説明

センサ及びセンサ取付構造体

【課題】取付対象体の取付孔にネジ止めする際、センサの生産性及び取付け作業性が劣ることなく、ネジのゆるみが少ないセンサ及びセンサ取付構造体を提供する。
【解決手段】センサ素子10と、筒状の主体金具138と、主体金具に対して回転自在な筒状の取付部材180と、を備えたセンサ200であって、主体金具は、本体部138aと、取付部材よりも先端側に設けられ、取付部材の内表面よりも径方向外側に突出する鍔部138fとを有し、主体金具は、本体部の外表面と鍔部の後端向き面とが傾斜面138tにて接続されると共に、取付部材は、先端向き面180aと内表面180bとが角部180eにて接続されており、取付部材のネジ部180sを取付対象体300の取付孔300hにネジ止めしたとき、鍔部の先端向き面138f1が取付対象体の取付面300rに当接すると共に、傾斜面に角部が接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のガス成分を検出するガスセンサ素子や温度センサ素子等の各種センサ素子を備えるセンサ、ガスセンサ取付構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのガスセンサが用いられている。このガスセンサは自身の内部にガスセンサ素子を有し、ガスセンサ素子は固体電解質体と該固体電解質体に配置された一対の電極とを有するセル等から構成されている。このガスセンサの外部にはネジ部が設けられ、ネジ部を取付対象体(排気管等)の取付孔にネジ止めすることにより、ガスセンサが排気管に取り付けられる。
ところで、ガスセンサを排気管に取付ける方法として、通常、まずガスセンサを排気管に取付けた後、ガスセンサから引き出されたリード線に接続されたコネクタを外部回路等のコネクタにコネクタ接続している。しかしながら、コネクタを介さずにガスセンサと外部回路とが一体になっている場合や、コネクタをガスセンサよりも先に固定する方法の場合、ガスセンサを取付孔にネジ止めする際に、外部回路やリード線も一緒に回転させなければならず、取付けが困難になる。
【0003】
このようなことから、ガスセンサ素子を保持する主体金具(ハウジング)を取り囲むように筒状の回転部材を配置し、回転部材を主体金具に対し回転自在にすると共に、回転部材の外面にネジ部を形成した技術が開示されている(特許文献1、2参照)。これにより、ガスセンサと外部回路とが一体になっている場合であっても、ガスセンサを取付孔にネジ止めする際に外部回路も一緒に回転させる必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−294685号公報(図2)
【特許文献2】特表2006−514311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車の排気管等にガスセンサを取り付ける場合、取付箇所は800〜900℃の高温に曝され、取付対象体を構成する材質と回転部材を構成する材質の組み合わせによっては、これらの材質の熱膨張係数の大小関係に起因してねじの締付け力が低下することがある。そこで、特許文献1記載のガスセンサにおいては、ねじの締付けトルクを規定すると共に、所定の材質のガスケットを取付対象体の取付面とハウジングの先端向き面との間に配置している。
しかしながら、特許文献1記載のガスセンサの場合、取付対象体や回転部材を構成する材質の組み合わせに制限があると共に、ねじの締付けトルクを厳密に管理しなければならず、ガスセンサの生産性及び取付け作業性に劣るという問題がある。
又、特許文献1、2記載のセンサの場合、ハウジングに径方向外側に突出するフランジを設けると共に回転部材をフランジよりも後端側に配置し、回転部材のネジ部を排気管の取付孔にネジ止めした際、回転部材の先端向き面(排気管側の面)をフランジ面に当接させてハウジングを取付対象体に固定している。しかしながら、回転部材がハウジングに対して回転自在となるために、回転部材とハウジングとがクリアランスを有しているため、ハウジングが取付対象体に対して軸ずれを生じたまま固定される可能性がある。この場合、ねじの締付けトルクがハウジングと回転部材との摩擦力によって、軽減されている可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、取付対象体の取付孔にネジ止めするセンサにおいて、センサの生産性及び取付け作業性が劣ることなく、ネジのゆるみが少ないセンサ及びセンサ取付構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のセンサは、センサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲む筒状の主体金具と、前記主体金具の径方向周囲を取り囲み、前記主体金具に対して回転自在であり、