説明

タイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法

【課題】安価な構成によりタイヤを容易に解体可能なタイヤ切断用鋏等を提供する。
【解決手段】タイヤ切断用鋏は、第1の刃と第2の刃とを備え、これらを回転軸3において回転自在に連結されており、第1の刃及び第2の刃の後端には、回転軸3を中心として刃を回動させることで切断面5を開閉させるための把持部4をそれぞれ形成している。このタイヤ切断用鋏では、第1の刃は、先端を鋭利に突出させた突出部8を形成しており、第1の刃及び第2の刃は、回転軸3の方向に切断面5を湾曲させている。この構成によって、タイヤ切断用鋏は安価な構成でタイヤの解体を容易に行える利点が得られる。それは、タイヤ切断用鋏が、先端の突出部8でタイヤに切り込みを形成し、かつ切り込みにタイヤ切断用鋏を挿入した状態で折曲された切断面5によってタイヤを円周面に沿って容易に切断できるからである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤなどのタイヤを切断するための鋏及び該鋏を使用したタイヤ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、一般に大きく嵩張るため、運搬や保管が困難であるという問題がある。例えば自動車用タイヤの廃タイヤは、そのままの形状では嵩張り占有面積が大きく、運搬・保管には多大な費用と場所を要する。このため、特許文献1に示されるような廃タイヤを切断するための切断機が開発されている。
【0003】
しかしながら、このような切断機は大がかりな構成で高価である上、装置自体も大きく設置場所を必要とするため、導入は容易でない。また、タイヤを粉々に砕く粉砕機による処理では、騒音や振動が大きいため周囲のへ迷惑となり、さらにスラッジ(切り屑)や他の環境を汚染する物質が飛散するため、作業者の健康や環境への影響が懸念されていた。このような背景から、安全かつ安価で簡易にタイヤを解体可能な装置並びに手法が切望されていた。
【特許文献1】特許第2990399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は、安価な構成によりタイヤを容易に解体可能なタイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の第1のタイヤ切断用鋏は、第1の刃と第2の刃とを備え、これらを回転軸において回転自在に連結されており、第1の刃及び第2の刃の後端には、回転軸を中心として刃を回動させることで切断面を開閉させるための把持部をそれぞれ形成している。このタイヤ切断用鋏では、第1の刃は、先端を鋭利に突出させた突出部を形成しており、第1の刃及び第2の刃は、回転軸の方向に切断面を湾曲させている。この構成によって、タイヤ切断用鋏は安価な構成でタイヤの解体を容易に行える利点が得られる。それは、タイヤ切断用鋏が、先端の突出部でタイヤに切り込みを形成し、かつ切り込みにタイヤ切断用鋏を挿入した状態で折曲された切断面によってタイヤを円周面に沿って容易に切断できるからである。
【0006】
また本発明の第2のタイヤ切断用鋏は、第1の刃及び第2の刃は回転軸を挿通する回転軸穴で、把持部を同一方向に折曲させている。この構成によって、使用者は折曲された把持部を把持してタイヤを上方から切断できるので、切断時の姿勢を無理なくして肉体的負担を軽減できる。
【0007】
さらに本発明の第3のタイヤ切断用鋏は、把持部の後端に、把持部を延長するための延長部を連結可能に構成している。この構成によって、延長部を把持部に接続して把持部を延長でき、テコの原理で切断力を増し堅いタイヤの切断作業を軽減できる。
【0008】
さらにまた本発明のタイヤ切断方法は、先端を突出させると共に、切断面を湾曲させたタイヤ切断用鋏を使用して、切断面の折曲方向がタイヤ円周状側面の円周方向と沿うように、タイヤの一方の側面に切り込みを形成する工程と、この切り込みにタイヤ切断用鋏を挿入し、タイヤ切断用鋏の折曲面に沿ってタイヤの一方の側面を切り取る工程と、上記と同様の手順によりタイヤの他方の側面を切り取る工程と、側面を除去したタイヤの筒状接地面の少なくとも一カ所を筒の高さ方向に切断する工程とを有する。これにより、タイヤを解体してコンパクトにまとめることができ、特に廃タイヤの設置スペースを極減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法によれば、簡単な機構で容易にタイヤを解体することができるという利点を有する。それは、第1の刃が先端を鋭利に突出させ、かつ切断面を曲面に形成したタイヤ切断用鋏を使用して、タイヤの側面を除去し、さらにタイヤの接地面を筒の高さ方向に切断できるからである。これによって、特に廃タイヤを安価に且つ容易に解体して占有容積を極限し、保管・運搬に容易な大きさに縮小することができるので、従来問題となっていた保管や運搬に多大の費用と場所を要していた問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのタイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法を例示するものであって、本発明はタイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0011】
