タイルユニット
【課題】凹反り等の変形が抑制ないし防止され、取り扱い易いタイルユニットを提供する。
【解決手段】タイルユニット10は、最上段にタイル2を配置し、その下段側に複数のタイル11を配置し、それらの裏面に合成樹脂フィルム、紙等よりなる連結体3を接着して連結し一体化したものである。タイル11は上側の端面に凸部12が設けられ、下側の端面は平坦面となっている。突起状の凸部を複数個設けてもよい。凸部12を設けることにより、タイルユニット10は凹反り等の目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止され、取り扱いが容易となる。
【解決手段】タイルユニット10は、最上段にタイル2を配置し、その下段側に複数のタイル11を配置し、それらの裏面に合成樹脂フィルム、紙等よりなる連結体3を接着して連結し一体化したものである。タイル11は上側の端面に凸部12が設けられ、下側の端面は平坦面となっている。突起状の凸部を複数個設けてもよい。凸部12を設けることにより、タイルユニット10は凹反り等の目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止され、取り扱いが容易となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のタイルユニットを紙、フィルム、ネット等の連結体によって連結したタイルユニットに関するものであり、特に、この連結体がタイルの裏面に接着されているタイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
タイルユニットとして、第6図に示す如く、タイル2の裏面に、隣接するタイルに架け渡すように薄い合成樹脂フィルムや紙などよりなる連結体3を接着剤で接着することにより、複数枚のタイル2を連結したものがある。このタイルユニット1は、1回のタイル貼り操作で、複数枚のタイルを施工することができ、施工作業の軽減、工期の短縮に有効であることから、従来、内外装用タイルの施工用に広く用いられている。
【0003】
このようなタイルユニット1は、複数枚のタイル2を、裏面を上にして型枠などに入れて整列させ、紙などの連結体をタイル裏面に接着することにより製造されている(例えば、特開平8−109730号公報)。合成樹脂フィルムや紙の代わりに、ガラス繊維等の高弾性率の繊維よりなるネットをタイル整列体の裏面に接着したタイルユニットも近年開発されている。
【0004】
第7図(a)は、上記のタイルユニット1を壁面4に張り付ける方法を示す模式的な縦断面図であり、壁面4には変性シリコン系あるいはエポキシ系接着剤等よりなるタイル張り用接着剤層5が塗着されている。なお、第7図(a)のタイルユニット1は第6図のA−A線に沿う断面を示している。
【特許文献1】特開平8−109730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のタイルユニット1にあっては、第7図(b)の如く、施工時や持ち運び時に目地間隙Cを狭めるように変形(例えば凹反り)するため、取り扱いにくいという不便があった。特に、タイルユニット1が第8図〜第12図に示すように、隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせるタイプのものである場合には、タイルユニットが凹反りすると、組み合わせ作業に支障が生じる。第8図は、隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせるようにした平部用タイルユニットの正面図、第9図はその斜視図、第10図はその裏側の斜視図、第11図は施工方法の説明図、第12図は構築されたタイル壁の立面図である。
【0006】
この平部用タイルユニット1は、細長い棒状の同一長さのタイル2を複数本(この実施の形態では8本)平行に揃え、合成樹脂フィルム、紙などよりなる連結体3を裏面に接着して連結し一体化したものである。
【0007】
最上段(第1段)と第7段のタイル2の右端は、タイルユニットの右端部から最も後退し、第2段と第8段のタイル2の右端部はタイルユニットの最右端部に位置する。第3段と第5段のタイル2の右端は、それよりも若干後退し、第4段と第6段のタイル2の右端はそれからさらに後退している。
【0008】
各タイル2が同一長さであるから、このタイルユニット1は、第11,12図の如く左右に並べて突き合わせると、左側のタイルユニット1の右端部と右側のタイルユニット1の左端部とが完全に合一状に係合し、一方のタイルユニットのタイルの端部同士の間に他方のタイルユニットのタイルの端部が入り込む。
【0009】
