説明

タイヤホイール保持用チャック

【課題】径が異なる複数のタイヤホイールを保持でき、各タイヤホイールのカール部も高精度で加工可能とする。
【解決手段】チャック本体2の外周で上下移動可能な中間プレート21に、径が異なるタイヤホイール6に対応した複数の同心円周上で、防振ダンパ30A〜30Gを、リムフランジ10の側壁部11に当接するように配置すると共に、各防振ダンパ間に、外側へ行くに従ってタイヤホイール6から徐々に離れるように軸方向での段差を設け、その段差を、リムフランジ10に形成されたカール部12の張出量より大きく設定して、防振ダンパ30で支持されるリムフランジ10のカール部12の外周を加工するツールとその外側の防振ダンパ30との干渉を回避するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のテーブル等に設けられ、タイヤホイールを加工する際にタイヤホイールを保持するタイヤホイール保持用チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤホイール保持用チャックは、例えば特許文献1,2に示すように、チャック本体の中心に、タイヤホイールのディスク部の中心孔を径方向内側から外側に押圧して芯出し把持する芯出し把持機構を設ける一方、チャック本体の外周に、タイヤホイールの開口側端部に周設したリムフランジに当接する防振ダンパを円周上で複数配置した保持部材を設けた構成がよく知られている。特にここでは、ホイール径が異なる複数タイプのタイヤホイールにも対応して保持可能とするために、防振ダンパを、径の異なる複数の同心円周上に複数配置している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−211307号公報
【特許文献2】特開2002−144804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、タイヤホイールのリムフランジには、その外周端から開口側へ張り出すカール部が設けられることから、防振ダンパを複数設けると、対応する防振ダンパでリムフランジを当接させた際に外側で隣接する防振ダンパがカール部に近接し、当該防振ダンパが邪魔になってカール部の外周の加工が行えないことがある。特許文献1では、タイヤホイールのホイール径が大きくなる程リム幅が大きくなる関係上、防振ダンパを外側へ行くに従って徐々に低くなるように配置しているが、防振ダンパ間の段差が小さいため、カール部の大きさや加工ツールの形状等によっては干渉を解消できない。また、防振ダンパがカール部の先端に当接して支持しているので、支持する防振ダンパ自体がカール部の加工の邪魔になる上、防振ダンパとの接触面積が少なくなって加工時にびびりが発生して加工精度を低下させるおそれもある。これは特許文献2の場合でも同様で、特にここでは、リムフランジに当接させる防振ダンパ以外を覆うカバーを設けるため、隣接する防振ダンパに加えてカバー自体がカール部の加工の邪魔になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、径が異なる複数のタイヤホイールを防振状態で保持できるのは勿論、各タイヤホイールのカール部も支障なく高精度で加工できるタイヤホイール保持用チャックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、各防振ダンパを、リムフランジにおけるリムの開口側の側壁部に当接するように配置すると共に、各防振ダンパ間に、外側へ行くに従ってタイヤホイールから徐々に離れるように軸方向での段差を設け、その段差を、リムフランジの外周端から側壁部側へ張り出すように形成されたカール部の張出量より大きく設定して、防振ダンパで支持されるリムフランジのカール部の外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉を回避するようにしたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、タイヤホイールを強固に把持可能とするために、チャック本体に、芯出し保持されたリムの内面を外側に向けて押圧するリム部把持機構を設けたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、チャックが高速回転する場合でも確実な防振効果を得るために、防振ダンパを、保持部材にチャック軸線方向で取付位置を調整可能に設けられた筒状のダンパケースと、そのダンパケースの先端部から出没可能に設けられたダンパヘッドと、そのダンパヘッドをダンパケースからの突出方向へ付勢する付勢手段とで構成したことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、リムフランジのカール部外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉をより確実に防止するために、防振ダンパ間の段差を、各円周上に設けた防振ダンパの先端部間を結ぶ線が、チャック軸線と直交する面に対して30°〜60°の角度範囲内に収まるように設定したことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、リムフランジのカール部外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉をより確実に防止するために、防振ダンパ間の段差を、保持部材の半径方向で隣接する防振ダンパ間の間隔の略0.5倍〜略1.7倍の範囲内で設定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、芯出し把持した異なる径のタイヤホイールを防振状態で保持でき、加工時のびびりを防止して加工精度を高くできる上、各タイヤホイールのリムフランジのカール部外周も支障なくツール加工できる。よって、タイヤホイールの外周及び面取りの加工範囲や使用可能なツール範囲を拡大可能となる。しかも、直径の種々異なるタイヤホイールに対応する防振ダンパのみをリムフランジの側壁部に当接させて加工可能としているため、タイヤホイールの径に対応しない防振ダンパの前進を受止める選択カバーを用いたりする必要がなく、タイヤホイールが高精度で加工可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、リム部把持機構の採用により、芯出し把持した種々異なる径のタイヤホイールのリム内面を把持してタイヤホイールを強固に把持可能となる。よって、加工代を大きくすることもできる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、チャックが高速回転される場合でも、ダンパヘッドをタイヤホイールのリムフランジの振動に容易に追従させて確実に防振できる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、防振ダンパ間の段差を、各円周上に設けた防振ダンパの先端部の軌跡を結ぶ線がチャック軸線と直交する面に対して30°〜60°の角度範囲内に収まる設定としたので、タイヤホイールのリムフランジのカール部外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉をより確実に防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、防振ダンパの段差を、半径方向で隣接する防振ダンパ間の距離の略0.5倍〜略1.7倍の範囲内に収まる設定としたので、タイヤホイールのリムフランジのカール部外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、タイヤホイール保持用チャックの平面図、図2はA−A線断面図で、タイヤホイール保持用チャック(以下単に「チャック」という。)1において、円形軸状のチャック本体2は、工作機械のテーブルや主軸等に固着される下ボディ3と、下ボディ3上に組み付けられる上ボディ4とを有し、上ボディ4の上部に、タイヤホイール6を位置決め保持する芯出し把持機構5が設けられている。タイヤホイール6は、中央に中心孔8を形成したディスク部7の外周に、筒状のリム9を周設した周知の構成で、リム9の下端には、開口側に平坦な側壁部11を有したリムフランジ10が周設され、リムフランジ10の外周端に、側壁部11の外側を回り込んで側壁部11より下方へ垂下するカール部12が形成されている。
【0009】
芯出し把持機構5は、上ボディ4の上面に筒状のベース13を介して固定されるストッパ14を有し、このストッパ14にタイヤホイール6のディスク部7の内側面(下面)を当接(着座)させて軸線方向での位置決めが可能となっている。また、ベース13内には、上端をストッパ14の中心孔8に突出させたコレット式の把持爪15,15・・が設けられ、その把持爪15の内側にはテーパ部材16が設けられて、チャック本体2の軸心に設けたドローシャフト17にスライド体18を介して連結されている。よって、ドローシャフト17が図示しないシリンダ機構等によって上昇すると、テーパ部材16が上昇して把持爪15を拡開方向へ移動させて、タイヤホイール6のディスク部7の中心孔8を芯出し保持し、ドローシャフト17が下降すると、テーパ部材16が下降して把持爪15を軸心側へ移動させ、ディスク部7の保持を解除することになる。
