タッチスクリーンの周波数に適応可能な制御装置
【課題】本発明は、タッチスクリーンの制御装置を、特定のタッチスクリーンの特別な動作特性に適応させるために、制御装置の周波数を適応させる方法および装置に関する。
【解決手段】本発明によるタッチスクリーンシステムは、音波が伝播できる基板と、入力信号に呼応した第1のバースト長の音波を送信する少なくとも1つの送信トランスデューサと、第1のバースト長の音波を長くして、第2のバースト長の音波を形成する反射アレイと、第2のバースト長の音波を受ける受信トランスデューサと、適応可能コントローラとを備える。適応可能コントローラは、第1の周波数を生成する基準発振器と、基準発振器に接続されたマイクロプロセッサと、デジタルバースト回路と、1組の周波数補正値を含むメモリとを有し、マイクロプロセッサは、デジタルバースト回路にバースト制御信号を出力することを特徴とする。
【解決手段】本発明によるタッチスクリーンシステムは、音波が伝播できる基板と、入力信号に呼応した第1のバースト長の音波を送信する少なくとも1つの送信トランスデューサと、第1のバースト長の音波を長くして、第2のバースト長の音波を形成する反射アレイと、第2のバースト長の音波を受ける受信トランスデューサと、適応可能コントローラとを備える。適応可能コントローラは、第1の周波数を生成する基準発振器と、基準発振器に接続されたマイクロプロセッサと、デジタルバースト回路と、1組の周波数補正値を含むメモリとを有し、マイクロプロセッサは、デジタルバースト回路にバースト制御信号を出力することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タッチスクリーンに関し、とりわけ、タッチスクリーンの制御装置を、特定のタッチスクリーンの特別な動作特性に適応させるために、制御装置の周波数を適応させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスクリーンは、データ処理システムへの情報入力手段として、陰極線管(すなわちCRT)、および液晶ディスプレイスクリーン(すなわちLCDスクリーン)を含むさまざまな形式のディスプレイに組み込まれている。タッチスクリーンがディスプレイの上方に配置され、あるいはディスプレイと一体に組み込まれている場合、ユーザは、所望のアイコンまたは要素に対応する位置を触れることにより、表示されたアイコンもしくは要素を選択することができる。タッチスクリーンは、たとえばPOSシステム、インフォメーションセンタ、現金自動支払機(すなわちATM)、およびデータ入力システムなどのさまざまな用途において一般的に利用されている。
【0003】
音響スクリーンなどの特定の種類のタッチスクリーンにおいて、たとえばレーリ波、ラブ波または他の音波などの表面弾性波の現象を利用して、音波または超音波を発生させ、タッチスクリーンの表面上に指向性よく伝播させる。一般に、タッチパネルのそれぞれの軸において、単一の送信トランスデューサと、単一の受信トランスデューサと、一対の反射アレイとが設けられている。送信トランスデューサおよび受信トランスデューサはコントローラ(制御装置)に接続され、コントローラは送信トランスデューサに供給される駆動信号を生成し、受信トランスデューサからの信号を増幅し、調整し、そして応答する。各送信トランスデューサが生成した音波は、タッチスクリーンの周縁部付近に配置された反射アレイで反射する。反射アレイは、その長さの全体において直角に音波を反射し、タッチスクリーンの活性領域に伝播する表面弾性波パターンを生成する。伝播する表面弾性波は、均一な振幅を有する実質的に直線的な波面を有する。対向する反射アレイは、伝播する表面弾性波を受信トランスデューサに向かって反射する。タッチスクリーンの各軸に沿って伝播する表面弾性波の伝播時間と振幅をモニタすることにより、タッチスクリーンの表面上の波の減衰点の位置を特定することができる。この減衰は、指、スタイラスまたは他の物体がスクリーンにタッチ(接触)することにより生じる。
【0004】
通常、タッチスクリーンシステムの製造業者は、明確な周波数範囲内にあり、基準周波数が水晶発振器を用いて与えられる所定の振動周波数を有するコントローラを製造または購入する。そして製造過程において、それぞれのタッチスクリーンの特性周波数が特定され、必要ならば、確実にタッチスクリーンの特性周波数とコントローラの発振周波数とが十分に適応するように特性周波数が調整される
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチスクリーンの特性周波数をより慎重に特定する必要がある。ここで対象となる種類の音響タッチスクリーンは、狭帯域フィルタの特性を有する。狭帯域の中心周波数は、反射素子の間隔、および音波の速度によって決まる。送信トランスデューサに短い時間のバーストが加わると、音波が受信トランスデューサまで最短距離で伝播する時間に相当する遅延時間が経過した後に一連の長く続く波列が検出される。入力されるバーストの周波数スペクトルは、バーストが短期間であることに起因して、通常極めて大きく広がるところ、出力される一連の波列のスペクトルは、極めて狭小で、特定の周波数で鋭いピークを有することが理想的である。この特定の周波数は、タッチスクリーンの特性周波数と呼ばれる。タッチシステムの動作周波数がタッチスクリーンの特性周波数に適応することが要求される。
【0006】
原理的には、タッチスクリーンは単一の特性周波数を有することが理想的である。ただし製造上のばらつきにより、特性周波数は複数にわたり、または一定の範囲を有することがある。タッチスクリーンの現実の製造過程において、タッチスクリーンの特性周波数が実質的にただ1つであり、コントローラの基準発振器により決まる発振周波数に適応するように費用と労力が投じられている。タッチスクリーンの製造過程において期待される成果を実現するためには、アレイの緻密な配置設計、入手する原材料の供給プロセスの厳重な管理、および反射アレイの適正な電気テストを行う必要がある。さらに予期しない変化または変動があったとき、直ちにこれを是正する必要がある。たとえばアレイを再設計するか、新しいプリントマスクを作成する必要が生じる場合がある。タッチスクリーンの特性周波数を適正に維持するために必要な調整、管理およびテストを実施することにより、製造コストが増大し、さらに音響タッチスクリーンの製造の難しさに熟練した作業者を擁する工場であっても、その生産収量を低減することになる。これは、現在の音響タッチスクリーン業界における重要な解決課題である。
【0007】
一般に、周波数の不適応は、本質的に全体的か部分的かに分類できる。周波数不適応が全体的である場合、不適応の原因はタッチスクリーン全体に影響を及ぼす。たとえば、コントローラの基準発振器の振動がドリフト(変動)し、あるいは(たとえばガラス基板が異なるガラス業者によって製造されたために)ガラス基板が予想しない音速を有する場合、タッチスクリーン全体において、コントローラの発振周波数をタッチスクリーンの特定周波数に適応させることができる。これに対し、一方、周波数不適応が部分的である場合、タッチスクリーンの特定の領域においてのみ、コントローラとの不適応が生じる。
【0008】
全体的および部分的な周波数不適応はさまざまな原因に起因する。不適応のいくつかの原因は品質管理を十分に行うことにより排除することができるが、こうした品質管理に要するコストは、しばしば非常に高くつく場合がある。たとえば、タッチスクリーンのガラス基板のばらつきにより、音速が変動し、全体的な周波数不適応が生じる。ガラスの供給業者を管理し、製造プロセスを管理して、すべての基板の音速が所定の狭い範囲内に収まるようにすることは、経済的に不可能である。音響反射アレイが陰極線管(CRT)の表面プレートに直接的に印刷される場合、ガラス供給業者および製造プロセスを管理することは、より困難となる。ガラスの化学組成および熱履歴(アニ−ル時間およびアニ−ル温度等)を含む特定のガラス特性を管理して、全体的な周波数不適応を排除することは困難である。
