説明

タイヤトレッドのためのゴム組成物及びその調製方法

本発明は、架橋可能又は架橋されたゴム組成物であって、15%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率を有するジエンエラストマーを含み、タイヤトレッドを形成するのに使用され得る組成物に関する。また、本発明は、そのようなトレッド及びそのような前記トレッドを組み込むタイヤにも関する。
本発明の組成物は、少なくとも1種の共役ジエンから生じる直鎖又は分枝ジエンエラストマー及び補強充填剤を含み、且つ、このエラストマーが、15%以上の質量含有率の環状ビニル単位と、30,000〜350,000g/molの数平均分子量を有するようなものである。
このエラストマーは、不活性な炭化水素溶媒における、モノマーと、有機リチウム開始剤及びいくつかのヘテロ原子有する極性剤を含む触媒系との反応を含む、共役ジエンを含む1種以上のモノマーの陰イオン重合によって得られ、その反応は、(極性剤:開始剤)モル比が8よりも大きいバッチ式、又は(極性剤:開始剤)モル比が3以上の場合は連続的に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能又は架橋されたゴム組成物であって、15%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率を有するジエンエラストマーを含み、タイヤトレッドを形成するのに使用され得る組成物に関する。また、本発明は、そのようなトレッド及びそのような前記トレッドを組み込むタイヤにも関する。
ブタジエンなどの共役ジエンモノマーは、シス-1,4、トランス-1,4又は-1,2(ビニル結合)の形状で、陰イオン的に得られるポリマー内に組み込んでもよい。
陰イオン重合反応は慣習的に、有機リチウム化合物によって、炭化水素溶媒と1種以上の共役ジエンモノマーとの存在下で開始する。これらの反応によって製造されるエラストマーは、一般に8%〜15%である低い平均質量含有率のビニル結合を有する。所定のガラス転移温度(Tg)を有するエラストマーを得るためには、重合媒質に対し、これらの結合の平均含有率を著しく増加させる効果も有する極性剤を加えることが知られている。例えば、この含有率は90%に到達し得る。
【0002】
バッチ式で行われる陰イオン重合方法を開示している米国特許明細書、US-A-5,620,939、US-A-5,906,956及びUS-A-6,140,434は、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンコポリマー又はポリイソプレンでもよいジエンエラストマーにおけるビニル結合の含有率を増加することを目的としている。さらに、これらの文書は、そのように得られたジエンエラストマーが、カーボンブラック又はシリカのいずれかと結合し、タイヤトレッドのためのゴム組成物に有用であることを示している。これらのバッチ重合方法は、30〜100℃の温度で行われ、それらは特に以下を含む触媒系の使用を含む。
・1種以上のヘテロ原子を含む極性剤、例えばテトラヒドロフラン(THF)又はテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、
・有機リチウム開始剤、例えばn-ブチルリチウムなど、及び
・脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩、例えばtert-アミラートナトリウム又はメントラートナトリウムなど。
より正確には、その例において、文書US-A-5,620,939は、[1;0.33;3]、[2;0.66;3]、[3;1;3]、[0.5;0.17;3]、[1;0.5;2]及び[1;0.2;5]に等しい、[(塩:開始剤)、(塩:極性剤)、(極性剤:開始剤)]のモル比を開示している。
その例において、文書US-A-5,906,956は、前記モル比として以下の値、[2;1;2]、[0.5;1;0.5]、[0.25;0.08;3]、[0.5;0.17;3]、[1;0.33;3]、[1;0.66;3]、[3;1;3]、[0.5;0.17;3]、[1;0.5;2]及び[1;0.2;5]を開示している。
その例において、文書US-A-6,140,434は、前記モル比として以下の値、[0.25;0.03;8]、[0.25;0.05;5]、[0.25;0.08;3]、[0.25;0.25;1]、[0.25;0.5;0.5]、[0.15;0.05;3]、[0.5;0.17;3]、[1;0.33;3]及び[0.25;0.13;2]を開示している。
【0003】
これらのエラストマーにおけるビニル結合の含有率が増加するのとは無関係に、陰イオン的に得られたジエンエラストマーにおいて、ビニルシクロペンタン型の環状構造を形成する試みが、過去に行われている。
・これらの環状構造を形成するための解決策は、後重合反応、例えばエラストマーをルイス酸で処理するなどを行うことを含む。
・別の解決策は、反応媒質における低いモノマー濃度によって連続的に前記重合を行い、且つ特定の触媒系を用いることによって、陰イオン重合中、これらの環状構造を直接形成することを含み得る。
その例において、米国特許明細書US-A-3,966,691は、重合媒質におけるブタジエンの環化方法であって、n-ブチルナトリウムからなる開始剤とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)からなる賦活剤とを含む触媒系の使用を含む方法を記載している。リチウムアルコキシドは、重合媒質に任意に加えられ、重合を促進する。
重合は、-20℃から150℃の温度で連続的に行われ、得られたポリブタジエンは40%よりも多い環状構造の質量含有率を有するが、数平均分子量は2,000g/molに過ぎない。
論文“G. Quack, L.J. Fetters, Macromolecules, Vol 11, no. 2, pp. 369-373, (1978)”及び“A.R. Luxton, M.E. Burrage, G. Quack, L.J. Fetters, Polymer, Vol 22, pp.382-386”にはまた、重合媒質における連続的環化方法であって、n-ブチルリチウムなどの有機リチウム開始剤と、TMEDAからなる極性剤とを含む触媒系の使用を含む方法が記載されている(環化機構の記載として、最後に引用された文書の383頁右手のコラムを参照してもよい)。
重合は、30〜90℃の温度で行われ、得られたポリブタジエンは少なくとも18%のビニルシクロペンタン環の質量含有率を有するが、数平均の分子量は5,000g/molに過ぎない。
従って、これら重合方法の一つの主要な欠点は、得られたジエンエラストマーの数平均分子量の非常に低い値であり、この値は、これらのエラストマーがゴムタイヤトレッド組成物のエラストマーマトリックス(matrix)を形成するのに用いることができないことを意味している。
【0004】
本発明の目的はこの欠点を克服することであり、前記目的は、直鎖又は分枝ジエンエラストマーであって、少なくとも1種の共役ジエンから生じ、且つ15%以上の質量含有率の環状ビニル単位と30,000〜350,000g/molの数平均分子量との両方を含むエラストマーが、それらの比較的高い分子量とそれらの高い環状ビニル単位含有率とによって、タイヤトレッドを形成するのに用いられ得、特にさらに補強充填剤を含む、架橋可能又は架橋されたゴム組成物のエラストマーマトリックスの全て又は部分を形成するのに、都合よく用いられ得るという、本出願人のした発見によって達成された。
実際、本出願人は、高い環状ビニル単位含有率を有するこれらのエラストマーに基づくタイヤトレッド型組成物が、特に架橋状態において、環状ビニル単位を全く含まないことを除き同一の組成物であるジエンエラストマーに基づく既知のトレッド組成物によって示されるヒステリシス損失及び引張弾性率と完全に同程度のそれらを有することを、まさに思いがけなく発見した。
都合よくは、本発明のゴム組成物は、それが含む環状ビニル単位を有するエラストマーが、60,000〜350,000g/mol、さらに都合よくは100,000〜300,000g/molの数平均分子量を有するようなものである。