【0010】
一方、上ボディ4の外周には、スリーブ19が上下動可能に外装され、スリーブ19の外周に周設したフランジ20上に、円盤状の中間プレート21がボルト22で固定されている。また、中間プレート21の下方で下ボディ3の外周には、120°間隔で同心円周上に3つの空圧シリンダ23,23・・が配置され、そのシリンダ室24に設けたピストン25と一体のピストンロッド26が、シリンダ室24の上方へ突出して中間プレート21にボルト27で固定されている。ピストン25の下側でシリンダ室24には、ドローシャフト17及び上下ボディ3,4内に形成された流路28が接続されており、この流路28を介して図示しない切替弁を介して外部のコンプレッサからシリンダ室24内に圧縮空気が供給可能となっている。なお、シリンダ室24の上端は図示しない連通孔によって大気へ開放されている。また、29は、ドローシャフト17から上ボディ4,ベース13を介してストッパ14の上面(着座面)に開口するように形成される流路で、芯出し保持の際に圧縮空気をディスク部7の着座部分に噴出させるようにすることで、圧縮空気の漏れの有無によりタイヤホイール6の着座確認を行うようにしている。
【0011】
そして、中間プレート21には、複数の防振ダンパ30,30・・が設けられている。この防振ダンパ30は、例えば径が異なる7タイプのタイヤホイール6に合わせて、夫々直径が異なる7つの同心円周上に、夫々6つの防振ダンパ30を周方向へ等間隔で配置したもので、ここでは径が異なる円周上間の防振ダンパ30(説明上内側から30A〜30Gと表記する)の群を、周方向へずれるように隣接させて、外側に他の防振ダンパ30が近接しないようにしている。この防振ダンパ30の構造は全て同一で、図3にも示すように、中間プレート21を貫通して上方へ突出する筒状のダンパケース31と、下側の大径部34がダンパケース31内に上下動可能に収容され、上側の小径部35がダンパケース31の上端に設けた貫通孔32を介して上方へ僅かに出没可能なダンパヘッド33と、ダンパケース31の下端を閉塞する閉塞部材36と、ダンパケース31内でダンパヘッド33と閉塞部材36との間に介在され、ダンパヘッド33を小径部35がダンパケース31の上方へ突出する上限位置へ付勢する付勢手段としてのコイルバネ37とから形成されて、ダンパケース31の先端が各タイヤホイール6におけるリムフランジ10の側壁部11に当接するようになっている。
【0012】
さらに、各防振ダンパ30は、中間プレート21の上面側でダンパケース31に螺合されたナット38と、中間プレート21の下面側でダンパケース31の下端との間に外装されたカラー39とによって中間プレート21に固定されているが、ここではカラー39の上下方向の長さの変更により、図3に示すように、防振ダンパ30A〜30G間には、外側へ行くに従って低くなる段差が設定されると共に、当該段差が、チャック本体2の軸線と直交する面に対して下方へ30°〜60°の角度範囲内(同図S2−S1の範囲内)に収まるように設定されている。この角度範囲内での設定により、図4に示すように、隣接する防振ダンパ30間の段差が、リムフランジ10の外周端から下方へ張り出すカール部12の張出量よりも大きくなり、ダンパケース31の先端が側壁部11に当接した状態で、カール部12の外周を加工するツール40と干渉しないようになっている。検討の結果、段差がチャック軸線と直交する面に対して下方へ30°以下の角度範囲では、ツール40とカール部12の干渉が発生し、60°以上の角度範囲では、防振ダンパ30とリム9、リムフランジ10の干渉が発生することがわかった。
【0013】
以上の如く構成されたチャック1においては、タイヤホイール6を把持する際には、まず切替弁の動作によって各空圧シリンダ23のピストン25の下側を大気に開放すると、中間プレート21等の自重によってピストンロッド26が下限位置へ下降し、中間プレート21及び各防振ダンパ30を下限位置へ下降させる。この状態では、どのサイズのタイヤホイール6を把持させても防振ダンパ30はリム6と干渉しない。
ここで、加工を行うタイヤホイール6のディスク部7を、中心孔8に把持爪15が挿入するようにセットすると、ストッパ14にディスク部7が当接して上下方向に位置決めされる。次に、ドローシャフト17が上昇しテーパ部材16を介して把持爪15を拡開方向へ移動させ、把持爪15によってディスク部7の中心孔8を芯出し保持する。
【0014】
