説明

タイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法

【課題】より実際の使用状態に近い状況で空気入りタイヤのばね定数を測定することができるタイヤ性能測定システムを提供することにある。
【解決手段】接地面上でタイヤを回転させる試験機と、試験機での試験条件を設定する条件設定部と、タイヤと接地面とを相対的に移動させている状態で、タイヤの周上の少なくとも一部の変形を測定する変形測定部と、変形測定部で検出した変形と、条件設定部で設定された試験条件とに基づいて、タイヤのばね定数を算出するばね定数算出部と、を有することで、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法に関し、さらに詳しくは、タイヤのばね定数を測定するタイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのばね定数を測定するタイヤ性能測定システムとしては、特許文献1に、測定対象タイヤが静的な状態、すなわち非回転状態で、タイヤ周上の1箇所で測定したタイヤに負荷された荷重に対応したたわみ量を測定するシステムが記載されている。また、タイヤを振動させて、タイヤのばね定数を算出する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−129953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の測定システムでは、タイヤを回転させずに測定を行っているため、実際のタイヤ使用状態とは、異なる状態での測定となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、より実際のタイヤ使用状態に近い状態で空気入りタイヤのばね定数を測定することができるタイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤ性能測定システムは、接地面上でタイヤを回転させる試験機と、前記試験機での試験条件を設定する条件設定部と、前記タイヤと前記接地面とを相対的に移動させている状態で、前記タイヤの周上の少なくとも一部の変形を測定する変形測定部と、前記変形測定部で検出した変形と、前記条件設定部で設定された前記試験条件とに基づいて、前記タイヤのばね定数を算出するばね定数算出部と、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記ばね定数算出部は、前記変形測定部で算出されるタイヤの周方向変位量と、前記試験条件から測定される周方向制動力または周方向駆動力とを用いて、周ばね定数を算出することが好ましい。
【0008】
また、前記条件設定部は、前記試験条件として、制動力を変化させる条件を有し、前記ばね定数算出部は、前記周方向制動力または前記周方向駆動力が一定の状態の周ばね定数と、前記制動力が変化している状態での周ばね定数を測定することが好ましい。
【0009】
また、前記条件設定部は、前記試験条件として、前記周方向制動力または前記周方向駆動力を変化させる条件を有し、前記ばね定数算出部は、前記タイヤの制動力の変化に対する前記周方向の変位の変化の発生時間の遅れも算出することが好ましい。
【0010】
また、前記変形測定部は、タイヤの周方向における前記周方向変位量の差分の変化を線形に近似して、接地面での周方向変位を推定することが好ましい。
【0011】
また、前記条件設定部は、前記試験条件として、前記タイヤを前記接地面に対して設定されたスリップ角を有する状態で走行させる条件を設定し、前記ばね定数算出部は、前記変形測定部で算出されるタイヤの横方向変位量と、前記試験条件から測定される横方向力とを用いて、横ばね定数を算出することが好ましい。
【0012】
また、前記条件設定部は、前記試験条件として、前記スリップ角を変化させる条件を有し、前記ばね定数算出部は、前記スリップ角が一定の状態の横ばね定数と、前記スリップ角が変化している状態での横ばね定数を測定することが好ましい。
【0013】
また、前記変形測定部は、タイヤの径方向における前記横方向変位量の差分の変化を線形に近似して、接地面での横方向変位を推定することが好ましい。
【0014】
また、前記変形測定部は、レーザー変位計により、前記タイヤの周上の特定の位置の変化量を測定することが好ましい。
【0015】
また、前記変形測定部は、前記タイヤの周上の同じ位置の画像を異なる方向から同時に撮影する2つ以上の撮影部と、前記撮影部で取得した画像に基づいて、前記タイヤの周上の形状を算出する形状算出部と、前記形状算出部の算出結果に基づいて、前記タイヤの変形を算出する変形算出部と、を有することが好ましい。
【0016】
また、前記形状算出部は、前記画像から前記タイヤの特徴点を特定し、同時に撮影された2つ以上の前記画像の特徴点を対応付けることで、三次元形状を算出することが好ましい。
【0017】
また、前記変形測定部は、前記タイヤの周上に一つ以上添付された解析用格子を、さらに有し、前記撮影部は、前記解析用格子を撮影し、前記形状算出部は、同時に撮影された2つ以上の前記画像の前記解析用格子を対応付けることで、三次元形状を算出することが好ましい。
【0018】
また、前記変形測定部は、前記解析用格子に対応付けられて、前記タイヤの周上に設けられたトリガー用マークと、前記トリガー用マークを検出する検出部と、をさらに有し、前記撮影部は、前記検出部で前記トリガー用マークを検出したら、画像を取得することが好ましい。
【0019】
また、前記変形測定部は、前記解析用格子と、前記トリガー用マークと、を複数有し、前記トリガー用マークは、対応する前記解析用格子に対する周上の位置が同一位置であることが好ましい。
【0020】
また、前記変形測定部は、前記解析用格子をタイヤ周上に4つ以上有することが好ましい。
