説明

センサ装置

【課題】信号をコントローラに出力するセンサ装置において、少ない信号ライン数で信憑性の判定ができるとともに、信号ライン断線時にも信憑性判定ができるようにする。
【解決手段】センサ素子への入力値を互いに極性の反転した2つのセンサ信号に変換し、その変換されて得た2つのセンサ信号の比を所定周期におけるパルスのデューティ比に変換し、その変換されて得たデューティ比に基づいて互いに極性の反転した2つのパルス信号を生成する。そして、その生成された2つのパルス信号それぞれを互いに異なる信号ラインを介してコントローラへ向けて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置に係り、特に、センサ出力の冗長化を図るうえで好適なセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ出力をコントローラへ向けて出力するセンサ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このセンサ装置は、センサと、コントローラと、それらセンサとコントローラとを繋ぐ2つの信号ラインと、を備えている。かかる装置において、センサ素子に入力された入力値は互いに極性の反転した2つのセンサ信号に変換されて、それら2つのセンサ信号はそれぞれ独立して、センサ側から互いに異なる2つの信号ラインを介してコントローラへ向けて出力される。コントローラは、センサ側から2つの信号ラインを介して供給される互いに極性の反転した2つのセンサ信号を比較することにより、センサ側からの出力の信憑性を判定する。従って、上記したセンサ装置によれば、2つの信号ラインを介して供給される互いに極性の反転した2つのセンサ信号の比較により、センサ異常を判定することが可能である。
【特許文献1】特開2000−128003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のセンサ装置では、センサ出力の信憑性を判定するのに、2つの信号ラインを介して供給される2つのセンサ信号を用いることが必要であるため、構造が複雑化し、また、何れか一方の信号ラインが断線した際にセンサ出力の信憑性を判定することができない不都合が生ずる。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、センサ出力の信憑性を判定するうえで構造の簡素化を図り或いは信号ライン断線時にもその判定機会を確保することが可能なセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、センサ素子への入力値を互いに極性の反転した2つのセンサ信号に変換する第1の変換手段と、前記第1の変換手段により変換されて得た前記2つのセンサ信号の比を所定周期におけるパルスのデューティ比に変換する第2の変換手段と、を備え、前記第2の変換手段により変換されて得た前記デューティ比を有するパルス信号をコントローラへ向けて出力するセンサ装置により達成される。
【0006】
この態様の発明において、センサ素子への入力値は、互いに極性の反転した2つのセンサ信号に変換される。それら2つのセンサ信号の比は、所定周期におけるパルスのデューティ比に変換される。そして、そのデューティ比を有するパルス信号は、コントローラへ向けて出力される。かかる構成においては、互いに極性の反転した2つのセンサ信号自体をそれぞれセンサ側から別個の信号ラインを介してコントローラへ向けて出力することは不要であり、それら2つのセンサ信号の双方の情報を含むパルス信号を単一の信号ラインを介して出力することが可能である。このため、本発明によれば、センサ出力の信憑性を判定するのに構造の簡素化を図ることができ、また、上記したデューティ比を有するパルス信号が仮に2つの信号ラインを介してそれぞれ独立してコントローラへ向けて出力される構成において一方の信号ラインの断線が生じた時にもセンサ出力の判定機会を確保することができる。
【0007】
尚、上記したセンサ装置において、前記第2の変換手段により変換されて得た前記デューティ比に基づいて互いに極性の反転した2つのパルス信号を生成する一対パルス信号生成手段を備え、前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号それぞれを互いに異なる信号ラインを介してコントローラへ向けて出力することとしてもよい。
