説明

タイヤ用ゴム組成物及び競技用タイヤ

【課題】ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善したタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた競技用タイヤを提供する。
【解決手段】軟化点−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂、軟化点−20〜20℃の液状ロジン系樹脂及び水酸化アルミニウムを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた競技用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
レースなどに適用される競技用タイヤ、特にウェット路面に適用される競技用ウェットタイヤのトレッドには、ウェットグリップ性能の向上を目的として、水酸化アルミニウムが一般に配合されている。
【0003】
しかし、水酸化アルミニウムを配合すると、耐摩耗性が低下するとともに、周回を重ねると摩耗外観不良(アブレージョン、チッピングなど)によりグリップ性能の低下も発生する。また、長時間走行により走行距離が伸びると、タイヤ温度が上昇し、操縦安定性が悪化するという欠点もある。
【0004】
一方、カーボンブラックの増量により、機械的強度が向上し、耐摩耗性や操縦安定性の改善が可能になるが、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。このように、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善することは困難である。
【0005】
例えば、特許文献1には、特定スチレン含量及びビニル量のスチレンブタジエン共重合体ゴム及びブタジエンゴムに、特定窒素比表面積のカーボンブラック、シリカ及びオイルを配合し、グリップ性能、硬度、剛性を改善した競技用タイヤが開示されている。しかし、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善するという点については未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−139230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善したタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた競技用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟化点−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂、軟化点−20〜20℃の液状ロジン系樹脂及び水酸化アルミニウムを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。ここで、上記ゴム成分100質量部に対する上記液状クマロンインデン樹脂及び上記液状ロジン系樹脂の合計含有量は、2〜100質量部であることが好ましい。
【0009】
上記液状ロジン系樹脂の酸価は10〜100mgKOH/gであることが好ましく、水酸基価は50〜150mgKOH/gであることが好ましい。また、上記液状ロジン系樹脂は、ロジンエステル樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した競技用タイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の軟化点を持つ液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂と、水酸化アルミニウムとを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をトレッドに適用することで、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善した競技用タイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定の軟化点を持つ液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂と、水酸化アルミニウムとを含む。水酸化アルミニウムの配合でウェットグリップ性能、特に初期のウェットグリップ性能を改善できる一方で、耐摩耗性や操縦安定性が低下する。これについて、高融点(60℃以上)の固体レジンを配合しても、温度依存性が大きくなり、初期グリップ性能が低下する。一方、本発明では、水酸化アルミニウムに加えて特定の軟化点を持つ液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂を更に配合することで、良好なウェットグリップ性能を維持しながら、摩耗外観不良(アブレージョン、チッピングなど)、操縦安定性を改善できる。従って、前述の性能をバランスよく改善できる。
【0013】
本発明で使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性がバランス良く改善されるという理由から、SBRが好ましい。
【0014】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、S−SBRが好ましい。
【0015】
SBRのスチレン含量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。10質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該スチレン含量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。80質量%を超えると、ゴムが硬くなり、ウェットグリップ性能が低下する傾向がある。
なお、本発明において、SBRのスチレン含量は、H−NMR測定により算出される。
【0016】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。70質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られず、上記の性能をバランス良く改善できないおそれがある。
【0017】
本発明のゴム組成物は、それぞれ特定の軟化点を有する液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂を含む。オイルに代えてこれらの液状樹脂を使用することで、良好なウェットグリップ性能を得ると同時に、耐摩耗性や操縦安定性を改善できる。
【0018】
液状クマロンインデン樹脂は、以下の軟化点を有するクマロンインデン樹脂である。ここで、クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0019】
液状クマロンインデン樹脂の軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、粘度が低くなり過ぎることでゴム成分との混練性、ゴム組成物中での分散性が低下し、耐摩耗性や操縦安定性が悪化する傾向がある。また、該軟化点は、20℃以下、好ましくは18℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、液状クマロンインデン樹脂の軟化点は、JIS K 6220に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0020】
液状クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、耐摩耗性の改善効果が小さい傾向がある。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、温度依存性が大きくなり、初期グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0021】
