説明

タグの作成方法、タグ作成装置、タグ及び物品管理システム

【課題】 物品に添付するタグの真偽判定を容易にする。
【解決手段】 タグ30は、用紙32上の所定の領域を登録領域52として設定されており、タグには、この登録領域から読み出された用紙の表面に沿ったランダム性を有する特徴の分布に応じた画像データに基づいた符号化画像が形成され、また、タグに設定されているシリアルナンバーを含むタグ情報に基づいたコード画像48が形成されている。また、タグは、登録領域を含む認証領域54が非画像形成領域となっており、認証領域と符号化画像を読み取ることにより、真偽判定を行うための照合が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の物品に添付されるタグに係り、詳細には、タグの作成方法、タグの作成装置、タグ及びタグが添付される物品管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタの性能向上、パーソナルコンピュータなどの処理性能の向上に伴って、紙幣や有価証券のみならず、旅券、各種の権利証書、各種の照明書等の各種の文書が複製される可能性が高まっており、各種の文書の真偽を高精度で判定可能とする技術の確立が望まれている。
【0003】
また、従来から、所謂ブランド品などを含む工業製品においては、模造品が製造されて流通されることがあり、このような模造品においては、複写機やプリンタ等を用いて、タグの複製が行われる。さらに、農産物においては、生産地などの虚偽表示を目的としてタグが偽造される事例も増加している。
【0004】
ここから、商品のデータを表すホログラムをコンピュータにより作成して、この商品を識別可能とするマークの周辺に、作成したホログラムを埋め込むことにより商品の真贋を判定可能とすることにより、該当商品の偽造や模造を防止する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、商品のブランドマーク本体に、電磁誘導作用によって記憶情報の読み取りが可能なメモリを備えた識別素子を設け、該メモリにマーク本体が有する独自情報を記憶することにより、商品照合を可能とすることにより偽造防止を図る商品照合システムの提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
一方、各種の商品は、製造時にその商品に関する情報を記録しているラベルやタグが添付されており、ここから、例えば、ラベルを形成する粘着紙の糊面に機能性インキにて印刷処理を施すことにより、所定の器具を用いたときや環境下で、ラベルの真贋の確認が可能となるようにした提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
また、改ざん不能な仕入れ帳票及び出荷帳票として、情報の消去及び書込みが可能なリライタブルラベルを用い、リライタブルラベルにシリアル番号を消去できないで形成すると共に、仕入れ帳票には仕入れ元の商品情報とシリアル番号を改ざん不能に書込み、出荷帳票には仕入れ帳票の内容の一部と新たな商品情報及びシリアル番号を改ざん不能に書き込むことにより、虚偽表示を防止する提案がなされている(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
しかし、これらの提案では、ホログラムの作成や特殊印刷を行う必要があり、また、ICタグやリライタブルラベルなどの比較的コストのかかる部品を必要としてしまう。また、コストや特殊な作業が必要であるにも拘わらず、必ずしも的確な模造防止や虚偽表示等が可能といえるものではない。
【0009】
すなわち、商品に添付するラベルやタグなどは、紙材を用いることにより最も低コストとなるが、これに比べて、何れの提案においても、コストアップが生じてしまう。
【0010】
紙を用いるときに、紙を形成する繊維質材料の絡み具合のランダム性に起因して紙の透明度がランダムに変化していることを利用し、タグの所定エリアを多数個の四角形領域に区切り、このうちランダムに選択した6個の四角形領域の透明度を検出し、検出した透明度を、ここの四角形領域のアドレスと共に情報として記憶しておき、真偽判定時には、記録情報によって特定される個々の四角形の領域を検出し、検出結果を記録情報が表す透明度と比較することにより真偽判定を行う提案がなされている(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献1】特開2001−100623号公報
【特許文献2】特開2002−117165号公報
【特許文献3】特開2002−103782号公報
【特許文献4】特開2004−94510号公報
【特許文献5】特公平6−16312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5の提案では、別に記録している情報を用いて真偽判定を行わなければならず、任意のタイミングで簡単な作業で真偽判定を行い得るものではないという問題がある。すなわち、真偽判定は、特定のデータが存在するか該データを読み出し可能な場所でないと真偽判定を行うことができないという問題がある。
【0012】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、各種の商品等の物品に添付するタグを用いて任意のタイミングで該当物品の真偽判定を可能とするタグの作成方法、タグ作成装置、タグ及びタグを用いた部品管理システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、工業製品、農業製品、文書、証書などの各種の物品に対して、物品ごと、物品を単品ずつ包装した包装体、複数の物品をまとめて梱包した梱包体ごと(以下、総称して物品とする)に添付するタグを用い、添付されているタグの真偽判定を行うことにより、タグによって示される本来の物品であるか否かの判定を行う。すなわち、タグが本来の情報を含むものであるか否かから物品、包装品、梱包品に合わせて作成したものであるか否かから、タグが添付されている物品が所謂真物であるか所謂偽物、模造品などであるかを判定可能とする。
【0014】
このとき、本願発明では、タグを形成する紙などの個体が有しているランダム性を持つ特徴を個体から読み取って個体上に個体情報として記録する。タグの真偽判定を行うときには、タグに記録している個体情報が、タグを形成している個体に含まれているかから判断することにより、予め個体ごとに記録している固体情報を用いることなく、タグの的確な真偽判定が可能となるようにしている。
【0015】
このような本発明の目的を達成し得るタグの作成方法は、個体表面に沿って分布しているランダム性を有する特徴を該個体表面の第1の領域に渡って読み取り、読み取った前記第1の領域の特徴を示す画像情報を前記個体特有の情報である個体情報に変換し、前記第1の領域を含む所定範囲の第2の領域を非画像形成領域として、前記個体情報を示す個体情報画像を個体表面に形成し、該個体から物品に添付するタグを作成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のタグは、表面に沿ってランダム性を有する特徴が分布している個体によって形成されて物品に添付されるタグであって、前記個体表面に設定した第1の領域を含む第2の領域が非画像部分として設けられると共に、前記第1の領域から読み取られた第1の領域を示す特徴に基づいて前記個体を特定可能とする個体情報画像が形成されていることを形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、タグを形成する紙などの個体表面に設定した第1の領域から読み出した特徴を個体情報として、この個体情報に基づいた個体情報画像を個体に形成してタグを作成する。
【0018】
これにより、個体情報画像を読み取って得た個体情報と、第2の領域を照合して、第2の領域に、個体情報に示される第1の領域の有無を判定することによりタグの真偽判定が可能となる。
【0019】
したがって、個体とは別に記憶させておいた個体情報を用いることがないので、任意のタイミングで真偽判定を行うことができる。
【0020】
このような本発明のタグの作成方法においては、前記個体情報として二次元化コードを用い、前記個体表面に形成される個体情報画像が二次元化コード画像を用いることができる。
【0021】
二次元化コードは、多量の情報を含むことができ、機械等を用いることにより自動的に読み取りが可能となるので、タグの真偽判定が容易となる。
【0022】
また、本発明のタグの作成方法においては、前記第1の領域から読み取った前記画像情報を暗号化して前記個体情報に変換することが好ましい。
【0023】
これにより、適正な真偽判定を可能とする個体情報画像の形成を制限できるので、タグの複製や偽造を防止することができる。
【0024】
また、本発明のタグの作成方法においては、前記タグを特定可能とするタグ情報に基づいたタグ情報画像を前記個体に形成することを特徴し、また、前記タグ情報に前記タグが添付される前記物品の情報を含ませることができる。
