タイヤのための改善されたハイドロプレーニング性能
この発明は一般的にはタイヤのためのより良好なハイドロプレーニング性能を提供する改良設計に関し、より詳細には、タイヤに増大された構造的剛性を与え、これにより水に出会ったときのタイヤの変形に抵抗するように働き、タイヤのハイドロプレーニング性向を軽減する、タイヤのトレッド下に配置された可変圧力せん断バンドを有するタイヤに関する。有利なことに、可変圧力せん断バンドは、摩耗性能を落とすことなしにハイドロプレーニング性能と転がり抵抗とを同時に改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、タイヤのためのより良いハイドロプレーニング性能を提供する改良設計に関し、より詳細には、タイヤに増大された構造的剛性を与え、これにより水に出会ったときのタイヤの変形に抵抗するように働き、タイヤのハイドロプレーン性向を軽減する、タイヤのトレッド下に配置された可変圧力せん断バンドを有するタイヤに関する。有利なことに、可変圧力せん断バンドは、摩耗性能を低下させることなしにハイドロプレーニング性能と転がり抵抗とを同時に改善することができる。
【背景技術】
【0002】
空気式タイヤの分野の当業者は、トレッド摩耗、取り扱い、乾湿静止摩擦、転がり抵抗等に関する様々な性能の組み合わせを得るためにタイヤ構造の適用において豊富な経験を発展させてきた。
【0003】
この適用の一例として、空気式タイヤは、外方の表面(一般的にはトレッド)とタイヤが転動する地面との間のタイヤの接触領域における垂直応力及び接線応力に関して、最適化される。例えば、良好なトレッド摩耗は、タイヤと地面との間の前記垂直応力が前記接触領域を介して均一に分布されかつ前記接線応力が最小にされるときに得られる。特に、転がり方向における前記接線応力は、前記接触領域の幅にわたって強度に正から強度に負に変化すべきではない。しかし、濡れた路面上におけるハイドロプレーニング現象に対するタイヤの抵抗をより良く改善するため、前記接触領域の中央部に、前記接触領域のショルダーすなわち横方向部分と比べて高い垂直接触応力を有することが有利である。これは、通常、タイヤ構造を適合させ、あるいは、最適化された摩耗に望ましいことよりもより丸みを帯びているタイヤの横方向外形を得るために成形横方向外形を養生することにより達成される。このケースでは、空気式タイヤは転がり方向に、前記中央部では著しい正となりかつ前記ショルダー部では負となる、不均衡な接線方向応力を有する。したがって、空気式タイヤでは、当業者には、摩耗抵抗およびハイドロプレーニング抵抗を同時に最適化することについての困難がある。
【0004】
空気式でないかまたは構造的に支持されたタイヤがこの分野において開示されている。例えば、本発明の出願人との共有に係る米国特許第6,769,465号明細書は、内部空気圧なしに負荷を支える構造的に支持された弾性タイヤに関連する。代表的な実施形態において、この非空気式タイヤは、接地部と、該接地部から半径方向内方に伸びるサイドウォール部と、タイヤが転がる間にホイールへの固定を維持するように適合されたビード部のアンカーとを含む。補強された環状バンドが、前記接地すなわちトレッド部の半径方向内方に配置されている。このせん断バンドは、少なくとも1つのせん断層と、該せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む。米国特許第6,769,465号に係る発明は、例えば、一部または無膨張圧力で機能する能力と、接地圧力とは幾分か独立した垂直合成を調整するための可撓性とを含むいくつかの利点を提供する。本発明も、また、前記接触領域の全部にわたって比較的良好な平衡接触圧力を与える。
【0005】
他の例として、本発明の出願人との共有に係る米国特許第7,201,194号明細書も、また、非空気式タイヤに関連する。代表的な実施形態において、この非空気式タイヤは、外方環状せん断バンドと、該環状バンドを横切りかつ前記環状溝から半径方向内方に伸びまたホイール又はハブに固定された複数のウエブスポークとを含む。ある実施形態において、前記環状せん断バンドは、さらに、せん断層と、該せん断層の半径方向内方の範囲に接着された少なくとも第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方に接着された少なくとも第2の膜とを含む。また、必要とされる膨張圧力なしで機能する前記能力に加えて、米国特許第7,201,194号は、前記接触領域の長さの全部にわたるより均一な接地圧力を含む利点を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
参考文献の代表的な実施形態について前述したように、両者は、タイヤに所望の性能利益を提供するためにせん断層を含む環状せん断バンドを利用した。以下に述べるように、出願人等は、他の性能を低下させることなしに摩耗またはハイドロプレーニングを改善することができる、前記せん断層およびある実施形態ではさらにトレッドの特性についての有利な構造を発見した。あるケースでは、転がり抵抗も改善される。前記せん断層およびトレッドのためのこの改善された構造は、空気式タイヤ、非空気式タイヤ、環状バンドからの構造支持体に関連して低減膨張圧力で機能するハイブリッドタイヤ、さらに他の製品に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の特定の実施形態は、半径方向、長手方向および軸方向と赤道面とを有する接触部を備えるタイヤを含む。このタイヤは、さらに、積(Geff*h)が前記タイヤの軸方向に変化する断面を有するせん断層を備える可変圧力せん断バンドと、前記せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む。あるケースでは、このようなタイヤの前記せん断層は、該せん断層の高さ(h)が変化するにつれて比較的一貫性のあるGeffを有する材料で構成されている。
【0008】
このケースでは、前記接地部はトレッドであって該トレッドの各軸方向範囲に位置するショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有するトレッドを備える。
また、前記せん断層はその各軸方向範囲に位置するショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有する。前記せん断層のショルダー部と中央部とは、それぞれ、実質的に前記トレッドのショルダー部と中央部との半径方向下方に見られる。前記せん断層は、該せん断層がそのショルダー部からその中央部へ進むにつれて半径方向内方の方向へ増大する厚さを有する。
【0009】
さらに、前記せん断層は、そのショルダー部において最も薄くかつその中央部において最も厚い。また、前記せん断層の中立繊維は、前記せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて、前記中立軸が実質的に前記タイヤの赤道にあるその最も低い位置に至るように、半径方向内方へ移動する。この特定の実施形態では、前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む。
【0010】
このケースでは、前記トレッドは、前記タイヤの赤道面の近くに増大された半径方向厚さを有する。
【0011】
他の実施形態では、前記せん断層は、該せん断層に関して変化する(Geff*h)をもたらすGeffの異なる値を有する複数の軸方向配置部分を含む。
【0012】
さらに他の実施形態では、前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、該トレッドのショルダー部は前記中央部と異なる材料特性を有する。前記中央部は、前記トレッドのショルダー部に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを有する。
【0013】
他の実施形態では、前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドの中央部は、前記トレッドのショルダー部と比較したときに前記トレッドの中央部の増大された長手方向せん断コンプライアンスをもたらす長さ(B)の複数のトレッド要素を規定する幅(H)の横方向へ向けられた複数の溝を含む。パラメータ(H/B)は長手方向コンプライアンスのレベルの指標である。
【0014】
あるケースでは、前記せん断バンドの第2の膜は実質的に非伸長性であり、他方、前記第1の膜は圧縮に抵抗する。これは、前記せん断バンドが、タイヤが水に出会ったとき、変形に抵抗することに役立ち、これにより、前記タイヤのハイドロプレーニング性能を改善する。
【0015】
このケースでは、前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む。前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−(15ないし25)度に置かれた複数のスチールコードを含む。特定の実施形態では、前記第1および第2のクロスプライベルトは+/−22度に置かれた複数のスチールコードを有する。
【0016】
代わりに、前記第1および第2の膜は、実質的に前記タイヤの長手方向に置かれた複数の環状補強を含む。これらの補強は、実質的に前記タイヤの長手方向に沿って巻かれかつ前記タイヤの半径方向に沿ってペースが設置された1または複数のスチールコードを含む。
【0017】
本発明の先の及び他の目的、特徴及び利点は、同様の参照番号が本発明の同様の部分を表わす添付図面に示されているように、以下の本発明の特定の実施形態のより詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】タイヤ100の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図2】中央および横方向の両部を含むせん断層を有するタイヤ200の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図3】弓状の外形に従う外方膜と可変厚さのせん断層とを有するタイヤ300の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図4】中央および横方向の両部を含むせん断層と中央および横方向の両セクションを含むトレッド層とを有するタイヤ400の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図5】赤道面を通して得られた、トレッド溝の配列を示す概略図である。
【図6】タイヤ100の典型的な実施形態の斜視図である。
【図7】タイヤ200の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である(レベル1)。
【図8】タイヤ200の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である(レベル2)。
【図9】タイヤ300の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である。
【図10】0.5のH/Bを有するタイヤ400の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ200の典型的な実施形態に関する接線接触応力の等高線を示す描写である。
【図11】1.0のH/Bを有するタイヤ400の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ200の典型的な実施形態に関する接線接触応力の等高線(レベル1)を示す描写である。
【図12】タイヤ100、200、300および400の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力のグラフ表示であり、リブ番号R2はトレッドの中央セクションに対応し、また、リブ番号R1およびR3は横方向部分に対応する。
【図13】構築されかつ試験がなされた可変圧力せん断バンドを有しない従来のタイヤ構造を有する500の断面図である。
【図14】実際のタイヤに600に組み込まれかつ試験がなされた可変圧力せん断バンドを有する本発明の一実施形態を示す。
【図15】試験中に取られた写真に基づく、標準内部空気圧2.1バールでまた時速88キロメートルで水の中を移動する間における従来のタイヤ500と地面との間の接触領域を示す。
【図16】試験中に取られた写真に基づく、標準内部空気圧2.1バールでまた時速88キロメートルで水の中を移動する間における可変圧力せん断板を有するタイヤ600と地面との間の接触領域を示す。
【図17】わずかに空気を抜かれた内部空気圧1.6バールで水の中を様々な速度で移動する間における従来のタイヤ500と地面との間および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600と地面との間の接触領域の面積を示すグラフである。
【図18】標準内部空気圧2.1バールで水の中を様々な速度で移動する間における従来のタイヤ500と地面との間および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600と地面との間の接触領域の面積を示すグラフである。
【図19】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図20】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図21】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図22】標準内部空気圧2.1バールおよび負荷410DaNでのタイヤ500の足跡を示す。
【図23】標準内部空気圧2.1バールおよび負荷410DaNでのタイヤ600の足跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特定の実施形態の詳細な説明
これから、本発明の複数の実施形態について詳細に述べる。1以上の例が複数の図に示されている。各例は本発明の説明のために提供され、本発明の限定を意味しない。例えば、1つの実施形態の一部として示されまたは説明された特徴は、他の実施形態でさらに第3の実施形態を得るために使用され得る。本発明はこれらのおよび他の修正、変更を含むことを目的としている。考察の目的のため、典型的なタイヤの複数の実施形態の半分のみが1以上の図に示される。参照番号は、様々な要素を識別する際に読み手を専ら補助するために、図において使用されている。一実施形態のための共通のまたは同様の番号付けは、他の実施形態における同様の要素を示す。この分野における通常の技術を有する者は、本明細書に開示される教示を用いて、同一または実質的に同様の特徴がタイヤの両側で繰り返されることを理解するであろう。
【0020】
定義
以下の用語はこの開示のために以下のように定義される。
【0021】
本明細書で用いられる「複合物」は、2以上の層から構成されることを意味する。
【0022】
「ホイール」または「ハブ」は、タイヤを支持しまた車両の車軸に据え付けるための任意の装置または構造に言及し、また、このような用語は本明細書においてはどちらを使っても変わりがない。
【0023】
「動的せん断係数」は、ASTM D5992によって測定されたせん断係数を意味する。
【0024】
