説明

ゼオライト薄膜の形成方法およびゼオライト薄膜

【課題】基材との密着性、強度、耐摩耗性等に優れ、このため吸着剤、吸着分離材、触媒、担体、抗菌性薄膜等として好適に採用することが可能なゼオライト薄膜の形成方法を提供する。
【解決手段】ペルオキシ化合物を含むゼオライト粒子分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加することを特徴とするゼオライト薄膜の形成方法。前記ゼオライトがZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にゼオライト薄膜を形成する方法および基材上に形成されたゼオライト薄膜に関する。
さらに詳しくは、基材との密着性、強度、耐摩耗性等に優れ、このため吸着剤、吸着分離材、触媒、担体、抗菌性薄膜等として好適に採用することのできるゼオライト薄膜を形成する方法および基材上に形成されたゼオライト薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト(結晶性アルミノシリケート)は吸着剤、吸着分離剤、触媒、触媒担体、抗菌剤等として用いられていることはよく知られている。通常、合成ゼオライトはサブミクロン〜数十ミクロンオーダーの粒子径を有する微粒子として得られる。このため、多くの場合そのまま微粉体ゼオライトを使用することは少なく、多くの場合ペレット状、球状等に成型して用いられている。しかしながら、ゼオライトを単独で成型した場合、充分な強度や耐摩耗性が得られず、通常バインダー(結合材)を加えて成型されている。
【0003】
また、上記用途以外に吸着分離機能と触媒機能と併せて有するようなゼオライト薄膜の製法が検討されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法で得られるゼオライト薄膜は、膜の緻密さや強度、耐摩耗性等が不充分であるとともに機能の面でも充分なものは得ることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意検討した結果、ペルオキシチタン酸を含むゼオライト粒子分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加すると導電性基材上にゼオライト粒子が積層することを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]ペルオキシ化合物を含むゼオライト粒子分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加することを特徴とするゼオライト薄膜の形成方法。
[2]前記ゼオライトがZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1種以上である[1]のゼオライト薄膜の形成方法。
[3]前記ゼオライト粒子の平均粒子径が0.1〜10μmの範囲にある[1]または[2]のゼオライト薄膜の形成方法。
[4]前記分散液の濃度が全固形分として1〜30重量%の範囲にあり、ゼオライトの固形分としての濃度(CZ)とペルオキシ化合物の固形分としての濃度(CP)の比(CP)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にある[1]〜[3]のゼオライト薄膜の形成方法。
[5]前記分散液がさらに繊維状微粒子を含み、該繊維状微粒子の長(L)が50nm〜10μm、径(D)が10nm〜2μm、アスペクト比(L)/(D)が5〜1,000の範囲にあり、繊維状微粒子の含有量が固形分としてゼオライト粒子の0.1〜20重量%の範囲にある[1]〜[4]のゼオライト薄膜の形成方法。
[6]前記繊維状微粒子の固形分としての濃度(CF)と、ゼオライト粒子の固形分としての濃度(CZ)との比(CF)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にある[1]〜[5]のゼオライト薄膜の形成方法。
[7]前記分散液がさらに平均粒子径が2〜300nmの範囲にあるコロイド粒子を含み、
該コロイド粒子の固形分としての濃度(CC)とゼオライト粒子の固形分換算濃度(CZ)との比(CC)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にある[1]〜[6]のゼオライト薄膜の形成方法。
[8][1]〜[7]の形成方法で基材上に形成されてなる、ゼオライト粒子とペルオキシ化合物に由来する無機酸化物とからなるゼオライト薄膜。
[9]前記ゼオライト薄膜の厚さが0.1μm〜5mmの範囲にある[8]のゼオライト薄膜。[10]前記ゼオライト薄膜中のゼオライト粒子の含有量が固形分として63〜99.9重量%の範囲にあり、ペルオキシ化合物に由来する無機酸化物の含有量が固形分として0.1〜17重量%の範囲にある[8]または[9]のゼオライト薄膜。
[11]前記ゼオライト薄膜がさらに繊維状微粒子を含み、該繊維状微粒子の長(L)さが50nm〜10μm、径(D)が10nm〜2μm、アスペクト比(L)/(D)が5〜1,000の範囲にあり、ゼオライト薄膜中の繊維状微粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%の範囲にある[8]〜[10]のゼオライト薄膜。
