説明

ゼオライトパウダー顔料及びゼオライトパウダー顔料入りコンクリート

【課題】従来、コンクリート構築物に顔料を混合する方法がある。この顔料の混合は、コンクリート構築物の照り返しの抑制・航海の安全、観光地の景観保護、町並み保存に優位性があり、近時、注目されている。しかし、コンクリートに顔料を混合する構造は、手間がかかり、ブリーディング量及びブリーディング率の減少効果が見られず、ハンドリング特性が低下する。また、顔料を直接、コンクリートに添加する故、顔料の使用量の増加と、コストの高騰問題がある。これらの改良が望まれている。
【構成】本発明は、石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成される人工ゼオライト、又は、合成ゼオライト、天然ゼオライトでなるゼオライトパウダー(人工ゼオライトパウダー)を生成し、顔料に無機顔料を選択し、無機顔料に、人工ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造した人工ゼオライトパウダー顔料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトパウダー(ゼオライト粒子)の有効利用を図ること、並びに顔料の使用量を少なくしてコストの低廉化を図ること、さらに無機顔料の特性を発揮できること、等を意図したゼオライトパウダー顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フライアッシュ(石炭灰)を、他廃材(産業廃棄物)と同様に、資源として利用するために、このフライアッシュを加工し、ポーラスな人工ゼオライト造粒物を製造する。そして、人工ゼオライト造粒物のポーラス化を介して、例えば、水質浄化材・悪臭防止材、又は土壌改良材としての利用、またコンクリート用の骨材等への利用等が知られている。しかし、この人工ゼオライト造粒物としての利用範囲では、限界があり、更なる利用分野の拡充が要望されている。
【0003】
また、市場には、コンクリートと顔料との組合せで構成される材料、即ち、顔料混合コンクリートを使用し、コンクリート構築物を構築する手法がある。この顔料混合コンクリートで構築された、コンクリート構築物は、照り返しの抑制になり、観光地の景観保護、町並み保存等が図れること等の優位性があり、また、護岸の照り返しの低減化及び/又は防止により、海側からの景観保護、又は航海の安全等が図れること等の優位性があり、近時、注目されている。しかし、この従来の顔料混合コンクリートでは、[あ] 手間がかかること、[い] ブリーディング量及びブリーディング率の低下(ブリーディング減少効果)が期待できないこと、[う] ハンドリング特性が低下し、このハンドリング特性の低下は、顔料混合コンクリートのミキサー、タンク、バケット、バケツ、スコップ等の作業道具、型枠に付着、かつその剥離残渣が在留することから、その剥離性の低下と、汚染の発生、又は後処理の問題の発生や、また作業の困難性が考えられること、[え] 顔料を直接、コンクリートに添加することで、顔料の使用量の増加と、コストの高騰が考えられること、等の問題がある。
【0004】
このような状況に鑑み、本発明は、人工ゼオライト造粒物(ゼオライトパウダー)の利用範囲の拡充を図りつつ、コンクリートに顔料を混合することで発生する弊害を解消し、かつコンクリート及び/又は顔料の物性の向上と、また、顔料の水分を、ゼオライトパウダーの保水性を利用し、このゼオライトパウダー内に閉じ込め、このゼオライトパウダーのさらさら感を保持すること、そして、ブリーディング量及びブリーディング率の低下を図り、かつ、ハンドリング特性の低下回避を図りつつ、作業の容易化、迅速化等を図ることを意図する。
【0005】
以上の目的を達成するために、最適で、かつ業界が注目する先行文献を基にして、コンクリート構築物に顔料を混合する構造の一例を、以下、文献(1)〜文献(5)に基づいて、説明する。
【0006】
文献(1)は、特開2003−96933号の「内装用板材」である。この発明は、適宜素材からなる基板の一側面に平均粒径30μm以下、比表面積が70m/g以上で、かつ塩基置換容量(meq/100g)が200mg以上であって、しかも吸水率が50%以上の人工ゼオライト粉体と、この人工ゼオライト粉体に、粘土、若しくはセメントからなる固着材と、セルロース誘導体からなる接着剤を、所定割合で配合し、これに適宜割合の水を介して、分散混練した塗着混練材であり、この塗着混練材を、適宜厚さの塗着層として塗着形成してなる内装用板材の構造であり、建物の天井、壁面に、容易に張設施工でき、かつ揮散有機化合物や、環境ホルモン物質、臭気ガス等の吸着分解消去と調湿を介して、建物の安全と、快適、かつ衛生的建物空間を創出し得る内装用板材を提供する。
