説明

タイヤの処理方法及びタイヤ処理装置

【課題】熱可塑性材料と金属材料を含んで構成されたタイヤから熱可塑性材料と金属材料を簡単に分別可能とするタイヤの処理方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤの、熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させて熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを分別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの処理方法及びタイヤ処理装置に関し、特には、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料を含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に用いられる空気入りタイヤとして、タイヤの骨格部分をゴムに代えて熱可塑性材料で形成した空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で形成することで、加硫ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易になる可能性がある。
【0003】
従来のゴム製の空気入りタイヤを廃棄処分する場合、廃タイヤをゴムと補強材(ベルト、ビード、プライ等)に分別することは困難で、手間とコストがかかり、リサイクル上で問題となる場合があった。従来のゴムタイヤの処理としては、例えば特許文献2に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【特許文献2】特開平11−114876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性材料は加硫ゴムとは違ってリサイクルし易く、用途も多い。そこで、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料を含んで形成された空気入りタイヤに関しても、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに分別する方法が望まれるが、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料を含んで構成された空気入りタイヤに関しては、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを簡単に分別する処理方法及び処理装置が従来無かった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに簡単に分別可能とするタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のタイヤの処理方法は、熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤの、前記熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させて前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを分別する。
【0008】
請求項1に記載のタイヤの処理方法では、タイヤの熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させて熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを分別する。
ここで、上記のように、熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させて該熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを分別することから、例えば、熱可塑性材料を溶融させないものと比べて、熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを簡単に分離することができる。つまり、上記タイヤを、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに簡単に分別することができる。
【0009】
なお、熱可塑性材料以外の材料とは、例えば、熱硬化性材料、加硫ゴム、有機繊維、その他有機化合物、金属材料、無機材料等を挙げることができ、これら以外の材料であってもよい。
【0010】
また、ここでいう「タイヤ」とは、タイヤを複数に分断したタイヤ構成部材も含むものである。なお、上記のタイヤ構成部材は、もちろん熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを含んで構成されるものである。
【0011】
請求項2に記載のタイヤの処理方法は、前記熱可塑性部材の、前記非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを剥離する。
【0012】
請求項2に記載のタイヤの処理方法では、熱可塑性部材の、非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを剥離することから、例えば、熱可塑性部材全体を加振または熱可塑性部材を部分的に加振し溶融させるものと比べて、熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させるのに必要とするエネルギーを低く抑えられる。
