説明

センサ及び同センサを用いた物理量の測定方法

【課題】 検出素子として磁気検出素子のみを用いて外部磁界及び加速度等を測定できるセンサを提供すること。
【解決手段】 センサ10は、基板10a上に固定された第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14と、基板10a上に移動可能に支持された可動コイル32とを備えている。可動コイル32に電流が流されると、可動コイル32の周りに磁界が発生し、第1〜第4X軸GMR素子に磁界が加わる。可動コイル32はセンサ10に発生した加速度に応じて移動する。これにより、第1〜第4X軸GMR素子に加えられる磁界が変化する。センサ10は、可動コイル32に電流を流していない状態において第1〜第4X軸GMR素子の抵抗値に基づき外部磁界を測定し、可動コイル32に一定の電流を流した状態において第1〜第4X軸GMR素子の抵抗値に基づき加速度等を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出素子を利用して外部磁界のみならず加速度等の物理量を測定することができるセンサ及び同センサを利用した物理量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部磁界と加速度とを測定することができる種々のセンサが知られている。これらのセンサの一つは、基板上に梁を介して重り部を支持し、センサに加速度が生じたときに梁に生じる応力を複数の応力測定素子により測定することによって加速度を測定するようになっている。更に、このセンサは、重り部の上に固定された複数のホール素子(磁気検出素子)を備え、このホール素子の出力に基づいてセンサ外部の磁界(外部磁界)を測定するようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−172633号(段落番号0021〜0034、図1及び図2)
【0003】
しかしながら、上記従来のセンサは、複数の応力測定素子と複数の磁気検出素子とを備えるので、高価であり、且つ、構造が複雑であるという問題を有している。
従って、本発明の目的の一つは、磁気検出素子を用いて地磁気等の外部磁界のみならず加速度或いは角加速度等の物理量(以下、「加速度等」という。)を測定することができる安価で構造が簡素なセンサを提供することにある。また、本発明の目的の他の一つは、このようなセンサを用いた加速度等の測定方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0004】
本発明によるセンサは、
基板と、
前記基板上に固定されるとともに加えられる磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、
前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持され且つ通電により発生した磁界を前記磁気検出素子に加える可動コイルと、
を備え、前記磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するセンサである。
【0005】
この場合、磁気検出素子は、例えば、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)、磁気トンネル効果素子(TMR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、フラックスゲートセンサ及びホール素子等の何れであってもよい。即ち、磁気検出素子が示す特性値には抵抗値や電圧値が含まれる。この点は、以下に述べる本発明の他のセンサにも同様に適用される。
【0006】
これによれば、可動コイルに電流が流されていないとき、磁気検出素子の特性値は磁気検出素子に加わるセンサ外部の磁界(例えば、地磁気等の外部磁界)に応じた値となる。従って、センサが出力する値(磁気検出素子が示す特性値に応じた値であって、例えば抵抗値や電圧値)も外部磁界に応じて変化する。
【0007】
一方、可動コイルに電流が流されると(可動コイルが通電されると)、可動コイルの回りに磁界が発生する。基板に固定された磁気検出素子には、この可動コイルの通電により発生した磁界が加わる。更に、可動コイルは、基板に対してバネ性を有する支持部材により移動可能(基板に対して相対移動可能)に支持されている。従って、センサ(実際には、センサが固定された物体)に加速度等が発生すると、可動コイルは慣性力によって初期位置(加速度等が発生していない場合の位置)から移動する。
【0008】
この結果、磁気検出素子と可動コイルとの相対位置関係が変化するから、可動コイルの通電により発生した「磁気検出素子に加わる磁界」が変化する。従って、磁気検出素子が示す特性値はセンサの加速度等に応じて変化し、センサが出力する値も加速度等に応じて変化する。このように、本発明のセンサは、可動コイルと磁気検出素子のみとを用いて、外部磁界及びセンサの加速度等を測定することができる。
【0009】
また、本発明によるセンサは、
主面を有する基板と、
前記基板の主面上の第1方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板の主面に固定された第1磁気検出素子と、
前記基板の主面上の前記第1方向と所定の角度をもって交差する第2方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板の主面に固定された第2磁気検出素子と、
を備えている。
【0010】
更に、このセンサは、
前記基板の主面と平行な面内において移動可能となるように同基板にバネ性を有する支持部材を介して支持され且つ通電により発生した磁界を前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子に加える可動コイルと、
を備え、前記第1磁気検出素子が示した特性値に応じた値及び前記第2磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するように構成されている。
【0011】
これによれば、可動コイルに電流が流されていないとき、第1磁気検出素子が示す特性値はセンサに加わる外部磁界の第1方向(第1磁気検出素子の磁界検出方向)の成分に応じた値となり、第2磁気検出素子の特性値は同外部磁界の第2方向(第2磁気検出素子の磁界検出方向)の成分に応じた値となる。なお、前記第1方向及び前記第2方向は、基板主面上の座標軸を基準に定められる方向である。
【0012】
更に、上記センサにおいては、第1方向と第2方向とが所定の角度をもって交差している。そして、上記センサは、第1磁気検出素子が示した特性値に応じた値及び第2磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力する。従って、上記センサは、基板の主面と平行な面内における外部磁界の向きと大きさを測定することができる。
【0013】
一方、可動コイルに電流が流されると(可動コイルが通電されると)、可動コイルの回りに磁界が発生する。基板に固定された第1及び第2磁気検出素子には、この可動コイルの通電により発生した磁界が加わる。更に、可動コイルは、基板に対してバネ性を有する支持部材により前記基板の主面と平行な面内において移動可能に支持されている。従って、センサに前記基板の主面と平行な面内における加速度等が発生すると、可動コイルは慣性力によって初期位置から移動する。
【0014】
この結果、第1磁気検出素子と可動コイルとの相対位置関係及び/又は第2磁気検出素子と可動コイルとの相対位置関係が変化するから、可動コイルの通電により発生した「第1磁気検出素子及び第2磁気検出素子のそれぞれに加わる磁界」が変化する。従って、第1磁気検出素子が示す特性値及び/又は第2磁気検出素子が示す特性値はセンサの加速度等に応じて変化し、センサが出力する値も加速度等に応じて変化する。このように、本発明のセンサは、可動コイルと磁気検出素子のみとを用いて、外部磁界及びセンサの加速度等を測定することができる。
【0015】
この場合、前記所定の角度(第1方向と第2方向とのなす角度)は90度であることが好適である。即ち、第1方向と第2方向は直交し、第1方向を基板のX軸方向とすれば、第2方向はX軸に直交する基板のY軸方向であることが好適である。
【0016】
例えば、第1方向と第2方向とのなす角度が90度に比較して微少な角度であるとすると、第2磁気検出素子は第1方向に直交する方向の磁界の成分を精度良く測定することができない。また、当然に、第1磁気検出素子は第1方向に直交する方向の磁界の成分を検出することができない。
【0017】
これに対し、第1方向と第2方向とが互いに直交していれば、第2磁気検出素子は第1方向に直交する方向の磁界を精度良く測定することができる。従って、第1方向と第2方向とが互いに直交していれば、可動コイルに電流が流されていないときの第1磁気検出素子が示す特性値と第2磁気検出素子が示す特性値とに基づき、センサに加わる外部磁界の向きと大きさを精度良く測定することが可能となる。
