説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、破壊特性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】軟化点が−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂と、軟化点が−20〜20℃の液状ロジン系樹脂とを含み、ゴム成分100質量部に対して、液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量が3〜40質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減(転がり抵抗性能を向上)させることにより、車の低燃費化が行なわれてきた。近年、車の低燃費化への要求がますます強くなってきており、タイヤ部材の中でもタイヤにおける占有比率の高いトレッドを製造するためのゴム組成物に対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。
【0003】
ゴム組成物の低燃費性を改善する方法として、補強用充填剤を減量する方法が知られている。しかし、補強用充填剤を減量すると、ゴム組成物の破壊特性が悪化する傾向があった。そのため、摩耗外観不良(チッピング)やトレッド溝底のクラック(TGC)などが発生するおそれがあった。したがって、低燃費性と破壊特性を両立させたゴム組成物の開発が望まれていた。
【0004】
特許文献1には、軟化点が125℃以上、酸価が20以下であるロジンエステル樹脂をゴム組成物に配合することによりグリップ性能を向上できることが開示されている。しかし、低燃費性と破壊特性をバランス良く改善する点について、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−248056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、破壊特性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軟化点が−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂と、軟化点が−20〜20℃の液状ロジン系樹脂とを含み、ゴム成分100質量部に対して、液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量が3〜40質量部であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0008】
上記液状ロジン系樹脂の酸価が10〜100mgKOH/g、水酸基価が50〜150mgKOH/gであることが好ましい。
【0009】
上記液状ロジン系樹脂が、ロジンエステル樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、上記液状クマロンインデン樹脂を8質量部以上、上記液状ロジン系樹脂を8質量部以上含むことが好ましい。
【0011】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定の軟化点を有する液状クマロンインデン樹脂と、特定の軟化点を有する液状ロジン系樹脂とを含み、ゴム成分に対して、液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量が特定量であるタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に使用することにより、低燃費性、破壊特性をバランス良く改善された空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定の軟化点を有する液状クマロンインデン樹脂(以下、単に液状クマロンインデン樹脂ともいう)と、特定の軟化点を有する液状ロジン系樹脂(以下、単に液状ロジン系樹脂ともいう)とを含み、ゴム成分に対して、液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量が特定量である。液状クマロンインデン樹脂と、液状ロジン系樹脂とを併用し、これらの合計含有量を特定量とすることで、低燃費性、破壊特性がバランス良く改善される。従って、優れた低燃費性を有しつつ、摩耗外観不良(チッピング)やトレッド溝底のクラック(TGC)などの発生を抑制できる。
【0015】
本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、破壊特性がバランス良く改善されるという理由から、NR、SBR、BRが好ましく、NR、SBR、BRを併用することがより好ましい。
【0016】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0017】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。5質量%未満であると、破壊特性が低下する傾向がある。該NRの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。20質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0018】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、破壊特性に優れるという理由から、シス含量は95質量%以上が好ましい。
【0019】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、破壊特性が低下する傾向がある。該BRの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。30質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0020】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、低燃費性の改善効果が大きいという点から、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された変性SBRが好ましい。このような変性SBRとしては、旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレンE15等を使用することができる。
【0021】
SBRのビニル含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。ビニル含量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該ビニル含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。ビニル含量が90質量%を超えると、破壊特性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0022】
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。スチレン含量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。スチレン含量が90質量%を超えると、発熱性が著しく上昇し、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、SBRのスチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
【0023】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。50質量%未満であると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。SBRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。80質量%を超えると、破壊特性が低下する傾向がある。
【0024】
本発明のゴム組成物は、特定の軟化点を有する液状クマロンインデン樹脂と、特定の軟化点を有する液状ロジン系樹脂とを併用する。液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂をこれらの合計含有量が特定量となるように、オイルの代替品として用いることで、低燃費性、破壊特性をバランス良く改善できる。この効果は、液状クマロンインデン樹脂、液状ロジン系樹脂のゴム成分との相溶性の高さと、液状クマロンインデン樹脂、液状ロジン系樹脂の粘度特性に起因すると考えられる。