次に、切替弁の切替により、各空圧シリンダ23に圧縮空気を供給し、ピストンロッド26を上昇させると、中間プレート21が上昇し、芯出し保持されたタイヤホイール6の径に対応した円周上の6つの防振ダンパ30のダンパヘッド33をリムフランジ10の側壁部11に当接させ、そのままコイルバネ37の付勢に抗してダンパヘッド33を押し込ませてダンパケース31の先端を側壁部11に当接させる。こうしてダンパケース31の先端が対応するリムフランジ10の側壁部11に当接することで中間プレート21の上昇が停止される。よって、タイヤホイール6は、芯出し把持機構5と防振ダンパ30とによって保持され、ツールによる加工が可能となる。この加工の際に生じる軸方向の振動のうち、下方側への振動は、ダンパケース31を介して中間プレート21に伝達され、中間プレート21を支持する空圧シリンダ23によって吸収され、上方側への振動は、コイルバネ37によって上方へ付勢されるダンパヘッド33によって吸収される。
【0015】
そして、この加工の際、リム9のカール部12は当接する防振ダンパ30の外側に位置すると共に、外側で隣接する他の防振ダンパ30は、カール部12から十分距離をおいた状態で下方に位置するため、ツール40がカール部12の外周を加工する際に他の防振ダンパ30と干渉するおそれがない。
加工が終了すると、ドローシャフト17が下降して把持爪15による芯出し保持が解除されてタイヤホイール6が取り外される一方、切替弁の切替により、各空圧シリンダ23のシリンダ室24が大気に開放される。すると、中間プレート21及び防振ダンパ30が自重によって下限位置まで下降する。続いてタイヤホイール6の加工を行う場合は、上記芯出し把持機構5による芯出し保持と防振ダンパ30によるリムフランジ10の保持とが同様の手順で行われるが、タイヤホイール6の径が変わっても、それに対応する防振ダンパ30A〜30Gの何れかが使用されることになる。
【0016】
このように、上記形態のチャック1によれば、各防振ダンパ30を、リムフランジ10の側壁部11に当接するように配置すると共に、各防振ダンパ30間に、外側へ行くに従ってタイヤホイール6から徐々に離れるように軸方向での段差を設け、その段差を、リムフランジ10に形成されたカール部12の張出量より大きく設定して、図4に示すように、防振ダンパ30で支持されるリムフランジ10のカール部12の外周を加工するツール40と、その外側の防振ダンパ30との干渉を回避するようにしたことで、芯出し把持した異なる径のタイヤホイール6を防振状態で保持でき、加工時のびびりを防止して加工精度を高くできる上、各タイヤホイール6のリムフランジ10のカール部12外周も支障なくツール加工できる。よって、タイヤホイール6の外周及び面取りの加工範囲や使用可能なツール範囲を拡大可能となる。しかも、直径の種々異なるタイヤホイール6に対応する防振ダンパ30のみをリムフランジ10の側壁部11に当接させて加工可能としているため、タイヤホイール6の径に対応しない防振ダンパ30の前進を受止める選択カバーを用いたりする必要がなく、タイヤホイール6が高精度で加工可能となる。
【0017】
特にここでは、防振ダンパ30を、中間プレート21にチャック軸線方向で取付位置を調整可能に設けられた筒状のダンパケース31と、そのダンパケース31の先端部から出没可能に設けられたダンパヘッド33と、そのダンパヘッド33をダンパケース31からの突出方向へ付勢するコイルバネ37とで構成したことで、チャック1が高速回転される場合でも、ダンパヘッド33をタイヤホイール6のリムフランジ10の振動に容易に追従させて確実に防振できる。
そして、防振ダンパ30間の段差を、各円周上に設けた防振ダンパ30の先端部間を結ぶ線が、チャック軸線と直交する面に対して30°〜60°の角度範囲内に収まるように設定しているので、タイヤホイール6のリムフランジ10のカール部12外周を加工するツール40とその外側の防振ダンパ30との干渉をより確実に防止することができる。
【0018】
[形態2]
次に、本発明の他の形態を説明する。なお、上記形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
図5はチャックの平面図、図6はB−B線断面図で、ここでのチャック1aは、芯出し把持機構5や中間プレート21上の防振ダンパ30A〜30G、空圧シリンダ23等の構成は形態1と同じで、チャック本体2に、タイヤホイール6のリム9の内面を径方向内側から外側に押圧して把持するリム部把持機構41を設けた点が異なる。
このリム部把持機構41は、上ボディ4の上方で芯出し把持機構5の外周側に、周方向に等間隔で6箇所に配置された揺動アーム42,42・・を有する。この揺動アーム42は、上ボディ4の上面にボルト止めされたリングベース43に、周方向のピン44によって中間部が軸着されて、上下端がチャック本体2の半径方向へ揺動可能に支持されるもので、各揺動アーム42の上端には、外側へ押圧爪46を突設させたアタッチメント45がボルト47によって着脱可能に取り付けられ、各揺動アーム42の下端は、下方へ行くに従って外側へ向かう傾斜状に形成されている。