【0018】
更に、本発明のセンサは、
主面を有する基板と、
前記基板の主面に固定された第1磁気検出素子と、
前記基板の主面に固定された第2磁気検出素子と、
を備え、前記第1磁気検出素子が示した特性値に応じた値及び前記第2磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するセンサであって、
前記第1磁気検出素子は、前記基板の主面に形成される仮想の多角形(好ましくは正多角形、更に好ましくは正方形)を構成する辺のうちの一つの辺である第1の辺の中央部近傍に配置されるとともに同第1の辺と直交する方向の磁界の成分に応じた大きさの特性値を示すように構成され、
前記第2磁気検出素子は、前記仮想の多角形を構成する辺のうちの前記第1の辺と交差する他の辺である第2の辺の中央部近傍に配置されるとともに同第2の辺と直交する方向の磁界の成分に応じた大きさの特性値を示すように構成され、
更に、
前記仮想の多角形と同一又は相似の多角形の可動コイルであり、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して前記基板の主面と平行な面内において移動可能に支持され、前記センサが静止しているとき同可動コイルの重心が前記仮想の多角形の重心と一致するとともに同可動コイルの各辺が同仮想の多角形の各辺と平行となる初期位置に維持され、且つ、通電により発生した磁界を前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子に加える可動コイルを備えたセンサである。
【0019】
これによれば、上述したセンサと同様、可動コイルに電流が流されていないとき、第1磁気検出素子が示す特性値に応じた値と第2磁気検出素子の特性値に応じた値とに基づき、センサに加わる外部磁界を測定することができる。
【0020】
また、この第1磁気検出素子には可動コイルの第1の辺を流れる電流により生じる磁界が主として加わる。この磁界の方向は第1の辺に直交する方向である。更に、第1磁気検出素子の磁界検出方向は可動コイルの第1の辺と直交する方向である。従って、第1磁気検出素子は可動コイルの通電によって第1の辺の回りに形成される磁界を精度良く検出することができる。同様に、第2磁気検出素子には可動コイルの第2の辺を流れる電流により生じる磁界が主として加わる。この磁界の方向は第2の辺に直交する方向である。更に、第2磁気検出素子の磁界検出方向は可動コイルの第2の辺と直交する方向である。従って、第2磁気検出素子は可動コイルの通電によって第2の辺の回りに形成される磁界を精度良く検出することができる。
【0021】
一方、可動コイルは、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して前記基板の主面と平行な面内にて移動可能に支持されている。従って、可動コイルは、センサの加速度等に応じて基板の主面内において移動する。これにより、第1磁気検出素子に加わる第1の辺の回りに形成される磁界が変化するとともに、第2磁気検出素子に加わる第2の辺の回りに形成される磁界が変化する。以上のことから、本発明のセンサは、可動コイルと第1及び第2磁気検出素子のみとを用いて、外部磁界及びセンサの加速度等を精度良く測定することができる。
【0022】
上記いずれかのセンサは、前記可動コイルが通電状態及び非通電状態の何れかの状態となるように同可動コイルに流れる電流を制御する電流制御手段を備えることが好適である。これによれば、可動コイルを通電状態としたときに外部磁界を測定し、可動コイルを非通電状態としたときに加速度等を測定するセンサが提供される。
【0023】
本発明の測定方法は、
基板と、前記基板上に固定されるとともに加えられた磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持された可動コイルと、を備えたセンサを用いて同センサ又は同センサが固定された物体の加速度及び角加速度の少なくとも一方を測定する物理量の測定方法であって、
前記可動コイルに通電して同可動コイルにより磁界を発生させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記加速度及び前記角加速度の少なくとも一方として測定する測定方法である。
【0024】
これによれば、可動コイルと磁気検出素子のみとを備えた前述した本発明のセンサを用いて加速度又は角加速度を測定することができる。
【0025】
更に、本発明の他の測定方法は、
基板と、前記基板上に固定されるとともに加えられた磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持された可動コイルと、を備えたセンサを用いて同センサ又は同センサが固定された物体の加速度及び角加速度の少なくとも一方と同センサに加わる外部磁界とを測定する測定方法であって、
前記可動コイルへの通電を停止して同可動コイルによる磁界を消滅させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記センサに加わる外部磁界として取得する外部磁界測定ステップと、
前記可動コイルに通電して同可動コイルにより磁界を発生させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記加速度及び前記角加速度の少なくとも一方として取得する物理量測定ステップと、
を含む測定方法である。
【0026】
これによれば、上述した本発明のセンサを用いて、地磁気などの外部磁界と加速度等とを所定のタイミングにて測定することができる。
【0027】
この場合、前記外部磁界測定ステップ及び前記物理量測定ステップは所定時間の経過毎に交互に繰り返し実行されるとともに、同物理量測定ステップの終了時において前記可動コイルへの通電を停止してから余裕時間が経過した後に同外部磁界測定ステップを開始することが好適である。
【0028】
可動コイルの通電を停止した時点から暫くの間は、過渡的な電流が可動コイルに流れ、これにより可動コイルの回りに発生する磁界が完全には消滅しない。従って、可動コイルの通電停止直後から外部磁界の測定を開始すると、外部磁界を正しく測定できない恐れがある。従って、上記構成のように、可動コイルの通電を停止してから余裕時間が経過した後に外部磁界測定ステップを開始することにより、外部磁界を精度良く測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明によるセンサ及び同センサを用いた物理量の測定方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1はこのセンサ10の平面図、図2は図1の1−1線に沿った平面にてセンサ10を切断した断面図である。センサ10は、図1及び図2に示したように、基板10aと、複数の(この例では合計で8個の)GMR素子(磁気検出素子、磁気抵抗効果素子)11〜14,21〜24と、可動コイル部30と、回路部40とを備えている。
【0030】
基板10aは、平面視において互いに直交するX軸及びY軸に沿った辺を有する略正方形状を有し、X軸及びY軸に直交するZ軸方向に小さな厚みを有する薄板体である。なお、X軸及びY軸は、基板10aの主面(上面)上の座標軸であり、X軸方向は第1方向、Y軸方向は第2方向とも称呼される。
【0031】
GMR素子11〜14,21〜24は、磁界に応じた大きさの特性値(後述する磁界検出方向の磁界成分の大きさに応じた値)を示す磁気検出素子である。GMR素子11〜14,21〜24は、基板10aに対して配設された位置が異なる点を除き、互いに実質的に同一の構造を備えている。従って、以下、GMR素子11を代表例として、その構造について簡単に説明する。なお、GMR素子11は第1X軸GMR素子11、GMR素子12は第2X軸GMR素子12、GMR素子13は第3X軸GMR素子13、GMR素子14は第4X軸GMR素子14と称呼される。また、GMR素子21は第1Y軸GMR素子21、GMR素子22は第2Y軸GMR素子22、GMR素子23は第3Y軸GMR素子23、GMR素子24は第4X軸GMR素子24と称呼される。
【0032】
更に、第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14は、基板10aの主面上の第1方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板の主面に固定された第1磁気検出素子とも称呼され得る。第1Y軸GMR素子21〜第4Y軸GMR素子24は、基板10aの主面上の前記第1方向と所定の角度(この場合、90度)をもって交差する第2方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板10aの主面に固定された第2磁気検出素子とも称呼され得る。
【0033】
第1X軸GMR素子11は、拡大平面図である図3及び図3の2−2線に沿った平面にて第1X軸GMR素子11を切断した概略断面図である図4に示したように、複数の(この例では合計で6個の)幅狭帯状部11a1〜11a6と、複数の(この例では7個の)バイアス磁石膜11b1〜11b7と、一対の端子部11c1,11c2と、を備えている。
