説明

タイヤコントロールシステムおよび方法

【課題】タイヤ圧コントロールシステムにおいて、受信装置によって受信された信号のより良好で、殊に効果的な転送を可能にすること。
【解決手段】タイヤ固有のパラメータを求めるための、車両(10)内または車両(10)用のタイヤコントロールシステムであって、当該タイヤコントロールシステムは分配されたバス構造を有しており、少なくとも1つのインテリジェント受信装置(15a〜15h)を有しており、当該受信装置は、車輪電子システム(13a〜13d)の送信信号(XA〜XD)を受信するように構成されており、前記受信層装置(15a〜15h)は信号処理装置(26)を有しており、該信号処理装置は前記受信された信号(XA〜XD)の評価および/または、バス構造の別の加入者(15a〜15h)の受信された信号の評価を行う、ことを特徴とする、タイヤコントロールシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ固有のパラメータを求める、車両内のタイヤコントロールシステムまたは車両用のタイヤコントロールシステムに関する。さらに本発明は、本発明のタイヤコントロールシステムの分配型バス構造のインテリジェント受信装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、タイヤ固有のパラメータ(例えばタイヤ温度、タイヤ圧、タイヤの回転速度、溝の厚さ等)を監視する、または求めるシステムに関する。このようなシステムは一般的に、タイヤ圧コントロールシステムと称される。しかし本発明は、自動車を基準にしたタイヤの取り付け位置を求めるシステムにも関する。相応する方法は一般的に(車輪)位置検出とも称され、相応するシステムは位置検出システムと称される。本発明並びに本発明の根底を成す課題を、以下で、タイヤ圧コントロールシステムに関連して説明するが、本発明はタイヤ圧コントロールシステムに限定されるものではない。
【0003】
車両の安全性および信頼性は自動車技術の中枢を成す要素であるので、セーフティ技術の理由だけからも既に、自動車のタイヤ圧は定期的に検査されなければならないが、タイヤ圧検査が行われていないことが頻繁にある。従って近年の自動車はタイヤ圧コントロールシステムを有している。タイヤ圧コントロールシステムはタイヤ圧を自動的に測定し、測定されたタイヤ圧とタイヤ圧目標値とのクリチカルな差を早期に識別する。このことは自動車運転者に示され、手動の検査が不要になる。
【0004】
このようなタイヤ圧コントロールシステムは典型的に少なくとも1つの、各車輪に割り当てられた車輪センサを有している。このような車輪センサは次のように構成されている。すなわち、その車輪センサに割り当てられたそれぞれの車輪のタイヤ固有のパラメータを検出し、パラメータの測定値から導出された情報を送出するように構成されている。測定の目的のために、車輪センサはホイールリムの領域に配置されるか、またはタイヤのゴム材料部分内に組み込まれ、例えば車輪センサはタイヤのゴム内でゴムコーティングされる。検出され、送出されるべき情報を事前に評価し、転送するために、車輪センサはそのためだけに設けられた車輪電子システムを有している。この車輪電子システムの出力側には送信アンテナが設けられており、この送信アンテナを介して情報が送出される。この情報を伝送するために、車輪電子システムは典型的に無接触の無線伝送を用いる。ここではRF信号伝送プロトコールが使用される。
【0005】
車両側では、タイヤ圧コントロールシステムは少なくとも1つの受信装置を有している。ここでこの受信装置は、タイヤ電子システムから送出された無線信号を受信し、そのためだけに設けられた制御装置内に配置されている中央計算ユニットに転送する。
【0006】
タイヤ圧コントロールシステム(車輪位置検出システムでも同じであるが)における一般的な問題は、車輪側センサと車両側受信部との間の無線通信によって生じる。センサと受信部との間のこのような通信はこれに加えて作動時には、車輪が多かれ少なかれ高速で動いている時に行われるので、データ通信は著しく困難になる。殊に非常に高速に車輪が動いている時にはなおさらである。これに加えて、センサと受信部との間のこのような通信時には、他の、不所望なノイズ信号が送信信号にオーバーラップすることがある。これによって受信信号が誤ったものになる恐れがある。他の乗用車にもこの種のタイヤコントロールシステムが装備され、信号を送信する場合には、これは殊に不都合である。自動車の車体も、このような通信を困難にするのに一役買っている。殊に受信部が車体の、車両作動時に車輪センサの送信部と直接的なデータ通信接続状態にない、または常にはデータ通信接続状態にない箇所に配置されている場合はなおさらである。
【0007】
このような理由から、今日使用されているタイヤ圧コントロールシステムでは相応する受信装置が各車輪の近傍に配置されており、ひいては送信部を含む相応の車輪電子システムのすぐ近くに配置されている。このために特に有利な取り付け場所としては例えば、乗用車の場合にはその車輪ハウジングが挙げられる。この場合には車輪側受信装置は、車輪側送信装置のすぐ近くに設けられる。従って乗用車の場合には相応するタイヤ圧コントロールシステムは、全部で4つの、車輪ハウジング内に配置されたRF受信装置を有している。これらのRF受信装置は、車輪側送信部から送出されたRF信号を検出する。これによってこれらの受信装置は、車輪電子システムとの比較的確実なデータ通信を保証することができる。