【0008】
この態様の発明において、2つのセンサ信号の比を示すデューティ比に基づくパルス信号としては、互いに極性の反転した2つのものが生成される。そして、それら2つのパルス信号はそれぞれ、互いに異なる信号ラインを介してコントローラへ向けて出力される。かかる構成においては、2つのセンサ信号の双方の情報を含むパルス信号について互いに極性を反転させた2つをそれぞれ、互いに異なる信号ラインを介して出力することが可能である。このため、本発明によれば、仮に2つの信号ラインのうち何れか一方が断線しても、他方からのパルス信号のみに基づいてセンサ出力の信憑性を判定することが可能であるので、一方の信号ラインの断線時にもセンサ出力の判定機会を確保することができる。
【0009】
また、上記したセンサ装置において、コントローラは、供給される前記パルス信号に基づいてセンサ素子への入力値を検出する検出手段を有することとすればよい。
【0010】
ところで、上記したセンサ装置において、電源供給可能な電力蓄積素子を、前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号により前記所定周期で交互に充電する電源バッファ回路を備えることとしてもよい。
【0011】
互いに極性の反転した2つのパルス信号は、一方がハイ状態にあれば他方がロー状態にある関係にあるので、パルス信号のハイ状態又はロー状態は常に実現されている。このため、それら2つのパルス信号は電源供給可能な電力蓄積素子を所定周期で交互に充電することが可能であり、その電力蓄積素子を常時充電することが可能である。本発明において、電源バッファ回路は、電源供給可能な電力蓄積素子をそれら2つのパルス信号により所定周期で交互に充電する。このため、本発明によれば、センサへの電源供給を専用の電源ラインを設けることなく、センサ出力の流れる信号ラインを用いて行うことができ、或いは、センサへの電源供給を行う専用の電源ラインが断線した場合にも、センサ出力の流れる信号ラインを用いてセンサへの電源供給を確保することができる。
【0012】
更に、上記したセンサ装置において、前記電力蓄積素子は、通常は電源ラインを介して供給される電力により充電されると共に、前記電源バッファ回路は、前記電源ラインの断線が生じている状況において、前記電力蓄積素子を前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号により前記所定周期で交互に充電することとしてもよい。
【0013】
この態様の発明において、電源バッファ回路は、電源ラインの断線が生じている状況において、電源供給可能な電力蓄積素子をそれら2つのパルス信号により所定周期で交互に充電する。このため、本発明によれば、センサへの電源供給を行う専用の電源ラインが断線した場合にも、センサ出力の流れる信号ラインを用いてセンサへの電源供給を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサ出力の信憑性を判定するうえで構造の簡素化を図り或いは信号ライン断線時にもその判定機会を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるセンサ装置10の全体構成図を示す。また、図2は、本実施例のセンサ装置10の各部の出力を表した図を示す。本実施例のセンサ装置10は、対象に生ずる物理量、具体的には、車両ステアリングシステムにおいて車両のステアリングシャフトに加わる操舵トルクに応じて操舵アシストが行われるようにそのトルクを検出する装置である。
【0017】
図1に示す如く、センサ装置10は、基板上に設けられたセンサ部12と、コンピュータを主体に構成された電子制御ユニット部(ECU)14と、それらセンサ部12とECU14とを繋ぐ電源ライン16及び外部信号ライン18,20と、を備えている。電源ライン16は、+電源ライン16aと−電源ライン16bとからなる被覆された配線である。また、外部信号ライン18,20は、互いに異なり、それぞれセンサ部12から出力されてECU14へ向けて送られるセンサ出力(SIG1,SIG2)が流れる被覆された配線である。
【0018】
