説明

ソフトウェアを同時配布するための配布プログラム、配布方法及び配布システム

【課題】配布先の数にあまり依存せずに、全体として迅速に、ソフトウェアやデータを同時配布することができる。
【解決手段】 このソフトウェア同時配布プログラム3は、コンピュータを制御して、配布先情報と、配布対象のソフトウェアのサイズ情報と、基本OS7の最大ネットワーク転送量等に基づいて、基本OS7上に最適個数の仮想OS71、72を作成し、作成した各仮想OS71、72上にグループ配布部81、82をインストールし、各グループ配布部81、82に、配布先41、42、43を割り当て、配布すべきソフトウェア21、22を指定すると共に、配布方法を設定し、かつ、各グループ配布部81、82は、各仮想OS71、72上で同時に動作して、指定されたソフトウェア21、22を、設定された配布方法に従って、各配布先41、42、43へ同時に配布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソフトウェアを同時配布するための配布プログラム、配布方法及び配布システムに係り、詳しくは、基本OS上に最適個数の仮想OSを作成し、複数の配布先にネットワークを介して、ソフトウェアやデータを同時配布するためのソフトウェア同時配布プログラム、配布方法及び配布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介して、ソフトウェアやデータを複数の配布先に一度の操作で配布(送信)する方法として、従来から、同報送信する技術が知られている(例えば、特開2003−264679号公報(特許文献1)参照)。しかしながら、同報通信は、同一のソフトウェアやデータを、一度の操作で、複数の配布先に配布できるとは言っても、1対1の通信であるユニキャストで配布することになるため、同じ内容のパケットでも、配布先の数だけのパケットを順番に送信する必要があり、その時間的コストは、配布先の数に比例して大きくなる、という不都合がある。
【0003】
これに対して、1対複数同時通信であるマルチキャストによれば、配布先の数によらず、一つのパケットを送信するだけで済む。それゆえ、配布先が多数のときは、マルチキャストによる配布なら、ネットワークへの負荷を大幅に軽減することができる。従来、この種のマルチキャスト配布システムとしては、特開2003−304287号公報(特許文献2)に記載のソフトウェア配布システムが知られている。特許文献2に記載の配布システムでは、サーバは、配布先へのソフトウェア配布を制御する配布制御部、システム管理者が配布を指示したソフトウェアをソフトウェア保管庫から取り出し、配布先へマルチキャストによって送信するマルチキャストソフトウェア送信部、システム管理者からの配布要求の指示を受付け、配布対象のソフトウェア、及び配布先の情報をもつ制御ファイルを作成する配布指示受付部を備えていて、配布要求の数が、一定の時間内に予め定められた数以上になれば、多数の配布先にマルチキャストでソフトウェアを配布する構成となっている。
【0004】
しかしながら、ルータがマルチキャスト未対応の場合、配布先毎に異なるソフトウェアや異なるデータを配布する場合はともかく、一部の配布先には、別種のソフトウェアを配布しなければならない場合や、異種のネットワークを介して配布しなければならない場合には、マルチキャストによる配布に全面的に頼ることができないので、複数の配布先に1つ1つ順番でユニキャスト配布することになり、その時間的コストは配布先の数に比例して大きくなる。
【0005】
ところで、コンピュータシステムでは、同時に複数の処理要求に対して、親プロセスが、複数の子プロセスを生成して処理を実行させるプロセス管理方式が従来から知られている(特開2001−282555号公報(特許公報3)、特開2005−322243号公報(特許公報4))。そこで、この種のプロセス管理方式で得られる複数の子プロセスを同時に動作して、複数の配布先に異なるソフトウェアやデータを同時配布させるようにすることもできる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−264679号公報(段落0027)
【特許文献2】特開2003−304287号公報(段落0016、段落0017、図2、図4)
【特許文献3】特開2001−282555号公報
【特許文献4】特開2005−322243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のプロセス管理方式では、特許文献3に記載があるように、デッドロックが発生して、プロセスの処理が進めなくなるのを防止するために、生成される子プロセスの最大許容個数が定められている。
しかしながら、最大許容個数まで生成された複数の子プロセスに同時配布を実行させようとしても、通常の場合、最大許容個数は、同時配布システムの運用(スループット)を高めるために最適化された個数とは言えないので、全体としての配布速度の効率化、したがって、配布に要する時間的コストの削減化を、期待通りには、達成することができない、という問題が懸念される。
【0008】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、基本OS上に最適個数の仮想OSを作成し、複数の配布先に、効率良く、ソフトウェアやデータを同時配布することができるソフトウェア同時配布プログラム、配布方法及び配布システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、制御部と配布部とを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するためのコンピュータ読み取り可能なソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記制御部は、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、作成した前記各仮想OS上に前記配布部をグループ配布部としてインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、前記各グループ配布部は、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又はデータを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又はデータを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴としている。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記各グループ配布部が、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御部は、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布部をアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記制御部が、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを前記格納部から取り出すための読出しアドレスを共有するデータ共有部が付加されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、互いに分離された制御サブプログラムと配布サブプログラムとを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するためのコンピュータ読み取り可能なソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記制御サブプログラムは、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、作成した前記各仮想OS上に前記配布サブプログラムをグループ配布サブプログラムとしてインストールし、インストールされた前記各グループ配布サブプログラムに、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、前記各グループ配布サブプログラムは、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又は前記データを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又は前記データを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴としている。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記各グループ配布サブプログラムが、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御サブプログラムは、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布サブプログラムをアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴としている。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記制御サブプログラムが、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと前記各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴としている。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラムに係り、前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴としている。
【0018】
請求項10記載の発明は、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するソフトウェア同時配布方法に係り、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、作成した前記各仮想OS上にグループ配布部をインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定した後、前記各グループ配布部を、前記各仮想OS上で同時に動作させて、前記各グループ配布部に、指定された前記ソフトウェア又は前記データを格納部から取り出させ、取り出した前記ソフトウェア又は前記データを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布させることを特徴としている。
【0019】
また、請求項11記載の発明は、請求項10記載のソフトウェア同時配布方法に係り、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴としている。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項10記載のソフトウェア同時配布方法に係り、前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴としている。
【0021】
請求項13記載の発明は、制御部と配布部とを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するソフトウェア同時配布システムに係り、前記制御部は、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、作成した前記各仮想OS上に前記配布部をグループ配布部としてインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、
前記各グループ配布部は、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又はデータを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又はデータを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴としている。
【0022】
また、請求項14記載の発明は、請求項13記載のソフトウェア同時配布システムに係り、前記各グループ配布部が、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御部は、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布部をアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴としている。
【0023】
請求項15記載の発明は、請求項13記載のソフトウェア同時配布システムに係り、前記制御部が、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴としている。
【0024】
請求項16記載の発明は、請求項13記載のソフトウェア同時配布システムに係り、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを格納する格納部として、データ共有部が付加されていることを特徴としている。
【0025】
請求項17記載の発明は、請求項13記載のソフトウェア同時配布システムに係り、前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
この発明の構成によれば、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、基本OS上に最適個数の仮想OSが作成されるので、配布先の数にあまり依存せずに、全体として迅速に、ソフトウェアやデータを同時配布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
発明を実施するための最良の形態としてのソフトウェア同時配布システムにおいて用いられるソフトウェア同時配布プログラムは、コンピュータを制御して配布動作処理を実行させる制御部と配布部とを有している。
前記制御部は、少なくとも、配布先アドレス等の配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類やサイズ情報と、前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量等のリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に最適個数の仮想OSを作成し、作成した前記各仮想OS上に前記配布部をグループ配布部としてインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、ユニキャストによるかマルチキャストによるか等の配布方法を設定し、かつ、前記各グループ配布部は、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又はデータを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又はデータを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布する構成となっている。
【0028】
また、前記各グループ配布部が、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御部は、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布部をアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除する構成となっている。
【実施例1】
【0029】
図1は、この発明の第1実施例であるソフトウェア同時配布システムの全体構成を概略示す概念図、図2は、同ソフトウェア同時配布システムを構成するサーバの体構成を概略示す電気的ブロック図、また、図3は、同ソフトウェア同時配布システムの動作を説明するための図である。
【0030】
まず、システムの全体構成から説明する。
この例のソフトウェア同時配布システムは、図1、図2及び図3に示すように、ハードウェアとしてのサーバ1と、このサーバ1を制御して各種のソフトウェアプログラム(以下、単にソフトウェアという)21、22の同時配布を実行させる処理手順をプログラミング言語で記述したソフトウェア同時配布プログラム3と、ソフトウェア21、22の配布先である複数の配布先端末41、42、43と、ソフトウェア同時配布プログラム3と配布先端末41、42、43とを相互に接続するためのLAN(Local Area Network)等のネットワーク51、52と、クライアントの依頼に基づいて、配布先端末41、42、43への各種ソフトウェア21、22の配布を指示するシステム管理者6とから概略構成されている。
【0031】
次に、システムの構成各部について説明する。
この例で用いられるハードウェアとしての上記サーバ1は、図2に示すように、システム管理者6によって操作される入力装置11と、CPU(中央処理装置)とROMやRAM等からなり、基本OS(オペレーティング・システム)環境で動作する演算処理装置(コンピュータ本体)12と、ソフトウェア同時配布プログラム3を記憶する記憶装置13と、複数のネットワーク51、52に接続して、演算処理装置12から複数の配布先端末41、42、43へデータ同時送信(ソフトウェアを配布)するための例えばモデム等の出力装置14と、配布対象としてのソフトウェア21、22を格納する共有記憶装置15とから概略構成されている。
【0032】
この例で用いられるソフトウェアとしての上記ソフトウェア同時配布プログラム3は、図1及び図2に示すように、該プログラム実行のために演算処理装置12の動作を制御する制御部31と、ソフトウェア21、22を配布する処理手順を記述した配布部32と、配布するソフトウェア21、22の共通の格納先(共有記憶装置15内の記憶エリア)を記述したデータ共有部33とから構成されている。
【0033】
上記制御部31は、図1に示すように、配布処理の詳細を決定する配布方法決定手段311と、基本OS7上に必要な数(最適個数)の仮想OS71、72を作成して制御すると共に、配布動作完了後の仮想OS71、72を削除する仮想OS制御手段312とを有している。ここで、仮想OS71、72が作成されると、仮想的に複数のOSが存在しているかのように見せかけることができ、このモードを利用して、複数の仮想OSを同時に実行できる。
上記配布方法決定手段311は、同図に示すように、配布先アドレス等の配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェアに関する量的種別的情報と、基本OS7のリソース情報とに基づいて、仮想OS71、72の最適個数を算出して決定すると共に、各仮想OS71、72毎に、適切な配布方法を選択する構成となっている。ここで、リソース情報とは、サーバ1が使用するメモリや共有記憶装置15、モデム等の出力装置14等の周辺機器等の能力・容量などに関する情報を意味している。
【0034】
詳細に言えば、制御部3において、配布方法決定手段311は、システム管理者6によって指示された配布先端末41、42、43のIPアドレス等の位置情報と、配布対象としてのソフトウェア21、22のサイズや種類等の量的種別的情報と、基本OS7と各配布先端末41、42、43との最大ネットワーク転送量等を考慮して、予め設定された演算式を用いて、あるいはテーブルを参照して、仮想OS71、72の最適個数や適切な配布方法を選択する。ここで、配布方法として、例えば、ユニキャストによる配布やマルチキャストによる配布を挙げることができる。
【0035】
仮想OS制御手段312は、上記配布方法決定手段311で算出された仮想OS71、72の最適個数と、各仮想OS71、72毎に決定された配布方法とに基づいて、基本OS7上に複数の仮想OS(この例では、仮想OS71と仮想OS72)を作成し、作成された各仮想OS71、72に配布部32(図2)をグループ配布部81、82としてインストールする一方、配布完了後、制御部31はインストールした各グループ配布部81、82をアンインストールして、作成した仮想OS71、72を削除する構成となっている。
【0036】
上記したように、配布部32(図2)は、図1及び図3に示すように、制御部31の仮想OS制御手段312によって作成された仮想OS71、72上に複数のグループ配布部81、82としてインストールされ、データ共有部33を参照して、配布対象としてのソフトウェア21、22を共有記憶装置15(図2)の記憶エリアから取り出し、制御部31の配布方法決定手段311の選択決定に従って、内包するそれぞれの配布手段により、ネットワーク51、52を介して、指定された配布先端末41、42、43に同時配布動作を実行できる構成となっている。
【0037】
次に、図2及び図3を参照して、この例の動作について説明する。
ソフトウェア同時配布プログラム3は、演算処理装置12に読み込まれ、演算処理装置12の動作を制御する。演算処理装置12は、ソフトウェア同時配布プログラム3の制御により、制御部31の配布方法決定手段311、仮想OS制御手段312、仮想OS71、72上のグループ配布部81、82として、以下の処理を実行する。
【0038】
システム管理者6の操作により、入力装置11から、配布先端末41のIPアドレス等の位置情報と、この配布先端末41に対して配布しようとするソフトウェア22のサイズや種類等の量的種別的情報とが与えられると共に、配布先端末42、43のIPアドレス等の位置情報と、これらの配布先端末42、43に対して配布しようとするソフトウェア21のサイズや種類等の量的種別的情報とが与えられると、制御部3の配布方法決定手段311は、与えられた配布先端末41、42、43のIPアドレス等の位置情報と、配布対象としてのソフトウェア21、22のサイズや種類等の量的種別的情報と、基本OS7と各配布先端末41、42、43との最大ネットワーク転送量等を考慮して、予め設定されたアルゴリズムを演算して、あるいは、テーブルを参照して、仮想OS71、72の最適個数や適切な配布方法を選択する。ここで、配布方法として、例えば、ユニキャストによる配布やマルチキャストによる配布を挙げることができる。配布方法決定手段311は、例えば、配布先端末42、43については、配布対象として同一のソフトウェア21が指定されているので、これらを一つのグループにまとめて、仮想OS82を実行させて、マルチキャストによって配布することを決定する。一方、配布方法決定手段311は、例えば、配布先端末41については、配布先端末42、43向けのソフトウェア21とは異なるソフトウェア22が指定されているので、配布先端末42、43とは仮想OS81を実行させて、ユニキャストによって配布することを決定する。
【0039】
仮想OS制御手段312は、上記配布方法決定手段311で算出された仮想OS71、72の最適個数と、各仮想OS71、72毎に決定された配布方法とに基づいて、基本OS7上に複数の仮想OS(この例では、仮想OS71と仮想OS72)を作成し、作成された各仮想OS71、72に配布部32(図2)をグループ配布部81、82としてインストールする。
【0040】
仮想OS71上にインストールされたグループ配布部81は、配布方法決定手段311によってソフトウェア22が配布対象として指定されると、図3に示すように、データ共有部33を参照して、指定されたソフトウェア22を共有記憶装置15(図2)の記憶エリアから取り出し、制御部31の配布方法決定手段311の選択決定に従って、内包する配布手段により、ネットワーク51を介して、配布先として割り当てられた配布先端末41にユニキャストにより配布する。
【0041】
仮想OS71上に生成されたグループ配布部82は、配布方法決定手段311によってソフトウェア21が配布対象として指定されると、図3に示すように、データ共有部33を参照して、指定された共通のソフトウェア21を共有記憶装置15(図2)の記憶エリアから取り出し、制御部31の配布方法決定手段311の選択決定に従って、内包する配布手段により、マルチキャスト対応の共通のネットワーク52を介して、配布先として割り当てられた配布先端末42、43にマルチキャストにより配布する。仮想OS71上のグループ配布部81によるユニキャスト配布と、仮想OS72上のグループ配布部82によるマルチキャスト配布とは、同時的に実行される。
【0042】
仮想OS制御手段312は、ソフトウェア21、22の配布が完了した後、仮想OS71、72上にインストールされたグループ配布部81、82をアンインストールして、基本OS上に作成された仮想OS71、72を削除する。仮想OS71、72の削除は、一括削除でも良いし、ソフトウェアの配布が完了した仮想OSから、順に削除するようにしても良い。このようにすれば、削除された1部の仮想OSに代えて、同時配布プログラムとは目的の異なる別種のプログラムにより、別種の仮想OSが作成されるようにしても良い。
【0043】
このように、この例の構成よれば、同種又は別種の単数又は複数のソフトウェアを複数の配布先端末に配布する場合、同時に配布を行うことで配布にかかる時間的コストを削減できる。特に配布先の数が多ければ多いほど、この効果は顕著である。