[12]前記ゼオライト薄膜がさらに平均粒子径が2〜300nmの範囲にあるコロイド粒子を含み、ゼオライト薄膜中のコロイド粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%の範囲にある[6]〜[9]のゼオライト薄膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゼオライト粒子分散液がペルオキシ化合物を含むために基材と分散液に直流電圧を印加することによりゼオライト粒子を基材上に積層させることができ、形成されたゼオライト微粒子からなる薄膜は緻密で、基材との密着性、強度、耐摩耗性等に優れており、このため吸着剤、吸着分離材、触媒、担体、抗菌性薄膜等として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、ゼオライト薄膜の形成方法について具体的に説明する。
本発明に係る導電性基材上へのゼオライト薄膜の形成方法は、ペルオキシ化合物を含むゼオライト粒子分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加することを特徴としている。
[導電性基材]
本発明に用いる基材としては導電性を有していれば特に制限はなく従来公知の基材を用いることができる。
【0009】
具体的にはアルミ、錫、各種ステンレス等の金属製の平板、波板、管、ハニカム基材等の他、ガラス、酸化チタン、コージライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素等からなるセラミックス製の絶縁性基材上に導電膜を形成した導電性の基材等が挙げられる。絶縁性基材上の導電膜としてはアルミ、錫、金、銀、銅等の金属膜の他、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の導電性を有する金属酸化物からなる膜が挙げられる。
[ゼオライト粒子分散液]
まずゼオライト粒子分散液を構成する成分を説明する。
【0010】
ゼオライト粒子
本発明に用いるゼオライト粒子としては従来公知の合成ゼオライト、天然ゼオライトを用いることができる。また、通常ゼオライトは狭義には結晶性アルミノシリケートであるが、これに限定するものではなく、結晶性アルミノシリケートフォスフェート(SAPO)、結晶性アルミノシフォスフェート(ALPO)、結晶性チタノシリケート(TS)なども用いることができる。
【0011】
本発明に用いるゼオライト粒子としては、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1種以上が好ましい。
【0012】
これらのゼオライト粒子は吸着剤、吸着分離剤、触媒、触媒担体、抗菌剤等として有用性に優れ好適に用いることができる。
ゼオライト粒子の平均粒子径は0.1〜10μm、さらには0.2〜5μmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
ゼオライト粒子の平均粒子径が小さいものは得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が低く充分な性能が得られないことがある。また、ゼオライト粒子の平均粒子径が大きいものは導電性基材上への積層が不充分になったり、積層しても基材との密着性が不充分となったり、得られる薄膜の緻密性、強度、耐摩耗性等が不充分となることがある。
【0014】
なお、ゼオライトは従来公知の各種金属イオンでイオン交換したゼオライト、あるいは金属を担持したゼオライトを用いることができる。
ペルオキシ化合物
本発明ではペルオキシ化合物が使用される。
【0015】
ペルオキシ化合物としては、ペルオキシチタン酸、ペルオキシニオブ酸、ペルオキシタングステン酸、ペルオキシモリブデン酸の塩等が挙げられる。
ペルオキシ化合物は、ペルオキシ基(−O−O−)を有する化合物であり、電子が偏在(化合物内で分極)していると考えられ、導電性物質である。ゼオライト単独では印加した際にほとんど積層しないが、ペルオキシ化合物が存在すると積層が促進される。ゼオライト粒子にペルオキシ化合物が吸着し、見かけ上、ゼオライト粒子が帯電した状態になると考えられる。
【0016】
ペルオキシ化合物は、ゼオライト粒子に吸着し、見かけ上、ゼオライト粒子が帯電した状態にあると考えられる。
なお、ペルオキシ化合物が無機酸化物となるのは、のちの乾燥工程、加熱処理工程であり、容易に分解する。
【0017】
分散液中のゼオライトの固形分としての濃度(CZ)とペルオキシ化合物の固形分としての濃度(CP)の比(CP)/(CZ)が0.001〜0.2、さらには0.002〜0.15の範囲にあることが好ましい。
【0018】
前記濃度比(CP)/(CZ)が小さい場合は、ゼオライト粒子の積層が困難であり、積層したとしても形成されたゼオライト薄膜の緻密性が低く、強度、耐摩耗性等が不充分である。(CP)/(CZ)が高くても、ゼオライトを積層させる効果、ゼオライト薄膜の緻密性、強度、耐摩耗性を向上させる効果がさらに向上することもなく、かえってゼオライト粒子の割合が少なくなることに加えて金属酸化物微粒子を被覆したり、用途によってはペルオキシ化合物に由来する無機酸化物の悪影響がでるために機能あるいは性能が不充分となることがある。
【0019】
このようなペルオキシ化合物は、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン等の無機酸化物あるいは無機水酸化物、好ましくはこれらのゾルあるいはゲルと過酸化水素を反応させることによって合成することができる。
【0020】
ペルオキシチタン酸を例にとって説明すると、
まず、チタン化合物を加水分解してオルソチタン酸のゾルまたはゲルを調製する。
オルソチタン酸のゲルは、チタン化合物として塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニルなどのチタン塩を使用し、この水溶液にアルカリを加えて中和し、洗浄することによって得ることができる。
【0021】
