説明

タッチスイッチ

【課題】操作面の複数の操作領域のうち実際に操作された操作領域を確実に検出することができるタッチスイッチを提供する。
【解決手段】本発明は、複数の操作領域を有する操作面1と、操作面1への物体の接近によって生じる静電容量の変化を検出し、静電容量の変化量に応じた出力電圧を出力する複数の静電容量センサ2と、複数の静電容量センサ2の出力値に基づいて操作対象の操作領域を判定する判定部3とを備え、判定部3は、複数の静電容量センサ2のうち、第1操作領域に対応する静電容量センサ2の第1出力値が所定の基準値以上の場合であっても、第1出力値に対する他の操作領域に対応する静電容量センサ2の出力値の出力比が所定の基準比以上のときは、第1操作領域を非操作対象と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチスイッチに関し、より詳細には、操作面に複数の操作領域を有するタッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の静電容量式のタッチスイッチは、タッチスイッチの操作面への操作者の手の接近によって生じる静電容量の変化量を検出し、変化量に対応する出力電圧値が所定の閾値を超えた場合に、タッチスイッチの操作を検出していた。
【0003】
ところで、静電容量の変化量は、タッチスイッチを操作する手の状態によって大きく異なることがある。例えば、手袋を装着した手でタッチスイッチを操作した場合に生じる静電容量の変化量は、素手でタッチスイッチを操作した場合に生じる静電容量の変化量によりも小さい。
【0004】
このため、素手でタッチスイッチを操作する場合に検出される静電容量の変化量に合わせて閾値を高く設定すると(即ち、感度を低く設定すると)、手袋を装着した手でタッチスイッチを操作しても、操作が検出されないことがある。一方、手袋を装着した手でタッチスイッチを操作する場合に検出される静電容量の変化量に合わせて閾値を低く設定すると(即ち、感度を高く設定すると)、実際にはタッチスイッチを操作していないにも拘わらず、タッチスイッチの操作が誤検出されてしまうことがある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1に記載の技術では、タッチスイッチを素手で操作する場合であっても、手袋を装着した手で操作する場合であっても、タッチスイッチの操作を確実に検出するために、検出感度を高感度から低感度へ変化させながら操作を検出している。
【0006】
【特許文献1】特開2007−27034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タッチスイッチの操作面には複数の操作領域が設けられていることが多い。静電容量式のタッチスイッチでは、実際に操作者の手が接触した操作対象の操作領域だけでなく、その周囲の操作領域においても静電量が変化する。このため、複数の操作領域を有するタッチスイッチにおいて、検出感度を変化させながら操作を検出しようとすると、操作対象ではない操作領域についても操作を誤検出してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、操作面の複数の操作領域のうち実際に操作された操作領域を確実に検出することができるタッチスイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のタッチスイッチは、複数の操作領域を有する操作面と、操作面への物体の接近によって生じる物理量の変化を検出し、物理量の変化量に応じた出力値を出力する複数の検出手段と、複数の検出手段の出力値に基づいて操作対象の操作領域を判定する判定手段と、を備え、判定手段は、複数の検出手段のうち、第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値が所定の基準値以上の場合であっても、第1出力値に対する他の操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が所定の基準比以上のときは、第1操作領域に対する操作ではないと判定することを特徴としている。
【0010】
本発明の発明者は、タッチスイッチの操作面の一つの操作領域に対応する検出手段の出力値に対する、他の操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が、タッチスイッチを操作する手の状態によらず、実質的に一定であることを見出した。
【0011】
本発明は、かかる出力比を検出の有無の判定に利用することによって、誤検出の発生を防止し、操作面の複数の操作領域のうち実際に操作された操作領域を確実に検出することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、判定手段は、複数の検出手段のうち、第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値が所定の基準値以上の場合であって、かつ、第1出力値に対する、第1操作領域に隣接する全ての操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が所定の基準比未満であるときに、第1操作領域に対する操作である判定する。