【0013】
請求項3に記載のタイヤの処理方法は、請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法において、前記熱可塑性部材は、前記タイヤの骨格部分を構成する環状のタイヤ骨格部材であり、前記非熱可塑性部材は、前記タイヤ骨格部材の外周側に配設され、前記タイヤのトレッド部分を構成するトレッド部材である。
【0014】
請求項3に記載のタイヤの処理方法では、熱可塑性部材であるタイヤ骨格部材を超音波により加振し溶融させてタイヤ骨格部材と非熱可塑性部材であるトレッド部材とを分別することから、タイヤ骨格部材とトレッド部材とを簡単に分離することができる。
このようにして、分離したタイヤ骨格部材は、熱可塑性材料により構成されていることから、容易に再利用(リサイクル)することができる。
【0015】
請求項4に記載のタイヤ処理装置は、請求項1または請求項2に記載のタイヤ処理装置において、熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、前記熱可塑性部材の、前記非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを剥離する超音波加振部と、を有する。
【0016】
請求項4に記載のタイヤ処理装置では、保持部が、熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤを保持する。
そして、超音波加振部が、熱可塑性部材の、非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを剥離する。
ここで、上記のように、熱可塑性部材の上記境界部分を超音波により加振し溶融させて該熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを剥離することから、熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを簡単に分離することができる。つまり、上記タイヤを、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに簡単に分別することができる。
【0017】
また、上記タイヤ処理装置では、超音波加振部を用いて熱可塑性部材の上記境界部分を超音波により加振し溶融させながら熱可塑性部材と非熱可塑性部材とを剥離することから、例えば、熱可塑性部材全体を加振または熱可塑性部材を部分的に溶融させるものと比べて、熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させるのに必要とするエネルギーを低く抑えられる。
【0018】
請求項5に記載のタイヤ処理装置は、請求項4に記載のタイヤ処理装置において、前記熱可塑性部材は、前記タイヤの骨格部分を構成する環状のタイヤ骨格部材であり、前記非熱可塑性部材は、前記タイヤ骨格部材の外周側に配設され、前記タイヤのトレッド部分を構成するトレッド部材であり、前記保持部は、前記タイヤを回転可能に保持し、前記超音波加振部は、前記保持部により回転する前記タイヤ骨格部材の、前記トレッド部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記タイヤ骨格部材と前記トレッド部材とを剥離する。
【0019】
請求項5に記載のタイヤ処理装置では、超音波加振部が、保持部により回転するタイヤ骨格部材の、トレッド部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながらタイヤ骨格部材とトレッド部材とを剥離することから、タイヤ骨格部材とトレッド部材とを簡単に分離することができる。特に、トレッド部材は、タイヤ骨格部材の外周側に一周分形成されていることから、タイヤ骨格部材を回転させながら超音波加振部でタイヤ骨格部材とトレッド部材とを剥離することでタイヤ骨格部材とトレッド部材とを簡単に剥離することができる。
このようにして、分離したタイヤ骨格部材は、熱可塑性材料により構成されていることから、容易に再利用(リサイクル)することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明のタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置によれば、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とを含んで構成されたタイヤを、熱可塑性材料と熱可塑性材料以外の材料とに簡単に分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ処理装置の斜視図である。
【図2】(A)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最小径とした状態を示す斜視図であり、(B)タイヤ保持装置のタイヤ保持部を最大径とした状態を示す斜視図である。
【図3】超音波ウエルダのホーンを示す斜視図である。
【図4】タイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【図5】タイヤ半体をタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【図6】タイヤ半体の半体骨格部材と半体トレッドゴム層との境界部分にホーンの先端部を接触させた状態を示すタイヤ半体のタイヤ幅方向断面図である。