【0021】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤ性能測定方法は、試験機での試験条件を設定する条件設定ステップと、前記条件設定ステップで設定した前記試験条件に基づいて、接地面上でタイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、前記タイヤ回転ステップで、前記タイヤと前記接地面とを相対的に移動させている状態で、前記タイヤの周上の少なくとも一部の変形を算出する変形測定ステップと、前記変形測定ステップで算出した変形と、前記条件設定部で設定された前記試験条件とに基づいて、前記タイヤのばね定数を算出するばね定数算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0022】
ここで、前記ばね定数算出ステップは、前記変形測定ステップで算出されるタイヤの周方向変位量と、前記試験条件から測定される周方向制動力または周方向駆動力とを用いて、周ばね定数を算出することが好ましい。
【0023】
また、前記条件設定ステップは、前記試験条件として、前記タイヤを前記接地面に対して設定されたスリップ角を有する状態で走行させる条件を設定し、前記ばね定数算出ステップは、前記変形測定ステップで算出されるタイヤの横方向変位量と、前記試験条件から測定される横方向力とを用いて、横ばね定数を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
この発明にかかるタイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法では、タイヤと接地面とを相対的に移動させつつ、具体的には、タイヤを回転させた状態で、ばね定数を測定できる。これにより、より実際の使用状態に近い状態での測定を実現できるため、より実際の使用状態に近い形で空気入りタイヤのばね定数を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明のタイヤ性能測定システムの一実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示すタイヤ性能測定システムのタイヤとカメラとの関係を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示すタイヤ性能測定システムの解析用格子面をタイヤ表面に貼り付けた状態とその解析位置を示す説明図である。
【図4】図4は、図1に示すタイヤ性能測定システムの測定動作の一例を示すフロー図である。
【図5】図5は、測定結果の一例を示すグラフである。
【図6】図6は、タイヤ性能測定システムによる測定動作の他の一例を説明するための説明図である。
【図7−1】図7−1は、測定結果の一例を示すグラフである。
【図7−2】図7−2は、測定結果の一例を示すグラフである。
【図8】図8は、測定結果の一例を示すグラフである。
【図9】図9は、測定結果の一例を示すグラフである。
【図10】図10は、タイヤ性能測定システムの他の一例の概略構成を示す側面図である。
【図11】図11は、測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0027】
ここで、本発明タイヤ性能測定システム及びタイヤ性能測定方法は、タイヤ走行(回転)時の所定条件を入力したときのタイヤ形状の変化の変化を測定することにより、タイヤのばね定数を測定する。以下の実施形態では、タイヤ走行時の周ばね定数(以下、単に「周ばね」ともいう。)を測定する場合として説明する。
【0028】
図1は、本発明のタイヤ性能測定システムの一実施形態の概略構成を示す正面図である。また、図2は、図1に示すタイヤ性能測定システムのタイヤとカメラとの関係を示す斜視図であり、図3は、図1に示すタイヤ性能測定システムの解析用格子面をタイヤ表面に貼り付けた状態とその解析位置を示す説明図である。図1に示すように、タイヤ性能測定システム1は、タイヤ試験機2と、撮像装置3と、処理装置4とを有する。
【0029】
タイヤ試験機2は、タイヤに試験条件を付与する装置である。なお、本実施形態のタイヤ試験機2は、ベルト式タイヤ試験機であるが、これに限定されず種々の試験機、例えば、ドラム式タイヤ試験機も用いることができる。本実施形態のタイヤ試験機2は、支持装置21と、駆動装置22と、を有する。支持装置21は、タイヤ10を回転可能に支持する装置であり、タイヤ10を装着するためのリム211を固定可能な支持機構である。駆動装置22は、タイヤ10に駆動力を付与する装置であり、駆動ローラ221および従動ローラ222と、これらのローラ221、222に掛け渡されるベルト223とを有する。
【0030】
タイヤ試験機2は、支持装置21が、リム211に組み付けられたタイヤ10を回転可能な状態で支持している。また、タイヤ試験機2は、タイヤ10のトレッド面を駆動装置22のベルト223の平面部に押圧することにより、タイヤ10とベルト223とを摩擦接触させる。これにより、タイヤ試験機2は、ベルト223の平面を路面に見立てて、タイヤの接地形状やタイヤの接地圧分布などを再現することができる。また、タイヤ試験機2は、駆動ローラ221を回転させることで、ベルト223を送り、タイヤ10に回転力を付与して、タイヤ10の転動状態を再現する。さらに、タイヤ試験機2は、駆動ローラ221の回転速度、ベルト223に対するタイヤ10の押圧力および傾斜角度などを調整することにより、タイヤ10に付与する回転速度、荷重、スリップ角などの試験条件を種々の条件とすることができる。
【0031】
撮像装置3は、図1及び図2に示すように、一対のカメラ31、31と、トリガー32と、照明用ランプ33とを有する。カメラ31は、タイヤ表面の一部に形成された解析用格子面Sを撮像する撮影手段、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラである。また、一対のカメラ31は、タイヤ10の解析用格子面Sを相互に異なる方向から撮像するように配置される。ここで、タイヤ性能測定システム1は、タイヤ10のサイドウォール部に解析用格子面Sを配置している。一対のカメラ31、31は、図2に示すように、タイヤのサイドウォール部の接地位置(タイヤ10とベルト223との当接位置)の近傍の領域34を、1つの解析用格子面Sを左右方向から同時に撮像できる位置にそれぞれ配置されている。つまり、一対のカメラ31、31は、タイヤ10のサイドウォールに向かい合い、かつ、異なる位置に配置され、タイヤのサイドウォール部の領域34の画像を取得する。