液状ロジン系樹脂とは、以下の軟化点を有するロジン系樹脂である。ここで、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジン;原料ロジンの不均化物;原料ロジンを水素添加処理した安定化ロジン;重合ロジン等のロジン類や、ロジン類のエステル化物(ロジンエステル樹脂)、フェノール変性物類、不飽和酸(マレイン酸等)変性ロジン類、ロジン類を還元処理したホルミル化ロジン類等の各種公知のものを使用できる。なかでも、耐摩耗性が向上し、上記のバランスを改善できる点から、ロジンエステル樹脂が好ましい。ロジンエステル樹脂は、上記ロジン類とポリオール(グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール)のエステル化反応により得られる。
【0022】
液状ロジン系樹脂の軟化点は、−20℃以上、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上である。−20℃未満であると、粘度が低くなり過ぎることでゴム成分との混練性、ゴム組成物中での分散性が低下し、耐摩耗性や操縦安定性が悪化する傾向がある。また、該軟化点は、20℃以下、好ましくは18℃以下、より好ましくは17℃以下である。20℃を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する傾向がある。
なお、液状ロジン系樹脂の軟化点は、JIS K 5902に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0023】
液状ロジン系樹脂の酸価(mgKOH/g)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上である。上記酸価は、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは50以下である。酸価が上記範囲内であると、耐摩耗性や操縦安定性を改善できる。
本発明において、酸価は、樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
【0024】
液状ロジン系樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は、好ましくは50以上、より好ましくは60以上である。上記水酸基価は、好ましくは150以下、より好ましくは100以下である。水酸基価が上記範囲内であると、耐摩耗性や操縦安定性を改善できる。
本発明において、水酸基価は、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070)により測定した値である。
【0025】
液状ロジン系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、耐摩耗性の改善効果が小さい傾向がある。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、温度依存性が大きくなり、初期グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0026】
液状クマロンインデン樹脂と液状ロジン系樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは10質量部以上である。2質量部未満では、耐摩耗性や操縦安定性の改善効果が充分得られないおそれがある。また、上記合計含有量は、100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、初期グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0027】
本発明のゴム組成物は、水酸化アルミニウムを含有する。これにより、低温での硬度が低下し、良好なウェットグリップ性能が得られる。水酸化アルミニウムとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0028】
水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上である。0.5μm未満では、水酸化アルミニウムの分散が困難となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。10μmを超えると、水酸化アルミニウムが破壊核となり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0029】
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。0.5質量部未満では、ウェットグリップ性能の改善効果が小さいおそれがある。また、該水酸化アルミニウムの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。50質量部を超えると、分散不良が発生し、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、シリカを使用することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能を向上でき、また、耐摩耗性や操縦安定性の改善効果も得られる。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。なかでも、湿式法シリカが好ましい。
【0031】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは200m/g以上、より好ましくは250m/g以上である。200m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下である。350m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0032】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。30質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能の改善効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは190質量部以下、更に好ましくは130質量部以下である。200質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0033】
本発明のゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0034】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは8質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。8質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。40質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0035】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを使用することが好ましい。これにより、ウェットグリップ性能を向上でき、また、耐摩耗性や操縦安定性の改善効果も得られる。カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを用いることができる。
【0036】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上である。80m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは220m/g以下、より好ましくは180m/g以下である。220m/gを超えると、未加硫ゴム組成物の粘度が高くなり、加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0037】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、充分なウェットグリップ性能の改善効果が得られない傾向がある。該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは190質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。200質量部を超えると、分散性が悪化し、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0038】