【0013】
このように、第1出力値が基準値以上という第1条件に加えて、出力比が所定の基準比未満である第2の条件を満たした場合に、第1操作領域に対する操作であると判定することにより、誤検出の発生を防止し、操作面の複数の操作領域のうち実際に操作された操作領域を確実に検出することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、基準比は、操作領域の組合せごとに独立に設定される。
このように、基準比を操作領域の組合せごと独立に設定することによって、操作領域の範囲を、操作領域ごとに個別に設定することができる。これにより、検出手段の配置による、操作領域の配置の制約を緩和することができる。例えば、検出手段を操作領域の直下から離れた場所に設置することも可能となり検出手段を等間隔に配置した場合であっても、操作領域を非等間隔に配置させることが可能となる。また、操作領域を等間隔に配置したまま、検出手段を非等間隔に配置させることも可能となる。或いは、検出手段及び操作領域を非等間隔配置させることも可能になる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、操作面は、対応する検出手段を設けない第2操作領域を含み、判定手段は、第2操作領域の外側に第2操作領域を挟むように配置された2以上の検出手段の出力値が所定の基準値以上であり、かつ、これらの出力値どうしの比が所定の基準範囲内であるときに、第2操作領域を操作対象と判定する。
【0016】
このように、第2操作領域の外側に第2操作領域を挟むように配置された2以上の検出手段の出力値どうしの比を利用することによって、第2操作領域の直下に検出手段を設けることなく、第2操作領域に対する操作を判定することができる。これにより、操作領域の数よりも少ない数の検出手段を使用して、タッチスイッチを構成することができる。
例えば、第2操作領域を挟んで検出手段(a)及び検出手段(b)が配置されている場合、判定手段は、検出手段(a)の出力値(a)に対する検出手段(b)の出力値(b)の比である第1出力比(b/a)が所定の第1基準範囲内であり、且つ、出力値(b)に対する出力値(a)の比である第2出力比(a/b)が所定の第2基準範囲内であるときに、第2操作手段が操作対象であると判断するのがよい。
【0017】
また、本発明において好ましくは、第1操作領域は、操作面の外縁に配置され、第1操作領域に隣接しかつ第1操作領域よりも操作面の内側に第3操作領域が配置され、判定手段は、第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値に対する、第3操作領域に対応する第3検出手段の第3出力値の出力比が所定の下限基準比以下であり、かつ、第3出力値に対する第1出力値の出力比が所定の上限基準比以上のときに、第1操作領域よりも外側に物体が接触していると判定する。
【0018】
このように、操作面の外縁に配置された第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値と、第1操作領域の内側の第3操作領域に対応する第3検出手段の第3出力値との出力比を利用することによって、操作面の外側に検出手段を設けることなく、操作面の外側に物体が接触していることを判定することができる。これにより、誤検出の一層の抑制を図ることができる。或いは、検出手段が配置された外側に操作領域を配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明のタッチスイッチによれば、操作面の複数の操作領域のうち実際に操作された操作領域を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図であり、(b)は、(a)のX−X線に沿った断面模式図である。
【図2】は、操作者の手が操作領域「A」に接触した場合の各操作領域に対応する静電容量センサの出力を示すグラフである。
【図3】操作者の手が操作領域「A」に接触した場合の、操作対象である操作領域「A」の出力電圧に対する、他の操作領域の出力電圧の出力比の例を示すグラフである。
【図4】(a)は、操作者の手が操作領域「E」に接触した場合の、操作対象である操作領域「E」の出力電圧に対する、他の操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比の例を示すグラフであり、(b)は、操作者の手が操作領域「E」以外の操作領域に接触した場合の、操作対象でない操作領域「E」の出力電圧に対する、「E」以外の操作者の指が操作領域「A」〜「D」、「F」〜「K」に接触した場合の、各接触している操作領域の出力電圧の出力比の例を示すグラフである。分子が接触した操作領域を示す。
