タイルユニット及びそれを用いたタイル壁の施工方法
【課題】壁下地への接着不良やタイルユニットの質量増大を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上する。
【解決手段】複数のタイル2と、タイル2を目地間隔Sを維持したまま一体に連結するタイル連結手段3とを具えたタイルユニット1である。タイル2は、左右に隣り合うタイル2、2間を上下にのびる縦目地4A、及び縦目地4Aを含んで上下に隣り合うタイル群2G、2Gの間を左右にのびる横目地4Bを隔てて配置される。縦目地4A又は横目地4Bの一方には、その目地長さに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段3が配され、縦目地4A又は横目地4Bの他方の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成される。
【解決手段】複数のタイル2と、タイル2を目地間隔Sを維持したまま一体に連結するタイル連結手段3とを具えたタイルユニット1である。タイル2は、左右に隣り合うタイル2、2間を上下にのびる縦目地4A、及び縦目地4Aを含んで上下に隣り合うタイル群2G、2Gの間を左右にのびる横目地4Bを隔てて配置される。縦目地4A又は横目地4Bの一方には、その目地長さに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段3が配され、縦目地4A又は横目地4Bの他方の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁下地への接着不良やタイルユニットの質量増大を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうるタイルユニット及びそれを用いたタイル壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の外壁にタイルを接着施工する場合、例えば、複数のタイルの前面を、例えば、紙等のシート材によって連結したタイルユニットが用いられる(例えば、下記特許文献1参照)。このようなタイルユニットは、複数枚のタイルが予め目地間隔をあけて配列されているため、タイルを1枚ずつ貼りつける場合に比べて施工性を向上させる。
【0003】
しかしながら、このようなタイルユニットは、壁下地への接着施工後、シート材等を剥離する必要があるため、施工性のさらなる向上が望まれていた。そこで、図20(a)に示されるネット状のシート材からなるタイル連結手段c1をタイルbの裏面に貼り付けることによりタイルbを連結したタイルユニットa1や、図20(b)に示されるホットメルト接着剤等からなるタイル連結手段c2によりタイルbを連結したタイルユニットa2が提案されている。このようなタイルユニットa1、a2は、接着施工後、シート材等を剥離する必要がないため、タイル壁の施工性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−332568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記タイルユニットa1は、タイルbと壁下地に塗布した接着剤との間にタイル連結手段c1が介在するため、タイルbの裏面の接着剤付着面積が減少し、接着強度が低下しやすいという問題があった。
【0006】
また、上記タイルユニットa2においては、目地長さの10〜30%の長さで形成されるタイル連結手段c2で固着されるため、隣り合うタイルbを強固に連結することができず、輸送中や施工中の衝撃や負荷により、タイル連結手段c2が破断しやすいという問題もあった。
【0007】
さらに、タイルユニットa2では、施工時に把持する際に、タイル連結手段c2がタイルユニットa2の重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下や、タイルユニットa2全体の面剛性不足により、タイルユニットa2の形状が安定しないなど、施工性が低下しやすいという問題もあった。また、タイルユニットa2では、その面剛性を向上させるために、タイル連結手段c2が多数配置されると、縦目地d1及び横目地d2に多数の段差が形成され、外観不良が生じるという問題もあった
【0008】
一方、縦目地d1及び横目地d2の目地長さの全範囲にタイル連結手段c2を配することにより、隣り合うタイルbを強固に連結することも考えられる。しかしながら、このようなタイルユニットでは、縦目地d1及び横目地d2にタイル連結手段c2が隙間なく配されるため、接着施工時において、該タイル連結手段c2と壁下地に塗布される接着剤との間に空気が溜りやすく、接着不良が生じやすいという問題があった。
【0009】
また、前記タイルユニットは、タイルbを圧着する際に生じる、壁下地の接着剤の盛り上がり具合を縦目地d1及び横目地d2から確認することができないため、圧着不足による接着不良が生じやすいという問題もあった。さらに、前記タイルユニットは、タイル連結手段c2による質量増加を招き、搬送性及び施工性等が低下するという問題もあった。
【0010】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、縦目地又は横目地の一方の目地に沿って長尺状にタイル連結手段を配する一方、縦目地又は横目地の他方の少なくとも一部にタイル連結手段が配されない開口部を設けることを基本として、壁下地への接着不良やタイルユニットの質量増大を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうるタイルユニット及びそれを用いたタイル壁の施工方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のうち請求項1記載の発明は、複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具え、前記タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置され、前記縦目地又は前記横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配され、前記縦目地又は前記横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、目地長さの80%以上の長さを有する請求項1に記載のタイルユニットである。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、前記横目地に沿って配され、前記開口部は、少なくとも一つの前記縦目地に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニットである。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、前記開口部は、最も上側に位置する上の縦目地及び最も下側に位置する下の縦目地を除いた中間の縦目地に形成される請求項3に記載のタイルユニットである。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さの全範囲である請求項3又は4記載のタイルユニットである。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さの一部である請求項3又は4記載のタイルユニットである。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の中間部に形成される請求項6記載のタイルユニットである、
【0018】
また、請求項8記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の両端部に形成される請求項6記載のタイルユニットである。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、前記縦目地に沿って配され、前記開口部は、前記横目地の少なくとも一部に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニットである。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、前記横目地をのびる横連結部とが連結されたL字状部分又はT字状部分を含む請求項1乃至9のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0021】
また、請求項11記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、該縦連結部の上下に配されかつ前記横目地をのびる一対の横連結部とが連結された略コ字状部分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0022】
また、請求項12記載の発明は、前記タイル連結手段は、接着剤の硬化物を含む請求項1乃至11のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0023】
また、請求項13記載の発明は、前記接着剤は、湿気硬化型である請求項12に記載のタイルユニットである。
【0024】
また、請求項14記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記接着剤の硬化物を補強する補強材を含む請求項12又は13に記載のタイルユニットである。
【0025】
また、請求項15記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記タイルの前面側に配された主部と、壁下地側に配されかつ主部で目隠しされる前記補強材とを含む請求項14に記載のタイルユニットである。
【0026】
また、請求項16記載の発明は、前記補強材が繊維である請求項14又は15に記載のタイルユニットである。
【0027】
また、請求項17記載の発明は、壁下地に、前記タイル連結手段の接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む接着剤を塗布する工程と、請求項1〜16のいずれかに記載の前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された前記壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明のタイルユニットは、複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具える。タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置される。
【0029】
また、縦目地又は横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配される。このようなタイル連結手段は、隣り合うタイルを強固に連結することができるため、輸送中や施工中の衝撃や負荷によるタイル連結手段の破断防止性を向上しうる。また、施工時にタイルユニットを把持する際には、タイル連結手段がタイルユニットの重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下を抑制できる。さらに、タイルユニットは、タイル連結手段により、面剛性が高められてその形状が安定するため、施工性を向上しうる。
【0030】
さらに、タイル連結手段は、壁下地に塗布した接着剤とタイルとの間に介在しないため、タイルの裏面の接着剤付着面積を減少を抑制し、接着強度の低下を招くおそれもない。また、タイル連結手段は、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に形成されるため、タイル連結手段の破断防止性を維持しつつ、タイル連結手段と壁下地に塗布した接着剤との段差が目地に形成されるのを抑制し、外観不良を防ぎうる。
【0031】