従って、この平部用タイルユニットを壁面両平部に上下左右に並設し張り付けることにより、第12図の如く縦目地が通らない意匠性に優れたタイル壁を構築することができる。なお、第12図の符号7は隅用タイルユニットを示す。
【0010】
このタイルユニット1,7の隣接する各タイルの端部同士を組み合わせるに際し、前記第7図(b)のようにタイルユニット1,7が凹反りすると、タイル2の端部同士を相互に入り込ませる作業が極めて行ないにくくなる。
【0011】
本発明は、凹反り等の変形が抑制ないし防止され、取り扱い易いタイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)のタイルユニットは、複数枚のタイルが、それらの裏面に貼着されたネット又はシート状の連結体によって連結されたタイルユニットにおいて、タイル間の目地間隙を保つための目地間隙維持手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2のタイルユニットは、請求項1において、該目地間隙維持手段は、タイルの端面に設けられた凸部であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3のタイルユニットは、請求項2において、該凸部はタイルの端面の厚さ方向の中間付近に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4のタイルユニットは、請求項1において、該目地間隙維持手段は、該目地間隙に介在する接着剤硬化物であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5のタイルユニットは、請求項4において、前記連結体とタイル裏面とが接着剤によって接着されており、この接着剤と前記接着剤硬化物とが一連一体となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6のタイルユニットは、請求項5において、該目地間隙に介在する前記接着剤硬化物は、前記連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することを特徴とするものである。
【0018】
請求項7のタイルユニットは、請求項5又は6において、該タイルの裏面側の角縁が面落し状の斜面となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイルユニットは、目地間隙維持手段を有するため、目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止されるため、取り扱いが容易となる。特に、前述の第8図〜第12図の如く隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせる場合に、この組み合わせ作業を効率よく行うことが可能である。
【0020】
この目地間隙維持手段として、タイルの端面に凸部を設けてもよい。この場合、目地間隙を狭めるようにタイルユニットが変形しようとすると、一方のタイルが隣接するタイルの凸部に当り、上記変形が抑制ないし防止される。
【0021】
この凸部は、前過ぎるとタイルユニット前方から視認され、後過ぎると目地間隙維持機能が弱くなるので、タイルの厚さ方向の中間付近に設けられることが好ましい。
【0022】
この目地間隙維持手段は、目地間隙に介在する接着剤硬化物であってもよい。この場合、シート、フィルム等の連結体をタイルに接着するための接着剤とこの目地間隙の接着剤硬化物とが一連一体となっていることが望ましい。かかる構成のタイルユニットにあっては、連結体に接着剤を付着させておき、この連結体をタイル裏面に貼り付ける際に余剰の接着剤を目地間隙に押し込んで接着剤硬化物を形成することができる。
【0023】
この場合、接着剤硬化物が連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することにより目地間隙維持機能が十分に高いものとなる。なお、タイル裏面の角縁を面落し状の斜面とすることにより、接着剤が目地間隙に押し込まれ易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係るタイルユニットの縦断面図、第2図はこのタイルユニットに用いられているタイルの斜視図である。
【0025】
このタイルユニット10は、最上段にタイル2を配置し、その下段側に複数のタイル11を配置し、それらの裏面に合成樹脂フィルム、紙等よりなる連結体3を接着して連結し一体化したものである。タイル2は前記タイル2と同一のものであり、上下の端面は平坦である。タイル11は上側の端面に凸部12が設けられ、下側の端面は平坦面となっている。