【0009】
周波数不適応のもう1つの原因は、タッチスクリーンの基板上に印刷された反射アレイのばらつきにある。このばらつきは、たとえばアレイマスクがスクリーン印刷プロセス中に変形したことに起因する。プリントマスクの変形は、アレイがCRTの表面プレート上に直接的な印刷される場合に、特に問題となる。パッドプリント等の他のアレイ印刷技術は、印刷処理時に生じる位置合わせ誤差の影響を受け、さらなる周波数不適応の原因となる。周波数不適応のもう1つの原因は、平坦でない基板表面の球形の幾何学的影響を適正に較正しなかったことによる。
【0010】
当該技術分野において、コントローラの発振周波数を、特定のタッチスクリーンの動作周波数に適応させる方法および装置が必要とされている。本発明は、そのような方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コントローラの周波数を、反射アレイを含む特定のタッチスクリーンの基板の動作周波数条件に適応させる方法および装置を提供する。とりわけ本発明に係るコントローラは、バースト信号を、タッチスクリーンの送信トランスデューサに出力し、あるいはタッチスクリーンの受信トランスデューサからの信号を調整することにより、タッチスクリーンの基板の特定の動作周波数特性に対応するように構成される。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、まず特定のタッチスクリーンの1またはそれ以上の特性周波数が特定される。そしてこの基板とともに使用されるコントローラの周波数が、基板の測定された1またはそれ以上の特性周波数に適応するように調整され、2つの構成部品を適応したセット(組)として対をなす(カップリングまたはペアリングする)ことができる。別の態様によれば、2つの構成部品(タッチスクリーンの基板とコントローラ)の動作周波数を適応させる前に、基板とコントローラとをカップリングする。カップリングした後に、システムを初期化して、その間にタッチスクリーンの基板の周波数特性が特定される。その後に、コントローラの特性周波数が基板の周波数特性に適応するように調整される。システムは、基板の特性周波数を定期的に再テストし、必要に応じて、コントローラの出力を再調整してもよい。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、主として全体的な周波数不適応による誤差を解消しようとするとき、本発明に係る適応可能なコントローラは、アナログ信号処理技術および水晶基準発振器を採用する。デジタル乗算器を用いて基準発振器の出力を加工(変形)し、送信トランスデューサに送信される所望の周波数を有するトーンバーストを生成し、そして/または受信回路が用いる周波数に変えてベースバンド信号を生成する。バースト長は、バースト回路により決定される。所望の動作周波数は、デジタル乗算器の出力信号を受信トランスデューサの適当に調整された出力信号と比較するミキサ内蔵回路によって決定される。そしてミキサ内蔵回路からの出力信号を用いて所望の動作周波数を決定する。
【0014】
本発明の別の実施の形態において、全体的および部分的な周波数変動を較正するために、本発明に係る適応可能なコントローラは、デジタル信号処理技術および基準水晶発振器を用いる。この実施の形態において、デジタル信号プロセッサは、一対のミキサから、デジタル化され、かつフィルタ処理された出力を受信する。これらのミキサに対する入力信号は一対の基準信号であり、その一方は90度で位相シフトされ、適切にフィルタ処理され、かつ増幅された受信トランスデューサRF信号である。この実施形態は、受信信号の位相や振幅等の一式の数学的内容がデジタル化される位相敏感コントローラの使用例である。デジタル化された一式の情報がデジタル信号プロセッサのアルゴリズムにより処理できるとき、ソフトウェアで調整可能な周波数フィルタを受信信号に適用することができる。デジタル信号プロセッサは、メモリに格納された補正値に基づいて、周波数フィルタを、最後のバーストが送信された後、好適には遅延時間に応じて変動する特定の中心周波数に適応させる。すなわちこのシステムは、音波反射アレイの部分的な変動によって生じる変動に適応することができる。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、非水晶局部発振器を用いて、適応可能なコントローラにおける基準信号を得ることができる。そのような発振器を用いることにより、コントローラを十分に小型化して、タッチスクリーンの基板上に直接的に実装することができる。またフィードバックループを用いて、発振器のドリフトを補償することができる。この実施形態において、タッチスクリーンの受信トランスデューサからの調整されたRF信号が、局部発振器の出力信号と混合される。ミキサからのIF(中間周波数)出力信号は、電圧を生成する弁別回路に送信され、その符号は、周波数が所望の周波数よりも高いか低いかによって決まり、その振幅は、所望の周波数からのずれ(逸脱)の度合いによって決まる。弁別器からの出力信号を用いて、タッチスクリーンの周波数と合致するように、局部発振器の周波数を調整する。所望のバースト周波数を実現するために、局部発振器からの安定した出力信号は、中間周波数発振器からの出力と混合される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態において、バーストは、電圧制御の可変周波数帯域フィルタを用いて、受信回路を処理する回路の中心周波数のみを十分に調整する程度に十分に広帯域である。
【0017】
以下の明細書および図面を参照することにより、本発明の本質および利点について、さらに詳細に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術による音響タッチスクリーンの概略図である。
【図2】従来技術によるタッチスクリーンの1つの軸について、表面弾性波トランスデューサが受信する波形信号の時間に対する信号振幅を示すグラフである。
【図3】タッチスクリーン上をタッチすることにより波形が妨害されたときの図3と同様の波形の時間に対する信号振幅を示すグラフである。
【図4】図2および図3に示される波形に垂直な方向におけるタッチスクリーンの表面に渡って伝播する波形が妨害されたときのグラフである。
【図5】本発明に係る1つの方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る別の方法を示すフローチャートである。
【図7】全体的な変動を補正する、本発明によるコントローラを示す概略図である。
【図8】図7に示すデジタル乗算器の周波数を調整するために用いられる技術を説明するフローチャートである。
【図9】クアドラチャ・サム検知器を示す概略図である。
【図10】図11に示す別の実施形態の方法を説明するフローチャートである。
【図11】全体的変動および部分的変動を補正する、本発明による適応可能なコントローラを説明する概略図である。
【図12】図11および図15に示す適応可能コントローラで用いられるデジタルバーストプロセッサを説明する概略図である。
【図13】タッチスクリーン基板に直接的に実装できるコントローラを示す概略図である。
【図14】図15に示す別の実施形態による方法を説明する概略図である。
【図15】全体的変動および部分的変動を頻繁に補正する、本発明による適応可能なコントローラを説明する概略図である。
【図16】受信中心周波数のみが調整される本発明による適応可能なコントローラを示す概略図である。
