説明

センターレス指針式表示装置

【課題】指針の指示ズレのない、かつ、上・下プーリとガイドレール間の摺動摩擦が増加することのないセンターレス指針式表示装置を提供する。
【解決手段】指針21Cを支持する指針部21と指針部21を搬送する搬送部22とを備えた指針移動装置と、中心近傍に開口部を有する目盛板で塞がれるケース本体から成る収納ケースと、を有し、指針移動装置を収納ケース内に収納して指針21Cが目盛板の目盛を指示するようにしたセンターレス指針式表示装置において、搬送部22が断面が縦コ字状をしたガイドレール22Rとガイドレール22Rに沿って移動するワイヤ22Wを備え、指針部21の上プーリ21P1と下プーリ21P2間でガイドレール22Rを把持し、かつ指針部21の中間部位にワイヤループ引掛け爪21Nを備え、これにワイヤ22Wのループを固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車などの車両に搭載される指針式表示装置に関し、特に指針の回転中心をなくして開口部とし、指針だけが円弧上に移動するようにした、いわゆるセンターレス指針式表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指針の回転中心を開口部とし、指針だけが円弧上に移動するようなセンターレス指針式表示装置は、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
〈特許文献1記載の発明〉
特許文献1記載の発明は、歯列の並ぶ柔軟部材を用いないセンターレス指針式表示装置であって、指針を移動させる移動機構を、指針取付体に連結された柔軟部材と、柔軟部材の一端側が巻き付けられた第1プーリと、柔軟部材の他端側が巻き付けられた第2プーリと、第1プーリが柔軟部材を巻き取る方向に回転するように第1プーリを付勢する渦巻バネと、第2プーリを計測量に応じて回転させることにより、柔軟部材をその長手方向に沿って移動させるモータと、柔軟部材の移動軌跡を規定する複数のガイドプーリとで構成してなるものである。これによれば、指針部と搬送部との間の摩擦抵抗を小さくしたセンターレス指針式表示装置が得られる。
しかしながら、指針を移動機構の取付体に直に取り付けているので、指針を安定して走行させるには適当でなかった。
【0004】
また、指針部と搬送部との間の摩擦抵抗を小さくし、かつ指針を安定して走行させることのできるセンターレス指針式表示装置が公知である(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−42034号公報
【特許文献2】特開2010−107504号公報
【0006】
〈特許文献2記載の発明〉
図7〜図11は特許文献2記載の発明に係るセンターレス指針式表示装置を説明する図である。
図7はセンターレス指針式表示装置の分解斜視図、図8は図7の指針移動装置を搬送する搬送部の斜視図、図9は図8の搬送部の分解斜視図である。
図7において、センターレス指針式表示装置100は、大きく指針移動装置200と指針移動装置200を内部に収納固定する収納ケース300とから成っている。そして、指針移動装置200は指針部210と指針部210を搬送する搬送部220とから成り、収納ケース300はケース本体310とケース本体310を塞ぐ目盛板320とから成っている。以下、ケース本体310と目盛板320と指針部210と搬送部220について説明する。
【0007】
〈ケース本体310〉
ケース本体310は運転者側に半円状開口部310K(図7)を有するそれ自体が半円状をしたプラスチック製ケースで、内部空間の底部310Tの一端(図7で左端近傍)に指針移動装置200を収納するためのテンション部品220S(図9)を収容する収容ケース220C(図8)を固定すると共に、底部310Tの他端(図7で右端近傍)にモータ220M(図8、図9)で正逆回転させられる巻き戻しプーリ220Pを固定している。
【0008】
〈目盛板320〉
目盛板320はそれ自体半円状をしたプラスチック製薄板で、半円の中心から所定半径の半円状の開口320Kが開けられており、開口320Kの外周に目盛が円弧状に記載されている。図7はスピードメータの目盛例を示しており、0、20、40、・・・、140、160(km/時間)の数字が略半円弧又は楕円形状にそれぞれ所定の間隔をあけて記載されている。目盛板320はケース本体310の半円状開口部310Kを塞ぐようにケース本体310に取り付けられる。開口320Kの内側空間には液晶表示器などが配置される。目盛板320の裏側にはガイドレール220R(図9)が配置される。
