説明

タグ保持体

【課題】汎用性がありかつ再利用性も高く、管理対象物が生産・加工工程にある場合であっても、管理対象物の生産・加工等の邪魔になり難いタグ保持体を提供する。
【解決手段】ICタグ3と、ICタグ3を所定箇所に少なくとも1つ保持するタグ保持具4と、を有するタグ保持体1であって、タグ保持具4は、開口を拡げることができる係合凹部21を有するタグ保持体1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを有するタグ保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ICタグを保持するためのICタグ保持体が本願発明者によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のICタグ保持体は、箱形状に形成されており、内部はICタグを着脱自在に収納する収納部となっている。そのため、このICタグ保持体では、ICタグの再利用が可能となっている。また、特許文献1に記載のICタグ保持体には、ICタグを装着しようとする管理対象物にICタグ保持体を取り付けるための取り付け部が形成されている。
【0003】
また、他の従来のICタグ保持体は、図8に示すように管理対象物53を載置したパレット50にICタグ51を備えさせ、このICタグ51にリーダライタ52で管理対象物53に関連する管理情報を読み取る又は書き込むことで生産・加工工程にある管理対象物を管理している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−164569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のICタグ保持体は、箱形状に形成されているため、取り付け部を管理対象物に合わせて形成する必要がある。したがって、このICタグ保持体は、同一形状の管理対象物にしか使用できないため汎用性が低く、多様な管理対象物に用いたり、他の管理対象物に再利用したりすることが困難である。
【0006】
また、図8に示すような従来の管理方法では、54で他の工程に搬送する場合に、ICタグ51を備えるパレット50と管理対象物53とが分離してしまい、生産・加工工程における管理対象物53を管理することができない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、汎用性がありかつ再利用性も高く、管理対象物が生産・加工工程にある場合であっても、管理対象物に装着したままとできるタグ保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のタグ保持体は、ICタグと、ICタグを所定箇所に少なくとも1つ保持するタグ保持具と、を有するタグ保持体であって、タグ保持具は、開口を拡げることができる係合凹部を有することことを特徴とする。
【0009】
本発明のタグ保持体は、ICタグと、管理対象物の外形に沿った係合凹部を有した弾性部材からなるタグ保持具とから形成されている。そのため、タグ保持具の弾性により管理対象物の形状に略密着するようにタグ保持部を変形させることが可能になる。その結果、本発明のタグ保持体は、多様な管理対象物にICタグを装着することが可能となるため、タグ保持体の汎用性および再利用性が高まる。また、本発明のタグ保持体は、管理対象物に略密着させて装着するため、管理対象物の生産・加工等の邪魔となり難い。
【0010】
本発明において、タグ保持具は、開口とは反対側に突出している凸部を有し、その凸部の両側に弾性を有する脚部が配置されていることが好ましい。このように構成すると、本発明のタグ保持体を、生産・加工工程を終えた管理対象物から容易に取り外すことができる。したがって、本発明のタグ保持体を繰り返して使用することが可能となり、他の管理対象物に容易に再利用することができる。
【0011】
本発明において、ICタグを、凸部の外周面上に保持することが好ましい。このように構成すると、ICタグに管理情報を書き込む又は読み取ることが容易となる。また、凸部の凸面上にICタグを保持した場合は、係合凹部の側面上や曲面上にICタグを保持する場合と比べて、ICタグが曲がらず、長年使用してもICタグ自体の金属疲労が起こりにくくなるため、ICタグの再利用性が、更に高まる。
【0012】