センサ部12は、例えばトルクなどの物理量が入力してその入力値(例えばトルク検出値)に応じた信号を出力する単一のセンサ素子22を有している。センサ素子22の出力側には、増幅器24が接続されている。増幅器24は、並列に設けられた2つの増幅器G1,G2からなる。増幅器G1,G2はそれぞれ独立して、センサ素子22の出力を所定電圧範囲内(例えば0V〜5V厳密には0.5V〜4.5V)のアナログ信号SSR1,SSR2に変換する。増幅器G1,G2は、センサ素子22の出力に基づいて、所定電圧範囲の中心電圧(例えば2.5V)を中心にして互いに極性の反転したアナログ信号SSR1,SSR2を生成する(図2(A)参照)。尚、センサ素子22に入力した物理量(トルク検出値)がゼロであるときは、増幅器G1,G2の生成するアナログ信号SSR1,SSR2が同じ中心電圧になるものとすればよい。
【0019】
増幅器24の出力側には、信号処理IC26が接続されている。信号処理IC26は、ADコンバータ28と、カウンタ30と、パルス発生器32と、からなる。上記した増幅器24は、生成したアナログ信号SSR1,SSR2をADコンバータ28に供給する。ADコンバータ28は、増幅器24から供給される互いに極性の反転した2つのアナログ信号SSR1,SSR2を所定範囲内(例えば“0”〜“1024”
厳密には“102”〜“921”)のディジタル信号X,Yに変換する。これらディジタル信号X,Yは、共にセンサ素子22への同じ入力値を示したカウント値であって、物理量の大きさに関係なく両者の加算値(X+Y)が常に略同じ値(例えば、X+Y≒1023)になる(図2(B)参照)。
【0020】
カウンタ30は、並列に設けられた2つのカウンタ30−1,30−2からなる。上記したADコンバータ28は、変換したディジタル信号X,Yをカウント値としてカウンタ30−1,30−2に供給する。カウンタ30−1は、ADコンバータ28から供給されるディジタル信号Xを保持する機能を有し、また、カウンタ30−2は、ADコンバータ28から供給されるディジタル信号Yを保持する機能を有する。
【0021】
カウンタ30−1,30−2に保持されたディジタル信号X,Yはそれぞれ、パルス発生器32に供給される。パルス発生器32は、カウンタ30−1,30−2から供給される同一タイミングにおけるディジタル信号X,Yに基づいて所定周期Tのパルス信号を生成する。
【0022】
具体的には、パルス発生器32は、カウンタ30−1,30−2からのディジタル信号Xとディジタル信号Yとのレベル比を、所定周期Tのパルス信号を構成するデューティ比(オン状態とオフ状態との比;X/(X+Y))に変換して、そのデューティ比に基づくパルス信号を外部へ出力する。より詳細には、まず、アナログ信号SSR1に対応するカウンタ30−1のカウント値X(図2ではX1)をカウンタレジスタへ転送し、そのカウント値Xを所定時間T0ごとに“1”ずつカウントダウンし、そのカウント値Xが“0”となるまでハイ信号を出力する。そして、そのカウント値Xが“0”となった時点でパルス出力を反転させてロー信号を出力すると共に、アナログ信号SSR2に対応するカウンタ30−2のカウント値Y(図2ではY1)をカウンタレジスタへ転送し、そのカウント値Yを所定時間T0ごとに“1”ずつカウントダウンし、その後、そのカウント値Xが“0”となるまでロー信号の出力を継続する。そして、そのカウント値Yが“0”となった時点でパルス出力を反転させてハイ信号を出力する(図2(C)参照)。
【0023】
パルス発生器32の出力は、センサ装置10内に設けられる内部信号ライン34と内部信号ライン36とに分岐されている。内部信号ライン34には、Nチャネル型のMOSトランジスタQ1のゲートが接続されていると共に、抵抗38を介して電源端子40が接続されている。MOSトランジスタQ1のソースは接地されていると共に、そのドレインはセンサ出力端子として、ECU14に接続する外部信号ライン18に接続されている。電源端子40には、例えば5V程度の電源電圧が印加されている。
【0024】
また、内部信号ライン36には、パルス反転回路42を介して、Nチャネル型のMOSトランジスタQ2のゲートが接続されていると共に、抵抗44を介して電源端子46が接続されている。MOSトランジスタQ2のソースは接地されていると共に、そのドレインはセンサ出力端子として、ECU14に接続する外部信号ライン20に接続されている。電源端子46にも、上記の電源端子40と同様に、例えば5V程度の電源電圧が印加されている。
【0025】