【0026】
凸部12は、タイル11の後面と平行方向(この実施の形態ではタイル長手方向)に延在する凸条よりなる。この凸条はタイル11の上面の長手方向の全体にわたって設けられてもよいが、深目地調の外観を醸し出す場合には、長手方向の一部にだけ設けられていることが好ましい。長手方向の一部にだけ凸条を設ける場合には、長手方向の中間付近に設けるのが好ましいが、長手方向の両端側の2箇所に設けてもよく、さらに長手方向の3箇所以上に設けてもよい。第1図(b)のタイル11Aのように、突起状の凸部13を複数個設けてもよい。
【0027】
この凸部12又は13の高さは、タイル間の目地間隙と略等しいか、又はそれよりも若干小さいことが好ましく、具体的には、目地間隙の幅寸法をc(図示略)とした場合、凸部の高さがcの60〜95%特に60〜90%とりわけ70〜85%程度であることが望ましい。
【0028】
凸部12又は13の前後方向位置は、その目地間隙の深さをd(図示略)とした場合、凸部12又は13の最高位部の位置が連結体3からdの20〜70%特に20〜60%とりわけ30〜50%程度であることが望ましい。凸部12又は13の基底部のタイル厚み方向の幅は、dの5〜50%特に10〜30%程度が望ましい。
【0029】
このように凸部12又は13を設けることにより、タイルユニット10は、凹反り等の目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止され、取り扱いが容易となる。特に、第8図〜第12図のタイルユニット1,7に適用した場合、タイルの端部同士の組み合わせ作業効率が著しく向上する。
【0030】
第13図はタイルユニット10を、第8図〜第12図のように、隣接するタイルユニットのタイル端部同士を組み合わせるように構成したタイルユニット10’の背後側からの斜視図、第14図はその正面図である。
【0031】
このタイルユニット10’を構成するタイル2,11及び連結体3は第1図及び第2図(a)に示したものである。このタイルユニット10’にあっては、第1図と同じく最上段にタイル2を配置し、第2段以下にタイル11を配置している。
【0032】
最上段(第1段)のタイル2と第7段のタイル11の右端は、タイルユニットの右端部から最も後退し、第2段と第8段のタイル11の右端部はタイルユニットの最右端部に位置する。第3段と第5段のタイル11の右端は、それよりも若干後退し、第4段と第6段のタイル11の右端はそれからさらに後退している。
【0033】
各タイル2,11が同一長さであるから、このタイルユニット1は、前記第11,12図の場合と全く同じく、左右に並べて突き合わせると、左側のタイルユニット10’の右端部と右側のタイルユニット10’の左端部とが完全に合一状に係合し、一方のタイルユニットのタイルの端部同士の間に他方のタイルユニットのタイルの端部が入り込む。
【0034】
従って、この平部用タイルユニットを壁面両平部に上下左右に並設し張り付けることにより、第12図と同じく、縦目地が通らない意匠性に優れたタイル壁を構築することができる。
【0035】
このタイルユニット10’の隣接する各タイルの端部同士を組み合わせるに際し、前記タイルユニット10’が凹反りしないので、タイル2,11の端部同士を相互に入り込ませる作業が極めて行ない易い。
【0036】
第3図は別の実施の形態に係るタイルユニット20の縦断面図である。このタイルユニット20は、複数枚の前記タイル2を連結体3で連結したものであり、この点は第6,7図の従来例と同様であるが、接着剤硬化物21が目地間隙に介在している点が従来例と異なる。この接着剤硬化物21は、連結体3をタイル2の裏面に接着する接着剤と一連一体となっている。
【0037】
即ち、このタイルユニット20を製造するに際し、連結体3に接着剤を塗着しておき、この接着剤付き連結体3を整列配置されたタイル2の裏面に押し付け、余剰の接着剤を目地間隙に入り込ませ、そのまま硬化させて接着剤硬化物21を形成する。
【0038】
この接着剤硬化物21が目地間隙に存在することにより、タイルユニット20は目地間隙を狭めるように変形することが抑制され、タイルユニット20が取り扱い易いものとなる。
【0039】
この第3図のタイルユニット20のタイル2は、縦断面が方形であり、裏面の上下の角縁が直角となっているが、第4図のタイルユニット20Aのタイル2Aのように、裏面の上下の角縁を面落し状の斜面としてもよい。このタイル2Aを用いてタイルユニット20Aを製造する場合、連結体3に塗着されていた接着剤が目地間隙に入り込み易くなる。第4図のタイルユニット20Aのその他の構成はタイルユニット20と同一である。
【0040】
第3図及び第4図のタイルユニット20,20Aにあっては、接着剤硬化物21の最前面の位置が、連結体3より目地深さdの10〜40%特に10〜30%程度であることが望ましい。
【0041】
第5図(a)はさらに別の実施の形態に係るタイルユニット30の縦断面図であり、第5図(b)はこれに用いられているタイル33の斜視図である。
【0042】
このタイルユニット30は、タイル31〜38を連結体3で連結したものであり、目地間隙に接着剤硬化物40が介在している。最上段のタイル31は上下両端面が平坦面である。2段目以降のタイル32,33,34,35,36,37,38は、上側の端面に各々凸部32a,33a,34a,35a,36a,37a又は38aが設けられており、下側の端面は平坦面となっている。この凸部は第5図(b)の通り凸条よりなるものであるが、第5図(c)のタイル33Aのように突起33cであってもよい。
【0043】
この実施の形態では、タイル31〜38の後面の上下の角縁は面落し状の斜面33bとなっている。
【0044】
このタイルユニット30を製造するには、タイルユニット20と同様に、連結体3に接着剤を塗着しておき、裏面が面一となるように整列配置されたタイル31〜38の該裏面に連結体3を押し付けて接着する。この際、余剰の接着剤が目地間隙に入り込んで硬化することにより接着剤硬化物40が形成される。
【0045】
この実施の形態では、目地間隙維持手段として凸部32a〜38aと接着剤硬化物40の双方を設けており、タイルユニット30は目地間隙を狭める方向にきわめて変形しにくいものとなっている。なお、凸部32a〜38aの好ましい高さや位置、接着剤硬化物の好ましい量は上記説明の通りである。
【0046】
このタイルユニット30は、上下に隣接するタイル31〜38の面が出入りしており、凹凸感に富んだタイル張り壁面を構築することができる。この場合、目地深さdは厚みの小さいタイルの前面から連結体3までの距離として定義される。
【0047】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、連結体は第6図に示した形状に限定されない。また、合成樹脂又は紙よりなるシート状連結体のほか、ガラス繊維等の高弾性率繊維のネットを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係るタイルユニット10の斜視図である。
【図2】図1のタイルユニットのタイルを示す斜視図である。
【図3】別の実施の形態に係るタイルユニット20の縦断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るタイルユニット20Aの縦断面図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係るタイルユニット30の構成図である。
【図6】従来のタイルユニットの背後側からの斜視図である。
【図7】従来のタイルユニットの施工方法を示す断面図と、タイルユニットの変形状況の説明図である。
【図8】平部用タイルユニットの正面図である。
【図9】平部用タイルユニットの斜視図である。
【図10】平部用タイルユニットの裏側からの斜視図である。
【図11】平部用タイルユニットの組み合わせ説明図である。
【図12】タイル壁の立面図である。
【図13】異なる実施の形態に係るタイルユニットの背後側からの斜視図である。
【図14】図13のタイルユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,7,10,10’,20,20A,30 タイルユニット
2,2A,11,11A,31〜38 タイル
3 連結体
4 壁面
5 接着剤層
12,13,32a〜38a 凸部
21,40 接着剤硬化物
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のタイルユニットを紙、フィルム、ネット等の連結体によって連結したタイルユニットに関するものであり、特に、この連結体がタイルの裏面に接着されているタイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
タイルユニットとして、第6図に示す如く、タイル2の裏面に、隣接するタイルに架け渡すように薄い合成樹脂フィルムや紙などよりなる連結体3を接着剤で接着することにより、複数枚のタイル2を連結したものがある。このタイルユニット1は、1回のタイル貼り操作で、複数枚のタイルを施工することができ、施工作業の軽減、工期の短縮に有効であることから、従来、内外装用タイルの施工用に広く用いられている。
【0003】
このようなタイルユニット1は、複数枚のタイル2を、裏面を上にして型枠などに入れて整列させ、紙などの連結体をタイル裏面に接着することにより製造されている(例えば、特開平8−109730号公報)。合成樹脂フィルムや紙の代わりに、ガラス繊維等の高弾性率の繊維よりなるネットをタイル整列体の裏面に接着したタイルユニットも近年開発されている。
【0004】
第7図(a)は、上記のタイルユニット1を壁面4に張り付ける方法を示す模式的な縦断面図であり、壁面4には変性シリコン系あるいはエポキシ系接着剤等よりなるタイル張り用接着剤層5が塗着されている。なお、第7図(a)のタイルユニット1は第6図のA−A線に沿う断面を示している。
【特許文献1】特開平8−109730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のタイルユニット1にあっては、第7図(b)の如く、施工時や持ち運び時に目地間隙Cを狭めるように変形(例えば凹反り)するため、取り扱いにくいという不便があった。特に、タイルユニット1が第8図〜第12図に示すように、隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせるタイプのものである場合には、タイルユニットが凹反りすると、組み合わせ作業に支障が生じる。第8図は、隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせるようにした平部用タイルユニットの正面図、第9図はその斜視図、第10図はその裏側の斜視図、第11図は施工方法の説明図、第12図は構築されたタイル壁の立面図である。
【0006】
この平部用タイルユニット1は、細長い棒状の同一長さのタイル2を複数本(この実施の形態では8本)平行に揃え、合成樹脂フィルム、紙などよりなる連結体3を裏面に接着して連結し一体化したものである。
【0007】
最上段(第1段)と第7段のタイル2の右端は、タイルユニットの右端部から最も後退し、第2段と第8段のタイル2の右端部はタイルユニットの最右端部に位置する。第3段と第5段のタイル2の右端は、それよりも若干後退し、第4段と第6段のタイル2の右端はそれからさらに後退している。
【0008】
各タイル2が同一長さであるから、このタイルユニット1は、第11,12図の如く左右に並べて突き合わせると、左側のタイルユニット1の右端部と右側のタイルユニット1の左端部とが完全に合一状に係合し、一方のタイルユニットのタイルの端部同士の間に他方のタイルユニットのタイルの端部が入り込む。
【0009】
従って、この平部用タイルユニットを壁面両平部に上下左右に並設し張り付けることにより、第12図の如く縦目地が通らない意匠性に優れたタイル壁を構築することができる。なお、第12図の符号7は隅用タイルユニットを示す。
【0010】
このタイルユニット1,7の隣接する各タイルの端部同士を組み合わせるに際し、前記第7図(b)のようにタイルユニット1,7が凹反りすると、タイル2の端部同士を相互に入り込ませる作業が極めて行ないにくくなる。
【0011】
本発明は、凹反り等の変形が抑制ないし防止され、取り扱い易いタイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)のタイルユニットは、複数枚のタイルが、それらの裏面に貼着されたネット又はシート状の連結体によって連結されたタイルユニットにおいて、タイル間の目地間隙を保つための目地間隙維持手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2のタイルユニットは、請求項1において、該目地間隙維持手段は、タイルの端面に設けられた凸部であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3のタイルユニットは、請求項2において、該凸部はタイルの端面の厚さ方向の中間付近に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4のタイルユニットは、請求項1において、該目地間隙維持手段は、該目地間隙に介在する接着剤硬化物であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5のタイルユニットは、請求項4において、前記連結体とタイル裏面とが接着剤によって接着されており、この接着剤と前記接着剤硬化物とが一連一体となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6のタイルユニットは、請求項5において、該目地間隙に介在する前記接着剤硬化物は、前記連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することを特徴とするものである。
【0018】
請求項7のタイルユニットは、請求項5又は6において、該タイルの裏面側の角縁が面落し状の斜面となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイルユニットは、目地間隙維持手段を有するため、目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止されるため、取り扱いが容易となる。特に、前述の第8図〜第12図の如く隣接するタイルユニットのタイルの端部同士を組み合わせる場合に、この組み合わせ作業を効率よく行うことが可能である。
【0020】
この目地間隙維持手段として、タイルの端面に凸部を設けてもよい。この場合、目地間隙を狭めるようにタイルユニットが変形しようとすると、一方のタイルが隣接するタイルの凸部に当り、上記変形が抑制ないし防止される。
【0021】
この凸部は、前過ぎるとタイルユニット前方から視認され、後過ぎると目地間隙維持機能が弱くなるので、タイルの厚さ方向の中間付近に設けられることが好ましい。
【0022】
この目地間隙維持手段は、目地間隙に介在する接着剤硬化物であってもよい。この場合、シート、フィルム等の連結体をタイルに接着するための接着剤とこの目地間隙の接着剤硬化物とが一連一体となっていることが望ましい。かかる構成のタイルユニットにあっては、連結体に接着剤を付着させておき、この連結体をタイル裏面に貼り付ける際に余剰の接着剤を目地間隙に押し込んで接着剤硬化物を形成することができる。
【0023】
この場合、接着剤硬化物が連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することにより目地間隙維持機能が十分に高いものとなる。なお、タイル裏面の角縁を面落し状の斜面とすることにより、接着剤が目地間隙に押し込まれ易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係るタイルユニットの縦断面図、第2図はこのタイルユニットに用いられているタイルの斜視図である。
【0025】
このタイルユニット10は、最上段にタイル2を配置し、その下段側に複数のタイル11を配置し、それらの裏面に合成樹脂フィルム、紙等よりなる連結体3を接着して連結し一体化したものである。タイル2は前記タイル2と同一のものであり、上下の端面は平坦である。タイル11は上側の端面に凸部12が設けられ、下側の端面は平坦面となっている。
【0026】
凸部12は、タイル11の後面と平行方向(この実施の形態ではタイル長手方向)に延在する凸条よりなる。この凸条はタイル11の上面の長手方向の全体にわたって設けられてもよいが、深目地調の外観を醸し出す場合には、長手方向の一部にだけ設けられていることが好ましい。長手方向の一部にだけ凸条を設ける場合には、長手方向の中間付近に設けるのが好ましいが、長手方向の両端側の2箇所に設けてもよく、さらに長手方向の3箇所以上に設けてもよい。第1図(b)のタイル11Aのように、突起状の凸部13を複数個設けてもよい。
【0027】
この凸部12又は13の高さは、タイル間の目地間隙と略等しいか、又はそれよりも若干小さいことが好ましく、具体的には、目地間隙の幅寸法をc(図示略)とした場合、凸部の高さがcの60〜95%特に60〜90%とりわけ70〜85%程度であることが望ましい。
【0028】
凸部12又は13の前後方向位置は、その目地間隙の深さをd(図示略)とした場合、凸部12又は13の最高位部の位置が連結体3からdの20〜70%特に20〜60%とりわけ30〜50%程度であることが望ましい。凸部12又は13の基底部のタイル厚み方向の幅は、dの5〜50%特に10〜30%程度が望ましい。
【0029】
このように凸部12又は13を設けることにより、タイルユニット10は、凹反り等の目地間隙を狭める変形が抑制ないし防止され、取り扱いが容易となる。特に、第8図〜第12図のタイルユニット1,7に適用した場合、タイルの端部同士の組み合わせ作業効率が著しく向上する。
【0030】
第13図はタイルユニット10を、第8図〜第12図のように、隣接するタイルユニットのタイル端部同士を組み合わせるように構成したタイルユニット10’の背後側からの斜視図、第14図はその正面図である。
【0031】
このタイルユニット10’を構成するタイル2,11及び連結体3は第1図及び第2図(a)に示したものである。このタイルユニット10’にあっては、第1図と同じく最上段にタイル2を配置し、第2段以下にタイル11を配置している。
【0032】
最上段(第1段)のタイル2と第7段のタイル11の右端は、タイルユニットの右端部から最も後退し、第2段と第8段のタイル11の右端部はタイルユニットの最右端部に位置する。第3段と第5段のタイル11の右端は、それよりも若干後退し、第4段と第6段のタイル11の右端はそれからさらに後退している。
【0033】
各タイル2,11が同一長さであるから、このタイルユニット1は、前記第11,12図の場合と全く同じく、左右に並べて突き合わせると、左側のタイルユニット10’の右端部と右側のタイルユニット10’の左端部とが完全に合一状に係合し、一方のタイルユニットのタイルの端部同士の間に他方のタイルユニットのタイルの端部が入り込む。
【0034】
従って、この平部用タイルユニットを壁面両平部に上下左右に並設し張り付けることにより、第12図と同じく、縦目地が通らない意匠性に優れたタイル壁を構築することができる。
【0035】
このタイルユニット10’の隣接する各タイルの端部同士を組み合わせるに際し、前記タイルユニット10’が凹反りしないので、タイル2,11の端部同士を相互に入り込ませる作業が極めて行ない易い。
【0036】
第3図は別の実施の形態に係るタイルユニット20の縦断面図である。このタイルユニット20は、複数枚の前記タイル2を連結体3で連結したものであり、この点は第6,7図の従来例と同様であるが、接着剤硬化物21が目地間隙に介在している点が従来例と異なる。この接着剤硬化物21は、連結体3をタイル2の裏面に接着する接着剤と一連一体となっている。
【0037】
即ち、このタイルユニット20を製造するに際し、連結体3に接着剤を塗着しておき、この接着剤付き連結体3を整列配置されたタイル2の裏面に押し付け、余剰の接着剤を目地間隙に入り込ませ、そのまま硬化させて接着剤硬化物21を形成する。
【0038】
この接着剤硬化物21が目地間隙に存在することにより、タイルユニット20は目地間隙を狭めるように変形することが抑制され、タイルユニット20が取り扱い易いものとなる。
【0039】
この第3図のタイルユニット20のタイル2は、縦断面が方形であり、裏面の上下の角縁が直角となっているが、第4図のタイルユニット20Aのタイル2Aのように、裏面の上下の角縁を面落し状の斜面としてもよい。このタイル2Aを用いてタイルユニット20Aを製造する場合、連結体3に塗着されていた接着剤が目地間隙に入り込み易くなる。第4図のタイルユニット20Aのその他の構成はタイルユニット20と同一である。
【0040】
第3図及び第4図のタイルユニット20,20Aにあっては、接着剤硬化物21の最前面の位置が、連結体3より目地深さdの10〜40%特に10〜30%程度であることが望ましい。
【0041】
第5図(a)はさらに別の実施の形態に係るタイルユニット30の縦断面図であり、第5図(b)はこれに用いられているタイル33の斜視図である。
【0042】
このタイルユニット30は、タイル31〜38を連結体3で連結したものであり、目地間隙に接着剤硬化物40が介在している。最上段のタイル31は上下両端面が平坦面である。2段目以降のタイル32,33,34,35,36,37,38は、上側の端面に各々凸部32a,33a,34a,35a,36a,37a又は38aが設けられており、下側の端面は平坦面となっている。この凸部は第5図(b)の通り凸条よりなるものであるが、第5図(c)のタイル33Aのように突起33cであってもよい。
【0043】
この実施の形態では、タイル31〜38の後面の上下の角縁は面落し状の斜面33bとなっている。
【0044】
このタイルユニット30を製造するには、タイルユニット20と同様に、連結体3に接着剤を塗着しておき、裏面が面一となるように整列配置されたタイル31〜38の該裏面に連結体3を押し付けて接着する。この際、余剰の接着剤が目地間隙に入り込んで硬化することにより接着剤硬化物40が形成される。
【0045】
この実施の形態では、目地間隙維持手段として凸部32a〜38aと接着剤硬化物40の双方を設けており、タイルユニット30は目地間隙を狭める方向にきわめて変形しにくいものとなっている。なお、凸部32a〜38aの好ましい高さや位置、接着剤硬化物の好ましい量は上記説明の通りである。
【0046】
このタイルユニット30は、上下に隣接するタイル31〜38の面が出入りしており、凹凸感に富んだタイル張り壁面を構築することができる。この場合、目地深さdは厚みの小さいタイルの前面から連結体3までの距離として定義される。
【0047】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。例えば、連結体は第6図に示した形状に限定されない。また、合成樹脂又は紙よりなるシート状連結体のほか、ガラス繊維等の高弾性率繊維のネットを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係るタイルユニット10の斜視図である。