【0034】
幅狭帯状部11a1〜11a6の各々はY軸方向に長手方向を有している。最もX軸正方向側に位置する幅狭帯状部11a1のY軸負方向側の端部は、バイアス磁石膜11b1の上に形成されている。バイアス磁石膜11b1は接続部11c1と接続されている。幅狭帯状部11a1のY軸正方向側の端部は、バイアス磁石膜11b2の上に形成されている。
【0035】
幅狭帯状部11a2は、幅狭帯状部11a1のX軸負側において幅狭帯状部11a1に隣接配置されている。幅狭帯状部11a2の一つの端部はバイアス磁石膜11b2の上に形成されるとともに、バイアス磁石膜11b2上において幅狭帯状部11b1と接続されている。幅狭帯状部11a2の他の端部はバイアス磁石膜11b3の上に形成されている。
【0036】
幅狭帯状部11a3は、幅狭帯状部11a2のX軸負側において幅狭帯状部11a2に隣接配置されている。幅狭帯状部11a3の一つの端部はバイアス磁石膜11b3の上に形成されるとともに、バイアス磁石膜11b3上において幅狭帯状部11a2と接続されている。幅狭帯状部11a3の他の端部はバイアス磁石膜11b4の上に形成されている。
【0037】
幅狭帯状部11a4は、幅狭帯状部11a3のX軸負側において同幅狭帯状部11a3に隣接配置されている。幅狭帯状部11a4の一つの端部はバイアス磁石膜11b4の上に形成されるとともに、バイアス磁石膜11b4上において幅狭帯状部11a3と接続されている。幅狭帯状部11a4の他の端部はバイアス磁石膜11b5の上に形成されている。
【0038】
幅狭帯状部11a5は、幅狭帯状部11a4のX軸負側において同幅狭帯状部11a4に隣接配置されている。幅狭帯状部11a5の一つの端部はバイアス磁石膜11b5の上に形成されるとともに、バイアス磁石膜11b5上において幅狭帯状部11a4と接続されている。幅狭帯状部11a5の他の端部はバイアス磁石膜11b6の上に形成されている。
【0039】
幅狭帯状部11a6は、幅狭帯状部11a5のX軸負側において同幅狭帯状部11a5に隣接配置されている。幅狭帯状部11a6の一つの端部はバイアス磁石膜11b6の上に形成されるとともに、バイアス磁石膜11b6上において幅狭帯状部11a5と接続されている。幅狭帯状部11a6の他の端部はバイアス磁石膜11b7の上に形成されている。バイアス磁石膜11b7は接続部11c2と接続されている。
【0040】
幅狭帯状部11a1〜11a6の各々は、図5に膜構成を示したスピンバルブ膜からなっている。このスピンバルブ膜は、基板10aの上に形成されたフリー層F、フリー層Fの上に形成されたスペーサ層S、スペーサ層Sの上に形成された固定層P及び固定層Pの上に形成されたキャッピング層Cからなっている。基板10aは、P型のSi層10a1とその上に積層されたSiO(又はSiN)の絶縁層(絶縁・配線層)10a2とからなっている。
【0041】
フリー層Fは、外部磁界の向きに応じて磁化の向きが変化する層である。フリー層Fは、基板10aの直上に形成された膜厚が8nm(80Å)のCoZrNbアモルファス磁性層11−1と、CoZrNbアモルファス磁性層11−1の上に形成された膜厚が3.3nm(33Å)のNiFe磁性層11−2と、NiFe磁性層11−2の上に形成された膜厚が1〜3nm(10〜30Å)程度のCoFe層11−3とからなっている。CoZrNbアモルファス磁性層11−1とNiFe磁性層11−2は軟質の強磁性体膜を構成している。
【0042】
スペーサ層Sは、膜厚が2.4nm(24Å)のCuからなる導電性膜である。なお、前記CoFe層11−3はNiFe層11−2のNi及びスペーサ層SのCu11−4の拡散を防止するものである。
【0043】
固定層(固着層、磁化固定層)Pは、膜厚が2.2nm(22Å)のCoFe磁性層11−5と、Ptを45〜55mol%含むPtMn合金から形成した膜厚が24nm(240Å)の反強磁性膜11−6とを重ね合わせたものである。CoFe磁性層11−5は、ピニング層を構成する反強磁性膜11−6に交換結合的に裏打されることにより磁化(磁化ベクトル)の向きがX軸負方向にピン(固着)されるピンド層を構成している。CoFe磁性層11−5の磁化の向きが、第1X軸GMR素子のピンド層の固定された磁化の向きである。
【0044】
キャッピング層Cは、膜厚が1.5nm(15Å)のチタン(Ti)又はタンタル(Ta)からなっている。
【0045】
再び、図3を参照すると、バイアス磁石膜11b1〜11b7は、CoCrPt等の硬質強磁性体であって高保磁力及び高角型比を有する材質からなり、着磁されて永久磁石膜となっている。バイアス磁石膜11b1〜11b7は、フリー層Fの一軸異方性を維持するため、同フリー層Fに対して同フリー層Fの長手方向にバイアス磁界を与えるようになっている。第1X軸GMR素子11において、バイアス磁石膜11b1〜11b7によるバイアス磁界の向きはY軸負方向である。
【0046】
以上の構成により、第1X軸GMR素子11の抵抗値は、幅狭帯状部11a1〜11a6の各抵抗値の和として、接続部11c1及び接続部11c2から取得される。この結果、第1X軸GMR素子11は、図6に示したように、X軸に沿って変化する外部磁界に対し、−Hc〜+Hcの範囲において、略比例して変化する特性値である抵抗値(一つの向きであるX軸正方向の外部磁界の大きさが大きくなるほど増大する抵抗値)を示すようになっている。また、第1X軸GMR素子11は、Y軸に沿って変化する外部磁界に対しては略一定の抵抗値を示すようになっている。即ち、第1X軸GMR素子11の磁界検出方向は、ピンド層の固定された磁化の向きに沿った(ピンド層の固定された磁化の向きと平行又は反平行、ここでは反平行)方向である。
【0047】
再び、図1を参照すると、第1X軸GMR素子11は、基板10aのY軸方向略中央部上方でX軸負方向端部近傍に形成されている。上述したように、第1X軸GMR素子11のピンド層の固定された磁化の向きはX軸負方向となっている。第2X軸GMR素子12は、基板10aのY軸方向略中央部下方でX軸負方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはX軸負方向となっている。従って、第1X軸GMR素子11の磁界検出方向及び第2X軸GMR素子12の磁界検出方向は、共にX軸の正方向である。
【0048】
第3X軸GMR素子13は、基板10aのY軸方向略中央部上方でX軸正方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはX軸正方向となっている。第4X軸GMR素子14は、基板10aのY軸方向略中央部下方でX軸正方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはX軸正方向となっている。従って、第3X軸GMR素子13の磁界検出方向及び第4X軸GMR素子14の磁界検出方向は、共にX軸の負方向である。
【0049】
第1Y軸GMR素子21は、基板10aのX軸方向略中央部左方でY軸正方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはY軸正方向となっている。第2Y軸GMR素子22は、基板10aのX軸方向略中央部右方でY軸正方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはY軸正方向となっている。従って、第1Y軸GMR素子21の磁界検出方向及び第2Y軸GMR素子22の磁界検出方向は、共にY軸負方向である。
【0050】
第3Y軸GMR素子23は、基板10aのX軸方向略中央部左方でY軸負方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはY軸負方向となっている。第4Y軸GMR素子24は、基板10aのX軸方向略中央部右方でY軸負方向端部近傍に形成されていて、ピンド層の固定された磁化の向きはY軸負方向となっている。従って、第3Y軸GMR素子23の磁界検出方向及び第4Y軸GMR素子24の磁界検出方向は、共にY軸の正方向である。
【0051】
以上のように、GMR素子11〜14,21〜24は、仮想の正多角形である正方形(基板10aと相似形の正方形であって、図1中に二点鎖線にて示す正方形VS)の各辺の中央部近傍の位置に、同各辺と直交する方向が磁界検出方向となるように基板10a上に固定されている。
【0052】
なお、第1X軸GMR素子11の磁界検出方向及び第2X軸GMR素子12の磁界検出方向は共にX軸の負方向、第3X軸GMR素子13の磁界検出方向及び第4X軸GMR素子14の磁界検出方向は共にX軸の正方向であると言うこともできる。同様に、第1Y軸GMR素子21の磁界検出方向及び第2Y軸GMR素子22の磁界検出方向は共にY軸正方向、第3Y軸GMR素子23の磁界検出方向及び第4Y軸GMR素子24の磁界検出方向は共にY軸の負方向であると言うこともできる。
【0053】
可動コイル部30は、図1及び図2に示したように、重り部31、可動コイル32、第1〜第8支持部材33a〜33h及びコイル接続用パッド34a,34bから構成されている。