【図7】タイヤ半体の、半体骨格部材と半体トレッドゴム層との境界部分にホーンを差し込んだ状態を示すタイヤ半体のタイヤ幅方向断面図である。
【図8】タイヤ半体にホーンをさらに差し込む前の状態を示すタイヤ半体のタイヤ幅方向断面図である。
【図9】タイヤ半体にホーンをさらに差し込んだ状態を示すタイヤ半体のタイヤ幅方向断面図である。
【図10】超音波ウエルダのホーンの変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係るタイヤ処理装置の斜視図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るタイヤ処理装置を用いて半体骨格部材と半体トレッドゴム層とを剥離している状態を示す斜視図である。
【図13】その他の実施形態のタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【図14】その他の実施形態のタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断したタイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置について説明するが、まず、このタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置において処理対象となっているタイヤ10について説明する。
【0023】
(タイヤ)
図4には、タイヤの骨格部分を熱可塑性材料で構成したタイヤ10が示されている。本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
【0024】
タイヤ10は、図示しないリムのビードシート部及びリムフランジに接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16を含んで構成される環状のタイヤ骨格部材17を有している。なお、このタイヤ骨格部材17は、タイヤの骨格部分であり、本発明の熱可塑性部材の一例である。
【0025】
本実施形態のタイヤ骨格部材17は、熱可塑性材料で形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、各部位(ビード部12、サイド部14、クラウン部16)にそれぞれ異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
【0026】
熱可塑性材料としては、ゴム様の弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いてもよい。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0028】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
【0029】
なお、熱可塑性材料は、上述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー以外のものであってもよい。
【0030】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードで構成された円環状のビードコア18が埋設されている。なお、本実施形態のタイヤ10は、ビードコア18がスチールコードで構成されているが、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成されていてもよく、また、ビードコア自体が省略されていてもよい。
【0031】
図4に示すように、本実施形態のタイヤ10は、ビード部12のリムとの接触部分(ビードシートと接触する部分及びリムフランジと接触する部分)に弾性体の一例としてのゴムで形成されたシール層24が設けられている。なお、リムフランジと接触する部分のシール層24は、タイヤ骨格部材17とリムとの間のシール性(気密性)が確保できていれば、省略されてもよい。
【0032】
タイヤ骨格部材17のクラウン部16には、金属繊維又は有機繊維のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成されたコード26がタイヤ周方向に螺旋状に巻回されかつコード26全体が埋設されている。なお、コード26は、クラウン部16に対して一部分が埋設される構成でもよい。このコード26によりクラウン部16の外周部にクラウン部補強層28が形成され、クラウン部16のタイヤ周方向剛性が補強されている。なお、上記クラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0033】
クラウン部16の外周側には、トレッド部材の一例としてのトレッドゴム層31が配設されている。このトレッドゴム層31は、クラウン部16側から順にクッションゴム29、トレッドゴム30で構成されている。このクッションゴム29は、タイヤ10の走行時にトレッドゴム30が受ける路面からの入力を緩衝して乗り心地性を向上させるものであり、弾性率がトレッドゴム30よりも低く設定されている。なお、その他の実施形態では、トレッドゴム層31をトレッドゴム30のみで構成してもよい。
また、トレッドゴム層31(トレッドゴム30)には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝30Aを含むトレッドパターン(図示省略)が形成されている。
【0034】
(タイヤ処理装置)
次に、本実施形態のタイヤ10(タイヤ半体10H)の処理を行うタイヤ処理装置32について説明する。
