説明

センサ制御回路およびセンサシステム

【課題】回路面積や端子数を増やすことなく、広いダイナミックレンジで線形性が確保でき、応答性に優れたセンサ制御回路を提供する。
【解決手段】センサ制御回路は、センサから出力された交流信号の周波数と同じ周波数の搬送波信号に、前記交流信号を重畳したセンサ変調信号を生成する自律発振ループ部と、前記搬送波信号を基準電圧レベルと比較した結果をデジタル処理して、前記搬送波信号の振幅調整用の制御信号を生成する振幅調整ループ部と、を備える。前記自律発振ループ部は、前記搬送波信号の振幅調整を行うアンプと、前記制御信号により切替制御されるスイッチを有し、該スイッチの切替周波数により前記アンプの利得を制御可能なスイッチトキャパシタと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、交流信号を出力するセンサのセンサ制御回路およびセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流信号を出力する共振系センサの代表的なものは、角速度センサ(ジャイロセンサ)である。角速度センサの検出感度を一定に維持するには、AGC(Automatic Gain Control:自動振幅制御)回路が欠かせない。
【0003】
角速度センサの共振周波数は数十kHzであり、AGC回路は振幅を一定に維持する制御を行うことから、ABC回路の制御帯域はさらに低い周波数となる。従来のAGC回路は、CRの時定数を利用したアナログ回路で構成されており、低周波数帯域の制御を行うには、キャパシタの容量を大きくしなければならず、キャパシタを半導体基板上に形成するには、広大なチップ面積を必要とした。また、キャパシタを別部品として実装する場合には、そのキャパシタを外部接続するための端子を設ける必要がある上にキャパシタを実装する場所も確保しなければならない。
【0004】
さらに、角速度センサの共振ループでは、広いダイナミックレンジで線形性が必要であり、CMOSの可変抵抗では実現が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−174520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、回路面積や端子数を増やすことなく、広いダイナミックレンジで線形性が確保でき、応答性に優れたセンサ制御回路およびセンサシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によるセンサ制御回路は、センサから出力された交流信号の周波数と同じ周波数の搬送波信号に、前記交流信号を重畳したセンサ変調信号を生成する自律発振ループ部と、前記搬送波信号を基準電圧レベルと比較した結果をデジタル処理して、前記搬送波信号の振幅調整用の制御信号を生成する振幅調整ループ部と、を備える。前記自律発振ループ部は、前記搬送波信号の振幅調整を行うアンプと、前記制御信号により切替制御されるスイッチを有し、該スイッチの切替周波数により前記アンプの利得を制御可能なスイッチトキャパシタと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態によるセンサシステム1の概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)は基本的なスイッチトキャパシタ13aの構成を示す回路図、(b)は本実施形態のスイッチトキャパシタ13の回路図。
【図3】図1の比較例によるセンサシステム1aのブロック図。
【図4】図1のAGC部2の内部構成をより詳細に示したブロック図。
【図5】(a)は搬送波信号の振幅が規定値の場合の信号波形図、(b)は搬送波信号の振幅が規定値よりも小さい場合の信号波形図、(c)は搬送波信号の振幅が規定値より大きい場合の信号波形図。
【図6】DLPF24の内部構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の実施形態によるセンサシステム1の概略構成を示すブロック図である。図1のセンサシステム1は、大きく分けて、AGC部2と、信号処理部3と、センサ4との3つに分けられる。AGC部2と信号処理部3は、それぞれ半導体チップで構成可能である。AGC部2と信号処理部3は一つの半導体チップで構成してもよいし、別個の半導体チップで構成してもよい。これに対して、センサ4は、AGC部2および信号処理部3とは別個に設けられる。
【0011】
センサ4は、交流信号を出力する、いわゆる共振(振動)系センサである。センサ4が検出する対象は特に限定されない。本実施形態のセンサ4は、例えば角速度を検出する角速度センサ4である。