本発明において、ICタグを、タグ保持具の外周面に複数有することが好ましい。このように構成すると、管理対象物からICタグに同じ内容が記録されている管理情報をあらゆる角度から読み取ることができるようになるため、リーダライタの設置場所が所定の箇所に限定されたり、制限されたりすることがない。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のタグ保持体では、汎用性がありかつ再利用性も高く、管理対象物が生産・加工工程時にあっても、管理対象物に装着したままとできるタグ保持体を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(ICタグ保持体の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1(タグ保持体)と、ICタグ保持体1を装着する管理対象物2を示す斜視図である。図2は、図1のE方向から見たICタグ保持体1と管理対象物2の断面図である。図3は、図1に示すICタグ保持体1を管理対象物2に装着し、ICタグ3の内容をリーダライタ10で読み取り又はICタグ3に情報を書き込む状態を示す斜視図である。図4は、図3のF方向から見たICタグ保持体1と管理対象物2と、リーダライタ10の関係を示す図である。図5は、図1に示すICタグ3の断面図である。図6は、図1に示したICタグ保持体1とは異なる箇所にICタグ3を保持した他のICタグ保持体1Aの例を示す断面図である。図7は、図1に示したICタグ保持体1とは異なる箇所にもICタグ3を保持したさらに他のICタグ保持体1Bの例を示す断面図である。
【0016】
本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1は、図3に示すように、管理対象物2を管理するために管理対象物2に装着されて使用される。このICタグ保持体1は、図1から図4に示すように、ICタグ3と、ICタグ3を保持するICタグ保持具4(タグ保持具)と、を有している。
【0017】
ICタグ3は、図5に示すように、略矩形の平板状に形成されている。このICタグ3は、図示外のICチップと、このICチップに接続されるアンテナ12と、を有している。ICチップは、ICタグ3の中心から外れた位置に配置されている。これはICタグ3の中心は、通常最も変形されやすい箇所となるため、変形されにくい箇所となる周辺部にICチップを配置している。アンテナ12は、矩形状に形成されたICタグ3の周縁に沿って配置されている。すなわち、本実施の形態では、コイルが矩形状に巻回されて形成されたアンテナ12がICタグ3の周縁に沿うように配置されている。
【0018】
また、ICタグ3は、図5に示すように、ICタグ3の表面に配置される保護層13と、アンテナ12の絶縁を行なうための絶縁層14と、磁性部材で形成される磁性層15と、磁性層15に固定される接着層16とから構成されている。具体的には、保護層13,絶縁層14,磁性層15および接着層16が表面から裏面に向かってこの順番で積層されて、ICタグ3が構成されている。
【0019】
保護層13は、可撓性を有する樹脂材料で形成された樹脂シートで構成されている。絶縁層14は、可撓性および絶縁性を有する樹脂材料で形成された2枚の樹脂シートで構成されている。具体的には、2枚の樹脂シートがラミネート加工されて絶縁層14が構成されている。図5に示すように、アンテナ12は、ラミネート加工された2枚の樹脂シートの間に封入されている。磁性層15は、可撓性を有する磁性シートで構成されている。接着層16は、可撓性を有する両面テープで構成されている。
【0020】
上述のように、本実施の形態では、保護層13,絶縁層14,磁性層15および接着層16はいずれも可撓性を有している。そのため、ICタグ3は、全体として可撓性を有している。なお、絶縁層14および磁性層15には、ICチップを配置するための配置孔(図示せず)が形成されている。
【0021】
ICタグ保持具4は、図2に示すように、管理対象物2の外形に沿って形成され、開口を拡げることができる係合凹部21と、この係合凹部21を共同して形成する3つの部分、すなわち対線形状の脚部22,23と、脚部22,23をつなぐと共に、係合凹部21の開口とは反対側に突出することとなる凸部24と、を有している。また、ICタグ保持具4は、脚部22,23が凸部24を主点としてそれぞれ図2の矢印方向に開口し、係合凹部21を拡げることができるように弾性部材によって形成されている。たとえば、ICタグ保持具4は、形状記憶特性をもつNi−Ti(ニッケル・チタニウム)などの金属材料や、ナイロン,アクリル,ポリエステルあるいはポリウレタン等の弾力性に富む樹脂材料で形成されている。なお、ICタグ保持具4は、ゴム等で形成されても良い。また、ICタグ保持具4は、たとえば、「ドライゾーンR506」や「モイスセンサー」等のポリエステルとポリウレタンとの複合材で形成されても良いし、インヴィスタ社製の「クールマックス」(登録商標)、旭化成せんい社製の「アクアミラクル」(登録商標)あるいはディアプレックス社製の「ディアプレックス」(登録商標)で形成されても良い。
