説明

ソフトドリンクにおいて酵母又はカビを不活性化するための組成物

本発明は、カルシウムイオンを含むソフトドリンクにおいて酵母又はカビを不活性化するための組成物であって、前記組成物が、天然に生じるシュガーモノ脂肪酸エステル若しくはグリセロールモノ脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素原子を有する天然に生じる脂肪族若しくは芳香族有機酸若しくはそれらのラクチレートエステル、又は脂肪族若しくは芳香族アルデヒド、キトサン、キチン、アジピン酸、カプロン酸、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドから選択される酵母及び/又はカビ不活性化剤をさらに含むことを特徴とし、前記組成物が1cfu/mL未満の総酵母カウントを有する、前記組成物に関する。該組成物は保存剤をさらに含みうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトドリンクにおいて酵母及び/又はカビを不活性化するための組成物、並びにソフトドリンクにおいて酵母又はカビを不活性化するための前記組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造される多くのソフトドリンクが、2.8〜4.5の低いpHと組み合わせて、化学保存剤、例えばソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、クエン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウムを添加することによって保存される。さらに、カルシウムをソフトドリンクに加える必要があり、従って、これらは乳についての代替カルシウム起源として役立ちうる。しかしながら、そのようなカルシウム含有ソフトドリンクでは、カルシウムのソフトドリンクへの添加後に、酵母及びカビの不活性化の低下又は阻害が生じないことが経験された。
【0003】
模擬のカルシウムなしソフトドリンクにおいて、酵母又はカビの不活性化はpH4.0未満で生じることが見つけられた。一方、模擬の添加カルシウムありソフトドリンクにおいて、カルシウムレベル(400又は1200 ppm)、カルシウム起源(塩化カルシウム又は乳酸カルシウム)及びpH(pH3.1〜4.2の間)と関係なく、9.2×103cfu/ml(ミリリットル当たりのコロニー形成単位)の平均カウント(平均ログ総カウント3.96±0.5)を有する酵母又はカビの約10%が生存した。明らかに、保存剤が、添加カルシウムによって完全に又は部分的に不活性化される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、カルシウムイオンを含むソフトドリンクにおいて酵母又はカビを不活性化するための組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、カルシウム含有ソフトドリンクは、天然に生じるシュガーモノ脂肪酸エステル若しくはグリセロールモノ脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素原子を有する天然に生じる脂肪族若しくは芳香族有機酸若しくはそれらのラクチレートエステル、又は脂肪族若しくは芳香族アルデヒド、キトサン、キチン、アジピン酸、カプロン酸、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドから選択される酵母及び/又はカビ不活性化剤をさらに含み、該組成物が、1cfu/mL未満の総酵母カウントを有し、酵母及びカビの不活化の低下又は阻害を効果的に予防する。
【0006】
語「天然に生じる」は、個々の化合物が天然において、例えば植物又は動物において生じる。そのような天然に生じる化合物が、天然物からの単離によって、又はその部分的化学的合成のすべてによって、例えば、有機的、生物有機的、生物学的若しくは微生物学的(例えば発酵)方法によって得られうる。
【0007】
語「シュガーモノ脂肪酸エステル」は、シ糖(炭水化物)残基のヒドロキシ基のうちの1つとエステル結合を形成した脂肪酸を意味する。適切な脂肪酸は、6〜18、好ましくは6〜12の炭素原子を有する天然に生じる飽和及び不飽和脂肪酸、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、デシレン酸、ドデシレン酸、パルモレイン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、及びリノレン酸である。飽和脂肪酸が好ましい。
【0008】
適切な糖残基は、任意のペントース又はヘキソースシュガーであることができ、好ましくはジサッカライド、例えばスクロース及びマルトースである。
【0009】
上記天然に生じる飽和及び不飽和脂肪酸はまた、グリセロールの1つのヒドロキシ基にエステル化されうる。
【0010】
天然に生じる脂肪族又は芳香族有機酸及びアルデヒドは、カプリル酸、アジピン酸、アニスアルデヒド及びシナモンアルデヒドを含む。脂肪族又は芳香族有機酸は、それらのラクチレートエステルとして使用されうる。好ましいラクチレートエステルは、ソジウムカプリルラクチレート(sodium capryl lactylate)である。
【0011】
塩化ベンゼトニウムは、グレープフルーツ種子抽出物の主成分である。グレープフルーツ種子抽出物は、塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドの例であり、それは商品名CITRICIDAL(商標)の下で商業的に入手可能であり、及びそれはグレープフルーツの種子及び果肉から合成される。
【0012】
一般に、組成物のすべての構成成分が、連邦規則基準 21 CFR 182.20下のGRAS(一般に安全と認められる、Generally Recognized as Safe)を満たすことが好ましい。
【0013】
通常、本発明の組成物は、最適な性能のために保存剤の存在を必要とする。共通の保存剤は、ソルベート、ベンゾエート、サルファイト、ハイドロジェンサルファイト、メタビサルファイト及びヘキサメタフォスフェートのカリウム、ナトリウム、及びカルシウム塩である。他の一般に使用される保存剤は、EDTA、BHA、BHT、TBHQ、デヒドロ酢酸、ジメチルジカルボネート、エトキシキン、ヘプチルパラベン及びそれらの組み合わせである。他の目的のために添加される化合物(それは弱い保存活性をさらに有する)(例えば、pH調整剤、抗酸化剤、味質増加剤など)は、本発明に従う保存剤と考えられない。
【0014】
しかしながら、最も活性な酵母又はカビ不活性化剤は、任意の保存剤なしにさらに十分に効果的であり、従って、任意の保存剤なしに(又は実質的になしに)使用されうる。表現「任意の保存剤を実質的になしに」は、組成物が20 ppm未満、好ましくは5 ppm未満の保存剤を含むことを意味する。それらの最も活性な酵母不活性化剤は、カプリル酸、シナモンアルデヒド、塩化ベンゼトニウム、及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドを含む。後者が特に好ましく、特にグレープフルーツ種子抽出物、最も好ましくはそれは粉末又は液体として使用される。
【0015】
該組成物は、他の一般的な添加物、例えばpH調整剤、香料、着色剤、金属イオン封鎖剤などを含みうる。
【0016】
本発明は、下記の制限されない実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0017】
材料及び方法
試験株:粉砕された新鮮なパイナップルから単離された酵母(pH3.4)
該酵母は、酵母抽出グルコースブロス上(pH3.5上)で培養され、そして、OD650nm 0.5で標定された。接種材料懸濁液を調製するために、100倍稀釈液がペプトン生理食塩水において作成された。
【0018】
試験液:
基本液
高果糖液糖(Raftisweet) 130 g
クエン酸 3.5 g
酵母抽出物 0.5 g
乳酸カルシウム1) 2.96 g
純水 200 mL
pH3.5
1) 模擬ソフトドリンク及び対照液(10 mM)における400 ppm Ca
【0019】
対照液(カルシウムなし)
高果糖液糖(Raftisweet) 325 g
クエン酸(Merck 1.00244.0500) 8.75 g
酵母抽出物(Oxcoid L 21) 1.25 g
純水 500 mL
pH3.5
【0020】
乳酸カルシウム保存液
乳酸カルシウム1) 2.96 g
純水 100 mL
pH3.5
1) 模擬ソフトドリンク及び対照液(10 mM)における400 ppm Ca
【0021】
保存剤保存液
安息香酸ナトリウム 0.2 g
ソルビン酸カリウム 0.2 g
ヘキサメタフォスフェートナトリウム(Fluka 71600)1) 0.9 g
純水 200 mL
pH3.5
【0022】