【0025】
これにより、タグの特定が可能となるので、例えば、タグを形成する個体の個体情報を、別に記憶(登録)させておけば、より的確な真偽判定が可能となる。
【0026】
このような本発明に適用されるタグ作成装置は、物品に添付するタグの作成に用いる個体表面に沿って分布したランダム性を有する特徴を該個体表面の第1の領域に渡って読み取る第1の領域読取手段と、前記第1の領域読取手段によって読み取った前記第1の領域を示す画像情報を前記個体特有の情報である個体情報として変換する読取情報変換手段と、前記個体表面の前記第1の領域を含む所定範囲に設定した第2の領域を非画像領域として、前記読取情報変換手段によって変換された前記個体情報を示す個体情報画像を該個体表面に形成する画像形成手段と、を含むものであれば良い。
【0027】
また、タグ作成装置としては、前記個体情報を二次元化コードに変換するコード変換手段を含み、前記個体情報画像として二次元化コード画像を形成してもよく、また、前記個体情報を暗号化する暗号化手段を含み、前記画像形成手段が、暗号化された個体情報に基づいた固体情報画像を形成するものであっても良い。
【0028】
さらに、タグ作成装置は、前記タグを特定可能とするタグ情報が入力される入力手段を含み、前記画像形成手段が、前記入力手段から入力されるタグ情報に基づいたタグ情報画像を前記個体に形成するものであってもよく、このときには、前記タグ情報として前記タグが添付される前記物品の情報を含むことができる。
【0029】
このような本発明が適用されるタグを用いた物品管理システムは、ランダム性を有する特徴が分布している個体表面に設定した第1の領域を含む第2の領域が非画像部分として設けられると共に、前記第1の領域から読み取られた第1の領域を示す特徴に基づいて前記個体を特定可能とする個体情報画像が形成されたタグが添付される物品を管理する物品管理システムであって、前記第2の領域の前記個体表面の特徴及び、前記個体情報画像を読み取る読取手段と、前記読取手段によって読み取った前記第2の領域の特徴と、前記個体情報画像に基づいた個体情報を対比可能な情報に変換する情報変換手段と、前記情報変換手段によって変換された情報から前記個体情報によって特定される前記第1の領域が前記第2の領域に含まれるか否かを照合する照合手段と、含み、前記照合手段の照合結果に基づいて前記物品の真偽を判定可能とする。
【0030】
また、この物品管理システムにおいては、前記個体情報を暗号化して前記個体情報画像が前記個体に形成されているときに、前記変換手段が前記暗号化に対する復号化手段を含むことができる。
【0031】
さらに、物品管理システムは、前記個体に前記タグを特定可能とするタグ情報に基づいたタグ情報画像が形成され、前記タグ情報と共に前記個体情報を登録して保持する登録保持手段を含むときに、前記読取手段が前記タグ情報画像を読み取ると共に、前記照合手段が前記読取手段によって読み取った前記タグ情報画像に示されるタグ情報に基づいて、前記タグが前記保持手段に登録されているか否かから前記物品の真偽を判定するものであればよく、前記照合手段が、前記登録保持手段に登録されている前記個体情報と、前記第2の領域の特徴を照合することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明では、工業製品、農業製品、文書、証書などの各種の物品に対して、物品ごと、物品を単品ずつ包装した包装体、複数の物品をまとめて梱包した梱包体ごとに添付するタグを用い、添付されているタグが、本来の書式に沿って作成されているものであるか否かから、タグが添付されている物品が所謂真物であるか所謂偽物、模造品などであるかを判定可能とする。
【0033】
このときの判定には、タグにタグごとに異なる本来の情報が記録されているかを用いる。このときのタグごとに異なる本来の情報として、タグを形成している紙などの個体の表面に沿ったランダム性を有する固有の特徴を用いることにより、高精度の真偽判定が可能となるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1には、本実施の形態に適用したタグ管理システム10の概略構成を示している。タグ管理システム10は、タグ作成装置12、タグ認証装置14を含んで構成されている。また、タグ管理システム10には、データベース(データサーバ)16を含むことができ、このときには、タグ作成装置12、タグ認証装置16及びデータサーバ16が、インターネット等の公衆回線網ないし専用回線網を用いてネットワーク接続されるなどして、タグ作成装置12のデータサーバ16の間及び、タグ認証装置14とデータサーバ16の間でデータ交換が可能となったものであればよい。
【0035】
タグ作成装置10は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータ等を用いた各種の画像処理、データ処理を行うPC18と、原稿などのシート状の媒体に記録された画像を読み取る画像読取手段となるスキャナ20と、印刷処理手段として所定の記録媒体に画像を形成(印刷)するプリンタ22と、が用いられている。また、タグ認証装置14は、少なくとも各種の画像処理、データ処理等を行うPC24と、画像読み取りを行うスキャナ26と、が用いられている。
【0036】
PC18、24は、CPU、ROM、RAM、各種の入出力ポート及び、OSや各種のアプリケーションソフト(プログラム)が記憶されるHDDがバスによって接続され、モニタ(表示デバイス)と共に、キーボード、マウスなどの入力デバイスが設けられ、これにより各種の画像処理、データ処理が可能となる一般的構成を適用することができる。
【0037】
また、タグ作成装置12には、PC18にスキャナ20及びプリンタ22が直接又はネットワークを介して接続され、タグ認証装置14には、PC24にスキャナ26が直接又はネットワークを介して接続される。
【0038】
これにより、PC18では、スキャナ20によって読み込んだ画像データに対する各種の処理と共に、処理結果に基づいた印刷処理が可能となっており、PC24では、スキャナ26によって読み込んだ画像データに対する各種の処理が可能となっている。
【0039】
図2には、PC18、スキャナ20及びプリンタ22によって形成されるタグ作成装置12の概略構成と、PC24及びスキャナ26によって形成されるタグ認証装置14の概略構成を示している。また、図3には、タグ作成装置12によって作成されるタグ30の一例を示し、図4(A)には、タグ30の作成に用いる用紙32を示している。
【0040】
図2に示すように、タグ作成装置12は、登録画像入力部34、画像処理部36及び印刷処理部38が形成されている。登録画像入力部34では、スキャナ20を用いて用紙32(図4(A)参照)からタグ30を作成するときの登録情報を読み取って画像データとして出力する。
【0041】
このとき、登録画像入力部34では、用紙32の透過光又は反射光を読み込むことにより、用紙32の表面に沿って分布するランダム性を有する特徴を画像データとして出力する。また、スキャナ20としては、例えば400dpiの解像度が得られるものを用いており、予め設定されている領域(例えば、32×32ビット(約2mm×2mm))を8mmビットグレースケースの階調で用紙32の表面を読み取る。図4(B)には、このときの画像データの一例を可視化して示している。
【0042】
画像処理部36には、画像変換部40及び画像符号化部42が形成されており登録画像入力部34から入力される画像データに対して所定の処理を施す。これと共に、画像処理部36では、画像変換を行うと共に、符号化処理を行うことにより、画像データに符号化画像(符号化画像の画像データ)を生成する。
【0043】
このとき、画像符号化部42では、PKI(Public Key Infrastructure)による電子署名の認証方法を適用して、暗号鍵を用いた暗号化を行う。また、画像符号化部42では、暗号化したデータをQRコードなどの二次元化コードに変換する。すなわち、二次元化コードとなる符号化画像を形成可能とする画像データを生成する。
【0044】
また、タグ作成装置12には、キーボードなどの入力デバイスを用いてタグ情報を入力するタグ情報入力部44及び、入力されたタグ情報を所定のコードに変換してタグ情報のコード画像(画像データ)を生成するコード変換部46が設けられている。
【0045】
印刷処理部38では、登録画像を読み取った用紙32に、画像処理部36で生成した符号化画像及び、コード変換部46で生成したコード画像を含めて、予め設定されたフォーマットで、用紙32に対する印刷処理を行うことにより、タグ30(図3参照)を作成する。
【0046】
このとき、タグ作成装置12では、スキャナ20によって画像データを読み込んだ領域を含む所定範囲の領域を、印刷領域から外している。
【0047】
すなわち、図3に示すように、タグ作成装置12では、作成するタグ30に対して、紙面上方の右側に、タグ情報を示すコード画像48が印刷され、紙面上方の左側に、登録画像を示す符号化画像50が印刷されるように印刷フォーマットが設定されている。
【0048】