本発明の都合のよい例は、本発明のゴム組成物が、前記エラストマーが20%以上の環状ビニル単位の質量含有率を有するようなものである。
本発明の前記エラストマーの環状ビニル単位は、ビニルシクロアルカン型であり、それらは以下の一般的な式である。
【化1】

nは1又は2。
【0005】
本発明の組成物のジエンエラストマーは、好ましくは30%よりも多い共役ジエン由来の単位の質量フラクションを含み、且つ以下のものの重合によって得られるホモポリマー又はコポリマーでもよい。
・4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合又はこれらの共役ジエンモノマーを同時に2種以上の重合、又はそれとは別に
・これらの共役ジエンモノマーの1種以上と、8〜20個の炭素原子をそれぞれ有するビニル芳香族化合物の1種以上との重合。
好適な共役ジエンモノマーは、特に、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ-(C1〜C5アルカリ)-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン及び2,4-ヘキサジエンである。
好適なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト-、メタ-、及びパラ-メチルスチレン、市販の混合物“ビニルトルエン”、パラ-tert-ブチルスチレン、又はジビニルベンゼンである。スチレンが好ましく用いられるのに注目すべきである。
好ましくは、本発明の方法において、ブタジエン/イソプレン(BIR)、スチレン/ブタジエン(SBR)、スチレン/イソプレン(SIR)、又はブタジエン/スチレン/イソプレン(SBIR)のコポリマーを得るために、1,3-ブタジエン及び/又はイソプレンを、共役ジエンモノマーとして用い、一方で、スチレンをビニル芳香族モノマーとして用いる。
さらに好ましくは、前記エラストマーが、1,3-ブタジエン(BR)のホモポリマー又は1,3-ブタジエンとビニル芳香族コモノマーとのコポリマーからなる。
この後者の場合、1,3-ブタジエンとスチレンは、少なくとも質量の70%のブタジエン及び多くて質量の30%のスチレン、好ましくは少なくとも90%のブタジエン及び多くて10%のスチレンを有するSBRを得るために、共重合されてもよい。
この好ましい場合である、環状ビニル単位を含むエラストマーがBR又はSBRである場合において、このエラストマーが都合よくは、ブタジエンと比べて比較的高価なモノマーであるスチレンをゼロ又は低い含有率で有し(BR及びSBRそれぞれの場合について)、その結果、本発明の組成物を得るための総費用を減らし、また、本発明のBR又はSBRにおける高環状ビニル単位含有率により、前記組成物に、より高いスチレン含有率を有する既知のSBRによって与えられるのと本質的に同様の架橋された状態における特性(ヒステリシス損失、モデュライ、及びガラス転移温度)をさらに与える、スチレン単位含有率におけるこの相対的な不足を補う効果を有することに、注目すべきである。
【0006】
本発明の方法によって得られるジエンエラストマーは、それに続いて分枝(すなわち、カップリング又はスター(starred))されてもされなくてもよい。
特に好適なスターリング(starring)剤は、トリクロロメチルシラン、テトラクロロメチルシラン、ジフェニルカルボナート、又はさらに好ましくはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットなど、本出願人名義の米国特許明細書US-B-6,384,164に記載されているものである。
【0007】
本発明の好ましい特徴では、本発明の前記ジエンエラストマーは、不活性な脂肪族又は脂環式の炭化水素溶媒における、モノマーと、有機リチウム開始剤及びいくつかのヘテロ原子を含む極性剤を含む触媒系との反応を含む、少なくとも1種の共役ジエンモノマーを含む1種以上のモノマーの陰イオン重合によって得られ、その反応は、
(1)バッチ式、(極性剤:開始剤)モル比はこの場合8よりも大きい、
(2)又は連続的、(極性剤:開始剤)モル比はこの場合3以上、
で行われ、
前記場合(1)においては、15%以上の環状ビニル単位の質量含有率と10,000g/mol〜60,000g/molの数平均分子量(Mn)との両方を有する直鎖ジエンエラストマーを調製することが可能であり、
前記場合(2)においては、15%以上の環状ビニル単位の質量含有率と10,000g/mol〜300,000g/molのMnとの両方を有する直鎖ジエンエラストマーを調製することが可能であり、これは脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩が前記触媒系に組み込まれるという条件のもとで、100,000以上のMn値を達成することが可能であり、そのような系は同時に以下の3つの条件を満たす。
(i)(極性剤:開始剤)モル比が、3以上である、
(ii)(塩:開始剤)モル比が、0.01〜2の範囲内にある、及び
(iii)(塩:極性剤)モル比が、0.001〜0.5の範囲内にある。
【0008】
挙げることのできる、本発明のこの触媒システムで用いられる有機リチウム開始剤は、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族又は脂環式炭化水素基を含むモノリチウム化化合物、例えば、n-ブチルリチウム(以下ではn-BuLiに省略)、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、アミルリチウム、シクロヘキシルリチウム、又はフェニルエチルリチウムなどである。
触媒系を形成するのに用いられる開始剤の量は、好ましくはモノマー1kg当たり0.002〜0.01molである。
挙げることのできる、本発明のこの触媒システムで用いられる2種以上のヘテロ原子(酸素又は窒素の原子)を含む極性剤は、ジエーテル及びジアミンなどの“多座配位”極性剤、例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジメトキシエタン(DME)、ジエチルカルビトール(DEC)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(又は“トリグリム”)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(又は“テトラグリム”)、又はジピペリジノエタンである。
この極性剤は、反応媒質の質量の百万部分当たり、300〜30000部分の含有率(ppm)、好ましくは500〜3000ppmの含有率で、本発明の触媒系を形成するのに用いられる。
モノアミン及びモノエタンなどの1種のヘテロ原子を含む極性剤(“単座配位”剤)、例えばテトラヒドロフラン(THF)は、それらが、得られるジエンエラストマーの環状ビニル単位の上記質量含有率を与えないため、本発明の方法を行うのに好適ではないことに注目すべきである。
既知の触媒系によって行われる方法と違って、本発明の上記に明記された方法(1)又は(2)(バッチ又は連続的)は、10,000g/molよりも大きい分子量Mnを有する直鎖ジエンエラストマーを得ることが可能であることに注目すべきである。
前記方法(2)が、不活性な脂肪族又は脂環式の炭化水素溶媒における、モノマーと、前記有機リチウム開始剤及び2種以上のヘテロ原子を含む前記極性剤を含む触媒系との反応による、少なくとも1種の共役ジエンモノマーの攪拌連続反応器における陰イオン重合を含み、前記関係(i)を満たすときは、60,000g/mol以上の、又は前記塩が触媒系に組み込まれ、前記系がさらに上記に明記された条件(ii)及び(iii)を満たす場合においては、さらに100,000g/mol以上のMnを有する直鎖エラストマーを得るのを都合よく可能とすることに注目すべきである。
前記塩の使用を含む、本発明のこの連続的な方法(2)が、本発明の好ましい態様であるのは、既知の先行技術と比べて非常に高い分子量と、20%以上の環状ビニル単位の質量含有率との両方を有するジエンエラストマーを得ることができるからである。
本発明の方法(1)及び(2)はまた、得られたジエンエラストマーの分子量分布を制御するのを都合よく可能にし、この分布が、比較的低い多分散性指数IP(3よりも小さい)を有することにも注目すべきである。