【0009】
〈指針部210〉
《指針210Cの第1支持部材210Aへの取り付け》
搬送部220(図8)の上を移動する指針部210は、図10の分解斜視図および図11の縦断面図から分かるように、第1支持部材210Aと第2支持部材210Bとがコイルスプリング210Sを挟んで一体に嵌合された支持部材210Zと、第1支持部材210Aに嵌合する指針210Cとから成っている。すなわち、第1支持部材210Aの上部端面に片持ちアーム状の指針固定部210Kを形成し、一方、縦に長尺状をした指針210Cの長手方向の下端から上端に向かうに従って徐々に厚みが太くなる錐状に形成されたその上端幅広部に固定用開口部210Lを形成し、この固定用開口部210Lに指針固定部210Kが嵌合することで指針210Cが第1支持部材210Aに、したがってまた支持部材210Zに、取り付けられる。さらに、第1支持部材210Aの上部中央にワイヤ固定溝210W(図11)が形成されており、指針部210の固定部(後述)に固定されたワイヤ210はこのワイヤ固定溝210Wに通されている。
したがってワイヤ220Wが搬送部220によって引き出されたり・巻き戻されることで、第1支持部材210Aは、したがってまた指針部210は目盛板320(図7)の目盛の延在方向に沿って移動するようになる。
【0010】
《指針部210のガイドレール220Rへの取り付け》
図10は指針部の分解斜視図、図11は図10の指針移動装置の縦断面図である。
図10および図11から分かるように、第1支持部材210Aの上部で指針固定部210Kの軸方向を挟んで前後にあるそれぞれのプーリ軸支持部210Q1を介して上プーリ210P1、201P1がそれぞれ設けられ、また、第2支持部材210Bの下端には第1支持部材210Aの指針固定部210Kの軸方向にプーリ軸支持部210Q2を介して下プーリ210P2が設けられている。
また、第1支持部材210Aにはコイルスプリング210Sの側面を一部収容する収容溝210Maとコイルスプリング210Sの下部を押さえる当接部210Taが形成されており、第2支持部材210Bにはコイルスプリング210Sの前記側面と反対側の側面を一部収容する収容溝210Mbとコイルスプリング210Sの上部を押さえる当接部210Tbが形成されている。
したがって、第1支持部材210Aの収容溝210Maと第2支持部材210Bの収容溝210Mb間にコイルスプリング210Sを収容し、かつ第1支持部材210Aの当接部210Taと第2支持部材210Bの当接部210Tbとの間にコイルスプリング210Sの下部と上部を収容することで、コイルスプリング210Sに反発力が生じ、この反発力が第1支持部材210Aを下方へ押し、かつ第2支持部材210Bを上方へ押すように作用し、その結果、上プーリ210P1と下プーリ210P2が常時互いに接近する方向に付勢されるようになる。
したがって、2個の上プーリ210P1の凹部と1個の下プーリ210P2の凹部間にガイドレール220Rの上下の凸部220T1、220T2を挟むことで、支持部材21Zは、すなわち、指針部210はガイドレール220Rに確実に把持され、これにより指針部210は搬送部220の上を搬送されるようになる。
【0011】
〈搬送部220〉
図7の搬送部220は、図8に示すように、ガイドレール220Rと、ガイドレール220Rの一長辺面に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドプーリ220Gと、各ガイドプーリ220Gに亘って引き渡されるワイヤ220Wと、略半円弧又は楕円形状のガイドレール220Rの長さ方向の一端(図9で左側)に設けられて常時反円弧方向にテンションを加えるテンション部品220Sと、ガイドレール220Rの他端(図9で右側)に設けられた巻き戻しプーリ220Pと、巻き戻しプーリ220Pを正逆回転させるモータ220Mと、指針部210にある照明用LEDへ給電するための略半円弧又は楕円形状の導電部品220Lと、同じく導電部品220Lを覆うための導電部品カバー220Kとを備えている。
