説明

セントラル空調装置の試験環境調整装置

【課題】試験環境の形成にかかる消費エネルギーを低減するとともに、その試験環境を安定化させることができるセントラル空調装置の試験環境調整装置を提供する。
【解決手段】試験対象の空調装置10を試験室12の床面中央に設置するのに対し、空気熱交換器21〜24で生成した冷暖気が試験対象の空調装置10を周回し且つ上下方向に移動する空気流として生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セントラル空調装置の冷暖房運転の性能試験を所定の試験環境下で行わせるためのその試験環境を調整する試験環境調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物では、室内機の全部又は所定数毎に共通のセントラル空調装置が例えば屋外に設置されており、そのセントラル空調装置と室内機とが協働して室内の空調を行うセントラル空調方式が一般に採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このようなセントラル空調装置の冷暖房運転の性能試験を行う場合、試験室内の温度や湿度等、試験環境を規格で定められた一定条件下に維持するように、その試験室の空調を行うための試験室空調装置が設置されている。
【特許文献1】特開2006−64259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セントラル空調装置は大型であることから、試験時の冷暖房運転に基づいて多大な排気熱が生じ、この排気熱により試験環境を変化させてしまう。そのため、試験環境を維持すべくこのような多大な排気熱を相殺するように試験室空調装置を稼働させると、多大なエネルギーを消費することになる。
【0005】
また、試験室内において試験環境に偏りが生じると、セントラル空調装置の性能試験の精度低下に繋がることから、試験環境を常に安定化させることも要求されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、試験環境の形成にかかる消費エネルギーを低減するとともに、その試験環境を安定化させることができるセントラル空調装置の試験環境調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、試験室内において、試験対象となるセントラル空調装置の冷暖房運転の性能試験を所定の試験環境下で行わせるためのその試験環境を調整する試験環境調整装置であって、前記試験対象の空調装置に対して着脱可能に接続され前記試験対象の空調装置の冷暖房運転時に使用する第1循環液を循環液熱交換器の一次側との間で循環させる構成の第1循環回路と、前記循環液熱交換器の二次側と空気熱交換器とで前記第1循環液との熱交換を行う第2循環液を循環させる構成の第2循環回路とを備え、前記空気熱交換器において前記試験対象の空調装置の冷暖房運転時に生じる排気熱を相殺するための冷暖気を周囲空気及び前記第2循環液に基づいて生成して前記試験室内に排出するとともに、前記試験対象の空調装置を前記試験室の床面中央に設置するのに対して、前記空気熱交換器で生成した冷暖気を前記試験対象の空調装置を周回する空気流を生成する空気流生成手段を備えたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、試験対象のセントラル空調装置に対して着脱可能に接続され試験対象の空調装置の冷暖房運転時に使用する第1循環液を循環液熱交換器の一次側との間で循環させる第1循環回路が構成されるとともに、循環液熱交換器の二次側と空気熱交換器とでその第1循環液との熱交換を行う第2循環液を循環させる第2循環回路とが構成される。そして、空気熱交換器からは、試験対象の空調装置の冷暖房運転時に生じる排気熱を相殺するための冷暖気が周囲空気及び第2循環液に基づいて生成されて試験室内に排出される。つまり、試験対象の空調装置の冷暖房運転の性能試験を行う際、運転時に生じる排気熱の他にその運転時に使用される循環液(第1循環液)からも排熱が生じる。この循環液(第1循環液)からの排熱は循環液熱交換器から第2循環液を通じて空気熱交換器に供給され、該空気熱交換器にて試験対象の空調装置の排気熱を相殺する冷暖気を生成するのに利用されて、試験対象の空調装置の排気熱による試験室内の温度変化が抑制される。このように試験対象の空調装置の運転で生じる排熱の一部を利用して所定の試験環境下に維持するための試験室内の空調が行われることから、その空調にかかる消費エネルギーを低減することが可能となる。しかも、試験対象の空調装置を試験室の床面中央に設置するのに対し、空気流生成手段により空気熱交換器で生成した冷暖気が試験対象の空調装置を周回する空気流とされる。