説明

タイヤロードノイズ低減装置及びタイヤロードノイズ評価方法

【課題】タイヤロードノイズ低減装置及びタイヤロードノイズ評価方法において、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減すると共にタイヤロードノイズを適正に評価する。
【解決手段】タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、このホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、この打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置15とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行中にタイヤから発生するロードノイズを低減するタイヤロードノイズ低減装置、また、このロードノイズを評価するタイヤロードノイズ評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中に、タイヤロードノイズ(タイヤ空洞共鳴音)が発生する。このロードノイズは、路面の凹凸などにより発生したタイヤの振動がサスペンションやボディなどを伝達し、騒音として車室内に伝播するものである。
【0003】
このタイヤロードノイズとしてのタイヤ空洞共鳴音を低減するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載されたタイヤ空洞共鳴音低減装置は、タイヤ空気室内の音をマイクで収集し、収集した音をFFT解析して空洞共鳴の原因となる音の周波数及びその強度を求め、求めた周波数と同じ周波数で同じ強度の音を合成するためのデータを生成し、生成したデータに基づいて音を出力する際の位相を調整して打消し音とし、この位相調整した打消し音をスピーカから出力することで、タイヤ空洞共鳴音を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−064822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のタイヤ空洞共鳴音低減装置にあっては、タイヤ空気室内の音をマイクで収集し、収集した音に基づいて空洞共鳴の原因となる音の周波数及びその強度を求め、位相を調整した打消し音をスピーカから出力することで、タイヤ空洞共鳴音を低減している。この場合、マイクがホイール内に搭載されることから、このマイクは、タイヤ空洞共鳴音だけでなく、周囲環境の音も収集してしまう。
【0006】
即ち、騒音は、タイヤの振動がホイールからサスペンションやボディに伝達して最終的に車室内のパネルが振動して音になる固体伝播音(間接音)と、タイヤから放射される音が外部空気に伝達して車室内で聞こえる音となる空気伝播音(直接音)とに区別することができる。この場合、固体伝播音は、ロードノイズなどであり、空気伝播音は、パターンノイズなどである。
【0007】
特許文献1のタイヤ空洞共鳴音低減装置は、マイクがロードノイズだけでなく、パターンノイズも収集してしまうおそれがある。また、このマイクは、タイヤ騒音だけでなく、周囲の環境から発生する音、例えば、他者の走行音やスピーカ騒音なども収集してしまうおそれがある。すると、このタイヤ空洞共鳴音低減装置は、マイクにより適正な空洞共鳴音(ロードノイズ)を収集することができず、且つ、空洞共鳴音を打ち消す打消し音を出力することができず、その結果、空洞共鳴音(ロードノイズ)を低減することができない。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができるタイヤロードノイズ低減装置、並びに、タイヤロードノイズを適正に評価することができるタイヤロードノイズ評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のタイヤロードノイズ低減装置は、タイヤが発生するロードノイズを打ち消す振動を出力することで前記ロードノイズを低減するタイヤロードノイズ低減装置において、タイヤが装着されたホイールの振動を計測するホイール振動計測装置と、前記ホイール振動計測装置が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置と、前記打消し振動生成装置が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、ホイール振動計測装置がホイールの振動を計測し、打消し振動生成装置がこの計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成し、打消し振動出力装置がこの生成した打消し振動を出力する。即ち、タイヤロードノイズをホイールの振動として検出し、このホイール振動を打ち消すための打消し振動を出力することから、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができる。
【0011】
また、本発明のタイヤロードノイズ低減装置では、前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールの振動を計測する振動センサを有することを特徴とする。
【0012】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、ホイール振動計測装置を振動センサとすることで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0013】