パルス反転回路42は、Nチャネル型のMOSトランジスタQ3と、抵抗48と、電源端子50と、を有している。MOSトランジスタQ3のゲートは内部信号ライン36に接続されており、そのソースは接地されていると共に、そのドレインは上記したMOSトランジスタQ2のゲート及び抵抗44に接続されている。電源端子50にも、上記の電源端子40,46と同様に、例えば5V程度の電源電圧が印加されている。パルス反転回路42は、パルス発生器32の出力を反転して出力する回路である。従って、MOSトランジスタQ1のドレインに現われるセンサ出力SIG1と、MOSトランジスタQ2のドレインに現われるセンサ出力SIG2とは、互いに極性の反転したパルス信号となり、一方がロー状態にあれば他方がハイ状態にある関係となる。
【0026】
ECU14は、外部信号ライン18及び20に直接接続するパルスI/F回路52と、外部信号ライン18に抵抗54を介して接続する電源端子56と、外部信号ライン20に抵抗58を介して接続する電源端子60と、を有している。電源端子56,60にはそれぞれ、例えば5V程度の電源電圧が印加されている。パルスI/F回路52には、MOSトランジスタQ1,Q2からのセンサ出力SIG1,SIG2がそれぞれ入力される。パルスI/F回路52は、MOSトランジスタQ1,Q2から供給されるセンサ出力SIG1,SIG2をそれぞれ受信する。
【0027】
ECU14は、パルスI/F回路52に受信されるセンサ出力SIG1,SIG2に基づいてセンサ素子22に入力される物理量を検出すると共に、また、それらのセンサ出力SIG1,SIG2同士を比較することでセンサ部12からのセンサ出力の信憑性を判定する。
【0028】
ECU14は、また、キャパシタ62を有している。キャパシタ62は、電源電圧(例えば5V程度)が供給される電源端子64と接地端子66との間で電力を蓄えることが可能である。キャパシタ62の両端には、上記した電源ライン16が接続されている。キャパシタ62は、蓄えている電力を電源ライン16を通じてセンサ部12へ供給することが可能である。
【0029】
センサ部12は、また、各部位(センサ素子22や増幅器24,信号処理IC26,電源端子40,46,50など)へ電源供給を行う電源バッファ回路70を有している。電源バッファ回路70は、キャパシタ72と、電源IC74と、電源端子76と、を有している。
【0030】
キャパシタ72の両端には、上記した電源ライン16が接続されている。具体的には、キャパシタ72の電源端子(C点)側は、ダイオードD3を介して+電源ライン16aに接続しており、キャパシタ72の接地端子側は、−電源ライン16bに接続している。ダイオードD3は、+電源ライン16側からキャパシタ72側への電流の流れを許容し、その反対方向への電流の流れを遮断する機能を有している。キャパシタ72は、所定の容量を有し、電力を蓄えることが可能であって、電源IC74へ供給する電源電圧を平滑化する機能を有している。キャパシタ72は、通常は、ECU14から電源ライン16を通じて供給される電力を蓄えて電源IC74側へ供給する。
【0031】
電源IC74は、キャパシタ72側から送り出される電気エネルギーの電圧をコントロールして、センサ部12内の各部位に安定した電圧を送るための半導体チップである。電源IC74の出力は、電源端子76に供給されると共に、センサ部12内の各部位に供給される。
【0032】
上記したMOSトランジスタQ1のドレイン(B点)は、ダイオードD2を介してキャパシタ72の電源端子側すなわち電源ICの入力側に接続されていると共に、上記したMOSトランジスタQ2のドレイン(A点)は、ダイオードD1を介してキャパシタ72の電源端子側すなわち電源ICの入力側に接続されている。ダイオードD2,D1はそれぞれ、MOSトランジスタQ1,Q2側からキャパシタ72側への電流の流れを許容し、その反対方向への電流の流れを遮断する機能を有している。
【0033】
次に、本実施例のセンサ装置10の動作について説明する。
【0034】
本実施例においては、増幅器G1,G2から、センサ素子22に入力される入力値に応じたアナログ信号SSR1,SSR2が出力される。センサ素子22に入力する物理量(トルク検出値)がゼロであるときは、増幅器G1,G2から出力されるアナログ信号SSR1,SSR2は互いに略同じレベルになり、一方、センサ素子22に物理量が入力されると、何れか一方のアナログ信号SSR1,SSR2が他方よりも大きなレベルになり、それらのアナログ信号SSR1,SSR2が中心電圧を挟んで互いに極性の反転したものとなる。