また、オルソチタン酸のゾルは、チタン塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陰イオンを除去するか、あるいはチタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシドなどのチタンアルコキシドの水および/または有機溶媒に酸またはアルカリを加えて加水分解することによって得ることができる。
【0022】
中和あるいは加水分解する際のチタン化合物の溶液のpHは7〜13の範囲にあることが好ましい。チタン化合物溶液のpHが上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。
【0023】
さらに、中和あるいは加水分解する際の温度は0〜60℃の範囲にあることが好ましく、特に好ましい範囲は0〜50℃の範囲である。中和あるいは加水分解する際の温度が上記範囲にあるとオルソチタン酸のゲルまたはゾルの微細な粒子が得られ、後述する過酸化水素との反応が容易となる。得られたゲルまたはゾル中のオルソチタン酸粒子は、非晶質であることが好ましい。
【0024】
次に、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物に、過酸化水素を添加してオルソチタン酸を溶解してペルオキシチタン酸水溶液を調製する。
ペルオキシチタン酸水溶液を調製するに際しては、オルソチタン酸のゲルまたはゾルあるいはこれらの混合物を、必要に応じて約50℃以上に加熱したり、攪拌したりすることが好ましい。また、この際、オルソチタン酸の濃度が高くなるすぎると、その溶解に長時間を必要とし、さらに未溶解のゲルが沈殿したり、あるいは得られるペルオキシチタン酸水溶液が粘調になることがある。このため、TiO2濃度としては、約10重量%以下であることが好ましく、さらに約5重量%以下であることが望ましい。
【0025】
添加する過酸化水素の量は、H22/TiO2(オルソチタン酸はTiO2に換算)重量比で1以上であれば、オルソチタン酸を完全に溶解することができる。H22/TiO2重量比が1未満であると、オルソチタン酸が完全には溶解せず、未反応のゲルまたはゾルが残存することがある。また、H22/TiO2重量比は大きいほど、オルソチタン酸の溶解速度は大きく反応時間は短時間で終了するが、あまり過剰に過酸化水素を用いても、未反応の過酸化水素が系内に残存するだけであり、経済的でないこともある。前記量で過酸化水素を用いると、オルソチタン酸は0.5〜20時間程度で溶解する。
繊維状微粒子
さらに、本発明に用いる分散液には繊維状微粒子を含んでいてもよい。このような繊維状微粒子を含んでいるとゼオライト薄膜と基材との密着性を高めることが可能となる。
【0026】
繊維状微粒子としては繊維状シリカ、繊維状アルミナ、繊維状酸化チタン、繊維状シリカ・アルミナ等が挙げられる。
繊維状微粒子は、長さが50nm〜10μm、好ましくは100〜5μmの範囲にあり、径が10nm〜2μm、好ましくは20nm〜2μmの範囲にあり、アスペクト比(長さ/径)が5〜1,000、好ましくは10〜500の範囲である。繊維状微粒子の大きさが上記範囲にあると形成されるゼオライト薄膜と基材との密着性、強度、耐摩耗性等に優れている。長さが短いものは、繊維状であっても形成されるゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがある。繊維状微粒子の長さが長すぎても、繊維状微粒子同士が顕著に交絡するようになるためかゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがある。繊維状微粒子の径が小さいものは繊維状微粒子自体が基材との密着性が不充分であり、また基材上への繊維状微粒子による凹凸形成効果が小さいためかゼオライト薄膜と
基材との密着性が不充分となることがあり、一方、径が2μmを超えても、繊維状微粒子自体が基材との密着性が不充分となり、ゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがある。
【0027】
また、アスペクト比が小さいものは繊維状微粒子による基材表面上への凹凸形成効果が小さいためか形成されるゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがあり、アスペクト比が大きくなりすぎると、繊維状微粒子同士が交絡するようになるためか形成されるゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがある。
【0028】
このような繊維状微粒子の使用量は、分散液中のゼオライトの固形分としての濃度(CZ)と繊維状微粒子の固形分としての濃度(CF)の比(CF)/(CZ)が0.001〜0.2、さらには0.002〜0.15の範囲にあることが好ましい。
【0029】
前記濃度比(CF)/(CZ)が小さいと、ゼオライト薄膜と基材との密着性が不充分となることがある。(CF)/(CZ)が大きすぎても、単に過剰の繊維状粒子の使用量が増えただけとなり、このため基材との密着性や強度がさらに向上することもなく、かえってゼオライト粒子の割合が少なくなるためにゼオライトの機能あるいは性能が不充分となることがある。
コロイド粒子
さらに、本発明では、分散液には、平均粒子径が2〜300nm、好ましくは5〜100nmの範囲にあるコロイド粒子が含まれていてもよい。コロイド粒子としては粒子表面に帯電した粒子であれば特に制限はないが酸化チタン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、ジルコニア等のコロイド粒子が挙げられる。このようなコロイド粒子を含んでいると直流電圧を印加してゼオライト粒子を積層させる際にゼオライト粒子の積層が促進される傾向があり、また形成されたゼオライト薄膜の緻密度が向上するとともに強度、耐摩耗性が向上する傾向がある。