【0009】
本発明の前記バッチ方法(1)が、8よりも大きい(極性剤:開始剤)モル比の値によって特徴づけられていることに関して、この比は、都合よくは10以上、さらに都合よくは15以上である。例えば、このモル比の値を100までに制限することに決定してもよい。
本発明の前記連続的な方法(2)が、前記条件(i)及び任意に前記条件(ii)及び(iii)によって特徴づけられていることに関して、(極性剤:開始剤)モル比は、都合よくは5以上であり、さらに都合よくは、このモル比は10以上である。例えば、このモル比の値を100までに制限することに決定してもよい。
さらに都合よくは、前記連続的な方法(2)によって、特に100,000g/mol以上の分子量Mnの直鎖ジエンエラストマーを得るために、本発明の触媒系は、(極性剤:開始剤)モル比が15以上であり、この値は既知の触媒系で用いられる量と比べて、これらの触媒系の極性剤が非常に多いことを表している。例えば、このモル比として15〜40の値を選択することを決定してもよい。
好ましくは用いられるこれらの方法で使用できる脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩は、それらのアルコールが、3〜12個の炭素原子、さらに好ましくは3〜8個の炭素原子を含む。
都合よくは、脂肪族アルコールのナトリウム又はカリウム塩は、tert-ブチラートナトリウム、tert-アミラートナトリウム、又はイソペンチラートナトリウムなどが用いられ、又はこれとは別に脂環式アルコールのナトリウム又はカリウム塩は、ジアルキル化シクロヘキサノラートナトリウムなど、例えばメントラートナトリウムが用いられる。
【0010】
本発明の一つの好ましい特徴では、前記塩を含む前記連続的な方法(2)で用いられる触媒系は(前記条件(i)、(ii)、及び(iii)で特徴づけられる)、(塩:極性剤)モル比が0.001〜0.1の範囲内にある。
本発明の別の好ましい特徴では、この連続的な方法(2)に用いられる触媒系は、(塩:開始剤)モル比が0.01〜0.6の範囲内にある。この好ましい特徴を有する態様の第一の例では、この比が、0.01〜0.2の範囲内にあり、第二の例では、この比が、0.3〜0.6の範囲内にある。
(塩:開始剤)モル比である0.01〜0.2のこの範囲は、本発明の連続的な方法(2)によって、100,000g/mol以上の分子量Mnの直鎖エラストマーを得て、且つ15%以上の、都合よくは20%以上の環状ビニル単位の質量含有率を有するのに、特に好適である。
この(塩:開始剤)モル比である0.3〜2、好ましくは0.3〜0.6の範囲は、本発明の連続的な方法(2)によって、30,000g/mol以下の分子量Mnの直鎖エラストマーを得て、且つ35%以上の、都合よくは40%以上の環状ビニル単位の質量含有率を有するのに、特に好適である。
【0011】
一般に、本発明の方法によって得られるジエンエラストマーにおけるビニル単位の質量含有率が40%〜65%であることは、さらに注目すべきである。
挙げることのできる、本発明の方法で用いられる不活性炭化水素溶媒は、脂肪族又は脂環式溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、市販のヘキサン/メチルシクロヘキサンの混合物、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、又はシクロヘキサンなどである。
トルエンなどの芳香族溶媒は使用できないことに注目すべきである。
もちろん、本発明の組成物は、上記に示された環状ビニル単位を含む1種のジエンエラストマー又はこれらジエンエラストマーのいくつかの混合物を含んでもよい。
15%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率を含む、この又はこれらのジエンエラストマーは、本発明の組成物において単独で用いられるか、又は慣習的にタイヤに用いられる他のエラストマー、例えば天然ゴム又は天然ゴムと合成エラストマーに基づく混合物、又はそれとは別に任意にカップリング及び/又はスターされてもよいか又はそれとは別に部分的又は全体的に機能化された別のジエンエラストマーなどとの混合物で用いられてもよい。
本発明の組成物における前記慣習的なエラストマーの割合が小さくなればなるほど、本発明のゴム組成物特性の改良は、大きくなることは、注目すべきである。
都合よくは、本発明の組成物は、50phr(phrは、エラストマーの百部分当たりの質量部)以上の量の、さらに都合よくは70phr以上の量の環状ビニル単位を有する前記エラストマーを含む(この又はこれらの慣習的なエラストマーは、本発明の組成物において、50phr以下、又はそれとは別に30phr以下の量で、それぞれ存在する)。
本発明の好ましい態様では、前記組成物は、環状ビニル単位を100phrに等しい量で有する前記エラストマーを含む。
【0012】
あらかじめ示したように、本発明の組成物はまた、50〜150phrで変化してもよい量の補強充填剤も含む。
本発明の第一の例では、前記補強充填剤は、好ましくは50%〜100%の質量フラクションの無機補強充填剤を含む。
本出願において、“無機補強充填剤”は、その色及びその起源(天然又は合成)がどうであろうと、既知の手法における無機又は鉱物充填剤を意味するものと理解され、また、カーボンブラックとは対照的に“白い”充填剤又は時々“透明な”充填剤としても呼ばれ、この無機充填剤は独立で、中間結合剤以外の方法無しで、タイヤの製造のためのゴム組成物を補強することができ、言い換えれば、その補強機能において慣習的なタイヤ等級のカーボンブラック充填剤の代わりとなることができる。
都合よくは、前記無機補強充填剤の全体又は非常に少なくとも大部分の割合が、シリカ(SiO2)である。用いられるシリカは、高分散性沈殿シリカが好ましいとはいえ、当業者に既知のいかなる補強シリカ、特に、共に450m2/gよりも小さいBET表面積とCTAB比表面積とを有するいかなる沈殿又は発熱性シリカでもよい。
好ましくは、共に80m2/g〜260m2/gのBET又はCTAB比表面積を有するシリカが用いられる。
本明細書において、BET比表面積は、Brunauer、Emmett、及びTellerの方法、“The Journal of the American Chemical Society”、60版、309頁、1938年2月、及び対応するStandard AFNOR-NFT-45007(1987年11月)記載に基づく既知の方法によって決定する。CTAB比表面積は、同様のStandard AFNOR-NFT-45007(1987年11月)に基づいて決定される外表面積である。
“高分散性シリカ”は、エラストマーマトリックスにおいて離解及び分散する非常に本質的な能力を有するシリカを意味するものと理解され、この能力は、既知の手法である薄片に対する電子又は光学顕微鏡によって観察することができる。挙げることのできる、そのような好ましい高分散性シリカの非限定例は、DegussaのシリカUltrasil 7000及びUltrasil 7005、RhodiaのシリカZeosil 1165MP、1135MP、及び1115MP、PPGのシリカHi-Sil EZ150G、HuberのシリカZeopol 8715、8745及び8755、及び沈殿処理されたシリカ、例えばEP-A-735088に記載のアルミニウム“ドープ”シリカである。
無機補強充填剤が存在する物理的状態は、粉末、微小ビーズ、顆粒、又はそれとは別に球の形状のいずれであろうとなかろうと重要でない。もちろん、“無機補強充填剤”はまた、異なる無機補強充填剤の混合物、特に上記の高分散性シリカなどの混合物を意味するものとも理解される。
用いられ得る無機補強充填剤の他の非限定例は以下である。
・アルミナ(式Al2O3)、例えば欧州特許明細書EP-A-810258に記載の高分散性アルミナなど、又はそれとは別に
・水酸化アルミニウム、例えば国際特許明細書WO-A-99/28376に記載のものなど。
シリカによって修飾されているカーボンブラックを含む無機補強充填剤、限定はしないが、例えば国際特許明細書WO-A-96/37547に記載されている、CABOTから名称“CRX2000”で販売されている充填剤なども好適である。
【0013】
