説明

ソケット部材とそれを用いた配管構造

【課題】ペーパー類などが排水と共に縦排水管を流下してきても管内の負圧の発生を緩和し、各種排水設備の排水トラップの封水破壊を防止することができるソケット部材とそれを用いた配管構造を提供する。
【解決手段】階上から階下に配設された縦排水管4の途中に設置されるソケット部材1であって、上下に縦排水管4との接続部2a,2bを有するソケット本体2の内壁面に、上辺3aが斜め下方に傾斜したガイド片3が略鉛直方向に形成された構成とする。排水設備5からの排水にトイレットペーパーが含まれていたとしても、ソケット本体2に形成されたガイド片3によって、開きかけていたトイレットペーパーがガイド片3に衝突し、再び萎んで集束されて縦排水管4を流下していくので、縦排水管4内の負圧の発生を緩和して排水設備5の排水トラップ5aの封水破壊を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に屋内の階上から階下に配設される縦排水管の途中に設置されて、排水管路の負圧の発生を緩和して各排水設備の排水トラップの封水破壊を防止するソケット部材とそれを用いた配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
階上の排水設備(トイレ等)からの排水が流下する縦排水管の閉塞を防止するため、従来より、種々の技術が提案されており、その1つに、縦排水管の中途部に、縦排水管の径よりも大きい膨大部を形成し、膨大部の下部のテーパー筒部の内面に管軸に対して傾斜した羽根板を周方向に複数枚突設した排水用配管部材がある(特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の排水用配管部材は、管軸に対して傾斜した羽根板を周方向に複数枚突設することで、排水用配管部材に流入した排水が旋回流となり、排水の流下速度が低減されて、縦排水管内の中心部に空気芯が形成される。これによって、縦排水管内の空気圧力変動が抑えられて、各種排水設備の排水トラップの封水破壊を防止することができる。
【0004】
上記特許文献1のように、旋回流を発生させることによって排水設備の排水トラップの封水破壊を防止するものとして、上下端に縦排水管接続部をそれぞれ有し実質的に鉛直方向に配置される筒形の本体部の内面に、その筒軸方向へ向って伸延する螺旋状の案内羽根を設け、この案内羽根の上記本体部内面からその筒軸方向への幅は、上部では狭く、下部へ向うにつれて広がっている排水管接続用ソケットなども提案されている(特許文献2)。
【0005】
上記特許文献2の排水管接続用ソケットは、排水がソケット又は縦排水管を流下する際に、案内羽根が排水を本体部の内周面に沿う一定方向に回転させて、この回転により排水に遠心力が働いて、排水が縦排水管の内周面に沿って回転しながら旋回流となって流下する。排水は遠心力によってソケット又は縦排水管の内周面に沿って流れるので、ソケット又は縦排水管の中心部には空気芯が形成されて、縦排水管の閉塞を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−102639号公報
【特許文献2】特開2001−182116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の排水用配管部材や、特許文献2の排水管接続用ソケットを縦排水管の途中に設置することにより、排水設備から排出されるのが水のみである場合は、縦排水管の閉塞を防止することができたが、次のような問題が解決されないままであった。
【0008】
即ち、トイレから排出されたトイレットペーパーなどの流下物は、旋回流と共に旋回しながら流下せずに、縦排水管の真ん中の空気芯の部分を流下して、その際、トイレットペーパーが落下による空気抵抗でパラシュートのように開いて縦排水管を塞いでしまい、それより上流側で負圧が発生してしまうという問題が残されたままであった。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、ペーパー類などが排水と共に縦排水管を流下してきても管内の負圧の発生を緩和し、各種排水設備の排水トラップの封水破壊を防止することができるソケット部材とそれを用いた配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るソケット部材は、階上から階下に配設された縦排水管の途中に設置されるソケット部材であって、上下に縦排水管との接続部を有するソケット本体の内壁面に、上辺が斜め下方に傾斜したガイド片が略鉛直方向に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のソケット部材においては、上記ガイド片の上辺が、ソケット本体の内壁面から5°〜80°の角度で斜め下方に傾斜していることが好ましい。また、上記ガイド片が、ソケット本体の中心に向って形成されていたり、上記ガイド片が、ソケット本体の片側に偏って形成されていたりすることが好ましい。