【0032】
トリガー32は、タイヤ10に付されたトリガー用マークMを検出する手段であり、例えば、光学式センサにより構成される。このトリガー32は、周方向の所定位置を検出位置としており、トリガー用マークMが検出位置にあることを検出したら、指示信号を各カメラ31、31に出力する。各カメラ31、31は、トリガー32から指示信号が送られたら、領域34の画像を取得する。
【0033】
照明用ランプ33は、カメラ31の撮像範囲を照らすランプであり、例えば、ハロゲンランプにより構成される。この照明用ランプ33は、常時点灯タイプであっても良いし、フラッシュ点灯タイプであっても良い。
【0034】
ここで、後述するがトリガー用マークMは、解析用格子面Sに対応付けられて、配置されている。このため、タイヤ10は、検出位置にトリガー用マークMがあるとき、対応する解析用格子面Sが、接地位置にある。つまり、トリガー用マークMが検出位置を通過するとき、対応する解析用格子面Sは、接地位置を通過している。したがって、撮像装置3は、回転しているタイヤ10のトリガー用マークMが検出位置を通過したことをトリガー32により検出し、そのタイミングで左右のカメラ31、31により領域34の画像を取得することで、接地位置を通過している解析用格子面Sの画像を取得することができる。また、左右のカメラ31、31で同時に画像を撮影することで、同じ位置にある解析用格子面Sを相互に異なる方向から撮像した画像を取得することができる。
【0035】
このように、撮像装置3は、トリガー32によりトリガー用マークMを検出し、タイヤ10の回転方向における位置を特定することで、タイヤ10の解析用格子面Sが接地位置を通過している状態の画像データを取得することができる。撮影装置3は、各カメラ31、31で撮影し取得した画像データを処理装置4にそれぞれ送る。
【0036】
ここで、タイヤ10の解析用格子面Sは、図3に示すように、タイヤ10のサイドウォール部の表面に、略一定の間隔で黒い正方形が配置されたシートが貼り付けられて構成される。
【0037】
また、タイヤ10には、同一形状を有する3つの解析用格子面Sがサイドウォール部に沿ってタイヤ周方向に配列される。また、これらの解析用格子面Sは、タイヤ回転軸に対して点対称に配置される。また、トリガー用マークMは、サイドウォール部の所定の位置に配置される。このトリガー用マークMは、上述したように、タイヤが回転して解析用格子面Sがタイヤ10の接地位置に来たときに、トリガー32を通過するように配置される。また、3つのトリガー用マークMが3つの解析用格子面Sに対応してそれぞれ設置される。
【0038】
次に、処理装置4は、タイヤ撮影画像の取り込み(本実施形態では、一対のカメラ31、31から取得した画像データ(解析用格子面Sの二次元画像))、タイヤ形状の変化を解析し、解析した結果からタイヤのばね定数を算出する処理を行う装置であり、三次元座標算出部41と、試験結果生成部43と、表示部44とを有する。処理装置4としては、例えば、PC(personal computer)を用いることができる。
【0039】
三次元座標算出部41は、一対のカメラ31、31から取得した2枚の画像を組み合わせることで解析用格子面Sの三次元座標を算出する。なお、2台のCCDカメラの各画像に基づいて三次元座標を算出する方法としては、種々の方法、例えば、位相シフトモアレ法や、フーリエ変換格子法や、デジタル画像相関法を用いることができる。また、三次元座標算出部41は、例えば、和歌山大学システム工学部光メカトロニクス学科光波画像計測研究グループによる研究成果報告書「高精度高速形状変形計測法の研究」(2001年4月発行)に詳細に記載されている方法でも、解析用格子面Sの三次元座標を測定(または算出)することができる。
【0040】
位相シフトモアレ法は、例えば、第4回知能メカトロニクスワークショップ講演論文集p.102-105(1999))に記載されている方法であり、カメラ31、31で取得した解析用格子面Sの画像に基づいて、解析用格子面Sの格子の位相分布を算出し、解析用格子面Sの3次元形状を算出する方法である。なお、解析用格子面Sに形成される被撮像パターン(格子パターン)は、例えば、白色の地に黒色の正方形を略均一に配置する等2色(白黒)の組み合わせによって構成されている。
【0041】
また、フーリエ変換格子法は、文献(「フーリエ変換を用いた応力・歪み分布測定」:非破壊検査第44巻第7号(1995年)」に記載されている方法であり、画像の輝度をフーリエ変換し、画像の格子の位相を求める方法である。また、フーリエ変換格子法を用いる場合も、2台の撮像装置によって撮影した画像を用い、それぞれ測定対象物の格子パターンの空間座標を算出する。以上のようにして、格子パターン上の点の空間座標を得ることができ、各点の3次元位置を算出することができる。
【0042】
また、タイヤ性能測定システム1は、上述した位相シフトモアレ法と、フーリエ変換格子法とを組み合わせて、解析用格子面Sの格子の位相分布、つまり、解析用格子面Sの三次元座標を測定してもよい。具体的には、解析用格子面Sの被撮像パターン(格子パターン)を、白黒に加えて、3原色および3原色を混色して得た色を用いた形状とする。つまり、解析用格子面Sの被撮像パターン複数色の格子を重ねた形状とし、夫々の色について格子を検出するようにしてもよい。なお、この場合は、各格子の位置は、フーリエ変換格子法により特定し、位相シフトモアレ法により特定した格子の位置から2次元形状を算出すればよい。これにより、複数の格子を検出することができ、白黒で構成されたパターンのみから位置を検出する場合よりも高い精度かつ高精細に3次元座標を測定することができる。
【0043】
また、位相シフトモアレ法を用いる場合は、解析用格子面Sに格子を用いる必要があるが、他の方法で3次元座標を算出する場合は、必ずしも解析用格子面Sに格子を設けなくてもよい。つまり、解析用の対象領域を解析用格子面Sにする必要はない。例えば、デジタル画像相関法を用いる場合は、対象領域の特徴点(タイヤ10上の位置を特定する点)を特定することができればよく、格子形状である必要はない。例えば、タイヤ10の表面とは異なる色の塗料をスプレーで吹きつけ、スプレーの塗料が分散してタイヤ10の表面に付着した状態とし、その塗料の位置を特徴点とすることもできる。また、タイヤ性能測定システム1は、タイヤ10の固有の形状、例えば、サイドウォールの凹凸を特徴点として、タイヤの各位置の三次元座標を測定することもできる。
