説明

タグ装置、端末装置、通信システム、エリア退出判定方法およびプログラム

【課題】 エリア退出判定において、通信エリア内での誤判定を削減するとともに、通信エリア外での誤判定を削減することのできるタグ装置を提供する。
【解決手段】 タグ装置3は、リーダ装置2からの信号を受信したときに、その信号の受信強度を測定するとともに、リーダ装置2からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定し、測定した受信強度と期間に基づいて、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したか否かを判定する。この場合、リーダ装置2から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に「退出」と判定される。また、リーダ装置2から第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合にも「退出」と判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ装置の通信エリアから退出したことを通知する機能を備えたタグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アクティブタグを用いた様々なサービス(例えば、児童や高齢者の見守りサービスや広告配信サービスなど)が提案されている。例えば、児童や高齢者の見守りサービスのシステムでは、児童や高齢者にアクティブタグ機能を備えた携帯型の端末装置(アクティブタグ装置とも呼べる)を所持させておき、自宅や公園などにリーダ装置を設置しておく。児童や高齢者がリーダ装置の通信エリア内を通過する(または、通信エリア内に滞在している)と、端末装置とリーダ装置との間で通信が行われ、その履歴が記録される。これにより、保護者(サービスの利用者)は、児童や高齢者(見守りの対象者)の所在や移動経路を知ることができる。
【0003】
このようなサービスでは、端末装置がリーダ装置の通信エリア内に進入したか否か、あるいは、リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを、できるだけ正確に把握することが要求される。そこで、従来、端末装置がリーダ装置から受信した受信信号の電界強度に基づいて、その端末装置がリーダ装置の通信エリアの圏内であるか圏外であるかを判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、この従来の方法では、リーダ装置からの受信信号の電界強度に基づいて、端末装置がリーダ装置の通信エリアの圏外であると判定されると、計測タイマをスタートさせ、タイマのタイムアップまでに、端末装置がリーダ装置の通信エリアの圏内であると判定されなければ、音による圏外報知が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−285944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、携帯型の端末装置の場合には、例えば、その端末装置とリーダ装置との間を人や物などの遮蔽物が通過するなどの周囲の環境の変化によって、リーダ装置からの受信信号の電界強度が変動することも少なくない。
【0007】
しかしながら、従来のタグ装置においては、リーダ装置からの受信信号の電界強度のみに基づいて、その端末装置がリーダ装置の通信エリアの圏外であると判定されるため、本来であれば、リーダ装置の「通信エリアの圏内」と判定されるべきところ、人や物などの遮蔽物の通過などの影響により、リーダ装置からの受信信号の電界強度が一時的に減少すると、誤って「通信エリアの圏外」と判定されてしまうという問題があった。このような誤判定(エリア圏外の誤判定)を削減するには長期間の電界強度の検出が必要となるが、そうすると、今度は、タグ装置が通信エリア圏内から圏外に離れた場合でも「通信エリアの圏内」と誤判定される期間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、リーダ装置の通信エリアからの退出判定(エリア退出判定)において、通信エリア内での誤判定を削減するとともに、通信エリア外での誤判定を削減することのできるタグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタグ装置は、リーダ装置からの信号を受信する受信部と、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、を備え、前記エリア退出判定部は、前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、タグ装置では、リーダ装置からの信号の受信強度が測定されるとともに、リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間が測定される。そして、測定した受信強度と期間に基づいて、タグ装置がリーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定が行われる。この場合、第1のエリア退出判定により、リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置の通信エリアから退出したと判定される。また、第2のエリア退出判定により、リーダ装置から第2の基準強度(第1の基準強度より小さい強度)以上の受信強度の信号を、第2の基準期間(第1の基準期間より短い期間)の間、連続して受信しなかった場合にも、リーダ装置の通信エリアから退出したと判定される。本発明によれば、第1のエリア退出判定を行うことにより、タグ装置がリーダ装置の通信エリア内にいるにも関わらず、通信エリア外であると判定(誤判定)される確率を低くすることができる。また、第2のエリア退出判定を行うことにより、すでにタグ装置がリーダ装置の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を短くすることができる。このようにして、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0011】
また、本発明のタグ装置では、前記第2のエリア退出判定部は、前記第2の基準期間の間、前記リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する構成を有している。
【0012】
この構成により、第2のエリア退出判定で、第2の基準期間の間、リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、リーダ装置の通信エリアから退出したと判定される。このような第2のエリア退出判定を行うことによっても、すでにタグ装置がリーダ装置の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を短くすることができる。
【0013】
