説明

セントラル清水冷却システム

【課題】冷却海水ポンプを必要最小限の動力で運転し得るようにして無駄なエネルギー消費の削減を図る。
【解決手段】船舶に搭載された被冷却機器群2を閉鎖回路1を循環する清水3で冷却し、該清水3を前記閉鎖回路1途中のセントラル清水冷却器6にて船外から取り込んだ海水5と熱交換させるようにしたセントラル清水冷却システムに関し、前記セントラル清水冷却器6に海水5を送り込む冷却海水ポンプ8の駆動用モータ7と、前記セントラル清水冷却器6から被冷却機器群2へ送り出される清水3の温度を計測する温度センサ12と、該温度センサ12による検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように前記冷却海水ポンプ8の駆動用モータ7の回転数制御を行う制御ユニット13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に装備された各種機器類を冷却するためのセントラル清水冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に装備されたエンジン、発電機、エアコンプレッサ等といった各種機器類を冷却するに際しては、海から海水を取り込んで熱交換させ、熱を持った海水を海に返すシステムが採用されていたが、このようなシステムでは、万一、冷却管が破損した場合に油が冷却用海水に混入して船外に流失する虞れがあったため、近年においては、以下に詳述する如きセントラル清水冷却システムが採用されている。
【0003】
即ち、セントラル清水冷却システムにおいては、各種機器類の冷却を閉鎖回路を循環する清水で行い、その清水を船外から取り込んだ海水で熱交換する仕組みとなっており、冷却管が破損したような場合でも、油が閉鎖された清水の回路内に留まって船外へ流失しないようになっている。
【0004】
図2はセントラル清水冷却システムの一例を示すもので、図中1は冷却を行うべき被冷却機器群2を経由して清水3を循環せしめる閉鎖回路を示し、該閉鎖回路1内には、清水3を循環するための冷却清水ポンプ4と、昇温した清水3を船外から取り込んだ海水5と熱交換して再び冷やすためのセントラル清水冷却器6とが装備されている。
【0005】
即ち、前記セントラル清水冷却器6には、モータ7駆動の冷却海水ポンプ8により船外の海から取り込んだ海水5が冷却海水ライン9を介して通水されるようになっており、ここで閉鎖回路1を循環する清水3と熱交換されて暖まった海水5は、そのまま冷却海水ライン9に導かれて船外へ排出されるようになっている。
【0006】
一方、前記閉鎖回路1には、セントラル清水冷却器6を迂回して清水3を循環せしめるバイパスライン10が設けられ、該バイパスライン10の閉鎖回路1に対する合流箇所には、三方弁の機構を持つ温度調整弁11が介装されており、前記被冷却機器群2入側の清水3の温度を検出する温度センサ12からの検出信号12aに基づいて、被冷却機器群2に導入される清水3の温度が一定に維持されるように、セントラル清水冷却器6を経由して流れる清水3の配分が前記温度調整弁11により制御されるようになっている。
【0007】
尚、一般的な船舶の冷却設備に関連する先行技術文献情報としては、例えば下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−284970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した如き従来のセントラル清水冷却システムにおいては、冷却海水ポンプ8により常に一定量の海水5を冷却海水ライン9に通水させ、閉鎖回路1内を循環する清水3を適宜にバイパスライン10に振り分けてセントラル清水冷却器6を迂回させることで清水3の温度を一定に制御するようにしていたため、冷却海水ライン9の冷却海水ポンプ8は、被冷却機器群2の最大負荷及び夏場の海水温度から決まる一定の吐出量で十分な余裕を持って運転されており、殆どの状況で冷却海水ポンプ8の吐出量が必要量を上回る結果となってポンプ動力のエネルギー損失が大きいという問題があった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、冷却海水ポンプを必要最小限の動力で運転し得るようにして無駄なエネルギー消費の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、船舶に搭載された被冷却機器群を閉鎖回路を循環する清水で冷却し、該清水を前記閉鎖回路途中のセントラル清水冷却器にて船外から取り込んだ海水と熱交換させるようにしたセントラル清水冷却システムにおいて、前記セントラル清水冷却器に海水を送り込む冷却海水ポンプの駆動用モータと、前記セントラル清水冷却器から被冷却機器群へ送り出される清水の温度を計測する温度センサと、該温度センサによる検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように前記冷却海水ポンプの駆動用モータの回転数制御を行う制御ユニットとを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、セントラル清水冷却器から被冷却機器群へ送り出される清水の温度が温度センサにより計測され、その検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように冷却海水ポンプの駆動用モータが制御ユニットにより回転数制御されるので、被冷却機器群の負荷や海水温度により変化する海水の必要量に応じて冷却海水ポンプの吐出量を調整し、該冷却海水ポンプの動力を必要最小限に抑えることが可能となる。
【0013】