また、仮想OSを用いてソフトウェアの配布を行うため、最大ネットワーク転送量等のリソース情報を勘案した配布処理を行うことができる。
【実施例2】
【0044】
図4は、この発明の第2実施例であるソフトウェア同時配布システムの全体構成を概略示す概念図、また、図5は、同ソフトウェア同時配布システムの動作を説明するための図である。
この第2実施例のソフトウェア同時配布プログラムの構成が、上述した第1実施例のそれと大きく異なるところは、第1実施例では、ソフトウェア同時配布プログラム3が、制御部31と、配布部32と、データ共有部33とから構成されているのに対して、この例のソフトウェア同時配布プログラムは、図4及び図5に示すように、互いに分離した制御サブプログラム31aと配布サブプログラム(グループ配布サブプログラム81a、81b)と、データ共有部3aとからなるようにした点である。
それゆえ、図4及び図5において、図1及び図3の構成部分と同一の各部には、同一の符号を付し、図1及び図3の構成部分と対応する各部には、対応する符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。
【0045】
この例の制御サブプログラム31aが、第1実施例の制御部31と略同様の機能を有しており、この例の配布サブプログラム(グループ配布サブプログラム81a、81b)が、第1実施例の配布部32(グループ配布部81、82)と略同様の機能を有している。
それゆえ、この例の構成によっても、上述の第1実施例で述べたと略同様の効果を得ることができる。
【0046】
以上、この発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
例えば、ネットワークはLAN(Local Area Network)に限らず、WANでも良く、もちろん、インターネットでも良い。配布対象はソフトウェアに限らずデータでも良い。また、上述の実施例では、グループ配布部が2つインストールされた場合について述べたが、もちろん、複数であれば、2つに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1実施例であるソフトウェア同時配布システムの全体構成を概略示す概念図である。
【図2】同ソフトウェア同時配布システムを構成するサーバの体構成を概略示す電気的ブロック図である。
【図3】同ソフトウェア同時配布システムの動作を説明するための概念図である。
【図4】この発明の第2実施例であるソフトウェア同時配布システムの全体構成を概略示す概念図である。
【図5】同ソフトウェア同時配布システムの動作を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0048】
1 サーバ(コンピュータ)
11 入力装置
12 演算処理装置
13 記憶装置
14 出力装置
15 共有記憶装置(格納部)
21、22 配布対象としてのソフトウェア
3 ソフトウェア同時配布プログラム
31 制御部
311 配布方法決定手段
312 仮想OS制御手段
32 配布部
81、82 グループ配布部
33、33a データ共有部
41、42、43 配布先端末(配布先、ユーザ端末)
7 基本OS
71、72 仮想OS
51、52 ネットワーク

31a 制御サブプログラム
81a、81b グループ配布サブプログラム(グループ配布サブプログラム)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と配布部とを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するためのコンピュータ読み取り可能なソフトウェア同時配布プログラムであって、
前記制御部は、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、
作成した前記各仮想OS上に前記配布部をグループ配布部としてインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、
前記各グループ配布部は、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又はデータを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又はデータを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴とするソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項2】
前記各グループ配布部が、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御部は、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布部をアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴とする請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項3】
前記制御部は、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴とする請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項4】
配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを前記格納部から取り出すための読出しアドレスを共有するデータ共有部が付加されていることを特徴とする請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項5】
前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴とする請求項1記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項6】
互いに分離された制御サブプログラムと配布サブプログラムとを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するためのコンピュータ読み取り可能なソフトウェア同時配布プログラムであって、
前記制御サブプログラムは、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、
作成した前記各仮想OS上に前記配布サブプログラムをグループ配布サブプログラムとしてインストールし、インストールされた前記各グループ配布サブプログラムに、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、
前記各グループ配布サブプログラムは、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又は前記データを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又は前記データを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴とするソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項7】
前記各グループ配布サブプログラムが、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御サブプログラムは、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布サブプログラムをアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴とする請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項8】
前記制御サブプログラムは、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと前記各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴とする請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項9】
前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴とする請求項6記載のソフトウェア同時配布プログラム。
【請求項10】
基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するソフトウェア同時配布方法であって、
少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、
作成した前記各仮想OS上にグループ配布部をインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定した後、
前記各グループ配布部を、前記各仮想OS上で同時に動作させて、前記各グループ配布部に、指定された前記ソフトウェア又は前記データを格納部から取り出させ、取り出した前記ソフトウェア又は前記データを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布させることを特徴とするソフトウェア同時配布方法。
【請求項11】
少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴とする請求項10記載のソフトウェア同時配布方法。
【請求項12】
前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴とする請求項10記載のソフトウェア同時配布方法。
【請求項13】
制御部と配布部とを有し、基本OS環境で動作するコンピュータを制御して、配布先としての複数のユーザ端末に同一又は別異のネットワークを介して同種又は別種のソフトウェア又はデータを同時配布するソフトウェア同時配布システムであって、
前記制御部は、少なくとも、配布先情報と、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データのサイズ情報と、前記基本OSのリソース情報とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の仮想OSを作成し、
作成した前記各仮想OS上に前記配布部をグループ配布部としてインストールし、インストールされた前記各グループ配布部に、所定のグループを構成するものとしてまとめられる単数又は複数の前記配布先を割り当て、配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを指定すると共に、所定の配布方法を設定し、かつ、
前記各グループ配布部は、前記各仮想OS上で同時に動作して、指定された前記ソフトウェア又はデータを格納部から取り出し、取り出した前記ソフトウェア又はデータを、設定された前記配布方法に従って、割り当てられた前記各配布先へ配布することを特徴とするソフトウェア同時配布システム。
【請求項14】
前記各グループ配布部が、前記ソフトウェア又は前記データの配布を完了したときは、前記制御部は、前記コンピュータを制御して、前記各グループ配布部をアンインストールして、作成した前記仮想OSを削除することを特徴とする請求項13記載のソフトウェア同時配布システム。
【請求項15】
前記制御部は、少なくとも、前記配布先情報としての配布先アドレスと、配布対象の前記ソフトウェア又は前記データの種類及び前記サイズ情報と、前記リソース情報としての前記基本OSと各配布先との最大ネットワーク転送量とに基づいて、前記基本OS上に所定個数(複数)の前記仮想OSを作成することを特徴とする請求項13記載のソフトウェア同時配布システム。
【請求項16】
配布すべき前記ソフトウェア又は前記データを格納する格納部として、データ共有部が付加されていることを特徴とする請求項13記載のソフトウェア同時配布システム。
【請求項17】
前記所定の配布方法として、ユニキャスト配布、及びマルチキャスト配布が選択肢として組み込まれていることを特徴とする請求項13記載のソフトウェア同時配布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−272848(P2007−272848A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101274(P2006−101274)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】