【図5】第1実施形態によるタッチスイッチにおける操作対象の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】第2実施形態によるタッチスイッチにおける操作対象の判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】(a)は、本発明の第3実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図であり、(b)は、(a)のX−X線に沿った断面模式図である。
【図8】第3実施形態の変形例のタッチスイッチの操作面の模式図である。
【図9】(a)は、本発明の第3実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図であり、(b)は、(a)のX−X線に沿った断面模式図である。
【図10】(a)は、図9に示したタッチスイッチの出力電圧を示すグラフであり、(b)は、出力比を示すグラフである。
【図11】(a)は、本発明の第4実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図であり、(b)は、(a)のX−X線に沿った断面模式図である。
【図12】(a)は、図11に示したタッチスイッチの出力電圧を示すグラフであり、(b)は、出力比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して、本発明のタッチスイッチの実施形態を説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態によるタッチスイッチの一例を説明する。図1(a)は、第1実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図である。図1(b)は、図1(a)のX−X線に沿った断面図である。
【0022】
図1(a)に示すように、第1実施形態によるタッチスイッチでは、その操作面1が、マトリクス状に配置された9つの操作領域「A」〜「H」及び「K」から構成されている。また、図1(b)に示すように、このタッチスイッチは、検出手段として、操作面1への物体の接近によって生じる静電容量の変化を検出し、その静電容量の変化量に応じた出力電圧値を出力する複数の静電容量センサ2と、複数の静電容量センサ2の出力電圧値に基づいて操作対象の操作領域を判定する判定部3とを備えている。
【0023】
ここで、図2に、操作者の手が操作面の操作領域「A」に触れた場合の、各操作領域にそれぞれ対応する静電容量センサ2の出力例を示す。図2中、操作面に素手で触れた場合の出力を白抜きの棒グラフで示し、手袋を装着した手で触れた場合の出力を、ハッチングを付した棒グラフで示す。
【0024】
図2に白抜きの棒グラフで示すように、素手で触れた場合では、操作対象である操作領域「A」に対応する出力電圧が最も高い。したがって、操作領域「A」の出力電圧よりも低く、かつ、他の操作領域の出力電圧よりも高い電圧を閾値「W」として設定すれば、この閾値「W」よりも高い出力電圧を示す操作領域「A」だけが操作対象と判定される。
【0025】
ところで、図2にハッチングを付した棒グラフで示すように、手袋を装着した手で触れた場合も、操作対象である操作領域「A」に対応する出力電圧が最も高い。しかしながら、この場合の操作領域「A」の出力電圧は、閾値「W」よりも低い。このため、手袋を装着した手でタッチスイッチを操作した場合、閾値W未満となる。その結果、手袋を装着した手による操作を検出することができない。
【0026】
一方、手袋を装着した手で操作した場合の操作領域「A」の出力電圧よりも低い電圧を閾値「X」として設定すると、今度は、素手で操作した場合の操作領域「E」の出力電圧も閾値「X」以上となる。その結果、素手で「A」のタッチスイッチを操作した場合に、操作領域「A」に対する操作が検出されるだけでなく、操作していない操作領域「E」に対する操作も誤検出される。
【0027】
このように、図2に示す例では、操作領域「A」を操作する手の手袋の装着の有無に関係なく、常に操作領域「A」だけを検出することができる閾値が存在しない。したがって、単に、各操作領域の静電容量センサの出力電圧の絶対値と閾値とを比較するだけでは、タッチスイッチを操作する手の状態に関係なく、確実に操作対象の操作領域を判定することが困難な場合があることがわかる。そこで、本発明では、各操作領域の静電量センサの出力電圧に加えて、以下に説明するように、操作領域間の出力電圧の比率を利用して、操作対象の操作領域を判定する。
【0028】