また、本発明をより具体的に実施するに際しては、温度センサからの検出信号を入力して冷却海水ポンプの回転数を算出する制御器と、該制御器での算出値に基づき前記冷却海水ポンプの駆動用モータに与える電源周波数を変更するインバータとにより制御ユニットを構成することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明のセントラル清水冷却システムによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)被冷却機器群の負荷や海水温度により変化する海水の必要量に応じて冷却海水ポンプの吐出量を調整し、該冷却海水ポンプの動力を必要最小限に抑えることができるので、ポンプ動力にかかる無駄なエネルギー消費を極力回避することができ、これによって、船舶内の電力を賄う発電機エンジンの燃料コスト及びCO2の発生量を大幅に削減することができる。
【0016】
(II)従来のセントラル清水冷却システムと比較して、温度調整弁やバイパスラインを不要とすることができ、船内配管系を著しく簡素化することができるので、船内配管系により制約を受けていた各種機器類のレイアウトの自由度を従来より大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
ここに図示している通り、本形態例においては、先に説明した図2のセントラル清水冷却システムから温度調整弁11とバイパスライン10とを省略し、セントラル清水冷却器6から被冷却機器群2へ送り出される清水3の温度を計測する既存の温度センサ12をそのまま利用する一方、該温度センサ12による検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように冷却海水ポンプ8のモータ7(駆動用モータ)の回転数制御を行う制御ユニット13を備えている。
【0021】
より具体的には、温度センサ12からの検出信号12aを入力して冷却海水ポンプ8の回転数を算出する制御器14と、該制御器14での算出値に基づき前記冷却海水ポンプ8のモータ7に与える電源周波数を変更するインバータ15とにより制御ユニット13を構成するようにしている。
【0022】
ここで、冷却海水ポンプ8の回転数を制御器14で算出するにあたっては、例えば、清水3の温度から回転数を一義的に決定するテーブルを制御器14内に備えておき、該テーブルから温度センサ12により計測される清水3の温度に基づいて最適な回転数を読み出すようにすれば良く、更には、これに加えて海水温度と交換熱量(主機及び発電機原動機負荷)に関する過去のデータ及びその時の決定回転数・実電力を蓄積しつつ過去のデータにて最低となった回転数を選択して回転数を決定するような手法を採用しても良い。
【0023】
また、ファジー理論を組合せた曖昧制御を用いて随時回転数を可変制御しながら最低電力値を追求してゆく手法を採用することも可能であり、更には、このような手法を前述の過去のデータに照らして回転数を決定する手法と組み合わせて行うようにしても良い。
【0024】
而して、このようにセントラル清水冷却システムを構成すれば、セントラル清水冷却器6から被冷却機器群2へ送り出される清水3の温度が温度センサ12により計測され、その検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように冷却海水ポンプ8のモータ7が制御ユニット13により回転数制御されるので、被冷却機器群2の負荷や海水温度により変化する海水の必要量に応じて冷却海水ポンプ8の吐出量を調整し、該冷却海水ポンプ8の動力を必要最小限に抑えることが可能となる。
【0025】
従って、上記形態例によれば、被冷却機器群2の負荷や海水温度により変化する海水の必要量に応じて冷却海水ポンプ8の吐出量を調整し、該冷却海水ポンプ8の動力を必要最小限に抑えることができるので、ポンプ動力にかかる無駄なエネルギー消費を極力回避することができ、これによって、船舶内の電力を賄う発電機エンジンの燃料コスト及びCO2の発生量を大幅に削減することができる。
【0026】
また、従来のセントラル清水冷却システムと比較して、温度調整弁11やバイパスライン10(図2参照)を不要とすることができ、船内配管系を著しく簡素化することができるので、船内配管系により制約を受けていた各種機器類のレイアウトの自由度を従来より大幅に向上することができる。
【0027】
尚、本発明のセントラル清水冷却システムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 閉鎖回路
2 被冷却機器群
3 清水
5 海水
6 セントラル清水冷却器
7 モータ(駆動用モータ)
8 冷却海水ポンプ
12 温度センサ
12a 検出信号
13 制御ユニット
14 制御器
15 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載された被冷却機器群を閉鎖回路を循環する清水で冷却し、該清水を前記閉鎖回路途中のセントラル清水冷却器にて船外から取り込んだ海水と熱交換させるようにしたセントラル清水冷却システムにおいて、前記セントラル清水冷却器に海水を送り込む冷却海水ポンプの駆動用モータと、前記セントラル清水冷却器から被冷却機器群へ送り出される清水の温度を計測する温度センサと、該温度センサによる検出温度に基づき該検出温度が設定温度になるように前記冷却海水ポンプの駆動用モータの回転数制御を行う制御ユニットとを備えたことを特徴とするセントラル清水冷却システム。
【請求項2】
温度センサからの検出信号を入力して冷却海水ポンプの回転数を算出する制御器と、該制御器での算出値に基づき前記冷却海水ポンプの駆動用モータに与える電源周波数を変更するインバータとにより制御ユニットを構成したことを特徴とする請求項1に記載のセントラル清水冷却システム。

【図1】
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【図2】
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