また、本発明のタイヤロードノイズ低減装置では、前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールの周方向における振動を計測することを特徴とする。
【0014】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、ホイール振動計測装置がホイールの周方向における振動を計測することで、ホイールにおける周方向の変形を検出し、タイヤロードノイズを発生させる原因となるタイヤ内の空洞共鳴音を適正に検出することができる。
【0015】
また、本発明のタイヤロードノイズ低減装置では、前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールに装着された歪ゲージを有することを特徴とする。
【0016】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、ホイール振動計測装置を歪ゲージとすることで、構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができると共に、ホイールへの装着性を向上することができる。
【0017】
また、本発明のタイヤロードノイズ低減装置では、前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールに装着された圧電素子を有することを特徴とする。
【0018】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、ホイール振動計測装置を圧電素子とすることで、構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができると共に、ホイールへの装着性を向上することができる。
【0019】
また、本発明のタイヤロードノイズ低減装置では、前記打消し振動生成装置は、前記ホイール振動計測装置が計測したホイール振動の周波数に対して操作装置により位相を調整して打消し振動を生成可能な位相調整装置と、前記位相調整装置が生成した打消し振動を無線波により受信可能な無線波受信装置を有することを特徴とする。
【0020】
このタイヤロードノイズ低減装置によれば、位相調整装置がホイール振動の周波数に対して操作装置により位相を調整して打消し振動を生成し、無線波受信装置がこの生成した打消し振動を無線波により受信するため、乗員が操作装置により振動の位相を調整して最適な打消し振動を生成することが可能となり、タイヤロードノイズを効果的に低減することができる。
【0021】
また、本発明のタイヤロードノイズ評価方法は、タイヤが装着されたホイールの振動を計測し、計測されたホイール振動に基づいてロードノイズを評価する、ことを特徴とする。
【0022】
このタイヤロードノイズ評価方法によれば、タイヤロードノイズと相関関係にあるホイールの振動を検出することから、このホイールの振動に基づいてロードノイズを適正に評価することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタイヤロードノイズ低減装置は、ホイールの振動を計測し、計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成して出力するので、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができる。
【0024】
本発明に係るタイヤロードノイズ評価方法は、ホイールの振動に基づいてロードノイズを評価するので、タイヤロードノイズを適正に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置の原理図である。
【図2】図2は、第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図である。
【図3】図3は、第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置の動作を表すフローチャートである。
【図4】図4は、歪ゲージにより計測したホイール振動を表すグラフである。
【図5】図5は、ホイール振動のFFT解析データである。
【図6】図6は、ホイール振動に対する打ち消し振動を表すグラフである。
【図7】図7は、音圧計により計測した音圧を表すグラフである。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置の原理図である。
【図9】図9は、第2実施形態のタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の実施形態は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置の原理図、図2は、第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図、図3は、第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置の動作を表すフローチャート、図4は、歪ゲージにより計測したホイール振動を表すグラフ、図5は、ホイール振動のFFT解析データ、図6は、ホイール振動に対する打ち消し振動を表すグラフ、図7は、音圧計により計測した音圧を表すグラフである。
【0028】
第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置は、図1に示すように、タイヤ11が発生するロードノイズを打ち消す振動を出力することで、このロードノイズを低減するものである。このタイヤロードノイズ低減装置は、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置15とから構成されている。