【0007】
文献(2)は、実用新案登録第3122368号の「モルタル層を有すコンクリート構造物」である。この考案は、コンクリートブロックの表面にモルタル材を設ける構造であり、このモルタル材は、セメントが1、砂が2〜3、モルタル用接着材を混入した水が0.5〜2、ゼオライト等の吸着材が0〜0.5の割合とし、この基本成分の他に顔料を0〜1、植物活性材を0〜2、空気連行剤を1〜2の割合で撹拌混練して形成した混合物である。そして、このモルタル材は、型枠の内面に塗布又は吹付け、この型枠に流し込んだ生コンクリートの一面に転写する構造であり、これによって、表面に気泡が原因となる凹部を発生することなく、またブロック表面に苔や藻類の繁殖を可能とするコンクリートブロックを提供する。
【0008】
また文献(3)は、特開2002−98の「浮遊式の草花栽培容器体、およびその草花栽培容器体を用いた浮遊式の花壇」である。この発明は、植木鉢、プランター等の草花栽培容器体において、土が充填される容器本体が、ゼオライトが混合されたポーラスコンクリートであり、このポーラスコンクリートに顔料を混合することも可能であるとし、またゼオライトが、水中の窒素やリン等の肥料分を吸着して、その肥料分を草花に供給する構造であり、水上で使用することができる、浮遊式の草花栽培容器体を提供する。
【0009】
さらに文献(4)は、特開平7−33494号の「カラーコンクリートおよびその製造方法」である。この発明は、FRPを粉砕した粉体の表面に、顔料でコーティングして表面改質を施した着色骨材とし、この着色骨材の一部を、コンクリートに混練し、カラーコンクリートを製造するものであり、顔料の粒子が大きくなって内部に水が流通しにくくなることによるエフロレッセンスによる退色、或いはぼやけが抑えられ、またFRP粉体の体積分だけ顔料が見かけ上増加したことで、混練物の中で特に高価である顔料の混入量を節約できる特徴を有する。
【0010】
また文献(5)は、特開2006−248887の「セメント組成物」である。この発明は、グラウト材等に使用するためのセメント系材料を主体としたセメント組成物であって、セメント組成物の全重量に対して0.1〜0.5重量%のベントナイトと、0.04〜0.15重量%のベントナイトの膨潤性を高める炭酸ナトリウム等の添加剤と、高性能減水剤を含む。必要に応じ、さらに6重量%以内の膨張材を加える。また、加圧ブリーディング水の発生を極力抑えるためには、セルロース系の増粘剤を0.05〜0.3重量%程度加える構造とし、ブリーディングの発生もなく、強度発現も良好で、低注入圧で注入できる作業性に優れたセメント組成物を提供できる特徴を有する。
【0011】
【特許文献1】特開2003−96933
【特許文献2】実用新案登録第3122368号
【特許文献3】特開2002−98
【特許文献4】特開平7−33494号
【特許文献5】特開2006−248887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記文献(1)は、人工ゼオライト粉体に、固着材と、セルロース誘導体からなる接着剤を配合し、これに水を分散混練して、塗着混練材を生成し、この塗着混練材を、適宜厚さの塗着層として塗着形成してなる内装用板材の構造である。しかし、ゼオライトパウダーと顔料の特性を、相乗的に達成し、もって、前述したコンクリート及び/又は顔料の物性の向上と、作業の容易化等を図ることを意図する構造でない。従って、例えば、本発明が意図するブリーディング減少効果(浮上水分及び/又は鉄筋・骨材の減少化)・ハンドリング効果は、期待できない。またこの文献(1)は、顔料を採用する構造でない。
【0013】
前記文献(2)〜文献(4)は、モルタル材、又はポーラスコンクリート等のコンクリート原料に、顔料を混合する構造であり、照り返しの低減化、またコンクリート構築物による照り返し防止等の要望に応え得る一面を備えている。しかし、文献(1)と同様に、コンクリート及び/又は顔料の物性の向上と、作業の容易化等を図ることを意図する構造でない。従って、例えば、本発明が意図するブリーディング減少効果・ハンドリング効果は、期待できない。また、この文献(2)〜文献(4)は、顔料の特性の一面である非光輝顔料を採用せず、照り返しの低減化、景観維持には、やはり問題を残している。尚、文献(4)は、FRP粉体の表面に、顔料をコーティングする構造であり、フライアッシュの使用を意図しないので、廃棄物の有効利用の面で、改良の余地が考えられる。
