説明

ソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法

【課題】太陽熱を含む自然エネルギーを積極的に利用しつつ、快適な室内環境の実現に不可欠な最低限の暖冷房機器との最適な組み合わせで、低いランニングコストでの運転ですみ、しかも、搬送ダクトなどを大幅に短縮することができ、施工手間やコストの削減のみならず、メンテナンスの容易さにとってもメリットが大きい実用性の高いソーラー暖冷房換気装置およびソーラー暖冷房換気方法を提供する。
【解決手段】太陽放射を受ける側の板材料と反対側の板材料を間に距離が約10mm以下の薄い厚さの通気層を介在させて平行に配置した扁平パネル形状の板状体を太陽放射を受ける受熱面全体に複数を並列させて全体が大きなパネルとなるように配置した外気導入集熱ユニット1を太陽光が受光できる壁面に設置し、この外気導入集熱ユニット1が連通する床下空間4に蓄熱層6を設け、さらに、床近傍に暖冷房ユニット10を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房、冷房そして24時間換気を必要とする建物空間において、自然エネルギーを有効に利用しながら、それらに係る消費エネルギーを低く抑え、安価なイニシアルコスト、ランニングコストで実現でき、また、メンテナンスを容易にしたソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法である。
【背景技術】
【0002】
石化エネルギー資源の乏しいわが国の建物の熱性能は、省エネという観点からは十分とはいえず、従来から灯油や電力によって暖冷房を行い快適感を得ているのが現状である。近年の地球温暖化防止対策の一環としても建物の熱性能基準を引き上げることが検討され、段階的な引き上げが行われた。
【0003】
図9は一般的な住宅を想定した場合の省エネルギー基準の変遷である。平成11年(1999年)住宅の省エネルギー基準が強化され、更に平成15年(2003年)には24時間換気システムの設置が義務化された。これにより建物の断熱性能や気密性能が一層向上し、暖冷房に係るエネルギー消費が抑制された。
【0004】
一方、24時間換気については外気を室内に直接導入する第三種換気が主流であり、換気負荷を除く建物の熱負荷は小さくなったものの換気負荷は変わらないため、かえって換気負荷の占める割合は2倍に増えた。
【0005】
わが国では二度のオイルショックを経験したことから、太陽熱や太陽光を利用した技術開発が盛んになった。その成功例としては温水パネルや太陽電池が広く知られるところである。
【0006】
太陽熱を利用し建物の暖房負荷を軽減しようとする試みは、ガラス窓を大きくとって太陽熱を室内に取り込むダイレクトゲイン方式(パッシブソーラー)はコストも安く、誰でもが取り込みやすい技術として一般化している。
【0007】
また、より積極的に太陽熱を利用する技術として、屋根面で集熱した空気を送風ユニットによって床下へと導き、床下から室内に放出させる太陽熱床暖房換気システム(通称OMソーラー)が下記特許文献等にある。
【特許文献1】特許第2626966号(ソーラーシステムハウス利用の空冷方法)
【0008】
図10にソーラーシステムハウスの概略を説明すると、カラー鉄板やスレート板等の屋根板101の直下に屋根勾配を有する空気流路102を形成し、この空気流路102の一端は軒先に空気取入口103として開口し、他端は断熱材による集熱ボックスとしての棟ダクト104に連通させる。
【0009】
内部に逆流防止ダンパー106、ファン107及び流路切換えダンパー108を設け、該流路切換えダンパー108の流出側の一方は排気ダクト109により屋外に開口するハンドリングボックス105を屋根裏空間である小屋裏122に設置し、このハンドリングボックス105の逆流防止ダンパー106の流入側を前記棟ダクト104に連通させ、流路切換えダンパー108の流出側の一方を立下りダクト110の上端に連結する。立下りダクト110の下端は床下蓄熱体としての蓄熱土間コンクリート111と床パネル112との間の空気流通空間113に開口し、該空気流通空間113から室内への床吹出口114を設けた。