また、縦目地又は横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成される。このような開口部は、接着施工時において、タイル連結手段と壁下地に塗布される接着剤との間に介在する空気を逃がすことができ、空気の閉じ込めによる壁下地への接着不良を抑制しうる。また、開口部からタイルと壁下地に塗布される接着剤との接する部分が目視できるため、タイルを圧着する際に生じる壁下地の接着剤の盛り上がり具合を確認することにより、圧着不足による接着不良も抑制しうる。さらに、開口部は、タイル連結手段の量を減少させることができ、タイルユニットの過度の質量増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】壁下地に接着施工されたタイルユニットを示す正面図である。
【図2】タイルユニットの斜視図である。
【図3】(a)は平板状の補強材を有するタイル連結手段、(b)は繊維からなる補強材を有するタイル連結手段を示す部分斜視図である。
【図4】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図5】縦目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図6】縦目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図7】横目地に開口部が形成されるタイルユニットを示す正面図である。
【図8】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図9】横目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図10】タイルが通し目地状に配置されるタイルユニットを示す正面図である。
【図11】縦目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図12】縦目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図13】横目地に開口部が形成されるタイルユニットを示す正面図である。
【図14】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図15】横目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図16】タイル及びトレーを示す斜視図である。
【図17】タイル連結手段が形成される状態を説明する斜視図である。
【図18】他の実施形態のトレーでタイル連結手段が形成される状態を説明する斜視図である。
【図19】タイル壁の施工方法を示し、(a)は接着剤が塗布された壁下地、(b)はタイルユニットが壁下地に貼り付けられる直前の状態、(c)はタイルユニットが壁下地に貼り付けられた状態を示す各断面図である。
【図20】(a)、(b)は従来のタイルユニットを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のタイルユニット1は、例えば、住宅、ビル等の構造体の壁下地5にタイル2を接着施工して、タイル壁6を形成する際に好適に用いられる。
【0034】
図2に示されるように、タイルユニット1は、複数のタイル2と、これら複数のタイル2を目地間隔Sを維持したまま一体に連結する接着剤8の硬化物からなるタイル連結手段3とを具える。図2に示される本実施形態のタイルユニット1では、裏面側が示されており、12個のタイル2が馬踏み目地状に配されている。このようなタイルユニット1は、工場で予め製造され、施工現場へと持ち込まれる。
【0035】
本実施形態のタイル2は、装飾面となる前面2a、該前面2aの反対側かつタイル2の接着面をなす裏面2b、長手方向の両側で前面2aと裏面2bとの間を継ぐ一対の短側面2c、2c、及び短手方向の両側で前面2aと裏面2bとの間を継ぐ一対の長側面2d、2dを有し、正面視矩形状をなしている。なお、タイル2には、このような正面視矩形状のものに限定されるわけではなく、例えば、正方形状、八角形状のもの等採用でき、さらに、例えばタイル2の四隅がカットされたものも採用できる。
【0036】
また、タイル2としては、各種サイズのものが採用できるが、本実施形態のように正面視横長の矩形状に形成される場合、例えば、長手方向の長さL1が40〜250mm程度、短手方向の長さL2が10〜100mm程度、厚さW1が5〜40mm程度のものが好ましい。また、タイルの材質も、特に限定されないが、例えば、陶器質、せっ器質、磁器質等の陶磁器製が好ましい。
【0037】
タイル2は、左右に隣り合うタイル2、2間を上下にのびる縦目地4A、及び縦目地4Aを含んで上下に隣り合うタイル群2G、2Gの間を左右にのびる横目地4Bを隔てて配置される。本実施形態では、横目地4Bがタイル2の長側面2dに沿ってのびかつ左右へ一直線に連続するとともに、縦目地4Aがタイル2の短側面2cに沿ってのびかつ上下に隣り合うタイル2、2間で途切れている。
【0038】
本発明のタイルユニット1では、縦目地4A又は横目地4Bの一方には、その目地に沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状のタイル連結手段3が配される。また、縦目地4A又は横目地4Bの他方の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成される。
【0039】
本実施形態のタイル連結手段3は、横目地4Bをのびる横連結部3Bが該横目地4Bの目地長さの全範囲に配される。ここで、「目地長さの全範囲に配される」とは、接着剤8の硬化前後の誤差を考慮し、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3が、目地長さL4の90〜110%の範囲に配されることを示している。
【0040】
さらに、タイル連結手段3は、縦目地4Aをのびる縦連結部3Aが最も上側に位置する上の縦目地4Au、及び最も下側に位置する下の縦目地4Adに沿って配されている。本実施形態では、上の縦目地4Auの目地長さの全範囲、及び下の縦目地4Adの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3が配されている。
【0041】
また、開口部7は、縦目地4Aのうち、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adを除いた全ての中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成される。
【0042】
このようなタイルユニット1は、縦目地4A又は横目地4Bの一方(本実施形態では横目地4B)の目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状にタイル連結手段3(横連結部3B)が配されるので、隣り合うタイル2、2を強固に連結することができる。これにより、タイルユニット1は、輸送中や施工中の衝撃や負荷によるタイル連結手段3の破断防止性を向上しうる。また、施工時に把持される際には、タイル連結手段3がタイルユニット1の重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下を抑制でき、面剛性が高められてタイルユニット1の形状が安定するため、施工性を向上しうる。
【0043】
しかも、本実施形態のタイル連結手段3は、縦目地4Aよりも長い横目地4Bの目地に沿って配されるため、タイル2、2をより強固に連結しうる。さらに、本実施形態のタイル連結手段3は、横目地4Bの目地長さの全範囲に配されるので、タイル2、2をさらに強固に連結し、タイルユニット1全体の面剛性をさらに高めることができる。
【0044】
また、本実施形態のタイル連結手段3は、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adに目地長さの全範囲に配される。これにより、一方の長側面2dのみにしか横連結部3Bが配されない最も上側に位置する上のタイル2U、及び最も下側に位置する下のタイル2Eの連結強度を高め、タイル連結手段3の破断防止性をさらに向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のタイル連結手段3は、縦連結部3Aと横連結部3Bとが連結されたT字状部分11を含んでいる。このようなT字状部分11は、タイル連結手段3の強度を向上させ、タイル2の連結強度を大幅に高めることができる。しかも、本実施形態では、連結強度が低下しがちな前記上のタイル2U及び前記下のタイル2Eに、T字状部分11が形成されるので、タイル2の連結強度を効果的に高めうる。
【0046】
また、タイル連結手段3は、壁下地5に塗布した接着剤8とタイル2との間に介在しないため、タイル2の裏面2bの接着剤が付着する面積の減少を抑制し、接着精度の低下を招くおそれもない。また、タイル連結手段3は、横目地4Bに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に形成されるため、該タイル連結手段3と壁下地5に塗布した接着剤8との段差が目地に形成されるのを抑制し、外観不良を防ぎうる。
【0047】
縦目地4A又は横目地4Bの他方(本実施形態では縦目地4A)の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成されるので、接着施工時において、タイル連結手段3と壁下地5に塗布される接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を外部へと逃がすことができ、空気の閉じ込めによる壁下地5へのタイル2の接着不良を抑制しうる。また、開口部7は、タイル2と壁下地5に塗布される接着剤10との接する部分をタイル2の前面2aから目視しうる確認窓としても使用でき、タイル2を圧着する際に生じる壁下地5の接着剤10の盛り上がり具合を確認及び調節して、圧着不足による接着不良も抑制するのに役立つ。さらに、開口部7は、タイル連結手段3の量を減少させ、タイルユニット1の過度の質量増加を抑制でき、搬送性及び施工性を向上しうる。
【0048】
本実施形態では、開口部7が、全ての中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成されるので、タイル連結手段3と接着剤10との間の空気を確実に逃がすことができるとともに、タイルユニット1の質量増加を効果的に抑制できる。本実施形態では、開口部7が中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成されるが、該開口部7の長手方向の両端に、タイル連結手段3(横連結部3B)が配されているため、タイル2の連結強度の低下を招くこともない。
【0049】
上記作用を効果的に発揮させるために、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3は、目地長さL4の好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは目地長さL4の全範囲が望ましい。タイル連結手段3の目地に沿った長さL3が小さすぎると、タイルユニット1の形状安定性を十分に高めることができず、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上できないおそれがある。
【0050】
また、タイル2の裏面2b側において、全ての開口部7の総面積は、好ましくは800mm2以上、さらに好ましくは850mm2以上が望ましい。前記開口部7の前記総面積が小さすぎると、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を、十分に逃がすことができないおそれがある。逆に、開口部7の前記総面積が大きすぎると、タイル2の連結強度が低下するおそれがある。このような観点より、前記開口部7の前記総面積は、好ましくは1000mm2以下、さらに好ましくは950mm2以下が望ましい。
【0051】
前記タイル連結手段3は、その厚さW2が0.3〜0.7mm程度に設定されるのが好ましい。また、前記接着剤8は、壁下地5に塗布される接着剤10(図1に示す)と同様に、湿気硬化型であるのが好ましい。このようなタイル連結手段3は、硬化した接着剤10と強固に一体化し、タイル2を接着させることができる。
【0052】