【0019】
一方、チャック本体2の軸心でドローシャフト17の外周側には、筒状の動作スリーブ48が、ドローシャフト17と同軸で上下動可能に収容され、動作スリーブ48の上端で直交状に連結された連結プレート49の外周に、連係リング50の下端が係合している。この連係リング50の外周側には、内外面に形成した曲面によって傾動可能な保持体51が設けられており、この保持体51に揺動アーム42の下端が遊挿している。
よって、動作スリーブ48が上昇すると、連結プレート49を介して連係リング50が上昇し、各揺動アーム42の下端を内側へ引き込むため、各揺動アーム42は、上端のアタッチメント45が外側へ突出する把持位置へ揺動し、動作スリーブ48が下降すると、連結プレート49を介して連係リング50が下降し、各揺動アーム42の下端を外側へ押し出すため、各揺動アーム42は、上端のアタッチメント45が内側へ引き込まれる把持解除位置へ揺動することになる。
【0020】
以上の如く構成されたチャック1aにおいては、タイヤホイール6を把持する際には、形態1と同様に芯出し把持機構5によってディスク部7の中心孔8を芯出し保持する一方、動作スリーブ48の上昇によって各揺動アーム42を把持位置へ揺動させる。すると、アタッチメント45の押圧爪46がリム9の内面を外側へ押圧してリム9を内側から把持する。そして、各空圧シリンダ23に圧縮空気を供給して中間プレート21を上昇させ、防振ダンパ30のダンパケース31の先端を側壁部11に当接させる。よって、タイヤホイール6は、芯出し把持機構5と防振ダンパ30とに加えてリム部把持機構41によっても保持され、ツール40による加工が可能となる。加工が終了すれば、ドローシャフト17の下降による芯出し保持の解除と共に、動作スリーブ48も下降させて各揺動アーム42を把持解除位置へ揺動させれば、タイヤホイール6を取り外すことができる。なお、図5,6は、最小径のタイヤホイール6においてリム部把持機構41を用いた場合の例であるが、タイヤホイール6の径が変わればこれに合わせてアタッチメント45を交換することで、最大径のタイヤホイール6にも対応可能となる。
【0021】
このように、上記形態2のチャック1aにおいても、芯出し把持した異なる径のタイヤホイール6を防振状態で保持でき、加工時のびびりを防止して加工精度を高くできる上、各タイヤホイール6のリムフランジ10のカール部12外周も支障なくツール加工できる。よって、タイヤホイール6の外周及び面取りの加工範囲や使用可能なツール範囲を拡大可能となる。しかも、直径の種々異なるタイヤホイール6に対応する防振ダンパ30のみをリムフランジ10の側壁部11に当接させて加工可能としているため、タイヤホイール6の径に対応しない防振ダンパ30の前進を受止める選択カバーを用いたりする必要がなく、タイヤホイール6が高精度で加工可能となる。
特にここでは、チャック本体2に、芯出し保持されたリム9の内面を外側に向けて押圧するリム部把持機構41を設けたことで、芯出し把持した種々異なる径のタイヤホイール6のリム9内面を把持してタイヤホイール6を強固に把持可能となる。よって、加工代を大きくすることもできる。
【0022】
なお、防振ダンパの数や配置形態等は上記形態1,2に限定するものではなく、防振ダンパの数を増減したり、異なる円周上で隣接する防振ダンパ間の距離を変更したり等、適宜設計変更可能で、防振ダンパ自体の構造も、ナットとカラーとに代えてダンパケースを中間プレートに直接螺合させて突出量を変更可能とする等の変更が可能である。勿論空圧シリンダの配置や構造も同様に変更して差し支えない。
また、芯出し把持機構やリム部把持機構も上記形態に限らず、例えば図7に示すように、タイヤホイール6の中心孔8がさらに小径の場合は、これに対応した把持爪15a及びテーパ部材16aを備えた芯出し把持機構5aに代えることもできる。さらに、リム部把持機構の揺動アームを、下端を軸着して中間部位を半径方向に設けたエアシリンダやネジ送り機構によって進退動させる構造としてもよい。このような構造とすれば、揺動アームの揺動量が大きくなってアタッチメントの交換が不要となる。
【0023】
そして、上記形態1,2では、防振ダンパ間の段差を、各円周上に設けた防振ダンパの先端部間を結ぶ線が、チャック軸線と直交する面に対して30°〜60°の範囲内に収まるように設定しているが、当該段差を、保持部材の半径方向で隣接する防振ダンパ間の間隔の略0.5倍〜略1.7倍の範囲内で設定するようにしてもよい。この設定であっても、タイヤホイールのリムフランジのカール部外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】形態1のタイヤホイール保持用チャックの平面図である。