【0012】
次に、本発明の配管構造は、縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、下から10%の距離を除いた位置に、上記いずれかのソケット部材を設置することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の配管構造においては、縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、上下から10%の距離を除いた位置に、上記いずれかのソケット部材を設置することがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のソケット部材を縦排水管の途中に設置すると、排水設備(主にトイレ)からの排水にトイレットペーパーなどの固形物が含まれていたとしても、ソケット本体の内壁面に形成されたガイド片によって、落下による空気抵抗でパラシュートのように開きかけていたトイレットペーパーが、ガイド片に衝突することで再び萎んで集束されて縦排水管を流下していく。このように、流下物の流路を規制することで、縦排水管内に通水スペースと通気スペースが確保され、負圧の発生を緩和して各種排水設備の排水トラップの封水破壊を防止することができる。更に、流下物がガイド片に衝突することで、縦排水管内における流下物の流下速度を減速することができるため、負圧の発生をより緩和することができる。また、このソケット部材は、ガイド片が管軸に対して傾斜したものではなく略鉛直方向に形成されているので、流下する排水の流れを阻害したり、排水の流れ方向を規制したりしてしまうことが少なく、ガイド片の上辺を斜め下方に傾斜させることで、流下物が引っ掛かりにくく、詰まってしまう心配も少ない。
【0015】
上記のような効果を奏するガイド片の傾斜角が5°未満であると、流下物の抵抗となりにくいため、開いたトイレットペーパーが萎みにくく、また、ガイド片としての作用効果を奏するようにするには、ある程度の出っ張りが必要となるためガイド片自体を相当長く形成しなければならない。反対に、80°よりも大きいと流下物がガイド片に引っ掛かって流下しない恐れが生じる。これらのことを勘案して、上記ガイド片の上辺が、ソケット本体の内壁面から5°〜80°の角度で斜め下方に傾斜しているソケット部材が好適に用いられる。
【0016】
更に、上記ガイド片が、ソケット本体の中心に向って形成されているソケット部材は、ガイド片によって集束されたトイレットペーパーなどの流下物は中心部分を流下することになるので、通水スペースと通気スペースを確実に確保することができ、縦排水管内を閉塞してしまう心配がなくなる。
【0017】
一方、上記ガイド片が、ソケット本体の片側に偏って形成されているソケット部材は、トイレットペーパーなどの流下物がガイド片に衝突すると、ガイド片が形成されていないもう片側のソケット本体内壁面に追いやられて、その内壁面に沿って流下することになるので、トイレットペーパーが再びパラシュートのように開いて、縦排水管内を閉塞してしまう心配がなくなる。
【0018】
次に、本発明の配管構造は、前述した優れた効果を奏するソケット部材を用いるので、各種排水設備の排水トラップの封水破壊を有効に防止することができる。このとき、ソケット部材を縦排水管のあまり下側に設置しても、トイレットペーパーがソケット部材に到達するまでに、落下による空気抵抗で開いてしまって、それより上流側において既に閉塞していることが多いので好ましくないが、本発明の配管構造は、縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、下から10%の距離を除いた位置に上記ソケット部材を設置したものであるので、トイレットペーパーが開ききる前、又は、開ききった直後にソケット部材に到達してガイド片に衝突することになるので、そのような問題が生じる心配が殆どなくなる。
【0019】