【0044】
試験結果算出部43は、この解析用格子面Sの基準状態の三次元座標と測定条件を付加した状態の三次元座標とを組み合わせることでタイヤ変形を算出する。試験結果生成部43は、さらに、タイヤ試験機2から取得した試験結果の横力や制動力に関するデータと、算出したタイヤ10の変形とに基づいて、タイヤ10のばね定数を算出する。タイヤ10のばね定数としては、種々のばね定数を算出することができる。また、試験結果生成部43は、タイヤ10に所定条件を入力したときの過渡的な変化に対応したばね定数や、定常状態のばね定数を算出することができる。表示部44は、例えば、PCのモニタであり、試験条件や試験結果などの必要な情報を表示する。
【0045】
次に、タイヤ性能測定方法の一例として、タイヤ性能測定システム1を用いたタイヤ性能測定方法を説明する。ここで、図4は、図1に示すタイヤ性能測定システムの測定動作の一例を示すフロー図である。この例では、静止状態で押圧したタイヤの形状を基準として測定条件下でのタイヤの変形を算出している。この基準をどの状態とするかは、任意であり、インフレートした状態を基準としてもよいし、駆動力がかかっていないで回転している状態を基準としてもよい。
【0046】
まず、タイヤ性能測定システム1は、ステップS12として、基準状態でのタイヤ10の解析用格子面Sを撮像する。ここで基準状態とは、タイヤ10が、規定内圧が付与され、タイヤ試験機2の支持装置21(リム211)に装着され、かつ、支持装置21により駆動装置22のベルト223に押圧されて、規定荷重が付与されている状態である。また、基本状態のタイヤ10は、停止した状態である。つまり、基本状態とは、測定と同様の圧力でタイヤ10をベルト223に押圧した状態であり、変形を算出する際の基準にする座標を測定する状態である。
【0047】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS12で解析用格子面Sを撮像したら、ステップS14として、タイヤ10に駆動力を付与し、タイヤ10の回転を開始する。具体的には、タイヤ性能測定システム1は、駆動装置22によりベルト223を回転させることで、ベルト223に押圧されているタイヤ10を回転させる。ここで、本実施形態では、タイヤ性能測定システム1は、タイヤの回転を開始させてから、タイヤの回転速度を所定の速度(例えば、100[km/h])まで徐々に上昇させる。また、本実施形態では、タイヤ10のスリップ角を0に設定している。これにより、タイヤ性能測定システム1は、タイヤ10が直線路を一定速度で走行している状態(直線走行状態)となる。
【0048】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS14でタイヤの回転を開始させたら、ステップS16として、所定の撮像位置にて、測定条件下でのタイヤ10の解析用格子面Sの撮影(撮像)が開始する。具体的には、タイヤ性能測定システム1は、ステップS16として、回転しているタイヤ10の解析用格子面Sがタイヤ接地位置に来たときに、一対のカメラ31、31により、相互に異なる方向から解析用格子面Sを同時に撮像する。つまり、異なる2方向から同時に、接地位置を通過する解析用格子面Sの画像を取得する。また、タイヤ性能測定システム1は、タイヤ表面の撮像を、連続的に行う。具体的には、上述したように、サイドウォール部に沿ってタイヤ周方向に所定間隔を隔てて配置された3つの解析用格子面Sのそれぞれがタイヤ接地位置を通過する毎に撮像を行う。また、各カメラ31、31は、撮像して取得した画像データを処理装置4に順次送る。タイヤ性能測定システム1は、このようにして、接地位置におけるタイヤ表面の画像データ(二次元画像)を連続的に取得する。なお、タイヤ性能測定システム1は、ステップS14とステップS16との順序を、同時にしても逆にしてもよい。つまり、タイヤ10の解析用格子面Sの撮像を開始してから、タイヤ10の回転を開始させてもよい。
【0049】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS16で所定条件下での撮影を行ったら、ステップS18として撮影を終了する。つまり、タイヤ性能測定システム1は、設定した条件での撮影が完了したら、カメラ31、31による撮影を終了する。また、タイヤ性能測定システム1は、必要に応じて、駆動装置22の駆動を停止し、タイヤの回転を停止させる。
【0050】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS18で撮影を終了したら、ステップS20として、各カメラ31、31から取得された解析用格子面Sの二次元画像に基づいて、解析用格子面Sの三次元座標を算出する。具体的には、タイヤ性能測定システム1の処理装置4の三次元座標算出部41が、ステップS12で取得した二次元画像を組み合わせて、基準状態での解析用格子面Sの各測定格子の三次元座標を算出する。また、三次元座標算出部41が、ステップS16からステップS18までの間に一対のカメラ31、31で取得した測定条件下での解析用格子面Sの二次元画像を組み合わせて、測定条件下での解析用格子面Sの各測定格子の三次元座標を算出する。なお、ステップS20の三次元座標の算出は、ステップS12からステップS18までの処理と平行に行ってもよい。つまり、ステップS12で画像を取得したら、その画像の解析を開始し、基準状態での解析用格子面Sの各測定格子の三次元座標を算出してもよい。
【0051】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS20で、各状態での解析用格子面Sの三次元座標を算出したら、ステップS22として、算出した結果に基づいて、タイヤ10の変形を算出する。具体的には、処理装置4の試験結果生成部43は、基準状態での各測定格子の三次元座標と測定条件下での各測定格子の三次元座標とを対比することにより、タイヤ10の変形を算出する。