また、タグ30には、コード画像48と符号化画像50の間に所定の余白が設けられ、コード画像48から符号化画像50の間の紙面下方側に、タグ30が添付される品名等を印刷可能とする領域が設定されている。
【0049】
一方、タグ作成装置12では、コード画像48と符号化画像50の間の余白内の所定領域を登録領域52として、この登録領域52内から読み取った画像データを登録画像の画像データとしている。
【0050】
後述するタグ認証装置14では、この登録領域52を含む所定範囲の領域を認証領域54として読み取るようにしている。なお、認証領域54は、登録領域52を32×32ドットとしたときに、64×64ドット程度の領域とすることが好ましい。また、タグ作成装置12では、枠線56などを用いて、認証領域54を明示することにより、認証領域54内が汚されてしまうのを防止するようにしても良い。
【0051】
なお、枠線56を設けることにより、認証領域54や登録領域52が明確となってしまうので、枠線56を記録せずに、タグ30の偽造を抑制するようにしても良い。
【0052】
このようなタグ30にコード画像48として記録するタグ情報としては、タグ30が添付される商品を特定する商品名、型番、個数、シリアルナンバー等を用いることができ、複数の商品を梱包した梱包体に添付するときには、梱包されている商品の個数を含むことが好ましい。
【0053】
また、タグ情報としては、タグ30を特定可能とする情報を含んでいる。このタグ30を特定する情報としては、タグ30ごとに設定するシリアルナンバーを用いることができる。すなわち、タグ情報には、タグ30ごとに設定されているシリアルナンバーが含まれている。
【0054】
さらに、タグ情報としては、当該商品又はタグ30の生成年月日を含ませることができる。また、タグ30に有効期限を設定している時には、その有効期限をタグ情報として含ませることができ好ましい。
【0055】
すなわち、図4(A)に示すように、タグ作成装置12では、タグ30の印刷フォーマットに基づいて、非印刷領域となる登録領域52内の用紙32の表面状態に応じた透過光又は反射光を読み取り、図3に示すように、この登録領域52を含む認証領域54内に、印刷画像が重ならないようにしている。
【0056】
タグ作成装置12では、これらの情報をタグ30に記録するときに、二次元化コードを用いており、これにより、多量の情報を含ませることができると共に、認証時等における読取誤差が生じるのを防止するようにしている。なお、コード画像48及び符号化画像50は、QRコードに限らず、任意の二次元化コードを適用することができる。このときに、データの圧縮処理を行ってコード化しても良い。
【0057】
図2に示すように、このようなタグ作成装置12には、データ登録部58を設けることができる。このデータ登録部50では、作成したタグ30ごとに、シリアルナンバーと登録画像を関連付けて、データサーバ16等にデータ登録を行う。これにより、データサーバ16からタグ30の登録画像をタグ認証装置14によって読み出すことが可能となるようにしている。
【0058】
一方、タグ認証装置14には、照合画像読取部60、画像処理部62、画像変換部64、コード変換部66及び復号化部68が設けられている。
【0059】
照合画像読取部60では、スキャナ26を用いて、タグ30からコード画像48及び符号化画像50と共に、登録領域52を含む照合領域54を読み取って画像データを出力する。このとき、400dpiの解像度及び8ビットグレースケールの解像度で読込みを行う。すなわち、タグ作成装置12でタグ30を作成するときのスキャナ20に合わせた読み取りを行う。
【0060】
画像処理部62では、読み込んだ画像データからコード画像48の画像データ、符号化画像50の画像データ及び、認証領域54の画像データを分離する。認証領域54の画像データは、画像変換部64でデータ変換される。
【0061】
また、符号化画像50の画像データは、コード変換部66で二次元コードからコード変換され、復号化部68では、公開鍵を用いて復号化処理を行う。これにより、登録画像(登録領域52)の画像データが得られるようにしている。
【0062】
なお、コード画像に対する画像データは、画像変換が行われることにより、タグ情報に応じたデータを抽出する。また、画像変換部64でデータ変換された照合領域54の画像データ及び、復号化部68で復号化された登録画像(登録領域52)の画像データは、RAMやHDD等のメモリに格納される。
【0063】
また、タグ照合装置14には、照合部70及び判定部72が設けられている。照合部70は、照合領域54の画像データと、符号化画像50としてタグ30に記録されている登録領域52の画像データの照合処理を行う。判定部72では、この照合結果に基づいて、タグ30が適正なものであるか否か、すなわち、タグ30の真偽判定を行う。
【0064】
なお、照合部70には、符号化画像50として記録されていた画像データと、照合領域54の画像データの照合(タグ照合)に加えて、符号化画像50として記録されていた画像データと、データサーバ16に登録されている登録画像の画像データの照合(登録照合)を行うことができる。
【0065】
次に、本実施の形態の作用として、タグ管理システム10でのタグ作成装置12及びタグ認証装置14での処理を説明する。
【0066】
ここで、先ず、用紙32上の登録領域52の画像データと、照合領域54の画像データを用いたタグ30の認証の有効性を説明する。
【0067】
例えば、タグ30を形成する用紙32などの紙は、繊維質材料の絡み具合がランダムであり、これに起因して紙の透明度はランダムに変化している。また、繊維質材料の絡み具合は、紙の表面の凹凸にも現れることから、紙の表面の凹凸もランダムに変化している。
【0068】
ここから、紙の透明度や表面の凹凸などの個体表面に沿ったランダム性を有する特徴を個体固有の特徴として、個体の真偽判定に適用することが可能であるといえる。このような個体固有の特徴は、スキャナ等の各種の画像読取手段を用いて、紙の透過光又は反射光として読み取ることが可能である。
【0069】
一方、前記した紙などの個体特有の特徴は、読取領域の位置や向きの相違によって誤判定を生じさせ易い。ここから、認証する領域より、比較対象とする領域の面積を広くして、小面積の領域(認証する領域)を大面積の領域(比較対象とする領域)内で移動させながら相関値を繰返し演算し、多数の相関値を求めることで、求めた相関値及び、相関値の分布から得られる特徴量を用いて真偽判定を行う。
【0070】
偽判定には、真物を偽物と判定する場合と、偽物を真物と判定する場合があり、真物を偽物と判定する確率をFRR(False Rejection Rate)とし、偽物を真物と判定する確率をFAR(False Acceptance Rate)として、先ず、真偽判定の有効性を検証する試験結果を示す。
【0071】
該試験は、先ず、フラットベット型スキャナを用いて、400dpiの解像度、8ビットグレースケールの階調で、サンプルとして用いる紙の未印刷領域を32×32ドット(約2mm×2mm)の基準領域(本実施の形態の登録領域52に相当)を読み取り、スキャナから出力された画像データを基準データとして記憶する。
【0072】
図5には、このときの基準データを基準画像として視覚化して示す。なお、この基準画像に対しては、目視での確認が容易(明確)になるようにコントラスト補正を施している。
【0073】
紙を形成する繊維質材料の絡み具合を、紙の製造時に制御することは不可能であることは周知であり、ここから紙を形成する繊維質材料の絡み具合はランダムとみなすことができる。この繊維質材料の絡み具合は透過光顕微鏡などを用いることにより観察可能であるが、解像度は400dpiのスキャナによって読み取った画像データ(図5(A)に示す基準画像)では、繊維質材料の絡み具合かでは確認できない。
【0074】
しかし、基準画像には、繊維質材料の絡み具合のランダム性に起因する紙の透明度のランダムな変化を反映したランダムな明暗パターンが生じている。なお、明暗パターンには、紙を漉くときの諸条件により生じる紙表面の凹凸が影響している可能性があるが、何れにおいても、ランダムなパターンであることは明白である。
【0075】
したがって、基準画像に対応する基準データが、紙上の基準領域内におけるその紙に固有の特徴、すなわち、基準領域内の透明度のランダムな変化を表す情報となっていることは確認できる。
【0076】
次に、比較対象として、サンプルとして用いた紙のうち、前記した基準領域を含む64×64ドット(約4mm×4mm)の照合領域(本実施の形態の認証領域54に相当)をスキャナによって読み取り、読み取った画像データを第1の照合データとして記憶する。
【0077】
この第1の照合データは、照合領域内における紙の透明度のランダムな変化を表しており、図5(B)には、第1の照合データを照合画像として、視覚化して示している。
【0078】