【0010】
なお、前記のごとくハンドリングボックス105の逆流防止ダンパー106の流入側は棟ダクト104に接続されるが、この逆流防止ダンパー106の流入側は天井等で室内に開口する循環用ダクト119にも接続され、該逆流防止ダンパー106はこの棟ダクト104側と循環用ダクト119側との流路を切り換える流路切換えダンパーとして構成する。また、この循環用ダクト119が開口する吸込口120を設ける部屋はこれが2階であれば、前記室内への床吹出口114を設けた床パネル112がある1階の部屋とは吹き抜け構造として空気が自由に流れるようにすることが望ましい。
【0011】
ハンドリングボックス105内で、逆流防止ダンパー106とファン107との間にお湯とりコイル115を設け、このお湯とりコイル115は循環配管116で貯湯槽117と連結し、該貯湯槽117には、追焚き用の給湯ボイラー118を途中へ設けて、風呂や洗面所、台所へとつながる給湯配管121を接続する。
【0012】
このようにして、太陽光で加熱された金属板である屋根板101が、空気流路102へ入った外気を温め、この温められた空気は屋根勾配に沿って上昇する。そして、この加熱空気は棟ダクト104に集められてからファン107によりハンドリングボックス105に入り、ハンドリングボックス105から立下りダクト110内を流下し、蓄熱土間コンクリート111と床パネル112との間の空気流通空間113へ入る。この空気流通空間113では加熱空気が床パネル112を介して直接床面下を温めるのと、蓄熱土間コンクリート111に蓄熱させるのと、床吹出口114から温風として直接室内へ吹出されるのとの3通りの暖房作用を行う。
【0013】
一方、お湯とりコイル115で、ここに循環配管116を介して貯湯槽117から送り込まれる水が加熱され、湯として貯湯槽117へ蓄えられ、さらにここから必要に応じて追焚き用の給湯ボイラー118で再加熱されて給湯配管121から各所へ給湯される。
【0014】
このような図10に示す太陽光により集熱した加熱空気を利用するソーラーシステムハウスでは、夏季等高温時で暖房の必要のない季節では屋根板101で温められた加熱空気は全部外気に放出して捨てることが必要となる。その場合は流路切換えダンパー108で流出側の一方である立下りダクト110側を閉塞し、流出側の他の一方である排気ダクト109側を開放すれば、ハンドリングボックス105から加熱空気は排気ダクト109を介して屋外へ捨てられる。なお、加熱空気はハンドリングボックス5を通ることでお湯とりコイル115の加熱は行うので、夏季等高温時でも太陽熱利用で湯が得られることは確保できる。
【0015】
一方、夏等の暖房がいらない季節の昼間の集熱時には示すように、逆流防止ダンパー106は循環用ダクト119側を閉じ、棟ダクト104側を開く。また、流路切換えダンパー108はファン107と立下りダクト110側とを閉鎖し、ファン107と排気ダクト109側とを連通させる。
【0016】
このようにしてファン107を駆動すれば、換気口125から屋根の小屋裏122に入り、さらに空気流路102を経て棟ダクト104に集められた加熱空気はハンドリングボックス105に入り、お湯とりコイル115を加熱してから排気ダクト119を流れ屋外へ捨てられる。その際、ファン107から直接排気ダクト109へ送り込まれる空気が立下りダクト110へ誘引力を与え、床下の空気は立下りダクト110を介して排気ダクト109へ吸い込まれるので前記小屋裏122の換気のみならず、床下の換気も同時に行うことができる。
【0017】
そして、夏の夜間には逆流防止ダンパー106は循環用ダクト119側を閉じ、棟ダクト104側を開く点は前記昼間と同じであるが、前記流路切換えダンパー108はファン107と立下りダクト110側とを連通させ、ファン107と排気ダクト109側を閉鎖する。
【0018】