【図2】A−A線断面図である。
【図3】防振ダンパ及び防塵ダンパ間の段差の説明図である。
【図4】リムフランジのカール部分の加工状態を示す説明図である。
【図5】形態2のタイヤホイール保持用チャックの平面図である。
【図6】B−B線断面図である。
【図7】芯出し把持機構の変更例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1,1a・・タイヤホイール保持用チャック、2・・チャック本体、3・・下ボディ、4・・上ボディ、5・・芯出し把持機構、6・・タイヤホイール、7・・ディスク部、8・・中心孔、9・・リム、10・・リムフランジ、11・・側壁部、12・・カール部、13・・ベース、14・・ストッパ、15・・把持爪、16・・テーパ部材、17・・ドローシャフト、19・・スライド体、21・・中間プレート、23・・空圧シリンダ、25・・ピストン、26・・ピストンロッド、28,29・・流路、30・・防振ダンパ、31・・ダンパケース、33・・ダンパヘッド、36・・閉塞部材、37・・コイルバネ、38・・ナット、39・・カラー、40・・ツール、41・・リム部把持機構、42・・揺動アーム、44・・ピン、45・・アタッチメント、46・・押圧爪、48・・動作スリーブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体に、リムの開口側端部にリムフランジを周設したタイヤホイールのディスク部の中心孔を把持して前記タイヤホイールを芯出し把持可能な芯出し把持機構と、前記チャック本体の外周にあってその軸線方向へ移動可能で、ホイール径が異なる複数のタイヤホイールに対応した複数の同心円周上に複数の防振ダンパを配設した保持部材とを備え、前記芯出し把持機構で芯出し把持された前記タイヤホイールのリムの開口側に前記保持部材を移動させて前記リムフランジに前記防振ダンパを押圧させることで、前記タイヤホイールを保持可能としたタイヤホイール保持用チャックであって、
前記各防振ダンパを、前記リムフランジにおける前記リムの開口側の側壁部に当接するように配置すると共に、前記各防振ダンパ間に、外側へ行くに従って前記タイヤホイールから徐々に離れるように軸方向での段差を設け、その段差を、前記リムフランジの外周端から前記側壁部側へ張り出すように形成されたカール部の張出量より大きく設定して、前記防振ダンパで支持される前記リムフランジの前記カール部の外周を加工するツールとその外側の防振ダンパとの干渉を回避するようにしたことを特徴とするタイヤホイール保持用チャック。
【請求項2】
前記チャック本体に、芯出し保持されたリムの内面を外側に向けて押圧するリム部把持機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤホイール保持用チャック。
【請求項3】
前記防振ダンパを、保持部材にチャック軸線方向で取付位置を調整可能に設けられた筒状のダンパケースと、そのダンパケースの先端部から出没可能に設けられたダンパヘッドと、そのダンパヘッドを前記ダンパケースからの突出方向へ付勢する付勢手段とで構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤホイール保持用チャック。
【請求項4】
前記防振ダンパ間の段差を、各円周上に設けた防振ダンパの先端部間を結ぶ線が、チャック軸線と直交する面に対して30°〜60°の角度範囲内に収まるように設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のタイヤホイール保持用チャック。
【請求項5】
前記防振ダンパ間の段差を、前記保持部材の半径方向で隣接する前記防振ダンパ間の間隔の略0.5倍〜略1.7倍の範囲内で設定したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のタイヤホイール保持用チャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−95896(P2009−95896A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266949(P2007−266949)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(594142207)トヨタ自動車北海道株式会社 (10)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】