説明

タイヤトレッド用ゴム組成物

【課題】環境負荷の低減を図るため再生ゴムを配合しながら、外観に悪影響を与えることなく老化に伴う硬化を低減するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム分を40〜60重量%含む再生ゴムとジエン系ゴムを含むゴム組成物であり、前記再生ゴム中のゴム分2.5〜20重量%とジエン系ゴム80〜97.5重量%とからなるゴム成分100重量部に対し、カテキンを含む茶抽出物を0.01〜5重量部配合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、環境負荷の低減を図るため再生ゴムを配合しながら、外観に悪影響を与えることなく老化に伴う硬化を低減するようにした空気入りタイヤのトレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境を保護する観点から、空気入りタイヤのリサイクル率を高くすることが要求されるようになり、使用済みのタイヤやチューブから回収された再生粉末ゴムを新しいゴム原料中に配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような再生ゴムをタイヤトレッド用ゴム組成物に配合すると、ゴム組成物の老化防止性能が低下し、硬化が起こりやすくなるため、空気入りタイヤが発生するノイズや乗り心地性が悪化するという問題がある。
【0003】
このような老化防止対策としては、タイヤトレッド用ゴム組成物への老化防止剤の配合量を増量することが考えられる。しかしながら、老化防止剤を増量するほど、老化防止剤がタイヤ表面へ移行するようになるため、タイヤ表面が茶色に変色して外観が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−335488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、環境負荷の低減を図るため再生ゴムを配合しながら、外観に悪影響を与えることなく老化に伴う硬化を低減するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム分を40〜60重量%含む再生ゴムとジエン系ゴムを含むゴム組成物であり、前記再生ゴム中のゴム分2.5〜20重量%とジエン系ゴム80〜97.5重量%とからなるゴム成分100重量部に対し、カテキンを含む茶抽出物を0.01〜5重量部配合したことを特徴とする。
【0006】
茶抽出物は、カテキンを5重量%以上含有するものがよい。また、茶抽出物は、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート及び(−)−エピガロカテキンガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であるとよい。
【0007】
このタイヤトレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤの構成材料として好適に使用可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物によれば、再生ゴム中のゴム分2.5〜20重量%とジエン系ゴム80〜97.5重量%とからなるゴム成分100重量部に対し、カテキンを含む茶抽出物を0.01〜5重量部配合するようにしたので、茶抽出物が酸化防止剤として機能し、再生ゴムの配合に伴って低下した老化防止性能を向上させることができ、それによって老化に伴うゴム組成物の硬化を、再生ゴムを配合しないゴム組成物と同等レベルかそれ以下に低減することができる。また、カテキンを含む茶抽出物は、配合量を増やしてもタイヤ表面に移行して外観に悪影響を及ぼすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムと再生ゴム中のゴム分から構成される。ジエン系ゴムとしては、タイヤトレッド用ゴム組成物に通常用いられる天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムとしては好ましくは天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムを使用するとよい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0010】
ゴム成分中のジエン系ゴムの配合量は、80〜97.5重量%、好ましくは85〜95重量%である。ジエン系ゴムの配合量が80重量%未満であると、タイヤトレッド用ゴム組成物に求められるゴム強度を確保することができない。また、ジエン系ゴムの配合量が97.5重量%を超えると、再生ゴムの配合量が少なくなるので、リサイクル率を高くし環境負荷を低減すると共に、原材料コストを削減することができない。
【0011】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを配合することによりリサイクル率を高くし環境負荷を低減すると共に、ゴム原材料の使用割合を低減するため原材料コストを低減する。再生ゴムとしては、再生粉末ゴム及び/又は再生ゴムを使用することができる。再生粉末ゴムとは、自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを粉砕し粉末状にしたゴムである。再生ゴムとは、JIS K6313に規定された自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを脱硫処理により再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものとする。再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴム、その他の再生ゴムから選ばれるいずれでもよく、複数の種類を組合わせることもできる。
【0012】
上述した再生ゴムは、ゴム分(ゴム重合体)、無機充填剤、低分子量の有機化合物等を含む。再生ゴム中のゴム分は、40〜60重量%であり、好ましくは45〜55重量%であるとよい。再生ゴム中のゴム分の含有量が、上記範囲から外れると再生ゴムの性状のバラツキが大きくなり、ゴム組成物に配合したときに品質を安定させることが難しくなる。