この状態で、ハンドリングボックス105のファン107を回せば、夜の冷気が換気口125から屋根の小屋裏122に入り、そしてこの小屋裏122の空気が南面の屋根の屋根板104直下に形成された空気流路102に入り、ここで放射冷却がなされる。そして、棟ダクト104に集められてからハンドリングボックス105に入り、該ハンドリングボックス105から立下りダクト110内を流下し、蓄熱土間コンクリート111と床パネル112との間の空気流通空間113へ入り、蓄熱土間コンクリート111に蓄冷されるのと、吹出口114から冷風として直接室内へ吹出されるのとの冷却作用を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記特許文献1のシステムは外気が導入されている時、即ち主として冬の日中(集熱温度が室温より高い時)と夏の夜間(集熱温度が室温より低い時)がシステムが稼働できる条件であり、それ以外の条件では何らかの暖冷房機器と24時間換気装置を必要とする。
【0020】
前者の設備は必須ながら、後者については24時間換気が義務化されている住宅の場合、これとは別に24時間換気装置が必要となり設置費用の増加を招く。
【0021】
また、夏季の日中に何らかの理由で停電したり、システムの故障で停止せざるを得ない状況下に遭遇した場合、屋根集熱面のガラス板直下の金属板は100℃を超える高温となり、建築材料の耐久性や強度に少なからず悪影響を与える結果となる。
【0022】
一方、昨今の地球温暖化の影響で冬の暖房負荷が減少する反面、冷房期間や冷房負荷が増大し、毎年電力の供給不足が懸念されている。
【0023】
また、花粉症(外から入れない)やシックハウス(汚染空気を外に出す)などの解決策のひとつとして重要な役割を担う、イニシャルコスト、ランニングコストそして外気を温めるなどの熱負荷の小さな24時間換気の実現が望まれている。
【0024】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、太陽熱を含む自然エネルギーを積極的に利用しつつ、快適な室内環境の実現に不可欠な最低限の暖冷房機器との最適な組み合わせで、低いランニングコストでの運転ですみ、しかも、搬送ダクトなどを大幅に短縮することができ、施工手間やコストの削減のみならず、メンテナンスの容易さにとってもメリットが大きい実用性の高いソーラー暖冷房換気装置およびソーラー暖冷房換気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、ソーラー暖冷房換気装置として、太陽放射を受ける側の板材料と反対側の板材料を間に距離が約10mm以下の薄い厚さの通気層を介在させて平行に配置した扁平パネル形状の板状体であり、板状体は通気層の流れ方向に数cm〜2m程度の短い長さのものであり、太陽放射を受ける受熱面全体に複数を並列させて全体が大きなパネルとなるように配置し、均等に空気を吸い込むように通気抵抗を調整し、太陽放射を受ける側の空間から空気を薄い厚さの通気層に吸い込み、通気層を通過する間に受ける放射熱と対流あるいは伝導で熱交換し、太陽放射を受ける側と反対側に熱交換した空気を吹き出す外気導入集熱ユニットを太陽光が受光できる壁面に設置し、この外気導入集熱ユニットが連通する床下空間に蓄熱層を設け、さらに、床近傍に暖冷房ユニットを設置したことを要旨とするものである。
【0026】
請求項5記載の本発明は、請求項1の装置を用いたソーラー暖冷房換気方法として、暖房必要時の日中には外気導入集熱ユニットにより温められた外気を床下へ導入し、床下空間にある蓄熱層を温めながら室内へ放出させ、夜間など要求室温に満たない場合には室内空気を暖冷房ユニットを通して温めながら床下に送りこみ、冷房必要時の夜間には外気導入集熱ユニットにより冷えた外気を床下へ導入し、床下空間にある蓄熱層を冷ましながら室内へ放出させ、日中など要求室温に満たない場合には室内空気を暖冷房ユニットを通して冷やしながら床下に送りこむことを要旨とするものである。
【0027】