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外表面に有する筒状の取付部材と、を備えた軸線方向に沿って延びるセンサであって、前記主体金具は、前記取付部材の内側に配置される本体部と、該本体部よりも先端側であって、且つ前記取付部材よりも先端側に設けられ、前記取付部材の内表面よりも径方向外側に突出する鍔部とを有し、前記軸線方向に沿った断面で見たときに、前記主体金具は、前記本体部の外表面と前記鍔部の後端向き面とが、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に広がる傾斜面にて接続されると共に、前記取付部材は、先端向き面と前記内表面とが、角部にて接続されており、前記取付部材のネジ部を前記取付対象体の取付孔にネジ止めしたとき、前記鍔部の先端向き面が前記取付対象体の取付け面に当接すると共に、前記傾斜面に前記角部が接する。
【0008】
このセンサによれば、鍔部の先端向き面が取付け面に当接してシールを形成する。さらに、角部と傾斜面とが接する際に傾斜面によって角部、ひいては取付部材が径方向外側に広がろうとする応力を受ける。このため、取付部材外面のネジ部も径方向外側に広がって取付対象体のネジ部にしっかりと係合するので、振動が生じてもネジ部がゆるみ難くなる。よって、ねじの締付けトルクを厳密に管理することなく、ネジ部のゆるみが少ないセンサを得ることができる。
又、角部が傾斜面に接するので、主体金具が取付対象体に対して軸ずれを生じることがない。よって、ネジ部の締付けトルクが主体金具と取付部材との摩擦力によって、軽減されることを防止できる。
なお、「角部」とは、先端向き面と内表面とが直角に接続された角部だけでなく、先端向き面と内表面とが鋭角や鈍角に形成された角部も含む。さらには、角部が、面取り(R面取りやC面取り)にて形成されているものも含む。
又、「傾斜面」とは、本体部の外表面と鍔部の後端向き面とを接続するテーパ面だけでなく、先端側に向かって窪む凹面や、後端側に向かって突出する凸面も含む。
【0009】
さらに、本発明のセンサでは、前記傾斜面が、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に漸近的に広がるテーパ面であってもよい。このように、傾斜面をテーパ面とすると、ネジ締め時に応力が均一に増加するため、容易にネジ締めが可能となる。
【0010】
さらに、本発明のガスセンサでは、前記取付部材は、本体部と、該本体部の先端から軸線方向先端側に向かって突出し、該本体部よりも径方向厚みが薄い突出部を有し、該突出部が前記角部を有している。このように、径方向厚みが本体部よりも薄い突出部に角部を形成することで、テーパ面に接したときに突出部が径方向外側により撓み易くなるので、突出部、ひいては取付部材が径方向外側に広がろうとする応力もより高くなり、取付部材外面のネジ部がさらにしっかりと係合してゆるみ難くなる。
【0011】
又、本発明のセンサは、センサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲む筒状の主体金具と、前記主体金具の径方向周囲を取り囲み、前記主体金具に対して回転自在であり、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外表面に有する筒状の取付部材と、を備えた軸線方向に沿って延びるセンサであって、前記主体金具は、前記取付部材の内側に配置される本体部と、該本体部よりも先端側であって、且つ前記取付部材よりも先端側に設けられ、前記取付部材の内表面よりも径方向外側に突出する鍔部とを有し、前記軸線方向に沿った断面で見たとき、前記主体金具は、前記鍔部の後端向き面と前記鍔部の外表面とが、角部にて接続されると共に、前記取付部材は、先端向き面と前記内表面とが、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に広がる傾斜面にて接続されており、前記取付部材のネジ部を前記取付対象体の取付孔にネジ止めしたとき、前記鍔部の先端向き面が前記取付対象体の取付け面に当接すると共に、前記傾斜面に前記角部が接する。
【0012】
このセンサによれば、鍔部の先端向き面が取付け面に当接してシールを形成する。さらに、角部と傾斜面とが接する際に傾斜面によって角部、ひいては取付部材が径方向外側に広がろうとする応力を受ける。このため、取付部材外面のネジ部も径方向外側に広がって取付対象体のネジ部にしっかりと係合するので、振動が生じてもネジ部がゆるみ難くなる。よって、ねじの締付けトルクを厳密に管理することなく、ネジ部のゆるみが少ないセンサを得ることができる。
又、角部が傾斜面に接するので、主体金具が取付対象体に対して軸ずれを生じることがない。よって、ネジ部の締付けトルクが主体金具と取付部材との摩擦力によって、軽減されることを防止できる。