【0014】
また、前記文献(5)は、セメントに、ブリーディング抑制用の素材、又は減水材、混和剤等を所定量添加する構造である。従って、単に、ブリーディングの抑制を意図した発明であり、顔料と、フライアッシュの具備する特性を利用していない問題と、またフライアッシュの使用を意図しないので、廃棄物の有効利用の面で、改良の余地が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成されるゼオライトパウダーを製造し、このゼオライトパウダーの特性であるポーラス化(微細孔)を利用し、顔料を、このゼオライトパウダーに、層状に添着する(まぶす)こと、及びこの微細孔内への添着(ポーラスの内外面に進入する)を図ることを利用し、顔料の水分を、ゼオライトパウダーの保水性を利用し、このゼオライトパウダー内に閉じ込めること、またゼオライトパウダーのさらさら感を保持すること等を意図する。
【0016】
また、請求項1の発明は、前述したゼオライトパウダーを、コンクリートに混合した際に、ブリーディング量とブリーディング率の減少化(浮上水分及び/又は鉄筋・骨材の減少化)を達成し(ブリーディング減少効果とする)、このブリーディング減少効果、即ち、[1] 柔らかいコンクリートにも対応可能とすること、[2] 鉄筋下面の空間におけるコンクリートと鉄筋の連繋を図ること、[3] ハンドリング特性を介して、ゼオライトパウダー顔料のタンク、バケット、バケツ、スコップ等の作業道具、型枠に対する剥離性の向上と、汚染の解消を図ること、[4] 作業の容易化、並びに迅速化を図ること、等を意図する。そして、請求項1の発明は、ゼオライトパウダーの、純粋のパウダーとしての取扱いと、混合性能の確保等を図ること、[5] 少ない単位水量においても、コンクリートとしての機能及び/又は取扱いが可能となり、重宝することと、耐久性の向上に寄与できること、等を意図する。
【0017】
尚、請求項1の発明は、コンクリートに、ゼオライトパウダー顔料を混合した構造とすることで、在来のコンクリートと略同じ作業及び取扱いを可能とすること、また、このゼオライトパウダーの採用を介して、石炭灰という廃材(産業廃棄物)の利用分野の拡充と、その利用量の増大を図ること、等を意図する。
【0018】
請求項1は、石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成される人工ゼオライト、又は、合成ゼオライト、天然ゼオライトを加工し、ゼオライトパウダーを生成し、
顔料に無機顔料を選択し、
このゼオライトパウダーに、前記無機顔料を、添加及び/又は撹拌混合処理を介して、製造されたゼオライトパウダー顔料である。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、また顔料に対し、ゼオライトパウダーの最適な添加量を提供することを意図する。
【0020】
請求項2は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料に、ゼオライトパウダー30重量%〜70重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料である。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、またセメントに対して、ゼオライトパウダー顔料の最適な添加量を提供することを意図する。
【0022】
請求項3は、セメントの単位重量に対して、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料1〜8重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料入りコンクリートである。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成すること、また顔料の色目は、灰色、黒色等の非光輝顔料とし、最適なコンクリート構造物を構築することを意図する。
【0024】
請求項4は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料の色目は、灰色、黒色の非光輝顔料とし、この非光輝顔料に、前記ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料である。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1の目的を達成すること、また顔料の色目は、緑色、茶色等の光輝顔料とし、最適な優しい顔料(景観にマッチした色目、例えば、山野の橋には、緑色、また町並みでは、茶色の如く)でなるコンクリート構造物を構築することを意図する。