また、本発明のタグ装置では、前記第2の基準期間より短い第3の基準期間の間、前記リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第3のエリア退出判定部を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、第3のエリア退出判定によって、第3の基準期間(第2の基準期間より短い期間)の間、リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、リーダ装置の通信エリアから退出したと判定される。このような第3のエリア退出判定を行うことにより、すでにタグ装置がリーダ装置の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1や第2のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を、さらに短くすることができる。
【0015】
本発明の端末装置は、表示部と操作部を備えた端末装置であって、前記端末装置は、リーダ装置からの信号を受信する受信部と、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、を備え、前記エリア退出判定部は、前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、を備えた構成を有している。
【0016】
この端末装置によっても、上記と同様に、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0017】
本発明の通信システムは、リーダ装置とタグ装置を備えた通信システムであって、前記リーダ装置は、前記タグ装置へ信号を送信する送信部を備え、前記タグ装置は、前記リーダ装置からの信号を受信する受信部と、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、を備え、前記エリア退出判定部は、前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、を備えた構成を有している。
【0018】
このシステムによっても、上記と同様に、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0019】
本発明の方法は、タグ装置で用いられるエリア退出判定方法であって、前記エリア退出判定方法は、リーダ装置からの信号を受信したときに、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定することと、前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定することと、測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定を行うことと、を含み、前記エリア退出判定では、前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定と、前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定と、が行われる。
【0020】
この方法によっても、上記と同様に、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0021】
本発明のプログラムは、タグ装置で実行されるエリア退出判定用のプログラムあって、前記プログラムは、コンピュータに、リーダ装置からの信号を受信したときに、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する処理と、前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する処理と、測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定を行う処理と、を実行させるものであり、前記エリア退出判定では、前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定と、前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定と、が行われる。
【0022】
このプログラムによっても、上記と同様に、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、リーダ装置の通信エリアからの退出判定(エリア退出判定)において、通信エリア内での誤判定を削減するとともに、通信エリア外での誤判定を削減することができるという効果を有するタグ装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態における通信システム(リーダ装置とタグ装置)のブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるタグ装置の制御部のブロック図
【図3】本発明の第1の実施の形態における第1のエリア退出判定の説明図
【図4】本発明の第1の実施の形態における第2のエリア退出判定の説明図
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるタグ装置の制御部のブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態における第3のエリア退出判定の説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の通信システムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、児童や高齢者の見守りサービス等に用いられる通信システムの場合を例示する。
【0026】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の通信システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の通信システムを示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態の通信システム1は、リーダ装置2とタグ装置3で構成される。リーダ装置2は、自宅や公園などに設置される。タグ装置3は、見守り対象者(児童や高齢者)が所持する携帯型の端末装置である。
【0027】
図1に示すように、リーダ装置2には、タグ装置3へ信号を送信する送信部4と、タグ装置3からの信号を受信する受信部5が備えられている。また、リーダ装置2には、各部の動作の制御(送信制御や受信制御など)を行う制御部6が備えられている。
【0028】
タグ装置3には、リーダ装置2へ信号を送信する送信部7と、リーダ装置2からの信号を受信する受信部8が備えられている。また、タグ装置3には、リーダ装置2へ送信するデータ(送信データ)を生成する送信データ生成部9と、リーダ装置2から受信したデータ(受信データ)を格納する受信データ格納部10が備えられている。さらに、タグ装置3には、液晶画面などの表示部11と、入力ボタンなどの操作部12が備えられている。なお、表示部11と操作部12は、タッチパネル等を利用することにより、一体とされてもよい。
【0029】