【0012】
《ガイドレール220Rの形状》
ガイドレール220Rは、長さ方向には略半円弧又は楕円形状をしており、その断面は細長い長方形(図11)であり、その上下の短辺の中央部にそれぞれ凸部220T1、220T2を備えている。
《ワイヤ220Wの可動原理》
また、ワイヤ220Wの一端(図9で左側)をテンション部品220Sに結合してワイヤ220Wを常時反円弧方向に付勢すると共にワイヤ220Wの他端(図9で右側)を巻き戻しプーリ220Pに結合してモータ220Mの正回転によってワイヤ220Wを所望の長さだけテンション部品220S側から引き出し、またモータ220Mの逆回転によってワイヤ220Wを所望の長さだけテンション部品220Sによってテンション部品220S側へ巻き戻すことができるようにしている。
【0013】
〈指針部210の搬送部220への取り付け〉
指針部210を搬送部220へ取り付けるには、図11で説明したように、搬送部220のガイドレール220Rの上下にそれぞれ指針部210の2個の上プーリ210P1の凹部と1個の下プーリ210P2の凹部間にガイドレール220Rの上下の凸部220Tを挟むことで、支持部材210Zはガイドレール220Rに確実に取り付けられる。
【0014】
〈特許文献2記載の発明の問題点〉
特許文献2記載の発明は、指針の指示ズレや、上プーリ・下プーリとガイドレール間の摺動摩擦の増加が問題であった。その原因を追及したところ、指針部のワイヤ固定溝に真下方向に発生する力と、指針部が支持されている部位がズレているためであることが分かった。先行発明の上記問題点が生じる原因について図12を用いて説明する。
図12は図11の指針部に加わる力を説明する拡大斜視図である。
モータ220Mによるワイヤ220Wの巻き取りによって、指針部210のワイヤ固定溝210Wには、真下のFa方向に力が発生している。ところが、指針部210がガイドレール220Rに支持されている部位は、コイルスプリング210Sの張力Fb1によりガイドレール220Rに上プーリ210P1および下プーリ210P2を介して把持されている部位である。したがって、指針部210にFa方向の力を与えるワイヤ220Wの位置がガイドレール220Rと上プーリ210P1・下プーリ210P2に働く力Fb2の同一線上にないため、指針部210の指針210Cはガイドレール220Rの上プーリ210P1および下プーリ210P2による把持部を中心に回転力が生じて、Fcの方向に傾くことになり、これが指針210Cの指示ズレおよび上プーリ210P1・下プーリ210P2とガイドレール220R間の摺動摩擦増加を引き起こすことが判明した。
【0015】
〈先行発明〉
そこで、本出願人は特許文献2記載の発明の問題点を解決するために、先に発明を行った(以後、「先行発明」という。)。先行発明については、本発明の説明のところで、一緒に説明する。この先行発明によると、特許文献2記載の発明の問題点が解決できて、指針の指示ズレや、上プーリ・下プーリとガイドレール間の摺動摩擦が大幅に低減した。
【0016】
〈先行発明の問題点〉
しかしながら、先行発明の表示装置を検証したところ、組み付け時にワイヤを固定用ボスに縛り付けて確実に固定していても、指針を駆動させている間に緩んでしまう恐れがあることが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、先行発明の問題点を解決するためになされたもので、指針を駆動させても決して緩むことのないワイヤの固定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記問題点を解決するため、本願第1発明はセンターレス指針式表示装置に係り、指針を支持する指針部と前記指針部を搬送する略半円弧状又は楕円形状をした搬送部とを備えた指針移動装置と、中心近傍に開口部を有する半円板状の目盛板で塞がれるケース本体から成る収納ケースと、を有し、前記指針移動装置を前記収納ケース内に収納して前記指針が前記目盛板の目盛を指示するようにしたセンターレス指針式表示装置において、前記指針部の上部と下部にそれぞれプーリを設け、前記搬送部の前記縦コ字状のガイドレールの上下の脚部を前記指針部の上部と下部の各プーリで把持し、前記搬送部が断面が縦コ字状をしたガイドレールと前記ガイドレールに沿って移動するワイヤを備え、かつ、前記指針部の中間部位に前記ワイヤを固定するワイヤホルダを設け、前記ワイヤホルダはループに形成されたワイヤの前記ループを引掛ける引掛け爪を備えたものであることを特徴としている。