「破断点伸び」は、ASTM D412‐98aによって測定されまた周囲よりもむしろ100℃で実施された引張伸びを意味する。
【0025】
「ヒステリシス」は、動的損失のタンジェント(最大tanδ)を意味する。材料の動的特徴は、ASTM D5992に従ってMTS 831 エラストマー試験システムで測定される。振動数10Hzおよび80℃での交互単一正弦曲線せん断応力に従う、加硫材料のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面の円筒形テストピース)の応答が記録される。走査は、0.1ないし50%(外側周期)、次いで50%ないし0.1%(回帰周期)の歪みの振幅で行われる。最大せん断係数G*はMPa内で最大であり、また、損失角度のタンジェント、タンジェントデルタ(最大tanδ)の最大値は前記外側周期の間に決定される。
【0026】
膜の「係数」は、周方向における1%の伸びでの弾性の引張係数を意味する。この係数は、従来のタイヤのスチールベルト材料のための下記の式2または3により計算することができる。この係数は、「Emembrane」と記される。
【0027】
「赤道面」は、タイヤの中心線を通る前記タイヤの回転軸に垂直な面を意味する。
【0028】
「子午面」は、タイヤの回転軸に平行でありかつ該軸から半径方向外方へ伸びる面を意味する。
【0029】
「半径」方向は、半径方向外方かつ前記回転軸に対して垂直を意味する。
【0030】
右手直交座標系において、前転方向は正のx方向として定義され(また、タイヤの周方向または長手方向として言及される)、垂直なz方向は地面から正の上方向として定義され(また、タイヤの半径方向として言及される)、また、y方向は前記回転軸に平行でありかつ左側に正である(また、タイヤの横方向又は軸方向として言及される)。例えば、図6参照。
【0031】
プライの複数のコードまたはケーブルについて本明細書で使用される「圧縮率」(Ec)は次のように定められる。モールドが以下の寸法、すなわち長さ50mm、幅30mmおよび厚さ25mmで制作される。前記ケーブルは、2つの長方形の支持体(梁)を用いて一方が他方に対して平行な配向で正確に配置される。前記ケーブルはこれらの支持体の穴を通り抜け、互いに40mmの間隔をおいて平行に配置される。前記穴間の間隔は前記ケーブルの正確なペースを確保する。前記ペースはタイヤ内の前記プライで用いられるペースを反映する。2つの支持体間の間隔(40mm)は、前記支持体と前記ケーブルとが前記モールド内に配置され得るように、前記モールドの長さ(50mm)より短い。前記ケーブルおよびこれらの支持体は、次に、前記ケーブルが前記モールドの中央に前記厚さ方向に設置されるように、モールド内に配置される。前掲の寸法に関して、これは、複数のケーブルの中心線が前記モールドの底から約12.5mmにあることを意味する。液体ポリウレタンが前記モールド内に注ぎ込まれ、前記モールドを満たす。次に、前記モールドが110℃で24時間オーブン内に配置される。養生後、結果として生じるサンプルは前記長手方向に2つの側部から突き抜ける複数のケーブルを有する。前記サンプルは、これらの端部が薄い厚さのポリウレタンと共に分離されるように、のこぎりで切断される。おおよその最終的長さは40mmである。切断は、本来前記サンプルの幅に等しい前記ケーブルの長さに関して垂直である断面を確保するために、注意深くコントロールされなければならない。同じモールドを用いて、ケーブルを有しない、ポリウレタンのみからなるサンプルが準備される。このサンプルは、前記ケーブルを含むサンプルと同様の方法で養生され、ケーブルを有する前記サンプルと同じ外法寸法に切断される。
【0032】
測定の準備が整ったら、前記サンプルがINSTRON試験機のタイプ44666の2つの金属プラテン間に配置され、25mm/分の割合で圧縮される。INSTRON機は力対偏差を記録するために用いられる。測定は少なくとも5つのサンプルについてなされる。基本ケーブル圧縮率が、ケーブルを有する準備サンプルの力対偏差の測定値からケーブルを有しない準備サンプルの力対偏差の測定値を差し引くことにより、計算される。結果として生じた力対偏差の値は、以下の式を用いて、前記ケーブルの有効圧縮率をコンピュータ計算するために使用される。
εc=圧縮歪み=圧縮偏差/最初のサンプル長さ
σc=圧縮応力=圧縮力/面積
ここにおいて、面積=前記サンプルに含まれる複数のケーブルの総断面積
Ec=圧縮率(Ec)=σc/εc
【0033】
「無限疲労限度」は、以下の試験方法により決定されるように、基準材料がその引張係数の10パーセントを超える損失なしに少なくとも100万回の繰り返しの規定圧縮歪みを保証することができることを意味する。Zwick1841試験機を用いて、前記材料のコードまたはストランドがループの形状に配置され、前記コードの一端が定着されかつ他端が強制周期変位に取り付けられる。前記ループはテフロン(登録商標)の2つのシート間に保持される。前記フープの開始直径は、前記ループを.67パーセントの圧縮歪みεcにおくことにより決定される。ここにおいて、
εc=D/(2R)
D=前記材料のコードまたはストランドの直径
R=(.5)*(前記ループの開始直径)
【0034】
次に、前記材料は、周期的に、3Hzの周波数で所定の圧縮歪み下に置かれる。
繰り返しは、前記材料の特性が下がり始めることを示す、.67パーセントの圧縮歪みにおいて測定された力がその最初の値の90パーセントに低下するまで続けられる。次いで、これが起こる繰り返し数が決定される。前記材料が90パーセントに低下する前に規定圧縮歪みでの少なくとも1,000,000回の繰り返しに耐えることができれば、その時は本明細書で使用されているように、前記材料は前記規定圧縮歪みでの「無限疲労限度」を有する。
【0035】
本明細書で使用される「ペース」は、所与のプライ内の複数のコード間の距離を意味する。
【0036】
FEA検討の詳細な説明
最初に、発明者のコンセプトの実現可能性を確かめるためにFEA検討が行われた。そのため、可変圧力せん断バンドを使用する非空気式タイヤが、三次元(3D)の、動作要素のモデルの有限要素構造解析(FEA)により、本明細書において説明される。前記モデルは無負荷タイヤに関して軸対称であるが、地面と転がり接触状態にある負荷タイヤに関しては完全な三次元状態にある。タイヤ100に関して図1および図6に示すように、前記せん断バンドが、せん断層140の半径方向外方及び内方の両面に関連して2つのほとんど広げることができない膜130および140を含む組立体としてモデル化されている。せん断層140は、非圧縮性の線形材料からなる1以上の層を含む。地面との接触のためのトレッド層110は、前記せん断バンドの半径方向外方に置かれている。選択的に、トレッド層110は、1以上の長手方向トレッド溝115を有する。本明細書に開示されたタイヤの実施形態においては、前記トレッド層が3つのリブ、すなわちショルダーリブR1およびR3と、中央リブR2とに分けられている。また、非圧縮性の線形材料の特徴が、トレッド層110をモデル化するために使用される。前記せん断バンドは、半径方向に圧縮可能でありかつ伸展性に堅固である複数のFEA要素を含むウエブ構造150に接続されている。これらの要素の半径方向圧縮剛性は零であり、また、前記ウエブ要素は柔軟であるが前記せん断方向に零でない剛性を有する。前記ウエブ要素の内方エッジ160は堅いホイール(図示せず)に接続される。すなわち、ウエブ構造150は、前記面との接触領域90の前記トレッドの一部からの直接の作用による荷重を支持する能力をほとんどまたは全く持っていないが、前記接触領域から負荷される引張荷重を前記ウエブ要素を介して支持する。前記FEAモデルは、断面内の線形フォーミュレーションすなわち子午面を有する複数の構造要素を用いる。前記FEAモデルは、要素が前記接触領域外にあるときに周方向に二次のフォーミュレーションを有する。前記FEAモデルは、要素が接触領域90内にあるときに線形フォーミュレーションを有する。
【0037】
タイヤ100のせん断バンドがせん断層140のせん断変形により実質的に変形すると有利な関係が生じ、所与の適用のための層140の有効動的せん断係数Geffおよびその厚さhの値を特定することが可能である。
Peff=(Geff*h)/R (1)
ここにおいて、
Peff=予め定められた接地圧力
Geff=層140の有効動的せん断係数
h=せん断層140の厚さ
R=外方の非伸長性膜130の半径方向位置
PeffおよびRは、タイヤの使用目的に従って選択される設計パラメータである。次に、前記式が、前記せん断層の有効動的せん断係数Geffとせん断層140の半径方向厚さとの積が予め定められた接地圧力と外方の膜130の最外方の半径方向位置との積に等しいこと、を推定する。前記した関係は、タイヤを設計する者にとって有利である。例えば、乗用車への使用を目的とするタイヤを設計するため、設計者は設計接触圧力1.5ないし2.5DaN/cm2のPeffと、半径方向Rが約335mmであるタイヤサイズとを選択するであろう。これらの値を乗じることにより、50.25ないし83.75DaN/cmの「せん断層係数」が決定され、これは、せん断層140の厚さhとせん断層140の有効動的せん断係数Geffとを特定するために使用することができる。
【0038】
前記FEAモデルのため、膜120および130の引張係数が100,000MPaに設定され、これは、タイヤベルト材料に使用されるような、零度スチールケーブルの最密巻線に対応する。ゴム中に埋め込まれる相互に曲げられたコード補強を有する一組の補強プライのような代わりの構造のため、以下の式2が引張係数の適正な推定を提供する。
【0039】
【数1】
【0040】
ここにおいて、
ERUBBER=コーティング材料の引張係数
P=コードの方向に垂直に測定されたコードのペース(コードの中心線間隔)
D=コードの直径
α=赤道面に対するコード角度
t=隣接する層内のケーブル間のゴム厚さ
E’MEMBRANEは、前記膜の有効厚さの、前記膜の弾性係数倍であることに留意されたい。割合E’MEMBRANE/Geffが比較的低いと、前記環状バンドの荷重変形は均質なバンドのそれに近似し、また、不均一な接地圧力を生じさせる。他方、割合E’MEMBRANE/Geffが十分に高いと、例えば100より大きいと、負荷された前記環状バンドの変形は、基本的に、長手方向伸長または圧縮がほとんどない前記膜を有するせん断層140のせん断変形による。したがって、接地圧力は実質的に均一である。
【0041】
複数の補強コードが前記赤道面に対して10度以下で方向付けられている膜に関して、
前記膜の引張係数を推定するために以下を用いることができる。
E’MEMBRANE=ECORD*V (3)
ここにおいて、
ECORD=前記コードの引張係数
V=前記膜内のケーブルの体積分率
同質の材料または繊維若しくは他の材料補強マトリクスを含む膜に関して、前記係数は前記材料またはマトリクスの引張係数である。加えて、前記複数のせん断層が本明細書では単一の複数層として示されているが、これらは、例えば本出願人の共有に係る国際特許出願の国際公開第2008/045098号に記載されているように、異なる特性を有する1以上の材料層の複合構造を含むものであってもよい。
【0042】
再度、図1および図6を参照すると、タイヤ100は、205/60R15空気式タイヤに類似する、外径すなわち330mmと軸方向幅200mmとを有する。タイヤ100のトレッド層110に関するモデルは、地面に接する前記トレッドの一部がしっかりと貼り付けられまたスリップをしないことを前提とする。本明細書に記載された様々な実施形態に関して、タイヤは平坦面で一定の垂直荷重200kgを負荷される。これは、真っ直ぐにかつ外部から加えられた駆動トルクまたは制動トルクなしに転がる負荷されたタイヤには妥当な近似値である。以下の幾何学的および物質的パラメータは例示的な既知のタイヤの材料である。しかし、前記タイヤのモデルはこれらのパラメータの値に限定されない。トレッド層110は5MPaの係数と、10mmの半径方向厚さとを有する。膜120および130は、100,000MPaの引張係数と、1mmの半径方向厚さとを有する。せん断層140の材料は、1.67の有効せん断係数と、20mmの半径方向厚さとを有する。最後に、ウエブ構造150は、1MPaの引張係数と、0.0001の圧縮係数と、49mmの半径方向厚さとを有する。ウエブ構造150のこの引張係数は、約30MPaの引張係数を有する材料で作られた別個の複数のスポークを有する完全三次元モデルの半径方向剛性にほぼ等しい。
【0043】
図7および図12は、タイヤ100に関して、接地圧力SZと、今述べた設計パラメータのためのx方向接線歪みSXとを示す。表1は、定量的結果の概要を提供する。タイヤ100の幾何学的形状と既定の材料特性とに関して、式(1)は10バールの理想接触圧力Peffを生じさせる。表1中に見られかつ図12にグラフで示された計算値0.92バールが都合よく理想値に匹敵する。したがって、前記FEAモデルは実際のタイヤの挙動の信頼性のある表現である。図7は、前記接触領域の形状の図と、応力分布の等高線図とを提供する。垂直応力SZが実に全接触領域のいたるところで分布しており、非空気式タイヤ100の空気式のような挙動を明示している。
【0044】
式(1)の接地圧力Peffを推定するための関係を考慮する。タイヤに関して、外方の膜の半径Rが同一である場合、そのときは積(Geff*h)が前記接触圧力のための制御因子であることは明らかである。その結果、Geffまたはhのどちらか、あるいは双方の増大が、タイヤの接触圧力を増大させるように強制される。さらに、タイヤは、積(Geff*h)の第1のレベルを有する材料を含む少なくとも第1の部分と、積(Geff*h)の第2のレベルを有する少なくとも第2の部分とを備えるように構成される。それぞれが積(Geff*h)の特定のレベルを有する横方向に配置された複数の部分を備えることは本発明の範囲内である。これらの部分は、個々のゾーンであることを必要とされず、また、積(Geff*h)のレベルの連続した変化を含んでよい。
【0045】
タイヤ200として図2に示された典型的な実施形態は、前記せん断層の材料特性の変化を通して積(Geff*h)をコントロールする原理を利用する。特に、この実施形態は中央部244と複数の横方向部すなわちショルダー部242を含むせん断層を有し、ここにおいて、各部はせん断係数Geffのような異なる材料特性を有する。一例において、中央部244は3.3MPaのせん断係数(レベル1)または6.6MPaのせん断係数(レベル2)を有し、横方向部242は1.67MPaのせん断係数のままである。図7および図8は、基準のタイヤ100を、係数レベル1および係数レベル2にそれぞれ対応するタイヤ200(レベル1)およびタイヤ200(レベル2)という表示が付けられた実施形態と比較する。結果は、前記中央部の増大された接触圧力SZをはっきりと明示する。表1は、タイヤ200(レベル1)に関して、前記中央部における平均圧力SZが平均で約40%(0.93バールから1.39バール)近い増大であることを定量的に明示する。タイヤ200(レベル2)関して、前記増大は約120%(0.93バールから2.18バール)である。注目すべきは、前記ショルダー部の平均接触圧力が基準タイヤ100に関する値の5%以内のままである。これは、似たような材料特性変化を使用する空気式タイヤへの期待と比較して、全く予想外の結果である。空気式タイヤについて、当業者が期待したのは漸進的変化だけである。本発明のこれらの実施形態のもう一つの注目すべき利点は、前記中央部と前記横方向部との間の推移に関する限定された「末端効果」である。図7および図8の双方に見られるように、前記中央部の高負荷領域がトレッド溝215間の幅のほぼ全部に伸びている。したがって、タイヤ200の実施形態も、車両に据えられたときを見ると、タイヤの内側又は外側に関する非常に異なった負荷および垂直剛性を有する非対称タイヤを得るために適用可能であろう。
