説明

ソファルコン含有水性液剤

【課題】ソファルコンを含有する水性液剤を提供する。
【解決手段】ソファルコン及び有機アミン(トロメタモール、モノエタノールアミン、N−メチルグルカミンなど)を含有することを特徴とする水性液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソファルコンを含有する水性液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソファルコンは、胃血流量増加作用、胃粘膜修復促進作用、胃組織内プロスタグランジン量増加作用等を有し、胃炎・胃潰瘍治療剤として汎用されている。しかし、ソファルコンは水にほとんど溶けないため、生体内吸収性が悪く、したがって、ソファルコンの溶解性を改善するための技術がいくつか提供されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
もっとも、これらはいずれも内服固形製剤に関するものであり、ソファルコンを水に溶解させて、液剤として提供する可能性を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−335280号公報
【特許文献2】特開2000−86509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ソファルコンを含有する水性液剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、水にソファルコンとともに有機アミン(トロメタモール、モノエタノールアミン、N−メチルグルカミン)を配合することにより、ソファルコンの溶解性が向上し、ソファルコン含有水性液剤を提供しうることを見出した。
【0007】
かかる知見により得られた本発明の態様は、(a)ソファルコン及び(b)有機アミンを含有することを特徴とする水性液剤である。
【0008】
本発明の他の態様は、(a)ソファルコン、並びに(b)トロメタモール、モノエタノールアミン及びN−メチルグルカミンの少なくとも1種、を含有することを特徴とする水性液剤である。
【0009】
本発明の他の態様は、ソファルコン1質量部に対して、トロメタモールを0.5質量部以上含有することを特徴とする水性液剤である。
【0010】
本発明の他の態様は、ソファルコン1質量部に対して、モノエタノールアミンを0.2質量部以上含有することを特徴とする水性液剤である。
【0011】
本発明の他の態様は、ソファルコン1質量部に対して、N−メチルグルカミンを0.5質量部以上含有することを特徴とする水性液剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、難溶性薬物であるソファルコンを含有する水性液剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「ソファルコン」の配合(含有)濃度は適用する疾病の症状に応じて適宜増減することができるが、治療効果の点から、水性液剤全体の0.01〜10.0w/v%であり、0.1〜8.0w/v%が好ましい。
【0014】
「有機アミン」としては、トロメタモール、モノエタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンが挙げられる。これらの中で好ましいのはトロメタモール、モノエタノールアミン及びN−メチルグルカミンである。これら有機アミンは1種を用いるのみでなく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、その配合(含有)量は、ソファルコンを水に溶解させるという点から有機アミンの種類によって異なっているが、例えば、トロメタモールの場合、ソファルコン1質量部に対して、0.5質量部以上であり、モノエタノールアミンの場合、ソファルコン1質量部に対して、0.2質量部以上であり、N−メチルグルカミンの場合、ソファルコン1質量部に対して、0.5質量部以上である。
【0016】
有機アミンは、一般には外用剤等において緩衝剤やpH調節剤等として用いられる成分であるが、ソファルコンという水難溶性の薬物の水溶解性を格段に向上させることが分かった。他の緩衝剤及びpH調節剤等にはかかる作用は認められない(後述の試験例参照)。
【0017】
本発明の水性液剤は、水に所望のソファルコン及び有機アミンを添加して攪拌・溶解させることによって調製される。また、ソファルコンの水溶解性に悪影響を及ぼさない範囲で、エタノール等の有機溶媒、公知の有効成分や各種添加剤を適宜に配合することもできる。
【0018】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0019】
実施例1
ソファルコン 100mg
トロメタモール 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0020】
実施例2
ソファルコン 1000mg
トロメタモール 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0021】
実施例3
ソファルコン 1000mg
トロメタモール 2000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0022】
実施例4
ソファルコン 4000mg
トロメタモール 4000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0023】
実施例5
ソファルコン 6000mg
トロメタモール 4000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0024】
実施例6
ソファルコン 8000mg
トロメタモール 4000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0025】
実施例7
ソファルコン 100mg
モノエタノールアミン 20mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0026】
実施例8
ソファルコン 1000mg
モノエタノールアミン 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0027】
実施例9
ソファルコン 2000mg
モノエタノールアミン 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0028】
実施例10
ソファルコン 1000mg
トリエチルアミン 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0029】
実施例11
ソファルコン 100mg
N−メチルグルカミン 50mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0030】
実施例12
ソファルコン 100mg
N−メチルグルカミン 100mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0031】
比較例1
ソファルコン 100mg
精製水にソファルコン100mgを添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0032】
比較例2
ソファルコン 10000mg
トロメタモール 4000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0033】
比較例3
ソファルコン 100mg
モノエタノールアミン 15mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0034】
比較例4
ソファルコン 100mg
N−メチルグルカミン 40mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0035】
比較例5
ソファルコン 1000mg
水酸化ナトリウム 20mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0036】
比較例6
ソファルコン 1000mg
水酸化ナトリウム 100mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0037】
比較例7
ソファルコン 1000mg
水酸化ナトリウム 700mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0038】
比較例8
ソファルコン 1000mg
ホウ砂 400mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0039】
比較例9
ソファルコン 1000mg
ホウ砂 1000mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0040】
比較例10
ソファルコン 100mg
ポリソルベート80 500mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0041】
比較例11
ソファルコン 100mg
D−ソルビトール 860mg
精製水に各成分を添加後、一定時間攪拌し、精製水で全量を正確に100mLとした。
【0042】
試験例
実施例及び比較例で得られた各水性液剤を、目視により観察し、ソファルコンが溶解しているか否かを確認した。
結果を下表1−1から1−4に示した。
【0043】
なお、判定の基準として、「溶解している」を○、「溶解していない」を×とした。
【0044】
【表1−1】

【0045】
【表1−2】

【0046】
【表1−3】

【0047】
【表1−4】

【0048】
本発明にかかる実施例1〜12の水性液剤は、ソファルコンが溶解しており澄明な水溶液であった。一方、比較例1〜11の水性液剤はソファルコンが溶解しておらず水溶液中に分散していた。
【0049】
トロメタモール、モノエタノールアミン、N−メチルグルカミン及びトリエチルアミンは、通常、緩衝剤又はpH調節剤等として用いられる成分であるが、ソファルコンの水溶解性を格段に向上させることが明らかとなった。一方、他の緩衝剤(例えば,ホウ砂(比較例8及び9))及びpH調節剤(例えば,水酸化ナトリウム(比較例5、6及び7))では、ソファルコンの水溶解性を向上させることができず、ソファルコン含有水性液剤の提供が困難であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明により、ソファルコンを含有する水性液剤、例えば、点眼剤、皮膚外用液剤、内服液剤、注射剤等の提供が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ソファルコン及び(b)有機アミンを含有することを特徴とする水性液剤。
【請求項2】
(a)ソファルコン、並びに(b)トロメタモール、モノエタノールアミン及びN−メチルグルカミンの少なくとも1種、を含有することを特徴とする水性液剤。
【請求項3】
ソファルコン1質量部に対して、トロメタモールを0.5質量部以上含有することを特徴とする水性液剤。
【請求項4】
ソファルコン1質量部に対して、モノエタノールアミンを0.2質量部以上含有することを特徴とする水性液剤。
【請求項5】
ソファルコン1質量部に対して、N−メチルグルカミンを0.5質量部以上含有することを特徴とする水性液剤。

【公開番号】特開2010−132643(P2010−132643A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−243181(P2009−243181)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】