タイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法
【課題】燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができるタイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法を提供する。
【解決手段】空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する。また、車速センサ12あるいはナビゲーション装置18により車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する。
【解決手段】空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する。また、車速センサ12あるいはナビゲーション装置18により車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、発進と停止を繰り返して行う。この場合、発進時のエネルギー消費が非常に大きいことから、発進時のエネルギー消費を低減することが燃費の向上を図る上で重要である。
タイヤについて着目すると、タイヤの転がり抵抗を低減することが発進時のエネルギー消費を低減する上で有効である。タイヤの空気圧は、タイヤの転がり抵抗への寄与が非常に大きい要因の一つである。
例えば、常用空気圧220kPaのタイヤの空気圧を340kPaに昇圧することで、発進時の転がり抵抗を10%程度小さくすることができる。しかしながら、タイヤの空気圧が高くなるほど、乾燥路面における制動性能は低下する。
したがって、発進時の転がり抵抗の低減と、乾燥路面における制動性能の確保とは背反する性能となっており、これら2つの性能を両立させる必要がある。
一方、特許文献1には、高速道路、山岳路などの走行状態に応じてタイヤ内圧を調整する技術が開示されており、特許文献2には直進制動時、タイヤ空気圧を低下させることにより制動力を上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15915号公報
【特許文献2】特開2009−179170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、走行性能や制動力の向上を図ることに留まるものであり、燃費の向上については考慮されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができるタイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段と、前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出手段と、前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、前記車両の走行速度を検出する速度検出ステップと、前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出ステップと、前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出ステップと、前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を発進させるため、車両発進時の転がり抵抗を抑制できる。また、閾値速度を超過して走行している時は、タイヤの空気圧が定常空気圧の状態で車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができる。
また本発明によれば、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を発進させると共に、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を走行させることができるので、車両発進時および走行時の双方で転がり抵抗を抑制できる。また、車両が制動状態にある時は、タイヤの空気圧を定常空気圧に調整して車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10におけるタイヤ2の構成を示す説明図である。
【図3】0km/hから40km/hまでの発進加速時におけるタイヤ2の空気圧と転がり抵抗指数との関係を示す線図である。
【図4】タイヤ2の空気圧と乾燥路面での制動性能指数との関係を示す線図である。
【図5】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態のタイヤ空気圧制御装置10における走行速度Vとタイヤ空気圧Pの時間変化を示す線図である。
【図7】第1の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置10を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の動作を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態のタイヤ空気圧制御装置40における走行速度Vとタイヤ空気圧Pの時間変化を示す線図である。
【図11】第2の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置40を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の前提となるタイヤの空気圧と転がり抵抗との関係と、タイヤの空気圧と制動性能との関係について説明する。
図3は0km/hから40km/hまでの発進加速時におけるタイヤの空気圧と転がり抵抗指数との関係を示す線図である。図3において当該タイヤの常用空気圧である220kPaのときの転がり抵抗指数を100%としている。
図3に示すように発進時の転がり抵抗指数は空気圧が高圧となるほど低下しており、空気圧が340kPaのときに転がり抵抗指数が10%低減している。
したがって、車両発進時の燃費を抑制するためには空気圧を高圧にするほど有利であることがわかる。
【0009】
図4はタイヤの空気圧と乾燥路面での制動性能指数との関係を示す線図である。図4において当該タイヤの常用空気圧である220kPaのときの制動性能指数を100%としている。
図4に示すように、制動性能は高圧となるほど低下しており、空気圧が340kPaのときに制動性能が5%程度悪化している。
したがって、制動性能を確保するためには空気圧を常用空気圧に近づけるほど有利であることがわかる。
このように発進時の転がり抵抗の低減と、乾燥路面における制動性能の確保とは背反する性能となっていることがわかる。
そこで、第1の実施の形態では、発進時を除く走行期間においてはタイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、発進時においてはタイヤの空気圧を定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整することで、燃費の抑制を図りつつ制動性能を確保している。
【0010】
以下、本実施の形態のタイヤ空気圧制御装置10についてタイヤ空気圧制御方法と共に説明する。
図1は第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の構成を示すブロック図である。
タイヤ空気圧制御装置10は自動車などの車両に搭載され、車両にはタイヤ2が装着されている。
タイヤ空気圧制御装置10は、車速センサ12、加速度センサ14、路車間通信部16、ナビゲーション装置18、雨滴感知センサ20、操作入力部22、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30などを含んで構成されている。
車速センサ12は、車両の走行速度を検出してその検出結果を空気圧制御用ECU30に供給するものである。
本実施の形態では、車速センサ12は、車両の走行速度を検出する速度検出手段と、車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段とを構成している。
【0011】
加速度センサ14は、タイヤ2あるいはホイール4(図2)に設けられ、走行中におけるタイヤ2の振動によって生じる加速度を検出してその検出結果を空気圧制御用ECU30に供給する。
本実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、加速度センサ14の検出結果に基づいて、路面が乾燥しているか、あるいは、路面が水で濡れているかといった路面状況を判断する。
したがって、本実施の形態では、加速度センサ14および空気圧制御用ECU30は、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段を構成している。
【0012】
路車間通信部16は、アンテナ1602を介して道路近傍に設けられた不図示の路側通信装置との間で情報の送受信を行うものである。なお、路車間通信部16と路側通信装置との間での情報の送受信は電波を介して行うものであっても、光信号を介して行うものであってもよい。
本実施の形態では、路車間通信部16は、前記の路側通信装置から車両が走行する道路に対して予め定められた制限速度情報を受信するものであり、制限速度取得手段を構成している。
【0013】
ナビゲーション装置18は、不図示のGPS通信部、データベース、操作部、表示部、音声出力部、制御部などを含んで構成されている。
GPS通信部は、複数のGPS衛星から送信される電波を受信することにより自車両の位置を示す測位データを検出するものである。
データベースは、地図データを格納するものであり、地図データは、地球上における位置情報と、この位置情報に関連付けられた施設や道路の情報などを含んでいる。道路の情報は、道路に対して予め定められた制限速度を示す制限速度情報を含む。
操作部は、ナビゲーションをするために必要な操作情報を入力するものである。
表示部は、データベースから読み出された地図データ、施設や道路の情報、自車両の位置などのナビゲーションに必要な情報を表示するものである。
音声出力部は、ナビゲーションに必要な音声を出力するものである。
制御部は、GPS通信部によって検出された測位データに基づいて自車両の位置情報を特定し、この位置情報に基づいてデータベースから施設や道路の情報を読み出して表示部に表示させ、あるいは、音声出力部から音声を出力させる。
本実施の形態では、制御部は、データベースから読み出した道路の情報に含まれる制限速度情報を空気圧制御用ECU30に提供する。したがって、ナビゲーション装置18は、路車間通信部16と同様の制限速度取得手段を構成している。
また、制御部は、時間経過に伴う測位データの変化に基づいて車両が停止状態にあるか否かを判断する。したがって、ナビゲーション装置18がこの判断結果を空気圧制御用ECU30に供給することにより、ナビゲーション装置18によって車速センサ12と同様の車両停止状態検出手段を構成してもよい。
