測定抵抗値はR×0.5/100と表されるため、(R×0.5/100)≦αρを満たすような温度係数を選択すれば良い。ここで、R=ρと考えると、α≧5×10-3となり、この条件を満たす材料が温度測定に好都合となる。一方、不織布7は吸湿により抵抗が低下する絶縁材料の一例であり、具体的には、紙,綿,多孔質プラスチックなどが適用できる。本例では、厚さ0.13mm、幅40〜50mmのポリエステル不織布テープを用いた。
【0008】このような検知線の詳細な構成は、次の通りである。
■検知線の配置:本例では金属線6がシース側に接触するよう巻回しているが、図2に示すように、銅テープ5上に不織布7を巻回し、その上に金属線6を縦添えしてもよい。
■金属線の径:細い方が好ましく、1mmφ以下が好適である。
■金属線の本数:少なくとも1本あればよい。本例では2本用いているが、1本の金属線を上述のように巻回または縦添えしてもよい。
■金属線の間隔:本例では10mmとした。
■金属線の被覆:図1,2の例では、不織布に金属線を添設しているが、図3に示すように、金属線を吸湿により抵抗が低下する材料9で被覆してもよい。(A)は金属線が2本の場合,(B)は金属線が1本の場合である。(A)図の金属線をケーブルに縦添えして内蔵した例を図4に示す。また、図示していないが金属線の上に半導電性材料の被覆を形成することで防食性を向上させることができる。
【0009】(温度の検知方法)温度を検知するには、金属線6の両端末を引き出し、図5(A)に示すように、先端を抵抗計10につなぎ、末端をショートさせて、両金属線6の抵抗を測定する。ケーブル沿いの特定箇所に異常な温度上昇が見られれば、金属線6の抵抗が上昇するため、そのことからケーブル11の発熱を検知することができる。金属線6が1本の場合、同図(B)に示すように、金属線の末端を接地して抵抗の測定を行えばよい。
【0010】(浸水の検知方法)浸水を検知するには、図6(A)に示すように、金属線6の末端を開放し、先端で両金属線間の抵抗を測定する。ケーブル11沿いの特定箇所に浸水があった場合、不織布に水が浸透し、その絶縁抵抗が低下するため、浸水を検知することができる。金属線6が1本の場合、同図(B)に示すように、金属線6の末端を開放し、金属線と遮蔽銅テープとの間の抵抗を測定すればよい。また、図7に示すように、2本の金属線を配置した場合、一方の金属線の先端からパルス波を入力し、他方の金属線の先端に反射波が戻ってくるまでの時間から浸水位置を検出することができる。
【0011】
【発明の効果】以上説明したように、本発明ケーブルによれば、簡易かつ安価な構成でケーブル沿いの温度または浸水状態を検知することができる。特に、金属線に吸湿により抵抗が低下する材料で被覆を形成することにより、温度と浸水の両方を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は検知線を巻回した本発明ケーブルの概略構成図、(B)は検知線の部分斜視図である。
【図2】検知線を縦添えした本発明ケーブルの概略構成図である。
【図3】吸湿により抵抗が低下する材料で被覆を設けた金属線を示す斜視図で、(A)は金属線が2本の場合、(B)は金属線が1本の場合を示す。
【図4】図3(A)の金属線を縦添えしたケーブルの概略構成図である。
【図5】温度検知方法の説明図で、(A)は金属線が2本の場合、(B)は金属線が1本の場合である。
【図6】浸水検知方法の説明図で、(A)は金属線が2本の場合、(B)は金属線が1本の場合である。
【図7】浸水位置の検知手段の説明図である。
【符号の説明】
1 導体 2 内部半導電層 3 絶縁層 4 外部半導電層
5 遮蔽銅テープ 6 金属線 7 不織布 8 シース
9 吸湿により抵抗が低下する材料 10 抵抗計 11 ケーブル
12 パルス発生器 13 反射波計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電力ケーブルのシースの下に、平均温度係数が5×10-3(1/℃)以上の金属線を少なくとも1本配置したことを特徴とするセンサ内蔵型電力ケーブル。
【請求項2】 吸湿により抵抗が低下する絶縁材料を金属線に被覆または添設したことを特徴とする請求項1記載のセンサ内蔵型電力ケーブル。
【請求項3】 金属線と吸湿により抵抗が低下する材料との間に半導電性ビニルの被覆を設けたことを特徴とする請求項2記載のセンサ内蔵型電力ケーブル。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate