説明

ソフトカプセルを含むパック

本発明は、パッケージング材料及びソフトカプセルを含むパック、ソフトカプセルの安定化方法、及び前記パックの生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージング材料及びソフトカプセルを含むパック、ソフトカプセルの安定化方法、及び前記パックの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルは、カプセルの殻に存在する例えばグリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールのような軟化剤の添加により、一定の弾性及び柔軟性を有し、例えば薬剤、補助食品及び/又は機能性原料のような種々の物質の投与用として使用されるカプセルである。ソフトカプセルは、例えばゼラチン又はでんぷんをベースとして生成できる。ゼラチンベースのソフトカプセルは、長い間ソフトゼラチンカプセルとして知られ、種々の供給業者から市販されている。でんぷんベースのソフトカプセルは、比較的新しく開発されたものであり、その例はVegaGels(商標)という商品名でSwiss Caps(スイス)によって市販されているソフトカプセルである。
【0003】
液体又は半固体物質がソフトカプセルによって投与されるべきである場合、それらは直接カプセルに入れられ、固体は最初に液体又は半固体のベース(例えば、脂肪、油、ワックス混合物又はポリエチレングリコールのような)に溶解又は懸濁され、乳化剤と混合してもよい。投与方法(例えば、経口、経直腸又は経膣的のような)に応じて、ソフトカプセルは種々の形態をとることができ、例えば円形、卵型、長方形又は魚雷のような形状(torpedo-shaped)であってもよい。ソフトカプセルは、従来技術において知られた方法、例えばSchererプロセス、Accogelプロセス又は小滴若しくはブローイングプロセスによって生成できる。
【0004】
ソフトカプセルの殻に存在する柔軟剤成分の軟化作用は、本質的にその吸湿性に基づいており、カプセルの殻への水の混入と関連している。室温(22℃/45〜65%RH(相対湿度))で、ソフトカプセルの水分含量は約7〜8重量%である。水分含量がこれよりも顕著に少ない場合には、例えば過度の乾燥保管又は乾燥により、カプセルの殻の脆化をもたらし、カプセル壁の壊れやすさの増大及びクラック形成を伴う。水分含量がこれよりも顕著に多い場合には、例えば過度な湿潤保管により、カプセルの殻の膨潤及びソフトカプセルの固着が起こる。過度の乾燥保管及び過度の湿潤保管は両方とも、投与される物質及び存在する別の助剤に予測できない影響を与え、このことは、ソフトカプセルの服用によって意図される、存在する物質の供給がもはや保証できないことを意味する。環境の影響を変えると、ソフトカプセルの安定性に対する全く予測できない影響が生じ、これは、その保管寿命、すなわちソフトカプセルが目的どおりに摂取されるように、満たされなければならない、それらを適用するそれぞれの仕様の範囲内である期間がもはや必要な確実性で予測できないことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カプセルの殻の脆化並びに膨潤及び固着によって生じる質的損失を避け、普及した結果(as prevail)、例えば気候帯III及びIVにおける、及び大気湿度が大きく変化する場合において、高温とともに起こりうる高乾燥、高大気湿度下で、ソフトカプセルの保管寿命を顕著に延長する簡単かつ安価な方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚いたことに、前記目的は、ソフトカプセルを、その内壁の領域の少なくとも一部に吸湿剤及び少なくとも1つのチャネル形成剤が埋め込まれたパッケージング材料に導入することによって達成された。したがって、本発明は、内壁内/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器と、少なくとも1つのソフトカプセルとを含み、ソフトカプセルが前記容器内に存在するパックに関する。
【0007】
驚いたことに、吸湿剤を含む容器には、乾燥作用をもたらす薬剤が存在するが、ソフトカプセルの保管は保管寿命の延長をもたらす。これは、ソフトカプセルの乾燥が、水の除去により、正確にカプセルの殻の脆化及び脆弱又はクラッキングさえ、すなわち本発明によって回避される状態をもたらすからである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施態様の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
有利な実施態様によれば、本発明のパックはソフトカプセルとしてソフトゼラチンカプセルを含む。したがって、本発明は、存在するソフトカプセルがソフトゼラチンカプセルであることを特徴とするパックに関する。
【0010】
さらに有利な実施態様によれば、本発明のパックはでんぷんベースのソフトカプセルとして含む。したがって、本発明は、存在するソフトカプセルがでんぷんベースのソフトカプセルであることを特徴とするパックに関する。
【0011】
前記容器は再び閉じることができ、例えば柱状又は立方形のような任意の空間的形状を有することができるが、それは内部にソフトカプセルを収容するのに十分に大きいことを条件とする。
【0012】
再び閉じることができることとは、繰り返し、すなわち少なくとも1回、好ましくは何度も、特に好ましくは少なくとも容器に存在するソフトカプセルの数に相当する回数程度、容器を開き、そして再度閉じることができることを意味する。前記容器は、各開封及び密閉操作後に、水分及び気体の容器内部への侵入が効果的に阻止される程度にしっかりと密封される。
【0013】
容器の開封及び密封は、容器に適合させたしっかりと密封するクロージャーによって行われる。容器の開封及び密閉を繰り返した後でさえ、気体及び/又は水分が密閉状態で容器の内部に浸透することができないか、又は極端に少ない量でのみ浸透することを保障する限り、すべての種類のクロージャーが使用できる。
【0014】
本発明の実施態様によれば、ふたをクロージャーとして使用する。ふたの例としては、スクリューキャップ、容器の上端で反転するキャップ、又は容器の内部に導入されるキャップが挙げられる。例えば、立方形のような角を有する特別な形状の場合、開口部の角及び適合するふたは、また気体及び水分に対する容器の密閉度(tightness)を高めるために少し丸くされる。
【0015】
好ましい実施態様によれば、容器は立方形の特別な形状を有し、角を丸くし、容易に積み重ねられる。この種類の実施態様は図1に一例として記載される。容器は、その内側に面する側面が、少なくともその領域の一部を覆うように、少なくとも1つのチャネル形成剤を少なくとも1つの吸湿剤とともに含む壁(2)を有し、丸くした角(7)を有し、クロージャーとしてふた(1)を有する。
【0016】
容器内に存在する吸湿剤及びチャネル形成剤は、容器を形成するポリマーの内壁に直接一緒に存在させてもよく、又はポリマー容器の内壁に層として一緒に適用しても良い。同様に、吸湿剤及びチャネル形成剤は、インレー(inlay)に埋め込んでも良く、インレーは挿入物として容器に導入され、容器の内壁の少なくとも一部はそれによって覆われる。
【0017】
内壁は容器の壁の内側に面する表面を、すなわちその中に存在するソフトカプセルと接する容器の表面を意味する。
【0018】
容器用として適した材料はポリマーである。吸湿剤及びチャネル形成剤との混合物で使用できるポリマーは、特に、例えばポリオレフィンのような熱可塑性樹脂であり、例えばポリエチレン及び/又はポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−メタクリラートコポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ無水物、ポリアクリラートニトリル、ポリスルホナート、ポリエステルアミド、ポリアクリラートエステル、プロピレン−無水マレイン酸、ポリエチレン−無水マレイン酸、ポリエチレン−ウレタン、ポリエチレン−エチルビニルアルコール、ポリエチレン−ナイロン及び/又はポリウレタンが挙げられる。内面に吸湿剤及びチャネル形成剤を有する壁は、ポリマー、チャネル形成剤及び吸湿剤の混合物の合計重量を基準として、10〜90重量%のポリマー含有量を有する。
【0019】
存在できる吸湿剤は、原則として乾燥剤、すなわち水分結合バインダーであればどのような種類でもよい。乾燥剤の3つのグループを説明する。
【0020】
第1のグループは、水と水和物を形成する化学物質を含む。この種類の化学物質の例は、無水塩であり、水又は水分を吸収する傾向があり、そのプロセスで安定な水和物を形成する。水分を結合し、その遊離は化学反応によって防止される。
【0021】
乾燥剤の第2のグループは、反応性である物質を含む。前記物質は、新しい物質を形成することによって水又は水分と反応する。新しく形成された物質は、通常低温で安定であり、高いエネルギーを消費することによってのみ可逆である。この種類の乾燥剤は、主として溶媒を乾燥するために使用され、それら自体水分が減少した状態を保たなければならないポリマー中の吸湿性物質として使用される。
【0022】
乾燥剤の第3のグループは、物理吸着によって水分を結合する。乾燥剤は、水分を引く細かい細孔を有する粒子を含む。乾燥剤における細孔の孔のサイズ及びその密度は吸収特性を決定する。この種類の乾燥剤の例は、モレキュラーシーブ、シリカゲル、例えば赤ちゃんのオムツで使用されるもののような特定の合成ポリマー、及びでんぷんである。第3のグループの乾燥剤は、実質的に不活性であり、水に不溶であるため、容器内に存在することが好ましい。特に好ましくは、3〜15Åの孔のサイズを有するモレキュラーシーブ及び/又は24Åの孔のサイズを有するシリカゲルである。
【0023】
適したチャネル形成剤は、例えばポリグリコール、エチルビニルアルコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、N-メチルピロリドン、多糖類、糖類及び/又は糖アルコールのような親水性物質である。好ましいポリグリコールはポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールである。使用できる糖類は、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース及び/又はフルクトースである。適した糖アルコールは、例えばマンニトール、ソルビトール、ヘキシトール、ズルシトール、キシリトール、リビトール及び/又はエリトロールである。多糖類は、例えばデキストリン及び/又は加水分解でんぷんを意味する。
【0024】
吸湿剤及びチャネル形成剤を有する内壁において、チャネル形成剤は、ポリマー、チャネル形成剤及び吸湿剤の混合物の合計重量を基準として、10〜40重量%の比率を有することができる。
【0025】
吸湿剤及びチャネル形成剤は、容器の内壁の表面の一部に、又は全領域にわたって埋め込まれる。領域の一部に、とは、内壁を形成する容器の全領域の少なくとも一部が吸湿剤及びチャネル形成剤を含むことを意味する。
【0026】
全領域にわたってとは、内壁を形成する容器の全領域が吸湿剤及びチャネル形成剤を含むことを意味する。有利な実施態様によれば、吸湿剤及びチャネル形成剤は、容器の内側の全表面領域を基準として、内壁の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも90%で存在する。
【0027】
吸湿剤及びチャネル形成剤を含み、本発明のパック用容器として適したポリマーから形成される容器は、従来技術において知られており、例えばWO 97/32663 A1、EP 1000873 A2及びWO 03/086900 A1、EP 1421991 A1に記載されている。本発明のパックにおいて使用できる容器は、市販されており、例えばCapitol Specialty Plastics Inc.(2039 McMillan Street Auburn, Alabama, USA)から商品名Activ-Vialで、又はSud Chemie(Ostenrieder Str. 15, 85368 Moosburg, Germany)から商品名2 AP Multipolymerで入手可能である。
【0028】
本発明のパックは、内壁中/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器にソフトカプセルを入れ、次いで容器を密封することによって形成される。したがって、本発明は、またパックの形成方法に関し、この形成方法は、内壁中/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器にソフトカプセルを導入し、次いで容器を密封することを特徴とする。
【0029】
本発明のパックは、その中に存在するソフトカプセルの保管寿命を延ばす。したがって、本発明は、またソフトカプセルの保管寿命を延ばす方法に関し、この方法は、内壁中/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器にソフトカプセルを導入し、次いで容器を密封することを特徴とする。
【0030】
本発明のパックの安定化作用は、ソフトカプセルに対する容器の影響に基づいており、ソフトカプセルは長い保管寿命で利用できる。このように、本発明の作用を達成するためには、ソフトカプセルが容器内に存在すること、すなわちソフトカプセルと容器とがともにパックの形態であることが必要である。
【0031】
ソフトカプセルの殻に対する安定化作用以外にも、本発明のパックにおいて、中に存在する活性化合物及び/又は助剤、すなわち全製剤の安定化をもたらす。これは、特に存在する活性化合物及び/又は助剤が水分に敏感である場合に当てはまる。このように、パック中のソフトカプセル中に好適に存在する感湿活性化合物の例は、ホルモン又はタンパク質、ビタミン、細胞、例えばプロバイオティック培養物のような多くの医薬活性化合物である。
【0032】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
従来のパッケージング材料中のソフトカプセルと比較した本発明のパック中のソフトカプセルの安定性の調査
マルチビタミン剤のソフトカプセル(活性化合物組成物及び下記のカプセルの殻)を、PVC 250μm+40g/m2のPVDCから作られ、アルミホイル(20μm)でヒートシールした熱成型したキャビティフィルム及び内壁中/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤(タイプ:M-3006-16 Activ-Vial)(内壁に1.92gの容量を有するモレキュラーシーブが埋め込まれている)とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器に別々導入した。
【0034】
マルチビタミン剤のソフトカプセルを含むブリスター(blister)及び容器を40℃及び75%相対湿度(RH)で保管し、所定時間後保管場所から取り出し、その外観について目視で評価し、存在する活性化合物の量に関して分析した。結果を表1及び2にまとめる。
【0035】
【表1】

*ソフトカプセルの殻の組成:ゼラチン209.76mg、グリセロール85%65.83mg、ソルビトール溶液70%44.21mg、黒色酸化鉄1.22mg、赤色酸化鉄3.89mg。
【0036】
【表2】

*ソフトカプセルの殻の組成:ゼラチン209.76mg、グリセロール85%65.83mg、ソルビトール溶液70%44.21mg、黒色酸化鉄1.22mg、赤色酸化鉄3.89mg。
【0037】
(実施例2)
本発明のパック中のソフトカプセルの安定性の調査
マルチビタミン剤のソフトカプセル(活性化合物組成物及び下記のカプセルの殻)を、内壁中/上の領域の少なくとも一部に少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤(タイプ:M-3006-16 Activ-Vial)(内壁に1.92gの容量を有するモレキュラーシーブが埋め込まれている)とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器に導入した。
【0038】
マルチビタミン剤のソフトカプセルを30℃及び65%相対湿度(RH)で保管し、所定時間後保管場所から取り出し、その外観について目視で評価し、存在する活性化合物の量に関して分析した。結果を表3にまとめる。
【0039】
【表3】

*ソフトカプセルの殻の組成:ゼラチン、グリセロール98-100%、ソルビトール溶液70%、水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁内/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器と、少なくとも1つのソフトカプセルとを含み、ソフトカプセルが前記容器内に存在するパック。
【請求項2】
ソフトカプセルがソフトゼラチンカプセルである、請求項1記載のパック。
【請求項3】
ソフトカプセルがでんぷんベースのソフトカプセルである、請求項1記載のパック。
【請求項4】
前記容器が立方形の基本形状を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のパック。
【請求項5】
前記容器が、吸湿剤として、物理吸着によって水分を結合する乾燥剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のパック。
【請求項6】
乾燥剤がモレキュラーシーブ又はシリカゲルである、請求項5記載のパック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のパックの生成方法であって、内壁内/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器にソフトカプセルを導入し、続いて前記容器を密封することを特徴とする前記生成方法。
【請求項8】
ソフトカプセルの保管寿命を増大させる方法であって、内壁内/上の領域の少なくとも一部に、少なくとも1つのチャネル形成剤が少なくとも1つの吸湿剤とともに埋め込まれた再び閉じることができる容器にソフトカプセルを導入し、続いて前記容器を密封することを特徴とする前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−516308(P2010−516308A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545826(P2009−545826)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010743
【国際公開番号】WO2008/086852
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】