【0014】
雨滴感知センサ20は、雨滴の有無を検出するものであり、その検出結果を車両に設けられたワイパの制御を司る不図示のワイパ用ECUに供給するものであり、ワイパ用ECUは雨滴感知センサ20により雨滴が有るとの検出結果を受け付けると、ワイパを動作させる。
本実施の形態では、雨滴感知センサ20は、前記の加速度センサ14および空気圧制御用ECU30と同様に、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段を構成している。
【0015】
操作入力部22は、車両に装着されたタイヤ2の特性に応じてユーザが設定操作を行うものである。タイヤ2の特性については後述する。
具体的には、ユーザは、車両に装着されたタイヤ2の特性を識別し、その識別結果に基づいて操作入力部22を設定操作する。
【0016】
図2はタイヤ2の構成を示す説明図である。
図2に示すように、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28は、タイヤ2が装着されるホイール4に設けられている。
圧力センサ24はタイヤ2の空気室に充填された空気の圧力を検出するためのものであり、空気室の空気圧を検出すると、この検出結果を空気圧制御用ECU30に供給する。
加圧ポンプ26は周知の構成を有し、空気圧制御用ECU30の制御によって空気を加圧するとともに、加圧した空気をタイヤ2の空気室に供給するようになっている。
なお、加圧ポンプ26によって加圧された空気は、タイヤ2ホイールに設けられた通気孔6を介して空気室に供給される。
電磁バルブ28は通気孔6に連設されており、空気圧制御用ECU30の制御によって開閉することにより、タイヤ2の空気室に充填された空気をタイヤ2の外部に排出するようになっている。
【0017】
図1に戻って説明を続けると、空気圧制御用ECU30は、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28とのインタフェースをとるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものであり、CPUが制御プログラムを実行することにより機能する。
【0018】
本実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。
すなわち、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが予め定められた閾値速度Vrefを超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧P0に調整する。また、車速センサ12あるいはナビゲーション装置18により車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧P0よりも高い規定空気圧P1に調整する。
閾値速度Vrefは、後述する閾値速度決定手段30Aによって決定される。
定常空気圧P0は、車両の走行性能を確保すると共に、車両が制動動作を行った場合に十分な制動性能を確保するに足る空気圧である。本実施の形態では、定常空気圧P0は、後述する定常空気圧決定手段30Bによって決定される。
なお、定常空気圧P0は、タイヤ2のメーカーによって指定される常用空気圧、例えば240kPaや、タイヤの発熱等を考慮し、メーカー指定常用気圧+20kPaに固定的に定めてもよい。
規定空気圧P1は、車両の走行性能を確保すると共に、車両の発進時に転がり抵抗を十分に低減するに足る空気圧であり、例えば、タイヤ2のメーカーにより保証される保証最大空気圧以下、あるいは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)により規定される最高空気圧以下に設定される。
本実施の形態では、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30により特許請求の範囲の空気圧調整手段が構成されている。
【0019】
また、空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、閾値速度決定手段30A、定常空気圧決定手段30Bを実現する。
閾値速度決定手段30Aは、以下の2種類の機能を備える。
(1)車速センサ12で検出された走行速度Vを予め定められたサンプリング周期でサンプリングして走行速度情報として蓄積すると共に、走行速度情報に基づいて閾値速度Vrefを決定する。
例えば、停車時を除いた、直近5分間の平均車両速度の90%を閾値速度Vrefとして決定する。
このようにすると、車両が走行している道路の状況に応じて閾値速度Vrefの値を決定することができ、タイヤ2の空気圧の調整を車両の走行状況に応じて的確に行う上で有利となる。
【0020】
(2)路車間通信部16あるいはナビゲーション装置18によって取得された制限速度情報に基づいて閾値速度Vrefを決定する。
例えば、制限速度情報で指定された制限速度から10km/hを減じた値を閾値速度Vrefとして決定する。あるいは、制限速度情報で指定された制限速度の90%を閾値速度Vrefとして決定する。
このようにすると、車両が走行している道路に対して定められている制限速度情報に基づいて閾値速度Vrefの値を決定することができ、タイヤ2の空気圧の調整を道路の制限速度に応じて的確に行う上で有利となる。
【0021】
また、閾値速度決定手段30Aは、(1)、(2)の機能を切り替えてもよい。
例えば、通常は(2)の機能による制限速度情報の取得を優先するが、(2)の機能による制限速度情報の取得ができない環境下では、(1)の機能を用いて閾値速度Vrefを決定する。
このようにすると、状況に応じて選択された道路の制限速度と車両の走行状況との何れか一方に基づいて閾値速度Vrefの値を決定でき、タイヤ2の空気圧の調整を的確に行う上で有利となる。
なお、閾値速度Vrefは、ユーザが操作入力部22を操作することにより任意の値に設定できるようにしてもよい。この場合は、操作入力部22が操作に応じて閾値速度Vrefを設定する閾値速度設定手段を構成することになる。
また、閾値速度Vrefは、予め定められた固定値にしてもよい。しかしながら、閾値速度Vrefが固定されてしまうと、走行速度が閾値速度Vref以下でしか走行できないような状況が発生すると、タイヤ2の空気圧を規定空気圧P1から定常空気圧P0に調整することが困難となる。
したがって、前述したように閾値速度決定手段30Aを用いることがタイヤ2の空気圧の調整を車両の走行状況や道路の制限速度に応じて的確に行う上で有利である。
【0022】
定常空気圧決定手段30Bは、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかの状態に基づいて定常空気圧V0を決定するものである。
現在流通しているタイヤ2では、雨天などにより路面が水で濡れている場合、タイヤ2の空気圧が低圧であるよりも高圧である方が、制動性能を確保する上で有利であることが知られている。
したがって、路面が濡れている場合は、乾燥路面に比較して、定常走行時におけるタイヤ2の空気圧をより高圧に調整することが好ましい。例えば、定常空気圧V0を規定空気圧V1と同じ値、あるいは、規定空気圧V1よりも若干低い値とすることが好ましい。
このようにすることで路面の状況に応じて的確に制動性能を確保することができる。
【0023】
一方、乾燥路面において、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤ2が将来的に開発されることが予想される。
このような特性を有するタイヤ2では、空気圧を定常空気圧V0とすることなく、常に規定空気圧V1としておけばよいことになる。
ここで、前述したように路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤをタイヤAとし、路面が乾燥している場合に、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤをタイヤBとする。
タイヤA、Bに対応した空気圧の制御は以下のように行えば良いことになる。
タイヤA:定常空気圧V0を規定空気圧V1よりも低下した値とする。
タイヤB:定常空気圧V0を規定空気圧V1と同じ値に固定的に設定する。
本実施の形態では、ユーザが操作入力部22を設定操作することによりタイヤA、Bの何れが車両に装着されているかを示す設定情報が定常空気圧決定手段30Bに供給される。
したがって、本実施の形態では、定常空気圧決定手段30Bによる定常空気圧の決定は、路面の状態に加えてタイヤ2の特性に基づいてなされる。
なお、前記の路面状態検出手段(加速度センサ14、雨滴感知センサ16)と、定常空気圧決定手段30Bとを省略することもできる。しかしながら、本実施の形態のようにすると、路面の状況に応じて的確に制動性能を確保する上で有利となる。
【0024】
次に、タイヤ空気圧制御装置10の動作について、図5のフローチャートと、図6の線図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両に装着されているタイヤ2が、前記のタイヤA(路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤ)である場合について説明する。
空気圧制御用ECU30は、図5に示すフローチャートの処理ルーチンを繰り返して実行する。
まず、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて(車両の走行速度Vが0km/hであるか否かに基づいて)車両が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10:車両停止状態検出ステップ)。
ステップS10の判定結果が肯定であれば(車両停止状態)、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に調整する(ステップS12:第2の空気圧調整ステップ)。
したがって、図6に示すようにタイヤの空気圧は定常空気圧V0=240kPaから規定空気圧V1=350kPaに増圧される。
これにより、車両発進時の転がり抵抗が抑制され、発進時の燃費が向上される。
以下、ステップS10に戻る。
【0025】
一方、ステップS10の判定結果が否定であれば(車両走行状態)、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが閾値速度Vrefを超過したか否かを判定する(ステップS14:速度検出ステップ、第1の空気圧調整ステップ)。本実施の形態では閾値速度Vref=40km/hとする。
ステップS14の判定結果が否定であれば、ステップS10に戻る。