【0013】
再生ゴムの配合は、ゴム成分100重量%に占める再生ゴム中のゴム分量が2.5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%になるようにする。ゴム成分100重量%に占める再生ゴム中のゴム分が2.5重量%未満であると、リサイクル率を高くし環境負荷を低減すると共に、ゴム原材料の使用割合を低減し原材料コストを削減することができない。また、ゴム成分100重量%に占める再生ゴム中のゴム分が20重量%を超えると、タイヤトレッド用ゴム組成物に求められるゴム強度を確保することができない。
【0014】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、カテキンを含む茶抽出物を配合することにより、老化防止性能を向上することができる。すなわち、カテキンを含む茶抽出物は、酸化防止剤として機能し、再生ゴムを配合したゴム組成物が老化して硬化する程度を、再生ゴムを配合しないゴム組成物と同等レベル又はそれ以下に低減することができる。このため、空気入りタイヤのトレッドの柔軟性を、再生ゴムを配合しない場合と同等レベルに維持することができ、それによりパターンノイズや乗り心地性が悪化するのを抑制することができる。また、カテキンを含む茶抽出物は配合量を多くしても、タイヤ表面に移行して外観に悪影響を及ぼすことがないので、配合量を増やすことにより、再生ゴムを配合しないゴム組成物以上の老化防止性能を付与することが可能になる。
【0015】
カテキンを含む茶抽出物の配合量は、ジエン系ゴム及び再生ゴム中のゴム分からなるゴム成分100重量部に対し0.01〜5重量部である。好ましくは0.015〜4重量部、より好ましくは0.02〜3重量部、さらに好ましくは0.03〜1重量部にするとよい。茶抽出物の配合量が0.01重量部未満であると、ゴム組成物の老化を十分に抑制することができない。また、茶抽出物の配合量が5重量部を超えると、原材料コストが高くなり実用的でない。
【0016】
本発明で使用する茶抽出物は、カテキンを含む茶抽出物であり、好ましくは(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート及び(−)−エピガロカテキンガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである。また、茶抽出物は、カテキン以外の成分として、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンジガレート等を含んでいてもよい。茶抽出物中のカテキンの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは5〜75重量%にするとよい。カテキンの含有量が5重量%未満であると、老化防止性能が十分に得られない。
【0017】
本発明で使用する茶抽出物は、緑茶、烏龍茶、紅茶から選ばれる少なくとも1種からの抽出物であり、これらの茶葉又は茶葉の粉砕物から、水若しくは熱水、有機溶剤を抽出剤とし5〜60℃の抽出温度で抽出するとよい。有機溶剤としては例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルなどが例示される。これらの抽出剤は単独で使用してもよいし、複数を組合わせて使用してもよい。
【0018】
茶抽出物は、上記の抽出剤で抽出した画分を使用する。水若しくは熱水で抽出したときは、その抽出液を茶抽出物としてそのまま使用してもよいが、取扱い性の観点からは、抽出液から噴霧乾燥や凍結乾燥等により水分を除去して粉末状にして使用するとよい。
【0019】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物に使用する茶抽出物は、上述した茶抽出物をそのまま使用してもよいし、他の天然化合物及び/又は界面活性剤を添加した混合物からなる酸化防止剤として使用してもよい。このような酸化防止剤は市販されており、例えば太陽化学社製サンフェノンDK(カテキン含有量70重量%)、サンフラボンHG(カテキン含有量45重量%)、サンカトールNo1(カテキン含有量7重量%)等を例示することができる。
【0020】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又は無機充填剤を配合することによりゴムの強度を高くすることができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、マイカ等が例示される。なかでもカーボンブラック及び/又はシリカを配合することが好ましい。カーボンブラック及び/又は無機充填剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し好ましくは5〜130重量部、より好ましくは20〜100重量部である。カーボンブラック及び/又は無機充填剤の配合量が5重量部未満の場合には、ゴム強度を十分に高くすることができない。また、カーボンブラック及び/又は無機充填剤の配合量が130重量部を超えるとタイヤトレッド用ゴム組成物の粘度が増大し成形加工性が悪化する。
【0021】
本発明において好適に使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が好ましくは20〜200×10/kg、より好ましくは20〜180×10/kgであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が20×10/kg未満の場合には、ゴム強度を十分に高くすることができない。窒素吸着比表面積が200×10/kgを超えるとゴム粘度が高くなり加工性が悪化すると共に、ヒステリシスロスが大きくなり転がり抵抗が悪化する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