なお、「角部」とは、後端向き面と外表面とが直角に接続された角部だけでなく、後端向き面と外表面とが鋭角や鈍角に形成された角部も含む。さらには、先端向き面と内表面とが、面取り(R面取りやC面取り)にて接続されているものも含む。
又、「傾斜面」とは、取付部材の先端向き面と内表面とを接続するテーパ面だけでなく、先端側に向かって突出する凸面や、後端側に向かって窪む凹面も含む。
【0013】
さらに、本発明のセンサでは、前記傾斜面が、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に漸近的に広がるテーパ面であってもよい。このように、傾斜面をテーパ面とすると、ネジ締め時に応力が均一に増加するため、容易にネジ締めが可能となる。
【0014】
さらに、本発明のセンサでは、前記鍔部は、第1鍔部と該第1鍔部の後端側に配置され、当該第1鍔部よりも径方向厚みが薄い第2鍔部を有し、該第2鍔部が前記角部を有している。このように、径方向厚みが第1鍔部よりも薄い第2鍔部に角部を形成することで、取付部材の厚みを薄くすることなく傾斜面を角部に接することができる。これにより、取付部材に設けられたネジ部が変形することを防止できる。
【0015】
本発明のセンサ取付構造体はセンサ素子を備え、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外面に有する、軸線方向に沿って延びるセンサを、前記取付対象体の前記取付孔にネジ止めしてなるセンサ取付構造体において、前記センサは、請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサを用いることを特徴とする。
【0016】
このセンサの取付構造体によれば、鍔部の先端向き面が取付け面に当接してシールを形成する。さらに、角部と傾斜面とが接する際に傾斜面によって角部、ひいては取付部材が径方向外側に広がろうとする応力を受ける。このため、取付部材外面のネジ部も径方向外側に広がって取付対象体のネジ部にしっかりと係合するので、振動が生じてもネジ部がゆるみ難くなる。
又、角部が傾斜面に接するので、主体金具が取付対象体に対して軸ずれを生じることがない。よって、ネジ部の締付けトルクが主体金具と取付部材との摩擦力によって、軽減されていることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、取付対象体の取付孔にネジ止めするセンサにおいて、センサの生産性及び取付け作業性が劣ることなく、ネジのゆるみを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガスセンサの長手方向に沿う断面図である。
【図2】NOセンサ素子の長手方向に沿う断面図である。
【図3】図1の部分拡大図であり、主体金具の鍔部と取付部材との接触状態を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るガスセンサを示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るガスセンサを示す部分拡大断面図である。
【図6】図3のテーパ面の代わりに凹面を設けた場合を示す図である。
【図7】図5のテーパ面の代わりに凸面を設けた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ素子(NOセンサ素子)10を含むガスセンサ(NOセンサ)200の長手方向に沿う断面図を示す。NOセンサ200は、軸線方向(NOセンサ200の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすNOセンサ素子(ガスセンサ素子)10と、筒状の主体金具(ハウジング)138と、主体金具138の径方向周囲に配置される取付部材180と、軸線方向に貫通するコンタクト挿通孔168の内壁面がNOセンサ素子の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される絶縁コンタクト部材166と、NOセンサ素子10と絶縁コンタクト部166との間に配置される6個の接続端子110(図1では、4個図示)とを備えている。
【0020】
