説明

タイヤトレッド用ゴム組成物

【課題】硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカからなる補強性充填剤を10〜150重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を0.5〜10重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が85〜180m/g、前記シリカのNSAが100〜300m/gであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物に関し、更に詳しくは、硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
悪路走行用の空気入りタイヤでは、トレッド部が耐チッピング性に優れていることが求められている。耐チッピング性を高くするためには、トレッド部に用いるゴム組成物のモジュラスを調節して引張り破断伸びを高くする必要があり、例えばカーボンブラックの配合量を少なくする手段があるが、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性が悪化するという問題があった。
【0003】
特許文献1は、硬度と引張り破断伸びを共に改良するため、ジエン系ゴムにビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂及び硬化剤を配合することを提案している。しかし、このゴム組成物では、硬度と引張り破断伸びをある程度改良することはできるが、耐摩耗性が低下するため、従来レベルの耐摩耗性を確保することはできなかった。
【0004】
また、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減し、かつウェットグリップ性能を向上するため、トレッド用ゴム組成物にシリカをカーボンブラックと共に配合することがある。しかし、シリカはカーボンブラックと比較すると耐摩耗性が低いため、ゴム硬度が同等になるように配合調整したとき、シリカ配合のゴム組成物の耐摩耗性を、カーボンブラック単独配合のゴム組成物と同等レベルにすることが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−144044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカからなる補強性充填剤を10〜150重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を0.5〜10重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が85〜180m/g、前記シリカのNSAが100〜300m/gであることを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラック及びシリカを共に含むことが好ましい。また、前記カーボンブラックのNSAは、90〜180m/gであるとよい。前記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】

(式中、nは7〜9の整数である。)
【0009】
重荷重用タイヤのトッレドゴムとしては、前記ジエン系ゴムは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを70〜100重量%、ブタジエンゴムを0〜30重量%含有すると共に、このジエン系ゴム100重量部に対し、前記カーボンブラックを30〜70重量部配合するとよい。更に、前記シリカは1〜10重量部配合するとよい。
【0010】
乗用車用タイヤのトッレドゴムとしては、前記シリカは、NSAが100〜250m/gであると共に、このシリカを、前記ジエン系ゴム100重量部に対し、60〜120重量部配合するとよい。
【0011】
商用バン向けタイヤのトッレドゴムとしては、前記カーボンブラックは、NSAが90〜160m/gであると共に、このカーボンブラックを、前記ジエン系ゴム100重量部に対し、80〜120重量部配合するとよい。
【0012】
また、非石油資源材料化を進めたタイヤとしては、前記ジエン系ゴムは、エポキシ化天然ゴムを10〜80重量%含有すると共に、このジエン系ゴム100重量部に対し、前記カーボンブラックを5〜80重量部、前記シリカを10〜100重量部配合し、かつ前記カーボンブラックとシリカの合計を10〜150重量部にすることが好ましい。
【0013】
上述したタイヤトレッド用ゴム組成物は、加硫後のJIS K6253タイプAに準拠したゴム硬度が65以上であるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100重量部に対し、NSAが85〜180m/gのカーボンブラック及び/又はNSAが100〜300m/gのシリカからなる補強性充填剤を10〜150重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を0.5〜10重量部配合するようにしたので、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、タイヤトレッド用ゴム組成物に通常用いられる天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0016】
本発明では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合することにより、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上にする作用を行う。従来、タイヤ用ゴム組成物に、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、変性ガムロジン、テルペン樹脂、クマロン樹脂、石油系樹脂などの樹脂成分を配合することが知られているが、これらの樹脂成分を配合した場合には、硬度、耐摩耗性の少なくとも1つが悪化してしまい、硬度及び耐摩耗性を共に従来レベル以上に向上することが困難であった。これに対し、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合すると、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性を共に従来レベル以上にすることができる。
【0017】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し0.5〜10重量部、好ましくは1〜6重量部である。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の配合量が0.5重量部未満であると、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上にする効果が得られない。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の配合量が10重量部を超えると、耐摩耗性が却って悪化する。またウェットグリップ性能が悪化する。
【0018】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、下記式(1)で表されるものが好ましい。
【化2】