請求項1および請求項5に記載の本発明によれば、外気導入集熱ユニットと蓄熱層を有する床下空間と床近傍に設置する暖冷房ユニットを組み合わせることで、上下差の少ない横一列に近い配置として装置の組み合わせ構成ができ、集熱空気を床下に導入する際の搬送ダクトなどを大幅に短縮することができる。このことは施工手間やコストの削減のみならず、メンテナンスの容易さにとってもメリットが大きい。かつ、外気導入集熱ユニットを壁面に設置することで、屋根面に設置する従来技術に比べ、冬季の有用な集熱を確保しながら夏季の無用な集熱を抑制することができる。
【0028】
更に、暖冷房ユニットを床近傍に設置することで、暖冷房ユニットからの吹き出し空気を直接床下に送ることができる。
【0029】
請求項2記載の本発明は、外気導入集熱ユニットは、南面に対し東西90度以内、傾斜角45度以上に設置したことを要旨とするものである。
【0030】
請求項2に記載の本発明によれば、冬季の日中に太陽熱の受熱効果をより多く得るための設置条件であるが、南面に対し東西90度以内、傾斜角45度以上に設置することで、夏季の日中には太陽高度が高く外気導入集熱ユニットが過度に高温になるのを防ぐものである。
【0031】
請求項3記載の本発明は、蓄熱層として、コンクリートや水袋、潜熱蓄熱材などの比較的熱容量の大きな材料を用いることを要旨とするものである。
【0032】
請求項3に記載の本発明によれば、冬季の日中に集熱した暖かい空気を夜間に対し蓄える蓄熱効果や、冬季の夜間に換気として導入した冷たい空気を温める放熱効果を、また、夏季の夜間に集熱した冷たい空気を翌日の日中に対し蓄える蓄熱効果や、夏季の日中に換気として導入した暖かい空気を冷ます放熱効果を担うと伴に、室温の安定化に寄与させることができる。
【0033】
請求項4記載の本発明は、暖冷房ユニットとして、エアコン室内機を設置することを要旨とするものである。
【0034】
請求項4に記載の本発明によれば、1つの設備で暖冷房が可能であり、かつメンテナンスの容易な最も安価な設備として最適である。
【0035】
請求項6記載の本発明は、暖房必要時の日中、外気導入集熱ユニットにより温められた外気を床下へ導入する場合に、導入空気が床下より冷たい場合は蓄熱層によって温めながら室内へ放出させ、冷房必要時の夜間には外気導入集熱ユニットにより冷えた外気を床下へ導入し、導入空気が床下より暖かい場合は蓄熱層によって冷しながら室内へ放出させることを要旨とするものである。
【0036】
請求項6記載の本発明によれば、暖房必要時の日中、導入空気が床下より冷たい場合は蓄熱層によって温めながら室内へ放出させることができる。よって、換気により室内が冷たくなることはない。また、冷房必要時の夜間には導入空気が床下より暖かい場合は同様に蓄熱層によって冷しながら室内へ放出させることができるので、換気により室内がより熱くなることはない。
【発明の効果】
【0037】
以上述べたように、本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法は、太陽熱や冬暖かく夏涼しい床下空間を積極的に利用しながら、必要最低限の暖冷房機器の構成で建物室内を四季を通じ、24時間換気を行いながらより快適な空間が実現できるものである。
【0038】
また、外気導入集熱ユニットと蓄熱層を有する床下空間と床近傍に設置する暖冷房ユニットを組み合わせることで、上下差の少ない横一列に近い配置として装置の組み合わせ構成ができ、集熱空気を床下に導入する際の搬送ダクトなどを大幅に短縮することができ、施工手間やコストの削減のみならず、メンテナンスも容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1〜図4は本発明の実施形態を示す説明図で、通常の住宅を想定している。本発明の住宅の断熱性能は熱損失係数で2(W/m2K)以下、気密性能は相当隙間面積で2(cm2/m2)以下の性能が望まれる。断熱性が悪い建物では暖冷房負荷が大きく、集熱したエネルギーを有効に活用することが難しく、また、気密性が悪い建物では暖冷房負荷の増大のみならず安定した計画換気ができないことが理由である。
【0040】
特に床下空間4は外気に接する基礎部分とその周辺の断熱および基礎と土台間の隙間の密閉性を確保する必要がある。このことにより床下空間4は居室と同じ室内空間とみなすことができる。