【0012】
AGC部2は、センサ4から出力された交流のセンサ検出信号を振幅が一定の搬送波信号(キャリア信号)に重畳したセンサ変調信号を生成する制御を行う。センサ検出信号と搬送波信号は必ずしも位相が同じであるとは限らず、例えば、搬送波信号とは位相が90度ずれたセンサ検出信号が搬送波信号に重畳されてセンサ変調信号が生成される。
【0013】
信号処理部3は、バッファ5と、センサ変調信号から搬送波信号を除去する検波回路6と、検波回路6の出力信号に含まれる高周波成分を除去するローパスフィルタ(LPF)7とを有する。ローパスフィルタ7の出力によりセンサ検出信号が取り出される。このセンサ検出信号は、例えば角速度センサ4の場合は、角速度信号である。
【0014】
AGC部2は、自律発振ループ部8と、自動調整ループ部9とを有する。自律発振ループ部8は、センサ4から出力されたセンサ検出信号の周波数と同じ周波数の搬送波信号を生成する処理を行う。自動調整ループ部9は、搬送波信号を基準電圧レベルと比較した結果をデジタル処理して、搬送波信号の振幅が一定になるように帰還制御を行う。
【0015】
自律発振ループ部8は、縦続接続された複数段のバッファ11と、位相シフト回路12と、センサ4とをリング状に接続して構成されている。複数段のバッファ11のうち少なくとも一つには、スイッチトキャパシタ13が接続されており、このスイッチングキャパシタのスイッチSW1,SW2を切り替えることにより、スイッチトキャパシタ13の接続されたバッファ11の利得を調整する。このスイッチトキャパシタ13が接続されたバッファ11は、搬送波信号の振幅調整を行うアンプに対応する。
【0016】
自動調整ループ部9は、比較器21と、デジタル処理部22とを有し、デジタル処理部22から出力された制御信号により、スイッチトキャパシタ13のスイッチSW1,SW2を切り替える。
【0017】
デジタル処理部22は、カウンタ23と、デジタルローパスフィルタ(DLPF)24と、パルス幅制御回路(PWM回路)25とを有する。
【0018】
比較器21は、搬送波信号を基準電圧レベルと比較する。カウンタ23は、比較器21での比較結果に基づいて、搬送波信号の振幅が基準電圧レベル以上の間はカウントアップし、搬送波信号の振幅が基準電圧レベル未満の間はカウントダウンするカウント値を生成する。
【0019】
DLPF24は、所定期間内のカウント値を平均化したデジタル平滑信号を生成する。PWM回路25は、デジタル平滑信号に基づいて、スイッチトキャパシタ13のスイッチSW1,SW2を切替制御するための制御信号を生成する。
【0020】
本実施形態の技術的特徴の一つは、バッファ11の利得調整のためにスイッチトキャパシタ13を用いることである。本実施形態のスイッチトキャパシタ13は、基本的なスイッチトキャパシタ13aとは構成が異なっている。図2(a)は基本的なスイッチトキャパシタ13aの構成を示す回路図、図2(b)は本実施形態のスイッチトキャパシタ13の回路図である。厳密には、図1等に示したスイッチトキャパシタ13は図2(b)と若干構成が異なっているが、以下では図2(b)を用いて本実施形態のスイッチトキャパシタ13について説明する。
【0021】
図2(a)の基本的なスイッチトキャパシタ13aは、信号入力端子とバッファ11の入力端子との間に直列接続されたスイッチSW3,SW4およびキャパシタC1と、キャパシタC1の一端と接地端子との間に接続されたスイッチSW5と、キャパシタC1の他端と接地端子との間に接続されたスイッチSW6と、バッファ11の入力端子と信号出力端子との間に接続されたスイッチSW1,SW2およびキャパシタC2,C3とを有する。
【0022】
図2(a)の基本的なスイッチトキャパシタ13aでは、キャパシタC1〜C3の容量比により、電気特性を決めることができる。
【0023】
これに対して、本実施形態のスイッチトキャパシタ13は、信号入力端子とバッファ11の入力端子との間に抵抗R1のみが接続されており、図2(a)のスイッチSW3〜SW6とキャパシタC1は持たない。このように、バッファ11の入力端子に抵抗R1のみを接続することにより、バッファ11の利得に周波数依存性を持たせることができる。より具体的には、スイッチSW1,SW2の切替周波数fに応じて、バッファ11の利得を制御することができる。
【0024】
例えば、図2(b)のスイッチSW1,SW2とキャパシタC3で構成される部分のインピーダンスをRとすると、以下の(1)式が成り立つ。
R=1/(fC2) …(1)
【0025】
図2(b)のバッファ11の利得Gは、以下の(2)式で表される。
