説明

ゼオライト膜の製造方法

【課題】多孔質金属支持体の表面にゼオライト膜を簡便に製膜できる多孔質金属支持体表面処理法を提供する。
【解決手段】金属製多孔体にA型ゼオライトやY型ゼオライトなどのゼオライト種晶を担持もしくは付着させた後、前記多孔体をアルミノシリケートゲル中に浸漬し、水熱反応によって前記ゼオライト種晶を成長させてゼオライト膜を生成させるゼオライト膜製造方法である。前記金属製多孔体として耐アルカリ性金属多孔体1を適用するとともに、該耐アルカリ性金属多孔体1の表面を酸で前処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜の製造方法、より詳しくは、多孔質金属支持体の表面にゼオライト膜を均一に生成するゼオライト膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浸透気化法を用いた液体混合物の分離法は、既に、米国特許第2953502号明細書などに開示されている。この膜分離法は、従来、簡単な方法で分離できなかった液体混合物、例えば、エタノール−水などの共沸混合物、ベンゼン−シクロヘキサンのように沸点が近接した比揮発度の小さい混合物係、デキストリン−水のように加熱によって重合や変成を起こす物質を含む混合物の分離あるいは濃縮法として注目されている。
【0003】
また、分離膜による気体分離法は、省エネルギーで、かつ、連続操作が可能な運転システムとして、極めてシンプルであり、その上、機械的にも極めて簡単で小型化が可能である特徴を有するため、盛んに研究されている。
【0004】
しかし、いずれの場合も、従来の分離膜には、例えば、ポリイミド、酢酸セルロース、シリコン系などの有機高分子材料が用いられており、耐熱性、耐薬品性、機械的強度などの面から用途が限られていた。
【0005】
このため、従来の有機高分子膜よりも耐久性に優れていると考えられている無機膜が期待され、盛んに研究されている。そして、セラミックス多孔体や多孔質ガラスなどの無機多孔体を支持体(基材)とするゼオライト膜が提案されており、最近では、金属多孔体を基材とするゼオライト膜も提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−146416号公報(第2−3頁)
【特許文献2】特許第3342294号明細書(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多孔質ガラスを基材とするゼオライト膜は、衝撃強度が弱いので、破損し易いという問題があった。また、セラミックス多孔体を支持体とするゼオライト膜は、ゼオライト膜を水熱反応によって生成する時にアルカリ性ゼオライト原料に接するため、セラミックス多孔体の一部が溶解して脆くなり、強度上、実用に耐え難いという問題があるばかりでなく、セラミックス多孔体の表面にしかゼオライト結晶が成長しないため、剥離し易いという問題があった。
【0007】
また、特許文献1記載のゼオライト膜は、テンプレート酸化分解時の焼成で金属支持体上とゼオライト膜の線膨張率の違いによる欠陥をなくす手法で、支持体とゼオライト膜の間に金属粒子を担持させた3層構造の膜で、製造工程が複雑で、しかも、ゼオライト膜層にムラを生じ易いという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献2記載のゼオライト膜製造方法では、ゼオライト膜が製膜せず、仮に、製膜しても膜厚にムラがあり、被処理物の分離性能が悪く、実用に供することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解消するため、鋭意、研究の結果、到達したものであり、その目的とするところは、多孔質金属支持体の表面にゼオライト膜を簡便に製膜できる多孔質金属支持体表面処理法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、次のように構成を採用するものである。
【0011】
請求項1に記載に係るゼオライト膜製造方法は、金属製多孔体にA型ゼオライトやY型ゼオライトなどのゼオライト種晶を担持もしくは付着させた後、前記多孔体をアルミノシリケートゲル中に浸漬し、水熱反応によって前記ゼオライト種晶を成長させてゼオライト膜を生成させるゼオライト膜製造方法において、前記金属製多孔体として耐アルカリ性金属多孔体を適用するとともに、該耐アルカリ性金属多孔体の表面を酸で前処理することを特徴とするゼオライト膜製造方法である。
【0012】
請求項2に記載に係るゼオライト膜製造方法は、耐アルカリ性金属多孔体製の管状体の片端を栓で封止し、この管状体の封止側を酸で前処理することを特徴とする請求項1記載のゼオライト膜製造方法である。