【0041】
図中1は、壁面に取り付けられた外気導入集熱ユニットで、これは先に発明者が考案した特許第4171014号のものを利用できる。
【0042】
外気導入集熱ユニット1は、図5〜図6に示すように、太陽放射を受ける側の板材料である受熱板11と反対側の板材料である吸熱板12を間に距離が約10mm以下の極薄通気層13を介在させて平行に配置した扁平パネル形状の板状体50である。この板状体50は曲面形状とすることも可能である。また、受熱板11を両面に設けることも考えられる。
【0043】
極薄通気層13は、薄い通気層とすることにより、受熱板と流れる空気の接触効率を高め、熱交換性能が向上するものであるが、およそ2mmが好適である。(ただし、処理風量が大きく違えば、通気層高さも変わる。)
【0044】
板状体50を構成する材料としては、熱伝導性が比較的よい材料であれば金属等特に限定は問わないが、受熱板11は集熱表面材料として黒色金属板、選択吸収膜板などが好適である。なお、受熱板11の集熱表面材料として、太陽電池を用いることも可能である。太陽電池が冷却できることは発電効率の低下防止になる。
【0045】
板状体50は、下側を空気吸込口14、上側を空気吐出口15とし、複数を連列できるように、上端に接続代16を突設した。
【0046】
板状体50は、上下の長さ120mm程度とするが、60mm〜1800mm程度の範囲で製品バリエーションが可能である。また、全体は幅のある横長形状のものとし、太陽放射を受ける受熱面全体に、極薄通気層13の流れ方向に短い長さ(数cm〜2m程度)のものを複数並列させて全体が大きなパネルとなるように配置し、均等に空気を吸い込むように通気抵抗を調整する。
【0047】
板状体50は、建物の壁面17に設置する場合にであり、太陽放射を受ける側と反対側(壁面17との間)に、集合通気層18を形成する。
【0048】
また、太陽放射を受ける側に、ガラス19などの太陽放射を透過する材料を空気層20とともに設けるようにしてもよい。
【0049】
前記板状体50を並べ、極薄通気層13の通気抵抗でバランスを考慮して、面積あたり風量を同じ程度にすること、加えて、分割された集熱部材(板状体50)を均等に吸い込むように調整することにより、小さい(短い)熱交換(集熱)面で、利用できる温度が得られるものとなる。
【0050】
図7に示すように、多数並列した板状体50と集合通気層18に組合せによる外気導入集熱ユニット1に対してダクト2を介して送風ファン3を設ける。なお、さらに、導入ダクト35を介して室内直接用ファン30を設けることも可能である。図示は省略するが、室内直接用ファン30は停止時密閉タイプ、送風ファン3は停止時密閉用ダンパを別途取り付ける。
【0051】
図中34は多数並列した板状体50と集合通気層18に組合せによる外気導入集熱ユニット1を設置するための見切縁(板金巻き)であり、38は該空気式太陽集熱部の下地となる外装材で、セメントサイディングと塗装からなる。37は通気層、36は下地材+透湿防水シートである。
【0052】
この外気導入集熱ユニット1が連通する床下空間4に蓄熱層6を設け、さらに、床近傍に暖冷房ユニット10を設置した。図中5は床材、7は床面に設置した吹出口、8は室内、9は室内の壁に取り付けた換気レジスタである。
【0053】
蓄熱層6としては、土間コンクリートを利用できるが、土間コンクリート以外のコンクリートや水袋、潜熱蓄熱材などの比較的熱容量の大きな材料を用いる。
【0054】
また、暖冷房ユニット10には、エアコン室内機を利用することができる。
【0055】
このようにして、太陽放射を受ける位置である壁面に取り付けられた外気導入集熱ユニット1としての板状体50を複数設置し、この板状体50で太陽放射を受ける側の外気を空気吸込口14より吸い込み、薄い通気層である極薄通気層13で太陽熱を集熱し、各板状体50の空気吐出口15から吹き出した集熱空気を集合通気層18で集合して送風ファン3により床下空間4に供給する。
【0056】