【0022】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、老化防止剤を配合することにより老化防止性能を向上するが、配合量が多いとタイヤ表面を茶色に変色させて外観に悪影響を及ぼす。このため、老化防止剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、好ましくは1.0〜2.9重量部、より好ましくは2.0〜2.5重量部にするとよい。老化防止剤の種類は、タイヤトレッド用ゴム組成物に通常用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、リン系老化防止剤等を例示することができる。なかでも老化防止性能の観点からアミン系老化防止剤が好ましい。
【0023】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してタイヤトレッド用ゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0024】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを配合してリサイクル率を高くしながら、外観に悪影響を及ぼすことなく、再生ゴムの配合に伴う老化防止性能の低下を抑制しゴム組成物が硬化するのを低減することができる。このタイヤトレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に適用することが好ましく、このゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、良好な外観を確保しながら老化防止性能が優れるため、老化が起こりにくく柔軟性を維持するので、ノイズを低減すると共に優れた乗り心地性を維持することができる。
【0025】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
表1,2に示す配合からなる10種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜5)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.8Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.8Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。なお、各ゴム組成物の配合は、SBR中の油展オイルとアロマオイルとの合計量が同じになるように調整すると共に、ゴム硬度がほぼ同等になるように再生ゴムの配合量に応じて、カーボンブラックの配合量を増減させた。
【0027】
得られた10種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜5)をそれぞれ所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により、引張り応力による老化防止性能試験及び外観評価を行った。
【0028】
老化防止性能(引張り応力の変化率)
得られた試験片からJIS K6251に準拠した3号型ダンベル試験片を成形した。各ダンベル試験片を2群に分けその一方を70℃で168時間加熱(老化処理)を行なった。老化処理前後のダンベル試験片を用いて、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない100%伸張時の引張り応力を測定し、それぞれについて(老化処理後の応力(M100ag)/老化処理前の応力(M100)×100)により変化率(%)を算出し、引張り応力の老化防止性能とし、表1,2に示した。この変化率が小さいほど老化防止性能が優れ、ゴム組成物の硬化が低減されたことを意味する。
【0029】
外観評価
得られた試験片の外観評価として、色差計(ハンディカラーテスターH−CT、スガ試験機社製)を使用して明度L値を測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100とする指数として示し、表2では比較例5を100とする指数として示した。この指数が小さいほど明度L値が低く外観が良好であることを表している。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR:乳化重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン社製NIPOL 1723、SBR100重量部に対しオイル37.5重量部添加の油展品)
再生ゴム:村岡ゴム社製タイヤリク紫線、再生ゴム中のゴム分は50重量%。
カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN220(窒素吸着比表面積111m/g)
アロマオイル:富士興産社製アロマオイル
茶抽出物:太陽化学社製サンカトールNo1(カテキン含有量7重量%)
酸化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、フレキシス社社製6PPD
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム分を40〜60重量%含む再生ゴムとジエン系ゴムを含むゴム組成物であり、前記再生ゴム中のゴム分2.5〜20重量%とジエン系ゴム80〜97.5重量%とからなるゴム成分100重量部に対し、カテキンを含む茶抽出物を0.01〜5重量部配合したタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記茶抽出物が、カテキンを5重量%以上含有している請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記茶抽出物が、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート及び(−)−エピガロカテキンガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−65103(P2010−65103A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231184(P2008−231184)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】