主体金具138は、軸線方向に貫通する貫通孔154を備える本体部138aを有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。また、主体金具138は、NOセンサ素子10の先端側を貫通孔154の先端側外部に配置し、電極端子部220、221を貫通孔154の後端側外部に配置する状態で貫通孔154に保持している。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0021】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、NOセンサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で環状形状のセラミックホルダ151、粉末充填層153、155(以下、滑石リング153、155ともいう)、環状形状のセラミックスリーブ156、および金属パッキン157がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。セラミックホルダ151と主体金具138の棚部152との間には、セラミックホルダ151を保持するための金属ホルダ158が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、金属パッキン157を先端側に押し付けるように、加締められている。
さらに、主体金具138の本体部138aの先端側には径方向外側に突出する鍔部138fが設けられている。
又、この実施形態では、ガスセンサ200の筐体側をなすセラミックホルダ151等によってNOセンサ素子10が固定され、セラミックホルダ151の下面側からNOセンサ素子10が突出している。
【0022】
取付部材180は、主体金具138の鍔部138fよりも後端側で主体金具138の本体部138a径方向周囲に配置され、主体金具138に対し回転自在になっている。又、取付部材180の外表面には、取付対象体300の取付孔300hにネジ止めされるネジ部(雄ネジ)180sが形成されている。
一方、取付対象体300は例えば自動車の排気管からなり、取付孔300hの外面側には、ネジ部180sに係合するネジ部(雌メジ)300sが形成されている。又、取付孔300hの内面側は径方向内側に突出し、鍔部138fの先端向き面138f1(図3参照)に当接する取付面300rが形成されている。
【0023】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、NOセンサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重の外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が、溶接等によって取り付けられている。
【0024】
そして、主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、NOセンサ素子10の電極端子部220、221とそれぞれ電気的に接続される6本のリード線146(図1では5本のみ)が挿通されるリード線挿通孔161が形成されたグロメット150が配置されている。
【0025】
また、主体金具138の後端部140より突出されたNOセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、絶縁コンタクト部材166が配置される。なお、この絶縁コンタクト部材166は、NOセンサ素子10の後端側の表面に形成される電極端子部220、221の周囲に配置される。この絶縁コンタクト部材166は、軸線方向に貫通するコンタクト挿通孔168を有する筒状形状に形成されると共に、外表面から径方向外側に突出する鍔部167が備えられている。絶縁コンタクト部材166は、鍔部167が保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に配置される。
【0026】
次に、NOセンサ素子10の構造について、長手方向に沿う断面図2を用いて説明する。なお、「長手方向」とは、NOセンサ素子の長手方向であって、かつNOセンサ素子の各層の積層方向に垂直な方向をいう。
図2において、NOセンサ素子10は、第1固体電解質層11a、絶縁層14a、第2固体電解質層12a、絶縁層14b、第3固体電解質層13a、及び絶縁層14c、14dをこの順に積層した構造を有する。第1固体電解質層11aと第2固体電解質層12aとの層間に第1測定室16が画成され、第1測定室16の左端(入口)に配置された第1拡散抵抗体15aを介して外部から被測定ガスGMが導入される。
第1測定室16のうち入口と反対端には第2拡散抵抗体15bが配置され、第2拡散抵抗体15bを介して第1測定室16の右側には、第1測定室16と連通する第2測定室18が画成されている。第2測定室18は、第2固体電解質層12aを貫通して第1固体電解質層11aと第3固体電解質層13aとの層間に形成されている。
【0027】
絶縁層14c、14dの間にはNOセンサ素子10の長手方向に沿って延びる長尺板状のヒータ50が埋設されている。ヒータ50はガスセンサを活性温度に昇温し、固体電解質層の酸素イオンの伝導性を高めて動作を安定化させるために用いられる。
絶縁層14a〜14dはアルミナを主体とし、第1拡散抵抗体15a及び第2拡散抵抗体15bはアルミナ等の多孔質物質からなる。又、ヒータ50は白金等からなる。
【0028】