【0013】
請求項3に記載に係るゼオライト膜製造方法は、耐アルカリ性金属多孔体を、硝酸、リン酸、ケイフッ化水素酸、酢酸からなる一又は複数の酸で前処理することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のゼオライト膜製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、請求項1に記載の発明は、金属製多孔体にA型ゼオライトやY型ゼオライトなどのゼオライト種晶を担持もしくは付着させた後、前記多孔体をアルミノシリケートゲル中に浸漬し、水熱反応によって前記ゼオライト種晶を成長させてゼオライト膜を生成させるゼオライト膜製造方法において、前記金属製多孔体として耐アルカリ性金属多孔体を適用するとともに、該耐アルカリ性金属多孔体の表面を酸で前処理するので、酸化皮膜が除去された耐アルカリ性金属多孔体の表面にOH基やCOOH基などの官能基を修飾することにより、A型やY型などのゼオライト種晶が担持し易くなる。その結果、アルミノシリケートゲル中における水熱反応によってA型やY型などのゼオライト種晶を均一に成長させることができる。
【0015】
従って、多孔質金属支持体の表面にA型やY型などのゼオライト膜を簡便に、かつ、均一に成膜することができる。また、従来品に比べて被処理物の分離性能が格段に向上し、十分、実用に供することが可能となった。
【0016】
上記のように、この発明は、金属製多孔体として耐アルカリ性金属多孔体によってゼオライト膜を担持するので、ゼオライト膜の機械的強度が格段に向上する。従って、工業上、非常に有用である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、耐アルカリ性金属多孔体製の管状体の片端を栓で封止し、この管状体の封止側を酸で前処理するので、請求項1に記載の発明と同様の効果を有する上、実用に即した分離膜を製造することができる。また、溶接加工、管端部の拡管ができるため、膜モジュール構造が簡略化できる。更に、膜モジュールに組み込む際に用いるシール剤が不要となり、溶媒による接合部分の膨潤劣化などの問題が解消され、同時に高温での使用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
(1)多孔質金属支持体
先ず、図1に示すように、先端(片端)を図示しない栓によって封止した管状の多孔質金属支持体1を用意する。この多孔質金属支持体1は、ステンレス鋼製である。
【0019】
多孔質金属支持体の素材としては、ステンレスのほか、鉄、アルミナ、ニッケル、窒化チタンなどが望ましい。
【0020】
多孔質金属支持体の寸法は、特に限定しないが、外径は0.3〜100mm、内径は0.2〜98mm、長さは100〜2000mmの範囲が望ましい。
【0021】
多孔質金属支持体の平均細孔径は、特に限定しないが、0.05〜10μmの範囲が望ましい。多孔質金属支持体の平均細孔径が0.05μm未満であると、透過速度が小さく実用的でない。この平均細孔径が10μmを超えると、選択性が低下する。
【0022】
また、多孔質金属支持体の気孔率は、特に限定しないが、10〜60%の範囲が望ましい。気孔率が10%未満であると、透過速度が小さい。気孔率が60%を超えると、選択性が低下する上に、支持体としての強度が得られない。
(2)多孔質金属支持体の前処理
次に、上述した管状の多孔質金属支持体1を前処理するが、図2に示すように、先ず、第1前処理槽11で前処理する。その際、多孔質金属支持体1を2N水酸化ナトリウム水溶液aの中に数十時間、好ましくは、3〜24時間浸漬する。その後、多孔質金属支持体1を水洗室12で水洗する。
【0023】
その際、管状の多孔質金属支持体1は、一端を把持具3で把持し、図示しない栓で封止した側を浸漬させる。酸処理や種晶付けなどの場合には、以下、同様に行う。
【0024】
上記洗浄は、管状の多孔質金属支持体1を、水洗室12の床などに立設した支柱5に差して行う。洗浄や乾燥などの場合には、以下、同様に行う。
【0025】
次に、上記多孔質金属支持体1を第2前処理槽13の85%リン酸水溶液bの中に数十時間、好ましくは、3〜24時間浸漬する。その後、多孔質金属支持体1を水洗室14で水洗する。
【0026】
次に、この多孔質金属支持体1を第3前処理槽15の60%硝酸水溶液cの中に数十時間、好ましくは、5〜24時間浸漬する。その後、多孔質金属支持体1を超音波洗浄室16で超音波洗浄した後、乾燥室17で乾燥する。
【0027】