(式中、nは7〜9の整数である。)
【0019】
このようなクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができ、例えば日本化薬社製EOCN−104S、DIC社製N−695を例示することができる。
【0020】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、カーボンブラック及び/又はシリカからなる補強性充填剤を配合することにより、トレッド用ゴム組成物に要求される特性を付与する。補強性充填剤としては、カーボンブラック、シリカのいずれか一方を使用してもよいが、好ましくはカーボンブラック及びシリカを共に使用するとよい。補強性充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し10〜150重量部、好ましくは30〜120重量部である。補強性充填剤の配合量が10重量部未満であると、ゴム強度が不足する。補強性充填剤の配合量が150重量部を超えると、引張り破断伸びが低下する。
【0021】
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が85〜180m/g、好ましくは90〜180m/g、より好ましくは100〜160m/gである。NSAが85m/g未満であると、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性が不足する。また、NSAが180m/gを超えるとゴム組成物の発熱性が大きくなると共に、加工性が悪化する。カーボンブラックのNSAは、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0022】
本発明において、シリカは、ゴム組成物の発熱性を小さくすると共に、ウェットグリップ性能を高くする作用を行う。また、カーボンブラックの一部をシリカに置き換えることにより、耐チッピング性をより高くする。本発明で使用するシリカは、窒素吸着比表面積(NSA)が100〜300m/g、好ましくは140〜250m/g、より好ましくは150〜220m/gである。NSAが100m/g未満であると、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性が不足する。また、NSAが300m/gを超えるとゴム組成物の加工性が悪化する。シリカのNSAは、JIS Z8830に準拠して、測定するものとする。
【0023】
また、シリカを配合するときは、同時にシランカップリング剤を配合することが好ましく、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量が3重量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0024】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0025】
上述したトレッド用ゴム組成物は、加硫後のJIS K6253タイプAに準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定したゴム硬度が、好ましくは65以上、より好ましくは70〜80であるとよい。ゴム組成物のゴム硬度をこのような範囲にすることにより、空気入りタイヤの耐久性を確保すると共に、操縦安定性を向上することができる。
【0026】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤの種類を問わず適用することができるが、なかでも重荷重用タイヤ、乗用車用タイヤ、商用バン用タイヤ及び非石油資源材料化を進めたタイヤに適用することが好ましい。いずれの場合も、硬度及び耐摩耗性を共に従来レベル以上にしながら、用途に応じた作用を行う。
【0027】
本発明の第1の実施形態として、重荷重用タイヤのトッレド用ゴム組成物について説明する。
【0028】
上述した通り、悪路走行用の空気入りタイヤでは、トレッド部が耐チッピング性に優れることが求められ、ゴム組成物のモジュラスを調節して引張り破断伸びを高くする必要がある。本発明では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合することにより、モジュラスを適宜調節すると共に、引張り破断伸びを高くするので耐チッピング性を向上可能にする。また、特許文献1に記載されたビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂や変性ガムロジン樹脂とは異なり、耐摩耗性を悪化させることがなく、硬度及び耐摩耗性を共に、従来レベル以上にすることができる。
【0029】
重荷重用タイヤのトレッド部を構成するゴム組成物としては、上述した構成において、ジエン系ゴムが、70重量%以上の天然ゴム及び/又はイソプレンゴムと、30重量%以下のブタジエンゴムとを含有するとよい。天然ゴム及びイソプレンゴムは、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%であるとよい。また、ブタジエンゴムは好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%であるとよい。ジエン系ゴムをこのような配合にすることにより、ゴム強度を高くすると共に、硬度及び耐摩耗性をより高いレベルで両立させることができる。
【0030】
また、このジエン系ゴム100重量部に対し、NSAが上述した範囲であるカーボンブラックを好ましくは30〜70重量部、より好ましくは40〜60重量部配合するとよい。カーボンブラックの配合量をこのような範囲内にすることにより、ゴム組成物の硬度及び耐摩耗性を確保しながら、耐チッピング性を向上することができる。