第1ポンピングセル11は、酸素イオン伝導性を有するジルコニアを主体とする第1固体電解質層11aと、これを挟持するように配置された内側第1ポンプ電極11c及び対極となる第1対極電極(外側第1ポンプ電極)11bとを備え、内側第1ポンプ電極11cは第1測定室16に面している。内側第1ポンプ電極11c及び外側第1ポンプ電極11bはいずれも白金を主体とし、各電極の表面は多孔質体からなる保護層11e、11dでそれぞれ覆われている。
【0029】
酸素濃度検出セル12は、ジルコニアを主体とする第2固体電解質層12aと、これを挟持するように配置された検知電極12b及び基準電極12cとを備え、検知電極12bは内側第1ポンプ電極11cより下流側で第1測定室16に面している。検知電極12b及び基準電極12cはいずれも白金を主体としている。
なお、絶縁層14bは、第2固体電解質層12aに接する基準電極12cが内部に配置されるように切り抜かれ、その切り抜き部には多孔質体が充填されて基準酸素室17を形成している。そして、酸素濃度検出セル12に予め微弱な一定値の電流を流すことにより、酸素を第1測定室16から基準酸素室17内に送り込み、酸素基準とする。
【0030】
第2ポンピングセル13は、ジルコニアを主体とする第3固体電解質層13aと、第3固体電解質層13aのうち第2測定室18に面した表面に配置された内側第2ポンプ電極13b及び対極となる第2対極電極(対極第2ポンプ電極13c)とを備えている。内側第2ポンプ電極13b及び対極第2ポンプ電極13cはいずれも白金を主体とする。
なお、対極第2ポンプ電極13cは、第3固体電解質層13a上における絶縁層14bの切り抜き部に配置され、基準電極12cに対向して基準酸素室17に面している。
そして、NOxセンサ素子10は、外側第1ポンプ電極11bが多孔質保護層20で被覆されている。
【0031】
次に、図3を参照して、主体金具138と取付部材180との接触状態について説明する。なお、図3は、図1の部分拡大図である。なお、図3が特許請求の範囲において「軸線方向に沿った断面」に相当する。
図3において、主体金具138は、鍔部138fの後端向き面138f2と本体部138aの外表面138a1とが、軸線方向先端側に向かうにつれて径方向外側に広がるテーパ面138t(特許請求の範囲の傾斜面に相当)にて接続されている。一方、取付部材180は、先端向き面180aと内表面180bとが、角度90度の角部180eにて接続されている。
従って、取付部材180のネジ部180sを取付対象体300の取付孔300hにネジ止めすると、鍔部138fの先端向き面138f1が取付対象体300の取付面300rに当接してシールを形成する。さらに、角部180eがテーパ面138tに接点Pで接し、この際にテーパ面138tによって角部180e、ひいては取付部材180が径方向外側に広がろうとする応力を受ける。このため、取付部材180外面のネジ部180sも径方向外側に広がって取付対象体300のネジ部300sにしっかりと係合するので、振動が生じてもネジ部180sがゆるみ難くなる。又、ネジ部180sを径方向外側に広げて機械的にゆるみを防止するので、ボス孔を構成する材質と主体金具を構成する材質の熱膨張係数の大小関係を特に考慮する必要がなく、ガスセンサの構成部材に材質上の制限を受けなくて済む。
又、角部180eがテーパ面138tに接点Pで接するので、主体金具138が取付対象体300に対して軸ずれを生じることがない。よって、ネジ部180sの締付けトルクが主体金具138と取付部材180との摩擦力によって、軽減されていることを防止できる。
【0032】
次に、NOセンサ素子10の動作の一例について説明する。まず、エンジンが始動されて外部電源から電力の供給を受けると、所定の制御回路を介してヒータ50が作動し、第1ポンピングセル11、酸素濃度検出セル12、第2ポンピングセル13を活性化温度まで加熱する。そして、各セル11〜13が活性化温度まで加熱されると、第1ポンピングセル11は、第1測定室16に流入した被測定ガス(排ガス)GM中の過剰な酸素を内側第1ポンプ電極11cから第1対電極11bへ向かって汲み出す。このとき第1ポンプ電流Ip1が第1ポンピングセル11に流れることになる。
このとき、第1測定室16内の酸素濃度は、酸素濃度検出セル12の電極間電圧(端子間電圧)Vsに対応したものとなるため、この電極間電圧Vsが一定電圧V1(例えば425mV)になるように第1ポンピングセル11の電極間電圧(端子間電圧)Vp1を制御することにより、第1測定室16内の酸素濃度をNOが分解しない程度に調整する。
【0033】
酸素濃度が調整された被測定ガスGNは第2測定室18に向かってさらに流れる。そして、第2ポンピングセル13の電極間電圧(端子間電圧)Vp2として、被測定ガスGN中のNOガスが酸素とNガスに分解する程度の一定電圧Vp2(酸素濃度検出セル12の制御電圧の値より高い電圧、例えば450mV)を印加することにより、NOが窒素と酸素に分解される。そして、NOの分解により生じた酸素が第2測定室18から汲み出されるように、第2ポンピングセル13に第2ポンプ電流Ip2が流れることになる。この際、第2ポンプ電流Ip2とNO濃度の間には直線関係があるため、Ip2を検出することにより被測定ガス中のNO濃度を検出することができる。