また、前記接着剤8の主剤としては、適宜選択できるが、例えば、硬化時の体積収縮が少なく、優れた接着力を有するエポキシ樹脂からなるのが好ましい。また、エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、良好な弾力性を有する変成シリコンエポキシやウレタンエポキシが好ましい。このような接着剤8からなるタイル連結手段3は、弾力性を有するため、柔軟に変形して外部からの衝撃を吸収し、破断等の損傷を抑制しうる。
【0053】
また、接着剤8には、耐アルカリ性や凝集力を向上させるために、炭酸カルシウムが充填されるのが好ましい。また、タイル連結手段3の破断強度は、1.7N/mm2以上が望ましい。これにより、タイル連結手段3は、その破断防止性が大幅に向上し、タイル2を安定して連結しうる。
【0054】
前記タイル連結手段3には、図3(a)に示されるように、その強度を向上させる補強材31が含まれるのが好ましい。この場合、タイル連結手段3は、タイル2の前面2a側に配される主部32と、タイル2の裏面2b側に配される補強材31とを含んで形成される。
【0055】
主部32は、前記接着剤8の硬化物から形成される。また、主部32の厚さW5は、接着剤8の硬化物のみからなるタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)と略同一の大きさに形成されている。
【0056】
また、本実施形態の補強材31は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料を薄板状に形成されたものである。補強材31は、その厚さW6が、主部32の厚さW5よりも小さく設定され、硬化前の主部32に、タイル2の裏面2b側から貼り付けることにより一体化される。これにより、補強材31は、縦目地4A及び横目地4Bからはみ出すことなく配されるとともに、壁下地5(図1に示す)側に配されて主部32に目隠しされる。
【0057】
このような補強材31は、タイル連結手段3の強度を向上させ、破断等の損傷を確実に抑制しうる。従って、タイル連結手段3の破断防止性が向上する。しかも、補強材31は、主部32に目隠しされるため、タイル壁6(図1に示す)の美観性を損ねることもない。
【0058】
また、補強材31は、このような薄板状のものに限定されるものではなく、図3(b)に示される繊維33から形成されるものでもよい。本実施形態の繊維33は、有機繊維をコード状に形成したものであり、主部32に沿って複数本配される。このような繊維33は、タイル連結手段3の強度を向上させることができる。また、繊維33は、金属からなる薄板状のものと比べて、タイルユニット1の質量を増大させることがない。なお、繊維33としては、特に限定されないが、例えば、アラミドやナイロン等の有機繊維等が適宜選択される。
【0059】
本実施形態では、横目地4Bの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3が配されるものを例示したが、図4に示されるように、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3を横目4Bの目地長さL4よりも小さく(L4の80%程度)して、横目地4Bの両端部に開口部7が設けられるものでもよい。このようなタイルユニット1は、タイルユニット1と壁下地5の接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を万遍なく逃がすことができるとともに、横目地4Bの両端部からタイル連結手段3がはみ出すのを抑制しうる。
【0060】
また、本実施形態では、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adの全範囲にタイル連結手段3が形成され、全ての中間の縦目地4Amの全範囲に開口部7が形成されるものを例示したが、例えば、図5、図6に示されるように、各縦目地4Aの一部に開口部7が形成されるものでもよい。
【0061】
図5の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの目地長さ方向の両端部12、12に開口部7、7が形成されるとともに、それらの間の中間部13にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配されている。
【0062】
このようなタイルユニット1は、それぞれの縦目地4Aに、タイル連結手段3及び開口部7が配されるので、タイル2の連結強度と開口部7による軽量化とをバランスよく向上することができる。また、タイルユニット1と壁下地5の接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を万遍なく逃がすことができ、壁下地5への接着不良を抑制しうる。
【0063】
また、図6の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの前記両端部12にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配されるとともに、前記中間部13に開口部7が形成される。このようなタイルユニット1も、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上させつつ、質量増大や壁下地5への接着不良を効果的に抑制しうる。
【0064】
さらに、図6の実施形態のタイル連結手段3は、前記T字状部分11が、各横連結部3Bにそれぞれ2つずつ形成されている。このため、タイル連結手段3は、タイル2の連結強度を大幅に高めることができる。
【0065】
上記実施形態では、タイル連結手段3が、横目地4Bに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に配されるとともに、縦目地4Aに開口部7が形成されるものを例示したが、それぞれ逆としてもよい。
【0066】
例えば、図7の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aに沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配される。また、横目地4Bの少なくとも一部に、開口部7が形成される。横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向に隔設され、本実施形態では、横目地4Bの長手方向の両端部、及び両端に挟まれる中央部にそれぞれ配される。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。
【0067】
このようなタイルユニット1では、各縦目地4Aに沿って縦連結部3Aが配されるので、タイル2の連結強度を高めることができる。また、開口部7は、目地長さの大きい横目地4Bに形成されるので、縦目地4Aに形成される場合に比べて大きくすることができる。従って、タイルユニット1のより一層の軽量化が図られる。また、開口部7は、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を、左右方向の広範囲に亘って逃がすことができる。
【0068】
また、図7の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3(縦連結部3A)が配されるので、タイル2の連結強度を確実に高めることができる。
【0069】
また、図8の実施形態のタイルユニット1は、横連結部3Bが、横目地4Bの長手方向両端から、該横目地4Bと縦目地4Aとの交差部までのびるものでもよい。これにより、タイル連結手段3は、縦連結部3Aと横連結部3Bとが連結されたL字状部分18、及び縦連結部3Aと縦連結部3Aの上下に配される一対の横連結部3B、3Bとが連結された略コ字状部分15が複数形成される。このようなL字状部分18及び略コ字状部分15は、タイル2の連結強度を大幅に高めるのに役立つ。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。
【0070】
さらに、図9の実施形態のタイルユニット1は、各横目地4Bに配される一対の横連結部3B、3Bのうち、一方の横連結部3Bが、横目地4Bと縦目地4Aとの交点を超える延長部16が設けられてもよい。本実施形態の延長部16は、上下方向で、左右交互形成されている。このような延長部16は、横目地4Bのより広範囲に横連結部3Bを配することができ、タイル2の接着強度をバランスよく高めることができる。
【0071】
これまでの実施形態では、タイル2が馬踏目地状に配置されるものが例示されたが、例えば、縦目地4Aと横目地4Bとが一直線に連続する通し目地状に配置されるものでもよい。
【0072】
図10の実施形態のタイルユニット1は、タイル連結手段3が、横連結部3Bが該横目地4Bに沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状に配されるとともに、縦連結部3Aが上の縦目地4Au、及び下の縦目地4Adに沿って配されている。また、タイル連結手段3には、T字状部分11が形成されている。開口部7は、この例では全ての中間の縦目地4Amについて、その目地長さの全範囲に形成される。このようなタイルユニット1も、タイル連結手段3の破断防止性及び施工性を向上しつつ、タイルユニット1の質量増加と壁下地5への接着不良とを効果的に抑制しうる。
【0073】
また、図11の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aの両端部12、12に開口部7、7が形成される。また、各縦目地4Aの中間部13には、縦連結部3Aが配される。さらに、図12の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aの両端部12に縦連結部3Aが配される。また、各縦目地4Aの中間部13には、開口部7が形成される。これらのタイルユニット1も、タイル連結手段3の破断防止性及び施工性を向上しつつ、タイルユニット1の質量増加と壁下地5への接着不良とを効果的に抑制しうる。
【0074】
図13の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aに沿って長尺状にタイル連結手段3が配されるとともに、横目地4Bに開口部7が形成される。この実施形態の縦連結部3Aは、横目地4Bを超えて上下に連続して形成される。また、横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向の両側から内側へのびかつ縦連結部3Aに至ることなく終端し、各横目地4Bあたり一対形成される。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。このようなタイルユニット1では、縦連結部3Aが、各縦目地4Aに沿って上下に連続して形成されるので、タイル2の連結強度を確実に高めることができる。
【0075】
また、図14の実施形態のタイルユニット1は、一対の横連結部3B、3Bのうち一方が、縦連結部3Aに連結している。これにより、タイル連結手段3は、各横目地4BにT字状部分11を複数形成することができ、タイル2の連結強度をさらに高めることができる。
【0076】
さらに、図15の実施形態のタイルユニット1は、横目地4Bに、横連結部3Bが隔設される。本実施形態の横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向の両端部、及び該両端部と縦連結部3Aとの間の中間部にそれぞれ形成され、開口部7が、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。このようなタイル連結手段3も、開口部7を横目地4Bの広範囲に隔設させることができる。
【0077】
次に、上記タイルユニット1を代表して、図2に示されるタイルユニット1の製造方法の一例について説明する。本実施形態では、図16に示されるように、目地間隔Sを維持した状態で複数のタイル2を配列しうるトレー23が使用される。
【0078】