本発明の第二の例は、前記補強充填剤が、50〜100%の質量フラクションのカーボンブラックを含む。タイヤ及び特にタイヤのトレッドに慣習的に用いられるいかなるカーボンブラックも好適であり、特に、HAF、ISAF、及びSAF型ブラックが好適である。カーボンブラックN115、N134、N234、N339、N347、及びN375が、非限定手法において挙げることができる。
前記補強充填剤は、前記補強充填剤とカーボンブラックとの混合物を含んでいてもよく、前記補強充填剤におけるカーボンブラックの質量フラクションは、好ましくは50%以下で選択される。
例えば、ブラック/シリカ混合物、又は部分的又は全体的にシリカで被覆されているブラックが、補強充填剤を形成するのに好適である。
本発明のゴム組成物はさらに、慣習的な手法で、無機補強充填剤/エラストマーマトリックス結合剤(カップリング剤とも呼ぶ)を含んでいてもよく、この機能は、前記無機充填剤及びマトリックス間の十分な化学的及び/又は物理的結合(又はカップリング)を確実にし、前記マトリックス内におけるこの無機充填剤の分散を容易にする。
“カップリング”剤は、考慮中の充填剤及びエラストマー間の十分な化学的及び/又は物理的結合を確立し、エラストマーマトリックスの範囲内におけるこの充填剤の分散を容易にすることのできる薬剤を意味するものと、より正確に理解される。少なくとも二官能性であるこのようなカップリグ剤は、例えば簡単な一般式“Y-T-X”を有する。
・Yは、物理的及び/又は化学的に無機充填剤と結合することのできる官能基(“Y”官能基)を表し、このような結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカの場合は表面のシラノール)との間に確立することができる。
・Xは、例えば硫黄原子によって、物理的及び/又は化学的にエラストマーと結合することのできる官能基(“X”官能基)を表す。
・Tは、YとXとをつなぐことを可能とする基を表す。
【0014】
カップリング剤と、既知の手法において、充填剤に関して活性のあるY官能基を含んでもよいが、エラストマーに関して活性のあるX官能基が欠けている、当該充填剤を被覆するための簡単な薬剤とを、特に混同してはいけない。
そのような可変的効果を有するカップリング剤は、非常に多くの文書に記載されており、当業者にとって周知である。実際、タイヤの製造に用いられるジエンゴム組成物において、シリカなどの無機補強充填剤とジエンエラストマー、例えば有機シラン、特に多硫化アルコキシシラン又はメルカプトシラン、又はそれとは別に上記X及びY官能基を有するポリ有機シロキサン間の効果的な結合又はカップリングを保証することが知られている又は保証する可能性がある、いかなる既知のカップリング剤も使用するのが可能である。
シリカ/エラストマーカップリング剤は、特に非常に多くの文書に記載されており、最も既知のものは、二官能性アルコキシシラン、例えば多硫化アルコキシシランである。
特に、特定構造に依存して“対称”又は“非対称”と呼ばれる、多硫化アルコキシシラン、例えばそのような既知の化合物を詳細に記載している、特許US-A-3842111、US-A-3873489、US-A-3978103、US-A-3997581、US-A-4002594、US-A-4072701、US-A-4129585、又はさらに最近の特許又は特許出願、US-A-5580919、US-A-5583245、US-A-5650457、US-A-4663358、US-A-5663395、US-A-5663396、US-A-5674932、US-A-5675014、US-A-5684171、US-A-5684172、US-A-5696197、US-A-5708053、US-A-5892085、EP-A-1043357に記載されているものなどが用いられる。
本発明を実行するのに特に好適なのは、以下に限定するものではないが、以下の一般式(I)を満たす対称多硫化アルコキシシランである。
(I)Z-A-Sn-A-Z
(式中、nは、2〜8の整数である(好ましくは2〜5)。
Aは、2価炭化水素基である(好ましくはC1-C18アルキレン基又はC6-C12アリーレン基、さらに特にC1-C10アルキレン、特にC1-C4アルキレン、特にプロピレン)。
Zは、下式のうちの一つに対応する。
R1 R1 R2
| | |
−Si−R1 、−Si―R2 、 −Si−R2
| | |
R2 R2 R2
基R1は、置換されていてもされていなくてもよく、同一でも異なっていてもよく、C1-C18アルキル基、C5-C18シクロアルキル基、又はC6-C18アリール基を表す(好ましくは、C1-C6アルキル、シクロヘキシル、又はフェニル基、特にC1-C4アルキル基、さらに好ましくはメチル及び/又はエチル)。
基R2は、置換されていてもされていなくてもよく、同一でも異なっていてもよく、C1-C18アルコキシル基、又はC5-C18シクロアルコキシル基を表す(好ましくは、C1-C8アルコキシル基、又はC5-C8シクロアルコキシル基、より好ましくはC1-C4アルコキシル基、さらに好ましくはメトキシル及び/又はエトキシル)。
【0015】
上記式(I)に対応する多硫化アルコキシシランの混合物、特に慣習的な市販で入手可能の混合物の場合、“n”の平均値は、好ましくは2〜5で変化する分数であると理解される。
特に挙げることのできる多硫化アルコキシシランは、ビス(アルコキシル(C1-C4)-アルキル(C1-C4)シリルアルキル(C1-C4))のポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えばビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。これらの化合物の中で、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTに省略)又は式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPDに省略)が、特に用いられる。TESPDは、例えば、Degussaから名称Si266又はSi75で(後者の場合、ジスルフィド(75%質量)及びポリスルフィドの混合物の形態)、又はそれとは別にWitcoから名称Silquest A1589で販売されている。TESPTは、例えば、Degussaから名称Si69で(又はカーボンブラックの50質量%の含有率で保持されるときはX50S)、又はそれとは別に企業Osi Specialtiesから名称Silquest A1289で販売されている(両方の場合、4に近いnの平均値を有するポリスルフィドの市販混合物)。本出願人名義の国際特許出願PCT/EP02/03774の主題である、四硫化モノアルコキシシラン、例えばモノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィド(MESPTに省略)も挙げることができる。
【0016】
本発明の組成物はまた、前記エラストマーマトリックスに加え、前記補強充填剤及び任意に前記結合剤、ゴム組成物に標準的に用いられる他の成分及び添加剤の全て又は部分、例えば可塑剤、顔料、抗酸化剤、抗オゾン化剤ワックス、硫黄及び/又は過酸化物に基づく架橋形成系及び/又はビスマレイミド(bismaleimides)、アルキルアルコキシシランなどの無機補強充填剤のための一種以上の被覆剤、ポリオール、アミン又はアミドを含んでもよい。
本発明の組成物は、架橋形成系を除き、130℃〜200℃の最大温度における、組成物成分の第一の熱機械的作業段階、それに続く、第一の段階の前記最大温度より低い温度で、且つ前記架橋形成系を組み込んでいる間に行われる、第二の機械的作業段階を行うことによって調製され得る。
上記、及びさらに、本発明の特徴は、より詳細に、本発明のいくつかの具体的態様の以下の記載で開示され、これらの記載を実例となる非限定例として述べる。
【0017】
合成エラストマーのキャラクタリゼーション
SEC(分子サイズ排除クロマトグラフィー)を用いて、エラストマーの分子量と多分散性指数を決定した。この技術では、高分子は、膨張したときのそれぞれのサイズによって、多孔性固定相が充填されているカラムで物理的に分離される。
名称“WATERS”及びモデル“150C”で販売されているクロマトグラフを、上記の分離に用いる。2つの“WATERS”カラム1組、型“STYRAGEL HT6E”を用いる。