図1に、本発明の一実施の形態に係るタイヤ切断用鋏の全体を示す分解図を、図2に刃の部分を正面から見た拡大図を、図3に刃を上方から見た側面図を、それぞれ示す。これらの図に示すタイヤ切断用鋏100は、第1の刃及び第2の刃として、上刃1と下刃2とを回転軸3で回転自在に連結すると共に、回転軸3から後端に把持部4を形成している。使用者は把持部4を両手でそれぞれ把持して、刃の切断面5を開閉を操作する。把持部4はそれぞれ円筒状に延長された形状に形成されており、後端近傍の握り部分をラバーグリップ6等摩擦抵抗の大きい素材で被覆することにより、把持する際の滑り止めとグリップ感を向上させている。また、把持部4同士の間にはスプリングなどの弾性体7を介在させることで、弾性体7の押圧力で把持部4同士の間隔を押し広げて刃の刃渡り部分、すなわち切断面5を開く方向に付勢している。これによって刃を開く力を軽減でき、刃の開閉時に使用者の腕力負担を軽減できる。
(上刃1及び下刃2)
【0012】
上刃1及び下刃2は、切断面5を鋭利に形成した金属で構成され、ステンレスや鉄、鋼などで形成される。各刃の刃渡りは、切断したいタイヤの直径に応じて設計され、例えば10cm〜30cm等とする。図1の例では、刃の先端から回転軸形成部分までの全長を約20cmに形成している。また下刃2は、図2の示すように切断面5を延長し、先端を鋭利に突出させた突出部8を形成している。これによって、突出部8をタイヤの円周状側面(サイドウォール)に突き立てることで切り込みを開口し易くなり、切り込みに下刃2を挿入してタイヤ側面を円周に沿って切断することが可能となる。
【0013】
さらに上刃1及び下刃2は、図3に示すように切断面5を一方に湾曲させている。この構造によって湾曲して切断できるので、湾曲方向とタイヤ側面の円周方向とを合わせることでタイヤ側面の円周に沿った切断作業を容易に行えるという利点が得られる。湾曲の曲率半径は、切断したいタイヤの直径に応じて設計される。
(把持部4)
【0014】
一方把持部4は、金属製やプラスチック製、木製等で構成される。図1の例では、アルミニウム製パイプで構成して軽量化を図っている。またアルミニウム製パイプは、刃の回転軸3の後端でネジ、ピン等の刃固定具9により固定される。ただ、把持部4は上刃1や下刃2と別部材とする構成に限られず、上刃や下刃と一体に形成することもできる。
【0015】
さらに把持部4は図1に示すように、上刃1及び下刃2から直線状に延長された形状とせず、回転軸3から上方に折曲されるよう傾斜して固定されている。このように回転軸3近傍で把持部4の取り付け角度を傾斜させることで、タイヤ側面を切断する際に把持部4を開いてもタイヤ側面に当接しないようにでき、かつタイヤ側面から離間して切断作業を行えるため、使用者は無理な姿勢をとることなく比較的容易に作業できるという利点が得られる。
【0016】
把持部4は、切断面5の長さよりも長く形成され、テコの原理によって切断に要する負荷を軽減する。把持部4の長さは切断面5の長さ等に応じて設計される。図1の例では刃固定具からの長さを60cmとし、後端から10cmにラバーグリップ6を被覆している。またアルミニウム製パイプの直径はφ30mm、ラバーグリップ6の直径はφ35mmとしている。
(延長部10)
【0017】
さらに把持部4は、別部材の延長部10を連結して把持部4の全長を延長することができる。図1に示す例では、把持部4の後端に把持部4と同じ太さの延長部10を連結可能としている。連結には、把持部4の後端にネジ穴を形成し、延長部10の先端にネジ11を形成してこれらをねじ込むことによって容易に着脱できる。また延長部10の後端近傍には把持部4と同様にラバーグリップ12等の摩擦抵抗の大きい素材で被覆した握り部分を形成している。これによって把持部4を延長してテコの原理で切断力を増すことができるので、タイヤの厚い部分や堅いタイヤの切断作業を容易に行える。また異なる長さの延長部10を複数用意したり、延長部10の後端にさらに別の延長部を連結可能とすることで、切断したいタイヤに応じた種々の長さに変更できる。
(タイヤ切断方法)
【0018】
次に、このタイヤ切断用鋏100を用いてタイヤを解体する手順を、図4〜図7に基づいて説明する。まず図4に示すようにタイヤTを平面に置き、下刃2の突出部8をタイヤの側面Sの円周近傍に突き立て、切り込みKを開口する。切り込みKの開口位置は、切り込みKを開口するタイヤ側面Sの円周と、タイヤ切断用鋏100の切断面5の湾曲方向に沿うような位置とする。次に図5に示すように、この切り込みKから下刃2を挿入し、左右の把持部4を両手で操作しながら図5の一点鎖線に沿ってタイヤ側面Sの円周を切断する。これによってタイヤ側面Sの片側が切除されると、今度はタイヤTを裏返して反対側のタイヤ側面Sも同様にして切除する。そして、図6に示すようにタイヤの側面Sが両側とも切除されたタイヤの筒状接地面(タイヤトレッド)Uの一カ所を、一点鎖線に示すように筒の高さ方向に切断する。