このトレー23は、目地間隔Sで隣り合うタイル2を区切る枠部24と、この枠部24の下部を支持しかつタイル2の前面2aを受ける板部25とを含んで構成される。枠部24は、縦目地4Aを形成する縦枠部24Aと、横目地4Bを形成する横枠部24Bとを含んで構成される。
【0079】
また、縦枠部24Aは、中間の縦目地4Amを形成する高縦枠部24Aa、及び上の縦目地4Auと下の縦目地4Adとを形成する低縦枠部24Abを含んで構成される。また、横枠部24Bは、低縦枠部24Abと同じ高さに形成される。
【0080】
低縦枠部24Ab及び横枠部24Bの高さW3は、タイル2の厚さW1からタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)を差し引いた厚さ(W1−W2)に設定される。また、高縦枠部24Aaの高さW7は、タイル2の厚さW1に設定されている。
【0081】
トレー23を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼又はアルミニウム合金などの金属材料や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック材料により形成できる。
【0082】
図17に示されるように、トレー23には、タイル2の前面2aを下に向けて、複数のタイル2が配される。これにより、複数のタイル2が正しい目地間隔Sで配列される。また、高縦枠部24Aaは、その高さW7がタイル2の厚さW1に設定されるため、タイル2の裏面2bと面一となる。また、低縦枠部24Ab及び横枠部24Bは、その高さW3がタイル2の厚さW1よりも小さいため、上の縦目地4Au、下の縦目地4Ad及び横目地4Bに、接着剤8を配しうる溝部26が形成される。
【0083】
しかる後、溝部26に沿って前記接着剤8が帯状に塗布される。接着剤8の塗布には、本実施形態のように、コーキングガン27を用いる他、ローラー(図示省略)等を使用することにより、接着剤8を効率良く塗布できる。
【0084】
接着剤8を塗布後、接着剤8の上面をならして、接着剤8とタイル2の裏面2bとが面一にされる。また、タイル連結手段3に前記補強材31(図3に示す)を含む場合は、タイル2の裏面2b側から補強材31が貼り付けられる。
【0085】
そして、所定の時間の養生後、接着剤8が硬化することにより、中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に開口部7を具えたタイル連結手段3が形成される。このタイル連結手段3は、硬化前に接着剤8とタイル2の裏面2bとが面一にされるため、タイル2の各縦目地4A及び横目地4Bからはみ出すことなく形成される。
【0086】
そして、複数のタイル2及びタイル連結手段3が一体となって、トレー23から取り外されることにより、図2に示されるタイルユニット1が形成される。この取り外し作業を能率化するために、低縦枠部24Abの上面24aには、接着剤8との接着を防ぐ、例えば、フッ素系やシリコーン系等の離型剤(図示省略)が塗布されるのが好ましい。
【0087】
このようなトレー23を用いてタイルユニット1を形成することにより、硬化前の接着剤8を縦目地4A、及び横目地4Bに容易に配することができる。また、接着剤8がタイル2の前面2a側へ液垂れするのも防ぐことができる。本実施形態では、高縦枠部24Aaがタイル2の裏面2bと面一に形成されるので、中間の縦目地4Amに接着剤8が塗布されるのを抑制できる。従って、タイルユニット1を精度よく、かつ見映えを損ねることなしに容易に形成できる。
【0088】
本実施形態のタイルユニット1の製造方法では、高縦枠部24Aaを、低縦枠部24Ab及び横枠部24Bよりも高くしたトレー23が使用されたが、これに限定されるわけではない。図18に示されるように、本実施形態のタイルユニット1の製造方法では、縦枠部24Aと横枠部24Bとを同一の高さW3としたトレー23が使用される。このトレー23は、タイル2が配置されることにより、すべての縦目地4A及び横目地4Bに、溝部26が形成される。さらに、本実施形態のトレー23には、接着剤8を塗布しない縦目地4A又は横目地4B(本実施形態では中間の縦目地4Am)を覆うマスキング材28が配される。
【0089】
本実施形態のマスキング材28は、溝部26を覆う平面視略矩形状に形成され、長手方向の長さL5が中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に、短手方向の長さL6が目地間隔Sに、その厚さW9がタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)に設定される。
【0090】
このようなトレー23は、中間の縦目地4Amの溝部26がマスキング材28に覆われるため、上の縦目地4Au、下の縦目地4Ad及び横目地4Bのみに、接着剤8を配しうる溝部26を形成しうる。しかも、マスキング材28は、接着剤8の塗布位置に応じて縦目地4A及び横目地4Bに自由に配置することができるので、溝部26を自由に形成でき、トレー23の汎用性を向上させうる。
【0091】
次に、タイルユニット1を用いたタイル壁の施工方法の一例について説明する。
本実施形態のタイル壁の施工方法は、接着剤10を塗布する工程(以下、「第1の工程」ということがある。)と、複数枚のタイル2が連結されたタイルユニット1を、接着剤10が塗布された前記壁下地5に貼り付ける工程(以下、「第2の工程」ということがある。)とを含んでいる。
【0092】
前記第1の工程では、図19(a)に示されるように、例えば、1.5〜2.0mm程度の厚さW4で、接着剤10が壁下地5に塗布される。本実施形態の接着剤10には、タイル連結手段3の接着剤8と同一色調かつ同一の主剤を含んでいる。
【0093】
前記「同一色調」とは、タイル連結手段3と硬化後の接着剤10とを肉眼で視認した際に、区別し難い程度であればよい。このような接着剤10は、タイル連結手段3と強固に一体化し、タイル2の接着性を向上させる他、タイル連結手段3と接着剤10とが区別され難くい。しかも、タイル連結手段3と接着剤10とが劣化の進行に差がないため、長期に亘ってタイル壁6(図1に示す)の美観を向上しうる。なお、接着剤8と同様の観点により、炭酸カルシウムが充填されてもよい。
【0094】
次に、前記第2の工程では、図19(b)、(c)に示されるように、接着剤10が塗布された壁下地5に、タイルの裏面2bとタイル連結手段3とを接着剤10に当接させて、タイルユニット1が貼り付けられる。この際、タイルユニット1の開口部7(図2に示す)から、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を逃がすことができる。そして、所定時間の養生後、接着剤10が硬化することにより、タイル壁6が形成される。
【0095】
このように、本実施形態のタイル壁の施工方法では、タイル2を1枚ずつ壁下地5に貼り付ける場合に比べて施工性を高めうる。また、タイル連結手段3は、タイル2の縦目地4A及び横目地4Bに配されて複数のタイル2を連結したまま、壁下地5に貼り付けられるので、従来の紙シートをタイル2の前面2aに付着したものに比して、施工後の紙シート除去作業等が不要となる。従って、施工性をさらに高めうる。
【0096】
さらに、また、本実施形態のタイル連結手段3は、タイル2の裏面2bとタイル連結手段3とが面一に形成されているので、壁下地5の接着剤10に均一に接着できる点で好ましい。
【0097】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。上記の実施例では、タイル2が左右に2枚、上下に6枚配されるものを例示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、左右に3枚以上、上下に7枚以上配されるものでもよいのは言うまでもない。
【実施例】
【0098】
次に、本発明をより具現化した実施例について説明する。タイルユニットの実施例として、図2に示す基本形態を有し、目地間隔5mmを維持した状態でタイルを配列しうるトレーを用いて、材質が陶器質のタイル(45×145mm)を、裏面を上にして配列した。しかる後、図2のように、接着剤Aを、幅5mm、厚さ0.5mmで塗布した。この接着剤が完全に硬化するまで8時間養生し、タイル連結手段を形成した。複数のタイル及びタイル連結手段が一体として、トレーから取り外すことにより、タイルユニットを製造した。
【0099】
次に、タイル壁の施工方法として、厚さ1.5mmで、接着剤Bをパルプ混入セメントけい酸カルシウム板からなる壁下地に塗布し、該壁下地に上記タイルユニットを貼り付けた。接着剤が完全に硬化するまで48時間養生し、タイル壁が形成された。なお、タイル連結手段を形成する接着剤A及び壁下地に塗布する接着剤Bの配合、並びにこれらの硬化後の破断強度については、表1に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例のタイルユニット及びタイル壁の施工方法では、タイルユニットの質量増加や壁下地への接着不良を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0102】
1 タイルユニット
2 タイル
3 タイル連結手段
4A 縦目地
4B 横目地
7 開口部
8 接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁下地への接着不良やタイルユニットの質量増大を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうるタイルユニット及びそれを用いたタイル壁の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の外壁にタイルを接着施工する場合、例えば、複数のタイルの前面を、例えば、紙等のシート材によって連結したタイルユニットが用いられる(例えば、下記特許文献1参照)。このようなタイルユニットは、複数枚のタイルが予め目地間隔をあけて配列されているため、タイルを1枚ずつ貼りつける場合に比べて施工性を向上させる。
【0003】
しかしながら、このようなタイルユニットは、壁下地への接着施工後、シート材等を剥離する必要があるため、施工性のさらなる向上が望まれていた。そこで、図20(a)に示されるネット状のシート材からなるタイル連結手段c1をタイルbの裏面に貼り付けることによりタイルbを連結したタイルユニットa1や、図20(b)に示されるホットメルト接着剤等からなるタイル連結手段c2によりタイルbを連結したタイルユニットa2が提案されている。このようなタイルユニットa1、a2は、接着施工後、シート材等を剥離する必要がないため、タイル壁の施工性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−332568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記タイルユニットa1は、タイルbと壁下地に塗布した接着剤との間にタイル連結手段c1が介在するため、タイルbの裏面の接着剤付着面積が減少し、接着強度が低下しやすいという問題があった。
【0006】
また、上記タイルユニットa2においては、目地長さの10〜30%の長さで形成されるタイル連結手段c2で固着されるため、隣り合うタイルbを強固に連結することができず、輸送中や施工中の衝撃や負荷により、タイル連結手段c2が破断しやすいという問題もあった。
【0007】
さらに、タイルユニットa2では、施工時に把持する際に、タイル連結手段c2がタイルユニットa2の重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下や、タイルユニットa2全体の面剛性不足により、タイルユニットa2の形状が安定しないなど、施工性が低下しやすいという問題もあった。また、タイルユニットa2では、その面剛性を向上させるために、タイル連結手段c2が多数配置されると、縦目地d1及び横目地d2に多数の段差が形成され、外観不良が生じるという問題もあった
【0008】