【図17】タッチスクリーン特性に対し、1組の追加のトランスデューサを使用する音響タッチスクリーンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、従来技術による表面弾性波を用いたタッチスクリーン100を示す図である。この種のタッチスクリーンは、陰極線管(すなわちCRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(すなわちLCD)、または他の種類のディスプレイとともに利用することが好ましい。一般的な種類の音響タッチスクリーンは、レーリ波を採用する。本明細書において、レーリ波の用語は、準レーリ波を含むものとして使用される、レーリ波タッチスクリーンについて、Adlerらに付与された米国特許第4,642,423号、第4,645,870号、第4,700, 176号、第4,746,914号、第4,791,416号、および再発行特許第33,151号、Brennerらに付与された4,825,212号、第4,859,996号、第4,880,665号、Davis-Cannonらに付与された米国特許第4,644,100号、第5,739,479号、ならびにKentに付与された米国特許第5,708,461号、第5,854,450号に開示されている。ラム波や横波等の他の種類の音波、または(レーリ波を含む)他の種類の音波が組み合わされたものを採用する音響タッチスクリーンも知られている。こうした音響タッチスクリーンは、Kentに付与された米国特許第5,591,945号および第5,854,450号、Knowlesに付与された米国特許第5,072,427号、第5,162,618号、第5,177,327号、第5,243,148号、第5,329, 070号、第5,573,077号、およびKnowlesに付与された米国特許第5,260,521号に記載されている。本願明細書で引用された文書は、あらゆる目的において、ここに一体のものとして統合される。ここで表面弾性波タッチスクリーンについて簡潔に説明し、本発明をより詳細に理解することを支援する。
【0020】
タッチスクリーン100は、表面弾性波、たとえばレーリ波、ラブ波、および表面上のタッチ(接触)に敏感な他の波を伝播するのに適した基板101を有する。システムは、送信トランスデューサ105、受信トランスデューサ107、および一対の関連する反射アレイ109,111を有し、x軸103に沿ったタッチ座標軸を決定する。同様のシステムが、送信トランスデューサ115、受信トランスデューサ117、および関連する反射アレイ119,121を有し、y軸113に沿った座標軸を決定する。送信トランスデューサ105,115は、通常、プロセッサ125により制御されるコントローラ123に接続される。同様に、受信トランスデューサ107,117は、信号処理システム127を含むコントローラ123に接続される。トランスデューサ105,115に同時に信号を供給してもよいが、2つの座標検知チャネルの間のインタフェースおよびクロストークを低減するために、順次に信号を供給することが好ましい。順次に信号を検知する手法によれば、多くの必要とされる回路を交互に利用することができるので、重複した回路を設ける必要性を排除して、回路の煩雑さを低減することができる。また回路の複雑さをさらに低減するために、通常、両方の送信トランスデューサ105,115は、同一周波数を有するバーストを送信する。
【0021】
以下に、一方の検知チャネルについて詳細に説明する。以下のチャネルについての説明は、第2の検知チャネルに等しく適用される。基板101におけるx軸103に沿ったタッチ座標を決定するために、送信トランスデューサ105は、経路129に沿ったバースト音波(たとえば、約5マイクロ秒のバースト音波)を発する。このバースト音波が有するバンド幅が比較的広いため、周波数はあまり明確に限定されていない。反射アレイ109は、経路129に沿って配置される複数の反射素子131を有し、各反射素子は、経路129に対し約45度の角度で傾斜するように配置されている。各反射素子131は,経路129に沿って伝播する音波から、複数の波成分133を抽出し、その波成分133が好適にはy軸113に沿って基板101の表面に沿って伝播するように設計される。反射アレイ109のパターンは、個々の反射素子131により反射された個々の波成分がコヒーレントに足し合わされることにより、振幅が実質的に均一の直線的な波面を生成するように設計される。これらの波成分133は、反射アレイ111内の複数の反射素子135により再び結合され、各反射素子135により、経路137に沿って波成分を受信トランスデューサ107に仕向けられる。アレイの個々の反射素子135は、経路137に沿って配置され、経路に対して約45度の角度で傾斜する要に配置されている。受信トランスデューサ107は、送信トランスデューサ105から発せられた音波が、基板101に付随する音速によって変化する時間遅延に起因して、短いバーストというより、比較的に長期間の信号(たとえば約150マイクロ秒)を受信する。
【0022】
受信トランスデューサ107は、経路137に沿って受信される波信号を電気信号に変換する。この電気信号は、たとえば受信波の到着時間について解析される。図2は、そのような波の典型的な時間解析を示すグラフである。時間に対する、受信された波の振幅、すなわちRF(高周波)信号の包絡線が図示されている。時刻t1において、信号が信号源123からトランスデューサ105に提供される。時刻t2において、最初に波信号がトランスデューサ107により受信される。時刻t1とt2の間の遅延時間は、波がトランスデューサ105から発させられ、アレイ109の最初の反射素子139に到着し、パネル101の表面に渡って伝播し、アレイ11の最初の反射素子によって反射されるまでの遅延時間に対応する。時刻t3において、最後の波がトランスデューサ107に到達する。アレイの反射素子の間隔および設計に依存するが、波が遮られない場合、時刻t2から時刻t3までの包絡線の振幅は比較的一定である。
【0023】
図3は、トランスデューサ107によって受信される波形の2つ目のグラフである。時刻ttにおいて、波形の振幅は、くぼみ301を有することが図示されている。くぼみ301は、基板101上のある位置143における音波の減衰によるものである。信号プロセッサ127は、プロセッサ125と協働して、t1からttまでの遅延時間を解析することにより、タッチ143のx座標を計算することができる。同様に、プロセッサ125,127は、信号源123、トランスデューサ115,117および反射アレイ119,121と協働して、タッチ143のy軸を計算することができる。図4は、トランスデューサ117が受信した波形のグラフであり、タッチ143による減衰くぼみ401を示している。
【0024】
図5および図6は、本発明の適応可能なコントローラに関連した基本的な処理手順を示すフローチャートである。図5に示される方法は、ユーザサイド(ユーザの使用場所)で行ってもよいが、タッチスクリーンシステムの製造過程において行うことが最も好ましい。ステップ501において、特定のタッチスクリーンの1つまたはそれ以上の特性周波数が、既知の種々のテスト技術のうち任意のものを用いて決定される。たとえば製造現場でテストされる場合、タッチスクリーンは検査用治具内に配置され、音波が基板の表面を横断するように形成される。タッチスクリーンの1またはそれ以上の特性周波数が決定された後において、そのタッチスクリーンとともに用いられる予定のコントローラの周波数は、測定されたタッチスクリーンの周波数に適応するように調整される(ステップ503)。一般には、コントローラの周波数は、所望の周波数が得られるまで調整される。択一的には、コントローラは、得られた出力周波数に応じたコントローラ設定値を記録したルックアップテーブルを有していてもよい。好適には、ルックアップテーブルは個々のコントローラに固有のものであって、すなわち各コントローラはそれぞれのばらつきにより左右されるルックアップテーブルを有する。特定のタッチスクリーンの動作周波数が決定された後、そのタッチスクリーンとカップリングされるコントローラのルックアップテーブルを用いて、コントローラが適正に設定される。コントローラを調整する方法の如何によらず、一旦、コントローラが基板に適応されると、タッチスクリーンシステムをアセンブリすることができる(ステップ505)。