【0030】
コロイド粒子の平均粒子径が小さいと、分散液が不安定になることがあり、また、バインダー効果、ゼオライトの粒子径によっては粒度配合効果が得られず、ゼオライト薄膜の緻密度の向上効果、強度向上効果、耐摩耗性の向上効果が得られない場合がある。コロイド粒子の平均粒子径が大きいものは、製造に極めて長時間を要し経済性の点で問題となる場合がある。
【0031】
このようなコロイド粒子の使用量は、分散液中のコロイド粒子の固形分としての濃度(CC)とゼオライト粒子の固形分としての濃度(CZ)との比(CC)/(CZ)が0.001〜0.2、さらには0.002〜0.15の範囲にあることが好ましい。濃度比(CC)/(CZ)が小さいと、ゼオライト薄膜の緻密度の向上効果、強度向上効果、耐摩耗性の向上効果が得られない場合がある。また、(CC)/(CZ)が大きすぎても、ゼオライト粒子の割合が少なくなることに加えてコロイド粒子がゼオライト粒子を被覆するようになるためにゼオライトの機能あるいは性能が不充分となることがある。
【0032】
分散媒
分散媒としては水、アルコール類、ケトン類、グリコール類から選ばれる1種以上が用いられる。
【0033】
具体的には、アルコール類としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等、ケトン類としてはアセトンなどグリコール類としてエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
なかでも、水は好適に用いることができ、場合によっては水とメタノール、エタノール
、イソプロピルアルコール、ブタノール等の比較的低沸点のアルコール類を含む水性分散媒を用いることもできる。水性分散媒は前記ゼオライト粒子、ペルオキシ化合物、繊維状微粒子、コロイド粒子を均一に分散できるとともに、基材上にゼオライト粒子層を形成する際に分散媒が蒸発しやすいので好適に用いることができる。
【0035】
ゼオライト粒子分散液
本発明で使用されるゼオライト粒子分散液は、上記した成分を公知の方法で混合することで調製される。ゼオライト粒子分散液の濃度は合計の固形分として1〜30重量%、さらには1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0036】
分散液の濃度が低いと、積層させる基材表面の面積にもよるが、濃度が薄すぎて1回の操作で所望の厚さに積層できない場合があり、繰り返し積層操作が必要となることがある。また、分散液の濃度が高いと、分散液の粘度が高くなり、積層したゼオライト粒子層の緻密度が低下し、強度、耐摩耗性が不充分となることがある。
【0037】
本発明のゼオライト薄膜の形成方法では、前記分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加する。
印加電圧は導電性基材の種類等によっても異なるが0.5〜100V(DC)、さらには1〜50V(DC)の範囲にあることが好ましい。
【0038】
印加電圧が低いと、ゼオライト粒子の積層が不充分となり、ゼオライト粒子が斑に積層したり、積層に長時間を要することがある。印加電圧が高すぎても、積層速度は速いものの、得られるゼオライト薄膜の緻密度が低下し、強度、耐摩耗性が不充分となることがある。
【0039】
印加する時間は概ね1〜60分程度である。
ゼオライト粒子を積層させた後、積層させた基材を取り出し、乾燥し、必要に応じて加熱処理する。
【0040】
乾燥方法は従来公知の方法を採用することができ、風乾することも可能であるが、通常50〜200℃で0.2〜5時間程度乾燥する。
加熱処理は、通常、200〜800℃、さらには300〜600℃で概ね1〜48時間焼成する。
【0041】
さらに、上記のようにして得られたゼオライト薄膜には、乾燥後あるいは加熱処理後、新たな成分をイオン交換法あるいは含浸法等従来公知の方法で担持することができる。
このようにして形成されたゼオライト薄膜は、通常、厚さが0.1μm〜5mmの範囲にある。
【0042】
つぎに、本発明に係るゼオライト薄膜について説明する。
本発明に係るゼオライト薄膜は、前記形成方法で基材上に形成された、ゼオライト粒子とペルオキシ化合物に由来する無機酸化物とからなるものである。
【0043】
基材、およびゼオライト粒子としては前記したと同様のものが挙げられる。また、ペルオキシ化合物に由来する無機酸化物としては、前記、ペルオキシ化合物としては、ペルオキシチタン酸、ペルオキシニオブ酸、ペルオキシタングステン酸、ペルオキシモリブデン酸等に由来する無機酸化物であり、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン等が挙げられる。
【0044】
無機酸化物は、前記したように、ゼオライトの積層を促進する機能のために使用するも
のである。無機酸化物は、積層の効果以外に、触媒特性、担体特性、吸着特性、分離特性、抗菌性特性などの性能を阻害しないこと、これらの性能を向上できるなどの観点から好ましいものを選択する。
【0045】
ゼオライト薄膜中のゼオライト粒子の含有量が固形分として63〜99.9重量%、さらには70〜95重量%の範囲にあることが好ましい。ゼオライト薄膜中のゼオライト粒子の含有量が少ないと、ゼオライト粒子の割合が少なくなるためにゼオライトの機能あるいは性能が不充分となることがある。また、ゼオライト粒子の含有量が多すぎれば、ペルオキシ化合物に由来する無機酸化物が少なくなり、ゼオライト薄膜の緻密性が低く、強度、耐摩耗性等が不充分となることがある。
【0046】