【0046】
タイヤ300として図3に示されている他の典型的な実施形態では、せん断層340の厚さhの変化を通して積(Geff*h)をコントロールする前記原理を適用する。タイヤ300は、前記外方の非伸長性膜が500mmの半径Rを有する弓形の外形にすぐに追随することを除いて、タイヤ100と同じである。結果は、せん断層340の厚さhが前記中央部における最初の19mmから横方向の両端における9.5mmに変化する。トレッド310は一定の厚さ=10mmのままである。実際上、図3に見られるように、タイヤ300は、当業者が前記接触領域の中央部における増大された接触圧力を提供するように提案する丸みのある外形の空気式タイヤに似ている。しかし、タイヤ300の前記実施形態は、完全に非空気式構造として、そのままである。図9は、基準タイヤ100に対するこの実施形態のタイヤ300の比較を提供する。タイヤ100のほぼ矩形の形状と比較して、タイヤ300の前記接触領域の形状が非常に丸みを帯びていることがすぐに見て取れる。図9は、さらに、非常に高い圧力の、最適化された摩耗には望ましくない何かの個々のゾーンを含むことを明確に示す。しかし、表1に示されたモデルのデータは、前記せん断層の厚さの変化が前記平均接触圧力を修正するために極めて効果の乏しい提案であることを明確に示す。基準タイヤ100と比較して、タイヤ300の中央部における平均接触圧力SZはたった25%しか増大していない(0.93バールから1.16バール)。丸みのある外形の使用は、空気式タイヤについて既知の設計上の取組みで提案されていたように、役に立たないと断定されるかもしれない。
【0047】
前述の実施形態は、非空気式タイヤ200および300における垂直接触応力SZのコントロールを得るための典型的提案を示す。接触中央部における増大された接触圧力は静止摩擦向上のために有利である。しかし、タイヤは、また、完全な顧客満足を提供するためにトレッド摩耗で良い性能を示すものでなければならない。先に検討したように、釣り合いのとれた接線応力(特に、x方向応力SXの平均値)はトレッド領域の幅全体のトレッド摩耗にも有利に働く。再び表1と、表1のデータをグラフで示す図12とを参照すると、基準タイヤ100の結果としての接線応力SXは、前記中央部に僅かに正のすなわち「駆動」応力を、また、前記両横方向部にはわずかに負のすなわち「制動」応力を明確に示す。一般に、受け入れ可能のトレッド摩耗を得るためには、前記接触領域内での大きい制動応力は回避されるべきである。タイヤ200(レベル1)に関して、接線応力が約0.05バールまで増大し、前記中央で駆動し、また前記ショルダーで制動するにつれて不均衡が現れ始める。タイヤ200(レベル2)に関して、中央セクションの増大された係数は接線応力を約0.09バールにまで約2倍にし、再び、前記中央で駆動し、また前記ショルダーで制動する。タイヤ300、丸くされた頂上の実施形態は、受け入れがたい大きい駆動応力を前記中央に(約0.29バール)また制動を前記横方向部に(約0.7バール)生じさせる。
【0048】
本発明者は、トレッドセクションの長手方向コンプライアンスに対する変化により垂直応力および接線応力の分布および大きさが最適化されることを見出した。図4に示すように本発明のさらに他の典型的な実施形態では、タイヤ400に関して、前記トレッド層が、各セクションが異なる材料特性を有する中央トレッドセクション414と横方向すなわちショルダー・トレッドセクション412とを含む。タイヤ400の特定の例では、2つの周方向溝415間のトレッドセクション414が修正されている。トレッドセクション412に対応するトレッド材料1はタイヤ100と対比して変更されない。中央トレッドセクション414に対応するトレッド材料2は、トレッドセクション412に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを反映するように修正される。本発明の範囲内のさらに他の実施形態では、タイヤは既定セットの材料特性を有する複数の横方向に分配された複数のトレッドセクションを有する。
【0049】
タイヤ400の典型的な実施形態では、この修正されたコンプライアンスが、前記トレッドセクションに横方向に向けられた複数の溝を加えることで生じる。タイヤ400のさらに他の実施形態では、修正されたコンプライアンスが各トレッドセクションのための直交異方性材料特性を通して得られる。図5はタイヤ400の赤道面を通る概略的な断面を表わし、タイヤ400は、複数の分離したトレッド要素、例えば複数のブロックを規定することとなる前記タイヤの周囲に間隔を置かれた複数の横方向に向けられた溝416を有する。本明細書で用いられるように、横方向に向けられた複数の溝の意味は、長手方向溝415に対してこれを横切るかまたは角度をなすように向けられた複数のサイプのような、それらの溝または複数の薄い切り込みを含む。図5に表わされているように、曲げ変形に関して、ブロック417は、ブロックBの周方向長さおよびトレッド幅Hの機能を表わす。パラメータ的には、コンプライアンスのこのレベルは、パラメータH/Bにより表わされ、ここにおいて、高い値のH/Bは低い値の曲げ剛性を有するトレッドセクションを表わす。説明に役立つ例として、また、物理的説明を提供するために、値が零のH/Bは連続したリブに対応する。値が約0.3のH/Bは夏タイヤに対応し、また、値が約0.6のH/Bはオールシーズンタイヤに対応する。
【0050】
タイヤ400の前記FEAモデルは回転体である幾何学的形状を維持するが、トレッドセクション414の複数の前記要素は、トレッドブロック417の曲げ変形のパラメータH/Bを明らかにするために修正された剛性を有する。タイヤ400のこの特定の例では、前記トレッドコンプライアンスが0.5および1.0の値のH/Bに設定された。全ての他の点において、タイヤ400はタイヤ200(レベル1)の特性を保持する。タイヤ400の前記接触圧力のFEA結果が得られた。図12および表1に示されたデータは、トレッドまたはタイヤ400における増大されたコンプライアンスが前記トレッドの中央部における垂直応力SZの所望の増大にはわずかな効果でしかないことを明確に示す。特に、タイヤ200(レベル1)は、中央のリブに関して1.39バールの値のSZを発生し、ここにおいて、タイヤ400の両例は約1.30バールのSZを有する有利な中央負荷を維持する。タイヤ400の前記実施形態の明確な利点は、接線応力SXの検査により明確に示される。ここで、約1.0の値のH/Bに対する中央リブのコンプライアンスの調整により、前記トレッド部の全幅を横切る基本的に零の接線応力が発生される。この結果は、基準タイヤ100のための予測された接線応力より非常に良好な平衡である。したがって、タイヤ400により説明された本発明の実施形態は、静止摩擦のための望ましい中央負荷を提供し、他方、実際に接線応力の分布を改善する。したがって、タイヤ400は、空気式タイヤにおいて固有の妥協を壊すことができる。
【表1】
【0051】
工業的利用の詳細な説明
前記FEA検討の期待できる結果を前提として、本発明者は、実際のタイヤへの可変圧力せん断バンドの原理の適用を進めた。従って、このタイヤと、環状のせん断バンドを欠く基準タイヤと、両タイヤの試験結果との詳細な説明が以下に提供される。
【0052】
図13を参照すると、標準的な空気式タイヤ構造を有するタイヤの子午面に沿って得られた、補強されたせん断バンドを欠くタイヤ500の断面図が示されている。この標準の構造は、第1のクロスプライベルト520が着座するタイヤ500の内部に近接するカーカスプライ510を含む。第2のクロスプライベルト530が第1のクロスプライベルト520の上方に置かれ、また、ゴムの薄いセクション540により第1のクロスプライベルト520から分離されている。ゴムのこのセクションは、それが必要不可欠なもの(Geff*h)を欠くため、可変圧力せん断層として振る舞わない。ベルト520、530も、また、これらが必要な引張係数を欠くため、非伸長性膜として振る舞わない。前記タイヤの実質的に長手方向すなわちx方向へタイヤ500の周りに巻かれかつ前記タイヤの半径方向すなわちy方向に沿ってペースが設置されているナイロンストリップ550が、第2のクロスプライベルト530の頂面上に配置されている。ナイロンストリップ550の目的は、タイヤの高速耐久性を増大させて、高運転速度でのベルト分離の可能性を低減することにある。また、タイヤ500は、該タイヤ内に空気または気体の保持に役立つ、タイヤ500の内部にインナーライナー560を有する。インナーライナー560はタイヤの膨張圧力を保持することができる任意の適当な材料で構成され、好ましくはハロブチルゴムで構成される。複数の溝58を有するトレッド部570が、それが水等を通過するとき、ベルトパッケージおよびタイヤ500の静止摩擦を改善するための環状補強の頂面上に見られる。トレッド570の溝58は、前記トレッドの表面がより容易に水を突き抜けて地面に接触するように、水の消費を提供する。
【0053】
この特定の実施形態では、タイヤ500のサイズがトレッド部570の幅W570が約165mmであり、また、タイヤ500は赤道面E‐Eの両側のビードセクション(図示せず)に終わる両サイドウォール590により車両のホイール上に保持される。タイヤ500の構造は赤道面E‐Eに関して対称である。
【0054】
反対に、図14は、可変圧力せん断バンドの特定の実施形態を採用する空気式タイヤ600の子午面に沿って得られた断面を示す。このタイヤ600は、インナーライナー660と、カーカスプライ610と、複数の溝680を有するトレッドセクション670と、タイヤ500に関して前述されたものと同様の第1のクロスプライベルト620および第2のクロスプライベルト630を含むベルトパッケージとを有する。また、それは、約165mmであるトレッド部670の幅W670を有する205/55R16サイズのタイヤである。それも、また、赤道面E‐Eの両側のビードセクション(図示せず)に終わる両サイドウォール690により車両のホイール上に保持される。タイヤ600の構造もまた赤道面E‐Eに関して対称である。しかし、それは、基準タイヤ500と比較したとき、次の構造上の違いを有する。
【0055】
第1に、それは、米国特許第7,032,637号により開示された材料で作られ、タイヤの長手方向すなわちx方向に螺旋状に巻かれかつタイヤの軸方向すなわちy方向にペースが設置された複数のガラスモノフィラメントのプライの形態をとるカーカスプライ610の直上に配置されている第1の膜640を有する。有利なことに、前記複数のガラスモノフィラメントは、タイヤ600の内部に近いそれらの位置が、タイヤ600が水に出会うときに接触パッチに近い前記タイヤの長手方向すなわちx方向の座屈に対するタイヤの抵抗に役立つことを前提として、これらが圧縮に有効に抵抗することを許す約1パーセントの圧縮歪みにおいて、約12,000MPaの圧縮係数、約40,000MPaの引張係数および/または無限疲労限度のような特性を有する。前記した機械的特性を以って構成されるとき、各コード642は好ましくは約43mm2またはこれより大きい断面積を有し、また、前記タイヤの軸方向すなわちy方向に少なくとも約1.4mmのペースで配列される。このような構造は、前記プライの幅の1mm当たり約.30mm2の同等均質厚さ(コード/ペース)を提供する。コード642は、少なくとも約2.3GPaの当初伸長係数を有する熱硬化性樹脂に含浸されるガラス繊維でできている。前記繊維は全て互いに平行に設定される。細長い複合材料エレメントは、引張不足に対する歪みより大きい圧縮不足に対する歪みを有する。好ましくは、前記熱硬化性樹脂は、130℃より高いガラス転移温度Tgを有する。どのような構造が使用されても、せん断層645のせん断係数Geffに対するこの膜640の膜係数EMEMBRANEの比は少なくとも約100:1であるべきである。例えば、EMEMBRANEを9000N/mm2としかつGeffを3N/mm2とすることができ、これらは約3000:1の比を生じさせる。
【0056】
次に、可変厚さTを有するせん断層645が、ゴムでできておりまたこれに接着されている第1の膜640上に見られる。このゴムの材料は、1.9から5MPaの範囲にある動的せん断係数、約100%より大きい100℃での破断点伸び、および約15%および30%間の歪みでの約.2より小さいヒステリシスのような特性を有する。同様の特性を有するゴム材料もまた第1および第2の膜640、650のコードを含むように使用されるスキム内で使用することができる。また、せん断層645の厚さTは2mmから20mmまで変化する。この特定の実施形態に関して、せん断層645は約3MPaからなるせん断係数を有し、また、せん断層645の厚さTは該せん断層のショルダー領域における約2mmから、タイヤ600の赤道面E‐Eにおける約6mmまで変化する。興味深いことに、せん断層645の厚さTは正のz方向すなわち半径方向に動き、その結果、せん断層645の中立繊維647もこの方向に動く。このため、この実施形態は、可変圧力せん断バンドの所望の特性を与える前記せん断層内で変化する(Geff*h)を提供する。中立繊維647の内方移動は、ハイドロプレーニングを改善し、他方、後により明確に説明される理由でタイヤ600の摩耗性能を低下させない、代わりのトレッド外形670’が用いられるようにする。したがって、この代わりのトレッド外形670’は、標準のトレッド外形670と比較して増大された外方半径厚さを有する。
【0057】
最後に、実質的に非伸長性である第2の膜650がせん断層645の上方に見られまたこれに接着されている。この膜650は、せん断層645の直上に見られる第1のクロスプライベルト620と該第1のクロスプライベルト620の直上に見られる第2のクロスプライベルト63との形態をとる。これらのベルトは、前述したような特性を有するゴムスキム内で被せられた複数のスチールコード652から構成されている。複数のコード652は15から25度の範囲の角度で置かれ、また、この特定の実施形態のために+/−22度で置かれる。赤道面E‐Eに対して等角および対角で置かれるコードをベルト中に用いることは一般的であるが、前記赤道面に関して非対称であるタイヤを作り出す異なる角度で配置し得ることが考慮される。これらのベルト620、630は、せん断層645のせん断係数Geffに対するこの膜650の膜係数EMEMBRANEの比が少なくとも100:1であるように構成され、これは、これらを分離するこれらのベルトおよび前記ゴムがせん断バンドを含まない理由であるタイヤ500のベルト520、530のケースでない。さらに、第2の膜650が、トレッド670の切断および小さい通り抜けから第2の膜650の構造を保護するために正のz方向すなわち半径方向に十分な距離をオフセットされている。
【0058】