【0022】
上述のように、ICタグ保持体1は、管理対象物2に装着されて使用される。本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1は、多種多様な管理対象物2に装着することが可能である。たとえば、ICタグ保持体1が装着される管理対象物2は、鋼材で形成された自動車用のカムシャフトである場合には、管理対象物2であるカムシャフトの加工が施されない円柱部分にICタグ保持体1が装着される。ICタグ保持体1が装着された状態でこのカムシャフトの加工が行われる。すなわち、装着されたICタグ保持体1からICタグ3に記録されている管理情報をリーダライタ10によって読み取る又は書き込んで、管理対象物2であるカムシャフトの生産・加工工程を管理することができる。なお、ICタグ保持体1が装着される管理対象物2は、カムシャフト以外の鋼材で形成された棒材、角材等であってもよいし、アルミや真鍮等の他の金属や樹脂で形成された棒材や角材等であってもよい。
【0023】
(本発明の実施の形態に係るICタグ保持体の主な効果)
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1は、ICタグ3と、管理対象物2の外形に沿って形成され、開口を拡げることができる係合凹部21を有した弾性部材からなるICタグ保持具4と、から形成されている。そのため、ICタグ保持具4の弾性により管理対象物2の形状に略密着するようにICタグ保持具4を変形させることが可能になる。その結果、ICタグ3を有するICタグ保持体1は、多様な管理対象物2に装着することが可能となるため、ICタグ保持体1の汎用性および再利用性が高まる。また、ICタグ保持体1は、係合凹部21の開口を拡げて管理対象物2に略密着させて装着するため、管理対象物の生産・加工等の邪魔となり難い。
【0024】
本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1に使用されるICタグ保持具4は、係合凹部21の開口とは反対側に突出している凸部24を有し、凸部24を支点として脚部22,23の間隔を広げることにより取り外しが可能である。このように構成すると、ICタグ保持体1を、生産・加工工程を終えた管理対象物2から容易に取り外すことができる。したがって、繰り返して使用することが可能となり、ICタグ保持体1を他の管理対象物2に再利用することができる。
【0025】
本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1に使用されるICタグ3を、凸部24の外周面上に保持することが好ましい。このように構成すると、リーダライタ10からICタグ3に管理情報を書き込む又は読み取ることが容易となる。特に、凸部24の凸面上にICタグ3を保持した場合は、係合凹部21の側面上や曲面上にICタグ3を保持する場合と比べて、ICタグ3が曲がらず、長年使用してもICタグ3自体の金属疲労が起こりにくくなるため、ICタグ3の再利用性が、更に高まる。
【0026】
本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1に使用されるICタグ3を、ICタグ保持具4の外周面に複数有することが好ましい。このように構成すると、管理対象物2からICタグ3に同じ内容が記録されている管理情報をあらゆる角度から読み取ることができるようになるため、リーダライタ10の設置場所が所定の箇所に限定されたり、制限されたりすることがない。
【0027】
本発明の実施の形態に係るICタグ保持体1に使用されるICタグ3は、可撓性を有している。特に、ICチップが、ICタグ3の中心からはずれた位置に配置している。そのため、管理対象物2の形状に応じてICタグ3を比較的容易に変形させることが可能になる。したがって、管理対象物2が多様化する場合であっても、管理対象物2にICタグ3を容易に装着することが可能になる。
【0028】
(他の実施の形態)
上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形可能である。たとえば、上述した実施の形態では、ICタグ保持具4の係合凹部21は、管理対象物2であるカムシャフトの外形に略一致するように円弧上に形成され、開口を拡げることができるが、管理対象物2の形状によって、ICタグ保持具4を正方形状や楕円形状等の他の形状に形成しても良い。具体的には、図6のICタグ保持体のように脚部22,23を角形状とし、係合凹部21の外形を多角形としてもよい。同様に、上述した実施の形態では、ICタグ3は細長い帯状に形成されているが、ICタグ3の形状を正方形状や楕円形状等の他の形状に形成しても良い。