【0025】
図6に示す方法によれば、コントローラとタッチスクリーンの2つの周波数を適応させようとする前に、コントローラとタッチスクリーンとをカップリングする(ステップ601)。その後、タッチスクリーンシステムとしてのインストールが完了し(ステップ603)、システムの初期化が開始される(ステップ605)。システムの初期化中、タッチスクリーンをテストして、1つまたはそれ以上の特性周波数を決定する(ステップ607)。好適には、このテスト過程において、単一のバーストテストモードで動作するタッチスクリーンの標準的な送信/受信トランスデューサ(105/107および/または、115/117など)を使用する。択一的には、一対の専用トランスデューサを用いてもよい。基板の1つまたそれ以上の特性周波数が決まると、コントローラの周波数を調整して(ステップ609)、システムを通常動作できるよう準備する(ステップ611)。
【0026】
上述の方法の図6に示す変形例において、タッチ動作中に、周期的にコントローラを調整するようシステム設計することにより、最適な周波数適応を保証することができる。ただし上述のシステムとは対照的に、タッチスクリーンを再テストし、コントローラを再調整するという周期的なテストシーケンスを実行する(ステップ613)。システムが起動シーケンスに入る毎に、または所定の期間が経過する毎に、コントローラを再調整するようにしてもよい。一般に、タッチスクリーンの基板またはコントローラが温度に起因して変動しやすい場合には、コントローラを周期的に調整することが好ましい。ポリマ製の基板が用いられた場合、基板における音波の速度は周囲温度の変化に伴い変動しやすい。同様に、コントローラが、水晶発振器を使用しない場合、基準周波数はドリフト(変動)しやすいので、コントローラを頻繁に適応させる必要がある。
【0027】
破壊行為等によるタッチスクリーン基板の故障またはコントローラの故障により、タッチスクリーンシステムがユーザサイドで故障した場合、上述の適応可能コントローラは、明らかな利点を有する。コントローラの周波数を適応させることが可能であるため、新しいタッチスクリーンまたは新しいコントローラを、現地にて容易にインストールすることができる。これは、製造業社が修理するためにタッチスクリーンシステム全体を返送し、あるいは現地で交換するために、適応させたタッチスクリーン/コントローラをユーザサイドに送ることに比べて好ましいものである。たとえば既存のタッチスクリーンシステムのタッチスクリーンを交換する必要があるとき、古いコントローラは新たに初期化テストを実行して、新しいタッチスクリーンの1つまたはそれ以上の特性周波数を特定し、コントローラの周波数をその新しい特性周波数に適応させるようにリセットすることができる。択一的には、新しいタッチスクリーンの識別コードを用いて、上述のルックアップテーブルを参照して、コントローラの周波数を設定することができる。同様に、新しいコントローラがユーザサイドで必要となった場合、その新しいコントローラを初期化テストにより既存のタッチスクリーンに適応させるか、あるいはルックアップテーブル、および古いタッチスクリーンの識別コードを参照して設定してもよい。後者の手法によれば、コントローラは、製造業者の工場またはユーザサイドのいずれでも設定することができる。
【0028】
本発明は数多くの実施形態を有し、各実施形態は、コントローラの周波数をタッチスクリーンの条件(周波数)に適応させる機能を提供する。これらの実施形態において、適応可能コントローラが調整する周波数不一致の発生原因が異なる。図7に示す実施形態は、「全体的な」周波数不適応エラー、すなわちコントローラとタッチスクリーンとの間の周波数適応性に全体的に影響を与えるエラーを課題とするシステムで利用されるものである。たとえば一片のガラスにおける音波の速度は、通常、まさにその組成に応じて変動する。すなわちガラスの組成が、ガラスの生産ロット間、またはガラス供給者間においてばらつきが生じるとき、周波数に影響を与えるファクタが十分に管理されているとしても、音波の速度がガラスの生産ロット間で変動するため、組成のばらつきによって生じるエラーが原因で、タッチスクリーンの全体の周波数特性が影響を受ける。特定の具体例によれば、タッチスクリーンの製造工程においてガラスの焼戻しステップがしばしば必要であるが、ガラスの焼戻しステップの時間および温度特性に依存して、個々のタッチスクリーン間で、特性周波数がばらつく場合がある。
【0029】
(ガラス組成のばらつきに起因する)時間によらない全体的な周波数不適応エラーを有するタッチスクリーンにおいて、本発明に係る適応可能コントローラは、単一の適応周波数アルゴリズムを用いることが好ましい。この場合、コントローラとタッチスクリーンとの間の不適応が時間により変化しないならば、複数回または連続して周波数を適応させる必要はない。むしろ、この実施形態の意図するところは、無作為に選択されたタッチスクリーンと、無作為に選択されたコントローラ(すなわち、ペアリングされていないタッチスクリーンとコントローラの組)を、最終的なシステムアセンブリの際、またはシステム回復の際に、首尾よくペアリングできるようにすることである。したがって、この適用周波数アルゴリズムは、ペアリングされたタッチスクリーンとコントローラの初期起動シーケンス中に実行されることが好ましい。
【0030】
図7に示される適応可能コントローラの実施形態は、アナログ信号処理技術を採用する。ただしデジタル信号処理も同様にこの実施の形態で採用できることを理解されたい。コントローラ700内には、所望の周波数に近い周波数で振動する水晶発振器701が設けられている。この基準発振器701からの出力は、コントローラ700内のマイクロプロセッサ705と、デジタル乗算器703(デジタル分周器ともいう。)に供給される。デジタル乗算器703は、マイクロプロセッサ705からデジタル乗算器703に送られる指令に基づいて、(たとえば水晶発振器の周波数に有理数A/Bを乗じることによって)水晶発振器からの出力を数学的に変更し、所望の周波数を生成する。すなわち水晶発振器701と協働するデジタル乗算器703は、タッチスクリーンに付随するアナログ部品のための主発振器704を構成する。
【0031】
デジタル乗算器703からの出力信号を用いてトーンバーストが生成され、トーンバーストは、アナログライン707に沿って、タッチスクリーンの送信トランスデューサ(たとえば図1のトランスデューサ105,115)に出力される。トーンバーストは、乗算器703によって出力される周波数を有し、マイクロプロセッサ705に接続されるバースト回路709によって決定されたバースト長を有する。トーンバーストは、通常、送信トランスデューサに送信される前に、バースト増幅器711により調整され、増幅される。
【0032】
所望の動作周波数を決定するために、受信トランスデューサ(図1の107,117)からの出力信号は、ライン713に介してミキサ内蔵回路715に送信される。好適には、トランスデューサからの出力信号は、まずバンドバスパスフィルタ717およびRF増幅器719を通過する。通常、固定型広帯域フィルタであるバンドバスフィルタ717を、主としてノイズ抑制回路として用いて、RF入力信号を調整する。RF増幅器719は、所望のレベルまで信号を増幅する。ミキサ内蔵回路715は、調整され、増幅された受信トランスデューサからの信号の周波数成分を、デジタル乗算器703からの出力信号と比較し、相当に緩やかに変動する実質的なDCベースバンド信号を出力する。ミキサ内蔵回路715からの出力信号は、ADコンバータ723によりデジタル化され,マイクロプロセッサ705に供給される。任意ではあるが、デジタル化の前に、ローパスフィルタ721がミキサ内蔵回路の出力信号を追加的に調整するが、通常ミキサ内蔵回路が制限的な狭帯域フィルタ処理を行う。