【0008】
このような場合にはタイヤ圧コントロールのこれらの種々の受信装置は、バスシステムを介して、制御装置内の中央計算ユニットと接続されている。受信装置がセンサ側から送信された信号を受信すると、この受信された信号は受信装置によって、バスを介して計算装置に供給される。ここで問題となるのは、このような信号の受信時および転送時に、この受信信号が各受信装置に対応付けされた車輪電子システムから到来したものであるか否かを区別することができないということである。通常は、受信信号は、空間的に近いという理由だけで既に、対応付けされた各車輪センサから到来する。しかし、例えば車軸が相互に非常に近くにある場合(これは小型乗用車または例えばトラックでも起こりうる)、受信装置が他の車輪電子システムの送信信号を受信してしまうことがある。受信されたこの信号は直ちにバスを介して転送される。この信号が対応付けされた「正しい」車輪電子システムから到来したものか否かの検証は、受信装置側では行われない。このような検証は計算ユニット内ではじめて行われる。
【0009】
これは不所望なことである。なぜなら、受信装置から誤って転送された信号は、計算ユニット側で必要とされていないからである。または、この信号が場合によっては付加的に、「正しい」受信装置によっても受信され、バスを介して二重に伝送され、計算ユニット内に二重に存在してしまうからである。全体としてはこれが原因で、受信装置によって受信された「誤った」信号の不所望な転送によって、およびこの「誤った」信号のバス線路を介した転送によって、バスの負荷が上昇してしまう。上述したような状況が頻繁に生じる場合、すなわち非常に頻繁に「誤った」信号が転送される場合には、これによってバスに加わる負荷が著しく高くなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景をもとに、本発明の課題は、タイヤ圧コントロールシステムにおいて、受信装置によって受信された信号のより良好で、殊に効果的な転送を可能にすることである。さらなる課題は、受信装置によって受信された信号を、できるだけバスの利用を少なく転送することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上述した課題のうちの少なくとも1つが、請求項1の特徴部分に記載された構成を有するタイヤコントロールシステムによって、および/または請求項13の特徴部分に記載された構成を有する方法によって解決される。
【0012】
すなわち:
タイヤ固有のパラメータを求める、車両内のまたは車両用のタイヤコントロールシステムであって、
当該タイヤコントロールシステムはバス構造を有しており、車輪電子システムの送信信号を受信する少なくとも1つのインテリジェント受信装置を有しており、
当該受信装置は信号処理装置を有しており、該信号処理装置は受信された送信信号の評価、および/またはバス構造の他の加入者の受信された信号の評価を行う。
【0013】
本発明に相応するタイヤコントロールシステムの分布型バス構造のインテリジェント受信装置の作動方法であって、
少なくとも、受信装置によって受信された送信信号を処理し、および/または評価し、かつ当該処理ないし評価に依存して転送する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の根底を成す発案は、その機能が拡張されたインテリジェントタイヤ圧システムを、分布型バス構造において提供することである。この分布型バス構造は、中央計算ユニットを含む制御装置の他に、複数の、いわゆる「インテリジェント」受信装置を含む。このインテリジェント受信装置は本発明では、受信信号を受信だけし、実質的な評価をせずに転送するように構成されているのではない。むしろこのインテリジェント受信装置は、少なくとも、受信された送信信号を少なくとも事前処理および/または事前評価するようにも構成されている。この事前評価ないしは事前処理に依存して、受信された送信信号が相応に転送される、または転送されない。転送する場合には、受信された送信信号は、制御装置のみに転送されるのではなく、分布型バス構造の他のインテリジェント受信装置または非インテリジェント受信装置にも供給されてよい。これはインテリジェント受信装置の同じように有利な別の機能を前提条件として必要とする。すなわち本発明では、インテリジェント受信装置はその受信機能の他に、バスないしはバスを介して伝送される情報を監視し、評価することができる。この監視は一方では、バスを介して伝送される信号の存在および/またはその内容、すなわちこの信号内に含まれている情報に関して行われる。このようにして、種々異なる受信装置が相互にも通信可能であり、例えば別のインテリジェント受信装置によって受信され、転送された情報が、これが必要である場合に限り、バスを介して検出され、さらに使用される。