タイヤ処理装置32は、タイヤ10を保持するためのタイヤ保持装置33を有している。なお、タイヤ保持装置33は、本発明の保持部の一例である。タイヤ保持装置33は、床面に接地された台座34の上部に、水平に配置された軸36が回転可能に支持されている。なお、この軸36は、図示しないモータにより回転されるようになっている。
【0035】
図1、図2に示すように、軸36の端部側には、タイヤ保持部40が設けられている。タイヤ保持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を備え、シリンダブロック38には径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0036】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ保持片42が設けられている。
図2(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態(タイヤ保持部40が最小径の状態)を示しており、図2(B)はシリンダロッド41の突出量が最も大きい状態(タイヤ保持部40が最大径の状態)を示している。各シリンダロッド41は連動して同一方向に同一量移動可能となっている。
【0037】
図1に示すように、タイヤ保持装置33の近傍には、超音波ウエルダ44が配置されている。この超音波ウエルダ44は、発振器45、変換器46、及び、ホーン47を有している。発振器45は、周波数20kHz〜50kHzの電気信号を発振可能とされている。また変換器46は、発振器45とケーブルを介して接続され、発振器45からの電気信号を振動エネルギーに変換してホーン47へ伝達するようになっている。ホーン47は、変換器46に取り付けられ、発振器45から伝達された振動エネルギーにより加振されて、超音波振動するようになっている。
【0038】
ホーン47は、図3に示すように、板状とされ、幅方向(板幅方向)の一方側に刃先が丸められた刃部47Aが形成され、長手方向の先端側(変換器46に取付けられている側に対して反対側)に刃先が丸められた刃部47B(図6参照)が形成されている。
【0039】
図1に示すように、超音波ウエルダ44の近傍には、図示しないロボットアームが配設されている。このロボットアームの先端部には、変換器46が取り付けられている。
ロボットアームは、タイヤ保持部40に保持された後述するタイヤ半体10Hに対して、変換器46に取り付けられたホーン47の位置及び角度を調整することができるようになっている。
【0040】
(タイヤの処理工程)
(1) まず、図4に示すタイヤ10を、タイヤ赤道面CLに沿って切断して、図5に示すタイヤ半体10Hを形成する。
【0041】
(2) 次に、径を縮小したタイヤ保持部40(図2(A)参照)の外周側に、タイヤ半体10Hを配置し、その後、タイヤ保持部40の径を拡大して、タイヤ半体10Hの内周面に複数のタイヤ保持片42を接触させて、複数のタイヤ保持片42によってタイヤ半体10Hを内側から保持する(図1参照)。
【0042】
(3) 次に、図6に示すように、ロボットアームを用いてホーン47の刃部47Aを半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとの境界に配置する。そして、図7に示すように、ホーン47を上記境界に沿うようにタイヤ半体10H内に突き入れる。なお、半体骨格部材17Hは、クラウン部16とサイド部14との間の角部が円弧状に湾曲しているため、図7に示すように、角部の一部を削り取るように直線状に突き入れられる。
なお、ホーン47の刃部47Aは、刃先が丸められていることから、半体トレッドゴム層31Hを切断しにくくなっている。これにより、後述のホーン47による半体骨格部材17Hの溶融時に、刃部47Aによって半体トレッドゴム層31Hが切り欠かれて、ゴム片、ゴム粉などが、半体骨格部材17Hの溶融部分に付着したり、混入したりするのが抑制される。
【0043】
そして、図7に示すような位置までホーン47をタイヤ半体10Hに突き入れた後、ホーン47の位置を固定する。次に、ホーン47を周波数20kHz〜50kHzで超音波振動させながら、図1に示すように、タイヤ保持部40とともにタイヤ半体10Hを回転させる。このときのタイヤ半体10Hの回転方向(矢印A方向)は、ホーン47の刃部47Bに対向する方向である。
【0044】
ここで、半体骨格部材17Hの、ホーン47の刃部47Bとの接触部分は、ホーン47からの超音波振動により発熱し、溶融される。そして、タイヤ半体10Hの回転により、ホーン47は、半体骨格部材17Hの、半体トレッドゴム層31Hとの境界部分(ここでは、上記接触部分)を溶融切断する。なお、ホーン47による溶融切断は、回転する半体骨格部材17Hに対して、ホーン47が移動した軌跡に沿って行なわれる。
【0045】
次に、図8に示すように、ホーン47を半体骨格部材17Hのクラウン部16の外周に沿うように角度調整する。そして、図9に示すように、ホーン47を上記境界に沿うように直線状に突き入れる。なお、本実施形態では、ホーン47を、刃部47Aがタイヤ半体10Hの切断面から突き出るまでタイヤ半体10Hに突き入れている。
【0046】
その後、ホーン47の刃部47Aがタイヤ半体10Hの切断面から突き出た位置で、ホーン47を固定する。次に、ホーン47を周波数20kHz〜50kHzで超音波振動させながら、タイヤ保持部40とともにタイヤ半体10Hを矢印A方向に回転させる。
【0047】
このとき、半体骨格部材17Hの、ホーン47の刃部47Bとの接触部分は、上記と同様に、ホーン47からの超音波振動により発熱し、溶融される。そして、タイヤ半体10Hの回転により、ホーン47は、半体骨格部材17Hの、半体トレッドゴム層31Hとの境界部分(ここでは、上記接触部分)を溶融切断する。