これにより、室内空気が撹拌されることから、試験室内の試験環境の安定化に寄与できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、前記空気流生成手段は、前記空気熱交換器で生成した冷暖気を前記試験室の上下方向に移動させつつ前記試験対象の空調装置を周回する空気流として生成するものであることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、空気流生成手段により、空気熱交換器で生成した冷暖気が試験室の上下方向に移動しつつ試験対象の空調装置を周回する空気流として生成される。これにより、室内空気が上下方向にも撹拌されることから、試験室内の試験環境のより一層の安定化に寄与できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、前記空気熱交換器側の吸入口及び吹出口は複数設けられるものであり、前記空気流生成手段は、前記空気熱交換器側の吸入口及び吹出口の方向及び高さの設定に基づいて該空気熱交換器で生成した冷暖気の前記空気流を生成することをその要旨とする。
【0011】
この発明では、空気熱交換器側の吸入口及び吹出口は複数設けられ、該空気熱交換器側の吸入口及び吹出口の方向及び高さの設定にて空気流が生成される。これにより、空気流を生成する手段を別途必要としないので、装置数を少なく構成できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、前記試験対象の空調装置は、略直方体形状をなし、側面部に吸入口、上面部に排気口がそれぞれ設けられるものであり、前記排気口からの排気を前記試験室の上方に向けて案内し前記試験対象の空調装置から上方に離間した位置で周囲に発散可能とする排気案内手段を備えたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、試験対象の空調装置は側面部に吸入口、上面部に排気口がそれぞれ設けられ、排気案内手段により、試験対象の空調装置の排気口からの排気が試験室の上方に向けて案内され該試験対象の空調装置から上方に離間した位置で周囲に発散可能とされる。これにより、試験対象の空調装置の排気の吸入口への直接的な再吸い込みが低減され、その排気が試験室内に分散される。これにより、試験室内の試験環境の安定化に寄与できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試験環境の形成にかかる消費エネルギーを低減するとともに、その試験環境を安定化させることができるセントラル空調装置の試験環境調整装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、セントラル空調方式としてビル等の建築物に設置されるセントラル空調装置10の試験環境調整装置11を示す。略立方体箱形状をなす試験室12は、冷暖房運転の性能試験を行う試験対象のセントラル空調装置10が床面中央に設置されるように設定されており、試験対象の空調装置10が搬入搬出可能で密閉可能に構成されている。試験室12には、隣接する機械室13に設置される試験室空調装置14とダクト15を通じて接続されている。試験室空調装置14は、試験室12の空調を行うものである。
【0016】
試験室12内の床面四隅には、試験室12内の空調を行う第1〜第4空気熱交換器21〜24が設置されている(図2参照)。これら第1〜第4空気熱交換器21〜24は、試験対象の空調装置10の冷暖房運転試験時に生じる排水熱を利用して空調を行うように接続されている。
【0017】
詳述すると、試験対象の空調装置10には、その試験時に、第1プレート式熱交換器26の一次側とで循環水(第1循環液)を循環させる第1循環回路25Aを形成すべく、第1プレート式熱交換器26の一次側から延びる一次側入力及び出力配管27,28が着脱可能に接続される。試験対象の空調装置10から排出される循環水は、一次側入力配管27を通じて第1プレート式熱交換器26に流入し、二次側とで熱交換がなされた後の循環水が一次側出力配管28を通じて試験対象の空調装置10に排出される。この一次側出力配管28上にはクッションタンク29及びポンプ30が設けられており、インバータ制御によるポンプ30の作動及びクッションタンク29にて第1循環回路25A内の循環水の流量が調整されている。
【0018】
一方、第1プレート式熱交換器26の二次側は、第1〜第4空気熱交換器21〜24及び第2プレート式熱交換器31とで不凍液(第2循環液)を循環させる第2循環回路25Bが形成されている。第1プレート式熱交換器26の二次側出力配管32は、三方弁33を介して第1〜第4空気熱交換器21〜24の各入力配管34にそれぞれ接続され、第1〜第4空気熱交換器21〜24の各出力配管35は1本に集約されて第2プレート式熱交換器31の一次側入力配管36に接続されている。
【0019】