【0015】
インテリジェント受信装置を用いたこのような分布型バス構造の利点を以下に挙げる:
1つには、別の受信装置および/または制御装置によって必要とされる情報のみが転送されることによって、バスの負荷が著しく低減される。これによって、冗長的な情報、すなわち異なる受信装置によって二重に受信された情報が二重に、バスを介して伝送されることも回避される。これによっても同じようにバスの負荷が低減される。
【0016】
この他にこれによって、制御装置内の計算ユニットの計算負荷を必要に応じて低減させることも可能になる。なぜなら、評価および処理の少なくとも一部分は既に各受信装置内で行われているからである。
【0017】
本発明の有利な構成および発展形態を、従属請求項並びに図を参照した説明に記載する。
【実施例】
【0018】
本発明を以下で、概略図に示された実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0019】
図では同一であり、同じ作用を有する部材、特徴部および信号に、断りがない場合には同じ参照番号が付与されている。
【0020】
図1は、乗用車の概略的な平面図に基づいて、本発明のタイヤ圧システムの第1の実施例を示している。図1では、参照番号10で、車両、例えば乗用車が示されている。しかし本発明は当然ながら、任意の車両、例えばトラック、バス、トレーラー等にも適している。
【0021】
車両10はこの実施例では4つの車輪11a〜11dを有している。車輪11a〜11dの種々の車輪位置はVL、VR、HL、HRで示されている。これらの各車輪11a〜11dは車輪ハウジング12a〜12d内に配置されており、公知のように、図示されていない軸に固定されている。ここで車輪ハウジングは、各車輪11a〜11d用に設けられた、車体のくぼみである。
【0022】
車両10は本発明によるタイヤコントロールシステムを有している。このタイヤコントロールシステムは本実施例では、タイヤ圧または他のタイヤ固有のパラメータを求めるタイヤ圧コントロールシステムとして構成されている。さらにこのタイヤ圧コントロールシステムは、このようにして求められるタイヤ圧情報を求めるだけではなく、評価もし、場合によっては表示する。このようなタイヤ圧コントロールシステムは車輪側の電子的な車輪装置(以下では車輪電子システムとも称する)、車両側の受信装置、バス並びに制御装置を有している。タイヤ圧コントロールシステムのこれらの部材並びにその配置および機能を以下で説明する:
個別の各車輪11a〜11dには車輪電子システム13a〜13dが割り当てられている。これらの車輪電子システム13a〜13dは、それ自体公知のように、例えば各タイヤ内に、すなわちそのゴム材料内に配置される、および/または車輪11a〜11dのバルブまたはリムの領域内に配置される。各車輪電子システム13a〜13dは典型的に、車輪センサを含む。ここでこの車輪センサは車輪固有のパラメータ、例えばタイヤ圧、タイヤ温度、車輪の回転速度、タイヤの溝の深さ、および場合によっては他のパラメータも求める。車輪電子システム13a〜13dはさらに、回路装置を含む。この回路装置はこのようにして車輪センサから得られた情報を事前に評価し、この情報を転送するために処理する。この処理では典型的に、変調および符号化も行われる。車輪電子システム13a〜13dによって求められた情報は送信信号XA〜XDに変調され、ないし符号化され、無線通信接続を介して車両10に送信される。このために、各車輪電子システム13a〜13dはそれぞれ送信アンテナ14a〜14dを含む。これらの送信アンテナによって、例えばRF無線信号として構成された送信信号XA〜XDが送信される。
【0023】
図2は概略的なブロック回路図に基づいて、車輪電子システム13aの例示的な構造を示している。この車輪電子システム13aは、本実施例の場合には圧力センサ21と、圧力センサ21と接続されている処理装置22と、処理装置22と接続されている送信部23を含む。これらにはそれぞれ局部的なエネルギー供給部24(例えば蓄電池またはバッテリー)によって、エネルギーが供給される。この車輪電子システム13aは、圧力センサ21によって、各車両の目下のタイヤ圧が測定されるように構成されている。処理装置22は殊に、メッセージを測定されたタイヤ圧に関する送信信号XAとして生成し、次にこのメッセージを送信部/受信部23を用いて無線で、受信装置15aに送信するように構成されている。この送信信号XAは例えば高周波搬送信号を用いて送信される。ここでこの高周波搬送信号は例えば200MHzより高い周波数であり、有利には315MHzまたは433.92MHzである。さらに、本実施例の場合には、メッセージは相応する車輪電子システム13aを識別するための情報を、例えば符合化されたおよび/または変調された識別データの形状で含んでいる。
【0024】
このような送信信号XA〜XDを受信するために、タイヤ圧コントロールシステムは車両側で複数の受信装置15a〜15dを有している。これらはそれぞれ受信アンテナ16a〜16dを含む。この場合には、全部で4つの受信装置15a〜15dが車輪ハウジング12a〜12dの領域内に設けられており、従って、各車輪電子システム13a〜13dのすぐ近くに配置されている。これらの受信装置15a〜15dは各受信アンテナ16a〜16dを介して、送信された信号XA〜XDを受信する。