一方、真物が偽物と誤判定される確率(FRR)が高いケースとして、サンプルとして用いた紙を、第1の照合データ取得時に対して、位置を若干ずらすと共に向きを若干回転させてスキャナの原稿台に載置した状態で、64×64ドットの照合領域の読み取りを行い、スキャナから出力された画像データを第2の照合データとして記憶する。すなわち、第1の照合データの読取領域に対して位置及び向きが若干異なるが、基準領域を含む領域から読み取られた画像データを第2の照合データとして記憶する。
【0079】
また、別の比較対象として、サンプルとして用いた紙と異なる紙から、64×64ドットの照合領域を読み取り、スキャナから出力される画像データを第3の照合データとして記憶した。
【0080】
このようにして、基準データ及び第1から第3の照合データを取得すると、第1から第3の照合データが表す第1から第3の照合画像のそれぞれと基準データが表す基準画像との相関値を演算した。
【0081】
具体的には、例として図6に示すように、演算対象の照合画像から基準画像と同一サイズの部分領域(図6では、実線で囲われた相関演算範囲と表記)を抽出し、部分領域(部分画像)と基準画像との相関値を正規化相関法により演算する((1)式参照)。これを照合画像上で部分領域の位置をX方向及びY方向に1ドット(1画素)ずつずらしながら繰り返した。
【0082】
【数1】

【0083】
ただし、Fは基準画像(基準データの集合)、fiは基準画像の個々の画素の明度値、Nは基準画像(及び照合画像の部分領域)の総画素数、Gは照合画像の部分領域(の集合)、giは照合画像の部分流域の個々の画素の明度値、fAVEは基準画像の個々の画素の明度値の平均値、gAVEは照合画像の部分領域の個々の画素の明度値の平均値である。
【0084】
ここで、第1から第3の照合画像を演算対象の照合画像として上記演算を行うことで、基準画像のドット数をm×n、照合画像のドット数をM×Nとすると、一つの照合画像に対して、(M−m+1)×(N−n+1)個の相関値が得られる。
【0085】
続いて、第1から第3の照合画像のそれぞれに対する相関値の分布具合を表す特徴として、相関値の最大値のノーマライズド・スコアを、(2)式にしたがって演算した。
【0086】
ノーマライズド・スコア=
(相関値の最大値−相関値の平均値)÷相関値の標準偏差 …(2)
図7(A)及び図7(C)には、相関値の最大値及び、相関値の最大値のノーマライズド・スコアの演算結果を、照合画像上での部分領域の位置と、相関値の関係を視覚的に示すチャートと共に示す。
【0087】
図7(A)に示すように、同一の紙上の基準領域を含む照合領域を、基準領域に対して、位置及び向きのズレなく読み取った場合(第1の照合画像)、相関値の最大値は、非常に高い値を示す。また、相関値の分布も、相関値が最大値になっているピーク部分以外の部分では、最大値に比して相関値が非常に低い値を示しており、これに伴い、相関値の最大値のノーマライズド・スコアも非常に高い値を示している。
【0088】
これに対して、図7(C)に示すように、基準画像を読み取った紙と異なる紙(基準画像を含まない紙)の場合(第3の照合画像)、相関値の最大値は非常に低い値となっており、相関値の分布についてもピーク部分を含めて全体的に相関値が低い値を示しており、相関値の最大値のノーマライズド・スコアも非常に低い値となっている。
【0089】
一方、真物が偽物と誤判定される確率が高いケースとして、基準領域を含んで位置及び向きを若干変えた照合領域を読み取った場合(第2の照合画像)、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアは、図7(B)に示すように、何れも同一の紙を、位置及び向きのズレなく読み取った場合と、異なった紙を読み取った場合との中間値になる。
【0090】
このため、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアの閾値として、図7(B)に示す値と図7(C)に示す値の中間的な値をそれぞれ採用し、例えば、相関値の最大値の閾値≒0.3、相関値の最大位置のノーマライズド・スコアの閾値≒5.0とすることにより、相関値の最大値を閾値と比較すると共に、相関値の最大値のノーマライズド・スコアの閾値と比較することで真偽判定を行うようにすれば、照合領域読取時の紙の位置及び向きが若干ずれているなどのように真物を偽物と誤判定する確率の高いときに、相関値の最大値のみを用いて判定を行う場合に比べて、真偽判定の判定精度が向上する可能性があることを理解できる。
【0091】
もう一つの試験として、前記した試験と同一のスキャナを用いて、同一の解像度、階調でA4サイズの白紙の紙の任意の32×32ドット(約2mm×2mm)の領域を基準領域として読み取って基準データを取得すると共に、第1の比較例として、基準データを取得した紙の略全面を読み取り、読み取りによって得られた画像データから64×64ドットの照合領域のデータを抽出し、さらに、抽出した照合データから部分領域のデータを抽出して基準データとの相関値を(1)式にしたがって演算することを、照合領域内における部分領域の位置を1ドットずつずらしながら繰り返した(これにより、1000万個以上の相関値が得られた)。
【0092】
また、第2の比較例として、基準データを取得した紙の略全面の読み取りを、位置を若干ずらすと共に向きを若干回転させてから再度行い、前述の第1の比較例と同様に、読み取りによって得られた画像データから64×64ドットの照合領域のデータを抽出し、抽出した照合データから更に抽出した部分領域のデータと基準データとの相関値を(1)式にしたがって演算することを、照合領域内における部分領域の位置を1ドットずつずらしながら繰り返した。また、第3の比較例として、基準データを取得した紙と異なる紙を用い、第1及び第2の比較例と同様に読み取って取得した照合データから相関値の演算を行った。
【0093】
そして、偽物が真物と誤判定される確率が高いケースとして、原本として用いた紙の基準領域を故意に過大な光量で読み取ることで、基準領域内の透明度の変化が部分的に白くとんでしまっている画像を表す第2の基準データを取得すると共に、第3の比較例で用いた紙の略全面を読み取り、読み取りによって得られた画像データから64×64ドットの照合領域のデータを抽出し、抽出した照合データから更に抽出した部分領域のデータと第2の基準データとの相関値を(1)式にしたがって正規化相関法により演算することを、照合領域内における部分領域の位置を1ドットずつずらしながら繰り返した。
【0094】
上記の試験によって得られた相関値の分布(横軸に相関値、縦軸に頻度の対数をとったチャート)を図8〜図11に示す。図8は第1の比較例、図9は第2の比較例で得られた相関値の分布であり、何れの分布においても、多数の相関値のうちの大多数は0又は0に近い値を示しているものの、所定値以上(例えば0.3以上)の高い相関値を示しているデータも含まれており、第1の比較例における相関値の最大値が1.00、第2の比較例における相関値の最大値が0.657と、何れも高い値を示しているので、相関値の最大値のみを用いたとしても真物を真物と判定できることが理解できる。
【0095】
また、図10は第3の比較例で得られた相関値の分布であるが、全ての相関値が所定値(例えば0.3)未満であり、相関値の最大値も0.254と低い値を示しているので、上記と同様に相関値の最大値のみを用いたとしても偽物を偽物と判定できる。
【0096】
一方、図11は、偽物が真物と誤判定される確率が高いケースとして想定した実験によって得られた相関値の分布であるが、所定値以上(例えば0.3以上)の高い相関値を示しているデータも含まれており(相関値の最大値は0.348)、相関値の最大値のみを用いて真偽判定を行ったとすると偽物を真物と誤判定する可能性がある。これに対し、図11の分布を図10の分布と比較しても明らかなように、図11に示す相関値の分布は裾が広がっている形状となっており、これに伴って図11の分布における相関値の標準偏差が図10の分布よりも大きくなり、前出の(2)式からも明らかなように、図11の分布における相関値の最大値のノーマライズド・スコアの値が図10の分布よりも小さくなる(図10の分布における相関値の最大値のノーマライズド・スコアが5.32、図11の分布における相関値の最大値のノーマライズド・スコアが4.91)ので、偽物が真物と誤判定されてしまうのを回避できることが理解できる。
【0097】
このように、偽物が真物と誤判定される確率が高いケース(図11のケース)においても、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアを用いて真偽判定を行えば誤判定を回避することができるので、相関値の最大値に加え、相関値の最大値のノーマライズド・スコアのように相関値の分布具合を表す特徴量を加えて真偽判定を行えば、真偽判定の判定精度向上を実現できることが確認される。
【0098】
次に真偽判定の判定制度を確認するための試験結果を説明する。この試験では、A4サイズの500枚入事務用紙(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社C2紙商品コードV436)から連続する10枚を抜き取り、サンプルとして用いた。
【0099】
〔FRR確認のための試験〕