【0029】
そして、打消し振動生成装置14は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール12の振動を解析してピークとなる周波数(ロードノイズの原因となる振動の周波数)とその大きさ(強度)を求め、この周波数と同じ周波数で、且つ、同じ大きさの振動を合成するためのデータを生成し、生成したデータに基づいて音を出力するときの位相を調整して打消し音(打ち消し振動)とし、打消し振動出力装置15がこの位相調整した打消し音を出力する。
【0030】
第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置は、図2に示すように、タイヤ11が装着されたホイール12に装着されている。そして、ホイール振動計測装置13は、ホイール12の周方向における振動を計測する振動センサであって、具体的には、ホイール12に装着された歪ゲージである。即ち、ホイール振動計測装置13としての歪ゲージは、ホイール12の周方向における寸法の微小な変化(歪)を電気信号として検出することができる。なお、ホイール振動計測装置13は、この構成に限らず、ホイール12に装着された圧電素子(圧電フィルム、圧電ケーブルなど)としてもよい。
【0031】
打消し振動生成装置14は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動をAD変換器21によりアナログ信号からデジタル信号化して振動データとして入力する。そして、打消し振動生成装置14は、このホイール振動を打ち消す打消し振動を生成し、DA変換器22によりデジタル信号からアナログ信号化して打消し振動出力装置15に振動データとして出力する。この打消し振動出力装置15は、加振器であって、打消し振動生成装置14が生成した振動データとしての打消し振動をホイール12に出力する。
【0032】
具体的に説明すると、打消し振動生成装置14は、入力インタフェース31、データ記憶装置32、動歪計33、FFT(Fast Fourier Transform)解析装置34、合成振動データ生成装置35、位相調整装置36、出力インタフェース37から構成されている。
【0033】
データ記憶装置32は、ホイール振動計測装置13が計測し、AD変換器21によりデジタル信号化された振動データを記憶するものである。この場合、データ記憶装置32は、FFT解析装置34でFFT解析を行うために必要な数のデータが先入れ先出しとなるように記憶することができる。動歪計33は、データ記憶装置32に記憶された振動データを読み出し、この読み出された振動データを増幅し、電圧(電流)として出力するものである。
【0034】
FFT解析装置34は、動歪計33が増幅した振動データの中に、どの周波数成分がどれだけ含まれているかを抽出する処理(周波数解析)を行うものである。そして、FFT解析装置34は、その解析した周波数成分のうち、所定の周波数領域(230Hz〜250Hz)で、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数とその大きさ(強度)を求める処理を行う。
【0035】
合成振動データ生成装置35は、FFT解析装置34が求めたタイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数と同じ周波数の振動を同じく求めた大きさと同じ大きさで出力するために必要となる振動データ(合成振動データ)を生成するものである。合成振動データ生成装置35は、2つの周波数の合成振動データ(例えば、230Hzと240Hzの合成振動データ)を生成する。この場合、FFT解析装置34が求めたタイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数のピークが1つであれば、合成振動データ生成装置35は、1つの周波数の振動データ(例えば、230Hzの振動データ)を出力し、FFT解析装置34が求めたタイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数のピークが3つ以上であれば、合成振動データ生成装置35は、3つ以上の周波数の振動データを合成して出力する。
【0036】
位相調整装置36は、合成振動データ生成装置35が生成した合成振動データに基づいてこの振動を出力するときに、この振動の位相を調整することで、出力する振動が打消し振動となるようにその振動の位相を調整するものである。即ち、位相調整装置36は、合成振動データ生成装置35が生成した合成振動データに対して、逆位相となる振動データを出力するものである。なお、位相調整装置36が振動の位相を調整する方法としては、例えば、記憶装置に合成振動データを一時的に記憶し、遅延時間を設けて記憶した合成振動データを出力することで実現することができる。
【0037】
ここで、第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
第1実施形態のタイヤロードノイズ低減装置の動作において、図3に示すように、ステップS11にて、ホイール振動計測装置13としての歪ゲージは、ホイール12の周方向における振動(歪量)を計測する。ステップS12にて、AD変換器21は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0039】