【0026】
請求項5は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料の色目は、緑色、茶色の目に優しい光輝顔料とし、この光輝顔料に、前記ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明は、石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成される人工ゼオライト、又は、合成ゼオライト、天然ゼオライトを加工し、ゼオライトパウダーを生成し、
顔料に無機顔料を選択し、
ゼオライトパウダーに、無機顔料を、添加及び/又は撹拌混合処理を介して、製造されたゼオライトパウダー顔料である。
【0028】
従って、請求項1は、下記の特徴が達成できる。
【0029】
[イ] 石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成されるゼオライトパウダーを製造し、このゼオライトパウダーの特性であるポーラス形状(微細孔)を利用し、顔料を、このゼオライトパウダーに、層状に添着できる(まぶし得る)こと、及びこの微細孔内への添着(ポーラスの内外面に進入する)が図れることを利用し、顔料の水分を、ゼオライトパウダーの保水性を利用し、このゼオライトパウダー内に閉じ込め得ること、またゼオライトパウダーのさらさら感を保持できること等である。
【0030】
[ロ] 前述したゼオライトパウダーを、コンクリートに混合した際に、ブリーディング量とブリーディング率の減少化(浮上水分及び/又は鉄筋・骨材の減少化)を達成し(ブリーディング減少効果とする)、このブリーディング減少効果、即ち、[1] 柔らかいコンクリートにも対応可能となること、[2] 鉄筋下面の空間におけるコンクリートと鉄筋の連繋が図れること、[3] ハンドリング特性を介して、ゼオライトパウダー顔料のタンク、バケット、バケツ、スコップ等の作業道具、型枠に対する剥離性の向上と、汚染の解消が図れること、[4] 作業の容易化、並びに迅速化が図れること、等にある。そして、請求項1は、ゼオライトパウダーの、純粋のパウダーとしての取扱いと、混合性能の確保等が図れること、[5] 少ない単位水量においても、コンクリートとしての機能及び/又は取扱いが可能となり、重宝できることと、耐久性の向上が図れること、にある。
【0031】
[ハ] コンクリートに、ゼオライトパウダー顔料を混合した構造とすることで、在来のコンクリートと略同じ作業及び取扱いが可能となること、また、このゼオライトパウダーの採用を介して、石炭灰という廃材(産業廃棄物)の利用分野の拡充と、その利用量の増大が図れること、等にある。
【0032】
請求項2の発明は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
顔料に、ゼオライトパウダー30重量%〜70重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料である。
【0033】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成できること、また顔料に対し、ゼオライトパウダーの最適な添加量を提供できること等の特徴を有する。
【0034】
請求項3の発明は、セメントの単位重量に対して、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料1〜8重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料入りコンクリートである。
【0035】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成できること、またセメントに対して、ゼオライトパウダー顔料の最適な添加量を提供できること等の特徴を有する。
【0036】
請求項4の発明は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
顔料の色目は、灰色、黒色の非光輝顔料とし、非光輝顔料に、ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料である。