【0052】
タイヤ性能測定システム1は、ステップS22で基準状態での各測定格子の三次元座標と測定条件下での各測定格子の三次元座標を算出し、タイヤ変形を算出したら、ステップS24として、ばね定数を算出する。具体的には、処理装置4の試験結果生成部43は、三次元座標算出部41により、ステップS22で算出した基準状態での各測定格子の三次元座標と測定条件下での各測定格子の三次元座標の算出結果を受け取り、タイヤ試験機2から試験結果の横力や制動力情報を受け取る。ここで、タイヤ変形の算出結果と試験条件の時間変化とは、同じ時間軸に対応付けられたデータとなっている。つまり、どの試験条件のときにタイヤ変形がどのような状態であったかを対応付け可能な状態となっている。試験結果生成部43は、試験結果の横力や制動力情報とタイヤ変形との関係に基づいて、タイヤのばね定数を算出する。タイヤ性能測定システム1は、タイヤのばね定数を算出したら、算出結果を表示部44に表示させて、処理を終了する。
【0053】
このように、タイヤ性能測定システム1(タイヤ性能測定方法)は、タイヤ表面にタイヤ周方向に沿って配列された複数の解析用格子面Sを、複数のカメラ31、31により相互に異なる方向から同時に撮像する。そして、タイヤ性能測定システム1は、処理装置4により、この画像データに基づいて解析用格子面Sの三次元座標を算出し、この三次元座標に基づいてタイヤ変形量を測定(算出)する。さらに、タイヤ性能測定システム1は、処理装置4により、そのタイヤ変形量の算出結果と、試験結果の横力や制動力情報とに基づいて、対象のばね定数を算出する。
【0054】
このように、タイヤ性能測定システム1は、解析用格子面Sの画像を取得し、その取得に基づいて、変形量を算出することで、回転している状態のタイヤ変形を測定することができる。このようにタイヤの変形を測定し、かつ、そのときの試験結果の横力や制動力情報を対応付けることで、タイヤが回転している状態でのタイヤのばね定数を算出することができる。
【0055】
このように、回転している状態のタイヤのばね定数を算出できることで、タイヤの性能をより適切に測定することができる。つまり、タイヤが静止した状態で算出したタイヤのばね定数よりも、実際の使用状態により近い状態でタイヤのばね定数を算出することができる。このように、より実際の使用状態に近い状態で測定、算出されたタイヤのばね定数を用いることで、タイヤ設計においてより有効な情報を得ることが可能となる。
【0056】
以下、図5を用いて、周ばね定数の算出に用いる測定値について説明する。図5は、測定結果の一例を示すグラフである。ここで、図5は、横軸が時間[秒](time[sec])であり、縦軸が制動力[N]と変位量[mm]である。なお、本実施形態では、タイヤの解析用格子面Sの特定の点の周方向の変位量(基準位置に対する変位量)を、X変位として各時間(測定時間)について算出した。なお、変位量は、基準状態に対する変位量であり、リム方向の端部の基準点が接地位置の直上を通過した時の、接地位置の直上と特定の点の位置との距離である。また、各測定時間にタイヤが発生している制動力も測定した。また、本測定では、制動力を徐々に変化させて一定とする場合について測定した。
【0057】
以上のようにして測定した結果、図5に示すように、制動力と変位とは、ほぼ比例関係で変化することがわかる。また、制動力の発生開始時に対して、変位の変化は、一定の時間遅れtaが生じることがわかる。なお、図5に示す時間0.2秒から時間1秒までの間のように、過渡状態の周ばね定数は、(過渡状態の制動力の時間変化[N/sec])/(過渡状態の周方向変位量の時間変化[mm/sec])で算出することができる。また、図5に示す時間1秒以降のように、定常状態の周ばね定数は、(定常状態の制動力[N])/(定常状態の周方向変位量[mm])で算出することができる。
【0058】
以上のように、タイヤ性能測定システム1は、スリップ率を種々の徐々に変化させて一定とする形で変化させることで、定常状態の周ばね定数に加え、過渡状態の周ばね定数も測定することができる。つまり、タイヤ性能測定システム1は、制動力や駆動力が一定の状態での周ばね定数や、変化している状態の周ばね定数を測定、算出することができる。
【0059】
また、タイヤ性能測定システム1のように、カメラ31を用いてタイヤ表面の画像(静止画)を撮像することで、例えば、高速度ビデオカメラを用いてタイヤ表面の映像を撮影する構成と比較して、安価なカメラ(例えば、CCDカメラ)を用いることができる。これにより、タイヤ性能測定システム1を安価にすることができる。また、静止画像データに基づいてタイヤ形状の変化を測定するので、動画データに基づいてタイヤ形状の変化を測定する構成と比較して、長時間の測定試験が可能となる。
【0060】
また、本実施形態のように、タイヤに複数の解析用格子面Sを設けることにより、一度により多くの位置のタイヤの情報を取得することができる。なお、タイヤに設ける解析用格子面Sの数は特に限定されない。
【0061】
また、複数の解析用格子面Sは、タイヤ周方向に対して等間隔に配置することが好ましい。複数の解析用格子面Sの配置間隔をほぼ等間隔とすることで、タイヤ回転時にて、解析用格子面Sが所定時間毎に撮像位置を通過するので、各解析用格子面Sの撮像時刻の間隔を略一定にすることができる。
【0062】
また、解析用格子面Sは、4つ以上形成することが好ましい。解析用格子の数を多くすることで、より正確な測定を行うことができる。例えば、120[km/h]での走行時には、タイヤ10が約0.8[s]毎に一回転する。このとき、タイヤ周上に単一の解析用格子面のみを配置する構成では、解析用格子面Sの撮像時刻の間隔が約0.8[s]となる。これに対して、4つ以上の解析用格子面Sをタイヤ周方向に等間隔で配置する構成では、解析用格子面Sの撮像時刻の間隔が約0.2[s]となる。例えば、タイヤ10にばね定数の過渡的な変化の測定では、かかる約0.2[s]という間隔にて解析用格子面Sの撮像が行われることにより、より正確なタイヤの挙動解析が可能となる。
【0063】