【0025】
本発明では、液状クマロンインデン樹脂を配合することにより、破壊特性を向上できる。
本発明において、液状クマロンインデン樹脂とは液体状態のクマロンインデン樹脂であり、具体的には以下の軟化点を有するクマロンインデン樹脂を意味する。なお、本発明において、クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂を意味し、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0026】
液状クマロンインデン樹脂の軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、液状クマロンインデン樹脂の粘度が低くなり過ぎて、ゴム成分との混練性が悪化する事で、ゴム組成物中での分散性が低下し、破壊エネルギー(破壊特性)が悪化する。また、上記液状クマロンインデン樹脂の軟化点は、20℃以下、好ましくは18℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を越えると、充分な低燃費性が得られない。
なお、液状クマロンインデン樹脂の軟化点とは、JIS K 6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0027】
液状クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。4質量部未満では、破壊特性を充分に改善できないおそれがある。また、液状クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、破壊特性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0028】
本発明では、液状ロジン系樹脂を配合することにより、低燃費性を向上できる。
本発明において、液状ロジン系樹脂とは液体状態のロジン系樹脂であり、具体的には以下の軟化点を有するロジン系樹脂を意味する。
【0029】
なお、本発明において、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジン;原料ロジンの不均化物;原料ロジンを水素添加処理した安定化ロジン;重合ロジン等のロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性物類、不飽和酸(マレイン酸等)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類等の各種公知のものを使用できる。なかでも、低燃費性と破壊特性の両立ができるという理由から、ロジンエステル樹脂が好ましい。なお、ロジンエステル樹脂は、上記ロジン類とポリオール(グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール)のエステル化反応により生成される。また、エステル化反応は、公知の方法、例えば、不活性ガスの雰囲気下で、ロジン類とポリオールを200〜300℃に加熱し、生成した水を系外に除去することにより行うことができる。
【0030】
液状ロジン系樹脂の軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、液状ロジン系樹脂の粘度が低くなり過ぎて、ゴム成分との混練性が悪化する事で、ゴム組成物中での分散性が低下し、破壊エネルギー(破壊特性)が悪化する。また、上記液状ロジン系樹脂の軟化点は、20℃以下、好ましくは18℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を越えると、充分な低燃費性が得られない。
なお、液状ロジン系樹脂の軟化点とは、JIS K 5902に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0031】
液状ロジン系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上である。上記酸価は、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは50以下である。酸価が上記範囲内であると、低燃費性をより向上できる。
本発明において、酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
【0032】
液状ロジン系樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は、好ましくは50以上、より好ましくは60以上である。
上記水酸基価は、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。水酸基価が上記範囲内であると、低燃費性をより向上できる。
本発明において、水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
【0033】
液状ロジン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。4質量部未満では、低燃費性を充分に改善できないおそれがある。また、液状ロジン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、破壊特性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0034】
液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、3質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。3質量部未満では、低燃費性、破壊特性を充分に改善できない。また、上記合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以下、好ましくは35質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。40質量部を超えると、破壊特性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0035】
本発明では、シリカを使用することが好ましい。シリカを配合することにより、良好な低発熱性及び高いゴム強度が得られ、低燃費性及び破壊特性を両立できる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0036】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは40m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。40m/g未満では、破壊特性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。220m/gを超えると、低燃費性、混練加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0037】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは45質量部以上である。10質量部未満では、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。また、シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは85質量部以下である。150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、破壊特性が悪化する傾向がある。
【0038】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0039】
シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、破壊特性が大きく低下する傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊特性の向上や転がり抵抗低減(低燃費性の向上)などの効果が得られない傾向がある。
【0040】