DSC(示差走査熱量測定)を用いて、得られたエラストマーのガラス転移温度(Tg)を決定した。
さらに、炭素13核磁気共鳴(13C-NMR)を用いて、得られたエラストマーの微細構造特性を決定した。このキャラクタリゼーションの詳細は、以下に説明する。
13C-NMR分析は、“Bruker AM250”分光計を用いて行う。炭素13の公称周波数は、62.9MHzである。定量的結果を確実にするために、スペクトルを“核オーバーハウザー効果”(NOE)無しで記録する。スペクトル幅は240ppmである。用いる衝撃(impulse)角は、継続時間5μ秒で90°衝撃である。低出力デカップリング及び広幅プロトンバンドを用いて、13C収集中にスカラー1H-13Cカップリングを除去する。連続反復時間は、4秒である。信号/ノイズ比を増加するために蓄積される過渡電流は8192回である。スペクトルは、77ppmにおけるCDCl3バンドに対して較正する。
SBR及びBRのNMRスペクトルの解釈は、文献の多くの発表物、例えば以下の文書の主題である。
(1)Q.-T. Pham, R. Petiaud, H. Waton, M.-F. Llauro-Darricades, Proton and Carbon NMR Spectra of Polymers, Penton Press, London(1991).
(2)Sato H., Ishikawa, T., Takebayashi K., Tanaka Y., Macromolecules, 22, 1748-1753,(1989).
(3)Harwood, H., J. Rubber Chem. Technology, 55, 769-806,(1982).
(4)Kobayashi E., Furakawa J., Ochiai M., Tsujimoto T, European Polym. J., 19, 871-875,(1983)
(5)Jiao S., Chen X., Hu L., Yan B., Chinese J. Polym. Sci., 8, 17-24,(1990).
(6)Quack G., Fetters L.J., Macromolecules, 11, no. 2, 369-373,(1978).
特に、ビニルシクロペンタン型構造が明らかにされ、上記文書(6)に与えられた。
明らかにされたSBR及びBRの微細構造は、以下である。
【化2】

1,4-シス-ブタジエン(C) 1,4-トランス-ブタジエン(T) 1,2-ブタジエン(V)


スチレン(S) ビニルシクロペンタン(VCP)

以下の表は、不飽和炭素領域におけるこれらの構造の種々の炭素原子に対応する化学シフトを要約する。

ジエン部分におけるシス/トランス比は、当業者に周知の割り当てを基にしたスペクトルの脂環式部分で決定する(上記文書(1)〜(5)参照)。
【0018】
得られたゴム組成物のキャラクタリゼーション
ムーニー粘度、100℃におけるML(1+4)を、Standard ASTM D 1646で測定。
引張弾性率ME10、ME100及びME300(10%、100%及び300%においてMPaで表す)を、Standard ASTM D 412で測定。
SHORE A硬度を、Standard ASTM D 2240、1997で測定。
ヒステリシス損失(HL)を、%で、反発による60℃における6回目の衝撃において以下の式で測定。HL(%)=100×(W0-W1)/W1(式中、W0=供給されるエネルギー、及びW1=返されるエネルギー)。
動的剪断特性を、Standard ASTM D 2231-71、1977年認可(最大振幅変形範囲0.45〜50%を用い、10Hzにおいて行われる変形の関数としての測定値)によって測定。定まった非線形性は、0.15〜50%における剪断係数(MPa)の違いである。ヒステリシスは、Standard ASTM D 2231-71によって、7%変形及び23℃におけるtanδの測定値によって定まる。
組成物の動的特性は、12Nの適用応力及び1.25の静止力に対する動力の比を用い、温度を上昇(1分当たり2℃の割合)させる間の、10Hzにおいて行われる温度関数の測定値である。
【0019】
エラストマー合成例
1)例1、“対照”、ビニルシクロペンタン構造単位を含まない、高分子量油展“対照”スターSBR 1の調製
このSBRは、14リットルの完全な攪拌反応器で連続的に製造する。
トルエン、ブタジエン、スチレン、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンを、それぞれ質量の100:10.15:4.15:0.68:0.25の量でこの反応器に導入する。モノマー100g当たり200μmolのn-BuLiを、このライン注入口にある種々の成分によるプロトン性不純物を中和するために、ライン注入口を通して導入する。モノマー100g当たり150μmolのn-BuLiを、反応器注入口から導入する。
(極性剤:n-BuLi)モル比は、およそ569である。
種々の流速は、反応器の平均滞留時間が40分で、且つ温度が60℃に保持されるように調整する。
反応器流出口で採取されたサンプルで測定される転換率は、87%であり、トルエン中0.1g/dLで測定する得られた直鎖SBRの固有粘度は、2.61dL/gである。プロピレングリコールカルボナートからなるスターリング剤を、反応器流出口で導入し、次にこのスターSBRを、0.2phrの2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)及び0.2phrのN-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミンによる抗酸化処理に付す。
このスターSBR 1の質量Mnは250,000g/molであり、IP指数は1.89である。
この“対照”SBR 1は、25%のスチレン結合の質量含有率を有する。ブタジエン部分に関して、それは58%のビニル構造単位の質量含有率を有し、ビニルシクロペンタン構造単位は検出されなかった。
油展以前には、本発明のこの“対照”SBR 1のTgは-24℃である。
この例は、トルエンなどの芳香族重合溶媒が、得られる高分子量ジエンエラストマーにおける環状ビニル単位を得るのに好適でないことを明らかに示している。
次に、この“対照”SBR 1は、当業者に既知の技術によって、エラストマー100部当たり37質量部の芳香族オイルを用いて油展する。
【0020】
2)本発明の例2、本発明の高分子量油展スターSBR 2の調製
このSBRは、14リットルの完全な攪拌反応器において連続的に製造する。
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレン及びテトラメチルエチレンジアミンを、この反応器内に質量100:13.6:0.7:0.17の量でそれぞれ導入し(反応媒質におけるテトラメチルエチレンジアミンの量はおよそ1500ppm)、さらにtert-アミラートナトリウム溶液を、0.04のナトリウム:活性リチウム比で導入する。モノマー100g当たり300μmolのn-BuLiを、ライン注入口にある種々の成分によって導入されるプロトン不純物を中和するために、ライン注入口から導入する。モノマー100g当たり660μmolのn-BuLiを、反応器注入口に導入する。(TMEDA:n-BuLi)モル比は、およそ15.5である。
種々の流速は、反応器における平均滞留時間が40分であり、且つ温度が80℃に保持されるように調整する。
(ナトリウム:テトラメチルエチレンジアミン)モル比は0.002である。
反応器流出口で採取されるサンプルで測定する転換率は90%であり、トルエン中0.1g/dLで測定する得られた直鎖SBRの固有粘度は2.30dL/gである。この直鎖SBRは、150,000g/molの数平均分子量Mnを有する。
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットを含むスターリング剤は、反応器流出口で導入し、次にこのスターSBRを上記項1)の抗酸化処理に付す。このスターSBR 2は、260,000g/molの重量Mn及び2.56のIp指数を有する。