【0033】
上述のように、構成部品703は、好適にはA/Bデジタル乗算器である。ただし包括的には、構成部品703は単なる周波数変更回路であり、マイクロプロセッサ705からの制御信号に応答して水晶発振周波数を変更する任意のデジタル電子回路、アナログ電子回路、またはデジタル/アナログ混合電子回路であってもよい。
【0034】
用途によるが、バースト中心周波数または受信中心周波数を適応させるだけで足りる場合がある。バースト中心周波数を適応させるだけで足りる場合、回路715は、デジタル乗算器703からの入力信号を必要としない。したがって、このコントローラに一般にみられる、より標準的な検知器で置換してもよい。受信中心周波数を適応させるだけで足りる場合には、デジタル乗算器703とバースト回路709との間を接続する必要はない。
【0035】
図8は、デジタル乗算器703の周波数を調整して、これに接続されるタッチスクリーンの周波数を適応させるために使用される技術を説明するフローチャートである。上述したように、この実施形態は、起動時(ステップ801)に、コントローラの周波数をタッチスクリーンの周波数に適応させるものである。択一的には、このシステムは、周期的に、または最初の起動サイクル時にのみ、コントローラの周波数適応を実施するように設計してもよい。
【0036】
起動ステップ801の後、マイクロプロセッサ705は、所定の周波数範囲を通して、デジタル乗算器703の出力信号を掃引する(ステップ803)。コントローラは、好適には、まず大まかに(粗く)調整処理を実行した後、緻密に(細かく)調整処理を実行するが、これら2つの調整処理を組み合わせて、単一の走査シーケンスを行うことができる。したがってステップ803では、所定の周波数範囲が比較的大きい周波数ステップを用いて走査される。各周波数ステップに対するADコンバータ723の出力信号が収集され(ステップ805)、主発振器の出力信号とタッチスクリーンとの間の最も近い適応を示す最大信号振幅が選択される(ステップ806)。次に、より小さい周波数ステップを用いて、先に選択された周波数付近で主発振器の出力周波数を走査することにより、この走査/最適化処理を繰り返して行う(ステップ807−809)。そしてタッチスクリーンの特性周波数に最も近いものとしてステップ809で決定された周波数が、メモリに入力され(ステップ811)、主発振器回路の出力信号の周波数を所望の周波数に確実に維持することができる。
【0037】
図8は2段階の周波数走査方法を示すものであるが、所望の出力周波数を決定するために他の数多くの技術があることを当業者ならば理解されるところである。本発明は、たとえばディザ法または逐次近似法も採用することができる。
【0038】
図8の基本的なアルゴリズムは、ADコンバータの合計の使用を必要としない。一般に、ステップ805,808は、周波数不適応の程度を示唆する任意の測定可能量を収集することを表し、ステップ806,809は、許容範囲内の小さな周波数不適応に相当する測定可能量を選択することを表すものである。たとえば、マイクロプロセッサ705は、所定の時間間隔において、受信信号およびデジタル乗算器703の出力信号の両方のRFサイクル数をカウントしてもよい。RFサイクル数の差により周波数不適応を測定することができる。同じ目的を達成する他の回路および技術が当業者に広く知られている。
【0039】
図9は、ミキサ内蔵回路715の例示的な具体例として、クアドラチャ・サム(quadrature-sum)検知器を示す。調整されたRF入力信号901は、ミキサ903のデジタル乗算器703から出力された発振器と混合される。ミキサ903は、2つの入力周波数の和周波と、差周波を出力する。和周波は、約10MHzであり、ローパスフィルタ905を用いて除去される。残った周波数は、0に近い、即ちベースバンドである。上述の単一のミキサ回路を用いて、ベースバンド信号を出力するが、その出力信号は、発振器出力とRF入力信号の相対的位相に依存する。相対的な位相の独立性を達成するために、すなわちADコンバータ723によりデジタル化された波形のビートパターンを避けるために、クアドラチャ・サム検知器は、図9に示すように2つのチャネルを有する。図示のように、第2のミキサ907を用いて、発振器から入力される周波数の位相を90度で位相シフトする。第2のミキサ907の出力信号は、別のローパスフィルタ905を通過した後、クアドラチャ・サム回路909において第1のチャネルからの出力信号と合計される。回路909の出力信号は、ビートパターンのないベースバンド信号911であり、受信された信号の正確な位相から独立している。事実上、図9のクアドラチャ・サム検知器は、その中心周波数が調整可能で、デジタル乗算器703の出力の周波数によって制御される狭帯域バンドバスフィルタを提供する。
【0040】
図9に示すミキサ903,907は、他の利用可能なミキサ内蔵回路の構成部品であると同様に、クアドラチャ・サム検知器の必須の構成部品である。ミキサ903は、たとえばライン713からの信号とソース704の出力信号とを結合して、2つの入力信号の関数であり、それらの周波数の差の関数である所望の出力を得る。クアドラチャ・サム検知器全体を必要としない場合がある。たとえば、バースト周波数のみを調整する必要がある場合、必要とされる出力信号の値は、ライン713からの信号とソース704からの信号との差のビートである。そのような差周波信号は、ダイオードミキサにより容易に生成できる。もちろん、他のミキサデバイスが当業者に知られており、本発明の変形例において利用することができる。
【0041】
図10−12に示す本発明の別の実施形態において、コントローラは、全体的な変動、すなわちタッチスクリーン全体の特性周波数に一定の影響を与える周波数変動、および部分的な変動、すなわちタッチスクリーンの部分的な領域内における周波数変動の両方に適応できるようにプログラムすることが可能である。例示的な目的において、この実施形態はデジタル信号処理技術を用いる。ただし、この実施形態は、同様にアナログ信号処理技術を用いて実行できることを理解されたい。
【0042】
図10は、この実施形態に関連した手順を説明するフローチャートである。必要とされるアレイ堆積ステップ、およびガラス焼戻しステップを含むタッチスクリーン基板の製造が完了した後、アレイの部分的変形の影響を含むタッチスクリーンの特性周波数が測定される(ステップ1001)。好適には、これらの測定は、製造フロアテスト設備を用いて製造工場内で行われる。これらの測定に基づいて、通常、一連の周波数補正値がx軸座標およびy軸座標の両方に対する遅延時間の関数として計算される(ステップ1003)。その後、個々のタッチスクリーンに固有の補正値の組は、その後、この特定のタッチスクリーンとカップリングされる(ステップ1007)適応可能コントローラ1100のメモリにロードされる(ステップ1005)。ステップ1005およびステップ1007は、順番が逆になってよく、タッチスクリーン基板の周波数変動の測定ステップ1001は、補正値計算ステップ1003と組み合わせてもよいことが理解される。
【0043】
図10に示す方法を若干変更した変形例によれば、各タッチスクリーン基板に識別コードが付与される。好ましくは製造業社、販売者またはその両方により、識別コードと、各識別コードに付随する固有の補正値とに関するテーブルが記録される。すなわち、たとえば破損等によりコントローラを交換することが必要になった場合、ユーザは、必要な補正値を事前に読み込んだ新しいコントローラを入手するために、識別コードを通知するだけでよい。