第2発明は、第1発明において、前記ワイヤホルダが、さらに、前記引掛け爪に引掛けられた両ワイヤをそれぞれ反対方向に分離させるワイヤループ分岐部材を2個、前記引掛け爪の下方のワイヤ搬送方向に間隔をあけて備えたものであることを特徴としている。
第3発明は、第2発明において、前記ワイヤホルダが、さらに、前記ワイヤループ分岐部材で反対方向に互いに分離された両ワイヤをそれぞれ固定するためのテーパのついたワイヤ固定溝の形成された支持部材を2個、前記2個のワイヤループ分岐部材を挟んで外側にそれぞれ備えたものであることを特徴としている。
第4発明は、第1発明〜第3発明において、前記指針部の上部と下部にそれぞれプーリを設けかつ前記上部のプーリと前記下部のプーリを結ぶ線上の前記指針部の中間部位に前記ワイヤを固定するワイヤホルダを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
第1発明によれば、ワイヤのループを引掛けるようにした引掛け爪を備えたので、指針を駆動させても決して緩むことがない。
第2発明によれば、さらに、ワイヤループ分岐部材で揺るがないようにワイヤを分岐固定しているので、指針を駆動させてもさらに緩むことがない。
第3発明によれば、さらに、テーパのついたワイヤ固定溝の形成された支持部材を用いているので、ワイヤが楕円形状になってワイヤ固定溝に食い込むようになるので、指針を駆動させてもさらに緩むことがない。
第4発明によれば、上記効果に加えて、さらに、指針の指示ズレや、上プーリ・下プーリとガイドレール間の摺動摩擦が大幅に低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は先行発明に係るセンターレス指針式表示装置の要部である指針移動装置の斜視図である。
【図2】図2は図1の指針移動装置の分解斜視図である。
【図3】図3は図1の指針移動装置の縦断面図である。
【図4】図4はワイヤを指針部に固定する特許文献2記載の発明および先行発明の固定方法を説明する斜視図で、プーリ部分の拡大図である。
【図5】図5はワイヤを指針部に固定する本発明に係る固定方法を説明する図で、図5(A)は指針部に形成されたワイヤホルダ近傍の斜視図、図5(B)はワイヤホルダの正面図である。
【図6】図6はワイヤを固定するためのワイヤループおよびその引掛け爪を説明する図で、図6(A)はワイヤ支持部材の先端に形成されたフックの斜視図、図6(B)はフックの側面図、図6(C)はワイヤに形成されたループの平面図である。
【図7】図7は特許文献2記載の指針移動装置を備えたセンターレス指針式表示装置の分解斜視図である。
【図8】図8は図7の指針移動装置を搬送する搬送部の斜視図である。
【図9】図9は図8の搬送部の分解斜視図である。
【図10】図10は指針部の分解斜視図である。
【図11】図11は図10の指針移動装置の縦断面図である。
【図12】図12は図11の指針部に加わる力を説明する拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〈本発明に係るセンターレス指針式表示装置〉
本発明に係るセンターレス指針式表示装置は、特許文献2記載の発明および先行発明と同じく、ケース本体と目盛板と指針部と搬送部とから成っている。このうち、ケース本体は上述のケース本体(図7の310)と、目盛板は上述の目盛板(図7の320)と、搬送部は上述の搬送部(図7の220)と同じであるので説明を省略し、以下、指針部について説明する。
【0022】
〈指針部21〉
《指針21Cの第1支持部材21Aへの取り付け》
図1は先行発明に係るセンターレス指針式表示装置の要部である指針移動装置の斜視図、図2は図1の指針移動装置の分解斜視図、図3は図1の指針移動装置の縦断面図である。搬送部22上を移動する指針部21は、第1支持部材21Aと第2支持部材21Bとがコイルスプリング21Sを挟んで一体に嵌合された支持部材21Z(図3)と、第1支持部材21Aに嵌合する指針21Cとから成っている。すなわち、第1支持部材21Aの上部端面に片持ちアーム状の指針固定部21Kを形成し、一方、縦に長尺状をした指針21Cの長手方向の下端から上端に向かうに従って徐々に厚みが太くなる錐状に形成されたその上端幅広部に固定用開口部21Lを形成し、この固定用開口部21Lに指針固定部21Kが嵌合することで指針21Cが第1支持部材21Aに、したがってまた支持部材21Zに取り付けられる。