この試験では、A4の各サンプルに対して全面に略等間隔で40個所の読取領域を設定した(図12参照)。
【0100】
なお、サンプルの長手方向を上下方向とした状態で、各サンプルの読取面に向かって左上隅を原点(0,0)としたときの個々の読取領域の中心座標は、400dpiのドット数換算で以下の通りである。
(500,500)、(500,1000)、(500,1500)、(500,2000)、(500,2500)、(500,3000)、(500,3500)、(500,4000)、(1000,500)、(1000,1000)、(1000,1500)、(1000,2000)、(1000,2500)、(1000,3000)、(1000,3500)、(1000,4000)、(1500,500)、(1500,1000)、(1500,1500)、(1500,2000)、(1500,2500)、(1500,3000)、(1500,3500)、(1500,4000)、(2000,500)、(2000,1000)、(2000,1500)、(2000,2000)、(2000,2500)、(2000,3000)、(2000,3500)、(2000,4000)、(2500,500)、(2500,1000)、(2500,1500)、(2500,2000)、(2500,2500)、(2500,3000)、(2500,3500)、(2500,4000)
各サンプルの読み取りにはFUJITSU fi-4010CU(フラットベッド型スキャナ)を用い、400dpiの解像度、8ビットグレイスケールの階調で読み取った。
【0101】
読取領域のサイズとしては16×16ドット(約1mm×1mm)、32×32ドット(約2mm×2mm)、64×64ドット(約4mm×4mm)、128×128ドット(約8mm×8mm)の4種類を設定した。なお、この試験では、個々の読取領域を基準領域としても照合領域としても利用し、読み取り回数削減のためスキャナによってサンプルの全面を読み取り、読み取りによって得られた画像データから個々の読取領域に対応するデータ(基準領域のデータ及び照合領域のデータとして用いるデータ)を切り出して真偽判定に用いた。また、基準領域に対する照合領域の大きさが、辺の長さの比で2倍又は4倍となるように、基準領域及び照合領域の大きさの組み合わせとしては次の表1に示す組み合わせを用いた。
【0102】
【表1】

【0103】
また、スキャナの原稿台がA4サイズより多少大きいことを利用し、原稿台へのサンプルの置き方として、原稿台を上から見て右上突き当て(通常の置き方)、左下突き当て(右上突き当てに対してサンプルの位置が長手方向に約2mm、短手方向に約10mmずれる)、時計回り回転右寄せ(時計回りに約1degree回転)、反時計回り回転左寄せ(反時計回りに約1degree回転)の4種類の置き方を定め、個々のサンプルを各置き方で原稿台上に載置した状態で各々読み取りを行った。
【0104】
また、この試験では、真偽判定に用いる基準領域のデータと照合領域のデータの組み合わせとして、サンプルの置き方が互いに異なる状態で読み取ることによって得られたデータ同士を組み合わせて真偽判定を行った。一つの置き方に対して組み合わせ可能な異なる置き方が3種類存在しているので、表1に示した基準領域及び照合領域の大きさの組み合わせのうちの単一の組み合わせにおいて、単一のサンプルの単一の読取領域について4×3=12回の真偽判定を行うことになり、単一のサンプルには40個の読取領域が存在し、サンプルの枚数が10枚であるので、基準領域及び照合領域の大きさについての個々の組み合わせ毎に、12×40×10=4800回の真偽判定を行った。
【0105】
なお、前述のように、真偽判定に用いる基準領域及び照合領域のデータとして、サンプルの置き方が互いに異なる状態で読み取ることによって得られたデータ同士を組み合わせるため、画像データからの読取領域に対応するデータの切り出しにあたっては、基準領域の中心位置と照合領域の中心位置が略一致するように読取領域の位置を補正した。
【0106】
すなわち、読取領域のデータの切り出しを行う画像データが、サンプルを「右上突き当て」で載置して読み取りを行うことで得られたデータである場合は、読取領域の位置補正は特に行わない。「左下突き当て」の場合には、スキャナによる読み取りによって得られた画像データに基づき、サンプルの端部における位置ずれ量を算出して読取領域の位置を補正した。また「時計回り右寄せ」及び「反時計回り左寄せ」については、画像データに基づきサンプルの角部の位置を検出し、検出した角部の位置に基づき、サンプルを回転及び移動させた後の実際の読取領域の位置を算出し、画像データからデータとして切り出す読取領域の位置を補正した(補正対象は中心位置のみ、回転歪みは未補正)。
【0107】
真偽判定は、先の説明と同様に、照合領域内における基準領域と同サイズの部分領域と基準領域との相関値を正規化相関法により演算することを、前記部分領域を照合領域内で1ドットずつ移動させながら繰り返すことで、(m−n+1)×(m−n+1)個の相関値を求め(但し、基準領域がm×mドット、照合領域がn×nドット)、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアを求め、相関値の最大値が0.3以上かつ相関値の最大値のノーマライズド・スコアが5.0以上か否かを判定することにより行った。
【0108】
表2には、この試験結果を示している。
【0109】
【表2】

【0110】
表2より明らかなように、400dpiの解像度、8ビットグレイスケールの階調での読み取りという条件では、基準領域のサイズを32×32ドット、照合領域のサイズを64×64ドットとすれば、実用上問題が生じない程度にFRRが低い値となることが理解できる。また、上記の読取条件は市販な安価なスキャナで十分に実現可能な条件であり、読み取りにあたって顕微鏡等の高価な読取装置を用いる必要がないことも明らかである。
【0111】
また、上記の試験において、真偽判定で誤判定(真物を偽物とされる誤判定)が生じたケースについて分析した結果、特にサンプルを時計回り又は反時計回りに回転させた場合に誤判定が生じ易い傾向があることが明らかとなった。従って、例えば、回転歪みを検出して補正する、スキャナの原稿台上に読取対象の紙を載置する際に紙が回転しないように注意する、スキャナの原稿台を紙が回転し難い構造にする等の回転歪み防止又は軽減対策を講じれば、FRRの改善は容易に達成できるものと思われる。
【0112】
〔FAR確認のための試験〕
FRRの試験と同様に、A4サイズのサンプルの全面を400dpiの解像度及び8ビットグレイスケールの階調で読み取ることによって得られた画像データから基準領域に相当するデータ及び照合領域に相当するデータを切り出した。
【0113】
FARは偽物を真物と誤判定する確率であるので、FARを確認するための試験では、サンプル上の全ての領域を照合領域として利用できる。今回の実験では、A4全面の基準領域を除く全領域について基準領域との相関値を演算して相関値の最大値と相関値の最大値のノーマライズド・スコアから偽物と判定されれば、同一のサンプル上の任意の照合領域についても偽物と判定されるのは自明であるので、照合領域はA4のサンプルの全面を含むスキャナの全読み取り領域を400dpiで読取った3307×4676ドットの領域とした。
【0114】
また、この試験ではサンプルの枚数を5枚とし、各サンプルに対して全面に略等間隔で4個所の読取領域を設定した。なお、個々の読取領域の中心座標は、400dpiのドット数換算で(500、500)、(500、3500)、(2500、500)、(2500、3500)としている。また、基準領域のサイズは16×16ドット、32×32ドット、64×64ドット、128×128ドットの4種類とした。
【0115】
1枚のサンプル当り4箇所の基準領域について、他の4枚のサンプルの全面に亘って真偽判定を行うので、1枚のサンプル当り4箇所×4枚=16回の真偽判定を行うことになる。これを5枚のサンプルに対して実施するので、真偽判定の回数は合計で5×16=80回となる。FRR確認のための実験に対して回数が少ないように見えるが、先に述べた通り、A4のサンプル全面を含むスキャナの全読み取り領域を照合領域としたためにそう見えるだけであり、照合領域を小領域に分割したとすると1千万回以上の真偽判定を行ったことに相当する。
【0116】
表3には、この試験結果を示している。
【0117】
【表3】

【0118】
表3から明らかなように、基準領域のサイズが16×16ドット以外の場合にはFAR=0.0000%となっているので、照合領域を任意のサイズの小領域に分割して真偽判定を行ったとしてもFARは0.0000%になることが保証されたことになる。
【0119】
一方、基準領域のサイズが16×16ドットの場合はFAR=31.250%と実用に適さない値を示している。これは最悪値であり、照合領域を小領域に分割すればFARが向上する可能性があるが、前述したFRR確認のための試験でも、基準領域のサイズを16×16ドットとした場合、基準領域のサイズをより大きくした場合と比べての真偽判定の判定精度が低い。従って、400dpiの解像度では基準領域のサイズは32×32ドットを下限とすべきであることが明らかとなった。