【0044】
本発明に係る図11および図12の実施形態において、適応可能コントローラ1100は、基準用として、発振器1101を利用する。周波数ソースとして、安定した水晶発振器を利用することが好ましい。発振器1101からの出力信号は、分周器/位相シフタに送られる。その分周器/移相器は、約22Mhzの周波数から約5.53MHzの所望の周波数まで周波数を分周し、出力信号の一部を90度だけ位相をシフトする(移相する)。そして位相シフトされない発振周波数1105および位相シフトされた発振周波数1107は、ミキサ1109,1111内において、適当にフィルタ処理され、増幅された受信トランスデューサのRF信号と混合される。コントローラ700の場合と同様に、タッチスクリーン受信トランスデューサからのRF信号は、通常、固定型の広帯域フィルタである帯域フィルタ1113でフィルタ処理され、種々のノイズ成分を除去し、所望の信号レベルを達成するために増幅器1115により増幅される。
【0045】
ミキサ1109,1111の出力信号は、複素平面におけるx信号およびy信号の振幅を表す。すなわち一対のミキサと、一方が90度の位相シフトされた一対の基準信号とを用いることにより、位相と、位相とは無関係の複素表示の振幅を特定することができる。ミキサ1109,1111の出力信号はそれぞれ、一対のローパスフィルタ1117,1119を通過した後、ADコンバータ1121,1123でそれぞれデジタル化される。そして、これらの信号は、デジタル信号プロセッサ(すなわちDSP)1125に送信される。
【0046】
DSP1125は、中心周波数とバンド幅の両方を数学的に制御することができる周波数フィルタとして機能する。DSP1125を数学的に制御して、制御可能なバンド幅および中心周波数を得る方法は、当業者に広く知られているので、ここでは詳細に説明しない。メモリ1127がDSP1125に接続される。メモリ1127は、特定のタッチスクリーン(すなわちコントローラ1100とカップリングされたタッチスクリーン)の周波数特性を測定することによって得られる補正値を格納する。DSP1125は、メモリ1127内に格納された補正値に基づいて、特定の中心周波数に応答する。好適には、DSP1125は、遅延信号に応じて変化する中心周波数に応答し、音波反射アレイにおける部分的変動に起因する変動を参酌する。
【0047】
図11のアイテム1125は、その一般的な用語の意味において、デジタル信号プロセッサ(すなわちDSP)である。デジタル信号処理とは、ADコンバータ1121,1123からのデジタル信号の数学的またはデジタル的な処理を意味する。DSP1125は数多くの方法で実現することができる。たとえば、DSP1125はマイクロプロセッサ1131により実行されるプログラムコードであってもよい。択一的には、DSP1125は音波タッチスクリーン用コントローラのためにカスタム設計されたデジタル回路であってもよい。さらに、デジタル信号処理は、それに限定されないが、電子エンジニアがしばしば引用する「DSPチップ」というパッケージ化されたシリコンチップで行ってもよい。
【0048】
送信トランスデューサバーストを発するために、水晶発振器1101からの出力信号がデジタルバースト回路1129に供給される。バースト回路1129は、マイクロプロセッサ1131から受信した指示に従って、この出力信号を処理し、その後、永久メモリ1127から所望の中心周波数に関する指示を受信する。必要ならば、ライン1135を介して送信トランスデューサに送信される前に、デジタルバースト回路1129の出力が、バースト増幅器1133により増幅される。
【0049】
図12は、デジタルバースト回路1129の具体例を示す概略図である。バースト回路1129は、マイクロプロセッサ1131に接続されたビットレジスタ1201(たとえば64×8ビットレジスタ)を内蔵する。マイクロプロセッサ1131は、所望のビットパターン(すなわち永久メモリ1127の出力信号に呼応して、マイクロプロセッサ1131により生成されたデジタルパターン)をレジスタ1201にロードする。そのビットパターンは、バースト中心周波数を決定する。各バーストについて、レジスタ1201にロードされたビットパターンは、バーストを生成するためにクロックアウトされるシフトレジスタ1203にラッチされる。理解されるように、異なるビットパターンを用いて、タッチスクリーンのx座標およびy座標についてバースト中心周波数を決定することにより、2つの軸の間の変動を参酌することができる。ビットパターンは、メモリ1127からの周波数補正データに呼応して、あるいはマイクロプロセッサ1131により計算されるか、あるいはメモリ1127に直接的に記録してもよいことに留意すべきである。
【0050】
この実施形態に係る適応可能コントローラを利用できる別の具体例において、タッチスクリーンは、回折格子トランスデューサを用いる。回折格子トランスデューサにおいて、圧電素子が基板の後面に配設され、回折格子が基板の前面に配設される。回折格子を用いて、圧電素子により生成された圧力波をコヒーレントに回折して、基板の表面に沿って伝播する音波を生成する。こうした回折格子トランスデューサは、動作周波数がガラス厚共鳴周波数と一致するとき、最も効率的であることが確認されている。基板のガラス厚共鳴周波数は、基板の厚さに依存するので、好適には、まずガラス厚さを測定した後、最適動作周波数を計算し、その最適動作周波数に対する適当な反射アレイおよび回折格子が設計される。そして本発明に係る適応可能コントローラ、たとえばコントローラ1100を用いて、コントローラの周波数をタッチスクリーンの特性周波数に適応させる。ただしこの実施形態のいくつかの応用例と異なり、この具体例においては、適応可能コントローラが基準発振器の周波数から10〜20%程度、バースト周波数を変動させる機能を有することが必要である。任意の受信帯域フィルタ、たとえばフィルタ1113は、調整可能であるか、または十分に広帯域バンドであり、タッチスクリーンの特性周波数の変動範囲を十分にカバーすることが必要である。
【0051】
図13は適用可能コントローラの別の実施形態を示す概略図であり、このコントローラは、タッチスクリーン基板に直接的に実装されるため、大きさと費用の両方の点で利点がある。この実施形態において、水晶発振器は、局部発振器1301と置換されるため、所望の大きさが得られる。局部発振器1301は、たとえばシリコンチップ上の回路部品だけで構成されるものであってもよい。水晶発振器に対して局部発振器1301にドリフトがあると、必要とされる周波数の安定を実現するために、フィードバックループが求められる。フィードバックループにより、コントローラ1300は、盛んに、すなわち反復して、発振周波数を所望の周波数に適応させる。
【0052】
上述の実施形態と同様、タッチスクリーンの受信トランスデューサからのRF信号は、まず帯域フィルタ1303および増幅器1305を通過することにより調整される。調整されたRF信号は、ミキサ1307において局部発振器1301の出力信号と混合される。発振器1301は、たとえば入力電圧により周波数が制御される可変周波数発振器である。コンデンサ1308と発振器1301との間の適当なバッファ回路を用いて、発振器1301は、電流等の他の種類の電気的な入力信号を提供することができる。この実施形態において、局部発振器または基準発振器は、タッチスクリーンの周波数よりも大きい周波数で作動する。たとえば名目上、5.5MHzのタッチスクリーン周波数に対して、発振器1301は、約6MHzの周波数で作動するものであってもよい。その後、ミキサ1307からの出力信号は約500kHzの中間周波数に設定される。
【0053】