打消し振動生成装置14は、入力インタフェース31がこのデジタル信号化された振動データを入力し、ステップS13にて、データ記憶装置32は、この振動データを記憶する。そして、ステップS14にて、動歪計33は、データ記憶装置32に記憶された振動データを読み出し、この読み出された振動データを増幅する。
【0040】
ステップS15にて、FFT解析装置34は、動歪計33が増幅した振動データの中に、どの周波数成分がどれだけ含まれているかを抽出する周波数解析を行う。即ち、FFT解析装置34は、周波数解析することで、所定の周波数領域(230Hz〜250Hz)で、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数とその大きさ(強度)を求める処理を行う。この場合、FFT解析装置34は、順次送られる繰る振動データを連続的に処理することで、動的に変化するタイヤロードノイズに対して適切に対処することができる。
【0041】
ステップS16にて、合成振動データ生成装置35は、FFT解析装置34が求めたタイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数、例えば、230Hzと240Hzと同じ周波数、同じ大きさの振動を生成するための合成振動データを生成する。ステップS17にて、位相調整装置36は、合成振動データに基づいてこの振動を出力するときに、この振動の位相を調整して出力する振動が打消し振動となるように、その振動の位相を調整する。
【0042】
なお、この振動の位相調整は、例えば、FFT解析装置34が解析した振動の強度が予め設定された閾値より大きい場合や、振動の強度が所定時間以上高いレベルにある場合などであり、この場合でないときは、位相調整装置36は、位相調整を行う必要はない。
【0043】
生成された打消し振動データは、出力インタフェース37を介して出力され、ステップS18にて、DA変換器22は、デジタル信号からアナログ信号に変換する。そして、ステップS19にて、打消し振動出力装置15としての加振器は、打消し振動生成装置14が生成した打消し振動をホイール12に出力する。即ち、打消し振動出力装置15は、ホイール振動における2つの周波数(230Hz、240Hz)でピークとなる振動をホイール12に付与することで、ホイール振動と打消し振動が互いに強度を弱めあい、ロードノイズを低減する。
【0044】
具体的に説明すると、ホイール振動計測装置13としての歪ゲージは、図4に示すように、ホイール12の周方向におけるホイール振動を計測する。この場合、時間Tがタイヤ11(ホイール12)の1回転の波形である。FFT解析装置34は、この計測したホイール振動を周波数解析することで、図5に示すように、ロードノイズの周波数特性を得ることができる。この場合、領域Aにて、2つの高い周波数230Hz、240Hzでピークとなっていることから、この2つの高い周波数230Hz、240Hzの振動がロードノイズの原因となっていることがわかる。
【0045】
その結果、位相調整装置36は、図6に示すように、ホイール振動Vに対して、打消し振動Vを生成する。打消し振動出力装置15は、ホイール振動Vに対して、逆位相となる打消し振動Vを出力することで互いに打ち消しあい、ホイール振動V、つまり、ロードノイズが低減する。
【0046】
また、本実施形態では、ロードノイズをホイール12の振動(ホイール振動)として評価している。即ち、マイクロフォンによりロードノイズを音として収集し、周波数解析すると、図7に示すように、ロードノイズの周波数特性を得ることができる。このロードノイズの周波数特性から、領域Bにて、2つの高い周波数230Hz、240Hzでピークとなっていることがわかる。この場合、ホイール振動を周波数解析した周波数特性(図5)と、ロードノイズを周波数解析した周波数特性(図7)とを比較してみると、両者共に各領域A,Bにて、2つの高い周波数230Hz、240Hzでピークとなっている。このことから、ロードノイズ(音)とホイール振動とが相関関係にあることが理解できる。即ち、ホイール振動をロードノイズとして評価することで、上述したロードノイズ低減だけでなく、例えば、ロードノイズの発生原因の解析やタイヤやホイールの設計などにも応用することができる。
【0047】
このように第1実施形態のロードノイズ低減装置にあっては、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、このホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、この打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置15とを設けている。
【0048】
従って、ホイール振動計測装置13がホイール12の振動を計測し、打消し振動生成装置14がこの計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成し、打消し振動出力装置15がこの生成した打消し振動を出力する。即ち、タイヤロードノイズをホイール12の振動として検出し、このホイール振動を打ち消すための打消し振動を出力することから、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができる。
【0049】
また、第1実施形態のロードノイズ低減装置では、ホイール振動計測装置13をホイール12の振動を計測する振動センサとするので、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0050】