上記ゴム組成物には、カーボンブラックを配合してもよい。これにより、より良好な補強性が得られ、破壊特性をより改善できる。カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを用いることができる。
【0041】
カーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは70m/g以上である。NSAが30m/g未満では、充分な補強性が得られず、破壊特性を充分に向上できないおそれがある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは150m/g以下である。NSAが250m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が非常に高くなって混練加工性が悪化したり、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217、7頁のA法によって求められる。
【0042】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、充分な補強性が得られず、破壊特性を充分に向上できないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。60質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0043】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0044】
上記液状クマロンインデン樹脂及び上記液状ロジン系樹脂は、ゴム組成物を軟化する作用を有している。したがって、上記液状クマロンインデン樹脂及び上記液状ロジン系樹脂を用いることで、ゴム組成物中のオイルの含有量を少なくして、低燃費性をより改善できる。
【0045】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0046】
本発明のゴム組成物は、タイヤに使用される各部材に使用することができ、なかでも、トレッド(キャップトレッド及びベーストレッド)に使用することが好ましく、キャップトレッドに使用することがより好ましい。キャップトレッドとは、多層構造を有するトレッドの外層部であり、2層構造〔表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)〕からなるトレッドでは表面層である。
【0047】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、前記各成分をバンバリーミキサー、オープンロール等のゴム混練装置を用いて混練する方法が挙げられる。
【0048】
本発明のゴム組成物を用い、通常の方法で本発明の空気入りタイヤを製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を用いてトレッドなどのタイヤ部材を作製し、他の部材とともに貼り合わせ、タイヤ成型機上にて加熱加圧することにより製造できる。トレッドは、シート状にしたゴム組成物を、所定の形状に張り合わせる方法や、2台以上の押出し機に装入し、押出し機のヘッド出口で2層に形成する方法などにより作製することができる。
【0049】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック、バス等に用いることができる。
【実施例】
【0050】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0051】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:SIR(インドネシア製)
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレン E15(分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)したS−SBR、スチレン含量:23質量%、ビニル含量:63質量%)
BR:日本ゼオン(株)製のニッポール1220(ハイシスBR、シス含量:96.5質量%)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:111m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
液状クマロンインデン樹脂:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
液状ロジン系樹脂:荒川化学(株)製のke−364c(ロジンエステル樹脂、酸価:35mgKOH/g、水酸基価:97mgKOH/g、軟化点:5〜15℃)
ロジン系樹脂:荒川化学(株)製のKR−85(カルボキシル基を有するロジン系樹脂、酸価:170mgKOH/g、軟化点:80〜87℃)
アロマオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0052】
実施例1〜5及び比較例1〜6
表1に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、配合材料のうち、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。更に、得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
【0053】
得られた加硫ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
(低燃費性)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%の条件下で各加硫ゴム組成物のtanδを測定し、比較例1のtanδを100として、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗性(低燃費性)に優れる。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0055】
(引張り試験)
加硫ゴム組成物からJIS−K6251に準じて3号ダンベルを用いて引張り試験を実施し、破断強度(TB)、破断伸び(EB)を測定した。TB×EB/2を破壊特性とし、比較例1の破壊特性を100として指数で表した。指数が大きいほど破壊特性に優れる。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、液状クマロンインデン樹脂と、液状ロジン系樹脂とを併用し、これらの合計含有量を特定量とした実施例は、低燃費性、破壊特性がバランス良く改善された。特に、比較例1〜3と実施例1の結果から、上記併用によって、低燃費性、破壊特性が相乗的に改善されることが明らかとなった。一方、液状クマロンインデン樹脂と、液状ロジン系樹脂とを併用しなかった比較例1〜5、併用したものの合計含有量が特定量を超えている比較例6は、低燃費性、破壊特性をバランス良く改善できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化点が−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂と、軟化点が−20〜20℃の液状ロジン系樹脂とを含み、ゴム成分100質量部に対して、液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量が3〜40質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記液状ロジン系樹脂の酸価が10〜100mgKOH/g、水酸基価が50〜150mgKOH/gである請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記液状ロジン系樹脂が、ロジンエステル樹脂である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対して、前記液状クマロンインデン樹脂を8質量部以上、前記液状ロジン系樹脂を8質量部以上含む請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−62408(P2012−62408A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208056(P2010−208056)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】