【0031】
更に、シリカを配合することにより、耐チッピング性を一層向上することができる。この場合、シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは5〜10重量部にするとよい。
【0032】
本発明の第2の実施形態として、乗用車用タイヤのトッレド用ゴム組成物について説明する。
【0033】
乗用車用タイヤには、優れた走行性能と燃費性能とを両立することが求められる。そこでタイヤの転がり抵抗を低減し、かつウェットグリップ性能を向上するため、トレッド用ゴム組成物にシリカを配合することがある。しかし、シリカはカーボンブラックと比較すると耐摩耗性が低いため、ゴム硬度が同等になるように配合調製したとき、シリカ配合のゴム組成物の耐摩耗性をより高くすることが必要になる。
【0034】
また、シリカを60重量部以上の多量配合にすると、シリカの凝集が起こりやすくなり分散性が悪化するため耐摩耗性が悪化する。更に、ムーニー粘度が増大し加工性が低下するという問題があった。また、ゴム硬度を高くするため、補強性充填剤を増量したり、フェノール樹脂を配合したりすると、ゴム硬度は高くなるが、同時にモジュラスが必要以上に高くなると共に、耐摩耗性が低下するという問題があった。
【0035】
本発明のトッレド用ゴム組成物では、上述した構成において、NSAが100〜250m/gであるシリカを、ジエン系ゴム100重量部に対し、60〜120重量部と配合量を多くした場合でも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合することにより、モジュラスの増大を抑制すると共に、ゴム硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。また、補強性充填剤の分散性を改良すると共に、ムーニー粘度を低減する作用を行うので、加工性を向上することができる。
【0036】
本実施形態において、シリカは、NSAが好ましくは100〜250m/g、より好ましくは120〜220m/gであるとよい。また、シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは60〜120重量部、より好ましくは65〜100重量部であるとよい。
【0037】
本発明の第3の実施形態として、商用バン用タイヤのトッレド用ゴム組成物について説明する。
【0038】
商用バンには、車両が重いことに加えて、高速走行時の操縦安定性が求められている。このためトレッド用ゴム組成物は、高硬度にする必要がある。しかし、補強性充填剤を増量したり、フェノール樹脂等を配合したりすると、上述したとおり、硬度を高くすることはできるが、耐摩耗性が低下すると共に、モジュラスが増大し、かつ加工性が悪化するという問題があった。
【0039】
本発明のトレッド用ゴム組成物では、上述した構成において、NSAが90〜160m/gであるカーボンブラックを、ジエン系ゴム100重量部に対し、80〜120重量部と多量に配合した場合でも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合することにより、モジュラスの増大を抑制すると共に、ゴム硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。また、補強性充填剤の分散性を改良すると共に、ムーニー粘度を低減する作用を行うので、加工性を向上可能にする。
【0040】
本実施形態において、カーボンブラックは、NSAが好ましくは90〜160m/g、より好ましくは100〜150m/gであるとよい。また、カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは80〜120重量部、より好ましくは85〜100重量部であるとよい。
【0041】
本発明の第4の実施形態として、非石油資源材料化を進めたタイヤのトッレド用ゴム組成物について説明する。
【0042】
高速走行時のグリップ性能を高くした高性能向け空気入りタイヤでは、トレッド用ゴム組成物にスチレン−ブタジエンゴムが使用されている。しかし、石油資源の枯渇問題や二酸化炭素排出量の削減問題などから、スチレン−ブタジエンゴム等の石油資源由来の材料の使用量を削減することが求められている。スチレン−ブタジエンゴムを代替する原料ゴムとしては、エポキシ化天然ゴムが考えられるが、耐熱老化性が低いという問題があった。また、ウェットグリップ性能を高くするためシリカを配合すると、上述したように、硬度及び耐摩耗性を共に従来レベル以上にするのが難しいという課題があった。
【0043】
本発明のトレッド用ゴム組成物では、上述した構成において、エポキシ化天然ゴムをジエン系ゴム中に10〜80重量%含有させた場合でも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を配合することにより、耐熱老化性の低下を抑制すると共に、ゴム硬度及び耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。また、補強性充填剤の分散性を改良するので、ウェットグリップ性能を一層高くすることができる。
【0044】
本実施形態において、エポキシ化天然ゴムの含有量は、ジエン系ゴム中、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜60重量%であるとよい。エポキシ化天然ゴムの含有量をこのような範囲内にすることにより、グリップ性能を確保しながら、非石油資源材料化を進めることができる。
【0045】
また、カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは5〜70重量部、シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し、好ましくは10〜100重量部、より好ましくは20〜80重量部にすると共に、カーボンブラックとシリカの合計を10〜150重量部、好ましくは50〜100重量部にする。