また、第1実施形態のロードノイズ低減装置では、ホイール振動計測装置13がホイール12の周方向における振動を計測するので、ホイール12における周方向の変形を検出し、タイヤロードノイズを発生させる原因となるタイヤ11内の空洞共鳴音を適正に検出することができる。
【0051】
また、第1実施形態のロードノイズ低減装置では、ホイール振動計測装置13をホイール12に装着された歪ゲージとするので、構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができると共に、ホイール12への装着性を向上することができる。
【0052】
また、第1実施形態のロードノイズ低減装置では、ホイール振動計測装置をホイール12に装着された圧電素子とするので、構造の簡素化及び低コスト化を可能とすることができると共に、ホイールへの装着性を向上することができる。
【0053】
また、第1実施形態のタイヤロードノイズ評価方法にあっては、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測し、計測されたホイール12の振動に基づいてロードノイズを評価している。従って、タイヤロードノイズと相関関係にあるホイール12の振動を検出することから、このホイール12の振動に基づいてロードノイズを適正に評価することができる。
【0054】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置の原理図、図9は、第2実施形態のタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
第2実施形態のタイヤロードノイズ低減装置は、図8に示すように、タイヤ11が発生するロードノイズを打ち消す振動を出力することで、このロードノイズを低減するものである。このタイヤロードノイズ低減装置は、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置16とから構成されている。
【0056】
そして、打消し振動生成装置14は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール12の振動を解析してピークとなる周波数(ロードノイズの原因となる振動の周波数)とその大きさ(強度)を求め、この周波数と同じ周波数で、且つ、同じ大きさの振動を合成するためのデータを生成し、生成したデータに基づいて音を出力するときの位相を調整して打消し音(打消し振動)とし、打消し振動出力装置15がこの位相調整した打消し音を出力する。
【0057】
第2実施形態のタイヤロードノイズ低減装置は、図9に示すように、タイヤ11が装着されたホイール12に装着されている。そして、ホイール振動計測装置13は、ホイール12の周方向における振動を計測する振動センサであって、具体的には、ホイール12に装着された歪ゲージである。打消し振動生成装置14は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動をAD変換器21によりデジタル信号化して入力し、ホイール振動を打ち消す打消し振動を生成した後、DA変換器22によりアナログ信号化して打消し振動出力装置16に振動データとして出力する。打消し振動出力装置16は、スピーカであって、打消し振動生成装置14が生成した振動データとしての打消し振動を空気中に出力する。
【0058】
具体的に説明すると、打消し振動生成装置14は、入力インタフェース31、データ記憶装置32、動歪計33、FFT解析装置34、合成振動データ生成装置35、位相調整装置36、出力インタフェース37から構成されている。
【0059】
データ記憶装置32は、ホイール振動計測装置13が計測してAD変換器21によりデジタル信号化された振動データを記憶する。FFT解析装置34は、動歪計33が増幅した振動データを周波数解析し、解析した周波数成分のうち、所定の周波数領域(230Hz〜250Hz)で、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数とその大きさ(強度)を求める。合成振動データ生成装置35は、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数と同じ周波数の振動を同じく求めた大きさと同じ大きさで出力するために必要となる振動データ(合成振動データ)を生成する。位相調整装置36は、合成振動データに基づいてこの振動を出力するときに、この振動の位相を調整することで、出力する振動が打消し振動となるようにその振動の位相を調整する。
【0060】
この場合、打消し振動生成装置14は、位相調整装置36が打消し振動を生成すると、打消し振動の波形を出力することで、打消し振動出力装置16は、この打消し振動の波形に応じた音をスピーカから出力する。なお、打消し振動出力装置16は、タイヤ11やホイール12の周辺に音を出力してもよく、また、車室内に出力してもよい。
【0061】
このように第2実施形態のロードノイズ低減装置にあっては、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、このホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、この打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置16とを設けている。
【0062】
従って、ホイール振動計測装置13がホイール12の振動を計測し、打消し振動生成装置14がこの計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成し、打消し振動出力装置16がこの生成した打消し振動としての音を出力する。即ち、タイヤロードノイズをホイール12の振動として検出し、このホイール振動を打ち消すための打消し音を出力することから、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができる。
