説明

タイルカーペットの連続プレス裁断方法

【課題】カーペットを原反のまま裁断し、その長手方向におけるロスの発生を無くすることができるタイルカーペットの連続プレス裁断方法を提供することを課題とする。
【解決手段】下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用のプレス刃で構成された、昇降するプレス刃物機構を有するタイルカーペット裁断機で、タイルカーペットを裁断することにより、上辺の裁断面を次裁断ショットの下辺の裁断面と共有化させることにより、次の裁断のために定尺カーペットを長手方向に、裁断しろを含めた長さを送る必要がなく、長手方向におけるロスの発生を無くすることができるタイルカーペットの連続プレス裁断方法とすることができる。ことを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、この発明は、長尺のカーペット原反からタイルカーペットを切り出す連続プレス裁断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺のカーペット原反から所定大きさのタイルカーペットを切り出す方法には、所定大きさの一辺ずつを、カーペット又は刃物を移動させ回転刃物で裁断する方式(特許文献1参照)と、ヒートカッターで裁断する方式(特許文献2参照)と、超音波の振動で裁断する方式(特許文献3参照)等があり、さらには所定大きさの複数辺を昇降する刃物でカーペットを切抜くプレス裁断方式(特許文献4参照)とがある。ところで、前者の所定大きさの一辺ずつを裁断する方式は、カーペット原反に対して一方向にしか裁断できないため、縦方向と横方向の裁断の2エ程が必要になり、効率が悪く裁断コストが高くつくと共に、裁断時の回転刃物の接触や、ヒートカッターの熱や、超音波の振動の摩擦熱でカーペット裁断部分に熱変化が生じ、精度の高い裁断を得ることができないという問題がある。一方、後者のプレス裁断方式は、縦方向と横方向の裁断が同時に行なえるため、裁断効率及び裁断縁の直角精度が回転刃物方式等よりも優れている。
【0003】
ところで、従来のプレス裁断方式は、カーペット原反を裁断機に投入し、これを格子枠状に配置した刃物で切抜くため、カーペットの間囲にロスが発生する。カーペット原反はその構造上両側縁に耳部があり、これを取除くために生じるロスはしかたないが、定尺カーペットから格子枠状に裁断を行い、次の裁断のために定尺カーペットを長手方向に送る必要があるが、この時、格子枠状の縦サイズ+裁断しろを送って、この裁断しろが全く無駄となっている。
【特許文献1】特開昭56−146692号公報
【特許文献2】特開2001−87115号公報
【特許文献3】特開昭60−65174号公報
【特許文献4】特開昭61−230899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題を解決し、カーペットを原反のまま裁断し、その長手方向におけるロスの発生を無くすることができるタイルカーペットの連続プレス裁断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、昇降するプレス刃物機構を下辺、右縦辺、左縦辺のプレス刃で構成することにより、下辺の裁断面を次裁断プレスの上辺の裁断面と共有化させることにより、長手方向におけるロスの発生を無くすることができるタイルカーペットの連続プレス裁断方法とすることができることを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0006】
[1]上辺、下辺、右縦辺、左縦辺で形成される方形のタイルカーペットを裁断するタイルカーペット裁断方法において、カーペット原反を間歇に前進させ、下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用のプレス刃で構成された、昇降するプレス刃物機構を有するタイルカーペット裁断機で、タイルカーペットを裁断することを特徴とするタイルカーペットの連続プレス裁断方法。
【発明の効果】
【0007】