G=(R/R1) …(2)
【0026】
これらの式から、スイッチSW1,SW2の切替周波数fが高いほど、インピーダンスRは小さくなり、利得Gが小さくなる。
【0027】
このように、切替周波数fを切り替えることで、利得Gを任意の値に設定できることがわかる。本実施形態は、切替周波数fを制御することで、バッファ11の利得Gを調整する。
【0028】
図3は図1の比較例によるセンサシステム1aのブロック図である。図3のセンサシステム1aは、デジタル処理部22とスイッチトキャパシタ13を持たない点で、図1のセンサシステム1と異なる。図3の自律発振ループ部8内の縦続接続されたバッファ11のうち一つには、スイッチトキャパシタ13の代わりに可変抵抗26が接続されており、この可変抵抗26の抵抗値を自動調整ループ部9から出力された制御信号にて調整する。
【0029】
また、図3の自動調整ループ部9は、デジタル処理部22の代わりにチャージポンプ27を有する。このチャージポンプ27は、比較器21で検出された差分信号を電圧信号に変換する。チャージポンプ27の出力端子と接地端子との間にはキャパシタ28が接続されており、チャージポンプ27の出力インピーダンスとキャパシタ28とで、アナログ・ローパスフィルタが形成される。
【0030】
自動調整ループ部9は、搬送波信号の振幅を一定にする制御を行うものであり、その制御帯域は、搬送波信号の周波数よりも低くなければならない。このため、図3の自動調整ループ部9では、チャージポンプ27の出力インピーダンスとキャパシタ28とで、大きな時定数CRを作り出さなければならず、どうしても回路面積が大きくなってしまう。
【0031】
上述した図1のDLPF24は、図3のチャージポンプ27の出力インピーダンスとキャパシタ28とで構成されるアナログ・ローパスフィルタと同じフィルタリング特性になるように、構成されている。図1のDLPF24は、デジタル信号処理により低周波制御帯域を得る。このため、図3のような大きな時定数CRを設ける必要はない。このため、図1のDLPF24を設けることで、回路面積の縮小化が図れる。
【0032】
図4は図1のAGC部2の内部構成をより詳細に示したブロック図である。図4では、AGC部2内の自律発振ループ部8が4つのバッファ11を縦続接続して、そのうちの2つのバッファ11がそれぞれスイッチトキャパシタ13を有する例を示している。スイッチトキャパシタ13の接続されたバッファ11の数を増やすことで、ゲインの調整範囲を広げることができ、ダイナミックレンジの向上が図れる。
【0033】
なお、縦続接続されたバッファ11のうち、少なくとも一つのバッファ11がスイッチトキャパシタ13を備えていればよく、図4は一例にすぎない。また、自律発振ループ部8内のバッファ11の接続段数も任意である。
【0034】
図4に示すスイッチトキャパシタ13は、基本的には図2(b)のスイッチトキャパシタ13と同様の構成を有する。図2(b)との違いは、バッファ11の入出力端子間に抵抗R2を接続している点である。
【0035】
上述した(1)式に示すように、スイッチトキャパシタ13内のスイッチSW1,SW2の切替周波数fが高いほど、スイッチトキャパシタ13のインピーダンスRは小さくなる。スイッチトキャパシタ13は、バッファ11の入出力端子間に接続されているため、上述した(2)式に示すように、スイッチトキャパシタ13のインピーダンスRが大きいほど、バッファ11の利得は大きくなる。すなわち、スイッチSW1,SW2の切替周波数fが高いほどバッファ11の利得は小さくなり、切替周波数fが小さいほどバッファ11の利得は大きくなる。
【0036】
このため、スイッチSW1,SW2の切替周波数fを細かく制御すれば、バッファ11の利得も細かく制御できることになる。
【0037】
スイッチトキャパシタ13内のスイッチSW1,SW2は、デジタル処理部22内のPWM回路25から出力される制御信号により切り替えられる。本実施形態では、デジタル処理部22によって、スイッチSW1,SW2の切替周波数fをきめ細かく制御可能な制御信号を生成する。以下では、デジタル処理部22の処理動作を詳細に説明する。
【0038】
図5はデジタル処理部22内の各部の信号波形を示す図であり、図5(a)は搬送波信号の振幅が規定値の場合の信号波形、図5(b)は搬送波信号の振幅が規定値よりも小さい場合の信号波形、図5(c)は搬送波信号の振幅が規定値より大きい場合の信号波形をそれぞれ示している。
【0039】