ここで、図3に、操作者が操作領域「A」に接触した場合の、操作対象である操作領域「A」の出力電圧に対する、他の操作領域「B」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比の例を示す。図3(a)の白抜きの各棒グラフは、タッチスイッチを素手で操作した場合の出力電圧の出力比を示す。また、図3(a)のハッチングを付した棒グラフは、手袋を装着した手で操作した場合の出力比を示す。
【0029】
さらに、図4(a)に、操作者が操作領域「E」に接触した場合の、操作対象である操作領域「E」の出力電圧に対する、他の操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比の例を示す。図4(a)の白抜きの各棒グラフは、素手で操作した場合の出力比を示す。また、図4(a)のハッチングを付した棒グラフは、手袋を装着した手で操作した場合の出力比を示す。
【0030】
図3及び図4(a)から、操作対象の操作領域に関係なく、素手で操作した場合の出力比と、手袋を装着した手で操作した場合の出力比との間には大きな差が無いことが分かる。すなわち、各出力電圧比は、タッチスイッチを操作する手の状態に関係なく、実質的に一定の値を示す。
【0031】
次に、図4(b)に、操作者の手が操作領域「E」以外に接触した場合の、操作対象でない操作領域「E」の出力電圧に対する、「E」以外の操作者の手が操作領域「A」〜「D」、「F」〜「K」に接触した場合の、各接触している操作領域の出力電圧の出力比の例を示すグラフを示す。出力比の分子が、接触した操作領域の出力を示す。
図4の白抜きの各棒グラフは、素手で操作した場合の出力比を示し、ハッチングを付した棒グラフは、手袋を装着した手で操作した場合の出力比を示す。
【0032】
図4(a)と図4(b)とを比較すると、タッチスイッチを操作する手の状態に関係なく、図4(b)に示す「E」以外の操作領域に接触した場合の、操作領域「E」に対する、接触している操作領域の出力電圧の出力比は、図4(a)に示す「E」の操作領域に接触した場合の「E」の出力電圧に対する他の操作領域の出力電圧の出力比よりも遥かに大きい。すなわち、タッチスイッチを操作する手の状態に関係なく、接触している操作領域の出力電圧を分母とする場合の出力比と、接触していない操作領域の出力を分母とする場合の出力比との間には大きな差がある。
【0033】
したがって、出力比が大きい場合(例えば、出力比が1以上の場合)には、その出力比の分母に対応する操作領域が接触していない(操作対象ではない)ことが分かる。このように、出力比を利用することにより、タッチスイッチを操作する手の状態に関係なく、操作対象の操作領域を確実に判定することができる。
【0034】
次に、図5のフローチャートを参照して、第1実施形態によるタッチスイッチにおける操作対象の判定処理の例を説明する。ここでは、操作領域「A」が素手で操作された場合を説明する。
【0035】
まず、操作領域「A」の出力電圧が所定の基準値「X」を超えているか否かが判定される(Sa1)。ここで、基準値「X」は、手袋を装着した手で操作する場合のように、静電容量センサ2の出力電圧が低くなる傾向がある条件下でも、操作を検出できるように低い値(即ち、高感度)を設定することが望ましい。
【0036】
操作領域「A」の出力電圧が基準値「X」以下である場合には、操作領域「A」は操作対象ではない(OFF)と判定される(Sa7)。そして、次の操作領域「B」についての判定処理へ進む。
【0037】
一方、図2に白抜き棒グラフで示すように、操作領域「A」の出力電圧が基準値「X」を超えている場合には、続いて、操作領域「A」の出力電圧に対する、他の操作領域「B」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比(B/A〜H/A及びK/A)が基準比「R」を超えているか否かが順次に判定される(Sa2〜Sa5)。
【0038】
ここで、図3では、基準比「R」は、他の操作領域「B」〜「H」及び「K」について一律の値を設定しているが、他の操作領域ごとに独立の値を設定してもよい。基準比の値は、操作対象となった操作領域の出力電圧に対する、他の操作領域の出力電圧の出力比の測定値に、所定のマージンを加えた値とするとよい。また、基準値「X」及び基準比「R」は、メモリ4に参照テーブルとして記憶させたものを読み出して使用するとよい。また、静電容量センサの出力特性にばらつきがある場合に、操作領域ごとに個別の基準比を設定することによって、静電容量センサの出力特性のばらつきを補償することができる。また、基準比を操作領域の組合せごとに個別に設定することによって、操作領域の範囲を任意に設定できるので、操作領域毎に操作範囲を大きさ任意に設定したり、静電容量センサを操作範囲の直下から離れた位置に配置したりすることも可能になる。
【0039】
図3に白抜き棒グラフで示すように、操作領域「A」の出力電圧に対する、他の操作領域「B」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比は、いずれも、基準比「R」未満である。その結果、操作領域「A」が操作対象(ON)であると判定される(Sa6)。