ゼオライト薄膜中のペルオキシ化合物に由来する無機酸化物の含有量が固形分として0.1〜17重量%、さらには0.2〜13重量%の範囲にあることが好ましい。無機酸化物の含有量が少ないとゼオライト薄膜の緻密性が低く、強度、耐摩耗性等が不充分となり、無機酸化物の含有量が多すぎると、ゼオライト粒子の割合が少なくなることに加えて金属酸化物微粒子を被覆したり、用途によってはペルオキシ化合物に由来する無機酸化物の悪影響がでるために機能あるいは性能が不充分となることがある。なお、ゼオライト粒子と無機酸化物の比率は、分散液中の(CP)/(CZ)比に相当する。
【0047】
ゼオライト薄膜の厚さが0.1μm〜5mm、さらには0.2〜2mmの範囲にあることが好ましい。ゼオライト薄膜の厚さが薄い場合は、ゼオライトの特性(吸着性能、触媒性能、抗菌性能等)が充分発揮されず、ゼオライト薄膜の厚さを厚くすると、基材への密着性が不充分であったり、ゼオライト薄膜の強度、耐摩耗性等が不充分となることがある。
【0048】
本発明のゼオライト薄膜には前記したように、繊維状微粒子、コロイド粒子を含んでいてもよい。
ゼオライト薄膜中の繊維状微粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%、さらには0.2〜11重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあればゼオライト薄膜と基材との密着性を高めることが可能となり、前記範囲より少ないと、密着性が不充分となることがあり、多すぎても、基材との密着性や強度がさらに向上することもなく、かえってゼオライトの機能あるいは性能が不充分となることがある。
【0049】
ゼオライト薄膜中のコロイド粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%、さらには0.2〜11重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあればゼオライト薄膜の緻密度、強度、耐摩耗性、密着性の向上を図ることができる。コロイド粒子の含有量が少ないとこれらの向上効果が期待できず、また多すぎても、基材との密着性や強度がさらに向上することもなく、コロイド粒子がゼオライト粒子を被覆するようになるためにゼオライトの機能あるいは性能が不充分となることがある。
【0050】
これらのゼオライト粒子に対する割合は、前記分散液中の比率(CF)/(CZ)、(CC/(CZ)に相当する。
[実施例]
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
ペルオキシチタン酸水溶液(1)の調製
塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiO2として濃度5重量%の塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成
したゲルを濾過洗浄し、TiO2として濃度9重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0051】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキシチタン酸水溶液(1)を調製した。得られたペルオキシチタン酸水溶液のTiO2として濃度は0.5重量%であった。
ゼオライト粒子分散液(1)の調製
NH4−Y型ゼオライト(触媒化成工業(株)製、商品名CZS、平均粒子径0.4μm、ゼオライト濃度20重量%)50gを283gの純水に懸濁させ、撹拌しながらペルオキシチタン酸水溶液(1)1000gを加えた。この分散液を30分撹拌した後、20分間超音波を照射してゼオライト粒子分散液(1)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(1)の調製
500mlのガラスビーカーにゼオライト粒子分散液(1)400gを入れ、この分散液に正極としてハニカム基材(新日本製鉄(株)製:外径30mm、長さ50mm、壁厚30μm、目開き600cpsi、SUS製)と、負極としてSUS製(ハニカム基材と同材質)の5cm×5cmの平板を挿入した。ゼオライト粒子分散液(1)をマグネチックスターラーで攪拌しながら、1mmφのSUS線で直流電源として直流電圧装置(菊水電気(株)型式PAD35―10L)と正極および負極を接続し、15V(DC)の電圧を2分間印加した。微粒子層を形成したハニカム基材を取り出し、ついで、120℃で3時間乾燥し、500℃で2時間焼成してゼオライト粒子層付基材(1)を調製した。
【0052】
得られたゼオライト粒子層付基材(1)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
なお、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性は下記の方法および評価基準で評価した。
【0053】
微粒子層の厚さ
電着されたハニカム基材試料(1)をエポキシ樹脂で固め、金きり鋸で輪切りに切断し、断面を研磨すし、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所(株)製)で撮影し、写真上でノギスにより膜厚を測定し、結果を表1に示した。
【0054】
密着性
ハニカム基材外表面に電着した触媒層を親指の腹で擦り、
親指に触媒粉が全然付かない ◎
親指に触媒分が多少付く ○
親指で擦ると触媒分が剥離する ×
微粒子層の均一性
SEM写真より目視で膜の均一性を判断した。
【0055】
ハニカム基材に触媒が均一な膜を形成していた。 ◎
ハニカム基材に触媒が一部不均一に電着されていた。 ○
ハニカム基材に触媒がマダラに電着されていた。 △