【0025】
図3は、ブロック回路図に基づいて、車両側受信装置15aの例示的な構造を示している。受信装置15aには乗用車10のエネルギー源から、図示されていない方法で、電気的エネルギーが供給され、それぞれ受信アンテナ16aと、受信アンテナ16aと接続されている受信段25と、信号処理装置の例としてのマイクロプロセッサ26を有している。
【0026】
制御装置18、受信装置15a〜15dおよび車輪電子システム13a〜13dは以下のために設けられている。すなわち、例えば特定の時間区間内のその時々のタイヤ圧を測定し、測定されたこのタイヤ圧を評価し、乗用車を制御する、詳細には示されていない人物に、タイヤのうちの1つが例えば過度に低いタイヤ圧を有している場合にこれを知らせために設けられている。この場合にこの人物には、例えば図示されていない、乗用車の光学的な表示装置または音響的な装置によって適切に情報が伝えられる。ここで表示装置は付加的にさらに、どのタイヤが過度に低いタイヤ圧を有しているのかを示すことができる。殊に、タイヤ圧コントロールシステムに付加的に、各タイヤに受信情報の割り当てをすることができる位置検出機能が装備されているのは有利である。
【0027】
このように、受信装置15a〜15dを各車輪11a〜11dのすぐ近くに配置すること(図1の実施例)は、次のような利点を有している。すなわち、送信信号XAが低い送信出力で送出された場合にも、比較高い確実性で受信されるという利点を有している。
【0028】
このタイヤ圧コントロールシステムはさらにバス17、例えば単線または二線式CANバス(CAN=Controller Area Network)を含み、このバスには、各受信装置15a〜15dが各接続線路を介して結合されている。同じようにこのバス17に制御装置18が結合されている。この制御装置は中央計算ユニット19を含んでいる。この中央計算ユニット19は例えばプログラミング制御された装置(例えばマイクロプロセッサまたはマイクロコンピュータ)または配線された論理回路(例えばFPGAまたはPLD)であってよい。この制御装置18ないしその内部に設けられた計算ユニット19、バス17並びに受信装置15a〜15dは全体でバスシステムを構成する。このバスシステムを介して、各受信装置15a〜15dによって受信された送信信号XA〜XDが、バス17を使用して制御装置18に供給される。この制御装置18はさらに、各受信装置15a〜15dを制御することもできる。
【0029】
付加的な、殊に有利な構成では種々異なる受信装置15a〜15dはバス17を介して制御装置18とのみ通信するのではなく、相互に通信することも可能である。これは次のことを前提条件とする。すなわち、各受信装置15a〜15dのある程度の「インテリジェンス」を前提条件とする。すなわち、これらの受信装置15a〜15dは、別の受信装置15a〜15dの転送された送信信号YA〜YDを受信し、少なくとも部分的に処理することが可能であるようにも構成されていなければならない。これは、各受信装置15a〜15dが送信信号XA〜XDをバス17を介して送信するだけでなく、バス17を、転送された送信信号YA〜YDの存在についても監視する機能を前提条件とする。
【0030】
さらに、同じように、受信装置15a〜15dが受信された送信信号XA〜XDの事前評価並びに相応の評価をするのは有利である。受信装置15a〜15dのこのような付加的な機能を以降でより詳細に説明する。
【0031】
受信装置15a〜15dのこのような機能拡張によって、分布型バス構造が得られる。なぜならここでは評価および事前処理はもはや制御装置18内ないしは制御装置内に含まれている計算ユニット19内でのみ行われるのではなく、部分的にまたは完全に、個々のまたは複数の受信装置15a〜15dによって行われるからである。
【0032】
各車輪電子システム、例えば車輪電子システム13aとこの車輪電子システムに対応付けされた受信装置15aとの間では典型的な単方向データ通信が、送信信号XAの車輪側送信と車両側受信によって行われる。しかし、例えば公知のチャレンジ−レスポンス方法に従った双方向データ通信も可能である。ここで受信装置15aはまずは問い合わせ信号(チャレンジ)を車輪電子システム13aに送出し、車輪電子システム13aからこの問い合わせに関して応答(レスポンス)が送り返される。さらにこのような双方向データ通信の場合には、車輪電子システム13aと受信装置15aとの間でその他のデータも交換可能である。
【0033】
図4は、乗用車の平面図に基づいて、本発明によるタイヤ圧システムの第2の実施例を示している。図1に示された実施例とは異なり、ここでは、受信装置は各車輪11a〜11dのすぐ近くに配置されているのではない。この実施例では単に例示的に4つの受信装置15e〜15hが設けられている。これらの受信装置は、自動車10にわたって分配して配置されている。ここでこれらの受信装置の配置は、必ずしも、図4に記載された配置に相当しなくてもよく、むしろこれらの受信装置が他の様式で分配されていてもよい。受信装置の数も4個に限定されない。むしろより、4つより多くても、4つより少なくてもよく、殊に4つの受信装置15e〜hより少ない受信装置を設けることもできる。受信装置15e〜hの各々は、図3に示された受信装置15aと同じように構成されており、接続線路を介して共通のバス17に結合されている。
