説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】天然化率を高め、加工性及びウェット制動性能の良好なタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム(NR)90〜100重量部及びその他のジエン系ゴム0〜10重量部からなるゴム成分100重量部、無機フィラー20〜120重量部、ロジン系樹脂10重量部を超え30重量部以下並びに天然由来の脂肪酸1〜8重量部を含んでなるタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物に関し、更に詳しくは天然素材の配合比率を高め、そして加工性及びウェット制動性の良好なタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているタイヤの多くは、主に石油などの化石資源由来の原材料を使用して製造されており、その製造時や廃棄時に地球温暖化の原因となるCO2が発生し、CO2量を増加させるという問題がある。地球温暖化が社会的問題となっている今日、主な原材料に天然素材を用いることによって、CO2排出量の増加を抑え、環境に優しい空気入りタイヤ(エコタイヤ)を提供するという提案がなされている(例えば特許文献1参照)。環境に配慮したタイヤを製造するにあたり、天然ゴムをはじめとする天然素材の使用比率を高めていくと、加硫速度が速くなる傾向が顕著に認められる。加硫速度が速くなりすぎる場合には、製造時にスコーチやゴムの「ヤケ」などの問題が生じるため好ましくない。このため加硫遅延剤を配合することも試みられているが、加硫遅延剤の使用はコスト高、性能低下などの問題があり好ましくない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−63206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、天然素材の配合比率を高め、加工性及びウェット制動性の良好なタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、天然ゴム(NR)90〜100重量部及びその他のジエン系ゴム0〜10重量部からなるゴム成分100重量部、無機フィラー20〜120重量部、ロジン系樹脂10重量部を超え30重量部以下並びに天然由来の脂肪酸1〜8重量部を含んでなるタイヤ用ゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、天然ゴムをはじめとする天然素材の使用比率を上げたゴム組成物を得るに際し、従来の方法では比較的困難であった加硫速度の調節が、ロジン系樹脂の使用により、物性に悪影響を及ぼすことなく、達成することができる。更に、本発明に従えば、天然素材比率を引き上げることができるため、CO2排出量の抑制が可能となると同時に、ウェット制動性も良好なタイヤを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく研究を進めた結果、天然ゴムを主体としたゴム成分に、天然系樹脂であるロジン系樹脂を用いることにより、タイヤ原材料の天然素材比率を高めた場合においても加硫速度の調節が可能であり、より環境にやさしいタイヤを提供できることを見出した。即ち環境にやさしいタイヤを製造するために天然ゴムや天然由来の無機フィラーの使用比率を上げると、加硫速度が大幅に速くなるのに対し、本発明ではロジン系樹脂を使用することにより、ラジカルが適度にトラップされるため、加硫速度を遅らせることが可能となり、しかもロジン系樹脂の添加は物性に悪影響をもたらすことが少なく、加硫遅延剤を添加するよりも選択肢の多いゴム配合が可能となることを見出した。
【0008】
本発明によれば、タイヤの原材料として、天然ゴム、無機フィラー、及び天然系樹脂のロジン系樹脂を必須成分として使用することにより、より環境に配慮したタイヤの製造が可能となる。
【0009】
本発明のゴム組成物に天然ゴム90〜100重量部(好ましくは92〜100重量部)と共に配合することができるジエン系ゴムとしては、例えばタイヤ用に配合することができる任意のジエン系ゴム、具体的には各種スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム又はこれらの混合物をあげることができる。これらの中ではSBRを使用するのが好ましく、特にブタジエン中のビニル量が35〜80重量%、スチレン量が5〜40重量%であるSBRをゴム成分100重量部中1〜10重量部使用するのが、タイヤ用ゴム組成物としての性能を向上させる観点から好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物には無機フィラー(例えばシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナなど)をゴム100重量部に対し20〜120重量部、好ましくは25〜110重量部配合する。この配合量が少ないとゴムの補強性が不十分となるので好ましくなく、逆に多いとゴムとしての粘弾性特性が悪化するので好ましくない。
【0011】
本発明に係るゴム組成物にはロジン系樹脂を、ゴム成分100重量部に対して、10重量部超〜30重量部、好ましくは12〜25重量部配合する。この配合量が少ないと天然素材原料比率が低下し、また加工性にも悪影響を及ぼすので好ましくなく、逆に多いとコスト高になるので好ましくない。
【0012】