【0023】
《指針部210にワイヤ220Wを固定》
図4は特許文献2記載の発明および先行発明が採用していたワイヤの固定方法を説明する斜視図で、プーリ部分の拡大図である。図4において、指針部210の上プーリ210P1のプーリ軸支持部210Q1にワイヤ220Wの固定用ボスBを突設し、この固定用ボスBにワイヤ220Wを縛り付けている。固定用ボスBに縛り付けられたワイヤ220Wは、ワイヤ固定溝210Wを通って反対側にある上プーリ210P1の固定用ボスBに縛り付けられた後、ガイドレール22R(図1。図8の220Rと同一)に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドプーリ220Gを通ってテンション部品収容ケース220Cに達し、他方、ワイヤ220Wの他端は同じくガイドレール22Rに所定間隔をあけて設けられた複数のガイドプーリ220Gを通ってガイドレール22Rの他端に設けられた巻き戻しプーリ220Pに達している。
このように、固定用ボスBにワイヤ220Wを縛り付ける方法では、組み付け時にワイヤを固定用ボスに縛り付けて確実に固定していても、指針を駆動させている間に緩んでしまう恐れがあることが分かった。
【0024】
《本発明に係るワイヤホルダ》
図5は図4のワイヤ固定方法の問題点を解決するためになされた本発明に係る固定方法を説明する図で、図5(A)は指針部に形成されたワイヤホルダ近傍の斜視図、図5(B)はワイヤホルダの正面図である。ワイヤホルダは、ワイヤ支持部材21Hと引っ掛け爪21Nとワイヤループ分岐部材21Dとから成る総称である。
以下、ワイヤ支持部材21Hと、引っ掛け爪21Nと、ワイヤループ分岐部材21Dについて、順次説明する。
【0025】
《ワイヤ支持部材21H》
図5(A)および(B)において、指針部21の支持部材21Z(図1)を構成する第1支持部材21A(図1)の搬送部22(図1)に面している側面において、ワイヤの搬送方向に間隔をあけて2箇所にワイヤ支持部材21Hが突設されている。それぞれのワイヤ支持部材21Hは、固定側から水平に延びたあと、先端に向けて急降下しその先端が上向きとなって、片持ち支持のフック21Fを構成している。このフック21Fの凹部が固定溝21W(図3)となっている。
【0026】
《引っ掛け爪21N》
そして、2つのワイヤ支持部材21Hの間の中央上部に、ワイヤループ(図6(c))を引っ掛ける引っ掛け爪21Nが上方に向けて突設している。
【0027】
《ワイヤループ分岐部材21D》
さらに、引っ掛け爪21Nの下方の左右に、2つのワイヤ支持部材21Hを結ぶ線上において2つのワイヤ支持部材21Hの間に、ワイヤループ分岐部材21D、21Dが形成されている。ワイヤループ分岐部材21D、21Dは、引っ掛け爪21Nに引っ掛けられたワイヤループから延びる両ワイヤをそれぞれ左右に分離させるためのもので、互いに対称の形状をしており、ワイヤループ分岐部材21D、21Dは、固定側から2個互いに間隔をあけて搬送部側に向かって厚肉の板状部材をした立設部材D1、D1が立設され、立設部材D1、D1の上部先端部分に、互いに向き合う方向に隙間S1をあけて第一延設部材D2、D2が延設され、かつ、立設部材D1、D1の下辺が、互いに向き合う方向に間隔をあけて第二延設部材D3、D3が延設されて成る。
【0028】
《ワイヤループ分岐部材21D、21Dの機能》
引っ掛け爪21Nに引っ掛けられたワイヤループ(図6(c))から延びる両ワイヤを左右の第一延設部材D2、D2の間の隙間S1からワイヤループ分岐部材21D、21Dの内部空間T1に通して、その下方を第二延設部材D3、D3で互いに外向きに曲折させ、その後、ワイヤ支持部材21Hの固定溝21W(図3)を通過させる。
【0029】
《ワイヤの固定》