【0040】
続いて、操作領域「B」〜「D」についても、同様に判定処理を行う。そして、操作領域「B」〜「D」は、いずれも操作対象ではない(OFF)と判定される。
【0041】
ところで、図2に白抜き棒グラフで示すように、操作領域「E」の出力電圧も基準値「X」を超えている(Se1)。この場合、続いて、操作領域「E」の出力電圧に対する、他の操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比(B/A〜H/A及びK/A)が基準比「R」を超えているか否かが順次に判定される(Se2〜Se5)。
なお、操作領域「E」についての基準比「R」の値は、操作領域「A」についての基準比「R」と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、他の操作領域ごとに一律の値でも良いし、独立の値を設定してもよい。
【0042】
操作領域「A」に接触した場合の操作領域「E」の出力電圧に対する、操作領域「A」の出力電圧の出力比は、図4(b)の白抜き棒グラフのA/Eが(これは、図3に白抜き棒グラフのE/Aの逆数と同じ)基準比「R」を超えている。このため、操作領域「E」が操作対象ではない(OFF)と判定される(Se7)。これにより、操作領域「E」が操作対象として誤検出されることが回避される。
【0043】
続いて、操作領域「F」〜「H」及び「K」についても、同様に判定処理を行う。そして、操作領域「F」〜「H」及び「K」についても、操作対象ではない(OFF)と判定される。
【0044】
したがって、操作領域「A」に対する操作だけが確実に検出される。このように、各操作領域の出力電圧と出力比との両方に着目してタッチスイッチに対する操作を検出するため、実際に操作された操作領域を確実に検出することができる。
なお、タッチスイッチが検出する操作される操作領域は1つに限定されず、同時に2つ以上の操作領域が操作される場合にも適用することができる。
また、図1の操作領域は升目に整然と配置した例であるが、升目以外の配置、例えば円周上や千鳥状に配置しても良く、また操作領域を等間隔で整然と配置する必要は無い。
なお、図5のフローチャートはAから順に判定を行っているが、判定処理順序はこれに限られる物では無い。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるタッチスイッチの一例を説明する。第2実施形態によるタッチスイッチの構成は、図1に示した第1実施形態によるものと同じである。第2実施形態では、判定部3は、複数の静電容量センサ2(検出手段)のうち、ある操作領域に対応する静電容量センサの出力値が所定の基準値「X」以上の場合であって、かつ、その出力値に対する、その操作領域に隣接する全ての操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が所定の基準比「R」未満であるときに、その操作領域に対する操作である判定する。
【0046】
以下、図6のフローチャートを参照して、第2実施形態のタッチスイッチにおける判定処理について説明する。
【0047】
まず、上述の第1実施形態と同様に、操作領域「A」の出力電圧が所定の基準値「X」を超えているか否かを判定する(図6のSa1)。
【0048】
操作領域「A」の出力電圧が基準値「X」以下である場合には、操作領域「A」は操作対象ではない(OFF)と判定する(Sa6)。そして、次の操作領域「B」についての判定処理へ進む。
【0049】
一方、操作領域「A」が素手で操作された場合を説明すると、図2に白抜き棒グラフで示すように、操作領域「A」の出力電圧が基準値「X」を超えている場合には、続いて、操作領域「A」の出力電圧に対する、操作領域「A」に隣接する全ての操作領域「B」、「D」及び「E」の出力電圧の出力比(B/A、D/A及びE/A)が基準比「R」を超えているか否かを順次に判定する(Sa2〜Sa4)。
【0050】
図3に白抜き棒グラフで示すように、操作領域「A」の出力電圧に対する、隣接する操作領域「B」、「D」及び「E」の出力電圧の出力比は、いずれも、基準比「R」未満である。その結果、操作領域「A」が操作対象(ON)であると判定され(Sa5)。
【0051】
続いて、操作領域「B」〜「D」について判定処理を行う。操作領域「B」の出力電圧が基準値「X」を超えている場合には、操作領域「B」の出力電圧に対する、隣接する操作領域「A」、「C」及び「D」〜「F」それぞれの出力電圧の出力比のみが基準比「R」と比較される。また、操作領域「C」の出力電圧が基準値「X」を超えている場合には、操作領域「C」の出力電圧に対する、隣接する操作領域「B」、「E」及び「F」それぞれの出力電圧の出力比のみが基準比「R」と比較される。さらに、操作領域「D」の出力電圧「X」を超えている場合には、操作領域「C」の出力電圧に対する、隣接する操作領域「A」、「B」、「E」、「G」及び「H」との出力比のみが基準比「R」と比較される。しかし、図2では「B」〜「D」は基準値「X」を超えていないので出力比の検査は行わない。