【0120】
このように、400dpiの解像度、8ビットグレースケールの階調であるときには、32×32ビット以上の領域を基準領域とすることにより判定制度の高い真偽判定が可能となる。
【0121】
次に、タグ管理システム10でのタグ30の作成及び、タグ30の認証を説明する。図13には、タグ作成装置12での処理(タグ作成処理)の概略を示している。
【0122】
このフローチャートでは、タグ30の作成時に実行され、最初のステップ100では、タグ30の作成に用いる用紙32をスキャナ20の載置台にセットするように促す表示をディスプレイ(表示デバイス)に表示し、ステップ102では、スキャナ20に用紙32がセットされたか否かを確認する。
【0123】
ここで用紙32がスキャナ20にセットされて、登録画像の読み取りが指示されると、ステップ102で肯定判定してステップ104へ移行し、スキャナ20によって用紙32の所定領域の読み取りを行う。このとき、PC18には、タグ30のフォーマットが設定されており、これに基づいて、登録領域52(図4(A)参照)の読込みが行われる。このとき、スキャナ20では、用紙32の表面に照射した光の反射光を読み取ることにより、用紙32の表面に沿ったランダム性を有する特徴として、用紙32の表面に沿った凹凸に応じた画像データを出力することになる。
【0124】
また、スキャナ20では、解像度が400dpi、階調が8ビットのグレースケールで32ビット×32ビット(約2mm×2mm)の領域を読み込むことにより、データサイズが1024バイトとなり、個々のドットの階調値が0〜255の範囲の整数値となる。このときの可視化した画像(明視が容易となるようにコントラスト補正した画像)の一例を図4(B)に示す。
【0125】
なお、用紙32上での登録領域52の特定は、用紙32が定まった位置に装填されるときには、この位置に応じて設定される原点を基準とすればよく、また、用紙32のサイズが定まっているときには、用紙32の縁を検出して、この縁に基づいて登録領域を特定するなど、任意の方法を適用することができる。
【0126】
さらに、この登録領域52は、タグ30上で非画像領域となっているので、タグ30を作成したときに、トナー等が付着して、認証時の誤判定を生じさせてしまうのを防止できるようにしている。
【0127】
これにより、ステップ106で、スキャナ20から出力される画像データを登録画像の画像データとして読み込むと、ステップ108へ移行して画像変換処理を行う。このときには、画像データに対して離散コサイン変換等を適用してデータ圧縮を行う。また、タグ管理システム10には、秘密鍵と公開鍵が設定されており、ステップ110では、秘密鍵を用いて圧縮後のデータに対して暗号化処理を行う。
【0128】
この後、ステップ112では、暗号化したデータをスキャナなどの読取手段を用いて自動的に読み取り可能となる形式のコード化する。なお、コード化としてはQRコードなどの二次元化コードを用いており、暗号化したデータに応じた二次元化コードの符号化画像50が得られるようにする。
【0129】
なお、ステップ110では、データに対して秘密鍵を用いて暗号化処理を行うが、この暗号化処理は、必須ではないが、タグ30の複製を抑制する上では、暗号化処理を行うことが好ましい。
【0130】
また、データの暗号化には、暗号化に公開鍵を用い、復号化に秘密鍵を用いる方法もあるが、この場合、タグ30の認証に秘密鍵を用いる必要があるので、暗号化には秘密鍵を用いる手法がより好ましい。
【0131】
一方、用紙32の登録領域52から読み取った画像データに対する処理と並行して、ステップ114では、タグ情報の入力を促す表示をディスプレイに行うなどして、タグ情報の入力を促し、ステップ116では、タグ情報の入力が完了したか否かを確認する。
【0132】
これにより、キーボード等の入力デバイスが使用されて、ディスプレイに表示したUI(ユーザーインターフェイス)等に基づいてタグ情報が入力され、タグ情報の入力が完了したことを確認すると、ステップ116で肯定判定してステップ118へ移行する。
【0133】
このときに入力されるタグ情報としては、タグ30が添付される商品の商品名、型番、シリアルナンバーがあり、また、複数の商品を包装(梱包)した包装体(梱包体)に添付するときには、その個数も入力される。また、タグ30には、商品に関する情報に加えて、タグ30自体の情報として、タグ30ごとに設定されるシリアルナンバーが入力される。さらに、タグ30の作成時間や有効期限等のタグ30ないしタグ30が添付される商品に対する時間情報を、タグ情報に加えることもできる。
【0134】
ステップ118では、入力されたタグ情報を、スキャナなどの読取手段を用いて自動的に読み取り可能となる形式のコード化(QRコードなどの二次元化コード化)し、タグ情報を示すコード画像48が得られるようにする。
【0135】
このようにして、登録領域52の画像のコード化と、タグ情報のコード化が終了すると、ステップ120では、タグ情報をコード化したコード画像48及び、登録領域52の画像データに応じた符号化画像50等が、所定のフォーマットで用紙32に印刷されるようにビットマップデータの生成を行う。このときに、登録領域52が含まれる認証領域54を明確とする枠線56が印刷されるようにビットマップデータが生成される。
【0136】
この後、ステップ122では、登録領域52の読み取りを行った用紙32をプリンタ22へ装填することを要請する表示をディスプレイに行い、ステップ124では、該当用紙32がプリンタ22に装填されて印刷処理の実行が指示されたか否かを確認する。
【0137】
ここで用紙32がプリンタ22に装填され、この用紙32への印刷処理が指示されると、ステップ124で肯定判定して、ステップ126へ移行し、印刷処理を実行する。
【0138】
これにより、タグ情報を示すコード画像48と共に、登録領域52の画像データに応じた符号化画像50が印刷されると共に、登録領域52を含む認証領域54が非印刷状態で空けられたタグ30が出力される。
【0139】
これと共に、ステップ128では、登録領域52から読み取った画像データの登録処理を行う。この登録処理では、登録領域52から読み取った画像データ、該画像データを暗号化したデータ又は、暗号化したデータをさらにコード化したデータを、タグ30のシリアルナンバーなどのタグ30自体の情報、タグ30を添付する商品情報などのタグ情報に関連付けてデータサーバ16に登録する。
【0140】
このようにして作成されたタグ30は、商品ごとに添付されるか、商品を包装した包装体ないし、複数の商品をまとめて包装した包装した包装体又は梱包した梱包体に添付される。
【0141】
また、商品や包装体、梱包体へのタグ30の添付は、例えば販売用の商品であるときには、購入者がタグと商品を接続する紐材等を切断するかタグ30を破くなどして、再使用が不可能となるように外されるものであればよく、また、包装体や梱包体の外装にタグ30を貼付することにより、外装やタグ30を破くことにより外されるものであれば良い。
【0142】
また、本実施の形態に適用したタグ作成装置12では、用紙32から登録領域52の読み取りを行うスキャナ20と、用紙32への印刷処理を行うプリンタ22を別体としたが、スキャナ機能とプリンタ機能を合わせもち、スキャナ機能によって画像読み取りを行った用紙32に対して、引き続いて印刷処理を実行可能とするスキャナ機能つきの印刷処理装置を用いることもでき、これにより、登録領域52から読み取った画像データに応じた符号化画像50を、該当する用紙32に間違いなく印刷処理することができるのでより好ましい。
【0143】
次に、図14を参照しながら、タグ認証装置14を用いたタグ30の認証を説明する。このフローチャートの最初のステップ140では、PC24のディスプレイ(表示デバイス)に表示するなどして、認証を行うタグ30をスキャナ26に装填するように要請する。また、ステップ142では、スキャナ26へのタグ30の装填が完了し、タグ30の認証処理の実行が指示されたか否かを確認する。
【0144】
ここで、タグ30がスキャナ26の原稿台上に載置された状態で認証処理の実行が指示されると、ステップ142で肯定判定してステップ144へ移行する。これにより、スキャナ26にタグ30の読み取りが指示され、スキャナ26でタグ30の読み取りを行って画像データが出力されることにより、ステップ146では、この画像データを読み込む。
【0145】
このとき、タグ30の全域を読み込むようにしても良いが、少なくとも、タグ30に印刷されているコード画像48及び符号化画像50と、コード画像48と符号化画像50の間に設けられている照合領域54を含む所定範囲の領域を読み込むものであっても良い。また、コード画像48、符号化画像50及び認証領域54を別々に読み込むようにしても良い。
【0146】
次のステップ148では、スキャナ26から入力された画像データに対して画像処理を施すことにより、コード画像48の画像データ、符号化画像50の画像データ及び照合領域54内の画像データに分離抽出する。