【0054】
重り部31はSiOからなっている。重り部31は、平面視において基板10a及び前述した仮想の正方形VSよりも小さい正方形状(即ち、仮想の多角形と相似形の多角形形状)を有し、Z軸方向に小さな厚みを有する薄板体である。可動コイル32は、ポリシリコン(又はタングステン)からなっている。可動コイル32は、重り部31の上面に形成されている。可動コイル32の形状は、平面視において重り部31の各辺に沿った辺を有する正方形状である。可動コイル32の各辺は、重り部31の各辺の近傍に形成されている。即ち、可動コイル32の形状は、前述した仮想の正方形VSよりも僅かに小さい同仮想の正方形VSと相似の正方形である。
【0055】
第1〜第8支持部材33a〜33hのそれぞれは、一端が重り部31の角部に固定・接続されるとともに、他端が基板10aの上面に固定・接続され、重り部31(従って、可動コイル32)を基板10aに対して基板10aの主面と略平行な面内(X−Y平面と平行な面内)において移動可能に支持している。
【0056】
より具体的に述べると、第1支持部材33aは、センサ10の部分斜視図である図7に示したように、バネ状部33a1と支柱部33a2とを備えている。バネ状部33a1の下部はSiOからなっている。バネ状部33a1の下部の一端は、重り部31のX軸正方向端部且つY軸負方向端部にて重り部31のY−Z平面を構成する壁に繋がっている。バネ状部33a1の上部は可動コイル32と同一のポリシリコンからなっている。バネ状部33a1の上部の一端は、重り部31のX軸正方向端部の上方にてY軸方向に沿って延びる可動コイル32の一辺のY軸負方向端部に繋がっている。
【0057】
バネ状部33a1は、平面視においてジグザグ状となっていて、バネ性(弾性)を発揮するようになっている。バネ状部33a1は、X−Y平面に平行に配設されていてX軸正方向に延びている。バネ状部33a1の上部及び下部の他端は、支柱部33a2の一端に繋がっている。支柱部33a2はポリシリコンからなっている。支柱部33a2は、四角柱形状を有していて、その他端が基板10aに固定されることにより基板10aに立設されている。
【0058】
第2支持部材33bは、バネ状部33b1と支柱部33b2とからなり、第1支持部材33aと同一構造を備えている。バネ状部33b1の下部の一端は、重り部31のX軸正方向端部且つY軸負方向端部にて重り部31のX−Z平面を構成する壁に繋がっている。バネ状部33b1の上部の一端は、重り部31のY軸負方向端部の上方にてX軸方向に沿って延びる可動コイル32の一辺のX軸正方向端部に繋がっている。
【0059】
バネ状部33b1は、バネ状部33a1と同様、平面視においてジグザグ状となっていて、バネ性を発揮するようになっている。バネ状部33b1は、X−Y平面に平行に配設されていてY軸負方向に延びている。バネ状部33b1の上部及び下部の他端は、支柱部33b2の一端に繋がっている。支柱部33b2はポリシリコンからなっている。支柱部33b2は、四角柱形状を有していて、その他端が基板10aに固定されることにより基板10aに立設されている。
【0060】
第3支持部材33c〜第8支持部材33hのそれぞれは、第1支持部材33aと同様な構造を備えている。ただし、第3支持部材33c〜第8支持部材33hのバネ状部の上部であるポリシリコンは可動コイル32と接続されていない。第3支持部材33c〜第8支持部材33hの配設位置は、図1に示したとおり、重り部31の角部である。
【0061】
以上の構成により、重り部31及び可動コイル32は、センサ10が静止しているとき(センサ10に加速度が発生していないとき)、図1に示した初期位置に維持されるようになっている。重り部31及び可動コイル32が初期位置にあるとき、平面視において、重り部31及び可動コイル32の重心QはGMR素子11〜14,21〜24の重心(前記仮想の正方形VSの重心)Gに一致し、且つ、可動コイル32の各辺は前記仮想の正方形VSの各辺と平行となる。一方、重り部31及び可動コイル32は、センサ10に基板10aの主面内における加速度が生じたとき、慣性力によって加速度と反対方向に初期位置から平行移動するようになっている。また、重り部31及び可動コイル32は、基板10aの主面内においてセンサ10を回転させる力がセンサ10に加わったとき、平面視において重心G(Q)の周りに回転移動するようになっている。
【0062】
コイル接続用パッド34a,34bは、図1及び図7に示したように、基板10aのX軸正方向端部且つY軸負方向端部の角部に配設されている。コイル接続用パッド34a,34bは、基板10aに立設されていて、それらの上面が可動コイル32の上面と一致している。コイル接続用パッド34aは、支柱部33a2と基板10aの内部において電気的に接続されている。コイル接続用パッド34bは、支柱部33b2と基板10aの内部において電気的に接続されている。コイル接続用パッド34a,34bは、図示しない接続ワイヤーを介してセンサ10外部の図示しない定電流源と接続されている。なお、センサ10は、定電流源を内蔵していてもよく、その場合、可動コイル32は支柱部33a2及び支柱部33b2を介して定電流源と接続される。
【0063】
回路部40は、図1に示したように、可動コイル部30の下方の基板10a内に形成されている。回路部40は、以下に述べるように、測定対象である外部磁界(例えば、地磁気)、センサ10の加速度及び角加速度の何れを測定するかに応じてGMR素子11〜14間の接続関係及びGMR素子21〜24間の接続関係を切り換える切換え部と、電位VBを維持する定電圧源と、を内蔵している。これにより、センサ10は、測定対象に応じた値をセンサ10の外部に取り出すこと(測定すること)ができるように構成されている。また、回路部40は、前述した定電流源に指示信号を送出することにより、加速度及び角加速度を測定する場合には可動コイル32を通電状態として可動コイル32に一定の電流Iを流し、外部磁界を測定する場合には可動コイル32への通電を行わない(非通電状態とする)電流制御手段を含んでいる。
【0064】
次に、センサ10が外部磁界、センサ10の加速度及び角加速度をどのように測定するかについて説明する。
【0065】
(外部磁界の測定:X軸方向に沿う外部磁界の成分の測定)
先ず、センサ10がX軸方向に沿う外部磁界の成分を測定する場合について説明する。この場合、センサ10の回路部40は、図8に示したように、第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14をフルブリッヂ接続する。なお、図8において、第1〜第4X軸GMR素子11〜14の各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接したGMR素子の特性値の変化(X軸に沿って変化する外部磁界Hxに対するGMR素子の抵抗値Rの変化)を示している。
【0066】
より具体的に述べると、第1X軸GMR素子11の一端及び第4X軸GMR素子14の一端は、共に電位VBを維持する定電圧源に接続される。第2X軸GMR素子12の一端及び第3X軸GMR素子13の一端は、共に接地される。第1X軸GMR素子11の他端と第3X軸GMR素子13の他端とは接続点P1にて電気的に接続され、第4X軸GMR素子14の他端と第2X軸GMR素子12の他端とは接続点P2にて電気的に接続される。そして、接続点P2と接続点P1との間の電位差がセンサ10の出力Voxとして取り出される。従って、出力Voxは、第1〜第4X軸GMR素子のそれぞれが示す特性値(抵抗値)に応じた値となる。
【0067】
一方、前述したように、外部磁界を測定するとき、回路部40は可動コイル32への通電を行わない。この結果、第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14が示す各抵抗値(特性値)は、外部磁界に応じた値となる。以上により、センサ10は、図8の(B)に示したように、X軸に沿って変化する外部磁界Hxに略比例するとともに、外部磁界Hxが大きいほど大きくなる電圧Voxを出力する。
【0068】
(センサ10のX軸方向の加速度の測定)
次に、センサ10がセンサ10のX軸方向の加速度(センサ10が固定されている物体の加速度)を測定する場合について説明する。この場合、センサ10の回路部40は、図8の(A)に示した外部磁界を測定する場合と同様に、第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14をフルブリッヂ接続し、点P2と点P1の間の電位差Voxを出力する(図9の(C)を参照。)。更に、回路部40は、可動コイル32に一定の電流Iを流す。これにより、可動コイル32の周りに磁界が発生する。
【0069】