【0035】
増幅器G1,G2から出力されるアナログ信号SSR1,SSR2はそれぞれ、ADコンバータ28に供給されて、所定範囲内のディジタル信号X,Yに変換される。この変換されて得たディジタル信号X,Yは、カウンタ30−1,30−2を経由してパルス発生器32に供給され、所定周期Tでハイ状態又はロー状態が現われるパルス信号に変換される。具体的には、ディジタル信号Xのカウント値がオン状態を示すデューティオン時間に、ディジタル信号Yのカウント値がオフ状態を示すデューティオフ時間に、それぞれ変換されて、オンとオフとがそれらの時間で切り替わるデューティ比を有する矩形状のパルス信号に変換される。
【0036】
このパルス信号は、センサ素子22へ入力される物理量がゼロであるときは、50%のデューティ比を有するものとなり、センサ素子22への物理量がアナログ信号SSR1をアナログ信号SSR2よりも大きくするときは、50%よりも大きいデューティ比を有するものとなり、また、センサ素子22への物理量がアナログ信号SSR2をアナログ信号SSR1よりも大きくするときは、50%よりも小さいデューティ比を有するものとなる。
【0037】
上記の如く生成されたパルス信号は、直接にMOSトランジスタQ1のゲートに入力されると共に、パルス反転回路42を介してMOSトランジスタQ2のゲートに入力される。パルス反転回路42は、入力されたパルス信号を反転させる。このため、MOSトランジスタQ1のゲートに入力されるパルス信号とMOSトランジスタQ2のゲートに入力されるパルス信号とは、常に互いに反転した極性を有する。
【0038】
MOSトランジスタQ1,Q2に入力されるパルス信号がロー状態にあるときは、そのMOSトランジスタQ1,Q2のゲート−ドレイン間電圧が小さいので、そのMOSトランジスタQ1,Q2はオフする。この場合、外部信号ライン18,20には電源端子56,60によるハイ電圧が現れ、センサ部12からECU14へ供給されるセンサ出力SIG1,SIG2はハイ状態になる。一方、MOSトランジスタQ1,Q2に入力されるパルス信号がハイ状態にあるときは、そのMOSトランジスタQ1,Q2のゲート−ドレイン間電圧が大きいので、そのMOSトランジスタQ1,Q2はオンする。この場合、外部信号ライン18,20にはロー電圧が現れ、センサ部12からECU14へ供給されるセンサ出力SIG1,SIG2はロー状態になる。尚、センサ出力SIG1とSIG2とは、同タイミングにおいて互いに極性の反転した状態になる。
【0039】
ECU14は、パルスI/F回路52で外部信号ライン18,20によるセンサ出力SIG1,SIG2を受信し、それらのセンサ出力SIG1,SIG2に基づいてセンサ素子22に入力される物理量を検出する。具体的には、センサ出力SIG1のデューティオン時間を計測してディジタル信号Xのカウント値を抽出しかつセンサ出力SIG2のデューティオフ時間を計測してディジタル信号Xのカウント値を抽出し、また、センサ出力SIG1のデューティオフ時間を計測してディジタル信号Yのカウント値を抽出しかつセンサ出力SIG2のデューティオン時間を計測してディジタル信号Yのカウント値を抽出する。そして、図2(B)に示す関係を参照して、センサ素子22に入力される物理量を、センサ出力SIG1,SIG2による各ディジタル信号Xのカウント値に基づいてそれぞれ検出すると共に、センサ出力SIG1,SIG2による各ディジタル信号Yのカウント値に基づいてそれぞれ検出する。
【0040】
尚、ECU14は、センサ素子22への物理量を検出すると、センサ出力SIG1によるディジタル信号Xのカウント値に基づく検出物理量とそのセンサ出力SIG1によるディジタル信号Yのカウント値に基づく検出物理量とを比較して、その検出物理量の信憑性を判定する。また、センサ出力SIG2によるディジタル信号Xのカウント値に基づく検出物理量とそのセンサ出力SIG2によるディジタル信号Yのカウント値に基づく検出物理量とを比較して、その検出物理量の信憑性を判定する。更に、センサ出力SIG1によるディジタル信号Xのカウント値に基づく検出物理量とセンサ出力SIG2によるディジタル信号Xのカウント値に基づく検出物理量とを比較して、その検出物理量の信憑性を判定し、また、センサ出力SIG1によるディジタル信号Yのカウント値に基づく検出物理量とセンサ出力SIG2によるディジタル信号Yのカウント値に基づく検出物理量とを比較して、その検出物理量の信憑性を判定する。