このタグ装置3にも、各部の動作の制御を行う制御部13が備えられている。図2は、制御部13の機能を説明するための機能ブロック図である。図2に示すように、制御部13は、リーダ装置2からの信号の受信強度(RSSI値)を測定する受信強度測定部14と、リーダ装置2からの信号を連続して受信している期間または受信していない期間を測定する期間測定部15を備えている。また、制御部13は、測定した受信強度と期間に基づいて、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアに進入したか退出したかを判定するエリア判定部16を備えている。
【0030】
エリア判定部16は、測定した受信強度と期間に基づいて、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアに進入したか否かを判定するエリア進入判定部17を備えている。エリア進入判定部17は、リーダ装置2から所定の基準強度(例えば、−75dBm)以上の受信強度の信号を、所定の基準期間(例えば、10秒)の間、連続して受信した場合に、リーダ装置2の通信エリアに「進入」したと判定する。
【0031】
また、エリア判定部16は、測定した受信強度と期間に基づいて、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアから退出したか否かを判定する第1のエリア退出判定部18と第2のエリア退出判定部19を備えている。第1のエリア退出判定部18は、リーダ装置2から所定の第1の基準強度(例えば、−75dBm)以上の受信強度の信号を、所定の第1の基準期間(例えば、30秒)の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。例えば、図3の例では、第1の基準期間の間(t8〜t10までの間)、第1の基準強度(−75dBm)以上の受信強度の信号を連続して受信していない。そのため、第1の基準期間が経過したとき(t11のとき)に「退出」と判定される。
【0032】
また、第2のエリア退出判定部19は、リーダ装置2から所定の第2の基準強度(例えば、−85dBm)以上の受信強度の信号を、所定の第2の基準期間(例えば、10秒)の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。例えば、図4の例では、第2の基準期間の間(t8〜t9までの間)、第2の基準強度(−85dBm)以上の受信強度の信号を連続して受信していない。そのため、第2の基準期間が経過したとき(t10のとき)に「退出」と判定される。
【0033】
この場合、第1のエリア退出判定部18と第2のエリア退出判定部19のいずれかで「退出」と判定されると、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアから退出したと判定(総合的に判定)されることになる。例えば、図3および図4の例では、第1のエリア退出判定では、t11のときに「退出」と判定され、t10のときには「退出」と判定されないが、第2のエリア退出判定では、t10のときに「退出」と判定される。したがって、この場合には、t10のときに「退出」と総合的に判定されることになる。
【0034】
図2に戻って、制御部13の説明を続ける。上記のようなエリア判定(エリア進入判定やエリア退出判定)の判定結果は、「エリア判定状況」としてエリア判定状況管理部20で管理される。「エリア判定状況」には、例えば「進入判定中」「滞在中」「退出判定中」「退出」などが含まれる。表示制御部21は、表示部11に「進入判定中」「滞在中」「退出判定中」「退出」などを表示させる制御を行う。
【0035】
エリア判定に用いられる基準強度や基準期間のデータは、基準格納部22に格納されている(図2参照)。そして、制御部13には、基準格納部22に格納されている基準強度や基準期間を設定するための基準設定部23が備えられている。例えば、複数のリーダ装置2が設置される場合、この基準設定部23により、エリア判定に用いられる基準強度や基準期間を、リーダ装置2ごとに設定することができる。
【0036】
また、基準設定部23は、第1の基準強度に基づいて第2の基準強度を自動的に設定してもよい。例えば、第2の基準強度を、第1の基準強度から−10dBmしたものに自動的に設定してもよい。また、基準設定部23は、第1の基準期間に基づいて第2の基準期間を自動的に設定してもよい。例えば、第2の基準期間を、第1の基準期間から−20秒したものや、第一の基準期間を3分の1の期間にしたものに自動的に設定してもよい。この場合、第1の基準強度や第1の基準期間は、ユーザが手動で設定(指定)する。
【0037】
さらに、基準設定部23は、エリア退出判定に用いられる基準強度や基準期間を、サービス毎に設定することもできる。例えば、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアを「通過」したことを検出することが重要なサービスの場合には、エリア退出判定に用いられる基準強度や基準期間を厳しい設定値(基準強度:高、基準期間:長)に設定する。また、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアに「滞在」していることを検出することが重要なサービスの場合には、エリア退出判定に用いられる基準強度や基準期間を緩い設定値(基準強度:低、基準期間:短)に設定する。
【0038】
また、基準設定部23は、エリア進入判定に用いられる基準強度や基準期間と、エリア退出判定に用いられる基準強度や基準期間とを、それぞれ異なる値に設定してもよい。例えば、エリア進入判定に用いられる基準強度や基準期間を厳しい設定値(基準強度:高、基準期間:短)に設定すると、「通過」を検知しやすくなる。そして、エリア退出判定に用いられる基準強度や基準期間を緩い設定値(基準強度:低、基準期間:長)に設定すると、「滞在」しているときの誤判定を減らすことができる。
【0039】
なお、複数のリーダ装置2が設置される場合、エリア判定(エリア進入判定やエリア退出判定)は、リーダID(リーダ装置2ごとに設定される)を用いて、リーダ装置2ごとに行うことができる。例えば、「リーダ装置A:エリアA、リーダ装置B:エリアB、リーダ装置C:エリアC、・・・」などのように、リーダ装置2ごとにエリア判定を行うことができる。これにより、複数のリーダ装置2の通信エリアが重なったとしても、リーダ装置2ごとに別々のエリアとしてエリア判定を行うことができる。
【0040】
また、複数のリーダ装置2が設置される場合、リーダ装置2をグループ分けし、グループごとにエリア判定を行うこともできる。例えば、「リーダ装置A〜C:エリアA、リーダ装置D〜F:エリアB、・・・」などのように、グループごとにエリア判定を行うことができる。これにより、一つのリーダ装置2では作れないようなエリア(例えば、通路や道路に沿うようなエリア)を設置することができる。
【0041】
以上のように構成された通信システム1について、図面を参照してその動作を説明する。ここでは、図3と図4を参照しながら、本発明の特徴的な動作である「第1のエリア退出判定」と「第2のエリア退出判定」を中心に説明する。
【0042】