【0029】
また、上述した実施の形態では、ICタグ3は、ICタグ保持具4の側面に1つ保持されているが、図6に示すように凸部24の凸面上に保持されるようにしてもよい。このように構成すると、脚部22,23の外周面上にICタグ3を保持する場合と比べて、ICタグ3が曲がらず、長年使用してもICタグ3自体の金属疲労が起こりにくくなるため、ICタグ3の再利用が、更に高まる。また、この他に図7に示すようにICタグ保持具4の凸部24、両脚部22,23の計3箇所にICタグ3を備えさせて、3つのICタグ3に記録されている管理情報をリーダライタ10によって読み取る又は書き込むことができるようにしても良い。このような構成のICタグ保持体1Bとすると、管理対象物2からICタグ3に同じ内容が記録されている管理情報をあらゆる角度から読み取ることができるようになるため、リーダライタ10の設置場所が所定の箇所に限定されたり、制限されたりすることがない。
【0030】
また、上述の実施の形態では、リーダライタ10は読み取りと書込みの双方が行なえるものとしたが、読み取り又は書込みの一方のみが行なえるものとしてもよい。また、複数のICタグ3を1つのICタグ保持体1,1A,1Bが有する場合、各ICタグ3の記録内容を同一とせず、異なる記録内容を有するICタグ3としてもよい。更にICタグ保持体1,1A,1Bは、凸部24、脚部22,23のいずれか一つのみ弾性を有するようにしたり、いずれか2つが弾性を有するように他の部分は弾性を有しないようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、部品を管理するためのICタグ保持体として利用することができる。本発明は、特に自動車用部品であるカムシャフトなどの加工対象物自体の管理をするためのICタグ保持体として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るICタグ保持体(タグ保持体)と、ICタグ保持体を装着する管理対象物を示す斜視図である。
【図2】図1のE方向から見たICタグ保持体と管理対象物の断面図である。
【図3】図1に示すICタグ保持体を管理対象物に装着しICタグの内容をリーダライタで読み取り又はICタグに情報を書き込む状態を示す斜視図である。
【図4】図3のF方向から見たICタグ保持体と管理対象物の断面を示す断面図である。
【図5】図1に示すICタグの断面図である。
【図6】図1に示したICタグ保持体とは異なる他のICタグ保持体の例を示す図である。
【図7】図1に示したICタグ保持体とは異なる他のICタグ保持体の更に他の例を示す図である。
【図8】従来のICタグ保持体を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ICタグ保持体(タグ保持体)
2 管理対象物
3 ICタグ
4 ICタグ保持具(タグ保持具)
21 係合凹部
22、23 脚部
24 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグと、上記ICタグを所定箇所に少なくとも1つ保持するタグ保持具と、を有するタグ保持体であって、
上記タグ保持具は、開口を拡げることができる係合凹部を有することを特徴とするタグ保持体。
【請求項2】
前記タグ保持具は、前記開口とは反対側に突出している凸部を有し、
その凸部の両側に弾性を有する脚部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタグ保持体。
【請求項3】
前記ICタグを、前記凸部の外周面上に保持することを特徴とする請求項2に記載のタグ保持体。
【請求項4】
前記ICタグを、前記タグ保持具の外周面に複数有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタグ保持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−271741(P2009−271741A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121871(P2008−121871)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504274882)ダイドー株式会社 (3)
【出願人】(506118836)デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】