ハニカム基材に触媒が電着されていなかった。 ×
[実施例2]
ゼオライト粒子分散液(2)の調製
実施例1において、ペルオキシチタン酸500gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(2)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(2)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(2)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(2)を調製した。
【0056】
得られたゼオライト粒子層付基材(2)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例3]
ゼオライト粒子分散液(3)の調製
実施例1において、ペルオキシチタン酸1500gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(3)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(3)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(3)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(3)を調製した。
【0057】
得られたゼオライト粒子層付基材(3)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例4]
繊維状微粒子(1)の調製
ルチルチタン粉末(商品名CR-EL、石原産業(株)製)60gを濃度40重量%のNaOH水溶液10Lに混合した。この酸化チタン粉末混合アルカリ水溶液をオートクレーブに充填し、150℃で40時間撹拌しながら水熱処理した。その後、室温までに冷却し、濾過分離し、1Nの塩酸20Lを掛けて洗浄し、ついで、120℃で16時間乾燥し、ついで500℃で焼成して酸化チタンの繊維状微粒子(1)を調製した。繊維状微粒子(1)の長さ(L)、径(D)、アスペクト比(L/D)を測定し、結果を表1に示した。
ゼオライト粒子分散液(4)の調製
NH4−Y型ゼオライト(触媒化成工業(株)製、商品名CZS、平均粒子径0.4μm、ゼオライト濃度20重量%)50gを283gの純水に懸濁させ、撹拌しながら実施例1と同様にして調製したペルオキシチタン酸水溶液(1)1000gおよび繊維状微粒子(1)2gを加えた。ついで、コロイド粒子としてチタニアゾル(触媒化成工業(株)製:HPW-18NR、平均粒子径18nm、TiO2濃度10重量%、分散媒:水)50gを加えた。この分散液を30分撹拌した後、20分間超音波を照射してゼオライト粒子分散液(4)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(4)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(4)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(4)を調製した。
【0058】
得られたゼオライト粒子層付基材(4)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例5]
ゼオライト粒子分散液(5)の調製
実施例4において、ペルオキシチタン酸水溶液(1)500gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(5)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(5)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(5)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(5)を調製した。
【0059】
得られたゼオライト粒子層付基材(5)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例6]
ゼオライト粒子分散液(6)の調製
実施例4において、ペルオキシチタン酸水溶液(1)1500gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(6)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(6)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(6)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(6)を調製した。
【0060】
得られたゼオライト粒子層付基材(6)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例7]
ゼオライト粒子分散液(7)の調製
実施例4において、ZSM−5(触媒化成工業(株)製、粒子径1.0μm)50gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(7)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(7)の調製
実施例1において、Y型ゼオライトの代わりにゼオライト粒子分散液(7)を用い、正極として負極同様の5cm×5cmのハニカム成分からなる平板(新日本製鉄(株)製、材質成分:Fe,Cr,Al)を用いた以外は同様にしてゼオライト分散液粒子層付基材(4)を調製した。