なお、上記に限らず、このタイヤ性能測定システム1では、タイヤ周方向の全周に渡って解析用格子面Sを配置しても良い。例えば、単一かつ環状構造を有する解析用格子面Sあるいは円弧状かつ長尺な解析用格子面Sが、タイヤ回転軸を中心としてサイドウォール部の全周に渡って配置されても良い。かかる構成では、タイヤ回転時にて解析用格子面Sが撮像位置を略エンドレスに通過する。したがって、この解析用格子面Sを一対のカメラ31、31が連続的に撮像することより、タイヤ接地位置の画像データを連続的に取得できる利点がある。
【0064】
なお、解析用格子面がタイヤ全周に渡って延在する構成とした場合、本実施形態のように、分割された複数の解析用格子面Sがタイヤ周方向に配置され、また、各解析用格子面Sが同一形状かつカメラ31の撮像範囲内に収まる大きさを有する構成とした場合と比較して、解析用格子面Sの画像処理を簡単にすることができる。すなわち、解析用格子面Sの画像処理にあたり、解析用格子面Sの全体を画像処理すべき範囲として指定できる点で好ましい。なお、この場合は、解析精度を確保するためには現状のCCDカメラの画素数(30万〜100万画素)の数十倍の画素数のカメラが必要となる。
【0065】
また、このタイヤ性能測定システム1は、トリガー32を設けることで、タイヤ10の回転とともに変位する解析用格子面Sを、各カメラ31、31が所定の撮像位置にて適正に撮像できる。これにより、タイヤ形状の変化の測定精度を向上させることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、タイヤの周ばね定数を測定する場合を説明したが、タイヤ性能測定システム1は、タイヤの周ばね定数以外のばね定数も測定することができる。なお、いずれのばね定数もタイヤ性能測定システム1を用いることで、タイヤを回転させた状態で測定することができる。
【0067】
以下、図6から図8を用いて、タイヤ回転時にベルト(路面)に対してタイヤ10がスリップ角を有する場合、つまり、直進走行ではなく、コーナリング走行時に発生するタイヤの横ばね定数を算出する場合について説明する。ここで、図6は、タイヤ性能測定システムによる測定動作の他の一例を説明するための説明図である。図7−1、図7−2及び図8は、それぞれ、測定結果の一例を示すグラフである。タイヤ性能測定システム1は、タイヤの横ばね定数を算出する場合、図6に示すように、ベルト223の移動方向に対して、タイヤ10を所定角度θ傾ける。なお、タイヤ性能測定システム1は、支持装置21による保持角度を矢印方向に変化させることで、ベルト223の移動方向に対して、タイヤ10を傾けることができる。ここで、所定角度θは、スリップ角となる。
【0068】
タイヤ性能測定システム1は、図6に示すように、タイヤ10が所定角度θのスリップ角となる状態で、タイヤを回転させつつ、上述と同様に解析用格子Sの形状を測定することで、タイヤの横ばね定数を算出することができる。
【0069】
具体的には、タイヤ性能測定システム1は、上述した測定方法と同様に、試験条件に基づいてタイヤを回転させつつ、タイヤに設けた解析用格子面Sの画像を撮影する。タイヤ性能測定システム1は、解析用格子面Sの画像を解析することで、各試験条件の場合について、回転しているタイヤの形状(主としてサイドウォールの形状)を測定する。
【0070】
なお、タイヤの横ばね定数を測定する場合は、直進走行状態とした後、タイヤ10の角度を変化させて、所定のスリップ角θで走行している状態とする、試験条件に設定することが好ましい。このように、直進走行状態から、所定のスリップ角θで走行している状態とすることで、タイヤ10が直線走行状態からコーナリング走行状態に入ったときのタイヤ10の転動状態を再現することができる。
【0071】
タイヤ性能測定システム1は、以上のようにして、各試験条件の場合について、解析用格子面Sの画像を取得し、解析することで、図7−1に示すように、回転しているタイヤの形状(主としてサイドウォールの形状)を測定することができる。ここで、図7−1は、直進時(直線走行時)のタイヤの形状と、コーナリング時(コーナリング走行時、スリップ角1°)のタイヤの形状とを示している。なお、図7−1は、縦軸がタイヤ径方向の位置[mm]であり、横軸がタイヤ幅方向の位置[mm]である。また、図7−1は、タイヤの中央から、接地面(ベルト)に垂線に平行な断面における位置である。タイヤ性能測定システム1は、図7−1に示すように、測定を行うことで、タイヤの変形を測定することができる。また、図7−1で示す測定結果に基づいて、タイヤの各位置において、直進時と、コーナリング時とのタイヤの移動量を算出する。算出結果を図7−2に示す。ここで、図7−2は、縦軸がタイヤ径方向の位置[mm]であり、横軸が幅方向移動量[mm]である。図7−2に示すように、タイヤの横方向移動量は、略比例関係(線形)となることがわかる。そこで、タイヤ性能測定システム1は、この関係を利用して、カメラ31では、撮影できない接地位置におけるタイヤの移動量を算出する。なお、タイヤの移動量が、比例関係(線形)であることは、本発明者らが初めて知見したことである。
【0072】
タイヤ性能測定システム1は、以上のようにして、各画像から、接地位置におけるタイヤの移動量を横方向変位量として算出(測定)する。また、タイヤ性能測定システム1は、試験条件に基づいてタイヤに発生する横力も測定することができる。ここで、図8に測定、算出した、横力と横方向変位の時間変位を示す。ここで、図8は、横軸が時間[秒](time[sec])であり、縦軸が横力[N]と横方向変位[mm]である。また、図8に示すグラフでは、時間0.4secと0.5secとの間でタイヤのスリップ角の変化を開始(SA変化開始)させた。
【0073】
タイヤ性能測定システム1は、図8に示すように、直線走行時、コーナリング走行時に加え、スリップ角θが変化している過渡状態の横力と横方向変位との関係を測定、算出することができる。また、タイヤ性能測定システム1は、それぞれの場合について、横力と横方向変位との関係を測定、算出できることで、タイヤの横ばね定数を算出することができる。なお、過度状態の横ばね定数は、(過度状態の横力の時間変化[N/sec])/(過渡状態の横方向変位量の時間変化[mm/sec])で算出することができる。また、定常状態の横ばね定数は、(定常状態の横力[N])/(定常状態の横方向変位[mm])で算出することができる。