[1]の発明では、下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用のプレス刃で構成された、昇降するプレス刃物機構を有するタイルカーペット裁断機で、タイルカーペットを裁断することにより、上辺の裁断面を次裁断ショットの下辺の裁断面と共有化させることにより、次の裁断のために定尺カーペットを長手方向に、裁断しろを含めた長さを送る必要がなく、長手方向におけるロスの発生を無くすることができるタイルカーペットの連続プレス裁断方法とすることができる。その結果、廃材を減少させ、地球環境保護に十分に貢献することができる。またプレス刃で裁断するために、カーペット裁断部分に熱変化が生じることなく、寸法精度の優れたタイルカーペットとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下この発明に係わるタイルカーペット(1)の連続プレス裁断方法の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本発明は図1に示すように、上辺(2)、下辺(3)、右縦辺(4)、左縦辺(5)で形成される方形のタイルカーペット(1)を裁断する連続プレス裁断方法であって、本実施形態のタイルカーペットの連続プレス裁断方法は、カーペット原反(6)が間歇に前進し、さらに、下辺切断用プレス刃(7)、右縦辺切断用プレス刃(8)、左縦辺切断用プレス刃(9)で構成された、昇降するプレス刃物機構を有するタイルカーペット裁断機にて裁断されてなるものである。
【0009】
この発明のタイルカーペットの連続プレス裁断方法で用いる昇降するプレス刃物機構を構成するプレス刃は、図2に示すように、タイルカーペットの下辺切断用プレス刃(7)、右縦辺切断用プレス刃(8)、左縦辺切断用プレス刃(9)で方形のタイルカーペットを裁断することを特徴とする。
【0010】
従来のプレス刃は、図3に示すように、タイルカーペットの上辺切断用プレス刃(10)、下辺切断用プレス刃(7)、右縦辺切断用プレス刃(8)、左縦辺切断用プレス刃(9)で構成されている。さらに該1枚のタイルカーペット裁断用構成を、長尺のカーペット原反(6)の幅、及び生産性から、一般的な例として、カーペット原反(6)の長手方向に2列、幅方向に4列を並べたプレス刃物機構としている。当然のことながら、下段の下辺(3)と下段の上段(2)は兼用の切断面となっている。また、隣り合う右縦辺(4)、左縦辺(5)の切断面も兼用となっている。
【0011】
従来の裁断方法では、さらに図5のモデル図に示すように、長尺のカーペット原反(6)を長手方向に裁断しろ(11)を含めた長さで間歇的に送り、連続裁断を行っている。カーペット原反はその構造上両側縁に耳部(12)があり、これを取除くために生じるロスはしかたないが、約50mmの長さの裁断しろ(11)がロスとなっている。
【0012】
本発明においては、図4のモデル図に示すように、長尺のカーペット原反(6)を長手方向に裁断しろ(11)を含まない、タイルカーペット(1)の縦辺の整数倍の長さで間歇的に送り、連続裁断を行うことを特徴とする。即ち、連続するプレス間において、下段の下辺(3)切断面と次プレスの上段上辺(2)切断面を兼用化することにより、裁断しろ(11)によるロスを無くすことができる。500mm角のタイルカーペット(1)とすれば、従来約7%あったロスが約2%となり、約5%のロス減少となる。
【0013】
本発明で用いる裁断機はカーペット原反(6)を載せる受台上においてカーペツトの送り方向の先端部を受ける位置決めストツパーの後部に、下辺切断用プレス刃(7)、右縦辺切断用プレス刃(8)、左縦辺切断用プレス刃(9)で構成された、昇降するプレス刃物機構を組合せ、ストツパーに当接した先端を基準にカーペット原反(6)から所定寸法のタイルカーペット(1)を複数枚同時に切り出すプレス刃物機構と、上記刃物機構の各刃物で囲まれた部分に位置するカーペツト押え部材とを配置し、カーペット原反(6)の先端が位置決めストツパーに当接した後、先ず位置決めストツパーに近い位置の押え部材から後方の押え部材へ順にタイミングをずらしてカーペット原反(6)を受台上に押圧し、受台上におけるカーペットのたるみをプレス刃物機構の後方に逃がし、次にプレス刃物機構でカーペツトから複数枚のタイルカーペツト(1)を切抜くようにしたものである。
【0014】
受台上に送り込まれたカーペット原反(6)の先端縁が位置決ストツパーに当接して停止すると、プレス刃物機構とカーペツト押え部材が降下し、先ず位置決ストツパーに最も近い押え部材から後方の押え部材へと順に、時間をずらしてカーペット原反(6)を押圧し、カーペツトのたるみを後方へと順に逃がし、次に刃物機構がストツパーに当接した先端縁を基準にしてカーペット原反(6)を切抜き、複数枚のタイルカーペツト(1)を同時に形成する。
【0015】
切断後に刃物機構及び押え部材が上昇し、位置決ストツパーが上方に逃げると、カーペット原反(6)が間歇に前進し、裁断位置に送り込まれたカーペット原反(6)の先端縁が下降位置に戻つた位置決ストツパーに当接して停止し、次の切断を行なうものである。
【0016】
本発明に用いるプレス刃は両側面に傾斜した刃面を有する、公知のプレス刃を使用することができる。
【0017】
また、本発明に用いるカーペット原反(6)は、基布にパイルが植設されたパイル布帛からなる表面パイル層と、塩化ビニル樹脂組成物等からなる弾性材料のバッキング層を積層した積層物等を好適に用いることができる。