図3は、「第1のエリア退出判定」の説明図である。図3に示すように、「第1のエリア退出判定」では、リーダ装置2から第1の基準強度(例えば、−75dBm)以上の受信強度の信号を、第1の基準期間(例えば、30秒)の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。
【0043】
図3の例では、t5のときに、リーダ装置2からの信号の受信強度が一時的に低くなっているが、この場合、t6のときに、リーダ装置2からの信号の受信強度が第1の基準強度(例えば、−75dBm)以上の高い値に戻っているので、t5ではリーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定(誤判定)されない。この「第1のエリア退出判定」では、第1の基準期間の間(t8〜t10までの間)、第1の基準強度(−75dBm)以上の受信強度の信号を連続して受信していない。そのため、第1の基準期間が経過したとき(t11のとき)に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定される。
【0044】
図4は、「第2のエリア退出判定」の説明図である。図4に示すように、「第2のエリア退出判定」では、リーダ装置2から第2の基準強度(例えば、−85dBm)以上の受信強度の信号を、第2の基準期間(例えば、10秒)の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。
【0045】
図4の例では、第2の基準期間の間(t8〜t9までの間)、第2の基準強度(−85dBm)以上の受信強度の信号を連続して受信していない。そのため、第2の基準期間が経過したとき(t10のとき)に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定される。この図3および図4の例では、第1のエリア退出判定では、t11のときに「退出」と判定され、第2のエリア退出判定では、t10のときに「退出」と判定される。したがって、この場合には、t10のときに、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと総合的に判定されることになる。
【0046】
このような本発明の第1の実施の形態の通信システム1によれば、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0047】
すなわち、本実施の形態では、タグ装置3では、リーダ装置2からの信号の受信強度が測定されるとともに、リーダ装置2からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間が測定される。そして、測定した受信強度と期間に基づいて、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定が行われる。この場合、第1のエリア退出判定により、リーダ装置2から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから退出したと判定される。また、第2のエリア退出判定により、リーダ装置2から第2の基準強度(第1の基準強度より小さい強度)以上の受信強度の信号を、第2の基準期間(第1の基準期間より短い期間)の間、連続して受信しなかった場合にも、リーダ装置2の通信エリアから退出したと判定される。
【0048】
このような本発明の第1の実施の形態によれば、第1のエリア退出判定を行うことにより、タグ装置3がリーダ装置2の通信エリア内にいるにも関わらず、通信エリア外であると判定(誤判定)される確率を低くすることができる。また、第2のエリア退出判定を行うことにより、すでにタグ装置3がリーダ装置2の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を短くすることができる。このようにして、エリア内での誤判定の削減とエリア外での誤判定の削減を、同時に実現することが可能になる。
【0049】
なお、以上の説明では、第2のエリア退出判定で、リーダ装置2から第2の基準強度(第1の基準強度より小さい強度)以上の受信強度の信号を、第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、リーダ装置2の通信エリアから退出したと判定する場合について説明したが、第2のエリア退出判定では、第2の基準期間の間、リーダ装置2からの信号を連続して受信しなかった場合に、リーダ装置2の通信エリアから退出したと判定してもよい。
【0050】
このような第2のエリア退出判定によっても、すでにタグ装置3がリーダ装置2の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を短くすることができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態の通信システム1について説明する。ここでは、第2の実施の形態の通信システム1が、第1の実施の形態と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0052】
図5は、第2の実施の形態のタグ装置3の制御部13の機能を説明するための機能ブロック図である。図5に示すように、第2の実施の形態では、制御部13のエリア判定部16に、第3のエリア退出判定部24が備えられている。第3のエリア退出判定部24は、所定の第3の基準期間(例えば、5秒)の間、リーダ装置2からの信号を連続して受信しなかった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。
【0053】
図6は、「第3のエリア退出判定」の説明図である。図6に示すように、「第3のエリア退出判定」では、第3の基準期間(例えば、5秒)の間、リーダ装置2からの信号を連続して受信しなくなった場合に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定する。図6の例では、第3の基準期間の間(t8の間)、リーダ装置2からの信号を受信していない。そのため、第3の基準期間が経過したとき(t9のとき)に、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと判定される。
【0054】
なお、第1の実施の形態と同様、第1のエリア退出判定では、t11のときに「退出」と判定され(図3参照)、第2のエリア退出判定では、t10のときに「退出」と判定される(図4参照)。そして、上述のように、第3のエリア退出判定では、t9のときに「退出」と判定される。したがって、この場合には、t9のときに、リーダ装置2の通信エリアから「退出」したと総合的に判定されることになる。
【0055】
このような本発明の第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0056】