【0034】
図5は、平面図に基づいて、本発明のタイヤ圧システムの第3の実施例を示している。図1および図4に示された2つの実施例とは異なって、ここではタイヤコントロールシステムは全部で8つの受信装置15a〜hを含む。ここでも同じように、その数を任意に多くするまたは少なくすることができる。図5の実施例では、図1および4に示された受信装置15a〜15hの配置および分布の2つの形態が相互に組み合わされている。すなわち、ここでは第1のグループの受信装置15a〜15dが設けられている。このグループは図1に示された実施例に相応に、対応付けされた各車輪11a〜11dのすぐ近くに配置されており、ひいては車輪ハウジング12a〜12dのすぐ近くに配置されている。さらに受信装置15e〜15hの第2のグループが設けられている。これらは、図4の実施例において示されているように、自動車10にわたって多かれ少なかれ自由に分けて配置されている。
【0035】
図4および5の2つの実施例では、種々の、乗用車10内に分配された受信装置15e〜hはそれぞれ車輪11a〜11dに対応付けされている。付加的または択一的にここでは次のことも可能である。すなわち種々異なる受信装置15e〜15hがそれぞれ1つの車輪11a〜11dに対応付けされているのではなく、例えば複数の車輪11a〜11dに対応付けされていてもよいし、または固定的に対応付けされていなくてもよい。
【0036】
本発明では、タイヤ圧コントロールシステムのインテリジェントコンセプトが設けられており、受信装置15a〜15hによって受信された情報がバスシステムを介して転送され、処理される。このコンセプトは本発明に相応する「インテリジェント」受信装置15a〜15hが設けられている限りでは、比較的容易に実装可能である。このコンセプトの重要な構成要素は、インテリジェント受信装置15a〜15hが、公知の受信装置の場合のように、受信された送信信号を単にバス線路17に送出し、制御装置18に供給することではない。むしろここでは、各受信装置15a〜15h内で、受信された信号XA〜XDの事前評価が行われる。この事前評価は、タイヤ圧コントロールシステムの全体的なバスシステムがどのように設計されるべきなのかに応じて、種々の様式で実行される。これを以下で幾つかの例に基づいて簡単に説明する:
第1の用途では、全ての受信装置15a〜15dは、図1の実施例に示されているように、各車輪11a〜11dのすぐ近くに配置される。受信装置15a〜15dは、割り当てられた各車輪電子システム13a〜13dによって送出された送信信号XA〜XDを受信し、この受信された送信信号をバス17を介して制御装置18に供給する。しかし例えば受信装置15aが、自身に割り当てられた車輪電子システム13aとは異なる車輪電子システムの送信信号XBを受信してしまうこともある。この場合には、受信装置15aは、この受信された信号XBの評価を行う。このような評価の際に受信装置15aは例えば、送信信号XB内に含まれる識別データを介して、どの車輪電子システム13a〜dからこの送信信号XBが到来したのかを確認する、ないしは少なくとも、この送信信号XBが自身に割り当てられた車輪電子システム13aから到来したものでないことを確認する。このことが受信装置15aによって確認された場合には、この受信された送信信号XBはデータバス17を介して制御装置18に供給されない。
【0037】
1つの実施形態では、受信装置15aがこの受信された送信信号XBを、相応に割り当てられた受信装置15bに送信してもよい。
【0038】
付加的にまたは択一的に、受信装置15aがこの受信された送信信号XBを、受信装置15bの代わりに、制御装置18に送信することができる。この際に、この受信された送信信号XBが車輪電子システム13aからではなく、車輪電子システム13bからのものであるという情報も送信される。
【0039】
すなわち全体としてここでは受信された送信信号XA〜XDが直接的に転送されるのではなく、この受信された送信信号XA〜XDが各受信装置15a〜15d内で転送前に、少なくとも、送信信号が各割り当てられた車輪電子システム13a〜13dから到来したものであるかについて検証される。
【0040】
このようにして、有利にはバスの負荷が低減される。なぜなら「誤った」情報はバス17を介して転送されず、これによってバス17は不所望な負荷から少なくともより頻繁に免れる。
【0041】