いま、センサ10に加速度が生じていないとして説明を続けると、可動コイル32は、図9の(A)に示した初期位置に存在する。従って、図9の(A)及び図9の(A)の3−3線に沿った平面にてセンサ10を切断した断面図(但し、重り部31は省略)である図9の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11及び第2X軸GMR素子12には、X軸負方向で第1の大きさHN(HN>0)の磁界が加わり、第3X軸GMR素子13及び第4X軸GMR素子14には、X軸正方向で第1の大きさHNの磁界が加わる。なお、センサ10にX軸方向以外の加速度が生じている場合であっても、第1〜第4X軸GMR素子11〜14のそれぞれには、上記と同じ磁界が加わる。また、可動コイル32の通電により第1X軸GMR素子11〜第4X軸GMR素子14及び第1Y軸GMR素子21〜第4Y軸GMR素子24に加わる磁界の大きさは地磁気に対して十分に大きい(以下、同じ。)。
【0070】
このとき、第1X軸GMR素子11の抵抗値及び第2X軸GMR素子12の抵抗値は、図10の(A)に示したように、共に値R1となる。値R1は、外部磁界が「0」である場合のGMR素子11〜14,21〜24の抵抗値である基準抵抗値R0よりも小さい値である。同様に、第3X軸GMR素子13の抵抗値及び第4X軸GMR素子14の抵抗値は、図10の(B)に示したように、共に値R1となる。この結果、センサ10に加速度が生じていない場合、センサ10の出力Voxは図9の(C)に示したように「0」となる。
【0071】
次に、センサ10にX軸正方向の力が加わり、センサ10にX軸正方向の加速度が発生したとする。このとき、可動コイル32(及び重り部31)は、図11(A)に示したように、慣性力によって同慣性力に応じた変位量だけ初期位置からX軸負方向に平行移動する。
【0072】
これにより、図11の(A)及び図11の(A)の4−4線に沿った平面にてセンサ10を切断した断面図(但し、重り部31は省略)である図11の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11及び第2X軸GMR素子12には、X軸負方向で第1の大きさHNよりも大きい第2の大きさHL(0<HN<HL)の磁界が加わる。一方、第3X軸GMR素子13及び第4X軸GMR素子14には、X軸正方向で第1の大きさHNよりも小さい第3の大きさHL’(0<HL’<HN)の磁界が加わる。
【0073】
従って、第1X軸GMR素子11の抵抗値及び第2X軸GMR素子12の抵抗値は、図10の(A)に示したように、共に値R1−d1(d1>0)となる。一方、第3X軸GMR素子13の抵抗値及び第4X軸GMR素子14の抵抗値は、図10の(B)に示したように、共に値R1+d2(d2>0)となる。この結果、センサ10にX軸正方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力Voxは、図11の(C)及び下記(1)式に示した値Vox1となる。
Vox=Vox1=−VB・(d1+d2)/(2R1+d2−d1)…(1)
【0074】
この場合、d1及びd2はR1に対して十分に小さいから、(1)式は下記(2)式のように書き直される。
Vox=Vox1=−VB・(d1+d2)/2R1…(2)
この(2)式から明らかなように、センサ10にX軸正方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力値Voxは負の値となる。
【0075】
次に、センサ10にX軸負方向の力が加わり、センサ10にX軸負方向の加速度が発生したと仮定する。このとき、可動コイル32は、図12の(A)に示したように、慣性力によって同慣性力に応じた変位量だけ初期位置からX軸正方向に平行移動する。
【0076】
これにより、図12の(A)及び図12の(A)の5−5線に沿った平面にてセンサ10を切断した断面図(但し、重り部31は省略)である図12の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11及び第2X軸GMR素子12には、X軸負方向で第1の大きさHNよりも小さい第4の大きさHR(0<HR<HN)の磁界が加わる。一方、第3X軸GMR素子13及び第4X軸GMR素子14には、X軸正方向で第1の大きさHNよりも大きい第5の大きさHR’(0<HN<HR’)の磁界が加わる。
【0077】
従って、第1X軸GMR素子11の抵抗値及び第2X軸GMR素子12の抵抗値は、図10の(A)に示したように、共に値R1+d3(d3>0)となる。一方、第3X軸GMR素子13の抵抗値及び第4X軸GMR素子14の抵抗値は、図10の(B)に示したように、共に値R1−d4(d4>0)となる。この結果、センサ10にX軸負方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力Voxは、図12の(C)及び下記(3)式に示した値Vox2となる。
Vox=Vox2=VB・(d3+d4)/(2R1+d3−d4)…(3)
【0078】
この場合、d3及びd4はR1に対して十分に小さいから、(3)式は下記(4)式のように書き直される。
Vox=Vox2=VB・(d3+d4)/2R1…(4)
この(4)式から明らかなように、センサ10にX軸負方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力値Voxは正の値となる。
【0079】
上記(2)式の値d1及び値d2は、何れもセンサ10に発生しているX軸正方向の加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。また、上記(4)式の値d3及び値d4は、何れもセンサ10に発生しているX軸負方向の加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。更に、前述したように、センサ10にX軸方向の加速度が発生していない場合、センサの出力値Voxは「0」となる。以上から、センサ10の出力値VoxはX軸正方向の加速度に対して単調減少するので、この出力値Voxに基づいてX軸方向の加速度を測定することができる。
【0080】
(外部磁界の測定:Y軸方向に沿う外部磁界の成分の測定)
センサ10は、Y軸方向に沿う外部磁界及び加速度の成分についても、X軸方向のそれらと同様に測定する。より具体的に述べると、センサ10の回路部40は、Y軸方向の外部磁界を測定する場合、図13に示したように、第1Y軸GMR素子21〜第4Y軸GMR素子24をフルブリッヂ接続する。なお、図13において、第1〜第4Y軸GMR素子21〜24の各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接したGMR素子の特性値の変化(Y軸に沿って変化する外部磁界Hyに対するGMR素子の抵抗値Rの変化)を示している。
【0081】
第2Y軸GMR素子22の一端及び第3Y軸GMR素子23の一端は、共に電位VBを維持する定電圧源に接続される。第1Y軸GMR素子21の一端及び第4Y軸GMR素子24の一端は、共に接地される。第3Y軸GMR素子23の他端と第1Y軸GMR素子21の他端とは接続点P3にて電気的に接続され、第2Y軸GMR素子22の他端と第4Y軸GMR素子24の他端とは接続点P4にて電気的に接続される。そして、接続点P4と接続点P3との間の電位差がセンサ10の出力Voyとして取り出される。
【0082】
一方、前述したように、外部磁界を測定するとき、回路部40は可動コイル32への通電を行わない。この結果、第1Y軸GMR素子21〜第4Y軸GMR素子24が示す各抵抗値(特性値)は、外部磁界に応じた値となる。以上により、センサ10は、図13の(B)に示したように、Y軸に沿って変化する外部磁界Hyに略比例するとともに、外部磁界Hyが大きいほど大きくなる電圧Voyを出力する。
【0083】
(センサ10のY軸方向の加速度の測定)
次に、センサ10がセンサ10のY軸方向の加速度を測定する場合について説明する。この場合、センサ10の回路部40は、図13の(A)に示した外部磁界を測定する場合と同様に、第1Y軸GMR素子21〜第4Y軸GMR素子24をフルブリッヂ接続し、点P4と点P3の間の電位差Voyを出力する。更に、回路部40は、可動コイル32に一定の電流Iを流す。これにより、可動コイル32の周りに磁界が発生する。
【0084】
いま、センサ10に加速度が生じていないとして説明を続けると、可動コイル32は、図9の(A)に示した初期位置に存在する。従って、図9の(A)に示したように、第1Y軸GMR素子21及び第2Y軸GMR素子22には、Y軸正方向に第1の大きさHNの磁界が加わる。一方、第3Y軸GMR素子23及び第4Y軸GMR素子24には、Y軸負方向に第1の大きさHNの磁界が加わる。なお、センサ10にY軸方向以外の加速度が生じている場合であっても、第1〜第4Y軸GMR素子21〜24のそれぞれには、上記と同じ磁界が加わる。
【0085】
このとき、第1Y軸GMR素子21〜第4X軸GMR素子24の抵抗値は、図14に示したように、総て値R1となる。この結果、センサ10にY軸方向の加速度が生じていない場合、センサ10の出力Voyは「0」となる。
【0086】
次に、センサ10にY軸正方向の力が加わり、センサ10にY軸正方向の加速度が発生したとする。このとき、可動コイル32(重り部31)は、図15の(A)に示したように、慣性力によって同慣性力に応じた変位量だけ初期位置からY軸負方向に平行移動する。