外気導入集熱ユニット1は、板状体50を複数並列させた配置することで、熱交換面(集放熱面)を比較的細かく分割して、分割数に応じた当該空気式熱交換部を取り付けるものである。これにより、処理風量と極薄通気層13の通気抵抗と送風機24のファン能力のバランスを取ることができる。
【0057】
外気導入集熱ユニット1は、薄い通気層とすることにより、受熱板と流れる空気の接触効率を高め、放射熱と対流あるいは伝導で熱交する熱交換性能を向上させるものである。
【0058】
この外気導入集熱ユニット1で外気を効率的に温めることができる。ガラス19付きの集熱ユニットでは晴天時に外気温+30〜40℃の集熱温度が得られる。
【0059】
図8は応用例として外気導入集熱ユニット1の外側をつる植物等の植物のベール51で覆うようにすることもできる。植物のベール51はこれを壁面付近に設置することで、日射による眩しさを防止し、或いは日射熱の室内への侵入を軽減するもので、植物で緑化することにより、建物全体の意匠性を向上させ、かつ、植物から蒸散する水分が建物壁面を冷却する。植物のベール51はヨシズなどで代用させてもよい。
【0060】
また、前記ガラス19はこれをアトリウム52を構成するものとしてもよい。前記植物のベール51とアトリウム52との組み合わせは、羽根板を横に組んで支柱に取り付け、蘇苔類植物を羽根板の上面に設置された植栽マットに生育させる緑化用植栽ルーバーとして、空気取り入れ可能な構造とすることもできる。
【0061】
外気導入集熱ユニット1の面積が大きいほど、より高温の集熱できるが、暖房に供するのであるから過度に高温である必要がなく、その際は外気の導入風量を増やし温度を抑えた集熱にすることで調整する。
【0062】
ちなみに、外気導入集熱ユニット1は、南面に対し東西90度以内、傾斜角45度以上に設置する。
【0063】
外気導入集熱ユニット1は、冬季の日中に太陽熱の受熱効果をより多く得ることが設置条件であるが、このように南面に対し東西90度以内、傾斜角45度以以上に設置することで、夏季の日中には太陽高度が高く外気導入集熱ユニットが過度に高温になるのを防ぐことができる。
【0064】
この外気導入集熱ユニット1で温められた空気は、導入ダクト2を通し送風ファン3で床下空間4に送り込まれ、床下空間4にある床材5および蓄熱層6を温め、床暖房と蓄熱を行うことができる。更に床面に設置した吹出口7から室内8へと空気を放出させ、最終的に室内の壁に取り付けた換気レジスタ9などから屋外へと排出される。
【0065】
この一連の空気流れによって室内の換気をも行うことができる。この換気は屋外に比べ室内がプラス圧になることから第2種換気に相当し、目に見えない建物の隙間からの外気やホコリ、花粉などの侵入を防ぐメリットがある。
【0066】
図2は冬季の夜間におけるソーラー暖冷房換気方法の第2実施形態である。当然のことながら外気導入集熱ユニット1での集熱温度はほぼ外気温である。
【0067】
冬季の夜間での外気導入集熱ユニット1の役割は、室内の換気が目的であることから、導入外気は対象空間に対し0.5(回/h)程度の量(日中の集熱時に比べ小さい)を導入ダクト2を通し送風ファン3で床下4に送り込まれる。
【0068】
冬季の夜間での床下に導入した空気の温度は、通常床下空間にある床材5および蓄熱層6よりも温度が低いため、床材5および蓄熱層6で若干温められ、床面に設置した吹出口7から室内8へと空気を放出される。
【0069】
その際要求する室温に達しない場合には、床付近に設置した暖冷房ユニット10を運転し、室内空気を温め床下空間4に戻す(循環させる)ことで暖房を実現する。
【0070】
図3は夏季の日中におけるソーラー暖冷房換気方法の第3実施形態である。壁面に取り付けられた外気導入集熱ユニット1は、太陽の高度が高くかつ建物の軒や屋根の庇などによって遮熱されることから、冬季よりも温度上昇が少ないものの、ガラス付きの集熱ユニットでは晴天時に外気温+10℃程度の集熱温度になる。より積極的な遮熱対策としては、植物のベール51やヨシズなどで覆うなどの手法が極めて有効である。
【0071】
夏季の日中での外気導入集熱ユニット1の役割は、冬季の夜間と同様に室内の換気が目的であることから、導入外気は対象空間に対し0.5(回/h)程度の量を導入ダクト2を通し送風ファン3で床下空間4に送り込まれる。
【0072】
夏季の日中での床下に導入した空気の温度は、通常床下空間にある床材5および蓄熱層6よりも温度が高いため、床材5および蓄熱層6で若干冷まされ、床面に設置した吹出口7から室内8へと空気を放出される。その際要求する室温に達しない場合には、床付近に設置した暖冷房ユニット10を運転し、室内空気を冷まし床下空間4に戻す(循環させる)ことで冷房を実現する。
【0073】
図4は夏季の夜間におけるソーラー暖冷房換気方法の第4実施形態である。当然のことながら外気導入集熱ユニット1での集熱温度はほぼ外気温である。
【0074】
外気導入集熱ユニット1で取り込んだ空気は、導入ダクト2を通し送風ファン3で床下空間4に送り込まれ、床下空間にある床材5および蓄熱層6を冷まし、床面に設置した吹出口7から室内8へと空気を放出させ、涼感を得ることができる。
【0075】
夏季の夜間では要求する室温に比べ外気温の方が低い場合には、積極的に外気の導入風量を増やし床下空間4や床材5や蓄熱層6および室内8を冷やすことで、翌日の日中の室温上昇を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上の実施形態は、簡便であることから建物の一部をリフォームする場合などの小規模な空間においても適用できる。
【0077】
外気導入集熱ユニット1の設置位置は、建物の周辺状況により請求項2の設置条件を満たす限りに於いて、ベランダの手すりや建物と分離した独立設置も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法の冬季の日中における実施形態の説明図である。
【図2】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法の冬季の夜間における実施形態の説明図である。
【図3】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法の夏季の日中における実施形態の説明図である。
【図4】本発明の本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法の夏季の夜間における実施形態の説明図である。
【図5】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法で使用する外気導入集熱ユニットの縦断側面図である。
【図6】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法で使用する外気導入集熱ユニットの斜視図である。
【図7】外気導入集熱ユニットの組込み部分を示す縦断側面図である。
【図8】本発明のソーラー暖冷房換気装置およびそれを用いたソーラー暖冷房換気方法の応用例を示す説明図である。
【図9】建物の熱損失に関するグラフである。
【図10】従来例を示す集熱時の模式図である。
【図11】従来例を示す空冷時の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
1…外気導入集熱ユニット 2…導入ダクト
3…送風ファン 4…床下空間
5…床材 6…蓄熱層
7…吹出口 8…室内
9…換気レジスタ 10…暖冷房ユニット
11…受熱板 12…吸熱板
13…極薄通気層 14…空気吸込口
15…空気吐出口 16…接続代
17…壁面 18…集合通気層
19…ガラス 20…空気層
30…室内直接用ファン 34…見切縁(板金巻き)
35…ダクト
36…下地材+透湿防水シート
37…通気層 38…外装材
50…板状体 51…植物のベール
52…アトリウム
101…屋根板 102…空気流路
103…空気取入口 104…棟ダクト
105…ハンドリングボックス 106…逆流防止ダンパー
107…ファン 108…流路切換えダンパー
109…排気ダクト 110…立下りダクト
111…蓄熱土間コンクリート 112…床パネル
113…空気流通空間 114…床吹出口
115…お湯とりコイル 116…循環配管
117…貯湯槽 118…給湯ボイラー
119…循環用ダクト 120…吸込口
121…給湯配管 122…小屋裏
123…補助暖房コイル 124…暖房・追炊きボイラー
125…換気口 126…循環配管
127…フィン 130…ケース
131…配管 138…循環配管
139…補助暖房コイル 140…通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽放射を受ける側の板材料と反対側の板材料を間に距離が約10mm以下の薄い厚さの通気層を介在させて平行に配置した扁平パネル形状の板状体であり、板状体は通気層の流れ方向に数cm〜2m程度の短い長さのものであり、太陽放射を受ける受熱面全体に複数を並列させて全体が大きなパネルとなるように配置し、均等に空気を吸い込むように通気抵抗を調整し、太陽放射を受ける側の空間から空気を薄い厚さの通気層に吸い込み、通気層を通過する間に受ける放射熱と対流あるいは伝導で熱交換し、太陽放射を受ける側と反対側に熱交換した空気を吹き出す外気導入集熱ユニットを太陽光が受光できる壁面に設置し、
この外気導入集熱ユニットが連通する床下空間に蓄熱層を設け、
さらに、床近傍に暖冷房ユニットを設置したことを特徴とするソーラー暖冷房換気装置。
【請求項2】
外気導入集熱ユニットは、南面に対し東西90度以内、傾斜角45度以上に設置した請求項1記載のソーラー暖冷房換気装置。
【請求項3】
蓄熱層として、コンクリートや水袋、潜熱蓄熱材などの比較的熱容量の大きな材料を用いる請求項1または請求項2記載のソーラー暖冷房換気装置。
【請求項4】
暖冷房ユニットとして、エアコン室内機を設置する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のソーラー暖冷房換気装置。
【請求項5】
太陽放射を受ける側の板材料と反対側の板材料を間に距離が約10mm以下の薄い厚さの通気層を介在させて平行に配置した扁平パネル形状の板状体であり、板状体は通気層の流れ方向に数cm〜5m程度の短い長さのものであり、太陽放射を受ける受熱面全体に複数を並列させて全体が大きなパネルとなるように配置し、均等に空気を吸い込むように通気抵抗を調整し、太陽放射を受ける側の空間から空気を薄い厚さの通気層に吸い込み、通気層を通過する間に受ける放射熱と対流あるいは伝導で熱交換し、太陽放射を受ける側と反対側に熱交換した空気を吹き出す外気導入集熱ユニットを太陽光が受光できる壁面に設置し、
この外気導入集熱ユニットが連通する床下空間に蓄熱層を設け、
さらに、床近傍に暖冷房ユニットを設置し、
暖房必要時の日中には外気導入集熱ユニットにより温められた外気を床下へ導入し、床下空間にある蓄熱層を温めながら室内へ放出させ、
夜間など要求室温に満たない場合には室内空気を暖冷房ユニットを通して温めながら床下に送りこみ、
冷房必要時の夜間には外気導入集熱ユニットにより冷えた外気を床下へ導入し、床下空間にある蓄熱層を冷ましながら室内へ放出させ、
日中など要求室温に満たない場合には室内空気を暖冷房ユニットを通して冷やしながら床下に送りこむことを特徴とするソーラー暖冷房換気方法。
【請求項6】
暖房必要時の日中、外気導入集熱ユニットにより温められた外気を床下へ導入する場合に、導入空気が床下より冷たい場合は蓄熱層によって温めながら室内へ放出させ、
冷房必要時の夜間には外気導入集熱ユニットにより冷えた外気を床下へ導入し、導入空気が床下より暖かい場合は蓄熱層によって冷しながら室内へ放出させる請求項5記載のソーラー暖冷房換気方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−220131(P2012−220131A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88019(P2011−88019)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(505364359)EOM株式会社 (3)
【Fターム(参考)】