そして、タイヤ半体10Hが一回転すると、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとが剥離される。
【0048】
ここで、ホーン47は、半体骨格部材17Hの上記境界部分を溶融しながら、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとを切り離す(剥離する)ことから、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとを簡単に剥離することができる。
【0049】
なお、タイヤ半体10Hの回転速度は、ホーン47により溶融された上記境界部分の熱可塑性材料が再びトレッドゴム層31に接触するときに、自然冷却で固化している速度に設定することが好ましい。
ホーン47により溶融されて半体トレッドゴム層31Hから剥離された部分に、冷風などを吹き付けて該溶融された部分を強制的に冷却してもよい。この場合に、タイヤ半体10Hの回転速度を上昇させることができる。
【0050】
次に、ホーン47を用いて半体骨格部材17Hのビード部12に配設されたシール層24を上記と同様の手順により半体骨格部材17Hから剥離する。これにより、半体骨格部材17Hから、半体トレッドゴム層31H及びシール層24が除去される。
【0051】
(4) 次に、半体骨格部材17Hのクラウン部16のコード26周辺を加熱し、該コード26周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させた状態で、クラウン部16からコード26を取り出す。同様に、ビード部12のビードコア18周辺を加熱し、該ビードコア18周辺の熱可塑性材料を溶融または軟化させた状態で、ビード部12からビードコア18を取り出す。
【0052】
このようにして、熱可塑性材料から熱可塑性材料以外の材料を全て取り除いたタイヤ骨格部材17は、再び溶融してリサイクルすることが可能となる。
【0053】
第1実施形態では、図3に示す平板状のホーン47を用いているが、本発明はこの構成に限定されず、図10に示す角部が丸められたホーン50を用いてもよい。このホーン50は、図10に示すように、板状とされ、幅方向(板幅方向)の一方側に刃先が丸められた刃部50Aが形成され、長手方向の先端側(変換器46に取付けられている側に対して反対側)に刃先が丸められた刃部50B(図6参照)が形成され、刃部50Aと刃部50Bとの間の角部50Cが円弧状に湾曲している。このため、例えば、回転するタイヤ半体10Hの半体骨格部材17Hに対して超音波振動状態のホーン50を、角部50Cから刃部50A及び刃部50Bを徐々に差し込んで半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hを剥離することもできる。このように回転するタイヤ半体10Hに対してホーン50を徐々に差し込む場合、例えば、静止状態のタイヤ半体10Hにホーンを直線状に突き入れるものと比べて、半体トレッドゴム層31H側に残る熱可塑性材料を少なくすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のタイヤ処理装置、タイヤの処理方法について図11、図12を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0055】
図11に示すように、第2実施形態のタイヤ処理装置52は、タイヤ保持装置33と、超音波ウエルダ54と、を有している。超音波ウエルダ54は、発振器45、変換器46、及び、ホーン56を有している。このホーン56は、板状とされ、かつ側面視(板幅方向から見て)でタイヤ半体10Hの半体骨格部材17Hとトレッドゴム層31との境界に沿った形状とされている。また、ホーン56は、幅方向(板幅方向)の一方側に刃先が丸められた刃部56Aが形成されている。また、ホーン56及び変換器46は、上下方向に移動可能な昇降アーム58に取り付けられている。
【0056】
次に、第2実施形態のタイヤの処理方法について説明する。
まず、タイヤ10を切断してタイヤ半体10Hを形成し、そのタイヤ半体10Hをタイヤ保持部40で保持させる。
次に、図11に示すように、タイヤ半体10Hのトレッドゴム層31をタイヤ幅方向に沿って削り取る。この削り取りは、ホーン56の幅よりも幅が広くなるように削り取る。このとき、半体骨格部材17Hの外周部もコード26が削れない程度に削り取ることが好ましい。
【0057】
そして、図12に示すように、昇降アーム58を下降させて、タイヤ半体10Hに形成された削り取られた部分Kにホーン56を差し込む。このとき、ホーン56の刃部56Bを半体骨格部材17Hの、半体トレッドゴム層31Hとの境界部分に接触させる。その後、ホーン56を超音波振動させて、このホーン56と半体骨格部材17Hとの接触部分を溶融させながら、タイヤ半体10Hを回転させて、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとを溶融切断する。そして、タイヤ半体10Hが一回転すると、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとが剥離される。
【0058】
ここで、第2実施形態のタイヤ処理装置52は、タイヤ半体を一回転させることで、半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとを剥離することができるため、例えば、複数回回転を要するタイヤ処理装置と比べて、迅速に半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとを剥離することができる。また、消費するエネルギーも抑制することができる。