せん断層645に対する膜640、650の接着が典型的には前記膜及びせん断層を含むエラストマー材料の加硫により提供されることに留意すべきである。代わりに、前記膜は化学的または接着または機械的固着の任意の適当な方法により前記せん断層に接着されてよい。同様に、前記膜は、引張剛性、曲げ剛性および環状せん断バンドに求められる圧縮座屈抵抗に関する要求に適合する任意の適当な材料または構造により形成されてよい。例えば、前記膜の構造は、均質な材料、繊維補強マトリクス、または本明細書に記載された機械的特性が適合する場合には個々の補強要素を有する層のようないくつかの代替手段のいずれかからなるものでよい。従来のタイヤの補強が用いられるとき、スチール、アラミド、他の高弾性織物のような材料で作られたモノフィラメントまたはコードが採用されてよい。
【0059】
したがって、前記第1および第2の膜は、タイヤの実質的にx方向に巻かれかつy方向にペースが設置された環状の補強により形成されてよい。これらの環状補強は、スチールまたはいくつかの他の適当な材料で作られたコードにより形成されてよい。同様に、前記せん断層は変更され、そのショルダー部より高いせん断係数を有する中央部を備えてもよく、あるいは他の構造および/またはFEAを使って研究されたような特性を備えてもよい。
【0060】
タイヤ500、600が作られた後、これらは異なる試験手順を用いて試験された。このような試験手順の一つは、車両に配置されたタイヤを、ガラス板の頂面上の水たまりに通して走らせることを含み、そこでは、ある条件のもとでタイヤのトレッドの表面領域のどれ程が地面と接触状態にあるかを見るために写真を撮ることができる。この試験は、タイヤがハイドロプレーニング状態にあることを示す、地面上におけるタイヤの接触の90%が失われるときを決定するため、同じタイヤについて異なる速度で繰り返すことができる。
【0061】
図15および図16は、この手順を用いて試験されかつ2.1バールの標準内部空気圧およびタイヤに与えられる450Kgの垂直荷重を以って時速88kmで4mmの深さの水を経て移動する間に取られたタイヤ500、600の写真のそれぞれの表示である。これらの条件下で、タイヤ500が表面接触領域を有するように管理され、それは線595および595’で輪郭を描かれたたった13cm2であり、他方、タイヤ600もなお表面接触領域を有し、それは線695で輪郭を描かれた45cm2である。これは、タイヤ500が、前記接触表面領域の約91%を喪失しているハイドロプレーニング状態にあったことを示す。反対に、タイヤ600は、なおも地面と接触状態にある3.5倍の表面領域を持っており、ハイドロプレーニングが起こる前に外挿に基づいてさらに時速7km速く移動することができたことを示す。これは、標準タイヤ500の同じハイドロプレーニング性能を保つ一方、タイヤの設計者がタイヤ600のトレッドの空洞領域を30%から20%に低減することを可能にする。これは、タイヤ600の摩耗性能における20%の改善となり、あるいはタイヤの設計者が湿乾静止摩擦のような他の特性を改善することを可能にする。
【0062】
図17を見ると、この同じ試験手順が、タイヤ500、600の両セットに対して、様々な速度で、わずかに空気を抜かれた内部空気圧1.6バールおよびこれらに加えられる外方垂直荷重450Kgを以って適用された。各速度で行われた各試験に関する表面接触領域の合計が、元の接触領域で被削減表面接触領域を除することにより、元の表面接触領域と比較して正規化された。これらの値は垂直軸に沿って表示され、他方、速度は水平軸に沿って表示された。タイヤがわずかに空気を抜かれたとき、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600がハイドロプレーニングにおいて基準タイヤ500を超えるどのような利益を有するかを見るために低減された空気圧が用いられた。これはハイドロプレーニング性能のための貧弱なシナリオである。以上のように、両タイヤ500、600の性能は、速度が時速50kmに達するまでは同様であった。その後、タイヤ600はタイヤ500より多くの表面接触領域を維持し、約18の正規化領域で起こる、ハイドロプレーニング現象をそれが約時速88kmに達するまで起こさなかった。他方、タイヤ500は約時速80kmでハイドロプレーニング現象を起こし始めた。これは、前記可変せん断バンドが、空気式タイヤに典型的に見られる剛性の空気式要素により与えられるものを超える追加の構造的剛性を与えることを説明し、その結果として改善されたハイドロプレーニング性能を生じさせる。これは、タイヤの設計者にタイヤ600のサイドウォール690を薄くし、また、基準タイヤ500のハイドロプレーニング性能をなお維持しまたはこれを超えるようにするための特別な柔軟性を提供する。これは、同じく、転がり抵抗の低減をもたらすことができる。
【0063】
同様に、基準タイヤ500と前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600とが、両タイヤが2.1バールの内部空気圧まで完全膨張されたことを除いて、図17により表わされた結果に対する上述したのと基本的に同一の試験手順を用いて試験された。この試験の結果は図18に表わされ、また、図17で使用されたのと同じ形式で表わされている。前記試験結果は、約1.8の正規化された領域で起こった、タイヤ600についてのハイドロプレーニング現象が時速94kmの速度で起こったことを示し、他方、それは基準タイヤ500に関して約時速88kmで起こった。再び、ハイドロプレーニング現象が起こる前のこの時速6kmのゲインは、次の性能すなわちハイドロプレーニング、摩耗および転がり抵抗のうちの任意の2つを他の残りの性能を低下させることなしに改善する能力をタイヤの設計者に与える。
【0064】
図19、図20および図21は、標準内部空気圧2.1バールにおいておよび力変換器を有する試験機でこの分野において一般的に知られている手段により測定された垂直荷重410DaNにおいて、タイヤ500、600のリブR1、R2、R3、R4およびR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【0065】
図19により示されたZ応力を見ると、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600が、基準タイヤ500に関して同じリブ間で生じたように、リブR1およびR2間並びにリブR4およびR5間の比較的同じ勾配で、全てのリブR1ないしR5にわたってわずかに高い応力を発現させた。しかし、より大きい勾配(約5バール)が、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600に関してR2またはR4からR3に生じ、他方、タイヤ500に関して同じリブ間には実際に何の変化もなかった。これは、足跡の中央における圧力のこの増大が、タイヤ600が水に出会うときに変形に抵抗することに役立つように望ましいことであり、これにより、基準タイヤ500と比較したときにタイヤ600のハイドロプレーニング性能を改善する。また、タイヤ600の前記せん断バンドにより提供されるわずかに大きいZ応力もまたハイドロプレーニングを防止するのに役立つ。
【0066】
タイヤ600に関して図20に示されたY応力は基本的に基準タイヤ500に関するそれと同じであり、このような応力によって引き起こされ得る摩耗性能の無勾配が前記可変圧力せん断バンドを使用するときに起こるであろうことを示す。
【0067】
最後に、図21により表現されたX応力は、X応力が修正された構造に関して実際により良好に平衡化されていることを示す。特に、改善されたハイドロプレーニング性能のために望ましい、丸みのある足跡を有するタイヤに関して予期されるように、ショルダーリブ(R1、R5)は制動していないX応力を有し、また、中央リブ(R3)は駆動していないX応力を有する。前述したFEA結果を裏付ける、この現象は、さらに、基準タイヤ500および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600の足跡をそれぞれ示す図22および図23により説明されている。足跡は410DaNの垂直荷重および2.1バールの内部空気圧において取られた。前記修正された構造は、前記ショルダーが前記中央よりも著しく短い、丸みのある形状を有することに留意されたい。しかし、X応力は、中立繊維647の半径方向位置の変化のために、このタイヤ600に関して非常によく平衡化されている。その結果として、代わりのトレッド外形670’に利用されるようなより丸みを帯びた頂上が、先に言及したように、基準タイヤ500と比較したときにタイヤ600の摩耗性能を低下させることなしにハイドロプレーニングを改善するために前記可変圧力せん断バンドに関して使用されることが可能である。
【0068】
タイヤ500および600のハイドロプレーニング性能をさらに試験するため、これらが以下のような他の試験手順に従って試験された。第1に、似た構造の2つのタイヤが、前輪駆動を有する、アウディA4のような、車両の前輪に配置される。第2に、前記車両が、時速50kmの速度でアスファルト路盤上の8mmの深さを有する水を経て駆動される。好ましくは、この速度はクルーズ・コントロールを用いることにより維持される。一旦、前記車両が検証領域に至ると、ドライバは、駆動輪の速度と車両のGPS(全地球測位システム)速度との間に10%のスリップが発生しているかどうかを見るため、前記車両をできる限り早く30ないし50mの間加速させる。10%のスリップがもたらされれば、この同じ試験走行が3回以上繰り返される。10%のスリップがもたらされなければ、そのときは、前記試験走行が最初の車両速度に時速5kmを追加することにより行われる。このステップは、次に、10%のスリップがもたらされるまで繰り返される。一旦10%のスリップがもたらされると、そのときは、前述したと同じ条件でさらに3回の走行が行われる。通常、合計5回の走行が、最初と最後の走行は参照のみのために、なされる。次に、データがこれらの走行から入手され、10%のスリップが生じる車両速度に対応する、ハイドロプレーニングが起こる速度の統計的に関連性のある計算がおこなわれる。
【0069】
この試験手順を用いるとき、基準タイヤ500に関してハイドロプレーニングが約時速57.5kmで起こり、他方、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600に関してハイドロプレーニングが約時速61kmで起こることが発見される。これは、前記可変圧力せん断バンドが摩耗または転がり抵抗性能を低下させることなしにタイヤのハイドロプレーニング性能を改善することができるさらなる証明を提供するこれらのタイヤ間に少なくとも5%の改善があることを示す。
【0070】
本発明がその特定の実施形態を参照して説明されたが、このような説明が解説を目的としまた限定を目的としないことは理解されなければければならない。例えば、本明細書では従来のサイドウォールおよびビードセクションを有する空気式タイヤの使用を含めて検討された。しかし、本発明が非空気式タイヤ、複合タイヤおよび他の製品、そのうえ車両のホイールにタイヤを接続するためのウエブスポークを使用するそれらを含む様々な構造を有するもので使用され得ることは予期される。また、対称なタイヤが本明細書で主に検討されたが、非対称のトレッドを有するタイヤもまた本発明の範囲内にあることは予期される。したがって、本発明の範囲および内容は添付の請求の範囲の用語によってのみ規定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、タイヤのためのより良いハイドロプレーニング性能を提供する改良設計に関し、より詳細には、タイヤに増大された構造的剛性を与え、これにより水に出会ったときのタイヤの変形に抵抗するように働き、タイヤのハイドロプレーン性向を軽減する、タイヤのトレッド下に配置された可変圧力せん断バンドを有するタイヤに関する。有利なことに、可変圧力せん断バンドは、摩耗性能を低下させることなしにハイドロプレーニング性能と転がり抵抗とを同時に改善することができる。
【背景技術】
【0002】
空気式タイヤの分野の当業者は、トレッド摩耗、取り扱い、乾湿静止摩擦、転がり抵抗等に関する様々な性能の組み合わせを得るためにタイヤ構造の適用において豊富な経験を発展させてきた。
【0003】
この適用の一例として、空気式タイヤは、外方の表面(一般的にはトレッド)とタイヤが転動する地面との間のタイヤの接触領域における垂直応力及び接線応力に関して、最適化される。例えば、良好なトレッド摩耗は、タイヤと地面との間の前記垂直応力が前記接触領域を介して均一に分布されかつ前記接線応力が最小にされるときに得られる。特に、転がり方向における前記接線応力は、前記接触領域の幅にわたって強度に正から強度に負に変化すべきではない。しかし、濡れた路面上におけるハイドロプレーニング現象に対するタイヤの抵抗をより良く改善するため、前記接触領域の中央部に、前記接触領域のショルダーすなわち横方向部分と比べて高い垂直接触応力を有することが有利である。これは、通常、タイヤ構造を適合させ、あるいは、最適化された摩耗に望ましいことよりもより丸みを帯びているタイヤの横方向外形を得るために成形横方向外形を養生することにより達成される。このケースでは、空気式タイヤは転がり方向に、前記中央部では著しい正となりかつ前記ショルダー部では負となる、不均衡な接線方向応力を有する。したがって、空気式タイヤでは、当業者には、摩耗抵抗およびハイドロプレーニング抵抗を同時に最適化することについての困難がある。
【0004】
空気式でないかまたは構造的に支持されたタイヤがこの分野において開示されている。例えば、本発明の出願人との共有に係る米国特許第6,769,465号明細書は、内部空気圧なしに負荷を支える構造的に支持された弾性タイヤに関連する。代表的な実施形態において、この非空気式タイヤは、接地部と、該接地部から半径方向内方に伸びるサイドウォール部と、タイヤが転がる間にホイールへの固定を維持するように適合されたビード部のアンカーとを含む。補強された環状バンドが、前記接地すなわちトレッド部の半径方向内方に配置されている。このせん断バンドは、少なくとも1つのせん断層と、該せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む。米国特許第6,769,465号に係る発明は、例えば、一部または無膨張圧力で機能する能力と、接地圧力とは幾分か独立した垂直合成を調整するための可撓性とを含むいくつかの利点を提供する。本発明も、また、前記接触領域の全部にわたって比較的良好な平衡接触圧力を与える。
【0005】
他の例として、本発明の出願人との共有に係る米国特許第7,201,194号明細書も、また、非空気式タイヤに関連する。代表的な実施形態において、この非空気式タイヤは、外方環状せん断バンドと、該環状バンドを横切りかつ前記環状溝から半径方向内方に伸びまたホイール又はハブに固定された複数のウエブスポークとを含む。ある実施形態において、前記環状せん断バンドは、さらに、せん断層と、該せん断層の半径方向内方の範囲に接着された少なくとも第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方に接着された少なくとも第2の膜とを含む。また、必要とされる膨張圧力なしで機能する前記能力に加えて、米国特許第7,201,194号は、前記接触領域の長さの全部にわたるより均一な接地圧力を含む利点を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