一方、縦目地d1及び横目地d2の目地長さの全範囲にタイル連結手段c2を配することにより、隣り合うタイルbを強固に連結することも考えられる。しかしながら、このようなタイルユニットでは、縦目地d1及び横目地d2にタイル連結手段c2が隙間なく配されるため、接着施工時において、該タイル連結手段c2と壁下地に塗布される接着剤との間に空気が溜りやすく、接着不良が生じやすいという問題があった。
【0009】
また、前記タイルユニットは、タイルbを圧着する際に生じる、壁下地の接着剤の盛り上がり具合を縦目地d1及び横目地d2から確認することができないため、圧着不足による接着不良が生じやすいという問題もあった。さらに、前記タイルユニットは、タイル連結手段c2による質量増加を招き、搬送性及び施工性等が低下するという問題もあった。
【0010】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、縦目地又は横目地の一方の目地に沿って長尺状にタイル連結手段を配する一方、縦目地又は横目地の他方の少なくとも一部にタイル連結手段が配されない開口部を設けることを基本として、壁下地への接着不良やタイルユニットの質量増大を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうるタイルユニット及びそれを用いたタイル壁の施工方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のうち請求項1記載の発明は、複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具え、前記タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置され、前記縦目地又は前記横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配され、前記縦目地又は前記横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、目地長さの80%以上の長さを有する請求項1に記載のタイルユニットである。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、前記横目地に沿って配され、前記開口部は、少なくとも一つの前記縦目地に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニットである。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、前記開口部は、最も上側に位置する上の縦目地及び最も下側に位置する下の縦目地を除いた中間の縦目地に形成される請求項3に記載のタイルユニットである。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さの全範囲である請求項3又は4記載のタイルユニットである。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さの一部である請求項3又は4記載のタイルユニットである。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の中間部に形成される請求項6記載のタイルユニットである、
【0018】
また、請求項8記載の発明は、前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の両端部に形成される請求項6記載のタイルユニットである。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、前記長尺状のタイル連結手段は、前記縦目地に沿って配され、前記開口部は、前記横目地の少なくとも一部に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニットである。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、前記横目地をのびる横連結部とが連結されたL字状部分又はT字状部分を含む請求項1乃至9のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0021】
また、請求項11記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、該縦連結部の上下に配されかつ前記横目地をのびる一対の横連結部とが連結された略コ字状部分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0022】
また、請求項12記載の発明は、前記タイル連結手段は、接着剤の硬化物を含む請求項1乃至11のいずれかに記載のタイルユニットである。
【0023】
また、請求項13記載の発明は、前記接着剤は、湿気硬化型である請求項12に記載のタイルユニットである。
【0024】
また、請求項14記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記接着剤の硬化物を補強する補強材を含む請求項12又は13に記載のタイルユニットである。
【0025】
また、請求項15記載の発明は、前記タイル連結手段は、前記タイルの前面側に配された主部と、壁下地側に配されかつ主部で目隠しされる前記補強材とを含む請求項14に記載のタイルユニットである。
【0026】
また、請求項16記載の発明は、前記補強材が繊維である請求項14又は15に記載のタイルユニットである。
【0027】
また、請求項17記載の発明は、壁下地に、前記タイル連結手段の接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む接着剤を塗布する工程と、請求項1〜16のいずれかに記載の前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された前記壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明のタイルユニットは、複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具える。タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置される。
【0029】
また、縦目地又は横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配される。このようなタイル連結手段は、隣り合うタイルを強固に連結することができるため、輸送中や施工中の衝撃や負荷によるタイル連結手段の破断防止性を向上しうる。また、施工時にタイルユニットを把持する際には、タイル連結手段がタイルユニットの重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下を抑制できる。さらに、タイルユニットは、タイル連結手段により、面剛性が高められてその形状が安定するため、施工性を向上しうる。
【0030】
さらに、タイル連結手段は、壁下地に塗布した接着剤とタイルとの間に介在しないため、タイルの裏面の接着剤付着面積を減少を抑制し、接着強度の低下を招くおそれもない。また、タイル連結手段は、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に形成されるため、タイル連結手段の破断防止性を維持しつつ、タイル連結手段と壁下地に塗布した接着剤との段差が目地に形成されるのを抑制し、外観不良を防ぎうる。
【0031】
また、縦目地又は横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成される。このような開口部は、接着施工時において、タイル連結手段と壁下地に塗布される接着剤との間に介在する空気を逃がすことができ、空気の閉じ込めによる壁下地への接着不良を抑制しうる。また、開口部からタイルと壁下地に塗布される接着剤との接する部分が目視できるため、タイルを圧着する際に生じる壁下地の接着剤の盛り上がり具合を確認することにより、圧着不足による接着不良も抑制しうる。さらに、開口部は、タイル連結手段の量を減少させることができ、タイルユニットの過度の質量増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】壁下地に接着施工されたタイルユニットを示す正面図である。
【図2】タイルユニットの斜視図である。
【図3】(a)は平板状の補強材を有するタイル連結手段、(b)は繊維からなる補強材を有するタイル連結手段を示す部分斜視図である。
【図4】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図5】縦目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図6】縦目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図7】横目地に開口部が形成されるタイルユニットを示す正面図である。
【図8】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図9】横目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図10】タイルが通し目地状に配置されるタイルユニットを示す正面図である。
【図11】縦目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図12】縦目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図13】横目地に開口部が形成されるタイルユニットを示す正面図である。
【図14】横目地の他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図15】横目地のさらに他の実施形態のタイルユニットを示す正面図である。
【図16】タイル及びトレーを示す斜視図である。
【図17】タイル連結手段が形成される状態を説明する斜視図である。
【図18】他の実施形態のトレーでタイル連結手段が形成される状態を説明する斜視図である。
【図19】タイル壁の施工方法を示し、(a)は接着剤が塗布された壁下地、(b)はタイルユニットが壁下地に貼り付けられる直前の状態、(c)はタイルユニットが壁下地に貼り付けられた状態を示す各断面図である。
【図20】(a)、(b)は従来のタイルユニットを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態のタイルユニット1は、例えば、住宅、ビル等の構造体の壁下地5にタイル2を接着施工して、タイル壁6を形成する際に好適に用いられる。
【0034】
図2に示されるように、タイルユニット1は、複数のタイル2と、これら複数のタイル2を目地間隔Sを維持したまま一体に連結する接着剤8の硬化物からなるタイル連結手段3とを具える。図2に示される本実施形態のタイルユニット1では、裏面側が示されており、12個のタイル2が馬踏み目地状に配されている。このようなタイルユニット1は、工場で予め製造され、施工現場へと持ち込まれる。
【0035】
本実施形態のタイル2は、装飾面となる前面2a、該前面2aの反対側かつタイル2の接着面をなす裏面2b、長手方向の両側で前面2aと裏面2bとの間を継ぐ一対の短側面2c、2c、及び短手方向の両側で前面2aと裏面2bとの間を継ぐ一対の長側面2d、2dを有し、正面視矩形状をなしている。なお、タイル2には、このような正面視矩形状のものに限定されるわけではなく、例えば、正方形状、八角形状のもの等採用でき、さらに、例えばタイル2の四隅がカットされたものも採用できる。
【0036】
また、タイル2としては、各種サイズのものが採用できるが、本実施形態のように正面視横長の矩形状に形成される場合、例えば、長手方向の長さL1が40〜250mm程度、短手方向の長さL2が10〜100mm程度、厚さW1が5〜40mm程度のものが好ましい。また、タイルの材質も、特に限定されないが、例えば、陶器質、せっ器質、磁器質等の陶磁器製が好ましい。
【0037】
タイル2は、左右に隣り合うタイル2、2間を上下にのびる縦目地4A、及び縦目地4Aを含んで上下に隣り合うタイル群2G、2Gの間を左右にのびる横目地4Bを隔てて配置される。本実施形態では、横目地4Bがタイル2の長側面2dに沿ってのびかつ左右へ一直線に連続するとともに、縦目地4Aがタイル2の短側面2cに沿ってのびかつ上下に隣り合うタイル2、2間で途切れている。