本発明のこのスターSBR 2におけるスチレン結合の質量含有率は、6%である。ブタジエン部分において、ビニル結合の質量含有率は57%であり、ビニルシクロペンタン単位の質量含有率は22%である。
油展以前には、本発明のこのSBR 2のTgは-25℃である。
脂環式又は脂肪族アルコールのアルカリ金属塩を触媒系に組み込むことによって、重合(15よりも大きい(極性剤:開始剤)モル比で連続的に行われる)は、150,000g/molよりも多い分子量の直鎖エラストマーに対し、20%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率を生じる。
次に、本発明のこのスターSBR 2は、当業者に既知の技術によって、エラストマー100部当たり37質量部の芳香族オイルを用いて油展する。
【0021】
3)本発明の例3、本発明の高分子量油展スターBRの調製
本発明のこのポリブタジエン(BR)は、シクロヘキサン100部当たり14.3部を反応器に導入すること、スチレンを反応器に導入しないこと、及びモノマー100g当たり600μmolのn-BuLiを反応器注入口で導入することを除いて、上記例2に記載と同一の条件下、連続的に製造する。
(TMEDA:n-BuLi)モル比はおよそ17.1である。
反応器流出口で採取されるサンプルで測定する転換率は、92%であり、得られた直鎖BRの固有粘度を、トルエン中0.1g/dLで測定すると、1.86dL/gである。この直鎖BRの分子量Mnは、130,000g/molである。
以前のように、スターBRを上記と同様の抗酸化処理に付す前に、スターリング剤を反応器流出口に導入する。
このスターBRは、181,000g/molの重量Mnと、2.89のIp指数を有する。
このスターBRは、56%のビニル結合の質量含有率と、20%のビニルシクロペンタンの質量含有率を有する。
油展以前には、本発明のこのBRのTgは-29℃である。
この例はまた、脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩を触媒系に組み込むことによって、重合(15よりも大きい(極性剤:開始剤)モル比で連続的に行われる)は、20%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率の、100,000g/molよりも多い分子量の直鎖ポリブタジエンを生じることも示している。
本発明のこのスターBRは、当業者に既知の技術によって、エラストマー100部当たり35質量部の芳香族オイルを用いて油展する。
【0022】
4)本発明の例4、本発明の高分子量非油展スターSBR4の調製
このポリマーは、0.8リットルの完全な攪拌反応器において連続的に製造する。
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレン及びテトラメチルエチレンジアミンを、この反応器内に質量100:13.15:1.13:0.29の量でそれぞれ導入する。モノマー100g当たり200μmolのn-BuLiを、ライン注入口にある種々の成分によって導入されるプロトン不純物を中和するために、ライン注入口から導入する。モノマー100g当たり1200μmolのn-BuLiを、反応器注入口に導入する。
(TMEDA:n-BuLi)モル比は、およそ14.6である。
種々の流速は、反応器における平均滞留時間が40分であり、且つ温度が80℃に保持されるように調整する。
転換率は、反応器流出口で採取されるサンプルで測定すると92%であり、得られた直鎖SBRの固有粘度は、トルエン中0.1g/dLで測定すると1.35dL/gである。この直鎖SBRの分子量Mnは、75,000g/molである。
メチルトリクロロシラン(モノマー100g当たり400μmol)を含むスターリング剤を、反応器流出口で導入し、次にこのスターSBRを以前と同様の抗酸化処理に付す。
このスターSBR4の質量Mnは120,000g/molであり、Ip指数は1.89である。このSBR4の粘度は1.85dL/gである。
このSBR4は、8%のスチレン単位含有率、51%のビニル構造単位の質量含有率、及び18%のビニルシクロペンタン構造単位の質量含有率を有する。
本発明のこのSBR4のTgは、-28℃である。
この例は、重合(10よりも大きい(極性剤:開始剤)モル比で連続的に行われる)の後、50,000〜100,000g/molの分子量Mnの直鎖エラストマーについて、15%よりも多い環状ビニル単位の質量含有率を得るために、脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩を触媒系に組み込む必要がないことを示している。
【0023】
5)例5、“対照”、高分子量非油展“対照”スターSBR5の調製
このSBRは、例4と類似の条件下で調製する。
シクロヘキサン、ブタジエン、スチレン及びテトラメチルエチレンジアミンを、この反応器内に質量100:10.6:3.7:0.02の量でそれぞれ導入する。モノマー100g当たり200μmolのn-BuLiを、ライン注入口にある種々の成分によって導入されるプロトン不純物を中和するために、ライン注入口から導入する。モノマー100g当たり1200μmolのn-BuLiを、反応器注入口に導入する。
種々の流速は、反応器における平均滞留時間が40分であり、且つ温度が60℃に保持されるように調整する。
転換率は、反応器流出口で採取されるサンプルで測定すると92%であり、得られた直鎖SBRの固有粘度は、トルエン中0.1g/dLで測定すると1.20dL/gである。メチルトリクロロシラン(モノマー100g当たり400μmol)を含むスターリング剤を、反応器流出口で導入し、次にこのスターSBR5を以前と同様の抗酸化処理に付す。
このスターSBR5の質量Mnは110,000g/molであり、Ip指数は1.51である。このSBR5の粘度は1.56dL/gである。
このスターSBR5は、52%のビニル単位の質量含有率、及び2.5%のビニルシクロペンタン単位の質量含有率を有する。
このSBR5におけるスチレン単位の含有率は、25%である。
このSBR5のTgは、-28℃である。
【0024】
II ゴム加工例
1)第一の比較例
この例において、客車タイヤトレッド型の2種のゴム組成物1及び2であって、補強充填剤がシリカからなるものを比較する。
第一の“対照”組成物1は、上記項1の例1で得られた“対照”SBR1に基づく(このSBR1は特に、25%のスチレン結合の質量含有率を有し、且つ環状ビニル構造単位を含まない)。
本発明の第二の組成物2は、上記項2の例2で得られた本発明のSBR2に基づく(このSBR2は、6%のスチレン結合の質量含有率と、22%の環状ビニル構造単位の質量含有率とを有する)。
組成物1及び2のそれぞれの調合物は、以下の通りである(単位はphr。phrはエラストマー百部当たりの質量部)。
エラストマー(SBR1又はSBR2) 100
シリカ(1) 80
芳香族オイル“ENERFLEX 65” 37.5
結合剤(2) 6.4
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST” 1.5
硫黄 1.1
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.47
(1)=シリカ“ZEOSIL 1165 MP”(Rhodiaより販売)
(2)=結合剤“Si69”(Degussaより販売)
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
それぞれの組成物は、欧州特許明細書EP-A-501227に記載の方法によって調製する。この明細書には、第一の熱機械的作業段階が、それぞれ4及び5分続く2つの工程において、平均パドル速度85回転/分、およそ400cm3のミキサー中、最大“落下”温度が160℃に到達するまで行われ、第二の機械的作業段階は、硫化系の組み込みを含み、30℃でオープンミルにおいて行うことが述べられている。
硫化は、150℃で60分行う。
結果を表1に詳しく述べる。




























表1

硫化状態における特性に関して、本発明の組成物2の特性が、“対照”組成物1の特性と同程度の大きさであることに注目すべきである。