この第3前処理槽(最終処理槽)で使用する酸としては、硝酸、リン酸、ケイフッ化水素酸、酢酸からなる一又は複数の酸など支持体表面に官能基(−SiO2 、−OH、−COOHなど)を修飾できる酸が望ましい。塩酸は、汚染物質が残留するので好ましくない。
【0028】
これらの酸の濃度としては、次の範囲が望ましい。
【0029】
すなわち、
・硝酸:10〜100%、とりわけ40〜60%
・リン酸:10〜100%、とりわけ50〜85%
・ケイフッ化水素酸:10〜100%、とりわけ70〜80%
・酢酸:10〜100%、とりわけ60〜90%
(3)種結晶の担持
次に、種結晶担持室18で多孔質金属支持体1の前処理した部分にゼオライト種結晶の担持もしくは付着させる。
【0030】
種結晶を多孔質金属支持体に担持もしくは付着させる方法としては、次の3通りがある。
【0031】
すなわち、
(a)支持体表面の汚染物質である酸化皮膜を除去し、支持体表面に官能基を修飾すると共に、種結晶を液体に分散させた状態(スラリー状態あるいはコロイド状態)で表面修飾した支持体上に塗布あるいは擦り込む方法(図3参照。)。
【0032】
(b)表面修飾した支持体を、その混合物中に浸漬する(種結晶混合物の界面力などの利用する。)方法(図2参照。)。
【0033】
(c)表面修飾した支持体を、その混合物中での支持体面間の圧力差を利用する(種結晶を担持もしくは付着させる支持体面の反対側から真空吸引あるいは担持付着面側から加圧する。)方法(図4(a),(b)参照。)がある。
【0034】
ここで、種結晶の平均粒径としては、200μm以下、とりわけ1〜5μmが好適である。種結晶の担持付着密度としては、0.1〜90mg/cm2 、とりわけ0.5〜5mg/cm2 が好ましい。
(4)成膜原料作成
他方、成膜原料槽19で成膜原料を作成する。
【0035】
(a)A型ゼオライトの成膜の場合は、アルミノシリケートゲルを形成する原料の仕込み組成比(モル比)(以下、組成比はモル比で示す。)は、H2 O/Na2 O=20〜300、Na2 O/SiO2 =0.3〜2、SiO2 /Al2 3 =2〜6、特に、H2 O/Na2 O=60、Na2 O/SiO2 =1、SiO2 /Al2 3 =2となるように調整することが好ましい。
【0036】
(b)Y型ゼオライトの成膜の場合は、アルミノシリケートゲルを形成する原料の仕込み組成比(モル比)(以下、組成比はモル比で示す。)は、H2 O、Na2 O、SiO2 、Al2 3 の各成分のモル組成比を、それぞれ、H2 O/Na2 O=50〜120、Na2 O/SiO2 =0.5〜2、SiO2 /Al2 3 =5〜25となるように調整することが好ましい。
【0037】
(c)X型ゼオライトの成膜の場合は、アルミノシリケートゲルを形成する原料の仕込み組成比(モル比)(以下、組成比はモル比で示す。)は、H2 O、Na2 O、SiO2 、Al2 3 の各成分のモル組成比を、それぞれ、H2 O/Na2 O=30〜60、Na2 O/SiO2 =1〜2、SiO2 /Al2 3 =4〜12となるように調整することが好ましい。
【0038】
(d)T型ゼオライトの成膜の場合は、アルミノシリケートゲルを原料の仕込み組成比(モル比)(以下、組成比はモル比で示す。)は、SiO2 /Al2 3 =54、OH/SiO2 =0.77、NA+ /(NA+ +K+ )=0.77、H2 O/(NA+ +K+ )=20.75となるように調整することが好ましい。
(5)成膜作成
次に、図5に示すように、成膜槽20のアルミノシリケートゲルd中に前処理した金属支持体を浸漬して金属支持体表面にゼオライト膜を成膜させる。この場合、ゼオライトの種類によって処理温度や処理時間が異なるので、それぞれ、列記する。
【0039】
(a)A型ゼオライトの成膜の場合は、上記アルミノシリケートゲルを60〜150℃、特に、80〜100℃であり、このような温度にて1〜24時間、特に、2〜5時間、とりわけ3〜4時間の反応を1回行うことにより、A型ゼオライト膜を成膜できる。
【0040】
(b)Y型ゼオライトの成膜の場合は、上記アルミノシリケートゲルを6〜24時間熟成(エージング)した後、アルミノシリケートゲルを80〜120℃の温度に保持しながら、4〜10時間水熱合成することにより、Y型ゼオライト膜を成膜できる。
【0041】
(c)X型ゼオライトの成膜の場合は、上記アルミノシリケートゲルを1〜2時間熟成(エージング)した後、アルミノシリケートゲルを50〜200℃、好ましくは、80〜150℃の温度に保持しがら、3〜10時間の水熱反応を1〜5回繰り返すことにより、X型ゼオライト膜を成膜できる。
【0042】
(d)T型ゼオライトの成膜の場合は、上記アルミノシリケートゲルを8〜24時間熟成(エージング)した後、アルミノシリケートゲルを80〜150℃、好ましくは、90〜120℃の温度に保持しがら、12〜48時間の水熱反応することにより、X型ゼオライト膜を成膜できる。