【0037】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成できること、また顔料の色目は、灰色、黒色等の非光輝顔料とし、最適なコンクリート構造物を構築できること等の特徴を有する。
【0038】
請求項5の発明は、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
顔料の色目は、緑色、茶色の目に優しい光輝顔料とし、光輝顔料に、ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料である。
【0039】
従って、請求項5は、請求項1の目的を達成できること、また顔料の色目は、緑色、茶色等の光輝顔料とし、最適な優しい顔料(景観にマッチした色目、例えば、山野の橋には、緑色、また町並みでは、茶色の如く)でなるコンクリート構造物を構築できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一例を説明する。
【0041】
図面の説明をすると、図1は、人工ゼオライトパウダーを製造する過程を示した模式図、図2は、人工ゼオライトパウダー顔料(顔料で、前記人工ゼオライトパウダーを包み込んだ微粒子素材であり、顔料で被覆した人工ゼオライトパウダー)の拡大正面図、図3は、図2の要部をさらに拡大し、顔料の酸化第二鉄が、人工ゼオライトパウダーに添着(吸着)された状態を示した断面図、図4はブリーディング現象を説明する概念図、
図5−1は、従来のコンクリートの供試体、図5−2は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料を使用した供試体の一例で、灰色の顔料を使用した供試体、図5−3は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料を使用した供試体の一例で、黒色の顔料を使用した供試体、図6は、非光輝顔料による黒色の人工ゼオライトパウダー顔料を使用した護岸の景観図である。
【0042】
最初に、人工ゼオライト(原料)と、人工ゼオライトパウダーの生成を説明すると、本発明の人工ゼオライトは、例えば、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、アルミドロス残灰、スラグ、鋳物廃砂、RDF焼却灰等の廃棄物等の工業用廃材、また火山灰、シラス等の火山灰堆積物等の自然廃材、又は工業製品の副生成物、或いは真珠岩、パーライト鉱石等の鉱物素材の主原料を、アルカリ水熱処理した(石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成される)微粒子原料である。そして、この微粒子原料の中でも、石炭火力発電で発生するフライアッシュ、又はボトムアッシュ等の石炭灰においては、その効率的、かつ量的な処理に難渋していることを考慮すると、この石炭灰が好ましい。そして、この石炭灰の中でも、その加工過程(処理の中)で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性化合物で、水熱処理等を行なうことから、水素イオン濃度を中性域に調整して得たものが、最も好ましい。
【0043】
尚、天然ゼオライト、合成ゼオライト等は、多少の問題であるが、前述した、構造及び/又は機能の特徴を発揮できることと、使用の仕方では、前記問題を解決するには、充分であることに鑑み、採用可能であることから、本発明に含める。その問題とは、例えば、この天然ゼオライトは、価格的に安値であるが、品質が安定しないことにある。また、合成ゼオライトは、品質は安定しているものの価格的には高価であることにある。
【0044】
そして、本発明が、最も好ましく、かつ産業界に貢献できる材料の一つとして、前述した人工ゼオライトを使用する。その理由を詳細に説明すると、この人工ゼオライトは、廃棄物、又は工業製品の副生成物を主原料として使用しているために、比較的安価に製造でき、かつ品質的にも、安定していること等が挙げられる。そして、この石炭灰の主な成分は、ケイ素及びアルミニウムであり、その配合比及び/又は成分は多少違うが、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)として、それぞれ、40〜65%、及び25〜40%ぐらい含まれている。その他成分としては、酸化鉄、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が混入されている(化学的には、不純物を含む非晶質ケイ酸アルミニウム)。
【0045】