【0059】
第2実施形態では、ホーン56の形状をタイヤ半体10Hの半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとの境界に沿った形状としているが、本発明はこの構成に限定されず、ホーン56の形状をタイヤ10のタイヤ骨格部材17とトレッドゴム層31との境界に沿った形状としてもよい。この場合には、タイヤ10を半分に割らなくても、タイヤ骨格部材17とトレッドゴム層31とを剥離することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
第1、第2実施形態では、ホーンの形状を平板状としているが、ホーンの形状を棒状、糸状などとしてもよい。
【0061】
また、第1実施形態のタイヤの処理方法では、ロボットアームを用いてホーン47を半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとの境界に沿うように配置しているが、本発明はこの構成に限定されず、作業者が変換器46を持ってホーン47を半体骨格部材17Hと半体トレッドゴム層31Hとの境界部分に当ててもよい。
【0062】
また、前述の実施形態のタイヤ10は、ビードコア18付きのタイヤ骨格部材17を用いたチューブレスタイプのタイヤであったが、タイヤ10の構成はこれに限られるものではない。図13に示すタイヤ60のように、熱可塑性材料を用いたタイヤ骨格部材として、タイヤ周方向に円環状に形成され、リム61の外周部に配置される中空のチューブ体62を用いてもよい。なお、チューブ体62は、タイヤ幅方向において、複列又は単列に配置してもよい。また、タイヤ60では、3つのチューブ体62の外周部分に、例えば補強用の補強層68が埋設されたトレッドゴム64が、例えばクッションゴム66を介して跨って配置され、加硫接着されている。なお、トレッドゴム64とクッションゴム66によりトレッドゴム層67が構成されている。
一方、その他の実施形態としては、図14に示すタイヤ70を用いてもよい。タイヤ70では、1つのチューブ体72の外周部分に、例えば補強用の補強層78が埋設されたトレッドゴム74が、例えばクッションゴム76を介して跨って配置され、加硫接着されている。なお、トレッドゴム74とクッションゴム76によりトレッドゴム層77が構成されている。
上記のような、タイヤ60、70においても、前述のタイヤの処理方法及びタイヤ処理装置を適用することができる。
【0063】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
10 タイヤ
12 ビード部
17 タイヤ骨格部材(熱可塑性部材)
31 トレッドゴム層(トレッド部材(非熱可塑性部材))
32 タイヤ処理装置
33 タイヤ保持装置(タイヤ保持部)
44 超音波ウエルダ
52 タイヤ処理装置
54 超音波ウエルダ
60 タイヤ
62 チューブ体(タイヤ骨格部材)
67 トレッドゴム層(トレッド部材(非熱可塑性部材))
70 タイヤ
72 チューブ体(タイヤ骨格部材)
77 トレッドゴム層(トレッド部材(非熱可塑性部材))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤの、前記熱可塑性部材を超音波により加振し溶融させて前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを分別するタイヤの処理方法。
【請求項2】
前記熱可塑性部材の、前記非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを剥離する請求項1に記載のタイヤの処理方法。
【請求項3】
前記熱可塑性部材は、前記タイヤの骨格部分を構成する環状のタイヤ骨格部材であり、
前記非熱可塑性部材は、前記タイヤ骨格部材の外周側に配設され、前記タイヤのトレッド部分を構成するトレッド部材である請求項1または請求項2に記載のタイヤの処理方法。
【請求項4】
熱可塑性材料により構成された熱可塑性部材と熱可塑性材料以外の材料により構成された非熱可塑性部材とを含んで構成されるタイヤを保持する保持部と、
前記熱可塑性部材の、前記非熱可塑性部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記熱可塑性部材と前記非熱可塑性部材とを剥離する超音波加振部と、
を有するタイヤ処理装置。
【請求項5】
前記熱可塑性部材は、前記タイヤの骨格部分を構成する環状のタイヤ骨格部材であり、
前記非熱可塑性部材は、前記タイヤ骨格部材の外周側に配設され、前記タイヤのトレッド部分を構成するトレッド部材であり、
前記保持部は、前記タイヤを回転可能に保持し、
前記超音波加振部は、前記保持部により回転する前記タイヤ骨格部材の、前記トレッド部材との境界部分を超音波により加振し溶融させながら前記タイヤ骨格部材と前記トレッド部材とを剥離する請求項4に記載のタイヤ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−14065(P2013−14065A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148118(P2011−148118)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】