【0052】
続いて、操作領域「E」について判定処理を行う。図2に白抜き棒グラフで示す例では、操作領域「A」だけでなく、操作領域「E」の出力電圧も基準値「X」を超えている(Se1)。この場合、続いて、操作領域「E」の出力電圧に対する、隣接する全ての操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「K」の出力電圧の出力比(B/A〜H/A及びK/A)が基準比「R」を超えているか否かを順次に判定する(Se2〜Se5)。
【0053】
そして、隣接した全ての操作領域との出力比が基準比以下である場合には、操作領域「E」は操作対象である(ON)と判定される(Se6)。一方、隣接した何れかの操作領域との出力比が基準比を超えている場合には、操作領域「E」は操作対象ではない(OFF)と判定される(Se7)。
【0054】
図4(b)のA/Eに白抜き棒グラフで示す例では、操作領域「A」に接触した場合の操作領域「E」の出力電圧に対する、操作領域「A」の出力電圧の出力比は、基準比「R」を超えている。このため、操作領域「E」が操作対象ではない(OFF)と判定される(Se7)。これにより、操作領域「E」が操作対象として誤検出されることが回避される。
【0055】
続いて、操作領域「F」〜「H」及び「K」についても、同様に判定処理を行う。
【0056】
そして、隣接した全ての操作領域との出力比が基準比以下である場合には、操作領域「K」は操作対象である(ON)と判定される(Sk5)。一方、隣接した何れかの操作領域との出力比が基準比を超えている場合には、操作領域「K」は操作対象ではない(OFF)と判定される(Sk6)。
【0057】
このように、第2実施形態では、隣接する操作領域との出力比だけを基準比と比較する。このため、第2実施形態の判定処理は、他の全ての操作領域との出力比を基準比と比較する第1実施形態の判定処理よりも簡略である。このため、第2実施形態では、誤検出を回避しつつ、より効率よくタッチスイッチに対する操作を検出することができる。
また、第2実施形態では出力比を検査する対象を物理的に隣接する操作領域としているが、タッチスイッチの特性に応じて接触する操作領域の周辺で出力が所定量以上出ている操作領域を出力比を検査する対象に選んでも良い。
なお、タッチスイッチが検出する操作される操作領域は1つに限定されず、同時に2つ以上の操作領域が操作される場合にも適用することができる。
また、図1の操作領域は升目に整然と配置した例であるが、升目以外の配置、例えば円周上や千鳥状に配置しても良く、また、操作領域を等間隔で整然と配置する必要は無いことは実施形態1と同じである。
尚、図5のフローチャートはAから順に判定を行っているが、判定処理順序はこれに限られる物では無い。
【0058】
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第3実施形態によるタッチスイッチを説明する。
図7(a)は、第3実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図である。図7(b)は、図7(a)のX−X線に沿った断面図である。
【0059】
図7(b)に示すように、第3実施形態によるタッチスイッチにおいても、静電容量センサ2は、第1実施形態におけるものと同様に等間隔に配置されている。しかし、図7(a)に示すように、第3実施形態におけるタッチスイッチでは、各操作領域の面積は互いに等しくない。すなわち、操作面1の中央に配置した操作領域「E」の面積が拡張され、一方、その周囲の操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「G」の面積が縮小されている。
【0060】
このように、静電容量センサを等間隔に配置したまま、隣接する操作領域の境界を移動させるために、本実施形態では、以下のように、操作領域ごとに基準比を設定している。
すなわち、操作領域「E」の出力電圧に対する隣接する操作領域の出力電圧の出力比の基準比を、第1実施形態における基準比「R」よりも大きな値としている。例えば、図7(b)に示す操作領域「D」〜「F」の例では、操作領域「E」に接触したと判定する為の操作領域「E」の出力電圧に対する操作領域「D」の出力電圧の出力比「D/E」と比較する基準比及び操作領域「E」の出力電圧に対する操作領域「F」の出力電圧の出力比「F/E」と比較する基準比を、基準比「R」よりも大きくする。その一方で、操作領域「D」に接触したと判定する為の操作領域「D」の出力電圧に対する操作領域「E」の出力電圧の出力比「E/D」と比較する基準比及び操作領域「F」に接触したと判定する為の操作領域「F」の出力電圧に対する操作領域「E」の出力電圧の出力比「E/F」と比較する基準比を、基準比「R」よりも小さくする。
【0061】