本発明に用いる人工ゼオライトパウダーの製造方法としては、図1に示す如く、フライアッシュAを、処理して生成された水素イオン濃度を調整した人工ゼオライトを、原料タンク1に投入し、この原料タンク1内の人工ゼオライトを、煮沸撹拌槽2に投入するとともに、薬液槽3より苛性ソーダBを投入、混合し、煮沸かつ撹拌する。そして、焼成機4(焼結機)に導かれるが、この焼成機4は、例えば、オートクレーブ、ロータリーキルン、焼成炉等の焼成機とする。この焼成を、連続する場合には、ロータリーキルンが望ましい。この焼成機4で生成された人工ゼオライトパウダー素材Cは、必要により、冷却(自然冷却)、又は脱液5、水洗6、並びに脱水7、熱風乾燥8(自然乾燥も可)等の処理がされ、人工ゼオライトパウダーDとなる。この乾燥処理は、200℃以下で、80℃〜180℃で乾燥することが望ましい。そして、例えば、80℃以下で乾燥すると、乾燥に時間がかかり経済性を損ねてしまい、また180℃以上で乾燥すると、人工ゼオライトパウダー素材Cの結晶水が蒸発し、その性状が変化し、好ましくないことが理由である。尚、この脱液5及び水洗6で脱液された薬液は、前述の薬液槽3へ回収され、前記苛性ソーダBとして再利用する構成である。
【0046】
本発明の一例として、無機顔料E(非光輝顔料及び/又は吸湿性顔料)に、前記人工ゼオライトパウダーD50重量%を添加し、人工ゼオライトパウダー顔料EEが製造できる。この顔料Eに人工ゼオライトパウダーDを混合する場合には、充分な時間・混練を図り、後述する図3に示した状態とし、顔料E及び/又は人工ゼオライトパウダーDの機能の発揮と、顔料の剥離防止等を図る。
【0047】
人工ゼオライトパウダーDの特性であるポーラス形状(微細孔)を利用し、顔料Eを、この人工ゼオライトパウダーDに、層状に添着する(まぶす)。図2は、この人工ゼオライトパウダーDに、顔料Eをまぶした状態を示す顕微鏡写真(拡大正面図)である。そして、顔料Eが、人工ゼオライトパウダーDの微細孔内への添着(接着剤を採用せず、顔料Eのポーラスの内外面への進入及び/又は添着)が図れる構造、換言すると、顔料Eの酸化第二鉄が、人工ゼオライトパウダーDに添着(吸着)される構造を利用し、この人工ゼオライトパウダーDの表面に、スケール感覚の、超微細な凹凸部E1が形成される(図3参照)。この凹凸部E1が、人工ゼオライトパウダーDのさらさら感を確保できること、また気泡空間形成に役立つこと等の特徴がある。そして、また、この顔料Eの水分を、人工ゼオライトパウダーDの微細孔内への保水性を利用し、この人工ゼオライトパウダーD内に閉じ込めるが、この人工ゼオライトパウダー顔料EEのさらさら感を保持するために、直ちに袋詰めすることで、このさらさら感を、最大限に確保できる特徴がある。
【0048】
前述の如く、この人工ゼオライトパウダー顔料EEが、さらさら感を有する状態で、セメントの単位重量に対して、人工ゼオライトパウダー顔料EE1〜15重量%で、望ましくは、1〜8重量%添加し、人工ゼオライトパウダー顔料EEを含んだコンクリート(人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートとする)を製造する。この人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートを用いて構築したのが、図6で示した、黒色の人工ゼオライトパウダー顔料EEを使用した護岸の景観図であり、その表面に黒くなったのが、顔料Eが含まれている箇所であり、この顔料Eが含まれているコンクリート面の照り返しは、ほとんど解消されている。また海側からの照り返しもなく、景観が保たれている。図5−2は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料EEを使用した供試体の一例で、灰色の顔料Eを使用した供試体、図5−3は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料EEを使用した供試体の一例で、黒色の顔料Eを使用した供試体であり、それぞれ照り返しの弊害は、解消されていると考えられる。そして、本発明では、人工ゼオライトパウダーDに顔料Eを被覆することで、この被覆の状況は、図3に示した如く、その全体外周面D1を被覆し、かつ孔D2内に至り(流し込み)、この人工ゼオライトパウダーDを覆い、かつ顔料Eの占める表面積を確保することで、顔料の特性を充分発揮でき、また人工ゼオライトパウダーDを覆うことから、顔料Eの使用量の節約化と、コストの低廉化に寄与できる。またこの孔D2の一部で、人工ゼオライトパウダーDの表面が残ることから、この人工ゼオライトパウダーDの特徴である金属・臭気等の吸着機能と、又は陽イオン交換機能を発揮できる。