本発明において使用するロジン系樹脂としては、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどである。また、これらのロジンを不均化することによって得られる不均化ロジン、二量化又はそれ以上に重合させることで得られる重合ロジン及び水素添加することによって得られる水添ロジンも使用することができる。
【0013】
また、本発明においては、ロジンを部分的にマレイン化及び/又はフマル化することなどによって変性した変性ロジンも使用することができる。マレイン化及び/又はフマル化することにより、発熱性改良の効果が大きくなる。ロジンのマレイン化には無水マレイン酸が、またロジンのフマル化にはフマル酸が用いられる。ロジンへの無水マレイン酸及び/又はフマル酸の付加反応は公知の方法で行うことができる。例えば、原料ロジンを加熱溶融し、これに無水マレイン酸及び/又はフマル酸を添加することにより実施できる。また反応は加圧下又は常圧下のいずれで行ってもよい。更に石油樹脂で変性した石油樹脂変性ロジンも用いることができる。
【0014】
上記した変性樹脂を含むロジン系樹脂は市販されており、例えばハリマ化成(株)製ハートールR−WW、ハリタックAQ−90A、ハリマックT−80、荒川化学工業(株)製中国ロジンWW、マルキード382などの市販ロジン系樹脂を用いることができる。
【0015】
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋して使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0017】
実施例1〜2及び比較例1〜3
サンプルの調製
表Iに示す配合(重量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150±5℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法で未加硫物性を評価した。結果は表Iに示す。
【0018】
ゴム物性評価試験法
ムーニー粘度:JIS K6300−1に準拠して温度100℃にて測定。
ムーニースコーチ:JIS K6300−1に準拠して、温度125℃にて粘度が5ムーニー単位上昇する時間(分)を測定。
【0019】
天然素材原料比率:表Iに示したゴム組成物で使用している天然素材原料の割合を計算した。
【0020】
さらに、実施例及び比較例に示したゴム組成物をタイヤトレッド用ゴムに使用してタイヤを作成し、そのタイヤを用いて以下のように試験を行った。
ウェット制動性能:撒水したアスファルト路面を40km/hで走行して、制動したときの制動距離を測定し、比較例を100として表Iに指数表示した。数値が大きい程、制動性が良好であることを示す(タイヤサイズ:195/65R15、リム:6JJ)。
【0021】
【表1】

【0022】
表I脚注
*1:RSS#3
*2:日本ゼオン(株)製Nipol NS116R(ブタジエン中のビニル量:63重量%、スチレン量:20重量%)
*3:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*4:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸桐
*5:住友化学工業(株)製アンチゲン6C
*6:大内新興化学工業(株)製サンノック
*7:東ソー・シリカ(株)製ニップシールAQ
*8:東海カーボン(株)製シーストN
*9:デグサ社製Si69
*10:ハリマ化成(株)製ハリタックAQ−90A
*11:荒川化学工業(株)製中国ロジンWW
*12:(株)ジャパンエナジー製プロセスX−140
*13:鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄
*14:大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明では、天然系樹脂であるロジン系樹脂を用いることで、タイヤ原材料の天然素材比率を高めた場合においても加硫速度の調節が可能となるため、加工性及びウェット制動性の良好な、より環境にやさしいタイヤ用ゴム組成物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム(NR)90〜100重量部及びその他のジエン系ゴム0〜10重量部からなるゴム成分100重量部、無機フィラー20〜120重量部、ロジン系樹脂10重量部を超え30重量部以下並びに天然由来の脂肪酸1〜8重量部を含んでなるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
ロジン系樹脂がロジン及び/又は変性ロジンである請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
無機フィラーが湿式シリカである請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
その他のジエン系ゴムが、ブタジエン中のビニル量が35〜80重量%、スチレン量が5〜40重量%であるスチレンブタジエン共重合体ゴム(SBR)で、その配合量が1〜10重量部である請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物。

【公開番号】特開2007−231085(P2007−231085A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52560(P2006−52560)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】