【0087】
これにより、第1Y軸GMR素子21及び第2Y軸GMR素子22には、Y軸正方向で第1の大きさHNよりも小さい第6の大きさHD(0<HD<HN)の磁界が加わる。一方、第3Y軸GMR素子23及び第4Y軸GMR素子24には、Y軸負方向で第1の大きさHNよりも大きい第7の大きさHD’(0<HN<HD’)の磁界が加わる。
【0088】
従って、第1Y軸GMR素子21の抵抗値及び第2Y軸GMR素子22の抵抗値は、図14の(A)に示したように、共に値R1+d5(d5>0)となる。一方、第3Y軸GMR素子23の抵抗値及び第4Y軸GMR素子24の抵抗値は、図14の(A)に示したように、共に値R1−d6(d6>0)となる。この結果、センサ10にY軸正方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力Voyは、下記(5)式に示した値Voy1となる。なお、(5)式においては、d5及びd6はR1に対して十分に小さい点を考慮している。
Voy=Voy1=−VB・(d5+d6)/2R1…(5)
【0089】
次に、センサ10にY軸負方向の力が加わり、センサ10にY軸負方向の加速度が発生したとする。このとき、重り部31及び可動コイル32は、図15の(B)に示したように、慣性力によって同慣性力に応じた変位量だけ初期位置からY軸正方向に平行移動する。
【0090】
これにより、第1Y軸GMR素子21及び第2Y軸GMR素子22には、Y軸正方向で第1の大きさHNよりも大きい第8の大きさHU(0<HN<HU)の磁界が加わる。一方、第3Y軸GMR素子23及び第4Y軸GMR素子24には、Y軸負方向で第1の大きさHNよりも小さい第9の大きさHU’(0<HU’<HN)の磁界が加わる。
【0091】
従って、第1Y軸GMR素子21の抵抗値及び第2Y軸GMR素子22の抵抗値は、図15の(A)に示したように、共に値R1−d7(d7>0)となる。一方、第3Y軸GMR素子23の抵抗値及び第4Y軸GMR素子24の抵抗値は、図15の(B)に示したように、共に値R1+d8(d8>0)となる。この結果、センサ10にY軸負方向の加速度が発生している場合、センサ10の出力Voyは、下記(6)式に示した値Voy2となる。なお、(6)式においては、d7及びd8はR1に対して十分に小さい点を考慮している。
Voy=Voy2=VB・(d7+d8)/2R1…(6)
【0092】
上記(5)式の値d5及び値d6は、何れもセンサ10に発生しているY軸正方向の加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。また、上記(6)式の値d7及び値d8は、何れもセンサ10に発生しているY軸負方向の加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。更に、前述したように、センサ10にY軸方向の加速度が発生していない場合、センサの出力値Voyは「0」となる。以上から、センサ10の出力値VoyはY軸正方向の加速度に対して単調減少するので、この出力値Voyに基づいてY軸方向の加速度を測定することができる。
【0093】
(センサ10の角加速度の測定)
次に、センサ10が角加速度を測定する場合について説明する。この場合、センサ10の回路部40は、図16の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11と第2X軸GMR素子12をハーフブリッヂ接続する。即ち、第1X軸GMR素子11の一端は電位VBを維持する定電圧源に接続される。第1X軸GMR素子11の他端は第2X軸GMR素子12の一端に接続される。第2X軸GMR素子12の他端は接地される。そして、回路部40は、第2X軸GMR素子12の両端の電位差Vrを出力する。更に、回路部40は、可動コイル32に一定の電流Iを流す。
【0094】
いま、センサ10に加速度及び角加速度が生じていないとして説明を続けると、可動コイル32は、図16の(A)に示した初期位置に存在する。従って、第1X軸GMR素子11及び第2X軸GMR素子12には、X軸負方向に第1の大きさHN(HN>0)の磁界が加わる。この結果、第1X軸GMR素子11の抵抗値及び第2X軸GMR素子12の抵抗値は共に値R1となる。従って、図16の(B)に示したように、センサ10の出力値VrはVB/2となる。
【0095】
次に、センサ10にX−Y平面内において重心G(Q)を中心として左回りの角加速度が発生したとする。このとき、可動コイル32(及び重り部31)は、図17の(A)に示したように、慣性力によって角加速度に応じた角度だけ初期位置からX−Y平面内において重心Gを中心として右回りに回転する。
【0096】
これにより、第1X軸GMR素子11にはX軸負方向で第1の大きさHNよりも小さい第10の大きさHa(0<Ha<HN)の磁界が加わる。一方、第2X軸GMR素子12には、X軸負方向で第1の大きさHNよりも大きい第11の大きさHb(0<HN<Hb)の磁界が加わる。この結果、図17の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11の抵抗値はR1+ra(ra>0)となり、第2X軸GMR素子12の抵抗値はR1−rb(rb>0)となる。従って、センサ10の出力値Vrは、下記(7)式に示した値となる。
Vr=VB・(R1−rb)/(2R1+ra−rb)…(7)
【0097】
この場合、ra及びrbはR1に対して十分に小さいから、(7)式は下記(8)式のように書き直される。
Vr=VB・(R1−rb)/(2R1)…(8)
【0098】
次に、センサ10にX−Y平面内において重心G(Q)を中心として右回りの角加速度が発生したとする。このとき、可動コイル32は、図18の(A)に示したように、慣性力によって角加速度に応じた角度だけ初期位置からX−Y平面内において重心Gを中心として左回りに回転する。
【0099】
これにより、第1X軸GMR素子11にはX軸負方向に第1の大きさHNよりも大きい第12の大きさHc(0<HN<Hc)の磁界が加わる。一方、第2X軸GMR素子12には、X軸負方向で第1の大きさHNよりも小さい第13の大きさHd(0<Hd<HN)の磁界が加わる。この結果、図18の(B)に示したように、第1X軸GMR素子11の抵抗値はR1−rc(rc>0)となり、第2X軸GMR素子12の抵抗値はR1+rd(rd>0)となる。従って、センサ10の出力値Vrは、下記(9)式に示した値となる。
Vr=VB・(R1+rd)/(2R1+rd−rc)…(9)
【0100】
この場合、rc及びrdはR1に対して十分に小さいから、(9)式は下記(10)式のように書き直される。
Vr=VB・(R1+rd)/(2R1)…(10)
【0101】
上記(8)式の値rbは、左回りの角加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。また、上記(10)式の値rdは、右回りの角加速度の大きさが大きくなるほど大きくなる。更に、値rb及び値rdは、角加速度が発生していない場合に「0」である。以上から、センサ10の出力値Vrは重心G周りの右回りの角加速度に対して単調増加するから、この出力値Vrに基づいて角加速度を測定することができる。
【0102】
なお、以上から明らかなように、第1X軸GMR素子11と第2X軸GMR素子12との組み合わせ以外であっても、角加速度の発生に伴って可動コイル32によって加えられる磁界検出方向の磁界の大きさが増大する素子と減少する素子とを組み合わせることにより、同様に角加速度を測定することができる。即ち、第1X軸GMR素子11、第2Y軸GMR素子22、第4X軸GMR素子14及び第3Y軸GMR素子23の何れか一つと、第2X軸GMR素子12、第1Y軸GMR素子21、第3X軸GMR素子13及び第4Y軸GMR素子24の何れか一つとを組み合わせることにより、角加速度を測定するこができる。
【0103】
更に、例えば、図19の(A)及び(B)に示したように、右回りの角加速度の発生に伴って抵抗値が減少するGMR素子同士を第1群として直列接続するとともに、抵抗値が増大するGMR素子同士を第2群として直列接続し、第1群及び第2群を直列接続する。そして、この両端に電位差VBを与え且つ第1群又は第2群の電位差をセンサ10の出力Vrとして取り出すことによっても、角加速度を測定することができる。
【0104】
(測定方法例)
次に、実際に加速度及び外部磁界を測定する際のセンサ10の作動について、図20に示したタイムチャートを参照しながら説明する。いま、時刻t0にて測定を開始したと仮定すると、回路部40は時刻t0から可動コイル32への通電を開始する。同時に回路部40は、上述した出力値Vox及び出力値Voyに基づいてそれぞれX軸方向の加速度及びY軸方向の加速度を測定する。即ち、加速度を取得する物理量測定ステップを実行する。
【0105】