【0063】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係るタイヤロードノイズ低減装置における概略構成図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
第3実施形態のタイヤロードノイズ低減装置は、図10に示すように、タイヤ11が装着されたホイール12の振動を計測するホイール振動計測装置13と、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置14と、打消し振動生成装置14が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置15とから構成されている。
【0065】
ホイール振動計測装置13は、ホイール12の周方向における振動を計測する歪ゲージであり、AD変換器21を介して打消し振動生成装置14に接続されている。打消し振動生成装置14は、入力インタフェース31、データ記憶装置32、動歪計33、FFT解析装置34、合成振動データ生成装置35、位相調整装置(第1位相調整装置)36、出力インタフェース37から構成されている。そして、打消し振動生成装置14は、ホイール振動を打ち消す打消し振動を出力するものであり、DA変換器22を介して打消し振動出力装置15に接続されている。打消し振動出力装置15は、加振器であって、打消し振動生成装置14が生成した振動データとしての打消し振動をホイール12に出力する。
【0066】
また、打消し振動生成装置14は、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動の周波数に対して操作装置により位相を調整して打消し振動を生成可能な第2位相調整装置と、第2位相調整装置が生成した打消し振動を無線波により受信可能な無線波受信装置を有している。
【0067】
即ち、打消し振動生成装置14の入力インタフェース31は、受信機41が接続されており、この受信機41はアンテナ42を有している。そして、この受信機41は、受信した信号を位相調整装置36に出力可能となっている。また、出力インタフェース37は、送信機43が接続されており、この送信機43はアンテナ44を有している。そして、この送信機43は、FFT解析装置34が周波数解析した振動データを信号として送信可能となっている。
【0068】
第2位相調整装置としての処理装置51は、受信機52が接続されており、この受信機52はアンテナ53を有している。そして、この受信機52は、送信機43が送信した信号、つまり、FFT解析装置34が周波数解析した振動データを信号として受信し、処理装置51に出力可能となっている。また、処理装置51は、送信機54が接続されており、この送信機54はアンテナ55を有している。そして、この送信機54は、処理装置51が処理した打消し振動データを信号として送信可能となっている。そして、受信機41は、送信機54が送信した打消し振動データを信号として受信し、位相調整装置36に出力する。
【0069】
また、処理装置51は、操作装置としてのキーボード56が接続されると共に、表示装置57が接続されている。この場合、処理装置51、キーボード56、表示装置57等は、打消し振動生成装置14に打消し振動の位相を手動により調整する手動位相調整信号を送信する車載ユニットとして構成されている。
【0070】
従って、ホイール振動計測装置13としての歪ゲージは、ホイール12の周方向における振動を計測し、計測されたホイール振動は、AD変換器21を介して打消し振動生成装置14に入力される。ここで、打ち消し振動生成装置14は、データ記憶装置32が振動データを記憶し、動歪計33が振動データを増幅し、FFT解析装置34が振動データを周波数解析する。即ち、FFT解析装置34は、周波数解析することで、所定の周波数領域(230Hz〜250Hz)で、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数とその大きさ(強度)を求める処理を行う。
【0071】
FFT解析装置34が解析した振動データは、送信機43が振動データ信号として送信し、受信機52がこの信号を受信し、処理装置51に出力する。処理装置51は、入力した信号に基づいて、FFT解析装置34による周波数解析結果、つまり、所定の周波数領域(230Hz〜250Hz)で、タイヤロードノイズが発生する原因となる振動の周波数とその大きさ(強度)を表示装置57に表示する。そのため、乗員は、この表示装置57が表示したデータからタイヤロードノイズの発生状況を認識することができる。なお、表示装置57は、4つあるタイヤ11(ホイール12)のうちの1つ、または、全てのタイヤ11(ホイール12)におけるタイヤロードノイズの発生状況を視覚的に表示している。
【0072】
乗員は、表示装置57によりタイヤロードノイズの発生状況を認識することができることから、キーボード56を操作し、タイヤ11(ホイール12)ごとに打消し振動の位相調整の指示(周波数と位相調整量)をキー入力する。即ち、乗員は、処理装置51によりタイヤ11(ホイール12)ごとの手動位相調整信号を生成し、送信機54により打消し振動の位相調整の指示データを送信する。すると、受信機41は、送信機54が送信した打消し振動の位相調整の指示データを受信し、位相調整装置36に出力する。
【0073】