また、第1〜第4空気熱交換器21〜24の各出力配管35は、戻し配管37を介して前記三方弁33と接続され、出力配管35から出力された不凍液の一部を入力配管34側に再入力可能な構成となっている。三方弁33は、温度制御装置38により不凍液の入力側への戻し量を調整している。温度制御装置38は、第2プレート式熱交換器31の一次側入力配管36内の不凍液温度が試験対象の空調装置10の冷房運転時及び暖房運転時それぞれの設定温度となるように三方弁33を制御し、不凍液の戻し量を調整している。そして、第2プレート式熱交換器31の一次側出力配管39からは、二次側とで熱交換がなされた後の不凍液が排出される。
【0020】
第2プレート式熱交換器31の一次側出力配管39は、三方弁40を介して前記第1プレート式熱交換器26の二次側入力配管41と接続されている。この三方弁40には、バイパス配管42を介して第2プレート式熱交換器31の一次側入力配管36が接続されている。三方弁40は、温度制御装置43により第2プレート式熱交換器31を迂回させる不凍液のバイパス量を調整している。温度制御装置43は、三方弁40の出力側の不凍液温度が試験対象の空調装置10の冷房運転時及び暖房運転時それぞれの設定温度となるように該三方弁40を制御し、不凍液のバイパス量を調整している。
【0021】
三方弁40の出力側に位置する前記第1プレート式熱交換器26の二次側入力配管41上には、クッションタンク44及びポンプ45が設けられている。そして、インバータ制御によるポンプ45の作動及びクッションタンク44により、第2循環回路25B内の不凍液の流量が調整されている。
【0022】
前記第2プレート式熱交換器31の二次側は、屋外に設置されるクーリングタワー46と循環配管47で接続されている。循環配管47上にはポンプ48が設けられており、インバータ制御によるポンプ48の作動により循環配管47内の循環水の流量が調整されている。
【0023】
試験室12内には、上記の他に、補助空気熱交換器50及び加湿装置51が設置されている。補助空気熱交換器50は第1〜第4空気熱交換器21〜24に対して補助的に運転されるものであり、加湿装置51は試験室12内の湿度を性能試験時に要求される設定湿度となるように調整するものである。因みに、補助空気熱交換器50は、屋外に設置されるヒートポンプチラー52と循環配管53で接続されている。循環配管53上にはクッションタンク54及びポンプ55が設けられており、インバータ制御によるポンプ55の作動及びクッションタンク54にて循環配管53内の不凍液の流量が調整されている。
【0024】
次に、このように構成された試験環境調整装置11の動作について説明する。
[冷房運転性能試験時]
試験対象のセントラル空調装置10の冷房運転性能試験を行う前に先ず、試験室12内の温度・湿度等の試験環境が日本工業規格(JIS)で定められた試験環境となるように試験室空調装置14にて調整される。そして、試験環境が整うと試験室空調装置14は停止され、試験対象の空調装置10の冷房運転がその試験環境下で実施される。試験対象の空調装置10が冷房運転されると、その冷房運転に基づいて吸入口10a(図2及び図3参照)から周囲空気を吸い込み排気口10bから温風が排出される。これにより、試験室12内の温度が上昇しようとする。
【0025】
同時に、試験対象の空調装置10からその冷房運転に伴って排出される循環水が例えば7℃の冷水として排出される。第1循環回路25Aでは、第1プレート式熱交換器26において二次側の第2循環回路25Bとの熱交換により循環水温度が例えば12℃まで上昇して試験対象の空調装置10に戻される。
【0026】
第1プレート式熱交換器26の二次側の第2循環回路25Bでは、その一次側の第1循環回路25Aとの熱交換により例えば9℃まで低下した不凍液温度が第1〜第4空気熱交換器21〜24に供給される。第1〜第4空気熱交換器21〜24は、吸入口21a〜24a(図2及び図3参照)から周囲空気を吸い込むとともに温度の低下した不凍液の供給を受けて冷気を生成し、吹出口21b〜24bから冷風として試験室12内に排出する。つまり、試験対象の空調装置10の冷房運転に伴う温風にて試験室12内の温度が上昇しようとするのを、第1〜第4空気熱交換器21〜24で生成する冷風にて相殺しようと各空気熱交換器21〜24が作動する。尚、第1〜第4空気熱交換器21〜24で生成する冷風が試験対象の空調装置10で生じる温風に対して不足する場合には、補助空気熱交換器50が作動されてその不足分が補填される。
【0027】
第1〜第4空気熱交換器21〜24から排出された不凍液は、冷風の生成に伴って上昇する。この場合、不凍液の温度を低下させる必要がないことから、第2プレート式熱交換器31を迂回させるべく三方弁40の作動に基づいてバイパス配管42が導通され、各空気熱交換器21〜24から排出された不凍液が例えば14℃とされて第1プレート式熱交換器26に戻される。
【0028】