また、ソケット部材を縦排水管のあまり上側に設置すると、落下による空気抵抗でのトイレットペーパーの開きが殆どないので、ソケット部材を設置しても効果が薄く、仮にトイレットペーパーの流路を規制できたとしても、縦排水管の下端に接続される継手に到達する前に、再び落下による空気抵抗で開いてしまう恐れがあるので好ましくないが、縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、上下から10%の距離を除いた位置に上記ソケット部材を設置した本発明の配管構造においては、トイレットペーパーが開ききる直前、又は、開ききった直後にソケット部材に到達してガイド片に衝突することになるので、そのような問題が生じる心配が殆どなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るソケット部材を示すものであって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】同ソケット部材を構成するガイド片を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る配管構造を示す概略図である。
【図4】同配管構造の説明図である。
【図5】同配管構造に用いる旋回流継手を示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図6】同ソケット部材にカバー部材を装着した状態を示す平面図である。
【図7】同ソケット部材のガイド片の他の実施形態を示す平面図である。
【図8】同ソケット部材のガイド片の更に他の実施形態を示す一部破断正面図である。
【図9】同ソケット部材のガイド片の更に他の実施形態を示す一部破断正面図である。
【図10】同ソケット部材のガイド片の更に他の実施形態を示す一部破断正面図である。
【図11】(a)〜(d)は本発明のソケット部材の様々なバリエーションを示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0022】
図1に示す本発明のソケット部材1は、図3に示すように、階上から階下に配設された縦排水管4の経路途中に設置されるもので、図1の(b)に示すように、ソケット本体2の上部に縦排水管4との接続部である上部接続口2aが設けられていると共に、ソケット本体2の下部にも縦排水管4との接続部である下部接続口2bが設けられている。このソケット本体2は、縦排水管4と同径の円筒体で、その内壁面には、ガイド片3が複数(本実施形態では6つ)形成されている。
【0023】
上記ガイド片3は、図1、図2に示すように、上記ソケット本体2の内壁面からソケット本体2の中心に向って突出するように形成された、縦断面が直角三角形状の突片で、その上辺3aは、ソケット本体2の内壁面から斜め下方に傾斜している。このようにガイド片3を直角三角形状に形成することで、高強度となり破損する心配がなくなる。また、このガイド片3は、縦排水管4を流下してきた排水の流れを阻害したり、排水の流れ方向を変えてしまったりしないように、鉛直方向に対して傾きを5°未満に抑える必要が有り、本実施形態のように、鉛直方向(鉛直方向に対して傾きが0)に形成することが最も好ましい。
【0024】
図3に示す階上の排水設備(ここでは主にトイレのことをいう。)5から縦排水管4に流入する排水に固形物(同様にトイレットペーパーのことをいう。)が含まれていると、そのトイレットペーパーが落下による空気抵抗でパラシュートのように開いて縦排水管4を塞いでしまい、それより上流側において負圧が発生して排水設備5の排水トラップ5aの封水を破壊してしまうが、上記ガイド片3を形成することにより、一旦開きかけたトイレットペーパーがガイド片3に衝突することで減速し、再び萎んで集束されて縦排水管4を流下していくことになるので、閉塞しかけていた縦排水管4内に通水スペースと通気スペースが確保され、負圧の発生を緩和して排水設備5の排水トラップ5aの封水破壊を防止することができる。
尚、図3では階上の排水設備5を1つだけ図示しているが、例えば、トイレとトイレ手洗いなど2つ以上の排水設備5が同じ排水管路に接続されている場合でも、上記と同様に、それぞれの排水トラップ5aの封水破壊を防止することができる。
【0025】
以上のようなガイド片3としての作用効果を奏するには、ガイド片3の傾斜角θが5°未満なら、開いて落下してきたトイレットペーパーがガイド片3に衝突しても萎みにくく、トイレットペーパーを再び萎めるためにはガイド片3自体を相当長く形成する必要が生じる(ある程度の出っ張りが必要なため)ので好ましくない。反対に、傾斜角θが80°よりも大きいと、トイレットペーパーがガイド片3に引っ掛かってしまい流下しない恐れが生じるので、これらを勘案して、上記ガイド片3の傾斜角θを5°〜80°とすることが好ましく、より効果を高めるために、傾斜角θを10°〜60°とすることが好ましい。また、トイレットペーパーの流下速度を減速させる効果をより高めるためには、傾斜角θを15°〜80°とすることが好ましい。