【0019】
これによって図7に示すようにタイヤTは3分割されるので、タイヤ側面S同士を積み重ねて薄くすることができる。また筒状接地面Uは、タイヤ側面Sの外側に捲回するように配置できる。これによって複数のタイヤであっても解体してタイヤ側面Sを積み重ね、筒状接地面Uを捲き重ねたり帯状に伸ばして積み上げたりし、タイヤの容積を最大1/8程度まで圧縮できる。また、従来のようにタイヤを横にして積み上げる方法では不安定で崩れるおそれがあったが、上記の方法によれば極めて安定した状態に保持できる。これによってタイヤの占有面積を大幅に縮小でき、特に廃タイヤの管理、運搬を容易にできる。また、鋏による切断であるためスラッジや有害物質の飛散を抑えることができ、騒音や振動などの問題もなく、手作業によって環境への影響を最小限に抑制することができる。
【0020】
さらに上述した機構のタイヤ切断用鋏を使用することで使用者の肉体的な疲労を軽減して楽に切断作業を行うことができる。以上のように、構成が簡単で安価なタイヤ切断用鋏を使用して、これまで処理及び保管が大変であった廃タイヤの管理を極めて安価に且つ省スペースで行うことができるので、特に町工場のような限られた予算、スペースにおいても容易に廃タイヤの処理を行えるという手軽さが提供される。
【0021】
なお、上記の本実施の形態に係るタイヤ切断用鋏では、右利き用について説明したが、切断面5の湾曲を逆にすることで左利き用に適用できることはいうまでもない。さらに上記の例では突出部は下刃に形成したが、上刃に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のタイヤ切断用鋏及びタイヤ切断方法は、廃タイヤの解体に好適に適用できる。また太いワイヤを切断可能な刃を使用することで、ワイヤ入りの高扁平タイヤの切断用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係るタイヤ切断用鋏の全体を示す分解図である。
【図2】図1の刃の部分を正面から見た拡大図である。
【図3】図2の刃を上方から見た側面図である。
【図4】タイヤを切断する工程を示す説明図である。
【図5】タイヤを切断する工程を示す説明図である。
【図6】タイヤを切断する工程を示す説明図である。
【図7】切断されたタイヤを示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
100…タイヤ切断用鋏
1…上刃
2…下刃
3…回転軸
4…把持部
5…切断面
6…ラバーグリップ
7…弾性体
8…突出部
9…刃固定具
10…延長部
11…ネジ
12…ラバーグリップ
T…タイヤ
S…タイヤ側面
U…タイヤ筒状接地面
K…切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の刃と第2の刃とを備え、これらを回転軸において回転自在に連結されており、
前記第1の刃及び第2の刃の後端には、回転軸を中心として刃を回動させることで切断面を開閉させるための把持部をそれぞれ形成しているタイヤ切断用鋏であって、
前記第1の刃は、先端を鋭利に突出させた突出部を形成しており、
前記第1の刃及び第2の刃は、回転軸の方向に切断面を湾曲させていることを特徴とするタイヤ切断用鋏。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ切断用鋏であって、
前記第1の刃及び第2の刃は回転軸を挿通する回転軸穴で、把持部を同一方向に折曲させていることを特徴とするタイヤ切断用鋏。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタイヤ切断用鋏であって、
前記把持部の後端に、把持部を延長するための延長部を連結可能に構成していることを特徴とするタイヤ切断用鋏。
【請求項4】
先端を突出させると共に、切断面を湾曲させたタイヤ切断用鋏を使用して、切断面の折曲方向がタイヤ円周状側面の円周方向と沿うように、タイヤの一方の側面に切り込みを形成する工程と、
この切り込みにタイヤ切断用鋏を挿入し、タイヤ切断用鋏の折曲面に沿ってタイヤの一方の側面を切り取る工程と、
上記と同様の手順によりタイヤの他方の側面を切り取る工程と、
側面を除去したタイヤの筒状接地面の少なくとも一カ所を筒の高さ方向に切断する工程と、
を有するタイヤの切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−149962(P2006−149962A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348814(P2004−348814)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(304000124)
【Fターム(参考)】