【0041】
そして、比較対象の両物理量が略一致するときは、それらの検出物理量に信憑性があり、それらの検出物理量をその後の制御などに用いる。一方、比較対象の両物理量があまり一致しないときは、それらの検出物理量に信憑性がなく、それらの検出物理量をその後の制御などに用いないものとする。
【0042】
このように、本実施例においては、センサ素子22に入力される物理量をECU14に検出させるうえで、中心電圧を挟んで互いに極性の反転した同一の物理量を示す2つのアナログ信号SSR1,SSR2の情報を含むパルス信号を、単一の外部信号ライン18,20を介してセンサ部12からECU14へ供給することとすればよい。すなわち、かかるアナログ信号SSR1,SSR2をそれぞれセンサ部12から別個の外部信号ラインを介して供給することは不要である。このため、本実施例のセンサ装置10によれば、センサ素子22への物理量を検出しつつその信憑性を判定するのに、センサ部12とECU14との間に両者を繋ぐ少なくとも一本の外部信号ラインが存在すれば十分であり、システム構造の簡素化を図ることが可能となっている。
【0043】
尚、本実施例においては、センサ部12とECU14との間に両者を繋ぐ互いに異なる2本の外部信号ライン18,20が設けられており、それらの外部信号ライン18,20それぞれについて独立して検出物理量の信憑性の判定が行われると共に、更に、それらの外部信号ライン18,20について双方による検出物理量を比較してその信憑性の判定が行われる。すなわち、センサ素子22へ入力された物理量を4つのセンサ出力(センサ出力SIG1のデューティオン、そのデューティオフ、センサ出力SIG2のデューティオン、及びそのデューティオフの4つ)からそれぞれ検出して、それらの検出物理量を互いに比較することでその信憑性を判定することができる。この点、本実施例のセンサ装置10によれば、センサ部12とECU14との間に両者を繋ぐ唯一本の外部信号ラインを設けた構成に比べて、検出物理量の信憑性を高めることが可能となっている。
【0044】
また、本実施例の如くセンサ部12とECU14との間に両者を繋ぐ2本の外部信号ライン18,20を設けた構成においては、仮に何れか一方の外部信号ライン18,20が断線している時にも、他方の外部信号ライン20,18を用いてセンサ素子22への物理量を検出することができると共に、その信憑性をも判定することができる。従って、本実施例のセンサ装置10によれば、一方の外部信号ライン18,20の断線時にも、センサ出力の信憑性判定の機会を確保することが可能となっており、センサ部12からECU14へのセンサ出力の冗長化を図ることが可能となっている。
【0045】
図3は、本実施例のセンサ装置10において一方の外部信号ライン18,20が断線する前後の各点(A点、B点、及びC点)における電位(V,V,V)を表した図を示す。
【0046】
ところで、本実施例において、センサ部12は、ECU14と電源ライン16を介して接続されており、ECU14から電源ライン16を通じて電力が供給されることで作動することが可能である。ECU14から電源ライン16を通じてセンサ部12に電力が供給されていれば、キャパシタ72の電源端子(C点)に安定した電圧Vが生じるので、センサ部12は適切に作動することができる。一方、例えば電源ライン16の断線などに起因して電源ライン16を通じたセンサ部12への電力供給が困難になると、キャパシタ72の蓄えていた電力が放出されてその電源端子(C点)の電圧Vが低下するおそれがあるので、センサ部12の作動が適切に行われない不都合が生じ得る。
【0047】
これに対して、本実施例において、キャパシタ72の電源端子(C点)側には、電源ライン16が接続されていると共に、センサ部12からECU14へ送られるセンサ出力SIG1,SIG2の流れる外部信号ライン18,20がダイオードD2,D1を介して接続されている。これらの外部信号ライン18,20は共に、抵抗54,58を介して電源端子56,60に接続しており、電源端子56,60側の電力をキャパシタ72側へ供給することが可能である。
【0048】