(6)製品
上記の一連の工程を経ることにより、図6の管状の金属支持体1の表面にゼオライト膜eを成膜することができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)を2N水酸化ナトリウム水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。その後、85%リン酸水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。更に、60%硝酸水溶液中に12時間浸漬した後、超音波洗浄し、乾燥させた。その後、洗浄・乾燥処理後のステンレス製多孔質支持体の表面にY型ゼオライト種晶を塗布し、乾燥させた。
【0044】
一方、原料組成比、H2 O/Na2 O=45、Na2 O/SiO2 =0.88、SiO2 /Al2 3 =25のアルミノシリケートゲルを作成し、16〜24時間熟成した。このゲル中に種晶塗布したステンレス製多孔質支持体を浸漬し、100℃で、5時間水熱合成して、Y型ゼオライト膜を得た。得られたY型ゼオライト膜表面の電子顕微鏡写真を図7に示す。
【0045】
このY型ゼオライト膜のPV膜性能は、メタノール/MTBE(10/90wt%)系、50℃の条件下にて、分離係数が13,000、透過流束が2.59kg/m2 hであった。
【0046】
上記分離係数αは、次式で示される(以下、同じ。)。
α={(100−X)/X}/{(100−Y)/Y}
ここで、
X:分離膜供給液中の対象物質濃度
Y:分離膜通過液中の対象物質濃度
である。
【0047】
他方、透過流束は、分離膜を通過する液の速度である。
【0048】
(実施例2)
円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)を2N水酸化ナトリウム水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。その後、60%リン酸水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。更に、60%硝酸水溶液中に12時間浸漬した後、超音波洗浄し、乾燥させた。その後、洗浄・乾燥処理後のステンレス製多孔質支持体の表面にA型ゼオライト種晶を塗布し、乾燥させた。
【0049】
一方、原料組成比、H2 O/Na2 O=60、Na2 O/SiO2 =1、SiO2 /Al2 3 =2のアルミノシリケートゲルを作成し、16〜24時間熟成した。このゲル中に種晶塗布したステンレス製多孔質支持体を浸漬し、100℃で、5時間水熱合成して、A型ゼオライト膜を得た。
【0050】
このA型ゼオライト膜のPV膜性能は、水/エタノール(10/90wt%)系、75℃の条件下にて、分離係数が10,000、透過流束が2.15kg/m2 hであった。
【0051】
(実施例3)
円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)を2N水酸化ナトリウム水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。その後、85%リン酸水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。更に、75%ケイフッ化水素酸水溶液中に12時間浸漬した後、超音波洗浄し、乾燥させた。その後、洗浄・乾燥処理後のステンレス製多孔質支持体の表面にA型ゼオライト種晶を塗布し、乾燥させた。
【0052】
一方、原料組成比、H2 O/Na2 O=60、Na2 O/SiO2 =1、SiO2 /Al2 3 =2のアルミノシリケートゲルを作成し、16〜24時間熟成した。このゲル中に種晶塗布したステンレス製多孔質支持体を浸漬し、100℃で、5時間水熱合成して、A型ゼオライト膜を得た。
【0053】
このA型ゼオライト膜のPV膜性能は、水/エタノール(10/90wt%)系、75℃の条件下にて、分離係数が9,000、透過流束が2.05kg/m2 hであった。
【0054】
(実施例4)
円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)を2N水酸化ナトリウム水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。その後、85%リン酸水溶液中に12時間浸漬後、水洗した。更に、90%酢酸水溶液中に12時間浸漬した後、超音波洗浄し、乾燥させた。その後、洗浄・乾燥処理後のステンレス製多孔質支持体の表面にT型ゼオライト種晶を塗布し、乾燥させた。