ステップS14の判定結果が肯定であれば、空気圧制御用ECU30(定常空気圧決定手段30B)は、雨滴感知センサ20や、加速度センサ14で検出された路面状態および操作入力部22から設定されたタイヤ特性に基づいて定常空気圧V0を決定する(ステップS16)。
ここで、路面状態が乾燥している場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1よりも低い240kPaに決定される。
また、路面状態が雨で濡れている場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1と同一あるいはほぼ同一の値に決定される。
【0026】
次に、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1からステップS16で決定された定常空気圧V0に調整する(ステップS18:第1の空気圧調整ステップ)。そして、ステップS10に戻る。
したがって、路面状態が乾燥している場合には、図6に示すように、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧される。
これにより、車両が制動される場合、乾燥した路面状態における制動性能が確保される。
一方、路面状態が濡れている場合には、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されることなく、規定空気圧V1と同一またはほぼ同一の値に維持される。
これにより、車両が制動される場合、濡れた路面状態における制動性能が確保される。
以上の動作が繰り返して実行される。
【0027】
なお、車両に装着されるタイヤが、路面が乾燥している場合に、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤBであった場合は次のような動作となる。
すなわち、ステップS16で決定される定常空気圧V0は、路面状態に拘らず規定空気圧V1と同じ値とされるため、タイヤの空気圧は、車両の停止、走行に拘らず常に規定空気圧V1に維持される。したがって、タイヤの空気圧の調整はなされない。
【0028】
以上説明したように本実施の形態によれば、車両の走行速度Vが予め定められた閾値速度Vrefを超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧P0に調整し、車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧P0よりも高い規定空気圧P1に調整するようにした。
したがって、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を発進させるため、車両発進時の転がり抵抗を抑制できる。また、閾値速度Vrefを超過して走行している時は、タイヤ2の空気圧が定常空気圧P0の状態で車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができる。
【0029】
以下、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
図7は、第1の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置10を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
試験条件は以下の通りである。
1)タイヤ2の仕様
215/55R17 93V
2)車両の仕様
2000ccセダン
3)燃費消費評価条件
予め定められた走行パターンを30分走行
【0030】
比較例1は、定常空気圧V0および規定空気圧V1の双方をメーカーで指定した常用空気圧240kPaとしたものである。
比較例2は、定常空気圧V0および規定空気圧V1の双方をメーカーで指定した最高空気圧350kPaとしたものである。
実施例1は、第1の実施の形態のようにタイヤ2の空気圧を、定常空気圧V0=240kPaと、規定空気圧V1=350kPaとに調整したものである。
評価項目は、燃料消費と乾燥路面での制動性能であり、比較例1における燃料消費と乾燥路面での制動性能とをそれぞれ100%とした指数で表示している。
【0031】
図7に示すように、比較例1に対して比較例2は燃費が6%向上している反面、制動性能が5%悪化している。
実施例1は、比較例1に対して燃費が4%向上し、かつ、制動性能は同等であり、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上で有利となっている。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、発進時にはタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1に調整し、発進時を除く走行期間においてはタイヤの空気圧を規定空気圧P1よりも低い定常空気圧P0に調整した。
したがって、発進時には転がり抵抗を抑制できる反面、走行時における転がり抵抗は発進時に比較して若干増加することになり、燃費のさらなる抑制を図る上で改善の余地がある。
そこで、第2の実施の形態では、制動時にのみタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1よりも低い定常空気圧P0に調整し、制動時以外の期間ではタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1に調整するようにすることで、燃費のさらなる抑制を図りつつ制動性能を確保している。
【0033】
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、同一の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略しあるいは簡単に行う。
図8は、第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の構成を示すブロック図である。
タイヤ空気圧制御装置40は、第1の実施の形態で説明した車速センサ12、加速度センサ14、路車間通信部16、ナビゲーション装置18、雨滴感知センサ20、操作入力部22、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30に加えて、ブレーキスイッチ32を含んで構成されている。
【0034】
ブレーキスイッチ32は、運転者によるブレーキペダルの操作を検出して制動操作がなされているか否かを検出し、その検出結果を空気圧制御用ECU30に供給するものである。
空気圧制御用ECU30は、車速センサ12によって検出された走行速度と、ブレーキスイッチ32の検出結果とに基づいて、車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、車両が停止状態にあるか、車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する。
したがって、車速センサ12、ブレーキスイッチ32、空気圧制御用ECU30によって特許請求の範囲の車両状態検出手段が構成されている。
なお、車速センサ12に代えてナビゲーション装置18を用い、ナビゲーション装置18によって検出された時間経過に伴う測位データの変化に基づいて車両の停止状態を検出するようにしてもよい。
【0035】
また、空気圧制御用ECU30は、制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。
第2の実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、車両が制動状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧V0に調整し、車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧V0よりも高い規定空気圧V1に調整する。
また、空気圧制御用ECU30は、タイヤ2の空気圧が定常空気圧V0に調整された状態で、車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立したときに、タイヤ2の空気圧を定常空気圧V0から規定空気圧V1に調整する。「予め定められた速度」は例えば5km/hであり、「予め定められた時間」は例えば10秒である。
したがって、第2の実施の形態においても、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30により特許請求の範囲の空気圧調整手段が構成されている。
また、第2の実施の形態では、空気圧制御用ECU30が制御プログラムを実行することにより、第1の実施の形態における定常空気圧決定手段30Bが実現されている。なお、第2の実施の形態では、閾値速度決定手段30Aは設けられていない。
【0036】
次に、タイヤ空気圧制御装置40の動作について、図9のフローチャートと、図10の線図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両に装着されているタイヤが、前述したように路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤAである場合について説明する。
空気圧制御用ECU30は、図9に示すフローチャートの処理ルーチンを繰り返して実行する。
まず、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて(車両の走行速度Vが0km/hであるか否かに基づいて)車両が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS30:車両状態検出ステップ)。
ステップS30の判定結果が肯定であれば(車両停止状態)、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に調整する(ステップS32:第2の空気圧調整ステップ)。
したがって、図10に停止検出と表記した時点(t=50sec)において、タイヤ2の空気圧は定常空気圧V0=240kPaから規定空気圧V1=350kPaに増圧される。
これにより、車両発進時の転がり抵抗が抑制され、発進時の燃費が向上される。
以下、ステップS30に戻る。
【0037】
一方、ステップS30の判定結果が否定であれば(車両走行中)、空気圧制御用ECU30は、ブレーキスイッチ32の検出結果に基づいて車両が制動状態にあるか否かを判定する(ステップS34:車両状態検出ステップ)。
ステップS34の判定結果が肯定であれば(制動中)、空気圧制御用ECU30(定常空気圧決定手段30B)は、雨滴感知センサ20や、加速度センサ14で検出された路面状態および操作入力部22から設定されたタイヤ特性に基づいて定常空気圧V0を決定する(ステップS38)。
ここで、路面状態が乾燥している場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1よりも低い240kPaに決定される。