比較器21は、搬送波信号と基準電圧レベルとを比較して、搬送波信号が基準電圧レベルより大きい場合には、図5の波形cで示すパルス信号を出力する。カウンタ23は、搬送波信号が基準電圧レベルより大きい場合、すなわち比較器21からパルス信号が出力されている期間内はカウントアップを継続し、搬送波信号が基準電圧レベル以下の場合、すなわち比較器21からパルス信号が出力されていない期間内はカウントダウンを継続する。このため、図5の波形dに示すように、カウンタ23の出力波形dは、ノコギリ状になる。なお、カウンタ23の出力はデジタル値であるため、実際には段階的に値が変化するギザギザの波形になるが、カウンタ23のクロック周波数が十分に高い場合は、実質的に図5のようなノコギリ状になる。
【0040】
カウンタ23の出力信号波形dをより詳しく説明すると、搬送波信号の振幅が規定値と同じ場合は、図5(a)のように、所定の電圧レベルを基準として、線形に増加する期間と線形に減少する期間が交互に繰り返される信号波形になる。搬送波信号の振幅が規定値より小さい場合は、図5(b)に示すように、時間とともに線形に減少する電圧レベルを基準として、線形に増加する期間と線形に減少する期間が交互に繰り返される信号波形になる。搬送波信号の振幅が規定値より大きい場合は、図5(c)に示すように、時間とともに線形に増加する電圧レベルを基準として、線形に増加する期間と線形に減少する期間が交互に繰り返される信号波形になる。
【0041】
DLPF24は、上述したように、アナログ・ローパスフィルタと同様の特性を持つものであり、カウンタ23の出力信号を所定期間で平均化した信号を生成する。
【0042】
図6はDLPF24の内部構成の一例を示すブロック図である。図6のDLPF24は、直列接続された4つの遅延回路31と、各遅延回路31の出力信号の利得調整を行うバッファ32と、各バッファ32の出力信号を加算する加算器33とを有する。
【0043】
図6のDLPF24は、4つの遅延回路31の各遅延時間を合わせた所定期間内でのカウンタ23の出力信号を加算器33で加算することになり、加算器33の出力は、カウンタ23の出力信号を平均化した信号になる。この結果、図5の波形eに示すように、DLPF24の出力信号は電圧レベルが常に一定か、あるいは線形に増加または減少する信号となる。
【0044】
より詳しくは、搬送波信号の振幅が規定値と同じ場合は、図5(a)のように、DLPF24の出力信号は電圧レベルが一定になる。搬送波信号の振幅が規定値より小さい場合は、図5(b)のように、DLPF24の出力信号は時間ととともに線形に減少する信号になる。搬送波信号の振幅が規定値より大きい場合は、図5(c)のように、DLPF24の出力信号は時間とともに線形に増加する信号になる。
【0045】
DLPF24の出力信号はPWM回路25に入力される。PWM回路25は、DLPF24の出力信号に基づいて、内部的にパルス幅の異なるPWMパルス信号(図5の波形f)を生成する。このPWMパルス信号は、PWM回路25内の内部信号であり、外部には出力されない。PWM回路25は、DLPF24の出力信号の一周期内に、均等な割合でPWMパルス信号が出現するように、PWMパルス信号の出現時刻とパルス幅を決定する。
【0046】
次に、PWM回路25は、PWMパルス信号のパルス出力期間内に、発振信号OSC(図5の波形g)に基づいて、パルス幅が一定のパルス信号からなる制御信号(図5の波形h,i)を生成する。PWMパルス信号のパルス幅が広いほど、制御信号に含まれるパルス信号の数が多くなる。波形hに示す制御信号PULSEPはスイッチSW1の切替を行い、波形iに示す制御信号PULSEMはスイッチSW2の切替を行う。これら制御信号PULSEPとPULSEMは位相が互いにずれており、これによりスイッチSW1,SW2は、オン期間が重ならないようにオン/オフする。
【0047】
これにより、搬送波信号の振幅が規定値と同じ場合と比べて、搬送波信号の振幅が規定値より小さい場合は、制御信号に含まれるパルス信号の数が少なくなり、一方、搬送波信号の振幅が規定値より大きい場合は、制御信号に含まれるパルス信号の数が多くなる。
【0048】
制御信号に含まれるパルス信号の数が多いということは、スイッチトキャパシタ13のスイッチSW1,SW2の切替周波数fが高いことを意味する。この場合、スイッチトキャパシタ13のインピーダンスRが小さくなり、結果として、スイッチトキャパシタ13の接続されたバッファ11の利得が小さくなって、搬送波信号の振幅が小さくなる。これにより、制御信号に含まれるパルス信号の数が減少する。
【0049】
逆に、制御信号に含まれるパルス信号の数が少ない場合は、スイッチトキャパシタ13のスイッチSW1,SW2の切替周波数fが低くなり、スイッチトキャパシタ13のインピーダンスRが大きくなって、スイッチトキャパシタ13の接続されたバッファ11の利得が大きくなり、搬送波信号の振幅が大きくなる。これにより、制御信号に含まれるパルス信号の数が増加する。