上記のセンサ部12から外部信号ライン18,20を介してECU14へ送られるセンサ出力SIG1,SIG2は共に、ハイ電圧(オン)とロー電圧(オフ)とがデューティ比に応じた周期で繰り返されるパルス信号であり、両センサ出力SIG1とSIG2とは、互いに極性の反転したパルス信号である(電圧V,V)。この点、外部信号ライン18,20の何れかには、常に電圧の高いハイ電圧が現われている。
【0049】
外部信号ライン18,20にハイ電圧が現われると、そのハイ電圧がダイオードD2,D1を通じてキャパシタ72の電源端子(C点)に印加されるので、ECU14の電源端子56,60側の電力がその外部信号ライン18,20を通じてキャパシタ72へ供給されることとなる。この場合、キャパシタ72は、ECU14から電源ライン16を通じて電力供給されなくても、ECU14から外部信号ライン18,20を通じて電力供給されることで、充電される。そして、このキャパシタ72の充電は、外部信号ライン18に係るセンサ出力SIG1のハイ電圧Vと外部信号ライン20に係るセンサ出力SIG2のハイ電圧Vとを所定周期内で交互に用いて行われることとなる。
【0050】
この点、本実施例によれば、センサ部12から外部信号ライン18,20を介してECU14へセンサ出力SIG1,SIG2が送られるときは、同時に、ECU14側の電力を外部信号ライン18,20を通じてセンサ部12の電源バッファ回路70へ供給することが可能である。具体的には、ハイ電圧のセンサ出力SIG1が送られるときは、ECU14側の電力を外部信号ライン18を通じてセンサ部12の電源バッファ回路70へ供給し、一方、ハイ電圧のセンサ出力SIG2が送られるときは、ECU14側の電力を外部信号ライン20を通じてセンサ部12の電源バッファ回路70へ供給することができる(図3参照)。
【0051】
このため、仮に電源ライン16が断線などしてその電源ライン16を通じたECU14からセンサ部12への電力供給が不可能となっても、センサ部12が電源バッファ回路70のキャパシタ72の放電により外部信号ライン18を通じてECU14へセンサ出力SIG1,SIG2を出力することが可能であれば、その外部信号ライン18,20を通じてECU14からそのセンサ部12へ電力供給を行うことができる。
【0052】
尚、外部信号ライン18,20とキャパシタ72との間には、ダイオードD2,D1が介在されているが、これらのダイオードD2,D1はそれぞれ、外部信号ライン18,20側からキャパシタ72側への電流の流れを許容し、その反対方向への電流の流れを遮断する。この点、本実施例においては、電源ライン16やキャパシタ72側からダイオードD2,D1を経由して外部信号ライン18,20側へ電流が回り込むのを防止することが可能であり、これにより、センサ出力SIG1,SIG2に基づく物理量検出に影響が及ぶのを回避することが可能である。
【0053】
従って、本実施例のセンサ装置10によれば、電源ライン16の断線時等にも、センサ出力SIG1,SIG2の流れる外部信号ライン18,20を交互に用いてセンサ部12への電源供給を継続して確保することが可能となっており、センサ部12への供給電源の冗長化を図ることが可能となっている。このため、本実施例によれば、電源ライン16の断線時等にも、センサ部12の動作を継続させることが可能であって、検出物理量(例えばトルク検出値)に応じた操舵アシスト制御を適切な状態で継続させることが可能となっている。
【0054】
尚、上記の実施例においては、増幅器24(G1,G2)が特許請求の範囲に記載した「第1の変換手段」に、信号処理IC26のパルス発生器32が特許請求の範囲に記載した「第2の変換手段」に、ECU14が特許請求の範囲に記載した「コントローラ」及び「検出手段」に、MOSトランジスタQ1,Q2及びパルス反転回路42が特許請求の範囲に記載した「一対パルス信号生成手段」に、外部信号ライン18,20が特許請求の範囲に記載した「信号ライン」に、電源バッファ回路70のキャパシタ72が特許請求の範囲に記載した「電力蓄積素子」に、それぞれ相当している。
【0055】
ところで、上記の実施例においては、センサ部12からECU14へ向けて互いに極性の反転した2つのセンサ出力SIG1,SIG2を出力し、それら2つのセンサ出力SIG1,SIG2を2本の外部信号ライン18,20を用いて流すこととしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部12からECU14へ向けて一つのセンサ出力を出力し、そのセンサ出力を1本の外部信号ラインを用いて流す構成に適用することとしてもよい。