【0046】
タイヤトレッド用ゴム組成物には、加硫又は架橋剤、カーボンブラック、シリカ以外の充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0047】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
表1〜4に示す配合からなる27種類のゴム組成物(実施例1〜13、比較例1〜14)を調製するに当たり、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く成分を秤量し、1.6L密閉式バンバリーミキサーで4分間混練し、温度150±5℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチをロールに供し、硫黄及び加硫促進剤を加えて混合してタイヤトレッド用ゴム組成物を得た。
【0049】
得られた27種類のゴム組成物(実施例1〜13、比較例1〜14)を、それぞれ所定形状の金型中で、150℃、30分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法によりゴム硬度Hs及び耐摩耗性の評価を行った。また、21種類のゴム組成物(実施例1〜10、比較例1〜11)の試験片について、モジュラスM300を下記に示す方法により測定した。12種類のゴム組成物(実施例5〜10、比較例6〜11)について、ムーニー粘度及びフィラー分散を下記に示す方法により測定した。更に、6種類のゴム組成物(実施例11〜13、比較例12〜14)について、引張り破断伸び、老化後の引張り破断伸びの保持率及びtanδ(0℃)を下記に示す方法により測定した。
【0050】
ゴム硬度Hs
得られた試験片のゴム硬度Hsを、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100、表2では比較例6を100、表3では比較例9を100、表4では比較例12を100とする指数として表1〜4に示した。この指数が大きいほどゴム硬度が高く優れることを意味する。
【0051】
耐摩耗性
得られた試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、試験温度23℃、荷重15N、スリップ率50%、時間25分の条件で摩耗試験を行って摩耗量を測定した。得られた結果は、表1では比較例1の値の逆数を100、表2では比較例6の値の逆数を100、表3では比較例9の値の逆数を100、表4では比較例12の値の逆数を100とする指数として表1〜4に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0052】
モジュラスM300
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、300%モジュラス(M300)を測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100、表2では比較例6を100、表3では比較例9を100とする指数として表1〜3に示した。この指数が小さいほど300%モジュラスが低く、耐チッピング性が優れることを意味する。
【0053】
ムーニー粘度
得られたゴム組成物を、JIS K6300に準拠してムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、表2では比較例6を100、表3では比較例9を100とする指数として表2,3に示した。この指数が小さいほどムーニー粘度が低く加工性が優れることを意味する。
【0054】
フィラー分散
得られたゴム組成物を、厚さ5mmのシート状に圧延した後、150℃、30分間加硫してゴムシートを作製した。このゴムシートを厚さ方向に切断し、その切断面をISO 11345 B法に準拠しフィラー分散性を測定した。得られた結果は、表2では比較例6を100、表3では比較例9を100とする指数として表2,3に示した。この指数が大きいほどフィラーの分散不良が少なく、フィラー分散が優れることを意味する。
【0055】
引張り破断伸び
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、500mm/分の引張り速度で引張り破断伸び(初期の引張り破断伸び)を測定した。得られた結果は、比較例12の値を100とする指数として表4に示した。この指数が大きいほど引張り破断伸びが大きいことを意味する。
【0056】
老化後の引張り破断伸びの保持率
得られた試験片について80℃で96時間の条件で熱老化処理を行った。この熱老化後の試験片を用いて、上述した方法で引張り破断伸びを測定した。上記で得られた初期の引張り破断伸びと熱老化後の引張り破断伸びから、老化後の引張り破断伸びの保持率を、(保持率)=(熱老化後の引張り破断伸び)/(初期の引張り破断伸び)×100[%]の計算式から算出した。得られた結果は、比較例12の値を100とする指数として表4の「老化後伸び保持率」の欄に示した。この指数が大きいほど老化後の引張り破断伸びの保持率が大きく耐熱性が優れることを意味する。
【0057】
tanδ(0℃)
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度0℃におけるtanδを測定した。得られた結果は、比較例12の値を100とする指数として表4に示した。この指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れることを意味する。
【0058】
【表1】