参考文献の代表的な実施形態について前述したように、両者は、タイヤに所望の性能利益を提供するためにせん断層を含む環状せん断バンドを利用した。以下に述べるように、出願人等は、他の性能を低下させることなしに摩耗またはハイドロプレーニングを改善することができる、前記せん断層およびある実施形態ではさらにトレッドの特性についての有利な構造を発見した。あるケースでは、転がり抵抗も改善される。前記せん断層およびトレッドのためのこの改善された構造は、空気式タイヤ、非空気式タイヤ、環状バンドからの構造支持体に関連して低減膨張圧力で機能するハイブリッドタイヤ、さらに他の製品に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の特定の実施形態は、半径方向、長手方向および軸方向と赤道面とを有する接触部を備えるタイヤを含む。このタイヤは、さらに、積(Geff*h)が前記タイヤの軸方向に変化する断面を有するせん断層を備える可変圧力せん断バンドと、前記せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む。あるケースでは、このようなタイヤの前記せん断層は、該せん断層の高さ(h)が変化するにつれて比較的一貫性のあるGeffを有する材料で構成されている。
【0008】
このケースでは、前記接地部はトレッドであって該トレッドの各軸方向範囲に位置するショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有するトレッドを備える。
また、前記せん断層はその各軸方向範囲に位置するショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有する。前記せん断層のショルダー部と中央部とは、それぞれ、実質的に前記トレッドのショルダー部と中央部との半径方向下方に見られる。前記せん断層は、該せん断層がそのショルダー部からその中央部へ進むにつれて半径方向内方の方向へ増大する厚さを有する。
【0009】
さらに、前記せん断層は、そのショルダー部において最も薄くかつその中央部において最も厚い。また、前記せん断層の中立繊維は、前記せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて、前記中立軸が実質的に前記タイヤの赤道にあるその最も低い位置に至るように、半径方向内方へ移動する。この特定の実施形態では、前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む。
【0010】
このケースでは、前記トレッドは、前記タイヤの赤道面の近くに増大された半径方向厚さを有する。
【0011】
他の実施形態では、前記せん断層は、該せん断層に関して変化する(Geff*h)をもたらすGeffの異なる値を有する複数の軸方向配置部分を含む。
【0012】
さらに他の実施形態では、前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、該トレッドのショルダー部は前記中央部と異なる材料特性を有する。前記中央部は、前記トレッドのショルダー部に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを有する。
【0013】
他の実施形態では、前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドの中央部は、前記トレッドのショルダー部と比較したときに前記トレッドの中央部の増大された長手方向せん断コンプライアンスをもたらす長さ(B)の複数のトレッド要素を規定する幅(H)の横方向へ向けられた複数の溝を含む。パラメータ(H/B)は長手方向コンプライアンスのレベルの指標である。
【0014】
あるケースでは、前記せん断バンドの第2の膜は実質的に非伸長性であり、他方、前記第1の膜は圧縮に抵抗する。これは、前記せん断バンドが、タイヤが水に出会ったとき、変形に抵抗することに役立ち、これにより、前記タイヤのハイドロプレーニング性能を改善する。
【0015】
このケースでは、前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む。前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−(15ないし25)度に置かれた複数のスチールコードを含む。特定の実施形態では、前記第1および第2のクロスプライベルトは+/−22度に置かれた複数のスチールコードを有する。
【0016】
代わりに、前記第1および第2の膜は、実質的に前記タイヤの長手方向に置かれた複数の環状補強を含む。これらの補強は、実質的に前記タイヤの長手方向に沿って巻かれかつ前記タイヤの半径方向に沿ってペースが設置された1または複数のスチールコードを含む。
【0017】
本発明の先の及び他の目的、特徴及び利点は、同様の参照番号が本発明の同様の部分を表わす添付図面に示されているように、以下の本発明の特定の実施形態のより詳細な説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】タイヤ100の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図2】中央および横方向の両部を含むせん断層を有するタイヤ200の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図3】弓状の外形に従う外方膜と可変厚さのせん断層とを有するタイヤ300の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図4】中央および横方向の両部を含むせん断層と中央および横方向の両セクションを含むトレッド層とを有するタイヤ400の典型的な実施形態の子午面を通る断面図を示す。
【図5】赤道面を通して得られた、トレッド溝の配列を示す概略図である。
【図6】タイヤ100の典型的な実施形態の斜視図である。
【図7】タイヤ200の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である(レベル1)。
【図8】タイヤ200の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である(レベル2)。
【図9】タイヤ300の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ100の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力の等高線を示す描写である。
【図10】0.5のH/Bを有するタイヤ400の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ200の典型的な実施形態に関する接線接触応力の等高線を示す描写である。
【図11】1.0のH/Bを有するタイヤ400の典型的な実施形態と比較したときの、タイヤ200の典型的な実施形態に関する接線接触応力の等高線(レベル1)を示す描写である。
【図12】タイヤ100、200、300および400の典型的な実施形態に関する垂直及び接線の両接触応力のグラフ表示であり、リブ番号R2はトレッドの中央セクションに対応し、また、リブ番号R1およびR3は横方向部分に対応する。
【図13】構築されかつ試験がなされた可変圧力せん断バンドを有しない従来のタイヤ構造を有する500の断面図である。
【図14】実際のタイヤに600に組み込まれかつ試験がなされた可変圧力せん断バンドを有する本発明の一実施形態を示す。
【図15】試験中に取られた写真に基づく、標準内部空気圧2.1バールでまた時速88キロメートルで水の中を移動する間における従来のタイヤ500と地面との間の接触領域を示す。
【図16】試験中に取られた写真に基づく、標準内部空気圧2.1バールでまた時速88キロメートルで水の中を移動する間における可変圧力せん断板を有するタイヤ600と地面との間の接触領域を示す。
【図17】わずかに空気を抜かれた内部空気圧1.6バールで水の中を様々な速度で移動する間における従来のタイヤ500と地面との間および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600と地面との間の接触領域の面積を示すグラフである。
【図18】標準内部空気圧2.1バールで水の中を様々な速度で移動する間における従来のタイヤ500と地面との間および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600と地面との間の接触領域の面積を示すグラフである。
【図19】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図20】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図21】標準内部空気圧2.1バールおよび410DaNの負荷でのタイヤ500、600のリブR1ないしR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【図22】標準内部空気圧2.1バールおよび負荷410DaNでのタイヤ500の足跡を示す。
【図23】標準内部空気圧2.1バールおよび負荷410DaNでのタイヤ600の足跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特定の実施形態の詳細な説明
これから、本発明の複数の実施形態について詳細に述べる。1以上の例が複数の図に示されている。各例は本発明の説明のために提供され、本発明の限定を意味しない。例えば、1つの実施形態の一部として示されまたは説明された特徴は、他の実施形態でさらに第3の実施形態を得るために使用され得る。本発明はこれらのおよび他の修正、変更を含むことを目的としている。考察の目的のため、典型的なタイヤの複数の実施形態の半分のみが1以上の図に示される。参照番号は、様々な要素を識別する際に読み手を専ら補助するために、図において使用されている。一実施形態のための共通のまたは同様の番号付けは、他の実施形態における同様の要素を示す。この分野における通常の技術を有する者は、本明細書に開示される教示を用いて、同一または実質的に同様の特徴がタイヤの両側で繰り返されることを理解するであろう。
【0020】
定義
以下の用語はこの開示のために以下のように定義される。
【0021】
本明細書で用いられる「複合物」は、2以上の層から構成されることを意味する。
【0022】
「ホイール」または「ハブ」は、タイヤを支持しまた車両の車軸に据え付けるための任意の装置または構造に言及し、また、このような用語は本明細書においてはどちらを使っても変わりがない。
【0023】
「動的せん断係数」は、ASTM D5992によって測定されたせん断係数を意味する。
【0024】
「破断点伸び」は、ASTM D412‐98aによって測定されまた周囲よりもむしろ100℃で実施された引張伸びを意味する。
【0025】
「ヒステリシス」は、動的損失のタンジェント(最大tanδ)を意味する。材料の動的特徴は、ASTM D5992に従ってMTS 831 エラストマー試験システムで測定される。振動数10Hzおよび80℃での交互単一正弦曲線せん断応力に従う、加硫材料のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面の円筒形テストピース)の応答が記録される。走査は、0.1ないし50%(外側周期)、次いで50%ないし0.1%(回帰周期)の歪みの振幅で行われる。最大せん断係数G*はMPa内で最大であり、また、損失角度のタンジェント、タンジェントデルタ(最大tanδ)の最大値は前記外側周期の間に決定される。
【0026】
膜の「係数」は、周方向における1%の伸びでの弾性の引張係数を意味する。この係数は、従来のタイヤのスチールベルト材料のための下記の式2または3により計算することができる。この係数は、「Emembrane」と記される。
【0027】
「赤道面」は、タイヤの中心線を通る前記タイヤの回転軸に垂直な面を意味する。
【0028】
「子午面」は、タイヤの回転軸に平行でありかつ該軸から半径方向外方へ伸びる面を意味する。
【0029】
「半径」方向は、半径方向外方かつ前記回転軸に対して垂直を意味する。
【0030】
右手直交座標系において、前転方向は正のx方向として定義され(また、タイヤの周方向または長手方向として言及される)、垂直なz方向は地面から正の上方向として定義され(また、タイヤの半径方向として言及される)、また、y方向は前記回転軸に平行でありかつ左側に正である(また、タイヤの横方向又は軸方向として言及される)。例えば、図6参照。
【0031】
プライの複数のコードまたはケーブルについて本明細書で使用される「圧縮率」(Ec)は次のように定められる。モールドが以下の寸法、すなわち長さ50mm、幅30mmおよび厚さ25mmで制作される。前記ケーブルは、2つの長方形の支持体(梁)を用いて一方が他方に対して平行な配向で正確に配置される。前記ケーブルはこれらの支持体の穴を通り抜け、互いに40mmの間隔をおいて平行に配置される。前記穴間の間隔は前記ケーブルの正確なペースを確保する。前記ペースはタイヤ内の前記プライで用いられるペースを反映する。2つの支持体間の間隔(40mm)は、前記支持体と前記ケーブルとが前記モールド内に配置され得るように、前記モールドの長さ(50mm)より短い。前記ケーブルおよびこれらの支持体は、次に、前記ケーブルが前記モールドの中央に前記厚さ方向に設置されるように、モールド内に配置される。前掲の寸法に関して、これは、複数のケーブルの中心線が前記モールドの底から約12.5mmにあることを意味する。液体ポリウレタンが前記モールド内に注ぎ込まれ、前記モールドを満たす。次に、前記モールドが110℃で24時間オーブン内に配置される。養生後、結果として生じるサンプルは前記長手方向に2つの側部から突き抜ける複数のケーブルを有する。前記サンプルは、これらの端部が薄い厚さのポリウレタンと共に分離されるように、のこぎりで切断される。おおよその最終的長さは40mmである。切断は、本来前記サンプルの幅に等しい前記ケーブルの長さに関して垂直である断面を確保するために、注意深くコントロールされなければならない。同じモールドを用いて、ケーブルを有しない、ポリウレタンのみからなるサンプルが準備される。このサンプルは、前記ケーブルを含むサンプルと同様の方法で養生され、ケーブルを有する前記サンプルと同じ外法寸法に切断される。
【0032】
測定の準備が整ったら、前記サンプルがINSTRON試験機のタイプ44666の2つの金属プラテン間に配置され、25mm/分の割合で圧縮される。INSTRON機は力対偏差を記録するために用いられる。測定は少なくとも5つのサンプルについてなされる。基本ケーブル圧縮率が、ケーブルを有する準備サンプルの力対偏差の測定値からケーブルを有しない準備サンプルの力対偏差の測定値を差し引くことにより、計算される。結果として生じた力対偏差の値は、以下の式を用いて、前記ケーブルの有効圧縮率をコンピュータ計算するために使用される。
εc=圧縮歪み=圧縮偏差/最初のサンプル長さ
σc=圧縮応力=圧縮力/面積
ここにおいて、面積=前記サンプルに含まれる複数のケーブルの総断面積
Ec=圧縮率(Ec)=σc/εc
【0033】
「無限疲労限度」は、以下の試験方法により決定されるように、基準材料がその引張係数の10パーセントを超える損失なしに少なくとも100万回の繰り返しの規定圧縮歪みを保証することができることを意味する。Zwick1841試験機を用いて、前記材料のコードまたはストランドがループの形状に配置され、前記コードの一端が定着されかつ他端が強制周期変位に取り付けられる。前記ループはテフロン(登録商標)の2つのシート間に保持される。前記フープの開始直径は、前記ループを.67パーセントの圧縮歪みεcにおくことにより決定される。ここにおいて、