【0018】
なお、この発明のタイルカーペットの連続プレス裁断方法は、上記製造方法で製造されるものに特に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0020】
<実施例1>
目付90g/m
のポリエステル繊維の不織布(カーペット基材)に、ナイロン繊維からなるパイル糸がループパイルにタフティングされた(パイル目付610g/m
)表面パイル層に塩化ビニル樹脂からなるペーストゾルで、コーティング塗布方法により、2.5mm厚に塗布したカーペツト原反を用意し、図2に示すタイルカーペットの下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用のプレス刃で構成された、プレス刃物機構を有する裁断機により、500mm角に裁断し、タイルカーペットを作成した。
【0021】
<比較例1>
プレス刃物機構を構成するプレス刃を図3に示すように、タイルカーペットの上辺切断用、下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用で裁断したこと以外は実施例1と全く同様にしてタイルカーペットを得た。
【0022】
<比較例2>
カーペット原反の長手方向及び幅方向に走行するヒートカッターにより、タイルカーペットの下辺切断用、下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用で裁断したこと以外は実施例1と全く同様にしてタイルカーペットを得た。
【0023】
上記のようにして得られた各タイルカーペットに対して下記評価法に基づいてカーペット原反のロス率、寸法精度、直角精度を調べた。その結果を表1に示す。
【0024】
(カーペット原反のロス率)
カーペット原反面積に対してのカーペット原反面積からタイルカーペット製品の面積を引いた差分の比率。
【0025】
(寸法精度)
JISL4406に準じて、各タイルカーペットを測定し、寸法精度が±0.1%以内を合格とした。
【0026】
(直角精度)
JISL4406に準じて、各タイルカーペットを測定し、直角精度が±0.1%以内を合格とした。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、実施例1のタイルカーペットは、カーペット原反をタイルカーペットに裁断する工程において、その長手方向におけるロスの発生を少なくし、寸法安定性に優れたタイルカーペットの連続プレス裁断方法であることが認められた。
【0029】
これに対し、比較例1のタイルカーペットはカーペット原反をタイルカーペットに裁断する工程において、その長手方向におけるロスの発生が多く、比較例2のタイルカーペットは寸法安定性に関して良好な性能は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における一実施形態に係るタイルカーペットの概略斜視図である。
【図2】本発明における一実施形態に係る連続プレス裁断方法で用いるプレス刃の概略図である。
【図3】従来方法に係る連続プレス裁断方法で用いるプレス刃の概略図である。
【図4】本発明における一実施形態に係る長尺のカーペット原反を連続プレス裁断方法でプレスで打ち抜くモデル図である。
【図5】従来方法に係る長尺のカーペット原反を連続プレス裁断方法でプレスで打ち抜くモデル図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・タイルカーペット
2・・・上辺
3・・・下辺
4・・・右縦辺
5・・・左縦辺
6・・・カーペット原反
7・・・上辺切断用プレス刃
8・・・右縦辺切断用プレス刃
9・・・左縦辺切断用プレス刃
10・・・下辺切断用プレス刃
11・・・裁断しろ
12・・・耳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上辺、下辺、右縦辺、左縦辺で形成される方形のタイルカーペットを裁断するタイルカーペット裁断方法において、カーペット原反を間歇に前進させ、下辺切断用、右縦辺切断用、左縦辺切断用のプレス刃で構成された、昇降するプレス刃物機構を有するタイルカーペット裁断機で、タイルカーペットを裁断することを特徴とするタイルカーペットの連続プレス裁断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−11468(P2012−11468A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147041(P2010−147041)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】