図6はワイヤ22Wを固定するためのワイヤループおよびその引掛け爪を説明する図で、図6(A)はワイヤ支持部材21Hの先端に形成されたフックの斜視図、図6(B)はフックの側面図、図6(C)はワイヤ22Wに形成されたループの平面図である。図6(C)のように、ワイヤ22Wの長さ方向の所定部位にループ22Lを形成し、カシメ金属22Kをループの接触する部位に取り付ける。
このループ22Lを引っ掛け爪21N(図5(A))に引っ掛け、ループ22Lの両端から延びるワイヤを纏めて下方のワイヤループ分岐部材21D、21Dに通し、その後、左右に分離させ、それぞれのワイヤ22Wをワイヤ支持部材21Hの先端のフックにある固定溝21Wに通して、一方は、ガイドレール220R(図8参照)に所定間隔をあけて設けられた複数のガイドプーリ220Gを通ってテンション部品収容ケース220Cに達し、他方、ワイヤ22Wの他端は同じくガイドレール220Rに所定間隔をあけて設けられた複数のガイドプーリ220Gを通ってガイドレール220Rの他端に設けられた巻き戻しプーリ220Pに達している。
【0030】
《ワイヤ支持部材21Hの固定溝21Wの工夫》
固定溝21Wは図6(A)および(B)に示すように、下方に向けて溝の幅が次第に狭くなるようにテーパをつけている。したがって、指針部21(図1)が駆動されて力が図6(B)の矢印方向に下方に働くと、ワイヤ22Wは楕円形に潰れながら固定溝21Wの狭い方に食い込んでいき、ますます固定が確実なものとなる。
【0031】
《指針部21のガイドレール22Rへの取り付け》
図1〜図3から分かるように、第1支持部材21Aの上部で指針固定部21Kの軸方向を挟んで前後にあるそれぞれのプーリ軸支持部21Q1を介して上プーリ21P1、21P1がそれぞれ設けられ、また、第2支持部材21Bの下端には第1支持部材21Aの指針固定部21Kの軸方向にプーリ軸支持部21Q2を介して下プーリ21P2が設けられている。
また、第1支持部材21Aにはコイルスプリング21Sの側面を一部収容する収容溝21Maとコイルスプリング21Sの下部を押さえる当接部21Taが形成されており、第2支持部材21Bにはコイルスプリング21Sの前記側面と反対側の側面を一部収容する収容溝21Mbとコイルスプリング21Sの上部を押さえる当接部21Tbが形成されている。
したがって、第1支持部材21Aの収容溝21Maと第2支持部材21Bの収容溝21Mb間にコイルスプリング21Sを収容し、かつ第1支持部材21Aの当接部21Taと第2支持部材21Bの当接部21Tbとの間にコイルスプリング21Sの下部と上部を収容することで、コイルスプリング21Sに反発力が生じ、この反発力が第1支持部材21Aを下方へ押し、かつ第2支持部材21Bを上方へ押すように作用し、その結果、上プーリ21P1と下プーリ21P2が常時互いに接近する方向に付勢されるようになる。
したがって、2個の上プーリ21P1の凹部と1個の下プーリ21P2の凹部間にガイドレール22Rの上下の凸部22T1、22T2を挟むことで、支持部材21Zは、すなわち、指針部21はガイドレール22Rに確実に把持され、これにより指針部21は搬送部22の上を搬送されるようになる。
【0032】
〈指針部21の搬送部22への取り付け〉
指針部21を搬送部22へ取り付けるには、図1〜図3に示すように、搬送部22のガイドレール22Rの上の凸部22T1と下の凸部22T2とにそれぞれ指針部21の2個の上プーリ21P1の凹部と1個の下プーリ21P2の凹部とを嵌め込んで挟むことで、支持部材21Zはガイドレール22Rに確実に取り付けられる。
そして、ワイヤ22Wが第1支持部材21Aに形成されたワイヤ固定溝21W(図2、図3)に食い込み固定されているので、モータによる巻き戻しプーリ(図7の220Pと同一)の正逆回転によりワイヤ22Wが所望の長さだけテンション部品収容ケース(図7の220Cと同一)側から引き出されたり、引き戻されたりする毎に、指針部21は目盛板の目盛(図7の320と同一)の延在方向に沿って移動するようになる。
【0033】
〈特許文献2記載の発明の問題点の解決〉