εc=D/(2R)
D=前記材料のコードまたはストランドの直径
R=(.5)*(前記ループの開始直径)
【0034】
次に、前記材料は、周期的に、3Hzの周波数で所定の圧縮歪み下に置かれる。
繰り返しは、前記材料の特性が下がり始めることを示す、.67パーセントの圧縮歪みにおいて測定された力がその最初の値の90パーセントに低下するまで続けられる。次いで、これが起こる繰り返し数が決定される。前記材料が90パーセントに低下する前に規定圧縮歪みでの少なくとも1,000,000回の繰り返しに耐えることができれば、その時は本明細書で使用されているように、前記材料は前記規定圧縮歪みでの「無限疲労限度」を有する。
【0035】
本明細書で使用される「ペース」は、所与のプライ内の複数のコード間の距離を意味する。
【0036】
FEA検討の詳細な説明
最初に、発明者のコンセプトの実現可能性を確かめるためにFEA検討が行われた。そのため、可変圧力せん断バンドを使用する非空気式タイヤが、三次元(3D)の、動作要素のモデルの有限要素構造解析(FEA)により、本明細書において説明される。前記モデルは無負荷タイヤに関して軸対称であるが、地面と転がり接触状態にある負荷タイヤに関しては完全な三次元状態にある。タイヤ100に関して図1および図6に示すように、前記せん断バンドが、せん断層140の半径方向外方及び内方の両面に関連して2つのほとんど広げることができない膜130および140を含む組立体としてモデル化されている。せん断層140は、非圧縮性の線形材料からなる1以上の層を含む。地面との接触のためのトレッド層110は、前記せん断バンドの半径方向外方に置かれている。選択的に、トレッド層110は、1以上の長手方向トレッド溝115を有する。本明細書に開示されたタイヤの実施形態においては、前記トレッド層が3つのリブ、すなわちショルダーリブR1およびR3と、中央リブR2とに分けられている。また、非圧縮性の線形材料の特徴が、トレッド層110をモデル化するために使用される。前記せん断バンドは、半径方向に圧縮可能でありかつ伸展性に堅固である複数のFEA要素を含むウエブ構造150に接続されている。これらの要素の半径方向圧縮剛性は零であり、また、前記ウエブ要素は柔軟であるが前記せん断方向に零でない剛性を有する。前記ウエブ要素の内方エッジ160は堅いホイール(図示せず)に接続される。すなわち、ウエブ構造150は、前記面との接触領域90の前記トレッドの一部からの直接の作用による荷重を支持する能力をほとんどまたは全く持っていないが、前記接触領域から負荷される引張荷重を前記ウエブ要素を介して支持する。前記FEAモデルは、断面内の線形フォーミュレーションすなわち子午面を有する複数の構造要素を用いる。前記FEAモデルは、要素が前記接触領域外にあるときに周方向に二次のフォーミュレーションを有する。前記FEAモデルは、要素が接触領域90内にあるときに線形フォーミュレーションを有する。
【0037】
タイヤ100のせん断バンドがせん断層140のせん断変形により実質的に変形すると有利な関係が生じ、所与の適用のための層140の有効動的せん断係数Geffおよびその厚さhの値を特定することが可能である。
Peff=(Geff*h)/R (1)
ここにおいて、
Peff=予め定められた接地圧力
Geff=層140の有効動的せん断係数
h=せん断層140の厚さ
R=外方の非伸長性膜130の半径方向位置
PeffおよびRは、タイヤの使用目的に従って選択される設計パラメータである。次に、前記式が、前記せん断層の有効動的せん断係数Geffとせん断層140の半径方向厚さとの積が予め定められた接地圧力と外方の膜130の最外方の半径方向位置との積に等しいこと、を推定する。前記した関係は、タイヤを設計する者にとって有利である。例えば、乗用車への使用を目的とするタイヤを設計するため、設計者は設計接触圧力1.5ないし2.5DaN/cm2のPeffと、半径方向Rが約335mmであるタイヤサイズとを選択するであろう。これらの値を乗じることにより、50.25ないし83.75DaN/cmの「せん断層係数」が決定され、これは、せん断層140の厚さhとせん断層140の有効動的せん断係数Geffとを特定するために使用することができる。
【0038】
前記FEAモデルのため、膜120および130の引張係数が100,000MPaに設定され、これは、タイヤベルト材料に使用されるような、零度スチールケーブルの最密巻線に対応する。ゴム中に埋め込まれる相互に曲げられたコード補強を有する一組の補強プライのような代わりの構造のため、以下の式2が引張係数の適正な推定を提供する。
【0039】
【数1】
【0040】
ここにおいて、
ERUBBER=コーティング材料の引張係数
P=コードの方向に垂直に測定されたコードのペース(コードの中心線間隔)
D=コードの直径
α=赤道面に対するコード角度
t=隣接する層内のケーブル間のゴム厚さ
E’MEMBRANEは、前記膜の有効厚さの、前記膜の弾性係数倍であることに留意されたい。割合E’MEMBRANE/Geffが比較的低いと、前記環状バンドの荷重変形は均質なバンドのそれに近似し、また、不均一な接地圧力を生じさせる。他方、割合E’MEMBRANE/Geffが十分に高いと、例えば100より大きいと、負荷された前記環状バンドの変形は、基本的に、長手方向伸長または圧縮がほとんどない前記膜を有するせん断層140のせん断変形による。したがって、接地圧力は実質的に均一である。
【0041】
複数の補強コードが前記赤道面に対して10度以下で方向付けられている膜に関して、
前記膜の引張係数を推定するために以下を用いることができる。
E’MEMBRANE=ECORD*V (3)
ここにおいて、
ECORD=前記コードの引張係数
V=前記膜内のケーブルの体積分率
同質の材料または繊維若しくは他の材料補強マトリクスを含む膜に関して、前記係数は前記材料またはマトリクスの引張係数である。加えて、前記複数のせん断層が本明細書では単一の複数層として示されているが、これらは、例えば本出願人の共有に係る国際特許出願の国際公開第2008/045098号に記載されているように、異なる特性を有する1以上の材料層の複合構造を含むものであってもよい。
【0042】
再度、図1および図6を参照すると、タイヤ100は、205/60R15空気式タイヤに類似する、外径すなわち330mmと軸方向幅200mmとを有する。タイヤ100のトレッド層110に関するモデルは、地面に接する前記トレッドの一部がしっかりと貼り付けられまたスリップをしないことを前提とする。本明細書に記載された様々な実施形態に関して、タイヤは平坦面で一定の垂直荷重200kgを負荷される。これは、真っ直ぐにかつ外部から加えられた駆動トルクまたは制動トルクなしに転がる負荷されたタイヤには妥当な近似値である。以下の幾何学的および物質的パラメータは例示的な既知のタイヤの材料である。しかし、前記タイヤのモデルはこれらのパラメータの値に限定されない。トレッド層110は5MPaの係数と、10mmの半径方向厚さとを有する。膜120および130は、100,000MPaの引張係数と、1mmの半径方向厚さとを有する。せん断層140の材料は、1.67の有効せん断係数と、20mmの半径方向厚さとを有する。最後に、ウエブ構造150は、1MPaの引張係数と、0.0001の圧縮係数と、49mmの半径方向厚さとを有する。ウエブ構造150のこの引張係数は、約30MPaの引張係数を有する材料で作られた別個の複数のスポークを有する完全三次元モデルの半径方向剛性にほぼ等しい。
【0043】
図7および図12は、タイヤ100に関して、接地圧力SZと、今述べた設計パラメータのためのx方向接線歪みSXとを示す。表1は、定量的結果の概要を提供する。タイヤ100の幾何学的形状と既定の材料特性とに関して、式(1)は10バールの理想接触圧力Peffを生じさせる。表1中に見られかつ図12にグラフで示された計算値0.92バールが都合よく理想値に匹敵する。したがって、前記FEAモデルは実際のタイヤの挙動の信頼性のある表現である。図7は、前記接触領域の形状の図と、応力分布の等高線図とを提供する。垂直応力SZが実に全接触領域のいたるところで分布しており、非空気式タイヤ100の空気式のような挙動を明示している。
【0044】
式(1)の接地圧力Peffを推定するための関係を考慮する。タイヤに関して、外方の膜の半径Rが同一である場合、そのときは積(Geff*h)が前記接触圧力のための制御因子であることは明らかである。その結果、Geffまたはhのどちらか、あるいは双方の増大が、タイヤの接触圧力を増大させるように強制される。さらに、タイヤは、積(Geff*h)の第1のレベルを有する材料を含む少なくとも第1の部分と、積(Geff*h)の第2のレベルを有する少なくとも第2の部分とを備えるように構成される。それぞれが積(Geff*h)の特定のレベルを有する横方向に配置された複数の部分を備えることは本発明の範囲内である。これらの部分は、個々のゾーンであることを必要とされず、また、積(Geff*h)のレベルの連続した変化を含んでよい。
【0045】
タイヤ200として図2に示された典型的な実施形態は、前記せん断層の材料特性の変化を通して積(Geff*h)をコントロールする原理を利用する。特に、この実施形態は中央部244と複数の横方向部すなわちショルダー部242を含むせん断層を有し、ここにおいて、各部はせん断係数Geffのような異なる材料特性を有する。一例において、中央部244は3.3MPaのせん断係数(レベル1)または6.6MPaのせん断係数(レベル2)を有し、横方向部242は1.67MPaのせん断係数のままである。図7および図8は、基準のタイヤ100を、係数レベル1および係数レベル2にそれぞれ対応するタイヤ200(レベル1)およびタイヤ200(レベル2)という表示が付けられた実施形態と比較する。結果は、前記中央部の増大された接触圧力SZをはっきりと明示する。表1は、タイヤ200(レベル1)に関して、前記中央部における平均圧力SZが平均で約40%(0.93バールから1.39バール)近い増大であることを定量的に明示する。タイヤ200(レベル2)関して、前記増大は約120%(0.93バールから2.18バール)である。注目すべきは、前記ショルダー部の平均接触圧力が基準タイヤ100に関する値の5%以内のままである。これは、似たような材料特性変化を使用する空気式タイヤへの期待と比較して、全く予想外の結果である。空気式タイヤについて、当業者が期待したのは漸進的変化だけである。本発明のこれらの実施形態のもう一つの注目すべき利点は、前記中央部と前記横方向部との間の推移に関する限定された「末端効果」である。図7および図8の双方に見られるように、前記中央部の高負荷領域がトレッド溝215間の幅のほぼ全部に伸びている。したがって、タイヤ200の実施形態も、車両に据えられたときを見ると、タイヤの内側又は外側に関する非常に異なった負荷および垂直剛性を有する非対称タイヤを得るために適用可能であろう。
【0046】
タイヤ300として図3に示されている他の典型的な実施形態では、せん断層340の厚さhの変化を通して積(Geff*h)をコントロールする前記原理を適用する。タイヤ300は、前記外方の非伸長性膜が500mmの半径Rを有する弓形の外形にすぐに追随することを除いて、タイヤ100と同じである。結果は、せん断層340の厚さhが前記中央部における最初の19mmから横方向の両端における9.5mmに変化する。トレッド310は一定の厚さ=10mmのままである。実際上、図3に見られるように、タイヤ300は、当業者が前記接触領域の中央部における増大された接触圧力を提供するように提案する丸みのある外形の空気式タイヤに似ている。しかし、タイヤ300の前記実施形態は、完全に非空気式構造として、そのままである。図9は、基準タイヤ100に対するこの実施形態のタイヤ300の比較を提供する。タイヤ100のほぼ矩形の形状と比較して、タイヤ300の前記接触領域の形状が非常に丸みを帯びていることがすぐに見て取れる。図9は、さらに、非常に高い圧力の、最適化された摩耗には望ましくない何かの個々のゾーンを含むことを明確に示す。しかし、表1に示されたモデルのデータは、前記せん断層の厚さの変化が前記平均接触圧力を修正するために極めて効果の乏しい提案であることを明確に示す。基準タイヤ100と比較して、タイヤ300の中央部における平均接触圧力SZはたった25%しか増大していない(0.93バールから1.16バール)。丸みのある外形の使用は、空気式タイヤについて既知の設計上の取組みで提案されていたように、役に立たないと断定されるかもしれない。
【0047】
前述の実施形態は、非空気式タイヤ200および300における垂直接触応力SZのコントロールを得るための典型的提案を示す。接触中央部における増大された接触圧力は静止摩擦向上のために有利である。しかし、タイヤは、また、完全な顧客満足を提供するためにトレッド摩耗で良い性能を示すものでなければならない。先に検討したように、釣り合いのとれた接線応力(特に、x方向応力SXの平均値)はトレッド領域の幅全体のトレッド摩耗にも有利に働く。再び表1と、表1のデータをグラフで示す図12とを参照すると、基準タイヤ100の結果としての接線応力SXは、前記中央部に僅かに正のすなわち「駆動」応力を、また、前記両横方向部にはわずかに負のすなわち「制動」応力を明確に示す。一般に、受け入れ可能のトレッド摩耗を得るためには、前記接触領域内での大きい制動応力は回避されるべきである。タイヤ200(レベル1)に関して、接線応力が約0.05バールまで増大し、前記中央で駆動し、また前記ショルダーで制動するにつれて不均衡が現れ始める。タイヤ200(レベル2)に関して、中央セクションの増大された係数は接線応力を約0.09バールにまで約2倍にし、再び、前記中央で駆動し、また前記ショルダーで制動する。タイヤ300、丸くされた頂上の実施形態は、受け入れがたい大きい駆動応力を前記中央に(約0.29バール)また制動を前記横方向部に(約0.7バール)生じさせる。
【0048】
本発明者は、トレッドセクションの長手方向コンプライアンスに対する変化により垂直応力および接線応力の分布および大きさが最適化されることを見出した。図4に示すように本発明のさらに他の典型的な実施形態では、タイヤ400に関して、前記トレッド層が、各セクションが異なる材料特性を有する中央トレッドセクション414と横方向すなわちショルダー・トレッドセクション412とを含む。タイヤ400の特定の例では、2つの周方向溝415間のトレッドセクション414が修正されている。トレッドセクション412に対応するトレッド材料1はタイヤ100と対比して変更されない。中央トレッドセクション414に対応するトレッド材料2は、トレッドセクション412に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを反映するように修正される。本発明の範囲内のさらに他の実施形態では、タイヤは既定セットの材料特性を有する複数の横方向に分配された複数のトレッドセクションを有する。
【0049】