【0023】

【0024】

【0025】
実験設計
ダーラムチューブを備えた100mL注入ボトルが、100mLの試験液又は対照液で満たされた。0.1mLの接種材料懸濁液が各ボトルに添加され、ボトル中102〜103cfu/mLの接種材料レベルを得た。該ボトルは、25℃±1℃で14日間インキュベーションされた。3、7、10及び14日後に、該液の総カウントが、酵母抽出物グルコース寒天上での1又は0.1mLの表面プレーティングによって評価された。総カウント1未満/mLを有する15日目の液体が、50mLあたりの総カウントを評価するために膜フィルターを通された
【0026】
結果
添加カルシウムを有する模擬のソフトドリンクにおける酵母又はカビの天然の抗菌物質による不活性化。結果が、表1及び表2に示される。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
添加カルシウムのない対照液において、不活性化が、20℃で14日間のインキュベーションの間に生じた。これは、酵母が迅速に不活性化されるだろうという期待に反した。4つの天然の抗菌物質:カプリル酸、シナモンアルデヒド、グレープフルーツ種子抽出物粉末及びグレープフルーツ種子抽出物液体が、酵母又はカビの完全な不活化をもたらした。0.05%シナモンアルデヒドを有する溶液では、酵母又はカビが完全に不活性化された一方、0.025%シナモンアルデヒド+0.025%のシトラールを有する溶液では、不活性化が完全でなかった。これは、シナモンアルデヒドがシトラールよりもより強い阻害剤であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムイオンを含むソフトドリンクにおいて酵母又はカビを不活性化するための組成物であって、前記組成物が、天然に生じるシュガーモノ脂肪酸エステル若しくはグリセロールモノ脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素原子を有する天然に生じる脂肪族若しくは芳香族有機酸或いはそれらのラクチレートエステル、又は脂肪族若しくは芳香族アルデヒド、キトサン、キチン、アジピン酸、カプロン酸、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドから選択される酵母及び/又はカビ不活性化剤をさらに含むことを特徴とし、前記組成物が、1cfu/mL未満の総酵母カウントを有する、組成物。
【請求項2】
防腐剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酵母及び/又はカビ不活性化剤が、カプリル酸、シナモンアルデヒド、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドが、グレープフルーツ種子抽出物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酵母及び/又はカビ不活性化剤が、液状又は粉末状のグレープフルーツ種子抽出物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
防腐剤を含まない又は実質的に含まない、請求項3〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
カルシウムイオンを含むソフトドリンクにおいて酵母及び/又はカビを不活性化するために、天然に生じるシュガーモノ脂肪酸エステル若しくはグリセロールモノ脂肪酸エステル、少なくとも8の炭素原子を有する天然に生じる脂肪族若しくは芳香族有機酸或いはそれらのラクチレートエステル、又は脂肪族若しくは芳香族アルデヒド、キトサン、キチン、アジピン酸、カプロン酸、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンゼトニウム含有コンパウンドから選択される酵母及び/又はカビ不活性化剤を含む組成物を使用する方法。

【公表番号】特表2008−510475(P2008−510475A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528864(P2007−528864)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054204
【国際公開番号】WO2006/021583
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】