また、路面状態が雨で濡れている場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1と同一あるいはほぼ同一の値に決定される。
【0038】
次に、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1からステップS38で決定された定常空気圧V0に調整する(ステップS40:第1の空気圧調整ステップ)。そして、ステップS30に戻る。
したがって、路面状態が乾燥している場合には、図10に制動検出と表記した時点において、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されていく。
これにより、車両が制動される場合、乾燥した路面状態における制動性能が確保される。
一方、路面状態が濡れている場合には、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されることなく、規定空気圧V1と同一またはほぼ同一の値に維持される。
これにより、車両が制動される場合、濡れた路面状態における制動性能が確保される。
【0039】
また、ステップS34の判定結果が否定であれば(走行状態)、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立するか否かを判定する(ステップS36)。
なお、空気圧制御用ECU30は、車両の走行状態を検出した時点の走行速度に対して走行速度の増加量を常時監視しており、その監視結果に基づいて車両が予め定められた速度以上走行するか否かを判定している。
また、空気圧制御用ECU30は、車両の走行状態を検出した時点から計時動作を行うと共に、車両の停止状態を検出した時点で計時結果をクリアすることで、車両が走行している時間を常時監視しており、その監視結果に基づいて車両が予め定められた時間以上走行するか否かを判定している。
ステップS36の判定結果が肯定であれば、ステップS38、S40を実行し、ステップS30に戻る。
【0040】
なお、前回の処理ルーチンにおいてステップS34で車両が制動状態と判定され、今回の処理ルーチンにおいてステップS34で車両が制動状態でない(走行状態)であると判定された場合を考える。
この場合、ステップS36により前記条件の何れかが成立するということは、例えば、いったんブレーキ操作をしたものの、車両が停止する前に再び加速したか、あるいは、減速した状態で予め定められた時間走行していることになる。つまり、いったんブレーキ操作をしたもののすぐにブレーキ操作を解除したことになる。
このような状況では、車両が停止状態に至らないため、タイヤ2の空気圧を定常空気圧V0に調整する必要がなくなる。
したがって、前回の処理ルーチンによりステップS34で制動状態と判定されてステップS38、S40が実行されてタイヤ2の空気圧が定常空気圧V0に減圧されたとしても、今回の処理ルーチンによりステップS36の条件が成立するとステップS32に移行してタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に増圧するようにしているのである。
このようにすることで、車両が制動状態に至らない場合は、タイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に的確に調整することができ、したがって、燃費の抑制を図る上で有利となる。
【0041】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、車両が制動状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧V0に調整し、車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧V0よりも高い規定空気圧V1に調整するようにした。
したがって、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を発進させると共に、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を走行させることができるので、車両発進時および走行時の双方で転がり抵抗を抑制できる。また、車両が制動状態にある時は、タイヤ2の空気圧を定常空気圧P0に調整して車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上でより有利となる。
【0042】
以下、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
図11は、第2の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置40を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
試験条件は以下の通りである。
1)タイヤ2の仕様
215/55R17 93V
2)車両の仕様
2000ccセダン
3)燃費消費評価条件
予め定められた走行パターンを30分走行
【0043】
比較例3、4、実施例2におけるタイヤ2の空気圧は第1の実施の形態における比較例1、2、実施例1と同様に設定されている。
評価項目は、燃料消費と乾燥路面での制動性能であり、比較例3における燃料消費と乾燥路面での制動性能とをそれぞれ100%とした指数で表示している。
【0044】
図11に示すように、比較例3に対して比較例4は燃費が6%向上している反面、制動性能が5%悪化している。
実施例2は、比較例3に対して燃費が6%向上し、かつ、制動性能は1%のごくわずかな低下に留まっており、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上で有利となっている。なお、実施例2において制動性能が1%低下する理由は以下の通りである。
図10に示すように、制動状態が検出された時点でタイヤ2の空気圧が規定空気圧V1から定常空気圧V0に減圧されるのであるが、タイヤ2の空気圧が規定空気圧V1から定常空気圧V0に至るまでに多少の時間が必要である。
そのため、制動のごく初期には、タイヤ2の空気圧が未だ定常空気圧V0に到達していないことから制動性能がごくわずかに低下している。しかしながら、図11に示すように、制動性能の低下は1%に留まっており無視することができる。
【符号の説明】
【0045】
2……タイヤ、4……ホイール、6……通気孔、10、40……タイヤ空気圧制御装置、12……車速センサ、14……加速度センサ、16……路車間通信部、18……ナビゲーション装置、20……雨滴感知センサ、22……操作入力部、24……圧力センサ、26……加圧ポンプ、28……電磁バルブ、30……空気圧制御用ECU、30A……敷地速度決定手段、30B……定常空気圧決定手段、32……ブレーキスイッチ、P0……定常空気圧、P1……規定空気圧、V……走行速度、Vref……閾値速度。
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、発進と停止を繰り返して行う。この場合、発進時のエネルギー消費が非常に大きいことから、発進時のエネルギー消費を低減することが燃費の向上を図る上で重要である。
タイヤについて着目すると、タイヤの転がり抵抗を低減することが発進時のエネルギー消費を低減する上で有効である。タイヤの空気圧は、タイヤの転がり抵抗への寄与が非常に大きい要因の一つである。
例えば、常用空気圧220kPaのタイヤの空気圧を340kPaに昇圧することで、発進時の転がり抵抗を10%程度小さくすることができる。しかしながら、タイヤの空気圧が高くなるほど、乾燥路面における制動性能は低下する。
したがって、発進時の転がり抵抗の低減と、乾燥路面における制動性能の確保とは背反する性能となっており、これら2つの性能を両立させる必要がある。
一方、特許文献1には、高速道路、山岳路などの走行状態に応じてタイヤ内圧を調整する技術が開示されており、特許文献2には直進制動時、タイヤ空気圧を低下させることにより制動力を上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−15915号公報
【特許文献2】特開2009−179170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、走行性能や制動力の向上を図ることに留まるものであり、燃費の向上については考慮されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができるタイヤ空気圧制御装置およびタイヤ空気圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段と、前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出手段と、前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段とを備えることを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、前記車両の走行速度を検出する速度検出ステップと、前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出ステップと、前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出ステップと、前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を発進させるため、車両発進時の転がり抵抗を抑制できる。また、閾値速度を超過して走行している時は、タイヤの空気圧が定常空気圧の状態で車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができる。
また本発明によれば、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を発進させると共に、タイヤの空気圧が規定空気圧の状態で車両を走行させることができるので、車両発進時および走行時の双方で転がり抵抗を抑制できる。また、車両が制動状態にある時は、タイヤの空気圧を定常空気圧に調整して車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上でより有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10におけるタイヤ2の構成を示す説明図である。
【図3】0km/hから40km/hまでの発進加速時におけるタイヤ2の空気圧と転がり抵抗指数との関係を示す線図である。
【図4】タイヤ2の空気圧と乾燥路面での制動性能指数との関係を示す線図である。
【図5】第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態のタイヤ空気圧制御装置10における走行速度Vとタイヤ空気圧Pの時間変化を示す線図である。
【図7】第1の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置10を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の動作を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態のタイヤ空気圧制御装置40における走行速度Vとタイヤ空気圧Pの時間変化を示す線図である。
【図11】第2の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置40を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明の前提となるタイヤの空気圧と転がり抵抗との関係と、タイヤの空気圧と制動性能との関係について説明する。
図3は0km/hから40km/hまでの発進加速時におけるタイヤの空気圧と転がり抵抗指数との関係を示す線図である。図3において当該タイヤの常用空気圧である220kPaのときの転がり抵抗指数を100%としている。
図3に示すように発進時の転がり抵抗指数は空気圧が高圧となるほど低下しており、空気圧が340kPaのときに転がり抵抗指数が10%低減している。
したがって、車両発進時の燃費を抑制するためには空気圧を高圧にするほど有利であることがわかる。
【0009】
図4はタイヤの空気圧と乾燥路面での制動性能指数との関係を示す線図である。図4において当該タイヤの常用空気圧である220kPaのときの制動性能指数を100%としている。
図4に示すように、制動性能は高圧となるほど低下しており、空気圧が340kPaのときに制動性能が5%程度悪化している。
したがって、制動性能を確保するためには空気圧を常用空気圧に近づけるほど有利であることがわかる。
このように発進時の転がり抵抗の低減と、乾燥路面における制動性能の確保とは背反する性能となっていることがわかる。
そこで、第1の実施の形態では、発進時を除く走行期間においてはタイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、発進時においてはタイヤの空気圧を定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整することで、燃費の抑制を図りつつ制動性能を確保している。
【0010】
以下、本実施の形態のタイヤ空気圧制御装置10についてタイヤ空気圧制御方法と共に説明する。
図1は第1の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置10の構成を示すブロック図である。
タイヤ空気圧制御装置10は自動車などの車両に搭載され、車両にはタイヤ2が装着されている。
タイヤ空気圧制御装置10は、車速センサ12、加速度センサ14、路車間通信部16、ナビゲーション装置18、雨滴感知センサ20、操作入力部22、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30などを含んで構成されている。
車速センサ12は、車両の走行速度を検出してその検出結果を空気圧制御用ECU30に供給するものである。
本実施の形態では、車速センサ12は、車両の走行速度を検出する速度検出手段と、車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段とを構成している。
【0011】
加速度センサ14は、タイヤ2あるいはホイール4(図2)に設けられ、走行中におけるタイヤ2の振動によって生じる加速度を検出してその検出結果を空気圧制御用ECU30に供給する。
本実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、加速度センサ14の検出結果に基づいて、路面が乾燥しているか、あるいは、路面が水で濡れているかといった路面状況を判断する。
したがって、本実施の形態では、加速度センサ14および空気圧制御用ECU30は、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段を構成している。
【0012】
路車間通信部16は、アンテナ1602を介して道路近傍に設けられた不図示の路側通信装置との間で情報の送受信を行うものである。なお、路車間通信部16と路側通信装置との間での情報の送受信は電波を介して行うものであっても、光信号を介して行うものであってもよい。
本実施の形態では、路車間通信部16は、前記の路側通信装置から車両が走行する道路に対して予め定められた制限速度情報を受信するものであり、制限速度取得手段を構成している。
【0013】
ナビゲーション装置18は、不図示のGPS通信部、データベース、操作部、表示部、音声出力部、制御部などを含んで構成されている。
GPS通信部は、複数のGPS衛星から送信される電波を受信することにより自車両の位置を示す測位データを検出するものである。
データベースは、地図データを格納するものであり、地図データは、地球上における位置情報と、この位置情報に関連付けられた施設や道路の情報などを含んでいる。道路の情報は、道路に対して予め定められた制限速度を示す制限速度情報を含む。
操作部は、ナビゲーションをするために必要な操作情報を入力するものである。
表示部は、データベースから読み出された地図データ、施設や道路の情報、自車両の位置などのナビゲーションに必要な情報を表示するものである。
音声出力部は、ナビゲーションに必要な音声を出力するものである。
制御部は、GPS通信部によって検出された測位データに基づいて自車両の位置情報を特定し、この位置情報に基づいてデータベースから施設や道路の情報を読み出して表示部に表示させ、あるいは、音声出力部から音声を出力させる。
本実施の形態では、制御部は、データベースから読み出した道路の情報に含まれる制限速度情報を空気圧制御用ECU30に提供する。したがって、ナビゲーション装置18は、路車間通信部16と同様の制限速度取得手段を構成している。
また、制御部は、時間経過に伴う測位データの変化に基づいて車両が停止状態にあるか否かを判断する。したがって、ナビゲーション装置18がこの判断結果を空気圧制御用ECU30に供給することにより、ナビゲーション装置18によって車速センサ12と同様の車両停止状態検出手段を構成してもよい。
【0014】
雨滴感知センサ20は、雨滴の有無を検出するものであり、その検出結果を車両に設けられたワイパの制御を司る不図示のワイパ用ECUに供給するものであり、ワイパ用ECUは雨滴感知センサ20により雨滴が有るとの検出結果を受け付けると、ワイパを動作させる。
本実施の形態では、雨滴感知センサ20は、前記の加速度センサ14および空気圧制御用ECU30と同様に、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段を構成している。
【0015】
操作入力部22は、車両に装着されたタイヤ2の特性に応じてユーザが設定操作を行うものである。タイヤ2の特性については後述する。
具体的には、ユーザは、車両に装着されたタイヤ2の特性を識別し、その識別結果に基づいて操作入力部22を設定操作する。
【0016】
図2はタイヤ2の構成を示す説明図である。
図2に示すように、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28は、タイヤ2が装着されるホイール4に設けられている。
圧力センサ24はタイヤ2の空気室に充填された空気の圧力を検出するためのものであり、空気室の空気圧を検出すると、この検出結果を空気圧制御用ECU30に供給する。
加圧ポンプ26は周知の構成を有し、空気圧制御用ECU30の制御によって空気を加圧するとともに、加圧した空気をタイヤ2の空気室に供給するようになっている。
なお、加圧ポンプ26によって加圧された空気は、タイヤ2ホイールに設けられた通気孔6を介して空気室に供給される。
電磁バルブ28は通気孔6に連設されており、空気圧制御用ECU30の制御によって開閉することにより、タイヤ2の空気室に充填された空気をタイヤ2の外部に排出するようになっている。
【0017】
図1に戻って説明を続けると、空気圧制御用ECU30は、CPU、制御プログラムなどを格納するROM、ワーキングエリアを提供するRAM、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28とのインタフェースをとるインタフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されたものであり、CPUが制御プログラムを実行することにより機能する。
【0018】
本実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。
すなわち、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが予め定められた閾値速度Vrefを超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧P0に調整する。また、車速センサ12あるいはナビゲーション装置18により車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧P0よりも高い規定空気圧P1に調整する。
閾値速度Vrefは、後述する閾値速度決定手段30Aによって決定される。
定常空気圧P0は、車両の走行性能を確保すると共に、車両が制動動作を行った場合に十分な制動性能を確保するに足る空気圧である。本実施の形態では、定常空気圧P0は、後述する定常空気圧決定手段30Bによって決定される。
なお、定常空気圧P0は、タイヤ2のメーカーによって指定される常用空気圧、例えば240kPaや、タイヤの発熱等を考慮し、メーカー指定常用気圧+20kPaに固定的に定めてもよい。
規定空気圧P1は、車両の走行性能を確保すると共に、車両の発進時に転がり抵抗を十分に低減するに足る空気圧であり、例えば、タイヤ2のメーカーにより保証される保証最大空気圧以下、あるいは、JATMA(日本自動車タイヤ協会)により規定される最高空気圧以下に設定される。
本実施の形態では、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30により特許請求の範囲の空気圧調整手段が構成されている。
【0019】
また、空気圧制御用ECU30は、前記の制御プログラムを実行することにより、閾値速度決定手段30A、定常空気圧決定手段30Bを実現する。
閾値速度決定手段30Aは、以下の2種類の機能を備える。
(1)車速センサ12で検出された走行速度Vを予め定められたサンプリング周期でサンプリングして走行速度情報として蓄積すると共に、走行速度情報に基づいて閾値速度Vrefを決定する。
例えば、停車時を除いた、直近5分間の平均車両速度の90%を閾値速度Vrefとして決定する。
このようにすると、車両が走行している道路の状況に応じて閾値速度Vrefの値を決定することができ、タイヤ2の空気圧の調整を車両の走行状況に応じて的確に行う上で有利となる。
【0020】
(2)路車間通信部16あるいはナビゲーション装置18によって取得された制限速度情報に基づいて閾値速度Vrefを決定する。
例えば、制限速度情報で指定された制限速度から10km/hを減じた値を閾値速度Vrefとして決定する。あるいは、制限速度情報で指定された制限速度の90%を閾値速度Vrefとして決定する。
このようにすると、車両が走行している道路に対して定められている制限速度情報に基づいて閾値速度Vrefの値を決定することができ、タイヤ2の空気圧の調整を道路の制限速度に応じて的確に行う上で有利となる。
【0021】
また、閾値速度決定手段30Aは、(1)、(2)の機能を切り替えてもよい。
例えば、通常は(2)の機能による制限速度情報の取得を優先するが、(2)の機能による制限速度情報の取得ができない環境下では、(1)の機能を用いて閾値速度Vrefを決定する。
このようにすると、状況に応じて選択された道路の制限速度と車両の走行状況との何れか一方に基づいて閾値速度Vrefの値を決定でき、タイヤ2の空気圧の調整を的確に行う上で有利となる。
なお、閾値速度Vrefは、ユーザが操作入力部22を操作することにより任意の値に設定できるようにしてもよい。この場合は、操作入力部22が操作に応じて閾値速度Vrefを設定する閾値速度設定手段を構成することになる。
また、閾値速度Vrefは、予め定められた固定値にしてもよい。しかしながら、閾値速度Vrefが固定されてしまうと、走行速度が閾値速度Vref以下でしか走行できないような状況が発生すると、タイヤ2の空気圧を規定空気圧P1から定常空気圧P0に調整することが困難となる。
したがって、前述したように閾値速度決定手段30Aを用いることがタイヤ2の空気圧の調整を車両の走行状況や道路の制限速度に応じて的確に行う上で有利である。
【0022】
定常空気圧決定手段30Bは、車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかの状態に基づいて定常空気圧V0を決定するものである。
現在流通しているタイヤ2では、雨天などにより路面が水で濡れている場合、タイヤ2の空気圧が低圧であるよりも高圧である方が、制動性能を確保する上で有利であることが知られている。
したがって、路面が濡れている場合は、乾燥路面に比較して、定常走行時におけるタイヤ2の空気圧をより高圧に調整することが好ましい。例えば、定常空気圧V0を規定空気圧V1と同じ値、あるいは、規定空気圧V1よりも若干低い値とすることが好ましい。
このようにすることで路面の状況に応じて的確に制動性能を確保することができる。
【0023】
一方、乾燥路面において、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤ2が将来的に開発されることが予想される。
このような特性を有するタイヤ2では、空気圧を定常空気圧V0とすることなく、常に規定空気圧V1としておけばよいことになる。
ここで、前述したように路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤをタイヤAとし、路面が乾燥している場合に、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤをタイヤBとする。
タイヤA、Bに対応した空気圧の制御は以下のように行えば良いことになる。
タイヤA:定常空気圧V0を規定空気圧V1よりも低下した値とする。
タイヤB:定常空気圧V0を規定空気圧V1と同じ値に固定的に設定する。
本実施の形態では、ユーザが操作入力部22を設定操作することによりタイヤA、Bの何れが車両に装着されているかを示す設定情報が定常空気圧決定手段30Bに供給される。
したがって、本実施の形態では、定常空気圧決定手段30Bによる定常空気圧の決定は、路面の状態に加えてタイヤ2の特性に基づいてなされる。
なお、前記の路面状態検出手段(加速度センサ14、雨滴感知センサ16)と、定常空気圧決定手段30Bとを省略することもできる。しかしながら、本実施の形態のようにすると、路面の状況に応じて的確に制動性能を確保する上で有利となる。
【0024】
次に、タイヤ空気圧制御装置10の動作について、図5のフローチャートと、図6の線図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両に装着されているタイヤ2が、前記のタイヤA(路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤ)である場合について説明する。
空気圧制御用ECU30は、図5に示すフローチャートの処理ルーチンを繰り返して実行する。
まず、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて(車両の走行速度Vが0km/hであるか否かに基づいて)車両が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS10:車両停止状態検出ステップ)。
ステップS10の判定結果が肯定であれば(車両停止状態)、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に調整する(ステップS12:第2の空気圧調整ステップ)。
したがって、図6に示すようにタイヤの空気圧は定常空気圧V0=240kPaから規定空気圧V1=350kPaに増圧される。
これにより、車両発進時の転がり抵抗が抑制され、発進時の燃費が向上される。
以下、ステップS10に戻る。
【0025】
一方、ステップS10の判定結果が否定であれば(車両走行状態)、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12で検出された走行速度Vが閾値速度Vrefを超過したか否かを判定する(ステップS14:速度検出ステップ、第1の空気圧調整ステップ)。本実施の形態では閾値速度Vref=40km/hとする。
ステップS14の判定結果が否定であれば、ステップS10に戻る。
ステップS14の判定結果が肯定であれば、空気圧制御用ECU30(定常空気圧決定手段30B)は、雨滴感知センサ20や、加速度センサ14で検出された路面状態および操作入力部22から設定されたタイヤ特性に基づいて定常空気圧V0を決定する(ステップS16)。
ここで、路面状態が乾燥している場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1よりも低い240kPaに決定される。
また、路面状態が雨で濡れている場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1と同一あるいはほぼ同一の値に決定される。
【0026】
次に、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1からステップS16で決定された定常空気圧V0に調整する(ステップS18:第1の空気圧調整ステップ)。そして、ステップS10に戻る。
したがって、路面状態が乾燥している場合には、図6に示すように、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧される。
これにより、車両が制動される場合、乾燥した路面状態における制動性能が確保される。
一方、路面状態が濡れている場合には、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されることなく、規定空気圧V1と同一またはほぼ同一の値に維持される。
これにより、車両が制動される場合、濡れた路面状態における制動性能が確保される。
以上の動作が繰り返して実行される。
【0027】
なお、車両に装着されるタイヤが、路面が乾燥している場合に、空気圧を規定空気圧V1とした状態の制動性能が、定常空気圧V0の場合の制動性能と同程度に維持できる特性を有するタイヤBであった場合は次のような動作となる。
すなわち、ステップS16で決定される定常空気圧V0は、路面状態に拘らず規定空気圧V1と同じ値とされるため、タイヤの空気圧は、車両の停止、走行に拘らず常に規定空気圧V1に維持される。したがって、タイヤの空気圧の調整はなされない。
【0028】
以上説明したように本実施の形態によれば、車両の走行速度Vが予め定められた閾値速度Vrefを超過したことが検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧P0に調整し、車両が停止状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧P0よりも高い規定空気圧P1に調整するようにした。
したがって、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を発進させるため、車両発進時の転がり抵抗を抑制できる。また、閾値速度Vrefを超過して走行している時は、タイヤ2の空気圧が定常空気圧P0の状態で車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保することができる。
【0029】
以下、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
図7は、第1の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置10を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
試験条件は以下の通りである。
1)タイヤ2の仕様
215/55R17 93V
2)車両の仕様
2000ccセダン
3)燃費消費評価条件
予め定められた走行パターンを30分走行
【0030】
比較例1は、定常空気圧V0および規定空気圧V1の双方をメーカーで指定した常用空気圧240kPaとしたものである。
比較例2は、定常空気圧V0および規定空気圧V1の双方をメーカーで指定した最高空気圧350kPaとしたものである。
実施例1は、第1の実施の形態のようにタイヤ2の空気圧を、定常空気圧V0=240kPaと、規定空気圧V1=350kPaとに調整したものである。
評価項目は、燃料消費と乾燥路面での制動性能であり、比較例1における燃料消費と乾燥路面での制動性能とをそれぞれ100%とした指数で表示している。
【0031】
図7に示すように、比較例1に対して比較例2は燃費が6%向上している反面、制動性能が5%悪化している。
実施例1は、比較例1に対して燃費が4%向上し、かつ、制動性能は同等であり、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上で有利となっている。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、発進時にはタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1に調整し、発進時を除く走行期間においてはタイヤの空気圧を規定空気圧P1よりも低い定常空気圧P0に調整した。
したがって、発進時には転がり抵抗を抑制できる反面、走行時における転がり抵抗は発進時に比較して若干増加することになり、燃費のさらなる抑制を図る上で改善の余地がある。
そこで、第2の実施の形態では、制動時にのみタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1よりも低い定常空気圧P0に調整し、制動時以外の期間ではタイヤ2の空気圧を規定空気圧P1に調整するようにすることで、燃費のさらなる抑制を図りつつ制動性能を確保している。
【0033】
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様、同一の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略しあるいは簡単に行う。
図8は、第2の実施の形態に係るタイヤ空気圧制御装置40の構成を示すブロック図である。
タイヤ空気圧制御装置40は、第1の実施の形態で説明した車速センサ12、加速度センサ14、路車間通信部16、ナビゲーション装置18、雨滴感知センサ20、操作入力部22、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30に加えて、ブレーキスイッチ32を含んで構成されている。
【0034】
ブレーキスイッチ32は、運転者によるブレーキペダルの操作を検出して制動操作がなされているか否かを検出し、その検出結果を空気圧制御用ECU30に供給するものである。
空気圧制御用ECU30は、車速センサ12によって検出された走行速度と、ブレーキスイッチ32の検出結果とに基づいて、車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、車両が停止状態にあるか、車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する。
したがって、車速センサ12、ブレーキスイッチ32、空気圧制御用ECU30によって特許請求の範囲の車両状態検出手段が構成されている。
なお、車速センサ12に代えてナビゲーション装置18を用い、ナビゲーション装置18によって検出された時間経過に伴う測位データの変化に基づいて車両の停止状態を検出するようにしてもよい。
【0035】
また、空気圧制御用ECU30は、制御プログラムを実行することにより、圧力センサ24の検出結果に基づいて、加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を調整する。
第2の実施の形態では、空気圧制御用ECU30は、車両が制動状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧V0に調整し、車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧V0よりも高い規定空気圧V1に調整する。
また、空気圧制御用ECU30は、タイヤ2の空気圧が定常空気圧V0に調整された状態で、車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立したときに、タイヤ2の空気圧を定常空気圧V0から規定空気圧V1に調整する。「予め定められた速度」は例えば5km/hであり、「予め定められた時間」は例えば10秒である。
したがって、第2の実施の形態においても、圧力センサ24、加圧ポンプ26、電磁バルブ28、空気圧制御用ECU30により特許請求の範囲の空気圧調整手段が構成されている。
また、第2の実施の形態では、空気圧制御用ECU30が制御プログラムを実行することにより、第1の実施の形態における定常空気圧決定手段30Bが実現されている。なお、第2の実施の形態では、閾値速度決定手段30Aは設けられていない。
【0036】
次に、タイヤ空気圧制御装置40の動作について、図9のフローチャートと、図10の線図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両に装着されているタイヤが、前述したように路面が乾燥している場合に規定空気圧V1の空気圧では制動性能の低下が生じる特性を有するタイヤAである場合について説明する。
空気圧制御用ECU30は、図9に示すフローチャートの処理ルーチンを繰り返して実行する。
まず、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて(車両の走行速度Vが0km/hであるか否かに基づいて)車両が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS30:車両状態検出ステップ)。
ステップS30の判定結果が肯定であれば(車両停止状態)、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に調整する(ステップS32:第2の空気圧調整ステップ)。
したがって、図10に停止検出と表記した時点(t=50sec)において、タイヤ2の空気圧は定常空気圧V0=240kPaから規定空気圧V1=350kPaに増圧される。
これにより、車両発進時の転がり抵抗が抑制され、発進時の燃費が向上される。
以下、ステップS30に戻る。
【0037】
一方、ステップS30の判定結果が否定であれば(車両走行中)、空気圧制御用ECU30は、ブレーキスイッチ32の検出結果に基づいて車両が制動状態にあるか否かを判定する(ステップS34:車両状態検出ステップ)。
ステップS34の判定結果が肯定であれば(制動中)、空気圧制御用ECU30(定常空気圧決定手段30B)は、雨滴感知センサ20や、加速度センサ14で検出された路面状態および操作入力部22から設定されたタイヤ特性に基づいて定常空気圧V0を決定する(ステップS38)。
ここで、路面状態が乾燥している場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1よりも低い240kPaに決定される。
また、路面状態が雨で濡れている場合には、定常空気圧V0は規定空気圧V1と同一あるいはほぼ同一の値に決定される。
【0038】
次に、空気圧制御用ECU30は、圧力センサ24の検出結果に基づいて加圧ポンプ26および電磁バルブ28の動作を制御することによりタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1からステップS38で決定された定常空気圧V0に調整する(ステップS40:第1の空気圧調整ステップ)。そして、ステップS30に戻る。
したがって、路面状態が乾燥している場合には、図10に制動検出と表記した時点において、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されていく。
これにより、車両が制動される場合、乾燥した路面状態における制動性能が確保される。
一方、路面状態が濡れている場合には、タイヤの空気圧は規定空気圧V1=350kPaから定常空気圧V0=240kPaに減圧されることなく、規定空気圧V1と同一またはほぼ同一の値に維持される。
これにより、車両が制動される場合、濡れた路面状態における制動性能が確保される。
【0039】
また、ステップS34の判定結果が否定であれば(走行状態)、空気圧制御用ECU30は、車速センサ12の検出結果に基づいて車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立するか否かを判定する(ステップS36)。
なお、空気圧制御用ECU30は、車両の走行状態を検出した時点の走行速度に対して走行速度の増加量を常時監視しており、その監視結果に基づいて車両が予め定められた速度以上走行するか否かを判定している。
また、空気圧制御用ECU30は、車両の走行状態を検出した時点から計時動作を行うと共に、車両の停止状態を検出した時点で計時結果をクリアすることで、車両が走行している時間を常時監視しており、その監視結果に基づいて車両が予め定められた時間以上走行するか否かを判定している。
ステップS36の判定結果が肯定であれば、ステップS38、S40を実行し、ステップS30に戻る。
【0040】
なお、前回の処理ルーチンにおいてステップS34で車両が制動状態と判定され、今回の処理ルーチンにおいてステップS34で車両が制動状態でない(走行状態)であると判定された場合を考える。
この場合、ステップS36により前記条件の何れかが成立するということは、例えば、いったんブレーキ操作をしたものの、車両が停止する前に再び加速したか、あるいは、減速した状態で予め定められた時間走行していることになる。つまり、いったんブレーキ操作をしたもののすぐにブレーキ操作を解除したことになる。
このような状況では、車両が停止状態に至らないため、タイヤ2の空気圧を定常空気圧V0に調整する必要がなくなる。
したがって、前回の処理ルーチンによりステップS34で制動状態と判定されてステップS38、S40が実行されてタイヤ2の空気圧が定常空気圧V0に減圧されたとしても、今回の処理ルーチンによりステップS36の条件が成立するとステップS32に移行してタイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に増圧するようにしているのである。
このようにすることで、車両が制動状態に至らない場合は、タイヤ2の空気圧を規定空気圧V1に的確に調整することができ、したがって、燃費の抑制を図る上で有利となる。
【0041】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、車両が制動状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を予め定められた定常空気圧V0に調整し、車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときにタイヤ2の空気圧を定常空気圧V0よりも高い規定空気圧V1に調整するようにした。
したがって、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を発進させると共に、タイヤ2の空気圧が規定空気圧P1の状態で車両を走行させることができるので、車両発進時および走行時の双方で転がり抵抗を抑制できる。また、車両が制動状態にある時は、タイヤ2の空気圧を定常空気圧P0に調整して車両を制動することできる。このため、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上でより有利となる。
【0042】
以下、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
図11は、第2の実施の形態によるタイヤ空気圧制御装置40を用いてタイヤ2の空気圧制御を実施した実施例と、タイヤ2の空気圧制御を実施しない比較例とにおける燃費、制動性能の評価結果を示す図である。
試験条件は以下の通りである。
1)タイヤ2の仕様
215/55R17 93V
2)車両の仕様
2000ccセダン
3)燃費消費評価条件
予め定められた走行パターンを30分走行
【0043】
比較例3、4、実施例2におけるタイヤ2の空気圧は第1の実施の形態における比較例1、2、実施例1と同様に設定されている。
評価項目は、燃料消費と乾燥路面での制動性能であり、比較例3における燃料消費と乾燥路面での制動性能とをそれぞれ100%とした指数で表示している。
【0044】
図11に示すように、比較例3に対して比較例4は燃費が6%向上している反面、制動性能が5%悪化している。
実施例2は、比較例3に対して燃費が6%向上し、かつ、制動性能は1%のごくわずかな低下に留まっており、燃費の向上を図りつつ制動性能を確保する上で有利となっている。なお、実施例2において制動性能が1%低下する理由は以下の通りである。
図10に示すように、制動状態が検出された時点でタイヤ2の空気圧が規定空気圧V1から定常空気圧V0に減圧されるのであるが、タイヤ2の空気圧が規定空気圧V1から定常空気圧V0に至るまでに多少の時間が必要である。
そのため、制動のごく初期には、タイヤ2の空気圧が未だ定常空気圧V0に到達していないことから制動性能がごくわずかに低下している。しかしながら、図11に示すように、制動性能の低下は1%に留まっており無視することができる。
【符号の説明】
【0045】
2……タイヤ、4……ホイール、6……通気孔、10、40……タイヤ空気圧制御装置、12……車速センサ、14……加速度センサ、16……路車間通信部、18……ナビゲーション装置、20……雨滴感知センサ、22……操作入力部、24……圧力センサ、26……加圧ポンプ、28……電磁バルブ、30……空気圧制御用ECU、30A……敷地速度決定手段、30B……定常空気圧決定手段、32……ブレーキスイッチ、P0……定常空気圧、P1……規定空気圧、V……走行速度、Vref……閾値速度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、
前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、
前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段と、
前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧制御装置。
【請求項2】
前記走行速度を予め定められたサンプリング周期でサンプリングして走行速度情報として蓄積すると共に、前記走行速度情報に基づいて前記閾値速度を決定する閾値速度決定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項3】
前記車両が走行する道路に対して予め定められている制限速度情報を取得する制限速度取得手段と、
前記取得された制限速度情報に基づいて前記閾値速度を決定する閾値速度決定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項4】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、
前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出手段と、
前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧制御装置。
【請求項5】
前記空気圧調整手段は、前記タイヤの空気圧が前記定常空気圧に調整された状態で、前記車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、前記車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立したときに、前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧から前記規定空気圧に調整する、
ことを特徴とする請求項4記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項6】
前記車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段と、
前記検出された路面の状態に基づいて前記定常空気圧を決定する定常空気圧決定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項7】
前記定常空気圧決定手段による前記定常空気圧の決定は、前記路面の状態に加えて前記タイヤの特性に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項6記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項8】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、
前記車両の走行速度を検出する速度検出ステップと、
前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出ステップと、
前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、
前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤ空気圧制御方法。
【請求項9】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、
前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出ステップと、
前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、
前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤ空気圧制御方法。
【請求項1】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、
前記車両の走行速度を検出する速度検出手段と、
前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出手段と、
前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧制御装置。
【請求項2】
前記走行速度を予め定められたサンプリング周期でサンプリングして走行速度情報として蓄積すると共に、前記走行速度情報に基づいて前記閾値速度を決定する閾値速度決定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項3】
前記車両が走行する道路に対して予め定められている制限速度情報を取得する制限速度取得手段と、
前記取得された制限速度情報に基づいて前記閾値速度を決定する閾値速度決定手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項4】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御装置であって、
前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出手段と、
前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整し、前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する空気圧調整手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧制御装置。
【請求項5】
前記空気圧調整手段は、前記タイヤの空気圧が前記定常空気圧に調整された状態で、前記車両の走行速度が予め定められた速度以上増加するか、あるいは、前記車両が予め定められた時間以上走行するかの何れかの条件が成立したときに、前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧から前記規定空気圧に調整する、
ことを特徴とする請求項4記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項6】
前記車両が走行する路面が乾燥した状態であるか水で濡れている状態であるかを検出する路面状態検出手段と、
前記検出された路面の状態に基づいて前記定常空気圧を決定する定常空気圧決定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項7】
前記定常空気圧決定手段による前記定常空気圧の決定は、前記路面の状態に加えて前記タイヤの特性に基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項6記載のタイヤ空気圧制御装置。
【請求項8】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、
前記車両の走行速度を検出する速度検出ステップと、
前記車両が停止状態にあることを検出する車両停止状態検出ステップと、
前記走行速度が予め定められた閾値速度を超過したことが検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、
前記車両が停止状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤ空気圧制御方法。
【請求項9】
車両に取り付けられたタイヤの空気圧を制御するタイヤ空気圧制御方法であって、
前記車両が走行中にブレーキが作動している制動状態にあるか、前記車両が停止状態にあるか、前記車両が走行中でブレーキが非作動である走行状態にあるかを検出する車両状態検出ステップと、
前記車両が制動状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を予め定められた定常空気圧に調整する第1の空気圧調整ステップと、
前記車両が停止状態あるいは走行状態にあると検出されたときに前記タイヤの空気圧を前記定常空気圧よりも高い規定空気圧に調整する第2の空気圧調整ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤ空気圧制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−10478(P2013−10478A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145969(P2011−145969)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
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