【0050】
このように、自動調整ループ部9は、搬送波信号の振幅を基準電圧レベルと比較した結果に応じて、制御信号内のパルス信号の数を増減させて、これにより、スイッチトキャパシタ13の切替周波数fを可変制御して、バッファ11の利得を調整するため、搬送波信号の振幅が規定値に一致するような帰還制御を行うことができる。
【0051】
PWM回路25の具体的な構成として、ΔΣD/Aコンバータを設けることにより、スイッチの切替周波数の低域での平均周波数を高精度に設定することができ、振幅設定精度を向上できる。
【0052】
ところで、本実施形態において、PWM回路25で内部信号として生成したPWMパルス信号をそのまま出力せずに、PWMパルス信号のパルス幅分の数のパルス信号を出力する理由は、スイッチSW1,SW2の切替周波数fを制御することで、バッファ11の利得調整を行うためである。切替周波数fを制御するには、PWM回路25から出力されるパルス信号の数を可変させる必要があり、単にパルス幅を変えた信号を出力するだけでは、切替周波数fの制御ができない。そこで、本実施形態では、PWMパルス信号のパルス幅をパルス信号の数に置き換えて、パルス信号の数の大小により、スイッチトキャパシタ13の切替周波数fを制御している。
【0053】
次に、本実施形態によるセンサシステム1の動作を説明する。AGC部2内の自律発振ループ部8は、搬送波信号の周波数が、センサ4から出力されたセンサ検出信号の周波数と同じ周波数になるように帰還制御する。この自律発振ループ部8により、センサ検出信号は、搬送波信号に重畳されることになるが、センサ検出信号の位相と搬送波信号の位相とは必ずしも一致しているとは限らず、ある位相差(例えば90度)を維持した状態で重畳される場合もありうる。本明細書では、搬送波信号に重畳されたセンサ検出信号を、センサ変調信号と呼ぶ。
【0054】
センサ変調信号は、図1に示す信号処理部3内の検波回路6に入力されて、搬送波信号成分が除去される。次に、ローパスフィルタ7で高周波ノイズが除去されて、元のセンサ検出信号が抽出される。このセンサ検出信号は、例えば角速度信号である。
【0055】
一方、自律発振ループ部8で生成された搬送波信号は、自動調整ループ部9内の比較器21に入力される。比較器21は、搬送波信号の振幅を基準電圧レベルと比較して、搬送波信号の振幅が基準電圧レベルを上回っている期間内にパルス信号を出力する(図5の波形c)。
【0056】
このパルス信号は、デジタル処理部22に入力されて、デジタル的に処理されて制御信号が生成される。この制御信号により、自律発振ループ部8内のバッファ11の利得が制御される。
【0057】
デジタル処理部22の処理動作をより詳細に説明すると、まずは、比較器21から出力されたパルス信号に基づいて、カウンタ23は、搬送波信号の振幅が基準電圧レベル以上の場合はカウントアップし、搬送波信号の振幅が基準電圧レベル未満の場合はカウントダウンするカウント信号を生成する(図5の波形d)。
【0058】
次に、DLPF24は、カウント信号を、所定期間内で平均化した信号を生成する(図4の波形e)。次に、PWM回路25は、DLPF24で生成された信号に基づいて、PWMパルス信号を内部信号として生成し、このPWMパルス信号のパルス幅をパルス数に置換したパルス幅一定のパルス信号を含む制御信号を生成する。そして、この制御信号により、自律発振ループ部8内のバッファ11に接続されたスイッチトキャパシタ13のスイッチの切替周波数を制御する。この結果、このバッファ11の利得が細かく制御されることになる。
【0059】
このように、本実施形態では、センサ検出信号を重畳するための搬送波信号の振幅を一定に制御するために、デジタル処理部22とスイッチトキャパシタ13を設けて、スイッチトキャパシタ13のスイッチの切替周波数fを制御する。これにより、スイッチトキャパシタ13の接続されたバッファ11の利得を高精度かつ細かく調整できる。
【0060】
また、スイッチトキャパシタ13で利得調整を行うことにより、広いダイナミックレンジにて信号の線形性を確保できる。
【0061】
さらに、自動調整ループ部9は、自律発振ループ部8よりも低い周波数帯域で動作させる必要があり、図3のように、チャージポンプ27とキャパシタ28によりアナログ・ローパスフィルタを構成する場合には、大きなCR時定数を得るために容量の大きなキャパシタ28等を用いる必要があったが、本実施形態では、自動調整ループ部9にデジタル処理部22を設けてデジタル信号処理を行うため、大きなCR時定数を作る必要がなくなり、小さな回路面積で自動調整ループ部9を構成できることから、半導体チップ化が容易になる。