タイヤ400の典型的な実施形態では、この修正されたコンプライアンスが、前記トレッドセクションに横方向に向けられた複数の溝を加えることで生じる。タイヤ400のさらに他の実施形態では、修正されたコンプライアンスが各トレッドセクションのための直交異方性材料特性を通して得られる。図5はタイヤ400の赤道面を通る概略的な断面を表わし、タイヤ400は、複数の分離したトレッド要素、例えば複数のブロックを規定することとなる前記タイヤの周囲に間隔を置かれた複数の横方向に向けられた溝416を有する。本明細書で用いられるように、横方向に向けられた複数の溝の意味は、長手方向溝415に対してこれを横切るかまたは角度をなすように向けられた複数のサイプのような、それらの溝または複数の薄い切り込みを含む。図5に表わされているように、曲げ変形に関して、ブロック417は、ブロックBの周方向長さおよびトレッド幅Hの機能を表わす。パラメータ的には、コンプライアンスのこのレベルは、パラメータH/Bにより表わされ、ここにおいて、高い値のH/Bは低い値の曲げ剛性を有するトレッドセクションを表わす。説明に役立つ例として、また、物理的説明を提供するために、値が零のH/Bは連続したリブに対応する。値が約0.3のH/Bは夏タイヤに対応し、また、値が約0.6のH/Bはオールシーズンタイヤに対応する。
【0050】
タイヤ400の前記FEAモデルは回転体である幾何学的形状を維持するが、トレッドセクション414の複数の前記要素は、トレッドブロック417の曲げ変形のパラメータH/Bを明らかにするために修正された剛性を有する。タイヤ400のこの特定の例では、前記トレッドコンプライアンスが0.5および1.0の値のH/Bに設定された。全ての他の点において、タイヤ400はタイヤ200(レベル1)の特性を保持する。タイヤ400の前記接触圧力のFEA結果が得られた。図12および表1に示されたデータは、トレッドまたはタイヤ400における増大されたコンプライアンスが前記トレッドの中央部における垂直応力SZの所望の増大にはわずかな効果でしかないことを明確に示す。特に、タイヤ200(レベル1)は、中央のリブに関して1.39バールの値のSZを発生し、ここにおいて、タイヤ400の両例は約1.30バールのSZを有する有利な中央負荷を維持する。タイヤ400の前記実施形態の明確な利点は、接線応力SXの検査により明確に示される。ここで、約1.0の値のH/Bに対する中央リブのコンプライアンスの調整により、前記トレッド部の全幅を横切る基本的に零の接線応力が発生される。この結果は、基準タイヤ100のための予測された接線応力より非常に良好な平衡である。したがって、タイヤ400により説明された本発明の実施形態は、静止摩擦のための望ましい中央負荷を提供し、他方、実際に接線応力の分布を改善する。したがって、タイヤ400は、空気式タイヤにおいて固有の妥協を壊すことができる。
【表1】
【0051】
工業的利用の詳細な説明
前記FEA検討の期待できる結果を前提として、本発明者は、実際のタイヤへの可変圧力せん断バンドの原理の適用を進めた。従って、このタイヤと、環状のせん断バンドを欠く基準タイヤと、両タイヤの試験結果との詳細な説明が以下に提供される。
【0052】
図13を参照すると、標準的な空気式タイヤ構造を有するタイヤの子午面に沿って得られた、補強されたせん断バンドを欠くタイヤ500の断面図が示されている。この標準の構造は、第1のクロスプライベルト520が着座するタイヤ500の内部に近接するカーカスプライ510を含む。第2のクロスプライベルト530が第1のクロスプライベルト520の上方に置かれ、また、ゴムの薄いセクション540により第1のクロスプライベルト520から分離されている。ゴムのこのセクションは、それが必要不可欠なもの(Geff*h)を欠くため、可変圧力せん断層として振る舞わない。ベルト520、530も、また、これらが必要な引張係数を欠くため、非伸長性膜として振る舞わない。前記タイヤの実質的に長手方向すなわちx方向へタイヤ500の周りに巻かれかつ前記タイヤの半径方向すなわちy方向に沿ってペースが設置されているナイロンストリップ550が、第2のクロスプライベルト530の頂面上に配置されている。ナイロンストリップ550の目的は、タイヤの高速耐久性を増大させて、高運転速度でのベルト分離の可能性を低減することにある。また、タイヤ500は、該タイヤ内に空気または気体の保持に役立つ、タイヤ500の内部にインナーライナー560を有する。インナーライナー560はタイヤの膨張圧力を保持することができる任意の適当な材料で構成され、好ましくはハロブチルゴムで構成される。複数の溝58を有するトレッド部570が、それが水等を通過するとき、ベルトパッケージおよびタイヤ500の静止摩擦を改善するための環状補強の頂面上に見られる。トレッド570の溝58は、前記トレッドの表面がより容易に水を突き抜けて地面に接触するように、水の消費を提供する。
【0053】
この特定の実施形態では、タイヤ500のサイズがトレッド部570の幅W570が約165mmであり、また、タイヤ500は赤道面E‐Eの両側のビードセクション(図示せず)に終わる両サイドウォール590により車両のホイール上に保持される。タイヤ500の構造は赤道面E‐Eに関して対称である。
【0054】
反対に、図14は、可変圧力せん断バンドの特定の実施形態を採用する空気式タイヤ600の子午面に沿って得られた断面を示す。このタイヤ600は、インナーライナー660と、カーカスプライ610と、複数の溝680を有するトレッドセクション670と、タイヤ500に関して前述されたものと同様の第1のクロスプライベルト620および第2のクロスプライベルト630を含むベルトパッケージとを有する。また、それは、約165mmであるトレッド部670の幅W670を有する205/55R16サイズのタイヤである。それも、また、赤道面E‐Eの両側のビードセクション(図示せず)に終わる両サイドウォール690により車両のホイール上に保持される。タイヤ600の構造もまた赤道面E‐Eに関して対称である。しかし、それは、基準タイヤ500と比較したとき、次の構造上の違いを有する。
【0055】
第1に、それは、米国特許第7,032,637号により開示された材料で作られ、タイヤの長手方向すなわちx方向に螺旋状に巻かれかつタイヤの軸方向すなわちy方向にペースが設置された複数のガラスモノフィラメントのプライの形態をとるカーカスプライ610の直上に配置されている第1の膜640を有する。有利なことに、前記複数のガラスモノフィラメントは、タイヤ600の内部に近いそれらの位置が、タイヤ600が水に出会うときに接触パッチに近い前記タイヤの長手方向すなわちx方向の座屈に対するタイヤの抵抗に役立つことを前提として、これらが圧縮に有効に抵抗することを許す約1パーセントの圧縮歪みにおいて、約12,000MPaの圧縮係数、約40,000MPaの引張係数および/または無限疲労限度のような特性を有する。前記した機械的特性を以って構成されるとき、各コード642は好ましくは約43mm2またはこれより大きい断面積を有し、また、前記タイヤの軸方向すなわちy方向に少なくとも約1.4mmのペースで配列される。このような構造は、前記プライの幅の1mm当たり約.30mm2の同等均質厚さ(コード/ペース)を提供する。コード642は、少なくとも約2.3GPaの当初伸長係数を有する熱硬化性樹脂に含浸されるガラス繊維でできている。前記繊維は全て互いに平行に設定される。細長い複合材料エレメントは、引張不足に対する歪みより大きい圧縮不足に対する歪みを有する。好ましくは、前記熱硬化性樹脂は、130℃より高いガラス転移温度Tgを有する。どのような構造が使用されても、せん断層645のせん断係数Geffに対するこの膜640の膜係数EMEMBRANEの比は少なくとも約100:1であるべきである。例えば、EMEMBRANEを9000N/mm2としかつGeffを3N/mm2とすることができ、これらは約3000:1の比を生じさせる。
【0056】
次に、可変厚さTを有するせん断層645が、ゴムでできておりまたこれに接着されている第1の膜640上に見られる。このゴムの材料は、1.9から5MPaの範囲にある動的せん断係数、約100%より大きい100℃での破断点伸び、および約15%および30%間の歪みでの約.2より小さいヒステリシスのような特性を有する。同様の特性を有するゴム材料もまた第1および第2の膜640、650のコードを含むように使用されるスキム内で使用することができる。また、せん断層645の厚さTは2mmから20mmまで変化する。この特定の実施形態に関して、せん断層645は約3MPaからなるせん断係数を有し、また、せん断層645の厚さTは該せん断層のショルダー領域における約2mmから、タイヤ600の赤道面E‐Eにおける約6mmまで変化する。興味深いことに、せん断層645の厚さTは正のz方向すなわち半径方向に動き、その結果、せん断層645の中立繊維647もこの方向に動く。このため、この実施形態は、可変圧力せん断バンドの所望の特性を与える前記せん断層内で変化する(Geff*h)を提供する。中立繊維647の内方移動は、ハイドロプレーニングを改善し、他方、後により明確に説明される理由でタイヤ600の摩耗性能を低下させない、代わりのトレッド外形670’が用いられるようにする。したがって、この代わりのトレッド外形670’は、標準のトレッド外形670と比較して増大された外方半径厚さを有する。
【0057】
最後に、実質的に非伸長性である第2の膜650がせん断層645の上方に見られまたこれに接着されている。この膜650は、せん断層645の直上に見られる第1のクロスプライベルト620と該第1のクロスプライベルト620の直上に見られる第2のクロスプライベルト63との形態をとる。これらのベルトは、前述したような特性を有するゴムスキム内で被せられた複数のスチールコード652から構成されている。複数のコード652は15から25度の範囲の角度で置かれ、また、この特定の実施形態のために+/−22度で置かれる。赤道面E‐Eに対して等角および対角で置かれるコードをベルト中に用いることは一般的であるが、前記赤道面に関して非対称であるタイヤを作り出す異なる角度で配置し得ることが考慮される。これらのベルト620、630は、せん断層645のせん断係数Geffに対するこの膜650の膜係数EMEMBRANEの比が少なくとも100:1であるように構成され、これは、これらを分離するこれらのベルトおよび前記ゴムがせん断バンドを含まない理由であるタイヤ500のベルト520、530のケースでない。さらに、第2の膜650が、トレッド670の切断および小さい通り抜けから第2の膜650の構造を保護するために正のz方向すなわち半径方向に十分な距離をオフセットされている。
【0058】
せん断層645に対する膜640、650の接着が典型的には前記膜及びせん断層を含むエラストマー材料の加硫により提供されることに留意すべきである。代わりに、前記膜は化学的または接着または機械的固着の任意の適当な方法により前記せん断層に接着されてよい。同様に、前記膜は、引張剛性、曲げ剛性および環状せん断バンドに求められる圧縮座屈抵抗に関する要求に適合する任意の適当な材料または構造により形成されてよい。例えば、前記膜の構造は、均質な材料、繊維補強マトリクス、または本明細書に記載された機械的特性が適合する場合には個々の補強要素を有する層のようないくつかの代替手段のいずれかからなるものでよい。従来のタイヤの補強が用いられるとき、スチール、アラミド、他の高弾性織物のような材料で作られたモノフィラメントまたはコードが採用されてよい。
【0059】
したがって、前記第1および第2の膜は、タイヤの実質的にx方向に巻かれかつy方向にペースが設置された環状の補強により形成されてよい。これらの環状補強は、スチールまたはいくつかの他の適当な材料で作られたコードにより形成されてよい。同様に、前記せん断層は変更され、そのショルダー部より高いせん断係数を有する中央部を備えてもよく、あるいは他の構造および/またはFEAを使って研究されたような特性を備えてもよい。
【0060】
タイヤ500、600が作られた後、これらは異なる試験手順を用いて試験された。このような試験手順の一つは、車両に配置されたタイヤを、ガラス板の頂面上の水たまりに通して走らせることを含み、そこでは、ある条件のもとでタイヤのトレッドの表面領域のどれ程が地面と接触状態にあるかを見るために写真を撮ることができる。この試験は、タイヤがハイドロプレーニング状態にあることを示す、地面上におけるタイヤの接触の90%が失われるときを決定するため、同じタイヤについて異なる速度で繰り返すことができる。
【0061】
図15および図16は、この手順を用いて試験されかつ2.1バールの標準内部空気圧およびタイヤに与えられる450Kgの垂直荷重を以って時速88kmで4mmの深さの水を経て移動する間に取られたタイヤ500、600の写真のそれぞれの表示である。これらの条件下で、タイヤ500が表面接触領域を有するように管理され、それは線595および595’で輪郭を描かれたたった13cm2であり、他方、タイヤ600もなお表面接触領域を有し、それは線695で輪郭を描かれた45cm2である。これは、タイヤ500が、前記接触表面領域の約91%を喪失しているハイドロプレーニング状態にあったことを示す。反対に、タイヤ600は、なおも地面と接触状態にある3.5倍の表面領域を持っており、ハイドロプレーニングが起こる前に外挿に基づいてさらに時速7km速く移動することができたことを示す。これは、標準タイヤ500の同じハイドロプレーニング性能を保つ一方、タイヤの設計者がタイヤ600のトレッドの空洞領域を30%から20%に低減することを可能にする。これは、タイヤ600の摩耗性能における20%の改善となり、あるいはタイヤの設計者が湿乾静止摩擦のような他の特性を改善することを可能にする。
【0062】
図17を見ると、この同じ試験手順が、タイヤ500、600の両セットに対して、様々な速度で、わずかに空気を抜かれた内部空気圧1.6バールおよびこれらに加えられる外方垂直荷重450Kgを以って適用された。各速度で行われた各試験に関する表面接触領域の合計が、元の接触領域で被削減表面接触領域を除することにより、元の表面接触領域と比較して正規化された。これらの値は垂直軸に沿って表示され、他方、速度は水平軸に沿って表示された。タイヤがわずかに空気を抜かれたとき、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600がハイドロプレーニングにおいて基準タイヤ500を超えるどのような利益を有するかを見るために低減された空気圧が用いられた。これはハイドロプレーニング性能のための貧弱なシナリオである。以上のように、両タイヤ500、600の性能は、速度が時速50kmに達するまでは同様であった。その後、タイヤ600はタイヤ500より多くの表面接触領域を維持し、約18の正規化領域で起こる、ハイドロプレーニング現象をそれが約時速88kmに達するまで起こさなかった。他方、タイヤ500は約時速80kmでハイドロプレーニング現象を起こし始めた。これは、前記可変せん断バンドが、空気式タイヤに典型的に見られる剛性の空気式要素により与えられるものを超える追加の構造的剛性を与えることを説明し、その結果として改善されたハイドロプレーニング性能を生じさせる。これは、タイヤの設計者にタイヤ600のサイドウォール690を薄くし、また、基準タイヤ500のハイドロプレーニング性能をなお維持しまたはこれを超えるようにするための特別な柔軟性を提供する。これは、同じく、転がり抵抗の低減をもたらすことができる。
【0063】