以上のように、本発明によれば、先行発明と同じく、指針部21は、図3のように、縦コ字状のガイドレール22Rの上面2点と下面1点の3点でプーリ22P1、22P1、22P2を介してガイドレール22Rを挟むように設置され、かつ指針部21を牽引するワイヤ22Wのワイヤ固定溝21Wは縦コ字状のガイドレール22Rの上面と下面を結ぶ線上に来るようにしているので、図3において、コイルバネ21Sによる反発力Fb1'によりワイヤ22Wのワイヤ固定溝21Wに作用するFa'方向の力が、ガイドレール22Rと上プーリ21P・下プーリ21P2に働く力Fb2'と同じ線上にあるので、指針部21の指針21Cには回転力が生じなくなる。したがって、先行発明で支点に対して作用点に働く力Faが一直線上にないことから生じた指針部10Cにおける回転力Fc(図12)が、本発明によれば生じなくなり、よって指針21Cの指示ズレがなくなり、および上プーリ21P1・下プーリ21P2とガイドレール22R間の摺動摩擦増加がなくなった。
【0034】
〈先行発明の問題点の解決〉
また、本発明では、ガイドレール22Rに沿って移動する指針部21は、図5のように、ワイヤ22Wの所定部位に形成されたループ22Lを、指針部21の支持部材21Zを構成する第1支持部材21A引っ掛け爪21N(図5(A))に引っ掛け、その両端を下方のポケット部に通した後、左右に分離させてそれぞれの支持部材21Hの先端の固定溝21Wに通すことで、ワイヤ22Wと堅固に固定されるので、先行発明のようなワイヤが緩む恐れがなくなった。
【符号の説明】
【0035】
21 指針部
21A 第1支持部材
21B 第2支持部材
21C 指針
21D ワイヤループ分岐部材
21F フック
21H ワイヤ支持部材
21K 指針固定部
21L 固定用開口部
21Ma 収容溝
21Mb 収容溝
21N 引っ掛け爪
21P1 上プーリ
21P2 下プーリ
21Q2 プーリ軸支持部
21Q1 プーリ軸支持部
21S コイルスプリング
21Ta 当接部
21Tb 当接部
21W 固定溝
21Z 支持部材
22 搬送部
22K カシメ金属
22L ループ
22R、220R ガイドレール
22W ワイヤ
22G、220G ガイドプーリ
220P 巻き戻しプーリ
D1 立設部材
D2 第一延設部材
D3 第二延設部材
S1 隙間
T1 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を支持する指針部と前記指針部を搬送する略半円弧状又は楕円形状をした搬送部とを備えた指針移動装置と、中心近傍に開口部を有する半円板状の目盛板で塞がれるケース本体から成る収納ケースと、を有し、前記指針移動装置を前記収納ケース内に収納して前記指針が前記目盛板の目盛を指示するようにしたセンターレス指針式表示装置において、
前記指針部の上部と下部にそれぞれプーリを設け、
前記搬送部の前記縦コ字状のガイドレールの上下の脚部を前記指針部の上部と下部の各プーリで把持し、
前記搬送部が断面が縦コ字状をしたガイドレールと前記ガイドレールに沿って移動するワイヤを備え、かつ、前記指針部の中間部位に前記ワイヤを固定するワイヤホルダを設け、前記ワイヤホルダはループに形成されたワイヤの前記ループを引掛ける引掛け爪を備えたものであることを特徴とするセンターレス指針式表示装置。
【請求項2】
前記ワイヤホルダは、さらに、前記引掛け爪に引掛けられた両ワイヤをそれぞれ反対方向に分離させるワイヤループ分岐部材を2個、前記引掛け爪の下方のワイヤ搬送方向に間隔をあけて備えたものであることを特徴とする請求項1記載のセンターレス指針式表示装置。
【請求項3】
前記ワイヤホルダは、さらに、前記ワイヤループ分岐部材で反対方向に互いに分離された両ワイヤをそれぞれ固定するためのテーパのついたワイヤ固定溝の形成された支持部材を2個、前記2個のワイヤループ分岐部材を挟んで外側にそれぞれ備えたものであることを特徴とする請求項2記載のセンターレス指針式表示装置。
【請求項4】
前記指針部の上部と下部にそれぞれプーリを設けかつ前記上部のプーリと前記下部のプーリを結ぶ線上の前記指針部の中間部位に前記ワイヤを固定するワイヤホルダを設けたことを特徴とする請求項1〜3にいずれか1項記載のセンターレス指針式表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−122904(P2012−122904A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274999(P2010−274999)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】