このように冷房運転性能試験時においては、試験対象の空調装置10の冷房運転で温風が生じるものの、その冷房運転で生じる排水熱が第1〜第4空気熱交換器21〜24での冷風の生成に使用される。そして、第1〜第4空気熱交換器21〜24で生成した冷風、不足時には小型の補助空気熱交換器50からの冷風を加えることで、試験室12内の温度が設定温度で一定に保たれるようになっている。尚、第1〜第4空気熱交換器21〜24及び補助空気熱交換器50では湿度が制御できないため、試験室12内の湿度は加湿装置51にて調整される。このようにして試験環境が調整された試験室12内において、試験対象の空調装置10の冷房運転性能試験が実施される。
【0029】
[暖房運転性能試験時]
同様に、試験対象のセントラル空調装置10の暖房運転性能試験を行う前に先ず、試験室12内の温度・湿度等の試験環境が日本工業規格(JIS)で定められた試験環境となるように試験室空調装置14にて調整される。そして、試験環境が整うと試験室空調装置14は停止され、試験対象の空調装置10の暖房運転がその試験環境下で実施される。試験対象の空調装置10が暖房運転されると、その暖房運転に基づいて吸入口10a(図2及び図3参照)から周囲空気を吸い込み排気口10bから冷風が排出される。これにより、試験室12内の温度が低下しようとする。
【0030】
同時に、試験対象の空調装置10からその暖房運転に伴って排出される循環水が例えば45℃の温水として排出される。第1循環回路25Aでは、第1プレート式熱交換器26において二次側の第2循環回路25Bとの熱交換により循環水温度が例えば40℃まで低下して試験対象の空調装置10に戻される。
【0031】
第1プレート式熱交換器26の二次側の第2循環回路25Bでは、その一次側の第1循環回路25Aとの熱交換により例えば43℃まで上昇した不凍液温度が第1〜第4空気熱交換器21〜24に供給される。第1〜第4空気熱交換器21〜24は、吸入口21a〜24a(図2及び図3参照)から周囲空気を吸い込むとともに温度の上昇した不凍液の供給を受けて暖気を生成し、吹出口21b〜24bから温風として試験室12内に排出する。つまり、試験対象の空調装置10の暖房運転に伴う冷風にて試験室12内の温度が低下しようとするのを、第1〜第4空気熱交換器21〜24で生成する温風にて相殺しようと各空気熱交換器21〜24が作動する。
【0032】
第1〜第4空気熱交換器21〜24から排出された不凍液は、温風の生成に伴って低下する。この場合、不凍液の温度をより低下させるべく第2プレート式熱交換器31が使用され、各空気熱交換器21〜24から排出された不凍液がこの第2プレート式熱交換器31を経ることで例えば38℃とされて第1プレート式熱交換器26に戻される。
【0033】
このように暖房運転性能試験時においては、試験対象の空調装置10の暖房運転で冷風が生じるものの、その暖房運転で生じる排水熱が第1〜第4空気熱交換器21〜24での温風の生成に使用される。そして、第1〜第4空気熱交換器21〜24で生成した温風にて、試験室12内の温度が設定温度で一定に保たれるようになっている。尚、第1〜第4空気熱交換器21〜24では湿度が制御できないため、試験室12内の湿度は加湿装置51にて調整される。このようにして試験環境が調整された試験室12内において、試験対象の空調装置10の暖房運転性能試験が実施される。
【0034】
更に本実施形態では、試験室12内の試験環境を安定化する工夫がなされている。
図2及び図3に示すように、試験室12内において、試験対象のセントラル空調装置10が床面中央に設置されるのに対し、第1〜第4空気熱交換器21〜24が床面四隅にそれぞれ設置されている。これら各空気熱交換器21〜24は、その上面部一側に吸入口21a〜24aが設けられるとともに、その他方側の側面部に吹出口21b〜24bが設けられており、各吹出口21b〜24bが反時計回りに位置する空気熱交換器21〜24に向くように設置されている。つまり、試験室12内において、試験対象の空調装置10の周囲に反時計回りの空気流が生じて室内空気が撹拌されるように構成されており、試験室12内の試験環境(温度・湿度)の安定化を図っている。
【0035】
また、個々の空気熱交換器21〜24において、吹出口21b〜24bが側面部の床面近傍位置に、吸入口21a〜24aが上面部に、本実施形態では試験対象の空調装置10よりも高い位置にそれぞれ設定され、吸入口21a〜24aと吹出口21b〜24bとの高さ位置が異なるように設定されている。これにより、上記のように試験対象の空調装置10の周囲に空気流が生じるのに加えて更に上下方向にも移動する空気流となって、より試験室12内の試験環境の安定化が図られる。
【0036】
更に本実施形態のように、試験対象のセントラル空調装置10が略直方体形状をなし、吸入口10aがその側面部に、排気口10bがその上面部にそれぞれ設けられている場合、その試験時に、試験対象の空調装置10の排気口10bの周囲を囲う筒状カーテン60が使用される。尚、この筒状カーテン60は、試験室12の天井から吊り下げたり、試験対象の空調装置10の上部に設置され、試験室12の約2/3の高さまで設けられている。つまり、試験対象の空調装置10の冷暖房運転時の排気が筒状カーテン60にて上方に誘導されて排気の吸入口10aへの直接的な再吸い込みが低減され、その排気が試験室12内に分散される。これによっても、試験室12内の試験環境の安定化が図られる。