【0026】
また、前述したように、トイレットペーパーがガイド片3に衝突すると、トイレットペーパーの周辺がガイド片3の上辺3aに沿いながらソケット本体2の中心に向って萎められて、ソケット本体2の中心部分を流下していく。従って、ガイド片3が1つだけでもある程度の効果は認められるが、ガイド片3を3つ以上形成すると、よりソケット本体2の中心に向ってトイレットペーパーが萎んで集束し易くなるので、本実施形態では前述したように、ガイド片3が6つ形成されている。
【0027】
一方、排水は、トイレットペーパーがガイド片3に衝突すると、上記のようにソケット本体2の中心部分を流下するので、ソケット本体2の周囲に散らばってソケット本体2の内壁面に沿ってガイド片3とガイド片3の間を流下していくことが多くなる。このとき、ソケット本体2の横断面積に対して、ガイド片3の占める投影面積の割合が大きすぎると、通水スペース(通気スペース)が減少してしまうといった不具合を生じるし、小さすぎるとトイレットペーパーがガイド片3に衝突してもソケット本体2の中心に向ってうまく萎まないといった不具合を生じる。これらを勘案して、ソケット本体2の横断面積に対して、ガイド片3の占める投影面積の割合を2〜60%とすることが好ましく、5〜30%とするとより好ましい。
【0028】
尚、図6に示すように、上記ガイド片3とガイド片3の間を、複数の孔が穿孔された通気と通水を可能とするカバー部材7で覆ってもよい。このカバー部材7は、ガイド片3の上辺の傾斜角θに沿うように形成された下窄まりのテーパー状のドーナツ板で、このようなガイド片3,3間をカバー部材7で覆うと、トイレットペーパーがガイド片3に引っ掛かる心配が皆無に等しくなる。
尚、網体でガイド片3,3間を覆うことでも通気と通水は可能となるが、トイレットペーパーが引っ掛かり易くなるので、本実施形態のように、複数の孔が穿孔されたカバー部材7を用いるのが好ましい。
【0029】
また、図7に示すように、上辺3aに丸みを持たせたガイド片30や、図8に示すように、上辺3aと下辺3bの境目の面取りを行って丸みを持たせたガイド片31も好適に用いられる。このように、トイレットペーパーが引っ掛かる可能性のある箇所に丸みを持たせることで、ガイド片30,31に流下物が引っ掛かって縦排水管4(ソケット部材1)を詰まらせてしまうトラブルを未然に回避することができる。
【0030】
また、図示はしないが、上記ガイド片3の上辺3aにトイレットペーパーを破砕する機能を持たせてもよい(例えば刃などをガイド片3の上辺3aに装着する)。このようにガイド片3の上辺3aに破砕できる機能を持たせることで、トイレットペーパーがガイド片3に衝突すると、萎みながら破砕されて、より排水管路内の圧力変動を抑えることができる。
【0031】
本実施形態では、ガイド片3が形成されるソケット本体2の径は縦排水管4の径と同径であるが、ソケット本体2の径を、縦排水管4の径よりも大きくなるように外側へ膨らませて形成してもよい。その場合は、ガイド片3が形成された膨出部を有する上部材と、下窄まりのテーパー部を有する下部材で構成すると成型が容易となる。このようにソケット本体2の径を大きくすると、ガイド片3を形成したことで減少したソケット本体2の有効横断面積を補うことができるため、通水スペースと通気スペースを十分に確保できるようになる。
【0032】
また、本実施形態のガイド片3の縦断面は直角三角形状であるが、図9に示すガイド片32のように、その縦断面形状を棒状にしてもよい。このようにすると、ガイド片32自体の強度は多少低下するが、流下する排水の流れを妨げる心配がなくなる。
【0033】
更に、図10に示すように、下辺3bをソケット本体2の中心に向って斜め上方へ傾斜させて、ガイド片33の縦断面形状を台形としてもよいし、上辺3aと下辺3bを長さの等しい辺とした二等辺三角形としてもよい(不図示)。このようにガイド片33を上下対称の台形状又は二等辺三角形状とすると、ソケット部材1を上下のどちらでも使用できるようになるので、施工性が向上する。
尚、ガイド片33を上下非対称の台形又は三角形としてもよいことはいうまでもない。
【0034】
また、図11の(a)に示すように、ガイド片3を8つ形成したソケット部材10も好ましい。このように、ガイド片3の数を増やすことで、トイレットペーパーはより確実に縦排水管4の中央部分を流下することになり、通水スペースと通気スペースを確実に確保することができる。