【0034】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係るガスセンサについて説明する。なお、第2の実施形態に係るガスセンサは、取付部材180の先端の構成が異なること以外は第1の実施形態に係るガスセンサと同一であるので、図3に対応する部分拡大図である図4を用いて第1の実施形態と異なる構成部分について説明する。
図4において、取付部材180は、本体部180hと、本体部180hの先端から先端側に向かって突出し、本体部180hよりも径方向厚みが薄い突出部180fを有している。そして、この突出部180fは、先端向き面180aと内表面180bとが、角度90度の角部180eにて接続されている。
従って、取付部材180のネジ部180sを取付対象体300の取付孔300hにネジ止めすると角部180eがテーパ面138tに接するが、このときに径方向厚みが薄い突出部180fが径方向外側により撓み易くなるので、突出部180f、ひいては取付部材180が径方向外側に広がろうとする応力もより高くなり、ネジ部180sがさらにしっかりとネジ部300sに係合してゆるみ難くなる。
【0035】
次に、図5を参照して、本発明の第3の実施形態に係るガスセンサについて説明する。なお、第3の実施形態に係るガスセンサは、取付部材180にテーパ面を設け、鍔部138fに角部を設けたこと以外は第1の実施形態に係るガスセンサと同一であるので、図3に対応する部分拡大図である図5を用いて第1の実施形態と異なる構成部分について説明する。
図5において、鍔部138fは、第1鍔部138xと第1鍔部138xの後端側に配置され、第1鍔部138xよりも径方向厚みが薄い第2鍔部138vとを有している。そして、第2鍔部138vの後端向き面138v2と第2鍔部138vの外表面138v1とが、角度90度の角部138eにて接続されている。一方、取付部材180は、先端向き面180aと内表面180bとが、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に広がるテーパ面180t(特許請求の範囲の傾斜面に相当)にて接続されている。
従って、取付部材180のネジ部180sを取付対象体300の取付孔300hにネジ止めすると、第1の実施形態と同様、角部138eがテーパ面180tに接点Pで接し、この際にテーパ面180tによって取付部材180が径方向外側に広がろうとする応力を受ける。このため、取付部材180外面のネジ部180sも径方向外側に広がって取付対象体300のネジ部300sにしっかりと係合するので、振動が生じてもネジ部180sがゆるみ難くなる。
又、角部138eがテーパ面180tに接するので、主体金具138が取付対象体300に対して軸ずれを生じることがない。よって、ネジ部180sの締付けトルクが主体金具138と取付部材180との摩擦力によって、軽減されていることを防止できる。
【0036】
さらに、鍔部138fは、第1鍔部138xよりも径方向厚みが薄い第2鍔部138vに角部138eを有している。このように、径方向厚みが第1鍔部138xよりも薄い第2鍔部138vに角部138eを形成することで、取付部材180の厚みを薄くすることなくテーパ面180tを角部138eに接することができる。これにより、取付部材180に設けられたネジ部180sが変形することを防止できる。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、第1の実施形態〜第3の実施形態に係るガスセンサでは、角部138e、180eは、角度90度であったが、これに限られること無く、鋭角や鈍角に形成された角部であってもよい。さらには、角部が面取り(R面取りやC面取り)にて形成されているものであってもよい。
また、第3の実施形態に係るガスセンサでは、鍔部138fとして第1鍔部138xと第2鍔部138vを有するものであったが、これに限られることなく、鍔部全体の径方向厚みが同一のものであっても良い。
さらに、例えば、ガスセンサ素子としては、上記したNOセンサ素子の他、酸素センサ(λセンサ)、全領域空燃比センサ、アンモニアセンサを用いることができる。ガスセンサ素子以外のセンサ素子としては、温度センサ素子が挙げられる。そして、本発明は、ガスセンサ以外に、温度センサ等にも用いることができる。
【0038】
又、図6に示すように、傾斜面として、図3のテーパ面138tの代わりに凹面(R面)138t2を設けてもよい。同様に、図7に示すように、傾斜面として、図5のテーパ面180tの代わりに凸面(R面)180t2を設けてもよい。