次いで、回路部40は時刻t10にて可動コイル32への通電を停止する。その後、例えば1msの余裕時間が経過して時刻t1(物理量測定ステップの終了時)になると、回路部40は出力値Vox及び出力値Voyに基づいてぞれぞれX軸方向の外部磁界(の成分)及びY軸方向の外部磁界(の成分)の測定を開始する。即ち、外部磁界測定ステップを実行する。なお、時刻t0〜時刻t1は、ここでは一定時間である20msである。また、余裕時間は、可動コイル32への通電の停止後、可動コイル32により発生される磁界が完全に消滅するために必要な時間である。
【0106】
そして、回路部40は時刻t1から20ms後の時刻t2までに外部磁界の測定を終了し、時刻t2となったときに再び可動コイル32への通電を開始するとともに、出力値Vox及び出力値Voyに基づくX軸方向の加速度及びY軸方向の加速度の測定を開始する。回路部40は、その後も同様にして、一定時間(20ms)毎に加速度の測定と外部磁界の測定を繰り返し行う。なお、上記物理量測定ステップにおいて角加速度を測定してもよい。
【0107】
(可動部の製造方法)
次に、センサ10の可動コイル部30の製造方法について図21乃至図28を参照しながら説明する。なお、図21乃至図28は、図1の6−6線に沿った平面にてセンサ10を切断した部分に相当している。また、本例のセンサ10は、MEMS(Micro-Electro-Mechanical System)であって、シリコンを用いた半導体プロセスを基本として製造される。
【0108】
(1)先ず、図21に示したように、P型シリコンの基板50の上に、シリコン酸化膜(SiO膜)又はシリコン窒化膜(SiN膜)を絶縁膜51として形成する。基板50及びシリコン酸化膜51は、前述した基板10aに相当する。このとき、基板50の適宜箇所に、イオン注入によりN型シリコンからなる高濃度層50aを形成しておく。次いで、絶縁膜51の上にSOG膜(Spin On Glass膜、塗布シリコン酸化膜)を犠牲層52として形成し、犠牲層52の上にシリコン酸化膜(SiO膜)又はシリコン窒化膜(SiN膜)を構造層53として形成する。
【0109】
(2)次いで、図22に示したように、絶縁膜51、犠牲層52及び構造層53の適当な箇所にエッチングにより接続孔THを形成し、図23に示したように、ポリシリコン(リン又はボロン等の不純物を含むドープドポリシリコン)又はタングステンからなる導電層54を形成する。そして、図24に示したように、導電層54の形状が前述した可動コイル32の形状となるように導電層54をパターニングする。図24において、Y軸正方向端部にパターニングによって形成された導電層54aは、前述したコイル接続用パッド34aを構成する部分である。パターニングによって形成された導電層54bは、前述した支柱部33a2を構成する部分である。この導電層54aと導電層54bは、高濃度層50aにより電気的に接続される。導電層54cは、前述したバネ状部33a1の上部を構成する部分である。
【0110】
(3)次に、図25に示したように、前述した重り部31を構成することになる部分の上部にレジスト膜55を形成し、CHF又はCFを用いたドライエッチング(異方性ドライエッチング)により導電層54の直下部の構造層53を残したまま、構造層53の不要部分を除去する。
【0111】
(4)次に、図26に示したように、バッファードフッ酸(BHF)又は希フッ酸(HF)を用いたウエットエッチングにより犠牲層52を除去する。犠牲層52のエッチングレイトは極めて高いので、係るウエットエッチングにより絶縁膜51は殆ど除去されることなく、図27に示したように、犠牲層52全体が除去される。
(5)最後に、レジスト膜55を除去する。この結果、図28に示したように、可動コイル部30が完成する。
【0112】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るセンサ10及びセンサ10を利用した物理量の測定方法によれば、外部磁界及び加速度等を磁気検出素子と可動コイルのみを用いて測定・検出することができる。
【0113】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記センサ10は、X軸方向を磁界検出方向とする第1〜第4X軸GMR素子11〜14とY軸方向を磁界検出方向とする第1〜第4Y軸GMR素子21〜24とを備え、直交する2軸方向の外部磁界及び加速度を検出可能に構成されていたが、図29に概略平面図を示したように、磁気検出素子として第1〜第4X軸GMR素子11〜14のみを備えてX軸方向の外部磁界及び加速度を検出するように構成されてもよい。
【0114】
また、上記センサ10は、仮想の正多角形である正方形VSの第1の辺(Y軸方向に沿った辺)と第1の辺と直交する方向の第2の辺(X軸方向に沿った辺)の各辺の中央部近傍の位置に、同各辺と直交する方向が磁界検出方向となる(即ち、各辺と直交する方向の磁界の成分に応じた大きさの特性値を示す)ように各GMR素子が配置されたセンサであったが、仮想の正多角形は正方形に限らず、例えば、図30に概略平面図を示したように正八角形等の多角形であってもよい。この場合、GMR素子などの磁気検出素子60を仮想の正八角形V8の各辺の中央部近傍の位置に同各辺と直交する方向が磁界検出方向となるように配置し、可動コイル32−1の形状を仮想の正八角形V8と相似又は同一の正八角形としておくことが好適である。
【0115】
また、センサ10は、各GMR素子の接続関係を測定対象に応じて切換えていたが、各GMR素子の抵抗値を個別に測定し、それらのデータに基づく演算を行うことにより、測定対象である外部磁界や加速度等を求めてもよい。
【0116】
更に、センサ10は、加えられた磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子としてGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)を採用していたが、これに代えて、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)、磁気トンネル効果素子(TMR素子)、磁気インピーダンス素子(MI素子)、フラックスゲートセンサ及びホール素子等の磁気検出素子を採用してもよい。
【0117】
また、センサ10においては、第1磁気検出素子としての第1〜第4X軸GMR素子11〜14はX軸方向(第1方向)の磁界成分に応じた大きさの特性値を示し、第2磁気検出素子としての第1〜第4Y軸GMR素子21〜24はX軸方向(第1方向)と90度の角度をもって交差するY軸方向(第2方向)の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように基板10a上に固定されていたが、第2磁気検出素子は第1方向と90度以外の所定の角度をもって交差する第2方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように基板10a上に固定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明によるセンサの実施形態の平面図である。
【図2】図1の1−1線に沿った平面にてセンサを切断した断面図である。
【図3】図1に示した第1X軸GMR素子の部分拡大平面図である。
【図4】図3に示した2−2線に沿った平面にて第1X軸GMR素子を切断した概略断面図である。
【図5】図3に示した第1X軸GMR素子の膜構成を示した図である。
【図6】図3に示した第1X軸GMR素子の抵抗値の変化を示したグラフである。
【図7】図1に示したセンサの部分斜視図である。
【図8】図8の(A)はX軸方向の外部磁界の成分を測定する場合の図1に示したセンサの等価回路図、図8の(B)はそのセンサの出力特性を示したグラフである。
【図9】図9の(A)は加速度が発生していない場合における図1に示したセンサの概略平面図、図9の(B)は図9の(A)の3−3線に沿った平面にてセンサを切断した概略断面図、図9の(C)は加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図10】図10の(A)は図1に示した第1及び第2X軸GMR素子の抵抗値の変化を示したグラフ、図10の(B)は図1に示した第3及び第4X軸GMR素子の抵抗値の変化を示したグラフである。
【図11】図11の(A)はX軸正方向の加速度が発生した場合における図1に示したセンサの概略平面図、図11の(B)は図11の(A)の4−4線に沿った平面にてセンサを切断した概略断面図、図11の(C)は加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図12】図12の(A)はX軸負方向の加速度が発生した場合における図1に示したセンサの概略平面図、図12の(B)は図12の(A)の5−5線に沿った平面にてセンサを切断した概略断面図、図12の(C)は加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図13】図13の(A)はY軸方向の外部磁界の成分を測定する場合の図1に示したセンサの等価回路図、図13の(B)はそのセンサの出力特性を示したグラフである。