【0035】
一方、図11の(b)に示すように、ガイド片3が、ソケット本体2の片側に偏って形成されているソケット部材11もある。このようにガイド片3をソケット本体2の片側に偏って形成したソケット部材11は、トイレットペーパーがガイド片3に衝突すると、トイレットペーパーはガイド片3が形成されていないもう片側に移動し、その内壁面に沿いながら流下するので、トイレットペーパーが再びパラシュートのように開いて、縦排水管4内を閉塞してしまうことが少なくなる。
【0036】
更に、図11の(c)に示すように、ガイド片3がソケット本体2の中心に向って形成されていると共に、ソケット本体2の片側に偏って形成された態様のソケット部材12もある。このような態様のソケット部材12は、トイレットペーパーが縦排水管4の中央部分を流下したり、ガイド片3が形成されていないソケット本体2のもう片側に移動したりするが、ガイド片3,3間は確実に通水スペース(通気スペース)として確保することができる。
【0037】
また、図11の(d)に示すように、ガイド片3を平面視螺旋状に形成してもよい。後述する本実施形態の配管構造のように、縦排水管4の上端には旋回流を発生させる旋回流継手6cが接続されている場合が多いので、このようにガイド片3を平面視螺旋状に形成したソケット部材13を用いれば、旋回流を破壊せずに維持することが可能となる。
【0038】
次に、前述したソケット部材1を用いた配管構造を説明する。
尚、ソケット部材1の代わりに、上記のソケット部材10〜13を用いてもよいことはいうまでもない。
【0039】
図3に示すように、本実施形態の配管構造は、家屋の二階に排水設備(トイレ)5を設置した場合を例示したものであって、この排水設備5は、第一エルボ継手6aを介して横引き管6bと接続されており、この横引き管6bは、旋回流継手6cを介して縦排水管4の上端と接続されている。そして、この縦排水管4の下端は、曲率半径が通常のエルボ継手よりも大きい第二エルボ継手(大曲りエルボ)6dを介して布基礎8を貫通する基礎貫通管6eと接続されており、基礎貫通管6eは、下水管(不図示)に通じる屋外の排水管の途中に設置された排水桝6fに接続されている。
【0040】
上記旋回流継手6cは、図5の(a),(b)に示すように、旋回流継手6cの上部周壁から漸次膨出するように形成された曲率半径が上部周壁よりも大きい湾曲流入路60cと、その湾曲流入路60cの先端に形成された横引き管6b接続用の上流側接続口61cと、旋回流継手6cの下部に形成された縦排水管4接続用の下流側接続口62cとからなるもので、横引き管6bからの排水は、湾曲流入路61cに沿って曲りながら流入し、旋回しながら下流側接続口62cに接続された縦排水管4へと流れ落ちる。このように旋回流となって流れ落ちると、縦排水管4の中心に空気芯が形成されるため排水管路内の通気が確保される。
尚、縦排水管4の上端に接続するのは大曲りエルボでもよいが、管路内の負圧の発生を緩和するため、上記のような旋回流を発生させる旋回流継手6cが好ましい。
【0041】
次に、上記旋回流継手6cを介して横引き管6bと接続される縦排水管4は、家屋の二階から一階に配設されており、家屋の大きさに合わせた3m程度のものが好適に用いられる。そして、この縦排水管4を途中で水平方向に切断し、切断された上側の縦排水管4の下端を前述したソケット部材1の上部接続口2aに挿入接続すると共に、切断された下側の縦排水管4の上端をソケット部材1の下部接続口2bに挿入接続する。このとき、ソケット部材1を、縦排水管4のあまり下側に設置すると、トイレットペーパーがソケット部材1に到達するまでに落下による空気抵抗で開いてしまって、それより上流側において既に閉塞していることが多いので、ソケット部材1を設置する意味が殆どない。反対に、ソケット部材1を、縦排水管4のあまり上側に設置すると、前述したように、旋回流継手6cによってせっかく形成された旋回流が破壊される恐れが生じるし、また、落下による空気抵抗でのトイレットペーパーの開きも殆どないので、ソケット部材1を設置しても効果が薄く、仮にトイレットペーパーの流路を規制できたとしても、縦排水管4の下端に接続される第二エルボ継手6dに到達する前に、再び落下による空気抵抗で開いてしまう恐れがあるので好ましくない。これらのことを勘案して、本発明のソケット部材1は、図4に示すように、非設置領域D1,D2以外の位置に設置する必要がある。この非設置領域D1,D2を、縦排水管4の上下端に接続されている旋回流継手6cから第二エルボ継手6dまでの距離Dのうち、上から10%及び下から10%に設定すると、旋回流を破壊せずに、且つ、排水管路内が閉塞してしまう前にトイレットペーパーが萎められるので、負圧の発生が緩和され、排水設備5の排水トラップ5aの封水破壊を防止することができる。より好ましくは、非設置領域D1,D2を、縦排水管4の上下端に接続されている旋回流継手6cから第二エルボ継手6dまでの距離Dのうち、上下10%〜30%に設定すると、より顕著な効果を奏する。本実施形態では、縦排水管4が3m程度であるので、旋回流継手6cから下方へ1mの位置にソケット部材1が設置されている。