また、水酸化アルミニウム、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは75質量部以上である。50質量部未満では、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性がバランス良く得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。200質量部を超えると、耐摩耗性や操縦安定性が低下するおそれがある。
【0039】
本発明のゴム組成物は、オイルを含有する。これにより、良好なウェットグリップ性能が得られる。
【0040】
オイルとしては特に限定されず、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル(アロマオイル)などのプロセスオイルが挙げられる。なかでも、良好なウェットグリップ性能が得られるという点から、芳香族系プロセスオイル好ましい。
【0041】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。50質量部未満では、ウェットグリップ性能を充分に改善できないおそれがある。また、該オイルの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、耐摩耗性及び操縦安定性が悪化する傾向がある。
なお、オイルの含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0042】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0043】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0044】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に用いられ、トレッド(特にキャップトレッド)に好適に用いられる。
【0045】
本発明の競技用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの所望の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、空気入りタイヤ(競技用タイヤ)を製造できる。
【実施例】
【0046】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0047】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のタフデン4850(スチレン含有量:39質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分を50質量部含有)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックA(N110、NSA:142m/g)
シリカ:東ソー・シリカ(株)製のニプシルVN3(NSA:270m/g)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均一次粒子径:1μm)
老化防止剤6C:フレキシス(株)製のサントフレックス13
老化防止剤224:大内新興化学工業(株)製のノクラック224
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
アロマオイル:ジャパンエナジー社製のプロセスX−260
レジン:日本石油化学(株)製のネオポリマー140
液状クマロンインデン樹脂1:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(軟化点:5〜15℃)
液状クマロンインデン樹脂2:日塗化学(株)製のL20(軟化点:20℃)
液状ロジン系樹脂:荒川化学工業(株)製のke−364c(ロジンエステル樹脂、酸価:35mgKOH/g、水酸基価:97mgKOH/g、軟化点:5〜15℃)
シランカップリング剤:デグッサ(株)製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
【0048】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、神戸製鋼製1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間加硫することで試験用カートタイヤを製造した。
【0049】
得られた加硫ゴム組成物及び試験用カートタイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(SWELL)
上記加硫ゴム組成物をトルエンで抽出し、抽出前後の体積変化率(SWELL)を測定した。なお、SWELLが小さいほど、架橋のバラツキを抑制でき、好ましい。
【0051】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、初期歪10%、振動周波数10Hzの条件下で、0℃及び40℃における上記加硫ゴム組成物の粘弾性(複素弾性率E’及び損失正接tanδ)を測定した(0℃:動歪1%、40℃:動歪2%)。E’が大きいほど操縦安定性に優れ、tanδが大きいほどウェットグリップ性能に優れる。
【0052】
(引張試験)
JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型ゴム試験片を用いて引張試験を行い、300%伸張時応力(M300)を測定した。比較例1のM300指数を100とし、下記計算式により、各配合のM300を指数表示した。M300指数が大きいほど、耐摩耗性(耐アブレージョン性能)に優れる。
(M300指数)=(各配合のM300)/(比較例1のM300)×100
【0053】
(実車評価)
試験用カートに試験用カートタイヤを装着させ、1周2kmのテストコース(ウェット路面)を8周走行し、ドライバーの官能評価により、初期ウェットグリップ性能(1〜4周目)、操縦安定性(5〜8周目)を評価した。また、8周走行後に更に10周再走行させ、走行後のタイヤの摩耗状態を目視で観察し、耐摩耗性を評価した。各評価は、比較例1を3点として5点満点で表示した。数値が大きいほど、性能が良好である。
【0054】
【表1】

【0055】
表1より、水酸化アルミニウムを使用した比較例2では、比較例1に比べてウェットグリップ性能は改善されるものの、耐摩耗性や操縦安定性の大きな低下がみられた。一方、水酸化アルミニウム、液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂を配合した実施例では、優れたウェットグリップ性能を得ると同時に、耐摩耗性及び操縦安定性の改善効果もみられ、これらの性能をバランス良く改善できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化点−20〜20℃の液状クマロンインデン樹脂、軟化点−20〜20℃の液状ロジン系樹脂及び水酸化アルミニウムを含むタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分100質量部に対する液状クマロンインデン樹脂及び液状ロジン系樹脂の合計含有量が2〜100質量部である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
液状ロジン系樹脂の酸価が10〜100mgKOH/g、水酸基価が50〜150mgKOH/gである請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
液状ロジン系樹脂がロジンエステル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した競技用タイヤ。

【公開番号】特開2012−126852(P2012−126852A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281019(P2010−281019)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】