実際、組成物2の、低及び高変形におけるモデュライと、低及び高変形におけるヒステリシス特性とが(それぞれ23℃におけるtanδ最大値及び60℃における損失)、対応する組成物1のモデュライ及びヒステリシス特性に近い。組成物1及び2間の小さい(ΔG*)及び大きい(60℃における損失)変形において観察されるヒステリシス特性の違いは、主にこれらの組成物間の動的Tgの違いによる。動的Tgが同一であれば、これらの特性は類似となり得る。
さらに、本発明の組成物2は、“対照”組成物1よりも15ポイント低い“混合物”ムーニー粘度値を有する。
本発明のSBR2が、わずか6%のスチレン結合の質量含有率を有し、本発明の組成物2に対し、25%のスチレン結合の質量含有率を有するSBR1による“対照”組成物1に与えられるのと事実上同様の硫化状態の特性を与えるのを可能とするのは、SBR1がそのような構造単位を含まないのと違い、このSBR2の含む環状ビニル構造単位の高含有率(22%)によることにも注目すべきである。
【0025】
2)第二の比較例
この例において、客車タイヤトレッド型の2種のゴム組成物1及び3であって、補強充填剤がシリカからなるものを比較する。
第一の“対照”組成物1は、上記項IIの1)のものと同一である。
本発明の第二の組成物3は、上記項Iの例3で得られる本発明のBRに基づく(このBRは、20%の環状ビニル構造単位の質量含有率を有する)。
組成物1及び3のそれぞれの調合物は、以下の通りである(単位はphr。phrはエラストマー百部当たりの質量部)。
エラストマー(SBR1又はBR) 100
シリカ(1) 80
芳香族オイル“ENERFLEX 65” 37.5
結合剤(2) 6.4
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST” 1.5
硫黄 1.1
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.47
(1)=シリカ“ZEOSIL 1165 MP”(Rhodiaにより販売)
(2)=結合剤“Si69”(Degussaにより販売)
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
それぞれの組成物は、欧州特許明細書EP-A-501227に記載の方法によって調製した。この明細書には、第一の熱機械的作業段階が、それぞれ4及び5分続く2つの工程において、平均パドル速度85回転/分、およそ400cm3のミキサー中、最大“落下”温度が160℃に到達するまで行われ、第二の機械的作業段階は、硫化系の組み込みを含み、30℃でオープンミルにおいて行うことが述べられている。
硫化は、150℃で60分行う。
結果を表2に詳しく述べる。
表2

硫化状態における特性に関して、本発明の組成物3の特性が、“対照”組成物1の特性と同程度の大きさであることに注目すべきである。
実際、組成物3の、低及び高変形におけるモデュライと、低及び高変形におけるヒステリシス特性とが(それぞれ23℃におけるtanδ最大値及び60℃における損失)、対応する組成物1のモデュライ及びヒステリシス特性に近い。組成物1及び3間の小(ΔG*)及び大(60℃における損失)変形において観察されるヒステリシス特性の違いは、主にこれらの組成物間の動的Tg及び“ゴム”ムーニー値の違いによる。動的Tgと“ゴム”ムーニー値が同一であれば、これらの特性は類似となり得る。
本発明の組成物3の動的Tgが、“対照”組成物1のそれと非常に近いことにも注目すべきある。
さらに、本発明の組成物3は、“対照”組成物1よりも26ポイント低い“混合物”ムーニー粘度値を有する。
本発明のBRが、その名の通りスチレン結合を含まず、本発明の組成物3に対し、25%のスチレン結合の質量含有率を有するSBR1による“対照”組成物1に与えられるのと事実上同様の硫化状態の特性を与えるのを可能とするのは、SBR1がそのような構造単位を含まないのと違い、このBRの含む環状ビニル構造単位の高含有率(20%)によることに、さらに注目すべきである。
【0026】
3)第三の比較例
この例において、客車タイヤトレッド型の2種のゴム組成物4及び5であって、補強充填剤がシリカからなるものを比較する。
本発明の第二の組成物4は、上記項Iの例4で得られる本発明のSBR4に基づく(このSBR4は、8%のスチレン結合の質量含有率と、18%の環状ビニル構造単位の質量含有率を有する)。
本発明の第二の組成物5は、上記項Iの例5で得られる本発明のSBR5に基づく(このSBR5は、25%のスチレン結合の質量含有率と、わずか2.5%の環状ビニル構造単位の質量含有率を有する)。
組成物4及び5のそれぞれの調合物は、以下の通りである(単位はphr。phrはエラストマー百部当たりの質量部)。
エラストマー(SBR4又はSBR5) 100
シリカ(1) 60
芳香族オイル“ENERFLEX 65” 20.5
結合剤(2) 4.8
ZnO 2.5
ステアリン酸 2
抗酸化剤(3) 1.9
抗オゾンワックス“C32ST” 1.5
硫黄 1.1
スルフェンアミド(4) 2
ジフェニルグアニジン 1.1
(1)=シリカ“ZEOSIL 1165 MP”(Rhodiaにより販売)
(2)=結合剤“Si69”(Degussaにより販売)
(3)=N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン
(4)=N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド
それぞれの組成物は、欧州特許明細書EP-A-501227に記載の方法によって調製した。この明細書には、第一の熱機械的作業段階が、それぞれ4及び5分続く2つの工程において、平均パドル速度85回転/分、およそ400cm3のミキサー中、最大“落下”温度が160℃に到達するまで行われ、第二の機械的作業段階は、硫化系の組み込みを含み、30℃でオープンミルにおいて行うことが述べられている。
硫化は、150℃で60分行う。
結果を表3に詳しく述べる。















表3

硫化状態における特性に関して、本発明の組成物4の特性が、“対照”組成物5の特性と同程度の大きさであることに注目すべきである。
実際、組成物4の、低及び高変形におけるモデュライと、低及び高変形におけるヒステリシス特性とが(それぞれ23℃におけるtanδ最大値及び60℃における損失)、対応する組成物5のモデュライ及びヒステリシス特性に近い。
本発明の組成物4の動的特性(特に動的Tg)が、“対照”組成物5のそれらと非常に近いことにも注目すべきである。
従って、同一の動的Tg及び“ゴム”ムーニー値において、小さな(ΔG*)及び大きな(60℃における損失)変形において観察されるヒステリシス特性は、組成物4及び5について類似である。
本発明のSBR4が、わずか8%のスチレン結合の質量含有率を有し、本発明の組成物4に対し、25%のスチレン結合の質量含有率を有するSBR5による“対照”組成物5に与えられるのと事実上同様の硫化状態の特性を与えるのを可能とするのは、SBR5がそのような構造単位をわずか2.5%含むのと違い、このSBR4の含む環状ビニル構造単位の高含有率(18%)によることにも注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドを形成するのに用いられ得る、架橋可能又は架橋されたゴム組成物であって、少なくとも一種の共役ジエンから生じる直鎖又は分枝ジエンエラストマー及び補強充填剤を含み、前記エラストマーが、15%以上の質量含有率の環状ビニル単位を含み、且つ30,000〜350,000g/molの範囲の数平均分子量を有することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記数平均分子量が、60,000〜350,000g/molの範囲にある、請求項1記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項3】
前記数平均分子量が、100,000〜300,000g/molの範囲にある、請求項2記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項4】
前記環状ビニル単位の質量含有率が、20%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項5】