【0061】
得られたゼオライト粒子層付基材(7)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例8]
ペルオキシニオブ酸水溶液(1)の調製
塩化ニオブ水溶液を純水で希釈してNb25として濃度5重量%の塩化ニオブ水溶液を調製した。(このとき、加水分解によりゲルが生成した)
この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解を完結させた。塩化ニオブ水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、Nb25として濃度9重量%のオルソニオブ酸のゲルを得た。
【0062】
このオルソニオブ酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキシニオブ酸水溶液(1)を調製した。得られたペルオキシニオブ酸水溶液(1)のNb25として濃度は0.5重量%であった。
ゼオライト粒子分散液(8)の調製
実施例4において、ペルオキシチタン酸水溶液(1)の代りにペルオキシニオブ酸水溶液(1)1500gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(8)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(8)の調製
実施例4において、ゼオライト粒子分散液(8)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(8)を調製した。
【0063】
得られたゼオライト粒子層付基材(8)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例9]
繊維状微粒子(2)の調製
ルチルチタン粉末(商品名CR-EL、石原産業(株)製)60gを濃度40重量%のNaOH水溶液10Lに混合した。この酸化チタン粉末混合アルカリ水溶液をオートクレーブに充填し、140℃で20時間撹拌しながら水熱処理した。その後、室温までに冷却し、濾過分離し、1Nの塩酸20Lを掛けて洗浄し、ついで、120℃で16時間乾燥し、ついで500℃で焼成して酸化チタンの繊維状微粒子(2)を調製した。繊維状微粒子(2)の長さ(L)、径(D)、アスペクト比(L/D)を測定し、結果を表1に示した。
ゼオライト粒子分散液(9)の調製
実施例4において、繊維状微粒子(1)の代りに繊維状微粒子(2)2gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(9)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(9)の調製
実施例4において、ゼオライト粒子分散液(9)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(9)を調製した。
【0064】
得られたゼオライト粒子層付基材(9)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例10]
ゼオライト粒子分散液(10)の調製
実施例4において、チタニアゾル100gを用いた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(10)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(7)の調製
実施例4において、ゼオライト粒子分散液(10)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(7)を調製した。
【0065】
得られたゼオライト粒子層付基材(7)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[実施例11]
ゼオライト粒子層付基材(11)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(1)を用い、正極としてSUS製ハニカム基材の代わりにアルミニウム板5cm×5cm(平板)を用いた以外は同様にしてゼオライト粒子層付基材(11)を調製した。
【0066】
得られたゼオライト粒子層付基材(11)について、微粒子層の厚さ、密着性、微粒子層の均一性を評価し、結果を表1に示した。
[比較例1]
ゼオライト粒子分散液(R1)の調製
NH4−Y型ゼオライト(触媒化成工業(株)製、商品名CZS、平均粒子径0.4μm、ゼオライト濃度20重量%)50gを283gの純水に懸濁させ、この分散液を30分撹拌した後、20分間超音波を照射してゼオライト粒子分散液(R1)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(R1)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(R1)を用いた以外は同様にして直流電圧を印加したが基材上にゼオライト粒子層は形成されなかった。
[比較例2]
ゼオライト粒子分散液(R2)の調製
実施例1において、NH4−Y型ゼオライトの代わりにZSM−5(触媒化成工業(株)製、粒子径1.0μm)50gを283gの純水に懸濁させた以外は同様にしてゼオライト粒子分散液(R2)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(R2)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(R2)を用いた以外は同様にして直流電圧を印加したが基材上にゼオライト粒子層は形成されなかった。
[比較例3]
ゼオライト粒子分散液(R3)の調製