また、図8に示すように、操作面1の中央に配置した操作領域「E」の面積のみを縮小し、一方、その周囲の操作領域「A」〜「D」、「F」〜「H」及び「G」の面積を、図1(a)に示したものと同じにしてもよい。その場合、操作領域「E」の周囲に非操作領域が形成される。非操作領域に手が触れても、操作は検出されない。
【0062】
静電容量センサを等間隔に配置したまま、図8に示す非操作領域を形成するため、変形例では、以下のように操作領域ごとに基準比を設定している。
すなわち、操作領域「E」に接触したと判定する為の操作領域「E」の出力電圧に対する隣接する操作領域の出力電圧の出力比の基準比を、第1実施形態における基準比「R」よりも小さな値としている。その一方で、操作領域「E」に隣接する各操作領域に接触したと判定する為の操作領域「E」に隣接する各操作領域の出力電圧を分母とする出力比は、基準比「R」のままである。
【0063】
このように、操作領域ごとに基準比を個別に設定することによって、各操作領域の配置を変更したり、非操作領域を形成したりすることができる。当実施形態では静電容量センサを等間隔とした場合を説明したが、静電容量センサの配置は、非等間隔でも良いし、操作領域の中央部直下で無くても良い。
【0064】
(第4実施形態)
次に、図9を参照して、本発明の第4実施形態によるタッチスイッチを説明する。
図9(a)は、第4実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図である。図9(b)は、図9(a)のX−X線に沿った断面図である。
【0065】
図9(a)に示すように、第4実施形態によるタッチスイッチには、操作面1に3つの操作領域「A」〜「C」が設けられている。そして、図9(b)に示すように、操作領域「A」及び「C」には、静電容量センサ2が配置されているが、操作領域「A」及び「C」の間の操作領域「B」には、静電容量センサは配置されていない。
【0066】
ここで、図10(A)に、タッチスイッチの操作面1内の手が触れる位置と、静電容量センサ2の出力電圧値との関係を示す。図10(A)のグラフ中の曲線Aは、操作領域「A」に対応する静電容量センサ2の出力電圧Aを表し、曲線Cは、操作領域「A」に対応する静電容量センサ2の出力電圧Cを表す。
【0067】
また、図10(B)に、タッチスイッチの操作面1内の手が触れる位置と、出力比との関係を示す。図10(B)のグラフ中の曲線(C/A)は、出力電圧Aに対する出力電圧Cの出力比(C/A)を表し、曲線(A/C)は、出力電圧Cに対する出力電圧Aの出力比(A/C)を表す。
【0068】
図10(A)に示すように、操作領域「B」に手が触れた場合、操作領域「A」の出力電圧A、及び操作領域「C」の出力電圧Cの両方が、基準値「X」以上となる。しかし、図10(B)に示すように、出力電圧Aに対する出力電圧Cの出力比(C/A)も、出力電圧Cに対する出力電圧Aの出力比(A/C)も、基準比「R」以上となる。このため、判定部3は、操作領域「A」、「C」に対する操作ではないと判定する。
【0069】
そして、判定部3は、出力比(C/A)及び出力比(A/C)がそれぞれ所定の基準範囲内(R1〜R2)であるとき、操作領域「B」に対する操作であると判定する。
なお、出力比(C/A)の基準範囲と、出力比(A/C)の基準範囲とは、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
このように、第4実施形態によるタッチスイッチでは、静電容量センサの数を操作領域の数よりも少なくすることができる。
なお、上記説明では、静電容量センサが2個の場合を説明したが、操作領域「B」の周辺の3個以上の静電容量センサで操作領域「B」の判定をしても良い、また、操作領域「A」,「B」,「C」は等間隔、等面積でも良いしそうで無くても良く、静電容量センサも操作領域「A」及び「B」の中央部直下に配置してもしなくても良い。
また、操作領域「B」を挟んで配置される静電容量センサは、操作領域「B」から見て必ずしも正反対(180°)の方向に配置しなくてもよい。例えば、2個の静電容量センサを、操作領域「B」の中央から見て所望の角度(例えば、120°)を成すように配置してもよい。
【0070】
(第5実施形態)
次に、図11を参照して、本発明の第5実施形態によるタッチスイッチを説明する。
図11(a)は、第5実施形態によるタッチスイッチの操作面の模式図であり、図11(b)は、図11(a)のX−X線に沿った断面図である。図11(a)に示す操作面1は、図1(a)に示した操作面の一部に相当する。また、図11(b)に示す断面図も、図1(b)に示す断面図の一部に相当する。
【0071】
図12(A)に、タッチスイッチに手が触れる位置と、静電容量センサ2の出力電圧値との関係を示す。図12(A)のグラフ中の曲線Dは、操作領域「D」に対応する静電容量センサ2の出力電圧Dを表し、曲線Eは、操作領域「E」に対応する静電容量センサ2の出力電圧Eを表す。
【0072】