【0059】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、タイ国製STR20
BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL BR1200
CB1:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN234、NSA=123m/g
CB2:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN330T、NSA=68m/g
シリカ1:エボニックデグッサ社製VN3、NSA=165m/g
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸1:千葉脂肪酸社製工業用ステアリン酸
エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製EOCN−104S
エポキシ樹脂2:ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製E−1570S70
変性ガムロジン:ハリマ化成工業社製ハリタックAQ−90A
老化防止剤1:住友化学社製アンチゲンRD−G
硫黄1:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−F
【0060】
【表2】

【0061】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR1:スチレン−ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL NS116R
CB3:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト9M、NSA=142m/g
シリカ2:ローディア社製ZEOSIL 55PELLET、NSA=175m/g
カップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
ステアリン酸2:日油社製ビーズステアリン酸YR
老化防止剤2:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製EOCN−104S
フェノール樹脂:住友化学社製スミライトレジンPR−TR−170
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
加硫促進剤3:住友化学社製ソクシノールD−G
硫黄2:細井化学社製油処理硫黄
【0062】
【表3】

【0063】
なお、表3において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR1:スチレン−ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL NS116R
CB1:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN234、NSA=123m/g
ステアリン酸2:日油社製ビーズステアリン酸YR
老化防止剤2:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製EOCN−104S
フェノール樹脂:住友化学社製スミライトレジンPR−TR−170
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
オイル:昭和シェル石油社製エクストラクト4号S
加硫促進剤2:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
加硫促進剤3:住友化学社製ソクシノールD−G
硫黄2:細井化学社製油処理硫黄
【0064】
【表4】

【0065】
なお、表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR2:スチレン−ブタジエンゴム、日本ゼオン社製NIPOL 1502
ENR:エポキシ化天然ゴム、マレーシアRRIM製ENR50(エポキシ化率50%)
CB4:カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN339、NSA=88m/g
シリカ3:東ソー・シリカ社製Nipsil AQ、NSA=185m/g
カップリング剤:エボニックデグッサ社製Si69
ステアリン酸3:日油社製ビーズステアリン酸桐
老化防止剤2:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製EOCN−104S
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
アロマオイル:昭和シェル石油社製プロセスオイル123
加硫促進剤4:フレキシス社製SANTOCURE CBS
加硫促進剤5:フレキシス社製Perkacit DPG
硫黄1:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカからなる補強性充填剤を10〜150重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を0.5〜10重量部配合すると共に、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が85〜180m/g、前記シリカのNSAが100〜300m/gであるタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、前記カーボンブラック及びシリカを共に含む請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックのNSAが90〜180m/gである請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が、下記式(1)で表される請求項1,2又は3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【化1】

(式中、nは7〜9の整数である。)
【請求項5】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム及び/又はイソプレンゴム70〜100重量%と、ブタジエンゴム0〜30重量%とからなり、このジエン系ゴム100重量部に対し、前記カーボンブラックを30〜70重量部配合した請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴム100重量部に対し、前記シリカを1〜10重量部配合した請求項5に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
前記シリカのNSAが100〜250m/gであると共に、このシリカを、前記ジエン系ゴム100重量部に対し、60〜120重量部配合した請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
前記カーボンブラックのNSAが90〜160m/gであると共に、このカーボンブラックを、前記ジエン系ゴム100重量部に対し、80〜120重量部配合した請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
前記ジエン系ゴムが、エポキシ化天然ゴムを10〜80重量%含有すると共に、このジエン系ゴム100重量部に対し、前記カーボンブラックを5〜80重量部、前記シリカを10〜100重量部配合し、かつ前記カーボンブラックとシリカの合計を10〜150重量部にした請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
加硫後のJIS K6253タイプAに準拠したゴム硬度が65以上である請求項1〜9のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。

【公開番号】特開2011−46817(P2011−46817A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196048(P2009−196048)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】