【0062】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 センサシステム、2 AGC部、3 信号処理部、4 センサ、6 検波回路、 7 ローパスフィルタ、8 自律発振ループ部、9 自動調整ループ部、11 バッファ、12 位相シフト回路、13 スイッチトキャパシタ、21 比較器、22 デジタル処理部、23 カウンタ、24 DLPF、25 PWM回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから出力された交流信号の周波数と同じ周波数の搬送波信号に、前記交流信号を重畳したセンサ変調信号を生成する自律発振ループ部と、
前記搬送波信号を基準電圧レベルと比較した結果をデジタル処理して、前記搬送波信号の振幅調整用の制御信号を生成する振幅調整ループ部と、を備え、
前記自律発振ループ部は、
前記搬送波信号の振幅調整を行うアンプと、
前記制御信号により切替制御されるスイッチを有し、該スイッチの切替周波数により前記アンプの利得を制御可能なスイッチトキャパシタと、を有することを特徴とするセンサ制御回路。
【請求項2】
前記振幅調整ループ部は、前記搬送波信号の振幅が一定になるように前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のセンサ制御回路。
【請求項3】
前記振幅調整ループ部は、
前記搬送波信号の振幅を前記基準電圧レベルと比較する比較器と、
前記比較器での比較結果に基づいて、前記搬送波信号の振幅が前記基準電圧レベル以上の間はカウントアップし、前記搬送波信号の振幅が前記基準電圧レベル未満の間はカウントダウンするカウント値を生成するカウンタと、
所定期間内の前記カウント値を平均化したデジタル平滑信号を生成するデジタルフィルタと、
前記デジタル平滑信号に基づいて、前記制御信号を生成するパルス幅変調回路と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ制御回路。
【請求項4】
前記パルス幅変調回路は、パルス幅が一定のパルス信号が前記比較器での比較結果に応じた数分含まれた前記制御信号を生成することを特徴とする請求項3に記載のセンサ制御回路。
【請求項5】
前記パルス幅変調回路は、前記搬送波信号の振幅が前記基準電圧レベル以上の期間が長いほど、所定期間内に含まれる前記パルス信号の数が多い前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサ制御回路。
【請求項6】
前記自律発振ループ部は、リング状に接続される、複数のバッファ、位相シフタおよび前記センサを有し、
前記複数のバッファの少なくとも一つは、前記スイッチトキャパシタが接続された前記アンプであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサ制御回路。
【請求項7】
前記センサは、角速度を検出して、角速度に応じた前記発振信号を出力する角速度センサであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサ制御回路。
【請求項8】
検出対象物の検出結果である交流信号を出力するセンサと、
前記交流信号を搬送波信号に重畳したセンサ変調信号を出力するセンサ制御回路と、
前記センサ変調信号から前記搬送波信号を除去して前記交流信号を抽出する信号処理部と、を備え、
前記センサ制御回路は、
前記交流信号の周波数と同じ周波数の前記搬送波信号に、前記交流信号を重畳した前記センサ変調信号を生成する自律発振ループ部と、
前記搬送波信号を基準電圧レベルと比較した結果をデジタル処理して、前記搬送波信号の振幅調整用の制御信号を生成する振幅調整ループ部と、を備え、
前記自律発振ループ部は、
前記搬送波信号の振幅調整を行うアンプと、
前記制御信号により切替制御されるスイッチを有し、該スイッチの切替周波数により前記アンプの利得を制御可能なスイッチトキャパシタと、を有することを特徴とするセンサシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−202872(P2012−202872A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68713(P2011−68713)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】