また、図12(B)に、タッチスイッチに手が触れる位置と、出力比との関係を示す。図12(B)のグラフ中の曲線(D/E)は、出力電圧Eに対する出力電圧Dの出力比(D/E)を表し、曲線(E/D)は、出力電圧Dに対する出力電圧Eの出力比(E/D)を表す。
【0073】
図12(A)に示すように、操作面1の外側の領域「U」に手が触れた場合、操作領域「D」の出力電圧Dが基準値「X」以上となる。しかし、図12(B)に示すように、出力電圧Dに対する出力電圧Eの出力比(E/D)は基準比「R」以上となる。このため、判定部3は、操作領域「D」に対する操作ではないと判定する。
【0074】
そして、判定部3は、出力比(E/D)が下限基準比「R1」以下であり、かつ、出力比(D/E)が上限基準比「R2」以上であるときに、操作領域「D」よりも外側(U)に、手が接触していると判定する。下限基準比「R1」及び上限基準比「R2」は、それぞれ経験的に好適な値を設定することができる。このように、第5実施形態によるタッチスイッチでは、操作面の外側の領域に手等の物体が接触していることを検出することができる。
【0075】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、上述した第1実施形態では、検出手段として、静電容量センサを使用した例について説明したが、本発明では、検出手段はこれに限定されない。例えば、検出手段として、隣接するセンサに誘導出力する赤外線センサ及び電磁誘導センサを使用しても良い。また、検出手段として、温度センサやレーダを使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 操作面
2 静電容量センサ
3 判定部
4 メモリ
5 非操作領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の操作領域を有する操作面と、
前記操作面への物体の接近によって生じる物理量の変化を検出し、前記物理量の変化量に応じた出力値を出力する複数の検出手段と、
前記複数の検出手段の出力値に基づいて操作対象の操作領域を判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段は、前記複数の検出手段のうち、第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値が所定の基準値以上の場合であっても、前記第1出力値に対する他の操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が所定の基準比以上のときは、前記第1操作領域を非操作対象と判定する
ことを特徴とするタッチスイッチ。
【請求項2】
前記判定手段は、前記複数の検出手段のうち、第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値が所定の基準値以上の場合であって、かつ、前記第1出力値に対する、前記第1操作領域に隣接する全ての操作領域に対応する検出手段の出力値の出力比が所定の基準比未満であるときに、前記第1操作領域を操作対象と判定する
ことを特徴とする請求項1記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
前記基準比は、前記操作領域の組合せごとに独立に設定される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記操作面は、対応する検出手段を設けない第2操作領域を含み、
前記判定手段は、前記第2操作領域の外側に前記第2操作領域を挟むように配置された2以上の前記検出手段の出力値が所定の基準値以上であり、かつ、これらの出力値どうしの比が所定の基準範囲内であるときに、前記第2操作領域を操作対象と判定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記第1操作領域は、前記操作面の外縁に配置され、
前記第1操作領域に隣接しかつ前記第1操作領域よりも前記操作面の内側に第3操作領域が配置され、
前記判定手段は、前記第1操作領域に対応する第1検出手段の第1出力値に対する、前記第第3操作領域に対応する第3検出手段の第3出力値の出力比が所定の下限基準比以下であり、かつ、前記第3出力値に対する前記第1出力値の出力比が所定の上限基準比以上のときに、前記第1操作領域よりも外側に物体が接触していると判定する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のタッチスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−258456(P2011−258456A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133059(P2010−133059)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】