【0056】
また、上記の実施例においては、同じセンサ素子22の出力を2つの増幅器G1,G2へ分岐させて、2つの増幅器G1,G2でそれぞれ互いに極性の反転したアナログ信号SSR1,SSR2に変換し、所定周期Tのパルス信号を生成することとしているが、同一特性を有する2つのセンサ素子の出力を2つの増幅器G1,G2に接続させることとしてもよい。
【0057】
更に、上記の実施例においては、ECU14からセンサ部12へ電源供給を行うのに専用の電源ライン16を用いることとしているが、この電源ライン16を設けなくてもよい。すなわち、上記した実施例では、外部信号ライン18,20を通じてECU14からセンサ部12へ電源供給を行うことが可能であるので、センサ部12への電源供給を行うのに専用の電源ライン16を設けることは不要である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例であるセンサ装置の全体構成図である。
【図2】本実施例のセンサ装置の各部の出力を表した図である。
【図3】本実施例のセンサ装置において一方の外部信号ラインが断線する前後の各点(A点、B点、及びC点)における電位(V,V,V)を表した図である。
【符号の説明】
【0059】
10 センサ装置
12 センサ部
14 ECU
16 電源ライン
18,20 外部信号ライン
22 センサ素子
24 増幅器
26 信号処理IC
32 パルス発生器
70 電源バッファ回路
72 キャパシタ
SSR1 増幅器G1によるアナログ出力
SSR2 増幅器G2によるアナログ出力
X SSR1に対応するADコンバータによるディジタル出力
Y SSR2に対応するADコンバータによるディジタル出力
SIG1 外部信号ライン18に流れるセンサ出力
SIG2 外部信号ライン20に流れるセンサ出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子への入力値を互いに極性の反転した2つのセンサ信号に変換する第1の変換手段と、
前記第1の変換手段により変換されて得た前記2つのセンサ信号の比を所定周期におけるパルスのデューティ比に変換する第2の変換手段と、を備え、
前記第2の変換手段により変換されて得た前記デューティ比を有するパルス信号をコントローラへ向けて出力することを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記第2の変換手段により変換されて得た前記デューティ比に基づいて互いに極性の反転した2つのパルス信号を生成する一対パルス信号生成手段を備え、
前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号それぞれを互いに異なる信号ラインを介してコントローラへ向けて出力することを特徴とする請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
コントローラは、供給される前記パルス信号に基づいてセンサ素子への入力値を検出する検出手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載のセンサ装置。
【請求項4】
電源供給可能な電力蓄積素子を、前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号により前記所定周期で交互に充電する電源バッファ回路を備えることを特徴とする請求項3記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記電力蓄積素子は、通常は電源ラインを介して供給される電力により充電されると共に、
前記電源バッファ回路は、前記電源ラインの断線が生じている状況において、前記電力蓄積素子を前記一対パルス信号生成手段により生成された前記2つのパルス信号により前記所定周期で交互に充電することを特徴とする請求項4記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−230443(P2009−230443A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74690(P2008−74690)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】