[実施例1]
本発明の人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートを使用した供試体の材料と、この材料の条件の一例を示すと、下記の図表1となる。その混練時間及び/又は方法は、従来と略同様に考えられる。


【0049】
以上の供試体を基に、ブリーディング量と、ブリーディング率は、図表2、3に示す如く、この人工ゼオライトパウダー顔料EEの添加率が増大することで、ブリーディング量が減少し、容器、スコップ等の機材への付着が少なくなる(ハンドリングが良好となる)。その結果、コンクリートの取扱いの容易化と、機材の汚れがなくなり、作業上において、多数の特性を備えている。この図表を基に説明すると、まず、基本配合は、コンクリートに人工ゼオライトパウダー顔料EEを添加していない状態を示し、添加量が1.5wt%の例では、約2割減少し、また添加量が3wt%の例では、約4割減少したことが判明し、その有効性が理解できる。


【0050】


【0051】
また人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートのブリーディングへの影響を検証した処、顔料Eを添加したことにより、人工ゼオライトパウダーDが過剰に水分を吸収することがなく、在来の水量との関係で、極めて好ましい状況であることが判明した。その結果を、図表4に示す。そして、また、このブリーディング率の減少化は、ひび割れの減少化と、コンクリート構造物の耐久性の向上、並びにコンクリート構造物の表面の平坦性と、剥離性の減少化等に有効である。さらに、AE剤、AE減水剤、又は減水剤の混和剤に対する配慮は、従来と同様な取扱いで可能であり、殊更、新規の技術や、取扱いを要せず重宝する。


【0052】
さらに、人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートのスランプ及び/又は空気量への影響を検証した処、空気の取り込みも経時的に減少し、在来のコンクリート製品と、ロスの差がなく問題がないことが判明した。その結果を、図表5、図表6に示す。


【0053】


【0054】
また、人工ゼオライトパウダー顔料EE入りコンクリートの圧縮強度への影響について、経時的に検証したが、在来のコンクリート製品とのロスの差はなく、影響を与えないことがわかった。従って、在来のコンクリートと略同じ取扱いができ、かつ経験が生きてくるので、大変重宝し、また、技術の伝承を図ることができる。尚、この圧縮強度に関する検証の結果を、図表7に示す。


【0055】
そして、その他の例として、例えば、人工ゼオライト100重量%に対して、水溶性中性バインダー5〜15重量%からなる混合物を生成し、この混合物100重量%に対して、水30〜50重量%を配合し、この水を含んだ前記混合物を、造粒機で撹拌混合して人工ゼオライト造粒物素材を生成し、この湿潤した人工ゼオライト造粒物素材を、乾燥し、人工ゼオライト造粒物とし、顔料Eに無機顔料を選択し、この無機顔料に、前記人工ゼオライト造粒物を添加し、必要により、撹拌混合して製造した顔料Eで被覆した人工ゼオライト造粒物の場合でも、前述の例に準じた特徴と、取扱い等が可能と考えられる。
【0056】
尚、図4は、ブリーディング現象を説明する概念図であるが、このブリーディングとは、コンクリート打ち込み後において、重い骨材やセメントが沈降し、水や比較的軽い微細な物質が上昇する現象であり、例えば、コンクリート打ち込み後において、表面に水が浮き上がってくる状態であり、[a] 鉄筋や骨材の下面に水隙ができること、[b] ブリーディング水が浮上した後に水みちができること、また[c] 鉄筋下面の空隙によりコンクリートと鉄筋の付着を低下させること等の弊害が考えられる。その要因としては、[e] 細骨材の粗粒率が大きいとブリーディングが大きいこと、[f] 単位水量が多く軟らかいコンクリートはブリーディングが大きいこと、[g] コンクリート温度が高いとブリーディングは少なく、低いとブリーディングは多くなること、[h] 砕石、砕砂コンクリートは、一般的に、ブリーディングが大きいこと、が考えられる。
【0057】