【0074】
以上のように、タイヤ性能測定システム1は、回転させたタイヤの表面形状から、横ばね定数を算出できるため、上述した周ばね定数と同様により実際の条件に近い状態で、タイヤの横ばね定数を算出することができる。これにより、実際の使用状態により近い状態でのばね定数を算出することができる。
【0075】
次に、タイヤ性能測定システム1を用いて定常状態と、過度状態のそれぞれの横ばね定数を測定した。また、比較のために、静的な測定方法でも、横ばね定数を測定した。なお、静的な測定方法では、タイヤを回転させずベルトに接地した状態で、タイヤとベルトとを相対的に移動させてスリップ角を発生させ、この場合に、タイヤに生じる横力と変位を測定、算出し、横ばね定数を算出した。測定した結果を図9に示す。ここで、図9は、測定結果の一例を示すグラフである。なお、本測定例では、4つのタイヤについて、それぞれ測定を行った。また、測定には、「195/65R15 91S」のタイヤを用いた。また、図9では、静的な測定方法で横ばね定数を測定した結果を静的、タイヤ性能測定システム1を用いて定常状態の横ばね定数を測定した結果を動的(定常)と、タイヤ性能測定システム1を用いて過度状態の横ばね定数を測定した結果を動的(過度)として示す。
【0076】
図9に示すように、静的状態と動的(定常)とを比較すると、一定以上の異なる値が算出されている。なお、タイヤ性能測定システム1は、より実際の走行状態に近い条件で測定しているため、実車でのフィーリング評価に近い横ばね定数が算出できていると考えられる。また、静的状態と動的(過度)とを比較すると、検出値が大きく異なることがわかる。このように、タイヤ性能測定システム1は、従来の測定では、算出することができない過渡状態、つまり、コーナリング時にスリップ角が変化している間の横ばね定数を算出することができる。また、動的(過度)は、静的状態及び動的(定常)とは、値が異なるため、推定することが困難であり、タイヤ性能測定システム1によって、初めて測定可能となる特性値である。
【0077】
なお、この実施の形態は、測定対象がタイヤ回転時(スリップ角の入力時)におけるタイヤ形状の変化であるため、「スリップ角を付与しない状態での回転時(直進時)」を基準状態とし、「スリップ角を付与した状態でのタイヤ回転時」を測定条件下での走行状態として、タイヤの変形を算出した。タイヤ性能測定システム1は、種々の状態を基準とすることができ、「タイヤインフレート時」を基準状態とし、「スリップ角を付与した状態でのタイヤ回転時」を測定条件下での走行状態として、タイヤのばね定数を測定してもよい。
【0078】
ここで、上記実施形態では、いずれもカメラで画像を取得し、その画像を解析してタイヤの形状を測定したが、本発明はこれに限定されない。以下、図10及び図11を用いて、タイヤの形状の測定方法の他の例を説明する。ここで、図10は、タイヤ性能測定システムの他の一例の概略構成を示す側面図である。図11は、測定結果の一例を示すグラフである。
【0079】
図10に示すタイヤ性能測定システムは、タイヤの形状を測定する測定機構として、複数のレーザー変位計104a、104b、104c、104d、104eを有する。ここで、レーザー変位計104a、104b、104c、104d、104eは、それぞれ、タイヤの102の測定位置110a、110b、110c、110d、110eとの距離を算出し、その算出結果を上述した処理装置4に送る。なお、測定位置110a、110b、110c、110d、110eは、タイヤの中心から接地面(ベルト)に垂線を下ろした線上の位置である。また各レーザー変位計は、一定間隔離れた位置のタイヤの位置を測定する。このように、レーザー変位計によりタイヤとの距離を測定し、タイヤの位置を検出することで、図11に示すように、タイヤの位置を測定することができる。ここで、図11は、測定結果を示す図であり、点112a、112b、112c、112d、112eは、それぞれ測定位置110a、110b、110c、110d、110eに対応している。
【0080】
このように、レーザー変位計を用いて、タイヤの位置を測定する場合も、上述と同様に、測定結果と、試験条件とを対応付け、また、タイヤの位置の変化を算出することで、ばね定数、特に横ばね定数を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、この発明にかかるタイヤ性能測定システムおよびタイヤ性能測定方法は、タイヤのばね定数の測定に用いることに適しており、特に、走行時のタイヤのばね定数を測定する場合に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 タイヤ性能測定システム
2 タイヤ試験機
21 支持装置
211 リム
22 駆動装置
3 撮像装置
31 カメラ
32 トリガー
33 照明用ランプ
4 処理装置
41 三次元座標算出部
43 試験結果生成部
44 表示部
10 タイヤ
221 駆動ローラ
222 従動ローラ
223 ベルト
M トリガー用マーク
S 解析用格子面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面上でタイヤを回転させる試験機と、
前記試験機での試験条件を設定する条件設定部と、
前記タイヤと前記接地面とを相対的に移動させている状態で、前記タイヤの周上の少なくとも一部の変形を測定する変形測定部と、
前記変形測定部で検出した変形と、前記条件設定部で設定された前記試験条件とに基づいて、前記タイヤのばね定数を算出するばね定数算出部と、を有することを特徴とするタイヤ性能測定システム。
【請求項2】
前記ばね定数算出部は、前記変形測定部で算出されるタイヤの周方向変位量と、前記試験条件から測定される周方向制動力または周方向駆動力とを用いて、周ばね定数を算出することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項3】
前記条件設定部は、前記試験条件として、制動力を変化させる条件を有し、