【0038】
本発明のタイルユニット1では、縦目地4A又は横目地4Bの一方には、その目地に沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状のタイル連結手段3が配される。また、縦目地4A又は横目地4Bの他方の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成される。
【0039】
本実施形態のタイル連結手段3は、横目地4Bをのびる横連結部3Bが該横目地4Bの目地長さの全範囲に配される。ここで、「目地長さの全範囲に配される」とは、接着剤8の硬化前後の誤差を考慮し、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3が、目地長さL4の90〜110%の範囲に配されることを示している。
【0040】
さらに、タイル連結手段3は、縦目地4Aをのびる縦連結部3Aが最も上側に位置する上の縦目地4Au、及び最も下側に位置する下の縦目地4Adに沿って配されている。本実施形態では、上の縦目地4Auの目地長さの全範囲、及び下の縦目地4Adの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3が配されている。
【0041】
また、開口部7は、縦目地4Aのうち、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adを除いた全ての中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成される。
【0042】
このようなタイルユニット1は、縦目地4A又は横目地4Bの一方(本実施形態では横目地4B)の目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状にタイル連結手段3(横連結部3B)が配されるので、隣り合うタイル2、2を強固に連結することができる。これにより、タイルユニット1は、輸送中や施工中の衝撃や負荷によるタイル連結手段3の破断防止性を向上しうる。また、施工時に把持される際には、タイル連結手段3がタイルユニット1の重量により伸長して目地幅が拡大するなどの寸法精度の低下を抑制でき、面剛性が高められてタイルユニット1の形状が安定するため、施工性を向上しうる。
【0043】
しかも、本実施形態のタイル連結手段3は、縦目地4Aよりも長い横目地4Bの目地に沿って配されるため、タイル2、2をより強固に連結しうる。さらに、本実施形態のタイル連結手段3は、横目地4Bの目地長さの全範囲に配されるので、タイル2、2をさらに強固に連結し、タイルユニット1全体の面剛性をさらに高めることができる。
【0044】
また、本実施形態のタイル連結手段3は、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adに目地長さの全範囲に配される。これにより、一方の長側面2dのみにしか横連結部3Bが配されない最も上側に位置する上のタイル2U、及び最も下側に位置する下のタイル2Eの連結強度を高め、タイル連結手段3の破断防止性をさらに向上させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態のタイル連結手段3は、縦連結部3Aと横連結部3Bとが連結されたT字状部分11を含んでいる。このようなT字状部分11は、タイル連結手段3の強度を向上させ、タイル2の連結強度を大幅に高めることができる。しかも、本実施形態では、連結強度が低下しがちな前記上のタイル2U及び前記下のタイル2Eに、T字状部分11が形成されるので、タイル2の連結強度を効果的に高めうる。
【0046】
また、タイル連結手段3は、壁下地5に塗布した接着剤8とタイル2との間に介在しないため、タイル2の裏面2bの接着剤が付着する面積の減少を抑制し、接着精度の低下を招くおそれもない。また、タイル連結手段3は、横目地4Bに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に形成されるため、該タイル連結手段3と壁下地5に塗布した接着剤8との段差が目地に形成されるのを抑制し、外観不良を防ぎうる。
【0047】
縦目地4A又は横目地4Bの他方(本実施形態では縦目地4A)の少なくとも一部には、タイル連結手段3が配されていない開口部7が形成されるので、接着施工時において、タイル連結手段3と壁下地5に塗布される接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を外部へと逃がすことができ、空気の閉じ込めによる壁下地5へのタイル2の接着不良を抑制しうる。また、開口部7は、タイル2と壁下地5に塗布される接着剤10との接する部分をタイル2の前面2aから目視しうる確認窓としても使用でき、タイル2を圧着する際に生じる壁下地5の接着剤10の盛り上がり具合を確認及び調節して、圧着不足による接着不良も抑制するのに役立つ。さらに、開口部7は、タイル連結手段3の量を減少させ、タイルユニット1の過度の質量増加を抑制でき、搬送性及び施工性を向上しうる。
【0048】
本実施形態では、開口部7が、全ての中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成されるので、タイル連結手段3と接着剤10との間の空気を確実に逃がすことができるとともに、タイルユニット1の質量増加を効果的に抑制できる。本実施形態では、開口部7が中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に形成されるが、該開口部7の長手方向の両端に、タイル連結手段3(横連結部3B)が配されているため、タイル2の連結強度の低下を招くこともない。
【0049】
上記作用を効果的に発揮させるために、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3は、目地長さL4の好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは目地長さL4の全範囲が望ましい。タイル連結手段3の目地に沿った長さL3が小さすぎると、タイルユニット1の形状安定性を十分に高めることができず、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上できないおそれがある。
【0050】
また、タイル2の裏面2b側において、全ての開口部7の総面積は、好ましくは800mm2以上、さらに好ましくは850mm2以上が望ましい。前記開口部7の前記総面積が小さすぎると、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を、十分に逃がすことができないおそれがある。逆に、開口部7の前記総面積が大きすぎると、タイル2の連結強度が低下するおそれがある。このような観点より、前記開口部7の前記総面積は、好ましくは1000mm2以下、さらに好ましくは950mm2以下が望ましい。
【0051】
前記タイル連結手段3は、その厚さW2が0.3〜0.7mm程度に設定されるのが好ましい。また、前記接着剤8は、壁下地5に塗布される接着剤10(図1に示す)と同様に、湿気硬化型であるのが好ましい。このようなタイル連結手段3は、硬化した接着剤10と強固に一体化し、タイル2を接着させることができる。
【0052】
また、前記接着剤8の主剤としては、適宜選択できるが、例えば、硬化時の体積収縮が少なく、優れた接着力を有するエポキシ樹脂からなるのが好ましい。また、エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、良好な弾力性を有する変成シリコンエポキシやウレタンエポキシが好ましい。このような接着剤8からなるタイル連結手段3は、弾力性を有するため、柔軟に変形して外部からの衝撃を吸収し、破断等の損傷を抑制しうる。
【0053】
また、接着剤8には、耐アルカリ性や凝集力を向上させるために、炭酸カルシウムが充填されるのが好ましい。また、タイル連結手段3の破断強度は、1.7N/mm2以上が望ましい。これにより、タイル連結手段3は、その破断防止性が大幅に向上し、タイル2を安定して連結しうる。
【0054】
前記タイル連結手段3には、図3(a)に示されるように、その強度を向上させる補強材31が含まれるのが好ましい。この場合、タイル連結手段3は、タイル2の前面2a側に配される主部32と、タイル2の裏面2b側に配される補強材31とを含んで形成される。
【0055】
主部32は、前記接着剤8の硬化物から形成される。また、主部32の厚さW5は、接着剤8の硬化物のみからなるタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)と略同一の大きさに形成されている。
【0056】
また、本実施形態の補強材31は、例えば、アルミニウム合金等の金属材料を薄板状に形成されたものである。補強材31は、その厚さW6が、主部32の厚さW5よりも小さく設定され、硬化前の主部32に、タイル2の裏面2b側から貼り付けることにより一体化される。これにより、補強材31は、縦目地4A及び横目地4Bからはみ出すことなく配されるとともに、壁下地5(図1に示す)側に配されて主部32に目隠しされる。
【0057】
このような補強材31は、タイル連結手段3の強度を向上させ、破断等の損傷を確実に抑制しうる。従って、タイル連結手段3の破断防止性が向上する。しかも、補強材31は、主部32に目隠しされるため、タイル壁6(図1に示す)の美観性を損ねることもない。
【0058】
また、補強材31は、このような薄板状のものに限定されるものではなく、図3(b)に示される繊維33から形成されるものでもよい。本実施形態の繊維33は、有機繊維をコード状に形成したものであり、主部32に沿って複数本配される。このような繊維33は、タイル連結手段3の強度を向上させることができる。また、繊維33は、金属からなる薄板状のものと比べて、タイルユニット1の質量を増大させることがない。なお、繊維33としては、特に限定されないが、例えば、アラミドやナイロン等の有機繊維等が適宜選択される。
【0059】
本実施形態では、横目地4Bの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3が配されるものを例示したが、図4に示されるように、タイル連結手段3の目地に沿った長さL3を横目4Bの目地長さL4よりも小さく(L4の80%程度)して、横目地4Bの両端部に開口部7が設けられるものでもよい。このようなタイルユニット1は、タイルユニット1と壁下地5の接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を万遍なく逃がすことができるとともに、横目地4Bの両端部からタイル連結手段3がはみ出すのを抑制しうる。
【0060】
また、本実施形態では、上の縦目地4Au及び下の縦目地4Adの全範囲にタイル連結手段3が形成され、全ての中間の縦目地4Amの全範囲に開口部7が形成されるものを例示したが、例えば、図5、図6に示されるように、各縦目地4Aの一部に開口部7が形成されるものでもよい。
【0061】
図5の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの目地長さ方向の両端部12、12に開口部7、7が形成されるとともに、それらの間の中間部13にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配されている。
【0062】
このようなタイルユニット1は、それぞれの縦目地4Aに、タイル連結手段3及び開口部7が配されるので、タイル2の連結強度と開口部7による軽量化とをバランスよく向上することができる。また、タイルユニット1と壁下地5の接着剤10(図1に示す)との間に介在する空気を万遍なく逃がすことができ、壁下地5への接着不良を抑制しうる。
【0063】