【0147】
この後に、ステップ150では、コード画像48の画像データに対してコード変換処理を行うことにより、二次元化コードからタグ情報を抽出する。また、ステップ152では、照合領域54の画像データに対して所定の画像変換を行う。
【0148】
これと共に、ステップ154では、符号化画像50の画像データに対して、二次元化コードに変換されているデータを抽出する。この後、ステップ156では、二次元化コードから変換したデータに対して公開鍵を用いて復号化することにより登録領域52の画像データとして記録されていた画像データを得る。
【0149】
このようにして、登録領域52に対応する画像データと、登録領域52が含まれる照合領域54の画像データを得ると、ステップ158へ移行して、照合処理を行う。
【0150】
すなわち、32ビット×32ビットの登録領域52の登録画像データと、64ビット×64ビットに設定されている認証領域54の画像データを得ると、ステップ158では、登録画像データを基準データとし、認証領域54の画像データを照合データとして照合処理を行うことにより、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアの演算処理を行う。
【0151】
次のステップ160では、照合処理(演算処理)によって得られた登録画像データと認証画像データの相関値の最大値及び、相関値の最大値のノーマライズド・スコアを、予め設定されている閾値(例えば、相関値の最大値に対する閾値≒5.0、相関値の最大値のノーマライズド・スコアに対する閾値≒0.3)と比較することにより真偽判定を行い、ステップ162では、この真偽判定の判定結果をディスプレイ等に表示するなどして出力する。
【0152】
一方、ステップ164では、登録確認を行うか否かをディスプレイに表示するなどして、タグ30の登録確認の要否の入力を促し、登録確認が指示されることにより、ステップ166で肯定判定してステップ168へ移行する。
【0153】
このステップ168では、タグ30のタグ情報として記録されているシリアルナンバー(タグ30のシリアルナンバー)などに基づいて、データサーバ16に、タグ30の登録画像データの出力を要求し、ステップ170では、該当するデータ(登録画像データ)があるか否かを確認する。
【0154】
ここで、該当する登録画像データが無いときに、すなわち、タグ30がデータサーバ16に登録されているものでなければ、ステップ170で否定判定してステップ172へ移行し、該当するタグ情報、登録画像データがデータサーバ16に無く、該当するタグ30が偽物である可能性が高いことをディスプレイに表示するなどして出力する。
【0155】
これに対して、タグ情報として記録されているシリアルナンバーに該当する登録画像データがあるときには、ステップ170で肯定判定してステップ174へ移行し、データサーバ16から該当する登録画像データを読み込んでステップ176へ移行する。
【0156】
このステップ176では、読み込んだ登録画像データと、照合領域54の画像データとの照合を行う。このときの照合においても、データサーバ16から読み込んだ登録画像データを基準データとし、認証するタグ30の認証領域54の画像データを照合データとして、相関値の最大値及び相関値の最大値のノーマライズド・スコアを演算し、ステップ178では、この演算結果に基づいて真偽判定を行い、判定結果を出力する。
【0157】
用紙32は、表面に沿ってランダム性を有する固有の特徴と備えている。タグ作成装置12では、この用紙32上に設定した登録領域52から読み込んだ画像データを符号化画像50として、この用紙32を用いて作成したタグ30に記録している。
【0158】
タグ認証装置14では、符号化画像50によって示される画像データと、タグ30の認証領域54内の画像データを照合することにより、タグ30が、タグ作成装置12で作成された本来の物(真物)であるか、或いは、複製等によって作成されたものであるかの判断を行うことができ、タグ30が真物でないときには、このタグ30が添付されている商品や、包装品、梱包品などが真物の類似品であったり、模造品であったり、また、本来製作されるはずの製作工場や製作会社のものでないことになる(以下、真物に対して偽物)。
【0159】
すなわち、偽物に添付するタグが、単に真物のタグ30をコピーしたものなど(以下、「偽タグ」とする)であれば、用紙32が異なるので、タグ認証装置14では認証されないことになる。
【0160】
したがって、タグ30が認証されたか否かによって、タグ30が添付されている商品や包装品、梱包品が真物であるか否かの判断が可能となる。
【0161】
一方、偽タグを作成するときに、タグ30と同様に、用紙32上に設定した所定の領域の特徴を読み取って符号化画像として用紙32に印刷することが想定され、これにより、用紙32の表面の固有の特徴を持つ偽タグが得られる。
【0162】
このような偽タグの作成を防止するためには、タグ作成装置12では、秘密鍵を用いて暗号化するようにしている。また、タグ管理システム10では、作成したタグ30をデータサーバ16に登録するようにしている。
【0163】
秘密鍵を用いてデータを暗号化し、公開鍵を用いて復号化する場合、復号化は簡単に行うことができるが、この公開鍵によって正確な復号化が可能となる暗号化が困難となる。これにより、暗号化した符号化画像50を用紙32に印刷しても、タグ認証装置14で認証されないことになる。
【0164】
なお、暗号化としては、復号するときに秘密鍵を用いる手法もあるが、この場合、認証が制限される(秘密鍵を持つもののみが認証可能となる)ので、偽タグが作成されるのを抑える効果が低くなることから、認証側では、公開鍵を用いることが好ましい。
【0165】
一方、真物のタグ30をデータサーバ16に登録することにより、偽タグで符号化画像50と用紙32上の認証領域54を照合した結果、真物であると判定されても、その偽タグは、データサーバ16上に登録されていないことになるので、用紙32の照合領域54とデータサーバ16に登録している登録画像データと照合ができないか、照合結果から偽タグと判定されることになる。
【0166】
したがって、秘密鍵を用いた暗号化ないし、データサーバ16への登録の何れか少なくとも一方を実行することにより、精巧に真似られても、的確な真偽判定が可能となる。
【0167】
なお、秘密鍵を用いた暗号化を行わずに、データサーバ16への登録のみを行うようにしてもよいが、この場合、データサーバ16のセキュリティ性を高くし、第三者によるデータの書換えや登録が行われることが無いようにすることが好ましい。
【0168】
このように、タグ管理システム10では、タグ30を形成する用紙32の表面に沿ったランダム性を有する特徴を用いることにより、タグ30の偽造等がなされるのを防止しながら、タグ30の真偽判定をすることにより、該当するタグ30が添付されている商品の真偽を的確に判別することができる。
【0169】
また、このようなタグ30を用いるときには、タグ30の認証に先立って、品物の包装状態、梱包状態等から、タグ30の貼り替えや付け替えがなされていないを確認する必要があり、これにより、真物のタグ30が使いまわしされてしまうことにより、偽物の商品に真物のタグ30がつけられたために、商品の真偽の判別がつかなくなってしまうのを防止することができる。
【0170】
このために、タグ30としては、貼り替えが利かないものや、貼り替えが行われたときには、それが文字等によって現れて明確になる構成を付加するようにしても良い。
【0171】
また、タグ30のタグ情報として、タグ30の有効期限等の時間情報を付加し、時間情報を含めてタグ30の認証を行うようにしてもよく、これにより、一つのタグ30を長期的に使いまわしされてしまうのを防止することが可能となり、少なくとも、多量の偽物が出回ってしまうのを抑えることができる。
【0172】
さらに、商品の製造過程では、一次加工された商品が、さらに、別の工場や会社で二次加工されることがある。このようなときには、一次加工品として製造したときに、タグ30を作成して添付し、出荷時や、二次加工工場への搬入時にタグ30の認証を行うことにより、二次加工工場に偽物の一次加工品が搬入されるのを防止することができる。
【0173】
このときに、二次加工品に、新たに作成したタグ30を添付するようにしてもよく、このときには、一次加工品に添付しているタグを的確に回収する、破く、インク等を用いて少なくとも符号化画像50や認証領域54をつぶす(汚す)などして、適正な情報読み取りが困難となるようにすることが好ましい。
【0174】
また、二次加工品として出荷するときに、一次加工品に添付したタグ30を用いるときには、このタグ30に二次加工に関する情報をタグ情報として含ませると共に、管理用のデータベース(データサーバ16)の登録情報の更新を行うようにすることが好ましい。
【0175】
また、タグ管理システム10では、商品の流通過程や保管過程等において、抜き打ち的に認証を行ったり、データサーバ16との登録情報との照合を行うようにしてもよく、これにより、商品の的確な流通管理が可能となると共に、流通過程において偽物が混入してしまうのを防止することが可能となる。