NH4−Y型ゼオライト(触媒化成工業(株)製、商品名CZS、平均粒子径0.4μm、ゼオライト濃度20重量%)50gを283gの純水に懸濁させ、撹拌しながら実施例1と同様にして調製したペルオキシチタン酸水溶液(1)1000gおよび繊維状微粒子(1)2gを加えた。
【0067】
この分散液を30分撹拌した後、20分間超音波を照射してゼオライト粒子分散液(R3)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(R3)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(R3)を用いた以外は同様にして直流電圧を印
加したが基材上にゼオライト粒子層は形成されなかった。
[比較例4]
ゼオライト粒子分散液(R4)の調製
NH4−Y型ゼオライト(触媒化成工業(株)製、商品名CZS、平均粒子径0.4μm、ゼオライト濃度20重量%)50gを283gの純水に懸濁させ、撹拌しながらコロイド粒子としてチタニアゾル(触媒化成工業(株)製:HPW-18NR、平均粒子径18nm、TiO2濃度10重量%、分散媒:水)50gを加えた。
【0068】
この分散液を30分撹拌した後、20分間超音波を照射してゼオライト粒子分散液(R4)を調製した。
ゼオライト粒子層付基材(R4)の調製
実施例1において、ゼオライト粒子分散液(R4)を用いた以外は同様にして直流電圧を印加したが基材上にゼオライト粒子層は形成されなかった。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルオキシ化合物を含むゼオライト粒子分散液に導電性基材を浸漬し、導電性基材と分散液に直流電圧を印加することを特徴とするゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項2】
前記ゼオライトがZSM−5型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライト、A型ゼオライト、L型ゼオライト、βゼオライトから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項3】
前記ゼオライト粒子の平均粒子径が0.1〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項4】
前記分散液の濃度が全固形分として1〜30重量%の範囲にあり、ゼオライトの固形分としての濃度(CZ)とペルオキシ化合物の固形分としての濃度(CP)の比(CP)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項5】
前記分散液がさらに繊維状微粒子を含み、該繊維状微粒子の長(L)が50nm〜10μm、径(D)が10nm〜2μm、アスペクト比(L)/(D)が5〜1,000の範囲にあり、繊維状微粒子の含有量が固形分としてゼオライト粒子の0.1〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項6】
前記繊維状微粒子の固形分としての濃度(CF)と、ゼオライト粒子の固形分としての濃度(CZ)との比(CF)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項7】
前記分散液がさらに平均粒子径が2〜300nmの範囲にあるコロイド粒子を含み、該コロイド粒子の固形分としての濃度(CC)とゼオライト粒子の固形分換算濃度(CZ)との比(CC)/(CZ)が0.001〜0.2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゼオライト薄膜の形成方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7に記載の形成方法で基材上に形成されてなる、ゼオライト粒子とペルオキシ化合物に由来する無機酸化物とからなるゼオライト薄膜。
【請求項9】
前記ゼオライト薄膜の厚さが0.1μm〜5mmの範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のゼオライト薄膜。
【請求項10】
前記ゼオライト薄膜中のゼオライト粒子の含有量が固形分として63〜99.9重量%の範囲にあり、ペルオキシ化合物に由来する無機酸化物の含有量が固形分として0.1〜17重量%の範囲にあることを特徴とする請求項8または9に記載のゼオライト薄膜。
【請求項11】
前記ゼオライト薄膜がさらに繊維状微粒子を含み、該繊維状微粒子の長(L)さが50nm〜10μm、径(D)が10nm〜2μm、アスペクト比(L)/(D)が5〜1,000の範囲にあり、ゼオライト薄膜中の繊維状微粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%の範囲にあることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のゼオライト薄膜。
【請求項12】
前記ゼオライト薄膜がさらに平均粒子径が2〜300nmの範囲にあるコロイド粒子を含み、ゼオライト薄膜中のコロイド粒子の含有量が固形分として0.1〜14重量%の範囲にあることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のゼオライト薄膜。

【公開番号】特開2008−50223(P2008−50223A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229596(P2006−229596)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】