説明

タクロリマスの精製方法

【課題】アスコマイシン(Ascomycin)及びジヒドロタクロリマス(Dihydrotacrolimus)からタクロリマスを分離精製するための、産業規模での使用が可能な方法の提供。
【解決手段】銀変性された酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、スチレンジビニルベンゼンコポリマー、吸着樹脂、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、逆相シリカゲル、及びシアノシリカ−ゲルから成る群から選択された銀変性された収着剤を用い、そして定常期として前記銀変性された収着剤によりクロマトグラフィー的にタクロリマスを分離する、タクロリマスのクロマトグラフィー精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タクロリマス(Tacrolimus)の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タクロリマス、[3S-[3R [E(1S, 3S, 4S)], 4S, 5R, 8S, 9E, 12R, 14R, 15S, 16R, 18S, 19S, 26aR]]−5, 6, 8, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 24, 25, 26a−ヘキサデカヒドロ−5, 19−ジヒドロキシ−3−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル]−14, 16−ジメトキシ−4, 10, 12, 18−テトラメチル−8−(2−プロペニル)−15, 19−エポキシ−3H−ピリド[2, 1-c][1, 4]オキサアザシクロトリコシン−1, 7, 20, 21(4H, 23H)−テトロン、一水和物(これまで、FK506として知られている)は、822.05の分子量、式C44H69NO12H2O、及び下記構造式を有する:
【0003】
【化1】

【0004】
タクロリマスは、ストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)により生成される、天然に存在するマクロライド免疫抑制剤である。それは、Fujisawaにより名称PROGRAF(商標)として市販されており、そしてカプセル(タクロリマスカプセル)として経口投与のために利用できる。タクロリマスは、肝臓、腎臓、心臓、骨髄、小腸及び膵臓、肺及び気管、皮膚、角膜及び肢における宿主及び移植された移植片の生存性を、T−リンパ球活性化を阻害することにより延長する。動物においては、タクロリマスは、いくらかの体液性免疫、及びかなりの程度、細胞介在性反応、例えば同種移植片拒絶、遅延型過敏症、コラーゲン誘発された関節炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎、及び対宿主移植片病を制御することが示されている。
【0005】
タクロリマスは最初に、アメリカ特許出願番号第4,894,366号及びヨーロッパ特許番号EP0184162号に記載された。タクロリマスを調製する場合、不純物である、次のタクロリマスの2種の類似体がまた得られる:下記構造式:
【0006】
【化2】

を有するアスコマイシン;及び下記構造式:
【0007】
【化3】

を有するジヒドロタクロリマス。
【0008】
従来の方法、例えば結晶化によるそれらの不純物からのタクロリマスの分離は、構造類似性のために困難である。従って、カラムクロマトグラフィーによる精製が必要とされる。精製の効率は、カラムクロマトグラフィーへの銀イオンの使用により改良され得る。銀イオンは、タクロリマスに存在するアリル側鎖の二重結合と相互反応するが、しかし側鎖がアルキル基であるアスコマイシン及びジヒドロタクロリマスにおいて不在である。アスコマイシンにおいては、側鎖はエチル基であり、そしてジヒドロタクロリマスにおいては、側鎖はプロピル基である。結果として、タクロリマスと、定常期との間の又は移動相への結合が強化され、そして従って、タクロリマスの保持時間の、その類似体の保持時間と比較しての差異が高められる。
【0009】
アメリカ特許第6,492,513号は、銀イオンにより前処理された、スルホン酸基含有強カチオン交換樹脂、及びアセトン又は酢酸エチル及びメタノールの溶離剤を用いての不純物からのタクロリマスの分離を開示する。タクロリマスは開示される交換樹脂に対して感受性であるので、タクロリマスの汚染が予測される。
【0010】
アメリカ特許第6,576,135号及び第6,881,341号は、不純物、特にタクロリマス−デメチル類似体からのタクロリマスの分離のための2段階カラムクロマトグラフィー方法を開示する。1つの開示される段階は、非イオン性吸着樹脂にタクロリマス含有混合物を吸着し、そして銀イオン含有水性溶媒により溶離することを包含する。他の開示される段階は、塩基性活性アルミナに混合物を吸着し、そして分離を行うために、有機溶媒により溶離することを包含する。溶離剤への水の使用は、タクロリマスのイソフォームの形成をもたらし、それにより、タクロリマスを汚染する。さらに、遊離銀イオンを含む溶離剤の使用は、カラムからの溶離に続いて、溶離剤からの銀イオンのタクロリマスからの分離を必要とする。
【0011】
国際特許出願公開番号WO05/054253号は、不純物を取り除くためにアンモニアガスによる処理に続いて、任意には逆相クロマトグラフィーにシリカゲルを用いて、又は銀により前処理されたシリカゲルを用いて、タクロリマスのクロマトグラフィー分離を開示する。開示される溶離剤は、逆相分離のためのn−ブタノール、アセトニトリル及び緩衝液の混合物、及び銀処理されたシリカゲル分離のための酢酸エチル及びヘキサンの混合物であった。
【0012】
国際特許出願公開番号WO05/098011号は、シリカゲルクロマトグラフィーによる不純物からのタクロリマスの分離を開示し、ここで前記シリカゲルは任意には、銀により前処理される。任意には、タクロリマスはさらに、未処理のシリカを用いての逆相クロマトグラフィーにより精製される。C-8カラムは、逆相クロマトグラフィーの例である。例示される溶離剤は、銀処理されたカラムのためにヘキサン中、酢酸エチル、及び逆相分離のためにアセトニトリル、n−ブタノール及び緩衝液の混合物を包含する。
【0013】
国際特許出願公開番号WO05/010015号は、銀を伴わないで、及びTHF又はアセトニトリル、水及び任意には、追加の有機溶媒を含む溶離剤を伴って、非イオン性吸着樹脂を用いての分離を開示する。
特にアスコマイシン及びジヒドロタクロリマスからタクロリマスを精製するための、産業規模での使用のために適切である方法についての必要性が当業界に存在する。本発明はそのような方法を提供する。