打ち消し振動生成装置14は、合成振動データ生成装置15がタイヤロードノイズの発生する原因となる振動の周波数、例えば、230Hzと240Hzと同じ周波数、同じ大きさの振動を生成するための合成振動データを生成する。位相調整装置36は、合成振動データと処理装置51から送られた打消し振動の位相調整の指示データに基づいて打消し振動を生成する。
【0074】
そして、生成された打消し振動は、打消し振動出力装置15に出力され、この打消し振動出力装置15は、生成した打消し振動をホイール12に出力する。即ち、打消し振動出力装置15は、ホイール振動における2つの周波数(230Hz、240Hz)でピークとなる振動をホイール12に付与することで、ホイール振動と打消し振動が互いに強度を弱めあい、ロードノイズを低減する。
【0075】
このように第3実施形態のロードノイズ低減装置にあっては、ホイール振動計測装置13と打消し振動生成装置14と打消し振動出力装置15を設けると共に、打消し振動生成装置15として、ホイール振動計測装置13が計測したホイール振動の周波数に対してキーボード56により位相を調整して打消し振動を生成可能な処理装置51と、処理装置51が生成した打消し振動を無線波により送受信可能な無線波の送受信機41,43,52,54を設けている。
【0076】
従って、ホイール振動計測装置13がホイール12の振動を計測し、打消し振動生成装置14がこの計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成し、打消し振動出力装置15がこの生成した打消し振動を出力する。即ち、タイヤロードノイズをホイール12の振動として検出し、このホイール振動を打ち消すための打消し振動を出力することから、タイヤロードノイズを高精度に検出してこれを適正に低減することができる。
【0077】
このとき、処理装置51は、打消し振動生成装置14から受信したホイール振動の周波数に対して、キーボード56からの入力指示により位相を調整し、この位相調整の指示データを打消し振動生成装置14に送信する。すると、打ち消し振動生成装置14は、合成振動データと打消し振動の位相調整の指示データに基づいて打消し振動を生成することとなる。そのため、乗員が手動操作によりホイール振動の位相を調整して最適な打消し振動を生成することが可能となり、タイヤロードノイズを効果的に低減することができる。
【0078】
なお、上述した実施形態1、3では、打消し振動出力装置15が打ち消し振動をホイール12に付与することで、ロードノイズを低減するように構成したが、打ち消し振動は、ホイール12だけでなく、車軸、サスペンション、ボディなどに付与してもよい。
【符号の説明】
【0079】
11 タイヤ
12 ホイール
13 ホイール振動計測装置
14 打消し振動生成装置
15,16 打消し振動出力装置
31 入力インタフェース
32 データ記憶装置
33 動歪計
34 FFT解析装置
35 合成振動データ生成装置
36 位相調整装置
37 出力インタフェース
41,52 受信機(無線波受信装置)
43,54 送信機(無線波受信装置)
51 処理装置(位相調整装置)
56 キーボード
57 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが発生するロードノイズを打ち消す振動を出力することで前記ロードノイズを低減するタイヤロードノイズ低減装置において、
タイヤが装着されたホイールの振動を計測するホイール振動計測装置と、
前記ホイール振動計測装置が計測したホイール振動を打ち消す打消し振動を生成する打消し振動生成装置と、
前記打消し振動生成装置が生成した打消し振動を出力する打消し振動出力装置と、
を備えることを特徴とするタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項2】
前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールの振動を計測する振動センサを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項3】
前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールの周方向における振動を計測することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項4】
前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールに装着された歪ゲージを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項5】
前記ホイール振動計測装置は、前記ホイールに装着された圧電素子を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項6】
前記打消し振動生成装置は、前記ホイール振動計測装置が計測したホイール振動の周波数に対して操作装置により位相を調整して打消し振動を生成可能な位相調整装置と、前記位相調整装置が生成した打消し振動を無線波により受信可能な無線波受信装置を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のタイヤロードノイズ低減装置。
【請求項7】
タイヤが装着されたホイールの振動を計測し、
計測されたホイール振動に基づいてロードノイズを評価する、
ことを特徴とするタイヤロードノイズ評価方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate