説明

タイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置

【課題】従来のタイヤ試験機のドラム方式やベルト方式に代るものとして、スリップ角がゼロの平坦な擬似路面が得られるようなタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置を提供する。
【解決手段】多数の帯状板9を左右の車輪7、6に掛け渡したループ状連結手段(チェーン)8a、8bに連結してループ状とし、上方に位置している前記帯状板9の上面を被測定タイヤが当接する所定長さの平坦な擬似路面Aに形成すると共に、該擬似路面Aの両側面部にローラ11dからなる擬似路面Aの横ずれ防止手段11を設け、更に該擬似路面Aの下側から前記帯状板9の下面を支承するローラ10rからなる支持手段10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用タイヤのタイヤ性能を測定するタイヤ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にタイヤ試験機は、ホイールと組み合せたタイヤを試験台上にセットして、コーナリング性能、ユニフォミティ、転がり抵抗、単体騒音、耐久性等の測定を行なっている。
【0003】
従来のタイヤ試験機は、タイヤ荷重を回転ドラムで受けるドラム方式又はタイヤ荷重をベルトで受けるベルト方式が採用されていた。
【0004】
しかしドラム型のタイヤ試験機では表面が平坦ではなく丸みを持ち、通常走行の平坦路面とはタイヤの接地長さが異なってくる。又、ドラムの曲率に応じてスリップ角1度当りの横力(コーナリングスティッフネス)が異なってくるという問題があった。
【0005】
一方、ベルト型のタイヤ試験機は平坦な路面が得られるが、供試タイヤの荷重によりベルトが撓むという問題があった。
【0006】
そこで、被験タイヤの荷重を支持できると共に平坦な試験用の路面を構成するものとして、タイヤ試験機の試験台は、回転ドラムと、2個の従動ローラと、前記回転ドラムと前記従動ローラに掛け渡した無端ベルト又は無限軌道とを有して形成され、被験タイヤは前記無端ベルトに当接すると共に該被験タイヤの荷重を前記回転ドラムで支承するように形成したタイヤ試験装置の例がある(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−83812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし前記特許文献1のタイヤ試験装置もタイヤと接するベルトはタイヤが発生する横力により押し出されるため、ベルトが外れることを防ぐ装置が必要である。
【0009】
又、ベルトは、前記横力と、ある釣り合いを保ちながら絶えず蛇行をするので、真のスリップ角を定めることができない。
【0010】
したがって、大きなスリップ角で試験を行なう場合には精度的な問題が生じないが、小さなスリップ角で測定する必要があるコーナリングスティッフネスやユニフォミティの測定については、必要な測定精度が得られないという問題があった。
【0011】
即ち、一般的にベルトは0.05度〜0.1度程度の蛇行走行をする。スリップ角が0.05度〜0.1度の蛇行をするということは、スリップ角精度及び測定制度が5〜10%もあることを意味する。
【0012】
又、タイヤのユニフォミティについても蛇行するフラットベルトを用いた試験機では満足できる精度が得られないという問題があった。
【0013】
本発明は、従来のドラム型及びベルト型のタイヤ試験機に生ずる前記の問題点を解消し、ユニフォミティの測定、特にプライステア及びコニシティの測定等が正確にできて、しかも正転、逆転を容易に行なえるようなタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこの目的を達成すべく、多数の帯状板を、左右の車輪に掛け渡したループ状連結手段に連結し、上方に位置している前記帯状板の上面を被測定タイヤが当接する所定長さの平坦な擬似路面に形成すると共に、擬似路面の両側縁に、該擬似路面の横ずれを防止する横ずれ防止手段を設けた。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、普通路面と同じフラットな擬似路面とすると共に路面の横ずれを防止したので、スリップ角ゼロが実現でき、タイヤのユニフォミティ特にプライステアやコニシティ等が正確に測定でき、更に擬似路面の正転・逆転も容易に行なえるタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置を提供できる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のタイヤ試験機の正面図である。