【0037】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、試験対象のセントラル空調装置10に対して着脱可能に接続され試験対象の空調装置10の冷暖房運転時に使用する循環水(第1循環液)をプレート式熱交換器26の一次側との間で循環させる第1循環回路25Aが構成されるとともに、該熱交換器26の二次側と第1〜第4空気熱交換器21〜24とでその循環水との熱交換を行う不凍液(第2循環液)を循環させる第2循環回路25Bとが構成されている。そして、空気熱交換器21〜24からは、試験対象の空調装置10の冷暖房運転時に生じる排気熱を相殺するための冷暖気が周囲空気及び不凍液に基づいて生成されて試験室12内に排出される。つまり、試験対象の空調装置10の冷暖房運転の性能試験を行う際、運転時に生じる排気熱の他にその運転時に使用される循環水からも排熱が生じる。この循環水からの排熱はプレート式熱交換器26から不凍液を通じて空気熱交換器21〜24に供給され、該空気熱交換器21〜24にて試験対象の空調装置10の排気熱を相殺する冷暖気を生成するのに利用されて、試験対象の空調装置10の排気熱による試験室12内の温度変化が抑制される。このように試験対象の空調装置10の運転で生じる排熱の一部を利用して所定の試験環境下に維持するための試験室12内の空調が行われることから、その空調にかかる消費エネルギーを低減することができる。
【0038】
(2)本実施形態では、試験対象の空調装置10を試験室12の床面中央に設置するのに対し、空気熱交換器21〜24で生成した冷暖気が試験対象の空調装置10を周回する空気流として生成される。これにより、室内空気が撹拌されることから、試験室12内の試験環境の安定化に寄与することができる。
【0039】
(3)しかも、空気熱交換器21〜24で生成した冷暖気が試験室12の上下方向に移動しつつ試験対象の空調装置10を周回する空気流として生成される。これにより、室内空気が上下方向にも撹拌されることから、試験室12内の試験環境のより一層の安定化に寄与することができる。
【0040】
(4)本実施形態では、空気熱交換器21〜24が4台設置され、該空気熱交換器21〜24が有する吸入口21a〜24a及び吹出口21b〜24bの方向及び高さの設定にて空気流が生成される。これにより、空気流を生成する手段を別途必要としないので、装置数を少なく構成することができる。
【0041】
(5)本実施形態では、試験対象の空調装置10は側面部に吸入口10a、上面部に排気口10bがそれぞれ設けられ、筒状カーテン60により、試験対象の空調装置10の排気口10bからの排気が試験室12の上方に向けて案内され該試験対象の空調装置10から上方に離間した位置で周囲に発散可能とされる。そのため、試験対象の空調装置10の排気の吸入口10aへの直接的な再吸い込みが低減され、その排気が試験室12内に分散される。このことによっても、試験室12内の試験環境の安定化に寄与することができる。
【0042】
(6)本実施形態では、試験対象の空調装置10の上面部に設けた排気口10bの周囲を囲うように筒状カーテン60が設置される。これにより、設置する態様の筒状カーテン60にて試験対象の空調装置10の排気を案内する手段を容易に構成することができる。
【0043】
(7)本実施形態では、空気熱交換器21〜24が4台設置され、該空気熱交換器21〜24が有する吸入口21a〜24a及び吹出口21b〜24bが試験室12に分散配置される。これにより、試験対象の空調装置10から生じる排気熱を効率良く吸収できるとともに空気熱交換器21〜24で生成されるその排気熱相殺のための冷暖気を試験室12内に分散できるため、このことによっても、試験室12内の試験環境の安定化に寄与することができる。
【0044】
(8)しかも、試験室12の床面中央に試験対象の空調装置10が設置されるのに対し、それら各空気熱交換器21〜24が床面四隅に配置される。これにより、試験対象の空調装置10から生じる排気熱をバランス良く吸収できるとともに空気熱交換器21〜24で生成されるその排気熱相殺のための冷暖気を試験対象の空調装置10の周囲にバランス良く分散できるため、試験室12内の試験環境のより一層の安定化に寄与することができる。このように試験室12内の試験環境の安定化を図ることで、より一層の消費エネルギーの低減に貢献でき、更には性能試験の精度を向上することもできる。
【0045】