第2の実施例では、図4の実施例に示されているように複数の受信装置は乗用車10にわたって分配される。ここでは例えば種々の受信装置が、固有の車輪11a〜11dに割り当てられているのではない。各受信装置15e〜15hは、送信信号XE〜XHを受信するように構成されている。これらの受信された送信信号は、信号YE〜YHの形でバス17に送出され、このようにして制御装置18内で評価される。付加的にこれらの受信装置15e〜15gは、バス17を介して伝送された各信号YE〜YHが、そのようなものとして識別されるように構成されている。従って各受信装置15e〜15hは、他の受信装置15e〜15gによって受信され、転送された受信信号YE〜YHが存在するか否かを求めることができるように構成されている。このような信号が存在する場合、各受信装置は、例えば自身に割り当てられた車輪電子システム13a〜13dから到来した必要な情報をバス17を介して受信し、アプリケーションに応じてさらに使用するか、またはさらに処理する。
【0042】
例えば、受信信号内の情報とは、受信装置15e〜15hによって受信されたが、別の受信装置15e〜15gによって必要とされる情報のことである。この場合には、この情報を実際に必要とする各受信装置15e〜15hは、この情報を、バス上に存在する受信信号から読み出す。
【0043】
この形態の特別な利点は、情報がバスシステム内で失われる危険が格段に低減されることである。なぜなら、このような情報が別の受信装置によって既に受信されている可能性が常にあるからである。これは例えば、受信装置が車輪電子システムと受信装置の間での伝送経路の妨害等によって、送信された各送信信号を受信できない場合である。ここでは常に、このような送信信号が、上述した車輪電子システムへの伝送区間が妨害されていない、少なくとも1つの別の受信装置を介して受信される可能性がある。このような場合には、受信装置はこの受信された情報を、この情報を必要とする受信装置へ転送する。
【0044】
このような機能は必ずしも、図4の実施例に相応して、分配された受信装置に対してのみ設けられるのではなく、図1の実施例のように車輪ハウジングの直ぐ近くにある受信装置に対しても、さらに当然ながら図5の実施例に対しても使用されるものであることを理解されたい。
【0045】
さらなる利点は、例えば別の交通参加者(例えば別の自動車)から送出され、車両10内の各受信装置15a〜15dによって受信された関連しない情報が、そのようなものとして識別され、従って転送されないということである。
【0046】
同じように、択一的な構成では、全体的なシステム(すなわち残りの受信装置および/または制御装置18)によって必要とされない情報は転送されない。従って、少なくとも別の受信装置15a〜15hおよび/または制御装置18によって必要とされる情報のみが各受信装置15a〜15hによって転送される。このような場合にも、受信装置15a〜15h全体を、自身に対して特定の情報がバス17上にあるか否かに関してバス17を監視するように構成することが必要である。
【0047】
別の実施形態では、殊に、図1、4および5に示されているような分布型バス構造では、車輪電子システム13aから送出された送信信号XAは受信装置15a〜15hの少なくとも1つによって受信される。この場合には本発明では、この受信された送信信号XAが受信装置15a〜15dの1つによってのみバス17に送出され、ひいては全体的なバスシステムに供給される。残りの受信装置は、この場合には受信された送信信号XAをバス17に送出しない。この構成でも次のことが必要とされる。すなわち、各受信装置15a〜15dがインテリジェントに構成され、従って、送信信号XA〜XDの受信および転送のためだけに構成されているのではなく、他の受信装置15a〜15dが例えば同じ送信信号XAを受信し、既にバス17に送出したか否かについてバス17を監視できることが必要とされる。これによっても殊にバス負荷は低減される。なぜなら、このようにして、冗長的な情報がバスを介して伝送されなくなるからである。
【0048】
殊にこのような多数の受信装置15a〜15hがタイヤコントロールシステム内に設けられている場合、および/または送信信号XA〜XDが高い送信出力で送出される場合、および/または車輪電子システムと受信装置との間の伝送経路が僅かにしか妨害されていない場合に、このような位置関係によってもバス負荷は顕著に低減される。
【0049】
分布型バス構造内の「インテリジェント」受信装置15a〜15hの作動に対する上述した実施例および形態は相互に組み合わせ可能であり、殊に図1、4および5の種々異なる全ての実施例においても使用可能であることを理解されたい。
【0050】
本発明を有利な実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに制限されるものではなく、種々に変更可能である。
【0051】
本発明をタイヤ圧センサに基づいて説明したが、本発明は、タイヤ圧を求めることにのみ制限されるものではない。むしろ車輪電子システムは、車輪で生じている可能性のあるエラー状態またはその他の車輪特性を検出することができる情報を求めるあらゆる装置であると理解されたい。概念「エラー状態」とはこの文脈では幅広いものであり、検出に値するとみなされる各車輪の全ての状態、特性および情報を含む。これは例えば冒頭に記載した特性(タイヤ温度、角速度、角加速度、タイヤの溝の厚さ等)である。
【0052】
従って本発明は殊にタイヤ圧コントロールシステムに限定されるものでなく、別のタイヤコントロールシステム、例えば車輪の取り付け場所を検出する(Lokalisation)ためのシステムにも拡張可能である。