【0055】
一方、原料組成比、SiO2 /Al2 3 =54、OH/SiO2 =0.77、NA+ /(NA+ +K+ )=0.77、H2 O/(NA+ +K+ )=20.75のアルミノシリケートゲルを作成し、16〜24時間熟成した。このゲル中に種晶塗布したステンレス製多孔質支持体を浸漬し、100℃で、48時間水熱合成して、T型ゼオライト膜を得た。
【0056】
このT型ゼオライト膜のPV膜性能は、水/IPA(10/90wt%)系、75℃の条件下にて、分離係数が10,000、透過流束が1.7kg/m2 hであった。
【0057】
(比較例1)
円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)を2N水酸化ナトリウム水溶液中に12時間浸漬後、36%塩酸中に16時間浸漬させた。そして、水洗し、乾燥させた。その後、水洗・乾燥処理後のステンレス製多孔質支持体の表面にY型ゼオライト種晶を塗布し、乾燥させた。
【0058】
一方、原料組成比、H2 O/Na2 O=45、Na2 O/SiO2 =0.88、SiO2 /Al2 3 =25のアルミノシリケートゲルを作成し、16〜24時間熟成した。このゲル中に種晶塗布したステンレス製多孔質支持体を浸漬し、100℃で、5時間水熱合成して、Y型ゼオライト膜を得た。
【0059】
このY型ゼオライト膜のPV膜性能は、メタノール/MTBE(10/90wt%)系、50℃の条件下にて、分離係数が1700、透過流束が3.3kg/m2 hであった。
【0060】
実施例1と比較例1とを比較すると、ステンレス製多孔質支持体上にClイオンが残存し、表面管能基(−OH、−COOH)の化学的修飾を阻害したため、分離性能が低下したものと思われる。
【0061】
(比較例2)
実施例1と同様にY型ゼオライト膜の製膜を円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)の上に試みた。ステンレス製多孔質支持体は、水洗のみで、他の手順は、実施例1と全て同じであった。しかし、ステンレス製多孔質支持体の表面には、ゼオライト膜ができなかった。
【0062】
(比較例3)
実施例2と同様にA型ゼオライト膜の製膜を円筒状のステンレス製多孔質支持体(外径12mm、内径9mm、長さ400mm、細孔径約1μm、気孔率40%)の上に試みた。ステンレス製多孔質支持体は、水洗のみで、他の手順は、実施例2と全て同じであった。しかし、ステンレス製多孔質支持体の表面には、ゼオライト膜ができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】管状の多孔質金属支持体の斜視図である。
【図2】前処理工程の概略説明図である。
【図3】種結晶担持方法(塗布)の説明図である。
【図4】(a)種結晶担持方法(減圧)及び(b)種結晶担持方法(加圧)説明図である。
【図5】成膜工程の概略説明図である。
【図6】本方法によって作成した管型分離体の斜視図である。
【図7】Y型ゼオライト膜表面の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0064】
1 耐アルカリ性金属多孔体
d ゼオライトスラリー
e ゼオライト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製多孔体にA型ゼオライトやY型ゼオライトなどのゼオライト種晶を担持もしくは付着させた後、前記多孔体をアルミノシリケートゲル中に浸漬し、水熱反応によって前記ゼオライト種晶を成長させてゼオライト膜を生成させるゼオライト膜製造方法において、前記金属製多孔体として耐アルカリ性金属多孔体を適用するとともに、該耐アルカリ性金属多孔体の表面を酸で前処理することを特徴とするゼオライト膜製造方法。
【請求項2】
耐アルカリ性金属多孔体製の管状体の片端を栓で封止し、この管状体の封止側を酸で前処理することを特徴とする請求項1記載のゼオライト膜製造方法。
【請求項3】
耐アルカリ性金属多孔体を、硝酸、リン酸、ケイフッ化水素酸、酢酸からなる一又は複数の酸で前処理することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のゼオライト膜製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159031(P2006−159031A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351800(P2004−351800)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】