【図2】該タイヤ試験機の側面図である。
【図3】該タイヤ試験機の平面図である。
【図4】該タイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置の個所の正面断面図である。
【図5】図4のX−X線截断面図である。
【図6】図4のY−Y線截断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0018】
本発明のタイヤ踏面受け装置を有するタイヤ試験機の実施例1を図面により説明する。
【0019】
図1は実施例1のタイヤ試験機の正面図であり、図2は該タイヤ試験機1の側面図であり、図3は該タイヤ試験機1の平面図である。
【0020】
タイヤ試験機1は、タイヤ踏面受け装置2とタイヤ軸支持装置3と、フレーム4とからなる。そして該フレーム4は、前記タイヤ踏面受け装置2の第1のフレーム部4aと前記タイヤ軸支持装置3の第2フレーム部4bとからなり、前記第1フレーム部4aは、直方体状の枠体に形成されており、前記第2フレーム部4bの下部に前方に突出して設けられている。
【0021】
次に前記タイヤ踏面受け装置2を図4乃至図6により説明する。
【0022】
図4は前記タイヤ踏面受け装置2の構造の詳細を示す正面断面図であり、図5は図4におけるX−X線截断面図であり、図6は図4におけるY−Y線截断面図である。
【0023】
前記タイヤ踏面受け装置2は、前記第1フレーム部4a内の右側位置に軸支されている前後1対のスプロケット6a、6bからなる第1車輪6と、該フレーム4内の左側位置に軸支されている前後1対のスプロケット7a、7bからなる第2車輪7と、前記第1フレーム部4a内の前方部において第1車輪6のスプロケット6aと第2車輪7のスプロケット7aに係合して巻掛けされているチェーンからなるループ状連結手段8aと、前記第1フレーム部4a内の後方部において、第1車輪6のスプロケット6bと第2車輪7のスプロケット7bに係合して巻掛けされているチェーンからなるループ状連結手段8bと、これら前後のループ状連結手段8a、8bに両端部で連結して係止した多数の帯状板9とから構成されている。
【0024】
そして前記帯状板9は、縦長の矩形形状で、タイヤの踏面圧力にも変形しない剛性を有し、前記ループ状連結手段8a、8bに各帯状板9の両側で互に当接するように連続して係着しており、上方に位置する連続する帯状板9の平坦な上面が擬似路面Aを形成する。
【0025】
10は前記タイヤ踏面受け装置2を形成する帯状板9の下面を下側から支承するための支承手段、11は前記帯状板9の横ずれを防止するための横ずれ防止手段を示し、前記支承手段10は複数組の帯状板支承体10a、10b、10c等からなり、各支承体は長尺体10pと、該長尺体10pに等間隔に形成した透孔に中間部で回動自在に軸支されている回転軸10qと、各回転軸10qの両端部に固定したローラ10rとからなり、ローラ10rの1対を回転軸10qの左右に取り付け、該回転軸10qの中心部を回動自在に支持する構造として、各ローラ10rにかかる力のバランスがとれるようにした。
【0026】
そして、前記帯状板支承体10a、10b、10c等は、前記タイヤ踏面受け装置2の上部の帯状体9の下面側に当接すると共に第1フレーム部4aに固定したベース板4c上に固定されており、その配置は、例えば前記タイヤ踏面受け装置2の中心部の下側に帯状板支承体10a、10b、10cの3組を平行に配置し、該中心部の左右の下側に各2組の帯状板支承体10d、10e及び10f、10gを各平行に配置して荷重の平準化を図って前記擬似路面Aを支承するようにした。
【0027】
又、前記横ずれ防止手段11は、前記タイヤ踏面受け装置2の前方部にある第1横ずれ防止体11aと、該タイヤ踏面受け装置2の後方部にある第2横ずれ防止体11bとからなり、これら第1及び第2横ずれ防止体11a、11bは、前記タイヤ踏面受け装置2の上方に位置する連続する帯状板9の前端の側方及びこれら帯状板9の後端の側方において前記第1フレーム部4aの上方部に設けた帯状支持板11cとこれら帯状支持板11cにそれぞれ回動自在に枢支したローラ11dとからなり、これら第1、第2横ずれ防止体11a、11bのローラ11dが前記連続する帯状板9の前端面と後端面即ち前記擬似路面Aの両側縁に当接するようにした。
【0028】
12は電動モータであり、変速機13を介して前記第1車輪6を正転又は逆転駆動する。
【0029】
14は作業員の作業台を示す。
【0030】
次に前記タイヤ軸支持装置3について説明する。
【0031】
タイヤ軸支持装置3は、図1乃至図3に示す如く、タイヤWをマウントしたホイールを取り付けて回動自在に支承するための支承軸3aと、前記第2フレーム部4bに設けられ前記支承軸3の向きを水平状態で左右方向に回動制御したり或いは該支承軸3の向きを上下斜方向に傾動制御したり、或いは該支承軸3を上下制御したりする駆動手段3bとからなる。