その上、本実施の形態では、第3のエリア退出判定によって、第3の基準期間(第2の基準期間より短い期間)の間、リーダ装置2からの信号を連続して受信しなかった場合に、リーダ装置2の通信エリアから退出したと判定される。このような第3のエリア退出判定を行うことにより、すでにタグ装置3がリーダ装置2の通信エリア外に退出しているにもかかわらず、(第1や第2のエリア退出判定により)まだ通信エリア内にいると判定されると判定(誤判定)されてしまう期間を、さらに短くすることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかるタグ装置は、リーダ装置の通信エリアからの退出判定(エリア退出判定)において、通信エリア内での誤判定を削減するとともに、通信エリア外での誤判定を削減することができるという効果を有し、児童や高齢者の見守りサービスまたは広告配信サービス等に適用され、有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 通信システム
2 リーダ装置
3 タグ装置
4 送信部
5 受信部
6 制御部
7 送信部
8 受信部
9 送信データ生成部
10 受信データ格納部
11 表示部
12 操作部
13 制御部
14 受信強度測定部
15 期間測定部
16 エリア判定部
17 エリア進入判定部
18 第1のエリア退出判定部
19 第2のエリア退出判定部
20 エリア判定状況管理部
21 表示制御部
22 基準格納部
23 基準設定部
24 第3のエリア退出判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ装置からの信号を受信する受信部と、
前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、
前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、
測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、
を備え、
前記エリア退出判定部は、
前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、
前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、
を備えたことを特徴とするタグ装置。
【請求項2】
前記第2のエリア退出判定部は、前記第2の基準期間の間、前記リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定することを特徴とする請求項1に記載のタグ装置。
【請求項3】
前記第2の基準期間より短い第3の基準期間の間、前記リーダ装置からの信号を連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第3のエリア退出判定部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のタグ装置。
【請求項4】
表示部と操作部を備えた端末装置であって、
前記端末装置は、
リーダ装置からの信号を受信する受信部と、
前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、
前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、
測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、
を備え、
前記エリア退出判定部は、
前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、
前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、
を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項5】
リーダ装置とタグ装置を備えた通信システムであって、
前記リーダ装置は、
前記タグ装置へ信号を送信する送信部を備え、
前記タグ装置は、
前記リーダ装置からの信号を受信する受信部と、
前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する受信強度測定部と、
前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する期間測定部と、
測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定部と、
を備え、
前記エリア退出判定部は、
前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定部と、
前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定部と、
を備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項6】
タグ装置で用いられるエリア退出判定方法であって、
前記エリア退出判定方法は、
リーダ装置からの信号を受信したときに、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定することと、
前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定することと、
測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定を行うことと、
を含み、
前記エリア退出判定では、
前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定と、
前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定と、
が行われることを特徴とするエリア退出判定方法。
【請求項7】
タグ装置で実行されるエリア退出判定用のプログラムあって、
前記プログラムは、コンピュータに、
リーダ装置からの信号を受信したときに、前記リーダ装置からの信号の受信強度を測定する処理と、
前記リーダ装置からの信号を連続して受信している期間と受信していない期間を測定する処理と、
測定した前記受信強度と前記期間に基づいて、前記リーダ装置の通信エリアから退出したか否かを判定するエリア退出判定を行う処理と、
を実行させるものであり、
前記エリア退出判定では、
前記リーダ装置から第1の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間の間、連続して受信しなくなった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第1のエリア退出判定と、
前記リーダ装置から前記第1の基準強度より小さい第2の基準強度以上の受信強度の信号を、第1の基準期間より短い第2の基準期間の間、連続して受信しなかった場合に、前記リーダ装置の通信エリアから退出したと判定する第2のエリア退出判定と、
が行われることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92864(P2013−92864A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233718(P2011−233718)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタス端末技術)委託事業
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】