【発明の開示】
【0014】
発明の要約
1つの態様においては、本発明は、a)タクロリマス及び不純物から成る混合物を、銀イオンにより前処理された収着剤層に負荷し、ここで前記収着剤が、銀変性された酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、スチレンジビニルベンゼンコポリマー、吸着樹脂、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、逆相シリカゲル、及びシアノシリカ−ゲルから成る群から選択され;そしてb)前記混合物に存在する不純物からタクロリマスを分離するために、前記収着剤樹脂の層から前記混合物を溶離することを含んで成る、不純物からタクロリマスを分離するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の特定の記載
本発明は、定常相についての銀イオン前処理された収着剤(“銀変性された収着剤”)を用いてのタクロリマスのクロマトグラフィー分離方法に向けられ、ここで前記収着剤は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、スチレンジビニルベンゼンコポリマー、吸着樹脂、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、逆相シリカゲル及びシアノシリカゲルの1つである。本発明の方法は、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスからのタクロリマスの分離のために、特に有用である。
【0016】
本発明の方法は、産業使用のために適切である。それは、水及び/又は銀イオンを含まない溶離剤により実施され、そしてジヒドロタクロリマス及びアスコマイシンからのタクロリマスのより効果的な分離を提供する。水を含まない溶離剤は、タクロリマスの異性体の形成を促進することによりタクロリマスの汚染を回避する。また、溶離剤への銀イオンの使用を開示することにより、銀イオンによる最終生成物の汚染は実質的に低められる。タクロリマスが感受性である強酸性樹脂の使用、及び2段階クロマトグラフィーの利用がまた、本発明の方法において回避され得る。
【0017】
不純物を含む混合物に存在するタクロリマスは、銀変性された収着剤上に負荷される。負荷は例えば、溶媒、好ましくは溶解を可能にする最少量の溶媒に前記混合物を溶解し、そして濃縮された溶液として銀変性された収着上に前記溶液を負荷することにより行われ得る。最少量の溶媒は、出発タクロリマス質量について計算される溶媒混合物の体積の約2倍であり得る。混合物が溶解される溶媒は、溶離の間、使用される溶媒と同じである。そのような溶媒の例は、下記に提供される。混合物はまた、他の態様で、例えば混合物の濃縮されていない溶液の蒸発から得られる油状物又は固体残留物として負荷され得る。
【0018】
次に、タクロリマスから成る混合物が、溶媒、又は銀変性された収着剤からの溶媒により溶離される。好ましくは、溶媒は実質的に無水である。1つの態様においては、C3-9直鎖又は枝分れ鎖のケトン、C3-7直鎖又は枝分れ鎖のエステル、C1-7直鎖又は枝分れ鎖のアルコール、C2-8直鎖、枝分れ鎖又は環状エーテル、C2-5ニトリル及びそれらの混合物から成る群から選択された極性有機溶媒、又は極性有機溶媒、及びC5-8直鎖、枝分れ鎖又は環状炭化水素、C6-10芳香族炭化水素及びそれらの混合物から成る群から選択された非極性有機溶媒の混合物のいずれかを含む非水性溶媒剤が使用される。
【0019】
溶媒剤は好ましくは、無水、すなわち水を含まないか、又はタクロリマスの異性体の形成を妨げるのに十分に低い水含有率を有する。本明細書において使用される場合、“無水”とは、タクロリマスの検出できる量の異性体の形成をもたらすのに不十分である微量不純物を除いて、水を有さない溶離剤を意味する。好ましくは、溶離剤は、2重%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは、0.05重量%以下の水を含む。
【0020】
好ましくは、C3-9直鎖又は枝分れ鎖のケトンは、アセトン、エチルメチルケトン、又はイソブチルメチルケトンである。好ましいC3-7直鎖又は枝分れ鎖のエステルは、酢酸エチル、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート及びエチルプロピオネートを包含する。好ましいC1-7直鎖又は枝分れ鎖のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール及びイソブタノールを包含する。
【0021】
好ましいC2-8直鎖、枝分れ鎖又は環状エーテルは、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフランを包含する。好ましいC2-5ニトリルはアセトニトリルである。好ましくは、C5-8直鎖、枝分れ鎖又は環状炭化水素は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン又はシクロヘプタンである。好ましくは、C6-10芳香族炭化水素はトルエンである。好ましい極性有機溶媒はアセトンである。好ましくは、溶離剤は、アセトンを、単一の溶媒として、又は他の溶媒との混合物に含み、そしてより好ましくは、溶離剤はアセトン及びヘキサン又は酢酸エチルを含む。
【0022】
アセトン及びヘキサンの混合物が使用される場合、次の溶媒比、すなわち、それぞれ約1:1、約2:3、約1:4又は1:9の少なくとも1つが、使用される収着剤に依存して、使用され得る。酢酸エチル及びアセトンの混合物が使用される場合、溶媒比は、好ましくは約50〜80体積%のアセトン、より好ましくは体積により約30:70(酢酸エチル:アセトン)である。任意には、タクロリマスの溶離は、アセトン及びヘキサンを、好ましくは約3:2の比で含む溶媒混合物による溶離により出発して、続いて、約100%の単一溶媒、好ましくはアセトンによる溶離を伴うグラジエント溶離工程を含んで成る。
【0023】
好ましくは、溶離工程のタイプは、カラムの長さに従って選択される。好ましくは、短いカラム、例えば約10cmの長さのカラムによるグラジエント溶離が好ましく、そして長いカラム、例えば約1mの長さのカラムによるグラジエント溶離は使用されない。
本発明の好ましい方法においては、カラムは、銀変性された収着剤により充填され、これは次に、溶離剤により洗浄される。次に、溶離剤中、タクロリマスの溶液が充填され、続いてカラムからのタクロリマス、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスの溶離、及び得られるサンプルの回収及び分析を伴う。溶離剤は好ましくは、無水である。
【0024】
いずれかの純度のタクロリマスが、本発明の方法により精製され、そして粗タクロリマスが得られる。本発明の方法により精製されたタクロリマスは、次の不純物の少なくとも1つを含むことができる:典型的には、約0〜約10 HPLC%面積の量でのアスコマイシン、及び/又は約6〜約O HPLC%面積の量でのジヒドロタクロリマス。約7.9 HPLC%面積のアスコマイシン及び/又は約3.8 HPLC%面積の量でのジヒドロタクロリマスが、本発明の方法により精製されている。
【0025】
溶離の順序は、収着剤及び溶離剤の性質に依存する。典型的には、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスは、タクロリマスは銀変性された執着剤に対して高い親和性を有するので、タクロリマスの前、溶離される。
好ましくは、銀変性された収着剤の調製のために使用される酸化アルミニウムは、酸性活性、中性活性又は塩基性活性酸化アルミニウム、又はBrockmannに従って標準化された酸化アルミニウム(活性II−III )である。より好ましくは、Brockmannに従って標準化された酸化アルミニウム90、又は中性活性又は酸性活性酸化アルミニウムが使用される。
【0026】
好ましいスチレンジビニルベンゼンコポリマーは、非イオン性スチレンジビニルベンゼンコポリマー又はアニオン性スチレンジビニルベンゼンコポリマーのいずれかである。
銀変性されたシアノ−シリカゲルの調製のために使用されるシアノ−シリカゲルは、市販の収着剤であり、又はそれは、トリクロロ−3−シアノプロピルシランによるシリカゲルの処理により調製され、シアノアルキル基にその表面上で共有結合されるシリカゲルがもたらされる。タクロリマスを精製するための最も好ましい収着剤は、銀変性された酸化アルミニウム又は銀変性されたシアノ−シリガゲルである。
【0027】
使用される吸着樹脂収着剤は、小さな粒度を有する。その粒度は、約75μm〜約35μmの粒度であり得る。
好ましくは、効率的な精製のために、収着剤は、少なくとも約50m2/gの比表面積、より好ましくは約50〜約600m2/gを有する。
【0028】
好ましくは、銀変性された収着剤は、収着剤、銀カチオン源、及びC1-4アルコール、水、及び水及び混和性溶媒の混合物を混合し、そして得られる混合物を乾燥することにより調製される。好ましくは、溶媒がC1-4アルコールである場合、銀カチオン源及びC1-4アルコールは最初に、溶液を得るために組合され、そして次に、収着剤が添加され、懸濁液が得られる。得られる懸濁液が好ましくは、回転蒸発器において乾燥され、続いて真空オーブンにおいて約15分〜約5時間、乾燥される。
【0029】
C1-4アルコールは好ましくは、単一のアルコール、又はアルコールの混合物を含んで成る。好ましいC1-4アルコールはメタノールである。好ましくは、溶媒がC1-4アルコールである場合、銀イオン源及びC1-4アルコールは、溶媒のほぼ還流温度に加熱され、溶液が得られる。
【0030】
溶媒が水、又は水混和性溶媒の混合物であり、そして収着剤が逆相シリカゲルである場合、銀イオン源は好ましくは、周囲温度で溶解され、そして溶解の後、但し乾燥の前、アンモニア溶液が添加される。次に、処理された溶液は好ましくは、オーブンにおいて、及びより好ましくは、約70℃の温度及び約30mバールの圧力で乾燥される。
【0031】
無機銀塩又は無機銀錯体塩が使用され得る。塩又は錯体が溶液として収着剤と接触され得る。好ましい態様は、酢酸銀、硫酸銀及び亜硝酸銀を包含する。好ましい銀錯体は、銀アミノ錯体、銀シアノ錯体及びチオ硫酸銀錯体、及び酢酸銀を包含する。より好ましくは銀源は、硝酸銀である。
【0032】
収着剤は、異なった量の銀イオンから構成され得る。乾燥の後に得られる銀変性された収着剤は、好ましくは、約0.1〜約15%w/wの銀塩及びより好ましくは、約3〜約13%w/wの銀塩を含む。
【0033】
好ましくは、溶離された画分は、画分グループを集め、そして溶媒を蒸発することにより回収され、従ってサンプルが提供される。次に、回収されたサンプルは、好ましくはHPLCにより分析され、サンプル中のタクロリマス、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスの含有率が提供される。典型的には、溶離工程が進行するにつれて、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスのレベルが低下し、同時に、タクロリマスのレベルは上昇する。好ましくは、その工程が反復され、その結果、最終サンプルは実質的に純粋なタクロリマスを含む。
【0034】
好ましくは、最終サンプルは、少なくとも93 HPLC%面積のタクロリマス、より好ましくは少なくとも95 HPLC%面積のタクロリマス、及びさらにより好ましくは、少なくとも99 HPLC%面積のタクロリマスを含む。好ましくは、最終サンプルはまた、約0.20 HPLC%面積以下のアスコマイシン、より好ましくは約0.09 HPLC%面積以下のアスコマイシン、及びさらにより好ましくは、約0.06 HPLC%面積以下のアスコマイシンを含む。好ましくは、最終サンプルはまた、約0.04 HPLC%面積以下のジヒドロタクロリマス、及びより好ましくは約0.03 HPLC%面積以下のジヒドロタクロリマスを含む。
【0035】
カラムは再生され、そして追加の精製工程のために使用され得る。
溶離されたタクロリマスは、樹脂を分離する銀イオンを含むことができ;そのような銀イオンの量は、銀イオンを含む溶離剤が使用される場合よりも実質的に低い。溶離されたタクロリマスは、溶離剤を蒸発し、残渣を得;前記残渣を有機溶媒に溶解し;銀イオンを沈殿する試薬を含んで成る溶液と共に混合し;沈殿された銀イオンを濾過することにより、銀イオンから分離され得る。試薬は、塩化物イオン、例えば塩化ナトリウム又はアンモニウムであり得、この添加が塩化銀の沈殿をもたらす。銀イオンの除去のためのもう1つの方法は、塩化ナトリウム変性されたシリカゲルにより充填されたカラムに溶離物を通すことである。塩化ナトリウム変性されたシリカゲルは、シリカゲルと、塩化ナトリウムの水溶液とを混合することにより容易に調製され得る。
【0036】
典型的には、有機溶媒は、銀塩が不混和性である溶媒である。好ましくは、有機溶媒は、酢酸エチル、トルエン、標準又はイソプロピルアセテートエチル、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、プロピオネート、ホルメート、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、酢酸エチル及びアセトンの混合物、トルエン及びアセトンの混合物、及び水とそれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、溶媒は酢酸エチルである。
【0037】
好ましくは、有機溶媒は、g残渣当たり約2体積〜約30体積、より好ましくは約10〜約30体積の量で存在する。
【0038】
典型的には、銀イオンを沈殿する試薬は、水及び有機溶媒において低い溶解性を有する銀塩を形成する。好ましくは、試薬は、アセテート、スルフェート、ニトリット、ブロメート、サリチレート、ヨーデート、クロメート、カーボネート、シトレート、ホスフェート、クロリド、ステアレート、スルフィド、ブロミド、ヨージド、シアニド、ベンゾエート、オキサレート、スルフィット、及びチオシアネートから成る群から選択されたカウンターイオンを包含する。
【0039】
より好ましくは、カウンターイオンは、カーボネート、シトレートホスフェート、クロリド、ステアレート、スルフィド、ブロミド、ヨージド、シアニド、ベンゾエート、オキサレート、スルフィト又はチオシアネートである。より好ましくは、カウンターイオンは、ブロミド、ヨージド、ステアレート、スルフィット又はシアニドである。好ましくは、沈殿試薬は、カウンターイオンを含んで成る塩である。より好ましくは、沈殿試薬は、NH4Clである。
【0040】
好ましくは、沈殿試薬は、モル当量の銀当たり1〜約5モル当量、及びより好ましくは、モル当量の銀当たり約1.2〜約4モル当量の量で添加される。好ましくは、銀イオンを沈殿する試薬の溶液は、水溶液である。好ましくは、水溶液は、有機溶媒中、残渣の溶液に添加される。銀を沈殿するための試薬を含んで成る水溶液の添加は、少なくとも2相、例えば有機溶媒を含んで成る有機相、及び水性相、並びに銀塩の沈殿物を有するシステムを提供する。
【0041】
好ましくは、銀塩は、塩化銀である。次に、塩が濾過され、そして濾液が相分離にゆだねられ、実質的に銀イオンを有さない、溶離されたタクロリマスを含んで成る有機相が提供される。典型的には、用語“〜を有さない”とは、タクロリマスに関して、本明細書において使用される場合、20ppm以下の銀イオンを含むタクロリマスを意味する。好ましくは、銀イオンを有さないタクロリマスは、10ppm以下の銀イオンを含む。銀イオンのレベルは、当業者に知られているいずれかの方法、例えばアメリカ薬局方に記載される方法により決定され得る。
【0042】
カラムから直接得られるか、又は銀イオンの分離に従って得られるタクロリマスはさらに、2−プロパノール及びn−ヘプタンの混合物に最終サンプルを溶解し、続いて濾過することを含んで成る結晶工程により精製され得る。次に、濾液は、水及びn−ヘプタンの混合物と共に組み合わされ、続いて冷却され、沈殿物が得られる。次に、沈殿物は好ましくは、濾過、及び水及び次にn−ヘプタンによる洗浄により回収され、続いて乾燥される。
好ましくは、沈殿物の回収の前、溶媒の混合物により組合された濾液は、約24時間、維持される。
【0043】
さらに精製されたサンプルは好ましくは、クロマトグラフィー方法により得られる純度よりも高い純度を有するタクロリマスを含む。典型的には、結晶化の後、いずれかの残存するアスコマイシン及びジヒドロタクロリマスのレベルはさらに低下し、そしてタクロリマスのレベルは上昇する。好ましくは、精製されたサンプルは、少なくとも97 HPLC%面積、より好ましくは少なくとも99 HPLC%面積のタクロリマス、又は少なくとも99.5 HPLC%面積のタクロリマス、及びさらにより好ましくは少なくとも99.9 HPLC%面積のタクロリマスを含む。
【0044】
特定の好ましい態様及び例示的な例により本発明を記載して来たが、当業者は、本発明の特許請求の範囲内で、本発明を修飾できることを理解することができる。例は、本発明の理解を助けるために示されており、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0045】
HPLC
カラム:Waters Symmetry G184.6* 150mm 3.5μm
移動相:
A;2000mlのメスフラスコ中に200mlのアセトニトリルを計量し、フラスコを蒸留水により満たし、そして次に、100μlの50%CH3COOH(pH=4.0)を添加する。
B:2000mlのアセトニトリルに100μlの50%−osCH3COOHを添加する。
【0046】
【表1】

【0047】
流速: 2.2ml/分
検出波長: 200nm
注入体積: 20μl
希釈剤: アセトニトリル
サンプル温度: 20℃
カラム温度: 60℃
実施時間: 47分
典型的な保持時間:タクロリマス 24.5分
Tac. I. (アスコマイシン)RRt=0.91
Tac. II(ジヒドロタクロリマス)RRt=1.35
【0048】
例1:硝酸銀変性されたアルミナの調製
硝酸銀(10.0g)を、温メタノール(500ml)に溶解し、続いてアルミナ(Merckにより製造された塩基性活性酸化アルミニウム90、63〜200μm、活性II−III 、100g)を添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、回転蒸発器上で蒸発乾燥した。残渣を、70℃で5時間、真空(30mバール)において乾燥した。銀含有率:10%w/w。
【0049】
例2:銀変性されたアルミナによる粗タクロリマスの精製、定組成溶離
ガラスカラム(直径22mm、層の高さ100mm、乾燥充填)を、例1に従って調製された、硝酸銀(40g)変性されたアルミナにより充填し、そしてカラムを、50%(v/v)のアセトン及び50%(v/v)のn−ヘキサンを含む移動相(約200ml)により洗浄した。HPLC分析によれば、79.7%のタクロリマス、7.9%のアスコマイシン及び3.8%のジヒドロタクロリマスを含む粗タクロリマス(306mg)を、移動相(10ml)に溶解し、そしてその溶液をカラム上に充填した。カラムを、移動相(約20ml/分)により溶離し、そして30mlの画分を集めた。
【0050】
画分をHPLCにより分析し、そして再構成されたクロマトグラムを図1に示す。分離されたアスコマイシン及びジヒドロタクロリマスを表す、最初の4個の画分を濃縮乾燥した。残渣(52mg)は、HPLC分析によれば、2.1%のタクロリマス、31.7%のジヒドロタクロリマス及び63.0%のアスコマイシンを含んだ。続く3個の画分を、濃縮乾燥し(15mg)、そしてHPLC分析によれば、それらは、37.5%のタクロリマスを含んだ。精製されたタクロリマスを含む続く画分(15画分)を濃縮し、223mgの残渣を得、これをHPLCにより分析し、そして95.54%のタクロリマス、0.2%のアスコマイシン及び0.04%のジヒドロタクロリマスを含むことを示した。
【0051】
例3:銀変性されたアルミナによる粗タクロリマスの精製、グラジエント溶離
例2の後、カラムを、40%(v/v)のアセトン及び60%(v/v)のn−ヘキサンから成る移動相により洗浄した。粗タクロリマス(321mg:79.7%のタクロリマス、7.9%のアスコマイシン及び3.8%のジヒドロタクロリマス)を、移動相(10ml)に溶解し、そして次に、カラム上に負荷した。溶離を、40%のアセトン及び60%のn−ヘキサン(v/v)を含む移動相(350ml)により実施し、そして溶離物を濃縮乾燥し、HPLC分析によれば、3.3%のタクロリマス、34.5%のジヒドロタクロリマス及び67.0%のアスコマイシンを含む残渣59mgを得た。次に、カラムをアセトン(250ml)により溶離し、そして溶離物を濃縮し、95.7%のタクロリマス、0.09%のアスコマイシン及び0.03%のジヒドロタクロリマスを含む乾燥残渣218mgを得た。
【0052】
例4:変性されたアルミナ及びアセトン溶離剤を用いてのタクロリマスの置換クロマトグラフィーによる粗タクロリマスの精製
タクロリマス(3.8g)を、アセトン(15.6ml)に溶解した。その溶液を、3.2cmの直径を有するガラスカラムに配置される、85cmの高さを有する銀変性されたアルミナ(約10%w/wの銀を含む)の収着剤層に通した。次に、カラムをアセトンにより溶離した。溶離速度は30ml/時であった。1つの画分は、0.3%のジヒドロタクロリマス、0.45%のアスコマイシン及び93.0%のタクロリマスを含んだ。
【0053】
例5:変性されたアルミナ及びアセトン溶離剤を用いてのタクロリマスの置換クロマトグラフィーによる粗タクロリマスの精製
HPLC分析に従って、1.2%のアスコマイシン及び1.8%のジヒドロタクロリマスを含む粗タクロリマス(2g)を、アセトン(20ml)に溶解した。その溶液を、銀変性されたアルミナ(200g;約10%w/wの銀を含む)の収着剤層に通した。次に、収着剤層を、アセトンにより溶離し、そして50mlの画分を集め、そしてHPLCにより分析した。再構成されたクロマトグラムを図2に示す。マクロライドを含む最初の3個の画分を濃縮し、HPLC分析によれば、6.1%のアスコマイシン及び9.4%のジヒドロタクロリマスを含む乾燥残渣0.41gを得た。次の7個の画分を濃縮し、HPLC分析によれば、0.18%のアスコマイシン及び0.06%のジヒドロタクロリマスを含む乾燥残渣1.53gを得た。
【0054】
例6:変性されたアルミナ及びアセトン:ヘキサン溶離剤混合物を用いてのタクロリマスの置換クロマトグラフィーによる粗タクロリマスの精製
タクロリマス(3.8g)を、アセトン(15.6ml)に溶解した。その溶液を、3.2cmの直径を有するガラスカラムに配置される、85cmの高さを有する銀変性された中性活性アルミナ(約10%w/wの銀を含む)の収着剤層に通した。次に、吸着剤層を、70:30の比でのアセトン:酢酸エチルにより溶離した。溶離速度は90ml/時であった。1つの画分は、0.07%のジヒドロタクロリマス、0.39%のアスコマイシン及び94.7%のタクロリマスを含んだ。
【0055】
例7:硝酸銀変性された活性酸製アルミナの調製
硝酸銀(75.0g)を、温メタノール(1400ml)に溶解し、続いてアルミナ(Merckにより製造された活性酸性酸化アルミニウム90、63〜200μm、活性I、750g)を添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、回転蒸発器上で蒸発乾燥した。残渣を、真空下で乾燥した。残渣は10%w/wの銀含有率を有した。
【0056】
例8:銀変性された活性酸性アルミナを用いてのクロマトグラフィーによるタクロリマスの精製
HPLC分析によれば、1.03%のアスコマイシン及び1.85%のジヒドロタクロリマスを含むタクロリマス(6.0g)を、70:30の比でのアセトニトリル:酢酸エチル溶媒混合物(24ml)に溶解し。その溶液を、3.2cmの直径を有するガラスカラムに配置される、85cmの高さを有する銀変性された活性酸性アルミナ(約10%w/wの銀を含む)の収着剤層に通した。カラムを、70:30の比でのアセトン:酢酸エチル溶液により-5℃で溶離した。溶離速度は90ml/時であった。画分を集め、そしてHPLCにより分析した。選択された主画分を蒸発し、そして結晶化した。HPLC分析によれば、生成物は、96.25%のタクロリマス、0.22%のアスコマイシン及び0.04%のジヒドロタクロリマスを含んだ。
【0057】
例9:タクロリマスの結晶化
銀変性されたアルミナ上でのクロマトグラフィー処理の後、タクロリマス画分の蒸発により得られた乾燥残渣(55.3g)を、2−プロパノール(150ml)及びn−ヘプタン(150ml)の混合物に溶離し、続いて、その溶液を濾過した。次に、濾液を、水(250ml)及びn−ヘプタン(250ml)により希釈し、そして得られる混合物を冷却し、そして24時間、攪拌した。沈殿された結晶性生成物を濾過し、水及びn−ヘプタンにより洗浄し、そして乾燥した。47.8gの結晶性タクロリマスを得た。HPLC分析によれば、生成物は、99.1%のタクロリマス、0.33%のタクロリマス互変異体II、0.18%のタクロリマス互変異体I、0.11%のアスコマイシン及び0.04%のジヒドロタクロリマスを含んだ。
【0058】
例10:活性アルミナの変性
酢酸銀(20g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。酸化アルミニウム(活性中性、Merck, 0.063〜0.200mm、活性段階I)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。乾燥された懸濁液の銀含有率は2.5%w/wであった。
【0059】
例11:逆相シリカゲルの変性
硝酸銀(20g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。逆相シリカゲル(330g)(LiChroprep RP-18, Merck)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0060】
例12:吸着樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。吸着樹脂XAD1180(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0061】
例13:吸着樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。吸着樹脂SP207(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0062】
例14:小粒度を有する吸着樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。吸着樹脂 Amberchrom CG300M(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0063】
例15:小粒度を有する吸着樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、メタノール(650ml)に、還流温度で加熱しながら溶解した。吸着樹脂 Amberchrom CG300S(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0064】
例16:カチオン交換樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。カチオン交換樹脂 SK10(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0065】
例17:アニオン交換樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。アニオン交換樹脂 IRA68(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0066】
例18:逆相シリカゲルの変性
硝酸銀(20g)を、水(500ml)に周囲温度で溶解した。濃アンモニア溶液40mlを、前記硝酸銀溶液に、330gの逆相シリカゲル(LiChroprep RP-18, Merck)の存在下で数回に分けて添加した。溶液を、乾燥まで、高い真空下で注意して濃縮した。
【0067】
例19:アニオン交換樹脂の変性
硝酸銀(30g)を、加熱されたメタノール(650ml)に溶解した。アニオン交換樹脂 IRA900(650g)を、前記溶液に添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、乾燥まで減圧下で濃縮した。
【0068】
例20:硝酸銀変性されたシアノ−シリカゲル
硝酸銀(10.0g)を、温メタノール(500ml)に溶解し、そしてシアノ−シリカゲル(Flukaにより製造されたシリカゲル100CN、15〜35μm、100g)を添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、回転蒸発器上で蒸発乾燥した。残渣を、70℃で真空下(30mバール)下で、5時間、乾燥した。
【0069】
例21:銀変性されたシアノ−シリカゲルによる粗タクロリマスの精製
クロマトグラフィーカラム(直径25mm、長さ250mm)を、例18において調製された収着剤(54.4g)により充填し、そしてカラムを、移動相(25:75の比でのアセトン:n−ヘキサンの混合物;1000ml)により洗浄した。次に、粗タクロリマス(510mg)(79.7%のタクロリマス、7.9%のアスコマイシン及び3.8%のジヒドロタクロリマス)を、移動相(25ml)に溶解し、カラム上に負荷し、そしてカラムを前記移動相により溶離した。それぞれ100mlの画分を採取し、そしてHPLCにより分析した。再構成されたクロマトグラムを図3上に示す。
【0070】
例22:硝酸銀変性されたシリカゲル
硝酸銀(10.0g)を、温メタノール(500ml)に溶解し、そしてシリカゲル(Merckaにより製造されたシリカゲル60、15〜40μm、100g)を添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、回転蒸発器上で蒸発乾燥した。残渣を、70℃で真空下(30mバール)下で、8時間、乾燥した。
【0071】
比較例23:銀変性されたシアノ−シリカゲルによる粗タクロリマスの精製
クロマトグラフィーカラム(直径25mm、長さ250mm)を、例26において調製された収着剤(62.6g)により充填し、そしてカラムを、移動相(20:80の比でのアセトン:n−ヘキサンの混合物;1000ml)により洗浄した。次に、粗タクロリマス(500mg)(79.7%のタクロリマス、7.9%のアスコマイシン及び3.8%のジヒドロタクロリマス)を、移動相(25ml)に溶解し、カラム上に負荷し、そしてカラムを前記移動相により溶離した。それぞれ100mlの画分を採取し、そしてHPLCにより分析した。再構成されたクロマトグラムを図5上に示す。
【0072】
例24:硝酸銀変性された酸化ジルコニウム
硝酸銀(20.0g)を、温メタノール(1000ml)に溶解し、そして酸化ジルコニウム(Merckaにより製造された、200g)を添加し、懸濁液を得た。その懸濁液を、回転蒸発器上で蒸発乾燥した。残渣を、70℃で真空下(30mバール)下で、5時間、乾燥した。
【0073】
例25:銀変性された酸化ジルコニウムによる粗タクロリマスの精製
クロマトグラフィーカラム(直径25mm、長さ250mm)を、例20において調製された収着剤(345g)により充填し、そしてカラムを、移動相(10:90の比でのアセトン:n−ヘキサンの混合物;1000ml)により洗浄した。次に、粗タクロリマス(210mg)(79.7%のタクロリマス、7.9%のアスコマイシン及び3.8%のジヒドロタクロリマス)を、移動相(25ml)に溶解し、カラム上に負荷し、そしてカラムを前記移動相により溶離した。それぞれ100mlの画分を採取し、そしてHPLCにより分析した。再構成されたクロマトグラムを図4上に示す。
【0074】
例26:銀イオンからのタクロリマスの分離
選択された主画分(例6及び8に従って集められた)を、減圧下で蒸発乾燥した。残渣を、酢酸エチル(残渣の体積の20倍)に溶解した。NH4Cl(残渣の質量の1.3倍)を水(残渣の体積の5倍)に溶解し、そして塩溶液を酢酸エチル溶液に添加する。30分の攪拌の後、沈殿された塩化銀を濾過し、そして相を分離した。マクロライドを、酢酸エチル相から結晶化した。
【0075】
例27:銀イオンからのタクロリマスの分離
カラムからの溶離物が、約80mg/lの銀を含むことを示された。溶離物を、塩化ナトリウムにより変性されたシリカゲルにより充填されたカラムに通した。銀はカラム上に完全に保持された。銀含有率は10ppm以下であった。変性されたシリカゲルを、塩化ナトリウム水溶液のシリカゲルへの添加、続く均質化により分離した。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、例2に従ってのクロマトグラフィー画分(mg/l)のHPLC分析を示す。
【図2】図2は、例5に従ってのクロマトグラフィー画分(mg/l)のHPLC分析を示す。
【図3】図3は、例21に従ってのクロマトグラフィー画分(mg/l)のHPLC分析を示す。
【図4】図4は、例25に従ってのクロマトグラフィー画分(mg/l)のHPLC分析を示す。
【図5】図5は、比較例23に従ってのクロマトグラフィー画分(mg/l)のHPLC分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)タクロリマス(tacrolimus)及び不純物から成る混合物を、銀イオンにより前処理された収着剤層に負荷し、ここで前記収着剤が、銀変性された酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、スチレンジビニルベンゼンコポリマー、吸着樹脂、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、逆相シリカゲル、及びシアノシリカ−ゲルから成る群から選択され;そして
b)前記混合物に存在する不純物からタクロリマスを分離するために、前記収着剤樹脂の層から前記混合物を溶離する;
ことを含んで成る、不純物からタクロリマスを分離するための方法。
【請求項2】
前記混合物が無水溶離剤により溶離される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記不純物が、アスコマイシン(Ascomycin)及びジヒドロタクロリマス(Dihydrotacrolimus)である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記無水溶離剤が、極性有機溶媒、及び極性有機溶媒及び非極性有機溶媒の混合物から成る群から選択される請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記極性有機溶媒が、C3-9直鎖又は枝分れ鎖のケトン、C3-7直鎖又は枝分れ鎖のエステル、C1-7直鎖又は枝分れ鎖のアルコール、C2-8直鎖、枝分れ鎖又は環状エーテル、C2-5ニトリル及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記非極性有機溶媒が、C5-8直鎖、枝分れ鎖又は環状炭化水素、C6-10芳香族炭化水素及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記無水溶離剤が約2体積%以下の水を有する請求項2〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記無水溶離剤が、アセトン、エチル−メチルケトン、イソブチル−メチルケトン、酢酸エチル、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルプロピオネート、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン、及び直鎖、枝分れ鎖、又は環状へキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタンから成る群から選択される請求項2〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記無水溶離剤がアセトンを含んで成る請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記無水溶離剤が、ヘキサン又は酢酸エチルを含んで成る請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記無水溶離剤が、アセトン及びヘキサンを含んで成り、ここで前記アセトン:ヘキサンの比が約1:1、約2:3、約1:4又は約1:9である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記溶離剤が、アセトン及び酢酸エチルの混合物であり、そして前記アセトン及び酢酸エチルが、酢酸エチルに比較して、約50〜80体積%のアセトンの割合で存在する請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記無水溶離剤がアセトンである請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記タクロリマスが、溶媒の混合物による溶離の開始、続く約100%の単一の溶媒による溶離を伴うグラジエント溶離により溶離される請求項2〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記グラジエント溶離が、アセトン及びヘキサンを含んで成る混合物による溶離の開始、続くアセトンによる溶離を伴うことを含んで成る請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記アセトン:ヘキサンの比が、約3:2(v/v)である請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、約10cm又はそれ以下の長さのカラムによるグラジエント溶離により溶離される請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、少なくとも約1mの長さのカラムによるグラジエント溶離を伴わないで溶離される請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記工程が、銀変性された収着剤によりカラムを充填し、溶離剤により前記銀変性された収着剤を洗浄し、溶離剤中、タクロリマスの溶液を、前記カラム上に負荷し、そしてカラムからタクロリマス、アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスを溶離することを含んで成る請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記アスコマイシン及びジヒドロタクロリマスの少なくとも1つが、タクロリマスの前、カラムから溶離される請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
分離の前、前記タクロリマスは、約10 HPLC%面積までのアスコマイシン、及び/又は約6 HPLC%面積までのジヒドロタクロリマスを含んで成る請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記収着剤が酸化アルミニウムである請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記酸化アルミニウム収着剤が、酸性、中性及び塩基性酸化アルミニウムから成る群から選択された活性形である請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記酸化アルミニウム収着剤が、中性活性酸化アルミニウム又は酸性活性酸化アルミニウムである請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記収着剤が、非イオン性スチレンジビニルベンゼンコポリマー及びアニオン性スチレンジビニルベンゼンコポリマーから成る群から選択されたスチレンジビニルベンゼンコポリマーである請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記収着剤が、約35〜約75μmの粒度を有する吸着樹脂収着剤である請求項1〜25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記収着剤が、少なくとも約50m2/gの比表面積を有する請求項1〜26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
収着剤、銀カチオン源、及び1又は複数のC1-4アルコール、水及び水混和性溶媒の混合物から成る群から選択された溶媒を混合し、そして乾燥することを含んで成る工程において前記銀変性された収着剤を調製することをさらに含んで成る請求項1〜27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
前記収着剤が、シアノシリカゲルである請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
前記シアノシリカゲルが、シアノアルキル基に、その表面上で共有結合されるシリカゲルを含んで成る請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒がC1-4アルコールであり、前記銀カチオン源及びC1-4アルコールが組合され、溶液が形成され、そして次に、前記収着剤が添加され、懸濁液が形成される請求項28記載の方法。
【請求項32】
前記C1-4アルコールがメタノールである請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒がC1-4アルコールであり、そして前記銀イオン源及びC1-4アルコールがほぼ溶媒還流温度に加熱され、溶液が得られる請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記溶媒が水、又は水及び水混和性溶媒の混合物であり、前記収着剤が逆相シリカゲルであり、前記銀イオン源が周囲温度で溶解され、そして乾燥の前、アンモニア溶液が溶媒及び銀カチオン源の溶液に添加される請求項28記載の方法。
【請求項35】
前記銀カチオン源が、銀塩又は銀錯体の溶液である請求項28記載の方法。
【請求項36】
前記銀カチオン源が、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、銀シアノ錯体及びチオ硫酸銀錯体から成る群から選択される請求項28記載の方法。
【請求項37】
前記銀カチオン源が、硝酸銀及び酢酸銀の少なくとも1つを含んで成る請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記銀カチオン源が銀シアノ錯体を含んで成る請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記銀変性された収着剤が、乾燥の後、約0.1〜約15%w/wの銀塩を含んで成る請求項28記載の方法。
【請求項40】
前記分離されたタクロリマスが、少なくとも約93 HPLC%面積のタクロリマスを含んで成る請求項1〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記分離されたタクロリマスが、約0.2 HPLC%面積のアスコマイシンを含んで成る請求項1〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記分離されたタクロリマスが、約0.04 HPLC%面積のジヒドロタクロリマスを含んで成る請求項1〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記タクロリマスにより溶離されるいずれの銀イオンをも、前記タクロリマスから分離することをさらに含んで成る請求項1〜39のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記溶離剤を蒸発し、残渣を得、前記残渣を有機溶媒に溶解し、得られる溶液と、銀イオンを沈殿する試薬を含んで成る溶液とを混合し、そして沈殿された銀塩を濾過することを含んで成る請求項1〜43のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記有機溶媒が、酢酸エチル、トルエン、標準又はイソプロピルアセテートエチル、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、プロピオネート、ホルメート、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、酢酸エチル及びアセトンの混合物、トルエン及びアセトンの混合物、及び水とそれらの混合物から成る選択される請求項43記載の方法。
【請求項46】
前記有機溶媒が酢酸エチルである請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記試薬が、アセテート、スルフェート、ニトリット、ブロメート、サリチレート、ヨーデート、クロメート、カーボネート、シトレート、ホスフェート、クロリド、ステアレート、スルフィド、ブロミド、ヨージド、シアニド、ベンゾエート、オキサレート、スルフィット、及びチオシアネートから成る群から選択されたカウンターイオンを含んで成る請求項44記載の方法。
【請求項48】
前記沈殿化試薬がNH4Clである請求項47項記載の方法。
【請求項49】
1モル当量の銀当たり1〜約5モル当量の前記沈殿化試薬を添加することをさらに含んで成る請求項44記載の方法。
【請求項50】
銀イオンを沈殿する試薬を含んで成る溶液が、水溶液である請求項44記載の方法。
【請求項51】
シリカゲル及び沈殿化剤の混合物により充填されたカラムに前記溶離液を通すことを含んで成る請求項44記載の方法。
【請求項52】
前記沈殿化試薬が、塩化ナトリウム又は塩化アンモニウムである請求項44記載の方法。
【請求項53】
タクロリマスを有する溶出液の少なくとも1つの画分を集めることをさらに含んで成る請求項1〜52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
前記分離されたタクロリマスを結晶化することをさらに含んで成る請求項53記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−262065(P2007−262065A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−66494(P2007−66494)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(507084084)アイバックス ファーマシューティカルズ スポレツノスト エス ルチェニム オメゼニム (3)
【出願人】(501309071)テバ ジョジセルジャール ザ−トケルエン ムケド レ−スベニュタ−ルシャシャ−グ (30)
【Fターム(参考)】