【0053】
本発明を、送信部(制御装置側での問い合わせのない)がタイヤ固有のパラメータを送信信号内で、割り当てられた各受信部に送信するタイヤコントロールシステムに基づいても説明した。受信部はこの場合には、必ずしも確認信号を送り返すわけではない。本発明ではここで、トランスポンダ技術で構成されたタイヤ圧システムにも拡張可能である。ここではトランスポンダは能動的なまたは受動的なまたは準受動的なトランスポンダとして構成可能である。名称「受動的」および「能動的」とは、トランスポンダのエネルギー供給の様式に関する。ここでトランスポンダは、受動的である場合には、独自のエネルギー供給部を有しておらず、能動的である場合には充電可能な少なくとも1つの蓄電池を有している。ここで送信部と受信部の間のデータ通信は、トランスポンダ技術で通常であるように、公知のチャレンジ−レスポンス方法によって行われる。この場合には車輪側のトランスポンダは典型的に、送信信号を送り返すために、後方散乱技術を使用する。
【0054】
殊に本発明は、特別な数値データおよび周波数値に制限されるものではなく、本発明の枠内では当然ながら、別の伝送周波数を有する低周波数および/または高周波数の送信信号でも使用可能である。
【0055】
本発明の「インテリジェント」受信装置の使用時には、分布構造のタイヤコントロールシステムを実現することが可能である。これは例えば、受信装置の機能性を格段に拡張させることによって行われる。これによって例えば警報アルゴリズムが、送信信号を介して受信されたエラー状態を検出する受信装置によって自ら実行される。この場合には制御装置ないしは制御装置内に配置されたプログラミング制御される装置は、各受信装置によって、必要なデータ(例えば表示データ、警報状態等)によってのみ更新される。これによって計算ユニットの計算コストは格段に低減される。計算線路はここでは、分割された受信装置によって部分的に満たされる。これは殊に次の場合に有利である。すなわち、制御装置が、タイヤコントロールシステムの一部ではない他の機能も満たすように構成されている場合である。このような場合には制御装置は例外的な場合においてのみアクティブにされ、車両の他の機能に使用される。
【0056】
制御装置としてはここでは例えば、乗員拘束手段、安全システム用の制御装置または例えばエンジン制御装置も使用される。
【0057】
本発明の受信装置によって、それが望まれている場合には、この受信装置が受信した送信信号の(事前)処理を行うことができ、または付加的または択一的にこの受信された送信信号をバスを介して転送することができる。従ってこれらの信号は例えば別のインテリジェント受信装置および/または制御装置によって処理される。
【0058】
上述のタイヤコントロールシステムは、具体的な装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のタイヤ圧システムの第1の実施例を説明するための、乗用車の概略的な平面図
【図2】車輪側車輪電子システムの例示的な構造のブロック回路図
【図3】車両側受信装置の例示的な構造的のブロック回路図
【図4】本発明のタイヤコントロールシステムの第2の実施例を説明するための、乗用車の概略的な平面図
【図5】本発明のタイヤコントロールシステムの第3の実施例を説明するための、乗用車の概略的な平面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ固有のパラメータを求めるための、車両(10)内または車両(10)用のタイヤコントロールシステムであって、
当該タイヤコントロールシステムは分配されたバス構造を有しており、
少なくとも1つのインテリジェント受信装置(15a〜15h)を有しており、当該受信装置は、車輪電子システム(13a〜13d)の送信信号(XA〜XD)を受信するように構成されており、
前記受信層装置(15a〜15h)は信号処理装置(26)を有しており、該信号処理装置は前記受信された信号(XA〜XD)の評価および/または、バス構造の別の加入者(15a〜15h)の受信された信号の評価を行う、
ことを特徴とするタイヤコントロールシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの受信装置(15a〜15h)は車輪(11a〜11d)または当該車輪の車輪電子システム(13a〜13d)に割り当てられている、請求項1記載のタイヤ圧システム。
【請求項3】
少なくとも1つの受信装置(15a〜15h)は、当該受信装置に割り当てられている車輪電子システム(13a〜13d)のすぐ近くに配置されている、請求項1または2記載のタイヤ圧システム。
【請求項4】
車両にわたって分配されている少なくとも2つの受信装置(15a〜15h)が設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項5】
他の加入者(15a〜15h)は他の受信装置(15a〜15h)または計算ユニット(19)をあらわす、請求項1から4までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項6】