そして、本発明の顔料Eは、前述した非光輝顔料及び/又は吸湿性顔料に限定されず、その他として、例えば、緑色、茶色等の光輝顔料を採用する。この例は、景観にマッチした色目で、かつ人、鳥等に優しい色目であり、例えば、山野の橋・ポールには緑色、また町並みの橋・ポールには茶色のコンクリート構造物を構築する。さらに、赤色や黄色のような、自然に溶け込み、かつその色目の特性が発揮できる色相も採用し、ポール、橋脚、堤防、その他コンクリート構造物等、景観上、又は色相の特性が望まれる箇所への利用が可能である。
【0058】
また、本発明は、顔料Eが、超臨界状態の二酸化炭素を媒介して、樹脂(樹脂粒子)との一体化(溶解性)を利用することで、この人工ゼオライトパウダーDを、樹脂成形物、樹脂塗料、トナー等の原料に、所定割合で配合できるので、利用分野の拡充が可能となる。その効果は、前述したコンクリートと、このコンクリート構造物と同じと考えられるとともに、例えば、樹脂塗料、トナーでは、高画質化と、高画像化とが図れると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、人工ゼオライトパウダーを製造する過程を示した模式図
【図2】図2は、人工ゼオライトパウダー顔料(顔料で、人工ゼオライトパウダーを包み込んだ微粒子素材:顔料で被覆した人工ゼオライトパウダー)の拡大正面図
【図3】図3は、図2の要部をさらに拡大し、顔料の酸化第二鉄が、人工ゼオライトパウダーに添着(吸着)された状態を示した断面図
【図4】図4は、ブリーディング現象を説明する概念図
【図5−1】図5−1は、従来のコンクリートの供試体
【図5−2】図5−2は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料を使用した供試体の一例で、灰色の顔料を使用した供試体
【図5−3】図5−3は非光輝顔料による人工ゼオライトパウダー顔料を使用した供試体の一例で、黒色の顔料を使用した供試体
【図6】図6は、黒色の人工ゼオライトパウダー顔料を使用した護岸の景観図
【符号の説明】
【0060】
1 原料タンク
2 煮沸撹拌槽
3 薬液槽
4 焼成機
5 脱液
6 水洗
7 脱水
8 熱風乾燥
A フライアッシュ
B 苛性ソーダ
C 人工ゼオライトパウダー素材
D 人工ゼオライトパウダー
D1 外周面
D2 孔
E 顔料
EE 人工ゼオライトパウダー顔料
E1 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰とアルカリ水溶液の混合物を水熱処理して生成される人工ゼオライト、又は、合成ゼオライト、天然ゼオライトを加工し、ゼオライトパウダーを生成し、
顔料に無機顔料を選択し、
このゼオライトパウダーに、前記無機顔料を、添加及び/又は撹拌混合処理を介して、製造されたゼオライトパウダー顔料。
【請求項2】
請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料に、ゼオライトパウダー30重量%〜70重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料。
【請求項3】
セメントの単位重量に対して、請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料1〜8重量%を、添加する構成としたゼオライトパウダー顔料入りコンクリート。
【請求項4】
請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料の色目は、灰色、黒色の非光輝顔料とし、この非光輝顔料に、前記ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料。
【請求項5】
請求項1に記載のゼオライトパウダー顔料であって、
前記顔料の色目は、緑色、茶色の目に優しい光輝顔料とし、この光輝顔料に、前記ゼオライトパウダーを添加し、必要により、撹拌混合して製造したゼオライトパウダー顔料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−235125(P2009−235125A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79176(P2008−79176)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名:日経産業新聞 発行日:平成19年11月5日 該当ページ:第17面
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000219598)東海コンクリート工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】