【0032】
そして、前記支承軸3にロードセル(図示せず)が貼着されており、該ロードセルからの検出信号を所定の信号処理して、演算手段により測定データを得るようにしている。
【0033】
次に本発明のタイヤ踏面受け装置2を有するタイヤ試験機1の使用方法及びその効果について説明する。
【0034】
被測定タイヤWはホイールにマウントして、前記タイヤ軸支持装置3の支承軸3aに取り付ける。
【0035】
そして該支承軸3を下動させ、被測定タイヤWの下面部を前記タイヤ踏面受け装置2の中央部の上面即ち擬似路面Aに当接させる。
【0036】
尚、該被測定タイヤWが当接するときの圧力や前記支承軸3aの向き(傾斜角)は、試験のニーズに応じて変更することができる。
【0037】
次いで前記電動モータ12により第1車輪6が回動駆動し、該第1車輪6の前後のスプロケット6a、6bに係合するチェーンからなる前後のループ状連結手段8a、8bが連続する帯状板9と共に回転移動する。そしてこの回転移動に伴ってこれら帯状板9において上方に位置する帯状板9の上面の平坦な擬似路面Aと接する被測定タイヤWは回転する。
【0038】
このとき、上方に位置する回転移動する帯状板9の前端面と後端面は第1横ずれ防止体11aと第2横ずれ防止体11bのローラ11dに当接してこれら帯状板9即ち擬似路面Aの横ずれが完全に防止され、かくて、本発明のタイヤ踏面受け装置2は、従来のフラットベルト式とは異なり、スリップ角ゼロが実現できる。
【0039】
従ってユニフォミティの測定、特にプライステアやコニシティの測定、又残留横力やSAT(セルフ・アライングトルク特性)の測定等が正確にできて、例えば車両横流れ現象の改善データの測定のための諸特性の測定も可能である。
【0040】
又、従来のベルト式タイヤ試験機ではフラットベルトが消耗品であるため、タイヤ試験機のメンテナンス・コストが高いという問題があったが、本発明の帯状板9は半永久的に使用できるので、本発明のタイヤ踏面受け装置を具備したタイヤ試験機はメンテナンス・コストが安いというメリットもある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のタイヤ踏面受け装置を具備したタイヤ試験機は、自動車用タイヤの生産ライン等で使用される。
【符号の説明】
【0042】
1 タイヤ試験機
2 タイヤ踏面受け装置
6、7 車輪(第1車輪、第2車輪)
6a、6b、7a、7b スプロケット
9 帯状板
10 支承手段
10r、11d ローラ
11 横ずれ防止手段
A 擬似路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の帯状板を、左右の車輪に掛け渡したループ状連結手段に連結し、上方に位置している前記帯状板の上面を被測定タイヤが当接する所定長さの平坦な擬似路面に形成すると共に、擬似路面の両側縁に、該擬似路面の横ずれを防止する横ずれ防止手段を設けたタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置。
【請求項2】
前記ループ状連結手段は前記帯状板の両側方に配置されているチェーンからなると共に、前記車輪は前記チェーンに係合するスプロケットからなり、該スプロケットの正逆回転により前記擬似路面が前進又は後退する請求項1に記載のタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置。
【請求項3】
前記横ずれ防止手段は、前記擬似路面の両側縁に当接して回動自在に軸支されている複数のローラからなる請求項1に記載のタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置。
【請求項4】
前記擬似路面を形成する前記帯状板の下面を支承する支承手段を具備する請求項1に記載のタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置。
【請求項5】
前記支承手段は複数のローラからなり、これらローラは、前記擬似路面を形成する前記帯状板の下面に当接して支承するように形成されている請求項4に記載のタイヤ試験機のタイヤ踏面受け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122938(P2012−122938A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275658(P2010−275658)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(510326625)株式会社知能自動車研究所 (1)
【出願人】(000135737)株式会社バンザイ (17)