さらに、図6では、傾斜面として凹面を説明したが、図6において、図7の凸面180t2のような凸面を凹面の代わりに設けても良い。同様に、図7では、傾斜面として凸面を説明したが、図7において、図6の凹面138t2のような凹面を凸面の代わりに設けても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 センサ素子(NOセンサ素子)
138 主体金具
138a 主体金具の本体部
138e 鍔部の角部
138f 鍔部
138f1 鍔部の先端向き面
138t、138t2 鍔部の傾斜面
138x 第1鍔部
138v 第2鍔部
180 取付部材
180a 取付部材の先端向き面
180b 取付部材の内表面
180e 取付部材の角部
180f 取付部材の突出部
180h 取付部材の本体部
180s 取付部材のネジ部
180t、180t2 取付部材の傾斜面
200 センサ
300 取付対象体
300h 取付孔
300r 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲む筒状の主体金具と、
前記主体金具の径方向周囲を取り囲み、前記主体金具に対して回転自在であり、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外表面に有する筒状の取付部材と、を備えた軸線方向に沿って延びるセンサであって、
前記主体金具は、前記取付部材の内側に配置される本体部と、該本体部よりも先端側であって、且つ前記取付部材よりも先端側に設けられ、前記取付部材の内表面よりも径方向外側に突出する鍔部とを有し、
前記軸線方向に沿った断面で見たときに、前記主体金具は、前記本体部の外表面と前記鍔部の後端向き面とが、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に広がる傾斜面にて接続されると共に、前記取付部材は、先端向き面と前記内表面とが、角部にて接続されており、
前記取付部材のネジ部を前記取付対象体の取付孔にネジ止めしたとき、前記鍔部の先端向き面が前記取付対象体の取付面に当接すると共に、前記傾斜面に前記角部が接するセンサ。
【請求項2】
前記傾斜面が、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に漸近的に広がるテーパ面である請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記取付部材は、本体部と、該本体部の先端から軸線方向先端側に向かって突出し、該本体部よりも径方向厚みが薄い突出部を有し、該突出部が前記角部を有する請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
センサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲む筒状の主体金具と、
前記主体金具の径方向周囲を取り囲み、前記主体金具に対して回転自在であり、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外表面に有する筒状の取付部材と、を備えた軸線方向に沿って延びるセンサであって、
前記主体金具は、前記取付部材の内側に配置される本体部と、該本体部よりも先端側であって、且つ前記取付部材よりも先端側に設けられ、前記取付部材の内表面よりも径方向外側に突出する鍔部とを有し、
前記軸線方向に沿った断面で見たとき、前記主体金具は、前記鍔部の後端向き面と鍔部の外表面とが、角部にて接続されると共に、前記取付部材は、先端向き面と前記内表面とが、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に広がる傾斜面にて接続されており、
前記取付部材のネジ部を前記取付対象体の取付孔にネジ止めしたとき、前記鍔部の先端向き面が前記取付対象体の取付面に当接すると共に、前記傾斜面に前記角部が接するセンサ。
【請求項5】
前記傾斜面が、軸線方向先端側に向かうに連れて径方向外側に漸近的に広がるテーパ面である請求項4記載のセンサ。
【請求項6】
前記鍔部は、第1鍔部と該第1鍔部の後端側に配置され、当該第1鍔部よりも径方向厚みが薄い第2鍔部を有し、該第2鍔部が前記角部を有する請求項4又は5に記載のセンサ。
【請求項7】
センサ素子を備え、取付対象体の取付孔にネジ止めされるネジ部を自身の外面に有する、軸線方向に沿って延びるセンサを、前記取付対象体の前記取付孔にネジ止めしてなるセンサ取付構造体において、
前記センサは、請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサを用いることを特徴とするセンサ取付構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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