前記分配されたバス構造はバス(17)、例えば単線バス線路または二線バス線路と、当該バス(17)に結合された少なくとも2つの受信装置(15a〜15h)と、前記バス(17)に結合された計算ユニットを有しており、当該計算ユニットは受信装置(15a〜15h)を制御し、前記受信装置(15a〜15h)によって受信され、転送された信号(YA〜YD)を評価し、処理する、請求項1から5までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項7】
少なくとも2つの受信装置(15a〜15d)が設けられており、当該受信装置は前記バス(17)を介して計算ユニット(19)と通信する、および/または相互に通信するように構成されている、請求項6記載のタイヤ圧システム。
【請求項8】
受信装置(15a〜15d)の第1のグループが設けられており、当該第1のグループは自身に割り当てられた車輪電子システム(13a〜13d)のすぐ近くに配置されており、
さらに受信装置(15e〜15h)の第2のグループが設けられており、当該第2のグループは車両にわたって分配して配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項9】
前記第1および/または第2のグループの前記受信装置(15a〜15g)は、各車輪電子システム(13a〜13d)に割り当てられている、請求項8記載のタイヤ圧システム。
【請求項10】
前記受信装置(15a〜15h)は、バス(17)を監視する、および/またはバス(17)を介して伝送された信号(YA〜YD)を評価するように構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項11】
前記タイヤ固有のパラメータはタイヤ圧、タイヤ温度、車輪の回転速度、タイヤの溝の深さ、および/または車両(10)を基準にした車輪の取り付け位置である、請求項1から10までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項12】
前記タイヤコントロールシステムを、タイヤ圧を求めるためのタイヤ圧コントロールシステムとして構成する、請求項1から11までのいずれか1項記載のタイヤ圧システム。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載されたタイヤコントロールシステムの分配されたバス構造のインテリジェント受信装置(15a〜15h)の作動方法であって、
少なくとも、受信装置(15a〜15h)によって受信された送信信号(XA〜XD)を処理し、および/または評価し、当該処理ないし評価に依存して転送する、
ことを特徴とする、インテリジェント受信装置の作動方法。
【請求項14】
受信装置(15a〜15h)が、自身に割り当てられた車輪電子システム(13a)とは異なる車輪電子システムの送信信号(XA〜XH)を受信した場合、当該受信された送信信号(XA〜XH)の評価を行う、および/または当該送信信号(XA〜XH)を計算ユニット(19)に転送する、および/または車輪電子システム(13a〜13d)に割り当てられた受信装置(15a〜15h)に転送する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
受信装置(15a〜15h)は、別の受信装置(15a〜15h)によって受信され、前記バス(17)を介して転送された送信信号(XA〜XH)が前記バス(17)上に存在するか否かを求め、存在する場合には受信装置(15a〜15h)は自身に特定の信号を前記バス(17)を介して受信する、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも他の受信装置(15a〜15h)および/または計算ユニット(19)
によって必要とされる信号(YA〜YH)のみが受信装置(15a〜15h)によって転送される、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
同じまたは同一の情報、例えば同じ車輪電子システム(13a〜13d)の同じまたは同一の情報を含む、受信された送信信号(XA〜XD)は、唯一の受信装置(15a〜15h)によってバス(17)を介して前記計算ユニット(19)に転送される、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−195384(P2008−195384A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27781(P2008−27781)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508029952)ヴィディーオー オートモーティヴ アクチエンゲゼルシャフト (27)
【氏名又は名称原語表記】VDO Automotive AG
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12, D−93055 Regensburg, Germany