ミキサ1307から出力される中間周波数信号は、弁別器1311に入力される前に、帯域フィルタ1309を通過する。弁別器1311は、中間周波数信号の周波数が弁別器1311の中心周波数よりも高いか低いかに依存する符号を有し、弁別器の中心周波数との差異の程度に依存する振幅を有する電圧を生成する。そして弁別器1311からの出力信号を用いて、バラクタダイオードにより、局部発振器1301の周波数を調整して、弁別器の出力信号の電圧をゼロ近くまで低減する。制御プロセッサ1314に接続されたスイッチ1313は、サンプルホールド回路の一部であり、これにより局部発振器1301をバーストサイクル/受信サイクルの間で先に特定された周波数で保持することができる。スイッチ1313は、受信サイクルの間閉じられる。
【0054】
システム起動中、局部発振器1301は、相当のマージンで所望の周波数から逸脱して、フィードバックループが発振器を有効に安定化させることを阻害する場合がある。このとき好適には、コントローラ1300は、フィードバックループが機能するまで、局部発振器1301の周波数を徐々に調整するランプ機能を有する。ある動作モードにおいて、起動中、スイッチ1313は開いており、第2のスイッチ1315は閉じている。デジタルアナログ変換器(すなわち、DAC)1317は、マイクロプロセッサ1314の制御下で、発振器1301の周波数を調整し、検知器1319でミキサ1307の出力信号を見ながら、その周波数を増大(または低減)させる。検知器1319は、ADコンバータ1321を介してマイクロプロセッサ1314に接続されている。検知器1319の出力信号が、所定のしきい値を超えて、局部発振器1301が所望の周波数に近似していることを示すとき、マイクロプロセッサ1314は、フィードバックループが局部発振周波数を微調整できるように、スイッチ1315を開き、スイッチ1313を閉じる。択一的には、起動中に、スイッチ1313およびスイッチ1315の両方を閉じてもよい。このモードにおいて、発振周波数が帯域フィルタ1303の帯域内に入ると、マイクロプロセッサ1314は、スイッチ1315を開いて、この時点により以降、フィードバックループが周波数を微調整できるようにする。
【0055】
上述の実施形態と対照的に、局部発振器1301の周波数は、所望のバースト周波数に調整されない。むしろ、局部発振器1301の周波数がタッチスクリーンの周波数に追随して、局部発振器の周波数とタッチスクリーンの周波数との間の差が一定となるように(この具体例では、500kHz)維持される。したがって、所望のバースト周波数を達成するために、局部発振器1301からの安定化させた出力信号は、第2のミキサ1323において中間周波数発振器1325からの出力信号と混合される。中間周波数発振器1325は、中間周波数帯域フィルタ1309と同じ周波数(この具体例では約500kHz)で作動する。ミキサ1323からの出力信号は、所望のバースト周波数(この具体例では約5.5MHz)を有する。帯域フィルタ(図示せず)は、ミキサ1323とバースト回路1327との間に挿入され、ミキサ1323からの所望の和周波または差周波のみを通過させる。上述の実施形態と同様、この周波数におけるトーンバーストの長さは、マイクロプロセッサ1314に接続されるバースト回路1327によって制御される。通常、トーンバーストは、タッチスクリーンの送信トランスデューサの1つに対するライン1331に沿って出力される前に、バースト増幅器1329により所望の振幅に増幅される。
【0056】
図13における回路は、受信信号のRF周波数をより低い周波数だけシフトする回路の具体例であるが、シフトさせる周波数は、必ずしも約500kHz等のベースバンドではない。これは、適応可能な周波数コントローラの設計者により広く利用される技術である。より低い周波数の選択は、RF周波数とベースバンドとの間であればどこでもよい。その最適値は、特定の回路、ノイズ源等の詳細に依存する。
【0057】
図14−15は、基板上の音波の速度が使用中に変動するタッチスクリーンに最も適した本発明の別の実施形態を示す。たとえば上述のように、ポリマ製基板上の音波の速度特性は温度に依存する場合がある。したがって、ポリマ製基板を有するタッチスクリーンは、使用中に(たとえば室温全体の変化に起因して)全体的変動、または(スクリーンの異なる部分により温度が異なることに起因して)部分的変動を生じる場合がある。図14および図15に示す実施形態は、こうした変動に適応できるように設計されている。
【0058】
図14は、実施形態の方法を示すフローチャートであって、コントローラ1500は、頻繁に適応させる必要があるタッチスクリーンに接続されている。この実施形態において、第1のステップは、タッチスクリーンがタッチ(接触)を検知したか否かを判断することである(ステップ1401)。タッチを検知しない場合、コントローラ1500は、タッチスクリーンの周波数特性を決定するテストシーケンス(テストルーチン)を実行する。好適には、その最初のステップは、テストルーチンを最後に行ってから経過した時間を判断することにある(ステップ1403)。あらかじめ設定された時間が経過していない場合(ステップ1405)、そのシステムループは開始点に戻る。あらかじめ設定された時間が経過していた場合、システムは、基板のx座標およびy座標に対し、基板の周波数特性を測定し(ステップ1407)、1組の補正値を決定する(ステップ1409)。これらの補正値はコントローラのメモリに記録され(ステップ1411)、システムループは開始点に戻る(ステップ1413)。そしてタッチを検知すると(ステップ1415)、システムは、タッチ座標を特定し(ステップ1417)、これらの座標を動作システムに送る(ステップ1419)。
【0059】
頻繁に適応可能なコントローラ1500を図15に示す。このコントローラは、いくつかの一部変更点を除き、基本的にコントローラ1100と同じのものである。たとえば、永久メモリ1127を一時メモリ1501で置換している。コントローラ1100と同様、メモリ1501は、タッチスクリーンの特性周波数の変動を補正するために必要な周波数補正値を記憶する。この実施形態に係る一時メモリは、上述のように、コントローラ1500が補正値を周期的に更新するときに必要となる。さらにメモリは、周期的に更新する必要があるので、マイクロプロセッサ1131に対して双方向に通信する。したがって、特性テストシーケンスの際、マイクロプロセッサ1131は、DSP1125の出力信号を用いて、所望の周波数補正値を決定し、メモリ1501に記憶する。
【0060】
図11に示す実施形態において、デジタルバーストプロセッサ1129は、所望のバースト周波数を有するバースト信号を出力する。さらに出力されたバースト信号の電力スペクトルは、一時メモリ1501に記憶された補正値に基づいて調整される。個々のRFパルスの位相の時間変調(たとえば、sin(x)/x曲線に基づくパルス位相)、バーストトレインの振幅変調(たとえば、異なる長さの一連のデジタルパルスの台形包絡線またはスタック)、またはRFサイクルのユニットにおける非積分バースト長を用いることなどを含む、さまざまな技術を用いて、バースト電力スペクトルを調整することができる。
【0061】
図16に示す実施形態によれば、処理される受信信号の中心周波数のみが調整され、バースト信号の周波数は調整されない。この実施形態は、バーストが極めて短く、たとえばRF信号の10サイクル未満の期間を有し、タッチスクリーンの特性周波数における予期される変動をカバーするほど十分に広帯域であるとき、バースト信号の周波数を調整する必要がない場合において適用することができる。
【0062】