【図2】図1のタイルユニットのタイルを示す斜視図である。
【図3】別の実施の形態に係るタイルユニット20の縦断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るタイルユニット20Aの縦断面図である。
【図5】さらに別の実施の形態に係るタイルユニット30の構成図である。
【図6】従来のタイルユニットの背後側からの斜視図である。
【図7】従来のタイルユニットの施工方法を示す断面図と、タイルユニットの変形状況の説明図である。
【図8】平部用タイルユニットの正面図である。
【図9】平部用タイルユニットの斜視図である。
【図10】平部用タイルユニットの裏側からの斜視図である。
【図11】平部用タイルユニットの組み合わせ説明図である。
【図12】タイル壁の立面図である。
【図13】異なる実施の形態に係るタイルユニットの背後側からの斜視図である。
【図14】図13のタイルユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1,7,10,10’,20,20A,30 タイルユニット
2,2A,11,11A,31〜38 タイル
3 連結体
4 壁面
5 接着剤層
12,13,32a〜38a 凸部
21,40 接着剤硬化物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のタイルが、それらの裏面に貼着されたネット又はシート状の連結体によって連結されたタイルユニットにおいて、
タイル間の目地間隙を保つための目地間隙維持手段を設けたことを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
請求項1において、該目地間隙維持手段は、タイルの端面に設けられた凸部であることを特徴とするタイルユニット。
【請求項3】
請求項2において、該凸部はタイルの端面の厚さ方向の中間付近に設けられていることを特徴とするタイルユニット。
【請求項4】
請求項1において、該目地間隙維持手段は、該目地間隙に介在する接着剤硬化物であることを特徴とするタイルユニット。
【請求項5】
請求項4において、前記連結体とタイル裏面とが接着剤によって接着されており、この接着剤と前記接着剤硬化物とが一連一体となっていることを特徴とするタイルユニット。
【請求項6】
請求項5において、該目地間隙に介在する前記接着剤硬化物は、前記連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することを特徴とするタイルユニット。
【請求項7】
請求項5又は6において、該タイルの裏面側の角縁が面落し状の斜面となっていることを特徴とするタイルユニット。
【請求項1】
複数枚のタイルが、それらの裏面に貼着されたネット又はシート状の連結体によって連結されたタイルユニットにおいて、
タイル間の目地間隙を保つための目地間隙維持手段を設けたことを特徴とするタイルユニット。
【請求項2】
請求項1において、該目地間隙維持手段は、タイルの端面に設けられた凸部であることを特徴とするタイルユニット。
【請求項3】
請求項2において、該凸部はタイルの端面の厚さ方向の中間付近に設けられていることを特徴とするタイルユニット。
【請求項4】
請求項1において、該目地間隙維持手段は、該目地間隙に介在する接着剤硬化物であることを特徴とするタイルユニット。
【請求項5】
請求項4において、前記連結体とタイル裏面とが接着剤によって接着されており、この接着剤と前記接着剤硬化物とが一連一体となっていることを特徴とするタイルユニット。
【請求項6】
請求項5において、該目地間隙に介在する前記接着剤硬化物は、前記連結体からタイル厚みの10〜40%の範囲まで存在することを特徴とするタイルユニット。
【請求項7】
請求項5又は6において、該タイルの裏面側の角縁が面落し状の斜面となっていることを特徴とするタイルユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−77432(P2006−77432A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261250(P2004−261250)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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