【0176】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、タグ30を作成する用紙32からの登録画像データの読み取りや、タグ30からのコード画像48、符号化画像50ないし認証領域52の読み取りに、スキャナ20、26を用いたが、このスキャナ20、26は、フラットベット型であっても良く、用紙を自動送りしながら読み取りを行うオートフィード型であっても良く、また、ハンディスキャナであっても良い。さらに、スキャナに限らず、デジタルカメラ等の適用が可能である。
【0177】
すなわち、画像読み取りは、CCDラインセンサ、CCDエリアセンサなどの、所定の解像度を有する任意の撮像手段と、画像読み取りに用いる光源の適正な組合せによって行うことができる。
【0178】
また、本実施の形態では、タグ30を形成する個体として紙(用紙32)を適用して説明したが、本発明のタグの材質及び形状はこれに限るものではない。印刷技術の向上によって樹脂プレートには勿論、ブロック状の個体への高品質の印刷が可能であることから、タグとしては、表面に制御不能なランダム性を有する凹凸や、透過光の分布に制御できないランダム性を有するものであれば、任意の材質を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本実施の形態に物品管理システムとして適用したタグ管理システムの概略構成図である。
【図2】タグ管理システムを形成するタグ作成装置とタグ認証装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用したタグの一例を示す概略図である。
【図4】(A)はタグを形成する用紙の概略図であり、(B)は用紙の登録領域から読み取った登録画像の一例を示す概略イメージ図である。
【図5】(A)及び(B)は真偽判定の試験の説明に用いる概略イメージ図であり、(A)は登録画像を示し、(B)は照合画像を示している。
【図6】真偽判定の試験における登録画像と照合画像の相関値の演算を説明するイメージ図である。
【図7】(A)〜(C)は相関値の分布の概略を相関値の最大値及びノーマライズド・スコアと示すイメージ図である。
【図8】第1の照合画像の相関値の分布を示す線図である。
【図9】第2の照合画像の相関値の分布を示す線図である。
【図10】第3の照合画像の相関値の分布を示す線図である。
【図11】偽物が真物と判定される確率の高いケースの相関値の分布の一例を示す線図である。
【図12】FRR確認の試験における読取領域の位置を示す概略図である。
【図13】本実施の形態でタグ作成処理の一例を示す流れ図である。
【図14】本実施の形態でタグ認証処理の一例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0180】
10 タグ管理システム(物品管理システム)
12 タグ作成装置
14 タグ認証装置
16 データサーバ
18 PC
20 スキャナ
22 プリンタ
24 PC
26 スキャナ
30 タグ
32 用紙
34 登録画像入力部
38 印刷処理部
40 画像変換部
42 画像符号化部
44 タグ情報入力部
48 コード画像
50 符号化画像
52 登録領域(第1の領域)
54 認証領域(第2の領域)
58 データ登録部
60 照合画像読部
68 復号化部
70 照合部
72 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体表面に沿って分布しているランダム性を有する特徴を該個体表面の第1の領域に渡って読み取り、読み取った前記第1の領域の特徴を示す画像情報を前記個体特有の情報である個体情報に変換し、
前記第1の領域を含む所定範囲の第2の領域を非画像形成領域として、前記個体情報を示す個体情報画像を個体表面に形成し、
該個体から物品に添付するタグを作成することを特徴とするタグの作成方法。
【請求項2】
前記個体情報として二次元化コードを用い、前記個体表面に形成される個体情報画像が二次元化コード画像であることを特徴とする請求項1に記載のタグの作成方法。
【請求項3】
前記第1の領域から読み取った前記画像情報を暗号化して前記個体情報に変換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタグの作成方法。
【請求項4】
前記タグを特定可能とするタグ情報に基づいたタグ情報画像を前記個体に形成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のタグの作成方法。
【請求項5】
前記タグ情報に前記タグが添付される前記物品の情報を含むことを特徴とする請求項4に記載のタグの作成方法。
【請求項6】
物品に添付するタグの作成に用いる個体表面に沿って分布したランダム性を有する特徴を該個体表面の第1の領域に渡って読み取る第1の領域読取手段と、
前記第1の領域読取手段によって読み取った前記第1の領域を示す画像情報を前記個体特有の情報である個体情報として変換する読取情報変換手段と、
前記個体表面の前記第1の領域を含む所定範囲に設定した第2の領域を非画像領域として、前記読取情報変換手段によって変換された前記個体情報を示す個体情報画像を該個体表面に形成する画像形成手段と、
を含むことを特徴とするタグ作成装置。
【請求項7】
前記個体情報を二次元化コードに変換するコード変換手段を含み、前記個体情報画像として二次元化コード画像が形成されることを特徴とする請求項6に記載のタグ作成装置。
【請求項8】
前記個体情報を暗号化する暗号化手段を含み、前記画像形成手段が、暗号化された個体情報に基づいた固体情報画像を形成することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のタグ作成装置。
【請求項9】
前記タグを特定可能とするタグ情報が入力される入力手段を含み、前記画像形成手段が、前記入力手段から入力されるタグ情報に基づいたタグ情報画像を前記個体に形成することを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1項に記載のタグ作成装置。
【請求項10】
前記タグ情報として前記タグが添付される前記物品の情報を含むことを特徴とする請求項9に記載の含むタグ作成装置。
【請求項11】
表面に沿ってランダム性を有する特徴が分布している個体によって形成されて物品に添付されるタグであって、
前記個体表面に設定した第1の領域を含む第2の領域が非画像部分として設けられると共に、前記第1の領域から読み取られた第1の領域を示す特徴に基づいて前記個体を特定可能とする個体情報画像が形成されていることを形成されていることを特徴とするタグ。
【請求項12】
ランダム性を有する特徴が分布している個体表面に設定した第1の領域を含む第2の領域が非画像部分として設けられると共に、前記第1の領域から読み取られた第1の領域を示す特徴に基づいて前記個体を特定可能とする個体情報画像が形成されたタグが添付される物品を管理する物品管理システムであって、
前記第2の領域の前記個体表面の特徴及び、前記個体情報画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段によって読み取った前記第2の領域の特徴と、前記個体情報画像に基づいた個体情報を対比可能な情報に変換する情報変換手段と、
前記情報変換手段によって変換された情報から前記個体情報によって特定される前記第1の領域が前記第2の領域に含まれるか否かを照合する照合手段と、含み、前記照合手段の照合結果に基づいて前記物品の真偽を判定可能とすることを特徴とする物品管理システム。
【請求項13】
前記個体情報を暗号化して前記個体情報画像が前記個体に形成されているときに、前記変換手段が前記暗号化に対する復号化手段を含むことを特徴とする請求項12に記載の物品管理システム。
【請求項14】
前記個体に前記タグを特定可能とするタグ情報に基づいたタグ情報画像が形成され、前記タグ情報と共に前記個体情報を登録して保持する登録保持手段を含むときに、
前記読取手段が前記タグ情報画像を読み取ると共に、
前記照合手段が前記読取手段によって読み取った前記タグ情報画像に示されるタグ情報に基づいて、前記タグが前記保持手段に登録されているか否かから前記物品の真偽を判定することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の物品管理システム。
【請求項15】
前記照合手段が、前記登録保持手段に登録されている前記個体情報と、前記第2の領域の特徴を照合することを特徴とする請求項14に記載の物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−18525(P2006−18525A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194939(P2004−194939)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】