尚、縦排水管4が3mよりも長い場合は、一旦萎んで集束したトイレットペーパーが、再び落下による空気抵抗で開いてしまうことがあるので、そのような場合には、ソケット部材1を縦排水管4の途中2ヶ所(場合によっては2ヶ所以上)に設置することで対応することができる。
【0042】
以上のような本発明の配管構造は、排水設備5から排出されるトイレットペーパーを含んだ排水は、第一エルボ継手6aを経由して横引き管6bに流入し、旋回流継手6cの湾曲流入路60cに沿って曲りながら流入し、旋回流を発生しながら下流側接続口62cに接続された縦排水管4へと流れ落ちる。このように、旋回流継手6cによって旋回流を発生させると、縦排水管4を流下する排水は、中心に空気芯を形成しながら流下し、管路内の負圧の発生が抑制される。そして、この旋回流が消滅する寸前の位置に、本発明のソケット部材1を設置してあるので、落下による空気抵抗でパラシュートのように開きかけているトイレットペーパーが、ガイド片3の上辺3aに衝突して再び萎んで集束した状態で、第二エルボ継手6dを経由して基礎貫通管6eから家屋の外部へ排出される。従って、屋内の排水管路内の負圧の発生を緩和して、排水設備5の排水トラップ5aの封水破壊を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
1,10,11,12,13 ソケット部材
2 ソケット本体
2a 上部接続口
2b 下部接続口
3,30,31,32,33 ガイド片
3a 上辺
3b 下辺
4 縦排水管
5 排水設備(トイレ)
5a 排水トラップ
6a 第一エルボ継手
6b 横引き管
6c 旋回流継手
60c 湾曲流入路
61c 上流側接続口
62c 下流側接続口
6d 第二エルボ継手(大曲りエルボ)
6e 基礎貫通管
6f 排水桝
7 カバー部材
D 縦排水管に接続される継手間の距離
D1 非設置領域
D2 非設置領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階上から階下に配設された縦排水管の途中に設置されるソケット部材であって、上下に縦排水管との接続部を有するソケット本体の内壁面に、上辺が斜め下方に傾斜したガイド片が略鉛直方向に形成されていることを特徴とするソケット部材。
【請求項2】
上記ガイド片の上辺が、ソケット本体の内壁面から5°〜80°の角度で斜め下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のソケット部材。
【請求項3】
上記ガイド片が、ソケット本体の中心に向って形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のソケット部材。
【請求項4】
上記ガイド片が、ソケット本体の片側に偏って形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のソケット部材。
【請求項5】
縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、下から10%の距離を除いた位置に請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のソケット部材を設置することを特徴とする配管構造。
【請求項6】
縦排水管の上下端に接続される継手間の距離のうち、上下から10%の距離を除いた位置に請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のソケット部材を設置することを特徴とする配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−32656(P2011−32656A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177311(P2009−177311)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】