また、図6の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの前記両端部12にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配されるとともに、前記中間部13に開口部7が形成される。このようなタイルユニット1も、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上させつつ、質量増大や壁下地5への接着不良を効果的に抑制しうる。
【0064】
さらに、図6の実施形態のタイル連結手段3は、前記T字状部分11が、各横連結部3Bにそれぞれ2つずつ形成されている。このため、タイル連結手段3は、タイル2の連結強度を大幅に高めることができる。
【0065】
上記実施形態では、タイル連結手段3が、横目地4Bに沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状に配されるとともに、縦目地4Aに開口部7が形成されるものを例示したが、それぞれ逆としてもよい。
【0066】
例えば、図7の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aに沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状にタイル連結手段3(縦連結部3A)が配される。また、横目地4Bの少なくとも一部に、開口部7が形成される。横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向に隔設され、本実施形態では、横目地4Bの長手方向の両端部、及び両端に挟まれる中央部にそれぞれ配される。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。
【0067】
このようなタイルユニット1では、各縦目地4Aに沿って縦連結部3Aが配されるので、タイル2の連結強度を高めることができる。また、開口部7は、目地長さの大きい横目地4Bに形成されるので、縦目地4Aに形成される場合に比べて大きくすることができる。従って、タイルユニット1のより一層の軽量化が図られる。また、開口部7は、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を、左右方向の広範囲に亘って逃がすことができる。
【0068】
また、図7の実施形態のタイルユニット1では、各縦目地4Aの目地長さの全範囲に、タイル連結手段3(縦連結部3A)が配されるので、タイル2の連結強度を確実に高めることができる。
【0069】
また、図8の実施形態のタイルユニット1は、横連結部3Bが、横目地4Bの長手方向両端から、該横目地4Bと縦目地4Aとの交差部までのびるものでもよい。これにより、タイル連結手段3は、縦連結部3Aと横連結部3Bとが連結されたL字状部分18、及び縦連結部3Aと縦連結部3Aの上下に配される一対の横連結部3B、3Bとが連結された略コ字状部分15が複数形成される。このようなL字状部分18及び略コ字状部分15は、タイル2の連結強度を大幅に高めるのに役立つ。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。
【0070】
さらに、図9の実施形態のタイルユニット1は、各横目地4Bに配される一対の横連結部3B、3Bのうち、一方の横連結部3Bが、横目地4Bと縦目地4Aとの交点を超える延長部16が設けられてもよい。本実施形態の延長部16は、上下方向で、左右交互形成されている。このような延長部16は、横目地4Bのより広範囲に横連結部3Bを配することができ、タイル2の接着強度をバランスよく高めることができる。
【0071】
これまでの実施形態では、タイル2が馬踏目地状に配置されるものが例示されたが、例えば、縦目地4Aと横目地4Bとが一直線に連続する通し目地状に配置されるものでもよい。
【0072】
図10の実施形態のタイルユニット1は、タイル連結手段3が、横連結部3Bが該横目地4Bに沿って目地長さL4の50%以上の長さL3を有する長尺状に配されるとともに、縦連結部3Aが上の縦目地4Au、及び下の縦目地4Adに沿って配されている。また、タイル連結手段3には、T字状部分11が形成されている。開口部7は、この例では全ての中間の縦目地4Amについて、その目地長さの全範囲に形成される。このようなタイルユニット1も、タイル連結手段3の破断防止性及び施工性を向上しつつ、タイルユニット1の質量増加と壁下地5への接着不良とを効果的に抑制しうる。
【0073】
また、図11の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aの両端部12、12に開口部7、7が形成される。また、各縦目地4Aの中間部13には、縦連結部3Aが配される。さらに、図12の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aの両端部12に縦連結部3Aが配される。また、各縦目地4Aの中間部13には、開口部7が形成される。これらのタイルユニット1も、タイル連結手段3の破断防止性及び施工性を向上しつつ、タイルユニット1の質量増加と壁下地5への接着不良とを効果的に抑制しうる。
【0074】
図13の実施形態のタイルユニット1は、各縦目地4Aに沿って長尺状にタイル連結手段3が配されるとともに、横目地4Bに開口部7が形成される。この実施形態の縦連結部3Aは、横目地4Bを超えて上下に連続して形成される。また、横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向の両側から内側へのびかつ縦連結部3Aに至ることなく終端し、各横目地4Bあたり一対形成される。また、開口部7は、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。このようなタイルユニット1では、縦連結部3Aが、各縦目地4Aに沿って上下に連続して形成されるので、タイル2の連結強度を確実に高めることができる。
【0075】
また、図14の実施形態のタイルユニット1は、一対の横連結部3B、3Bのうち一方が、縦連結部3Aに連結している。これにより、タイル連結手段3は、各横目地4BにT字状部分11を複数形成することができ、タイル2の連結強度をさらに高めることができる。
【0076】
さらに、図15の実施形態のタイルユニット1は、横目地4Bに、横連結部3Bが隔設される。本実施形態の横連結部3Bは、横目地4Bの長手方向の両端部、及び該両端部と縦連結部3Aとの間の中間部にそれぞれ形成され、開口部7が、上下方向で同じ位置に整一して形成されている。このようなタイル連結手段3も、開口部7を横目地4Bの広範囲に隔設させることができる。
【0077】
次に、上記タイルユニット1を代表して、図2に示されるタイルユニット1の製造方法の一例について説明する。本実施形態では、図16に示されるように、目地間隔Sを維持した状態で複数のタイル2を配列しうるトレー23が使用される。
【0078】
このトレー23は、目地間隔Sで隣り合うタイル2を区切る枠部24と、この枠部24の下部を支持しかつタイル2の前面2aを受ける板部25とを含んで構成される。枠部24は、縦目地4Aを形成する縦枠部24Aと、横目地4Bを形成する横枠部24Bとを含んで構成される。
【0079】
また、縦枠部24Aは、中間の縦目地4Amを形成する高縦枠部24Aa、及び上の縦目地4Auと下の縦目地4Adとを形成する低縦枠部24Abを含んで構成される。また、横枠部24Bは、低縦枠部24Abと同じ高さに形成される。
【0080】
低縦枠部24Ab及び横枠部24Bの高さW3は、タイル2の厚さW1からタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)を差し引いた厚さ(W1−W2)に設定される。また、高縦枠部24Aaの高さW7は、タイル2の厚さW1に設定されている。
【0081】
トレー23を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス鋼又はアルミニウム合金などの金属材料や、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック材料により形成できる。
【0082】
図17に示されるように、トレー23には、タイル2の前面2aを下に向けて、複数のタイル2が配される。これにより、複数のタイル2が正しい目地間隔Sで配列される。また、高縦枠部24Aaは、その高さW7がタイル2の厚さW1に設定されるため、タイル2の裏面2bと面一となる。また、低縦枠部24Ab及び横枠部24Bは、その高さW3がタイル2の厚さW1よりも小さいため、上の縦目地4Au、下の縦目地4Ad及び横目地4Bに、接着剤8を配しうる溝部26が形成される。
【0083】
しかる後、溝部26に沿って前記接着剤8が帯状に塗布される。接着剤8の塗布には、本実施形態のように、コーキングガン27を用いる他、ローラー(図示省略)等を使用することにより、接着剤8を効率良く塗布できる。
【0084】
接着剤8を塗布後、接着剤8の上面をならして、接着剤8とタイル2の裏面2bとが面一にされる。また、タイル連結手段3に前記補強材31(図3に示す)を含む場合は、タイル2の裏面2b側から補強材31が貼り付けられる。
【0085】
そして、所定の時間の養生後、接着剤8が硬化することにより、中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に開口部7を具えたタイル連結手段3が形成される。このタイル連結手段3は、硬化前に接着剤8とタイル2の裏面2bとが面一にされるため、タイル2の各縦目地4A及び横目地4Bからはみ出すことなく形成される。
【0086】
そして、複数のタイル2及びタイル連結手段3が一体となって、トレー23から取り外されることにより、図2に示されるタイルユニット1が形成される。この取り外し作業を能率化するために、低縦枠部24Abの上面24aには、接着剤8との接着を防ぐ、例えば、フッ素系やシリコーン系等の離型剤(図示省略)が塗布されるのが好ましい。
【0087】
このようなトレー23を用いてタイルユニット1を形成することにより、硬化前の接着剤8を縦目地4A、及び横目地4Bに容易に配することができる。また、接着剤8がタイル2の前面2a側へ液垂れするのも防ぐことができる。本実施形態では、高縦枠部24Aaがタイル2の裏面2bと面一に形成されるので、中間の縦目地4Amに接着剤8が塗布されるのを抑制できる。従って、タイルユニット1を精度よく、かつ見映えを損ねることなしに容易に形成できる。
【0088】
本実施形態のタイルユニット1の製造方法では、高縦枠部24Aaを、低縦枠部24Ab及び横枠部24Bよりも高くしたトレー23が使用されたが、これに限定されるわけではない。図18に示されるように、本実施形態のタイルユニット1の製造方法では、縦枠部24Aと横枠部24Bとを同一の高さW3としたトレー23が使用される。このトレー23は、タイル2が配置されることにより、すべての縦目地4A及び横目地4Bに、溝部26が形成される。さらに、本実施形態のトレー23には、接着剤8を塗布しない縦目地4A又は横目地4B(本実施形態では中間の縦目地4Am)を覆うマスキング材28が配される。
【0089】
本実施形態のマスキング材28は、溝部26を覆う平面視略矩形状に形成され、長手方向の長さL5が中間の縦目地4Amの目地長さの全範囲に、短手方向の長さL6が目地間隔Sに、その厚さW9がタイル連結手段3の厚さW2(図2に示す)に設定される。
【0090】
このようなトレー23は、中間の縦目地4Amの溝部26がマスキング材28に覆われるため、上の縦目地4Au、下の縦目地4Ad及び横目地4Bのみに、接着剤8を配しうる溝部26を形成しうる。しかも、マスキング材28は、接着剤8の塗布位置に応じて縦目地4A及び横目地4Bに自由に配置することができるので、溝部26を自由に形成でき、トレー23の汎用性を向上させうる。
【0091】
次に、タイルユニット1を用いたタイル壁の施工方法の一例について説明する。
本実施形態のタイル壁の施工方法は、接着剤10を塗布する工程(以下、「第1の工程」ということがある。)と、複数枚のタイル2が連結されたタイルユニット1を、接着剤10が塗布された前記壁下地5に貼り付ける工程(以下、「第2の工程」ということがある。)とを含んでいる。
【0092】