【図14】図14の(A)は図1に示した第1及び第2Y軸GMR素子の抵抗値の変化を示したグラフ、図14の(B)は図1に示した第3及び第4Y軸GMR素子の抵抗値の変化を示したグラフである。
【図15】図15の(A)はY軸正方向の加速度が発生した場合における図1に示したセンサの概略平面図、図15の(B)はY軸負方向の加速度が発生した場合における図1に示したセンサの概略平面図である。
【図16】図16の(A)は角加速度が発生していない場合における図1に示したセンサの概略平面図、図16の(B)は角加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図17】図17の(A)は左回りの角加速度が発生している場合における図1に示したセンサの概略平面図、図17の(B)は角加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図18】図18の(A)は右回りの角加速度が発生している場合における図1に示したセンサの概略平面図、図18の(B)は角加速度を測定する場合のセンサの等価回路図である。
【図19】図19の(A)及び(B)は角加速度を測定するための他の等価回路図である。
【図20】図1に示したセンサが実際に加速度及び外部磁界を測定する際の作動を示したタイムチャートである。
【図21】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図22】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図23】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図24】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図25】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図26】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図27】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図28】図1に示したセンサの可動部を製造する方法を説明するための製造途中にあるセンサの部分断面図である。
【図29】本発明の他の実施形態に係るセンサの概略平面図である。
【図30】本発明の他の実施形態に係るセンサの概略平面図である。
【符号の説明】
【0119】
10…センサ、10a…基板、11…第1X軸GMR素子、12…第2X軸GMR素子、13…第3X軸GMR素子、14…第4X軸GMR素子、21…第1Y軸GMR素子、22…第2Y軸GMR素子、23…第3Y軸GMR素子、24…第4X軸GMR素子、30…可動コイル部、31…重り部、32…可動コイル、33a1,33b1…バネ状部、33a〜33h…支持部材、40…回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に固定されるとともに加えられる磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、
前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持され且つ通電により発生した磁界を前記磁気検出素子に加える可動コイルと、
を備え、前記磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するセンサ。
【請求項2】
主面を有する基板と、
前記基板の主面上の第1方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板の主面に固定された第1磁気検出素子と、
前記基板の主面上の前記第1方向と所定の角度をもって交差する第2方向の磁界成分に応じた大きさの特性値を示すように同基板の主面に固定された第2磁気検出素子と、
前記基板の主面と平行な面内において移動可能となるように同基板にバネ性を有する支持部材を介して支持され且つ通電により発生した磁界を前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子に加える可動コイルと、
を備え、前記第1磁気検出素子が示した特性値に応じた値及び前記第2磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するように構成されたセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載のセンサにおいて、
前記所定の角度が90度であるセンサ。
【請求項4】
主面を有する基板と、
前記基板の主面に固定された第1磁気検出素子と、
前記基板の主面に固定された第2磁気検出素子と、
を備え、前記第1磁気検出素子が示した特性値に応じた値及び前記第2磁気検出素子が示した特性値に応じた値を出力するセンサであって、
前記第1磁気検出素子は、前記基板の主面に形成される仮想の多角形を構成する辺のうちの一つの辺である第1の辺の中央部近傍に配置されるとともに同第1の辺と直交する方向の磁界の成分に応じた大きさの特性値を示すように構成され、
前記第2磁気検出素子は、前記仮想の多角形を構成する辺のうちの前記第1の辺と交差する他の辺である第2の辺の中央部近傍に配置されるとともに同第2の辺と直交する方向の磁界の成分に応じた大きさの特性値を示すように構成され、
更に、
前記仮想の多角形と同一又は相似の多角形の可動コイルであり、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して前記基板の主面と平行な面内において移動可能に支持され、前記センサが静止しているとき同可動コイルの重心が前記仮想の多角形の重心と一致するとともに同可動コイルの各辺が同仮想の多角形の各辺と平行となる初期位置に維持され、且つ、通電により発生した磁界を前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子に加える可動コイルを備えたセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサにおいて、
前記仮想の多角形は正多角形であるセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサにおいて、
前記仮想の多角形は正方形であるセンサ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載のセンサであって、
前記可動コイルが通電状態及び非通電状態の何れかの状態となるように同可動コイルに流れる電流を制御する電流制御手段を備えたセンサ。
【請求項8】
基板と、前記基板上に固定されるとともに加えられた磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持された可動コイルと、を備えたセンサを用いて同センサ又は同センサが固定された物体の加速度及び角加速度の少なくとも一方を測定する物理量の測定方法であって、
前記可動コイルに通電して同可動コイルにより磁界を発生させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記加速度及び前記角加速度の少なくとも一方として測定する測定方法。
【請求項9】
基板と、前記基板上に固定されるとともに加えられた磁界に応じた大きさの特性値を示す磁気検出素子と、前記基板にバネ性を有する支持部材を介して移動可能に支持された可動コイルと、を備えたセンサを用いて同センサ又は同センサが固定された物体の加速度及び角加速度の少なくとも一方と同センサに加わる外部磁界とを測定する測定方法であって、
前記可動コイルへの通電を停止して同可動コイルによる磁界を消滅させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記センサに加わる外部磁界として取得する外部磁界測定ステップと、
前記可動コイルに通電して同可動コイルにより磁界を発生させ、この状態にて前記磁気検出素子が示す特性値に応じた値を前記加速度及び前記角加速度の少なくとも一方として取得する物理量測定ステップと、
を含む測定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の測定方法において、
前記外部磁界測定ステップ及び前記物理量測定ステップは所定時間の経過毎に交互に繰り返し実行されるとともに、同物理量測定ステップの終了時において前記可動コイルへの通電を停止してから余裕時間が経過した後に同外部磁界測定ステップを開始する測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−98078(P2006−98078A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281194(P2004−281194)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】