前記エラストマーが、30%よりも多い共役ジエンから生じる単位の質量フラクションを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項6】
前記エラストマーが、1,3-ブタジエンホモポリマー又は1,3-ブタジエンとビニル芳香族コモノマーとのコポリマーからなる、請求項5記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項7】
50phr(phrは、エラストマーの百部当たりの質量部)以上の量の前記エラストマーを含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項8】
100phrに等しい量の前記エラストマーを含む、請求項3及び7記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項9】
前記補強充填剤が、シリカなどの無機補強充填剤を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項10】
前記補強充填剤が、50%以上の質量フラクションの前記無機補強充填剤を含む、請求項9記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項11】
前記補強充填剤が、100%に等しい質量フラクションの前記無機補強充填剤を含む、請求項10記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項12】
前記エラストマーが、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットなどのスターリング剤によって分枝されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物。
【請求項13】
請求項1に定義された架橋可能又は架橋されたゴム組成物の調製方法であって、前記エラストマーが、以下の工程を行うことによって得られる、方法。
a)15%以上の質量含有率の環状ビニル単位を含み、且つ10,000〜60,000g/molの数平均分子量を有する、少なくとも一種の共役ジエンから生じる直鎖ジエンエラストマーを、不活性脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒中、少なくとも一種の共役ジエンモノマーを含む一種以上のモノマーと、有機リチウム開始剤といくつかのヘテロ原子を含む極性剤とを含む触媒系との反応による、前記モノマーのバッチ陰イオン重合により調製し、ここで(極性剤:開始剤)モル比は8よりも大きく、次に
b)得られた直鎖エラストマーを、分枝ジエンエラストマーを得るために、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットなどのスターリング剤によって、任意に分枝する。
【請求項14】
請求項1に定義された架橋可能又は架橋されたゴム組成物の調製方法であって、前記エラストマーが、以下の工程を行うことによって得られる、方法。
a)15%以上の質量含有率の環状ビニル単位を含み、10,000〜100,000g/molの数平均分子量を有する、少なくとも一種の共役ジエンから生じる直鎖ジエンエラストマーを、不活性脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒中、少なくとも一種の共役ジエンモノマーを含む一種以上のモノマーと、有機リチウム開始剤、いくつかのヘテロ原子を含む極性剤、及び脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩を含む触媒系であって、前記系が以下の関係、
(i)(極性剤:開始剤)モル比が、3以上である、
を満たすものとの反応による、前記モノマーの連続的陰イオン重合によって調製し、次に
b)得られた直鎖エラストマーを、分枝ジエンエラストマーを得るために、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットなどのスターリング剤によって、任意に分枝する。
【請求項15】
請求項1に定義された架橋可能又は架橋されたゴム組成物の調製方法であって、前記エラストマーが、以下の工程を行うことによって得られる、方法。
a)15%以上の質量含有率の環状ビニル単位を含み、10,000〜300,000g/molの数平均分子量を有する、少なくとも一種の共役ジエンから生じる直鎖ジエンエラストマーを、不活性脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒中、少なくとも一種の共役ジエンモノマーを含む一種以上のモノマーと、有機リチウム開始剤、いくつかのヘテロ原子を含む極性剤、及び脂肪族又は脂環式アルコールのアルカリ金属塩を含む触媒系との、前記系が以下の3つの条件、
(i)(極性剤:開始剤)モル比が、3以上である、
(ii)(塩:開始剤)モル比が、0.01〜2の範囲内にある、
(iii)(塩:極性剤)モル比が、0.001〜5の範囲内にある、
を同時に満たすような手法の反応による、前記モノマーの連続的陰イオン重合によって調製し、次に
b)得られた直鎖エラストマーを、分枝ジエンエラストマーを得るために、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフィットなどのスターリング剤によって、任意に分枝する。
【請求項16】
前記工程a)の前記条件(i)における(極性剤:開始剤)モル比が、5以上である、請求項14又は15に記載の調製方法。
【請求項17】
前記(極性剤:開始剤)モル比が、10以上である、請求項16記載の調製方法。
【請求項18】
前記(極性剤:開始剤)モル比が、15以上である、請求項17記載の調製方法。
【請求項19】
前記工程a)の前記条件(iii)における(塩:極性剤)モル比が、0.001〜0.1の範囲内にある、請求項15〜18のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項20】
前記工程a)の前記条件(ii)における(塩:開始剤)モル比が、0.01〜0.6の範囲内にある、請求項15〜19のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項21】
前記(塩:開始剤)モル比が、0.01〜0.2の範囲内にある、請求項20記載の調製方法。
【請求項22】
前記(塩:開始剤)モル比が、0.3〜0.6の範囲内にある、請求項21記載の調製方法。
【請求項23】
前記極性剤が、ジアミンとジエーテルとからなる群に属する、請求項13〜22のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項24】
前記極性剤が、テトラメチルエチレンジアミンである、請求項23記載の調製方法。
【請求項25】
前記塩が、3〜12個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのナトリウム塩、例えばtert-アミラートナトリウムなどである、請求項15〜24のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項26】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の架橋可能又は架橋されたゴム組成物を含む、タイヤトレッド。
【請求項27】
前記ゴム組成物からなる、請求項26記載のタイヤトレッド。
【請求項28】
請求項26又は27に記載のトレッドを含む、タイヤ。

【公表番号】特表2006−515897(P2006−515897A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500577(P2006−500577)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000280
【国際公開番号】WO2004/065478
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【Fターム(参考)】