(9)更に、空気熱交換器21〜24を4台設置する構成としたことから、該空気熱交換器21〜24に小型で安価なものを使用することが可能となる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、空気熱交換器21〜24を床面四隅に4台設置したが、設置数及び設置位置はこれに限らず、適宜変更してもよい。また、第1〜第4空気熱交換器21〜24を試験室12内に設置したが、これらの空気熱交換器21〜24を試験室12外に設置し、試験室12の壁面等に設けた吸入口21a〜24a及び吹出口21b〜24bにダクトにて接続する構成としてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、試験時の空調を空気熱交換器21〜24で対応可能であれば、第2プレート式熱交換器31や補助空気熱交換器50、及びこれらに付随する装置を省略してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、空気熱交換器21〜24が有する吸入口21a〜24a及び吹出口21b〜24bの方向及び高さの設定にて、該空気熱交換器21〜24で生成した冷暖気が試験室12の上下方向に移動しつつ試験対象の空調装置10を周回する空気流として生成したが、送風機等、空気流を生成する手段を別途使用してもよい。また、試験室12内に特に一方向の空気流が生じない態様、例えばランダムな空気流が生じる態様としてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、試験対象の空調装置10の上部に筒状カーテン60を設置して該試験対象の空調装置10の排気の案内を行ったが、排気を案内する手段はこれに限らず、またこの筒状カーテン60を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態におけるセントラル空調装置の試験環境調整装置を示す概略構成図である。
【図2】試験環境調整装置の構成を説明するための平面図である。
【図3】試験環境調整装置の構成を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…セントラル空調装置、10a…吸入口、10b…排気口、11…試験環境調整装置、12…試験室、21〜24…第1〜第4空気熱交換器(空気熱交換器)、21a〜24a…吸入口(空気流生成手段)、21b〜24b…吹出口(空気流生成手段)、25A…第1循環回路、25B…第2循環回路、26…プレート式熱交換器(循環液熱交換器)、60…筒状カーテン(排気案内手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室内において、試験対象となるセントラル空調装置の冷暖房運転の性能試験を所定の試験環境下で行わせるためのその試験環境を調整する試験環境調整装置であって、
前記試験対象の空調装置に対して着脱可能に接続され前記試験対象の空調装置の冷暖房運転時に使用する第1循環液を循環液熱交換器の一次側との間で循環させる構成の第1循環回路と、前記循環液熱交換器の二次側と空気熱交換器とで前記第1循環液との熱交換を行う第2循環液を循環させる構成の第2循環回路とを備え、前記空気熱交換器において前記試験対象の空調装置の冷暖房運転時に生じる排気熱を相殺するための冷暖気を周囲空気及び前記第2循環液に基づいて生成して前記試験室内に排出するとともに、
前記試験対象の空調装置を前記試験室の床面中央に設置するのに対して、前記空気熱交換器で生成した冷暖気を前記試験対象の空調装置を周回する空気流を生成する空気流生成手段を備えたことを特徴とするセントラル空調装置の試験環境調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、
前記空気流生成手段は、前記空気熱交換器で生成した冷暖気を前記試験室の上下方向に移動させつつ前記試験対象の空調装置を周回する空気流として生成するものであることを特徴とするセントラル空調装置の試験環境調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、
前記空気熱交換器側の吸入口及び吹出口は複数設けられるものであり、
前記空気流生成手段は、前記空気熱交換器側の吸入口及び吹出口の方向及び高さの設定に基づいて該空気熱交換器で生成した冷暖気の前記空気流を生成することを特徴とするセントラル空調装置の試験環境調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセントラル空調装置の試験環境調整装置において、
前記試験対象の空調装置は、略直方体形状をなし、側面部に吸入口、上面部に排気口がそれぞれ設けられるものであり、
前記排気口からの排気を前記試験室の上方に向けて案内し前記試験対象の空調装置から上方に離間した位置で周囲に発散可能とする排気案内手段を備えたことを特徴とするセントラル空調装置の試験環境調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−156485(P2009−156485A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332604(P2007−332604)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】