前記第1の工程では、図19(a)に示されるように、例えば、1.5〜2.0mm程度の厚さW4で、接着剤10が壁下地5に塗布される。本実施形態の接着剤10には、タイル連結手段3の接着剤8と同一色調かつ同一の主剤を含んでいる。
【0093】
前記「同一色調」とは、タイル連結手段3と硬化後の接着剤10とを肉眼で視認した際に、区別し難い程度であればよい。このような接着剤10は、タイル連結手段3と強固に一体化し、タイル2の接着性を向上させる他、タイル連結手段3と接着剤10とが区別され難くい。しかも、タイル連結手段3と接着剤10とが劣化の進行に差がないため、長期に亘ってタイル壁6(図1に示す)の美観を向上しうる。なお、接着剤8と同様の観点により、炭酸カルシウムが充填されてもよい。
【0094】
次に、前記第2の工程では、図19(b)、(c)に示されるように、接着剤10が塗布された壁下地5に、タイルの裏面2bとタイル連結手段3とを接着剤10に当接させて、タイルユニット1が貼り付けられる。この際、タイルユニット1の開口部7(図2に示す)から、タイル連結手段3と接着剤10との間に介在する空気を逃がすことができる。そして、所定時間の養生後、接着剤10が硬化することにより、タイル壁6が形成される。
【0095】
このように、本実施形態のタイル壁の施工方法では、タイル2を1枚ずつ壁下地5に貼り付ける場合に比べて施工性を高めうる。また、タイル連結手段3は、タイル2の縦目地4A及び横目地4Bに配されて複数のタイル2を連結したまま、壁下地5に貼り付けられるので、従来の紙シートをタイル2の前面2aに付着したものに比して、施工後の紙シート除去作業等が不要となる。従って、施工性をさらに高めうる。
【0096】
さらに、また、本実施形態のタイル連結手段3は、タイル2の裏面2bとタイル連結手段3とが面一に形成されているので、壁下地5の接着剤10に均一に接着できる点で好ましい。
【0097】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。上記の実施例では、タイル2が左右に2枚、上下に6枚配されるものを例示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、左右に3枚以上、上下に7枚以上配されるものでもよいのは言うまでもない。
【実施例】
【0098】
次に、本発明をより具現化した実施例について説明する。タイルユニットの実施例として、図2に示す基本形態を有し、目地間隔5mmを維持した状態でタイルを配列しうるトレーを用いて、材質が陶器質のタイル(45×145mm)を、裏面を上にして配列した。しかる後、図2のように、接着剤Aを、幅5mm、厚さ0.5mmで塗布した。この接着剤が完全に硬化するまで8時間養生し、タイル連結手段を形成した。複数のタイル及びタイル連結手段が一体として、トレーから取り外すことにより、タイルユニットを製造した。
【0099】
次に、タイル壁の施工方法として、厚さ1.5mmで、接着剤Bをパルプ混入セメントけい酸カルシウム板からなる壁下地に塗布し、該壁下地に上記タイルユニットを貼り付けた。接着剤が完全に硬化するまで48時間養生し、タイル壁が形成された。なお、タイル連結手段を形成する接着剤A及び壁下地に塗布する接着剤Bの配合、並びにこれらの硬化後の破断強度については、表1に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例のタイルユニット及びタイル壁の施工方法では、タイルユニットの質量増加や壁下地への接着不良を抑制しつつ、タイル連結手段の破断防止性及び施工性を向上しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0102】
1 タイルユニット
2 タイル
3 タイル連結手段
4A 縦目地
4B 横目地
7 開口部
8 接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具え、
前記タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置され、
前記縦目地又は前記横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配され、
前記縦目地又は前記横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成されることを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
前記長尺状のタイル連結手段は、目地長さの80%以上の長さを有する請求項1に記載のタイルユニット。
【請求項3】
前記長尺状のタイル連結手段は、前記横目地に沿って配され、
前記開口部は、少なくとも一つの前記縦目地に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニット。
【請求項4】
前記開口部は、最も上側に位置する上の縦目地及び最も下側に位置する下の縦目地を除いた中間の縦目地に形成される請求項3に記載のタイルユニット。
【請求項5】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さの全範囲である請求項3又は4記載のタイルユニット。
【請求項6】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さの一部である請求項3又は4記載のタイルユニット。
【請求項7】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の中間部に形成される請求項6記載のタイルユニット。
【請求項8】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の両端部に形成される請求項6記載のタイルユニット。
【請求項9】
前記長尺状のタイル連結手段は、前記縦目地に沿って配され、
前記開口部は、前記横目地の少なくとも一部に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニット。
【請求項10】
前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、前記横目地をのびる横連結部とが連結されたL字状部分又はT字状部分を含む請求項1乃至9のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項11】
前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、該縦連結部の上下に配されかつ前記横目地をのびる一対の横連結部とが連結された略コ字状部分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項12】
前記タイル連結手段は、接着剤の硬化物を含む請求項1乃至11のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項13】
前記接着剤は、湿気硬化型である請求項12に記載のタイルユニット。
【請求項14】
前記タイル連結手段は、前記接着剤の硬化物を補強する補強材を含む請求項12又は13に記載のタイルユニット。
【請求項15】
前記タイル連結手段は、前記タイルの前面側に配された主部と、壁下地側に配されかつ主部で目隠しされる前記補強材とを含む請求項14に記載のタイルユニット。
【請求項16】
前記補強材が繊維である請求項14又は15に記載のタイルユニット。
【請求項17】
壁下地に、前記タイル連結手段の接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む接着剤を塗布する工程と、
請求項1〜16のいずれかに記載の前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された前記壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とするタイル壁の施工方法。
【請求項1】
複数のタイルと、前記タイルを目地間隔を維持したまま一体に連結するタイル連結手段とを具え、
前記タイルは、左右に隣り合う前記タイル間を上下にのびる縦目地、及び前記縦目地を含んで上下に隣り合うタイル群の間を左右にのびる横目地を隔てて配置され、
前記縦目地又は前記横目地の一方には、その目地に沿って目地長さの50%以上の長さを有する長尺状のタイル連結手段が配され、
前記縦目地又は前記横目地の他方の少なくとも一部には、タイル連結手段が配されていない開口部が形成されることを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
前記長尺状のタイル連結手段は、目地長さの80%以上の長さを有する請求項1に記載のタイルユニット。
【請求項3】
前記長尺状のタイル連結手段は、前記横目地に沿って配され、
前記開口部は、少なくとも一つの前記縦目地に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニット。
【請求項4】
前記開口部は、最も上側に位置する上の縦目地及び最も下側に位置する下の縦目地を除いた中間の縦目地に形成される請求項3に記載のタイルユニット。
【請求項5】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さの全範囲である請求項3又は4記載のタイルユニット。
【請求項6】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さの一部である請求項3又は4記載のタイルユニット。
【請求項7】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の中間部に形成される請求項6記載のタイルユニット。
【請求項8】
前記開口部は、前記縦目地の目地長さ方向の両端部に形成される請求項6記載のタイルユニット。
【請求項9】
前記長尺状のタイル連結手段は、前記縦目地に沿って配され、
前記開口部は、前記横目地の少なくとも一部に形成される請求項1又は2に記載のタイルユニット。
【請求項10】
前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、前記横目地をのびる横連結部とが連結されたL字状部分又はT字状部分を含む請求項1乃至9のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項11】
前記タイル連結手段は、前記縦目地をのびる縦連結部と、該縦連結部の上下に配されかつ前記横目地をのびる一対の横連結部とが連結された略コ字状部分を含む請求項1乃至10のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項12】
前記タイル連結手段は、接着剤の硬化物を含む請求項1乃至11のいずれかに記載のタイルユニット。
【請求項13】
前記接着剤は、湿気硬化型である請求項12に記載のタイルユニット。
【請求項14】
前記タイル連結手段は、前記接着剤の硬化物を補強する補強材を含む請求項12又は13に記載のタイルユニット。
【請求項15】
前記タイル連結手段は、前記タイルの前面側に配された主部と、壁下地側に配されかつ主部で目隠しされる前記補強材とを含む請求項14に記載のタイルユニット。
【請求項16】
前記補強材が繊維である請求項14又は15に記載のタイルユニット。
【請求項17】
壁下地に、前記タイル連結手段の接着剤と同一色調かつ同一の主剤を含む接着剤を塗布する工程と、
請求項1〜16のいずれかに記載の前記タイルユニットを前記接着剤が塗布された前記壁下地に貼り付ける工程とを含むことを特徴とするタイル壁の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−74753(P2011−74753A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193796(P2010−193796)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】
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