前記ばね定数算出部は、前記制動力が一定の状態の周ばね定数と、前記周方向制動力または前記周方向駆動力が変化している状態での周ばね定数を測定することを特徴とする請求項2に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項4】
前記条件設定部は、前記試験条件として、前記周方向制動力または前記周方向駆動力を変化させる条件を有し、
前記ばね定数算出部は、前記タイヤの前記周方向制動力または前記周方向駆動力の変化に対する周方向の変位の変化の発生時間の遅れも算出することを特徴とする請求項2または3に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項5】
前記変形測定部は、タイヤの周方向における前記周方向変位量の差分の変化を線形に近似して、接地面での周方向変位を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項6】
前記条件設定部は、前記試験条件として、前記タイヤを前記接地面に対して設定されたスリップ角を有する状態で走行させる条件を設定し、
前記ばね定数算出部は、前記変形測定部で算出されるタイヤの横方向変位量と、前記試験条件から測定される横方向力とを用いて、横ばね定数を算出することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項7】
前記条件設定部は、前記試験条件として、前記スリップ角を変化させる条件を有し、
前記ばね定数算出部は、前記スリップ角が一定の状態の横ばね定数と、前記スリップ角が変化している状態での横ばね定数を測定することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項8】
前記変形測定部は、タイヤの径方向における前記横方向変位量の差分の変化を線形に近似して、接地面での横方向変位を推定することを特徴とする請求項6または7に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項9】
前記変形測定部は、レーザー変位計により、前記タイヤの周上の特定の位置の変化量を測定することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項10】
前記変形測定部は、前記タイヤの周上の同じ位置の画像を異なる方向から同時に撮影する2つ以上の撮影部と、
前記撮影部で取得した画像に基づいて、前記タイヤの周上の形状を算出する形状算出部と、
前記形状算出部の算出結果に基づいて、前記タイヤの変形を算出する変形算出部と、を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項11】
前記形状算出部は、前記画像から前記タイヤの特徴点を特定し、同時に撮影された2つ以上の前記画像の特徴点を対応付けることで、三次元形状を算出することを特徴とする請求項10に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項12】
前記変形測定部は、前記タイヤの周上に一つ以上添付された解析用格子を、さらに有し、
前記撮影部は、前記解析用格子を撮影し、
前記形状算出部は、同時に撮影された2つ以上の前記画像の前記解析用格子を対応付けることで、三次元形状を算出することを特徴とする請求項10に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項13】
前記変形測定部は、前記解析用格子に対応付けられて、前記タイヤの周上に設けられたトリガー用マークと、
前記トリガー用マークを検出する検出部と、をさらに有し、
前記撮影部は、前記検出部で前記トリガー用マークを検出したら、画像を取得することを特徴とする請求項12に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項14】
前記変形測定部は、前記解析用格子と、前記トリガー用マークと、を複数有し、
前記トリガー用マークは、対応する前記解析用格子に対する周上の位置が同一位置であることを特徴とする請求項13に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項15】
前記変形測定部は、前記解析用格子をタイヤ周上に4つ以上有することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載のタイヤ性能測定システム。
【請求項16】
試験機での試験条件を設定する条件設定ステップと、
前記条件設定ステップで設定した前記試験条件に基づいて、接地面上でタイヤを回転させるタイヤ回転ステップと、
前記タイヤ回転ステップで、前記タイヤと前記接地面とを相対的に移動させている状態で、前記タイヤの周上の少なくとも一部の変形を算出する変形測定ステップと、
前記変形測定ステップで算出した変形と、前記条件設定部で設定された前記試験条件とに基づいて、前記タイヤのばね定数を算出するばね定数算出ステップと、を有することを特徴とするタイヤ性能測定方法。
【請求項17】
前記ばね定数算出ステップは、前記変形測定ステップで測定されるタイヤの周方向変位量と、前記試験条件から算出される周方向制動力または周方向駆動力とを用いて、周ばね定数を算出することを特徴とする請求項16に記載のタイヤ性能測定方法。
【請求項18】
前記条件設定ステップは、前記試験条件として、前記タイヤを前記接地面に対して設定されたスリップ角を有する状態で走行させる条件を設定し、
前記ばね定数算出ステップは、前記変形測定ステップで測定されるタイヤの横方向変位量と、前記試験条件から算出される横方向力とを用いて、横ばね定数を算出することを特徴とする請求項16に記載のタイヤ性能測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−237258(P2011−237258A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108455(P2010−108455)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)