同様に、基準タイヤ500と前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600とが、両タイヤが2.1バールの内部空気圧まで完全膨張されたことを除いて、図17により表わされた結果に対する上述したのと基本的に同一の試験手順を用いて試験された。この試験の結果は図18に表わされ、また、図17で使用されたのと同じ形式で表わされている。前記試験結果は、約1.8の正規化された領域で起こった、タイヤ600についてのハイドロプレーニング現象が時速94kmの速度で起こったことを示し、他方、それは基準タイヤ500に関して約時速88kmで起こった。再び、ハイドロプレーニング現象が起こる前のこの時速6kmのゲインは、次の性能すなわちハイドロプレーニング、摩耗および転がり抵抗のうちの任意の2つを他の残りの性能を低下させることなしに改善する能力をタイヤの設計者に与える。
【0064】
図19、図20および図21は、標準内部空気圧2.1バールにおいておよび力変換器を有する試験機でこの分野において一般的に知られている手段により測定された垂直荷重410DaNにおいて、タイヤ500、600のリブR1、R2、R3、R4およびR5に関するZ応力、Y応力およびX応力をそれぞれ示す。
【0065】
図19により示されたZ応力を見ると、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600が、基準タイヤ500に関して同じリブ間で生じたように、リブR1およびR2間並びにリブR4およびR5間の比較的同じ勾配で、全てのリブR1ないしR5にわたってわずかに高い応力を発現させた。しかし、より大きい勾配(約5バール)が、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600に関してR2またはR4からR3に生じ、他方、タイヤ500に関して同じリブ間には実際に何の変化もなかった。これは、足跡の中央における圧力のこの増大が、タイヤ600が水に出会うときに変形に抵抗することに役立つように望ましいことであり、これにより、基準タイヤ500と比較したときにタイヤ600のハイドロプレーニング性能を改善する。また、タイヤ600の前記せん断バンドにより提供されるわずかに大きいZ応力もまたハイドロプレーニングを防止するのに役立つ。
【0066】
タイヤ600に関して図20に示されたY応力は基本的に基準タイヤ500に関するそれと同じであり、このような応力によって引き起こされ得る摩耗性能の無勾配が前記可変圧力せん断バンドを使用するときに起こるであろうことを示す。
【0067】
最後に、図21により表現されたX応力は、X応力が修正された構造に関して実際により良好に平衡化されていることを示す。特に、改善されたハイドロプレーニング性能のために望ましい、丸みのある足跡を有するタイヤに関して予期されるように、ショルダーリブ(R1、R5)は制動していないX応力を有し、また、中央リブ(R3)は駆動していないX応力を有する。前述したFEA結果を裏付ける、この現象は、さらに、基準タイヤ500および可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600の足跡をそれぞれ示す図22および図23により説明されている。足跡は410DaNの垂直荷重および2.1バールの内部空気圧において取られた。前記修正された構造は、前記ショルダーが前記中央よりも著しく短い、丸みのある形状を有することに留意されたい。しかし、X応力は、中立繊維647の半径方向位置の変化のために、このタイヤ600に関して非常によく平衡化されている。その結果として、代わりのトレッド外形670’に利用されるようなより丸みを帯びた頂上が、先に言及したように、基準タイヤ500と比較したときにタイヤ600の摩耗性能を低下させることなしにハイドロプレーニングを改善するために前記可変圧力せん断バンドに関して使用されることが可能である。
【0068】
タイヤ500および600のハイドロプレーニング性能をさらに試験するため、これらが以下のような他の試験手順に従って試験された。第1に、似た構造の2つのタイヤが、前輪駆動を有する、アウディA4のような、車両の前輪に配置される。第2に、前記車両が、時速50kmの速度でアスファルト路盤上の8mmの深さを有する水を経て駆動される。好ましくは、この速度はクルーズ・コントロールを用いることにより維持される。一旦、前記車両が検証領域に至ると、ドライバは、駆動輪の速度と車両のGPS(全地球測位システム)速度との間に10%のスリップが発生しているかどうかを見るため、前記車両をできる限り早く30ないし50mの間加速させる。10%のスリップがもたらされれば、この同じ試験走行が3回以上繰り返される。10%のスリップがもたらされなければ、そのときは、前記試験走行が最初の車両速度に時速5kmを追加することにより行われる。このステップは、次に、10%のスリップがもたらされるまで繰り返される。一旦10%のスリップがもたらされると、そのときは、前述したと同じ条件でさらに3回の走行が行われる。通常、合計5回の走行が、最初と最後の走行は参照のみのために、なされる。次に、データがこれらの走行から入手され、10%のスリップが生じる車両速度に対応する、ハイドロプレーニングが起こる速度の統計的に関連性のある計算がおこなわれる。
【0069】
この試験手順を用いるとき、基準タイヤ500に関してハイドロプレーニングが約時速57.5kmで起こり、他方、前記可変圧力せん断バンドを有するタイヤ600に関してハイドロプレーニングが約時速61kmで起こることが発見される。これは、前記可変圧力せん断バンドが摩耗または転がり抵抗性能を低下させることなしにタイヤのハイドロプレーニング性能を改善することができるさらなる証明を提供するこれらのタイヤ間に少なくとも5%の改善があることを示す。
【0070】
本発明がその特定の実施形態を参照して説明されたが、このような説明が解説を目的としまた限定を目的としないことは理解されなければければならない。例えば、本明細書では従来のサイドウォールおよびビードセクションを有する空気式タイヤの使用を含めて検討された。しかし、本発明が非空気式タイヤ、複合タイヤおよび他の製品、そのうえ車両のホイールにタイヤを接続するためのウエブスポークを使用するそれらを含む様々な構造を有するもので使用され得ることは予期される。また、対称なタイヤが本明細書で主に検討されたが、非対称のトレッドを有するタイヤもまた本発明の範囲内にあることは予期される。したがって、本発明の範囲および内容は添付の請求の範囲の用語によってのみ規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向、長手方向および軸方向を有する接地部と、赤道面とを有するタイヤであって、可変圧力せん断バンドを含み、該可変圧力せん断バンドは、
積(Geff*h)が前記タイヤの軸方向に変化する断面を有するせん断層と、
前記せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、
前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む、タイヤ。
【請求項2】
前記せん断層は、該せん断層の高さ(h)が変化するのに従って比較的一貫性のあるGeffを有する材料で構成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記接地部はトレッドであってその各軸方向範囲の複数のショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有するトレッドを備え、また、前記せん断層はその各軸方向範囲のショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有し、
前記せん断層のショルダー部と中央部とは、それぞれ、実質的に前記トレッドのショルダー部と中央部との半径方向下方に見られ、
前記せん断層は、該せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて半径方向内方の方向へ増大する厚さを有する、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記せん断層は、そのショルダー部において最も薄くかつその中央部において最も厚く、前記せん断層の中立繊維は前記せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて半径方向内方へ動き、また前記中立軸は実質的に前記タイヤの赤道にあるその最も低い位置に至る、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドは、前記タイヤの赤道面の近くに増大された外向きの半径方向厚さを有する、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記せん断層は、Geffの異なる値を有する複数の軸方向配置部分を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドのショルダー部が、該トレッドのショルダー部に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを有する、前記中央部とは異なる材料特性を備える、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドの中央部は、前記トレッドのショルダー部と比較したときに前記トレッドの中央部の増大された長手方向せん断コンプライアンスをもたらす長さ(B)の複数のトレッド要素を規定する幅(H)の横方向へ向けられた複数の溝を含み、ここにおいて、パラメータ(H/B)は長手方向コンプライアンスのレベルの指標である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第2の膜は実質的に非伸長性であり、前記第1の膜は圧縮に抵抗する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−(15ないし25)度に置かれた複数のスチールコードを有する、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第1および第2の膜は、実質的に前記タイヤの長手方向に置かれた複数の環状補強を含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、該第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−22度に置かれた複数のスチールコードを有する、請求項11に記載のタイヤ。
【請求項1】
半径方向、長手方向および軸方向を有する接地部と、赤道面とを有するタイヤであって、可変圧力せん断バンドを含み、該可変圧力せん断バンドは、
積(Geff*h)が前記タイヤの軸方向に変化する断面を有するせん断層と、
前記せん断層の半径方向内方の範囲に接着された第1の膜と、
前記せん断層の半径方向外方の範囲に接着された第2の膜とを含む、タイヤ。
【請求項2】
前記せん断層は、該せん断層の高さ(h)が変化するのに従って比較的一貫性のあるGeffを有する材料で構成されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記接地部はトレッドであってその各軸方向範囲の複数のショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有するトレッドを備え、また、前記せん断層はその各軸方向範囲のショルダー部と、該ショルダー部間の中央部とを有し、
前記せん断層のショルダー部と中央部とは、それぞれ、実質的に前記トレッドのショルダー部と中央部との半径方向下方に見られ、
前記せん断層は、該せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて半径方向内方の方向へ増大する厚さを有する、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記せん断層は、そのショルダー部において最も薄くかつその中央部において最も厚く、前記せん断層の中立繊維は前記せん断層がそのショルダー部からその中央部へ軸方向に進むにつれて半径方向内方へ動き、また前記中立軸は実質的に前記タイヤの赤道にあるその最も低い位置に至る、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドは、前記タイヤの赤道面の近くに増大された外向きの半径方向厚さを有する、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記せん断層は、Geffの異なる値を有する複数の軸方向配置部分を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドのショルダー部が、該トレッドのショルダー部に関して増大された長手方向せん断コンプライアンスを有する、前記中央部とは異なる材料特性を備える、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記タイヤの接地部はショルダーおよび中央の両部を有するトレッドを含み、前記トレッドの中央部は、前記トレッドのショルダー部と比較したときに前記トレッドの中央部の増大された長手方向せん断コンプライアンスをもたらす長さ(B)の複数のトレッド要素を規定する幅(H)の横方向へ向けられた複数の溝を含み、ここにおいて、パラメータ(H/B)は長手方向コンプライアンスのレベルの指標である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第2の膜は実質的に非伸長性であり、前記第1の膜は圧縮に抵抗する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、前記第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−(15ないし25)度に置かれた複数のスチールコードを有する、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記第1および第2の膜は、実質的に前記タイヤの長手方向に置かれた複数の環状補強を含む、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記第1の膜はガラス・モノフィラメントを含み、前記第2の膜は第1のクロスプライベルトと、該第1のクロスプライベルトの頂面上にある第2のクロスプライベルトとを含む、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記第1および第2のクロスプライベルトは、前記タイヤの赤道面に関して+/−22度に置かれた複数のスチールコードを有する、請求項11に記載のタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2012−512105(P2012−512105A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542546(P2011−542546)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068997
【国際公開番号】WO2010/071883
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068997
【国際公開番号】WO2010/071883
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
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