図16に示すように、マイクロプロセッサ1601は、名目上のRF動作周波数を受信し、送信トランスデューサ(図示せず)を実行するバースト回路1603を起動する。上述の実施形態と同様に、バースト増幅器1605を用いて、バースト回路1603の出力信号を調整することができる。受信回路チェーンにおける狭帯域フィルタは可変帯域フィルタ1607である。可変帯域フィルタ1607の中心周波数はDA変換器1609により提供される電圧によって制御され、DA変換器1609はマイクロプロセッサ1601によって制御される。フィルタ1607等の可変帯域フィルタに関する適当な回路設計は、当業者により広く知られているので、さらに説明しない。受信トランスデューサ(図示せず)からの信号は、中心周波数を決定する可変帯域フィルタ1607を通過する前に、相対的に広い帯域フィルタ1611を通過し、増幅器1613により増幅してもよい。その信号は、検知器1615により、RF信号からベースバンド信号に変換され、ADコンバータ1617でデジタル化される。マイクロプロセッサ1601は、たとえば図8に示す処理を用いることにより、DA変換器1609に対する最適な設定を決定する。そして最適なDA変換器の設定はメモリ1619に記憶され、マイクロプロセッサ1601は通常のタッチ処理の間、記憶された値を用いる。x信号およびy信号に対して、個別のDA変換器の値を記憶してもよい。
【0063】
上述の各実施形態において、タッチ検知に用いられるトランスデューサ、たとえばトランスデューサ105,107,115および117を用いて、コントローラをタッチスクリーンに適応させることが好ましい。すなわち、たとえばトランスデューサ105が発し、トランスデューサ107が受けた音波から生じた受信信号を、本発明に係る適応可能なコントローラの基準周波数として用いるか、あるいは従来式のタッチスクリーンと同一または類似の手法によりタッチ情報を提供するものとして用いることができる。ただし、タッチスクリーンの特性周波数を決定して、コントローラを適応させるために用いられるトランスデューサは、タッチ検知および情報収集のために用いられるトランスデューサと同じである必要はない。たとえば、図17に示すように、1対のトランスデューサ1701,1703を遅延ラインフィードバック発振器(図示せず)において用いて、タッチスクリーンの特性周波数を決定するが、タッチ検知の際に用いられるトランスデューサ105,107,115,117を追加することができる。択一的には、個別の反射アレイを有する別個の変換器を、タッチスクリーン基板の背面に設けてもよい。好適には、追加したトランスデューサの入力信号および出力信号は、コントローラ700のライン707,713、またはコントローラ1100,1300または1500の相当するラインで多重化される。この方法は、タッチ検知音波経路の必要性と独立して、周波数基準信号の特性を最適化する自由度が得られる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態が、これまでに説明および図示されてきたが、本発明に係る適応方法を用いた他の実施形態が考えられることが理解されるべきである。加えて、上述の実施形態の種々の態様が、本発明から逸脱することなく変更できることを理解すべきである。たとえば、図13に示す実施形態で用いられる非水晶基準発振器およびフィードバックループは、図11および図12で示す実施形態で用いられる水晶発振器の代わりに用いてもよい。すなわち本発明は、その精神または必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化できる。したがって、ここでの開示および説明は、特許請求の範囲で示される本発明の範囲を説明するために例示するものであって、限定するためのものではない。
【符号の説明】
【0065】
100 タッチスクリーン
101 基板
105,115 送信トランスデューサ
107,117 受信トランスデューサ
109,111 反射アレイ
123 コントローラ
125 プロセッサ
127 信号プロセッサ
1701,1703 トランスデューサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タッチスクリーンに関し、とりわけ、タッチスクリーンの制御装置を、特定のタッチスクリーンの特別な動作特性に適応させるために、制御装置の周波数を適応させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスクリーンは、データ処理システムへの情報入力手段として、陰極線管(すなわちCRT)、および液晶ディスプレイスクリーン(すなわちLCDスクリーン)を含むさまざまな形式のディスプレイに組み込まれている。タッチスクリーンがディスプレイの上方に配置され、あるいはディスプレイと一体に組み込まれている場合、ユーザは、所望のアイコンまたは要素に対応する位置を触れることにより、表示されたアイコンもしくは要素を選択することができる。タッチスクリーンは、たとえばPOSシステム、インフォメーションセンタ、現金自動支払機(すなわちATM)、およびデータ入力システムなどのさまざまな用途において一般的に利用されている。
【0003】
音響スクリーンなどの特定の種類のタッチスクリーンにおいて、たとえばレーリ波、ラブ波または他の音波などの表面弾性波の現象を利用して、音波または超音波を発生させ、タッチスクリーンの表面上に指向性よく伝播させる。一般に、タッチパネルのそれぞれの軸において、単一の送信トランスデューサと、単一の受信トランスデューサと、一対の反射アレイとが設けられている。送信トランスデューサおよび受信トランスデューサはコントローラ(制御装置)に接続され、コントローラは送信トランスデューサに供給される駆動信号を生成し、受信トランスデューサからの信号を増幅し、調整し、そして応答する。各送信トランスデューサが生成した音波は、タッチスクリーンの周縁部付近に配置された反射アレイで反射する。反射アレイは、その長さの全体において直角に音波を反射し、タッチスクリーンの活性領域に伝播する表面弾性波パターンを生成する。伝播する表面弾性波は、均一な振幅を有する実質的に直線的な波面を有する。対向する反射アレイは、伝播する表面弾性波を受信トランスデューサに向かって反射する。タッチスクリーンの各軸に沿って伝播する表面弾性波の伝播時間と振幅をモニタすることにより、タッチスクリーンの表面上の波の減衰点の位置を特定することができる。この減衰は、指、スタイラスまたは他の物体がスクリーンにタッチ(接触)することにより生じる。
【0004】
通常、タッチスクリーンシステムの製造業者は、明確な周波数範囲内にあり、基準周波数が水晶発振器を用いて与えられる所定の振動周波数を有するコントローラを製造または購入する。そして製造過程において、それぞれのタッチスクリーンの特性周波数が特定され、必要ならば、確実にタッチスクリーンの特性周波数とコントローラの発振周波数とが十分に適応するように特性周波数が調整される
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチスクリーンの特性周波数をより慎重に特定する必要がある。ここで対象となる種類の音響タッチスクリーンは、狭帯域フィルタの特性を有する。狭帯域の中心周波数は、反射素子の間隔、および音波の速度によって決まる。送信トランスデューサに短い時間のバーストが加わると、音波が受信トランスデューサまで最短距離で伝播する時間に相当する遅延時間が経過した後に一連の長く続く波列が検出される。入力されるバーストの周波数スペクトルは、バーストが短期間であることに起因して、通常極めて大きく広がるところ、出力される一連の波列のスペクトルは、極めて狭小で、特定の周波数で鋭いピークを有することが理想的である。この特定の周波数は、タッチスクリーンの特性周波数と呼ばれる。タッチシステムの動作周波数がタッチスクリーンの特性周波数に適応することが要求される。
【0006】
原理的には、タッチスクリーンは単一の特性周波数を有することが理想的である。ただし製造上のばらつきにより、特性周波数は複数にわたり、または一定の範囲を有することがある。タッチスクリーンの現実の製造過程において、タッチスクリーンの特性周波数が実質的にただ1つであり、コントローラの基準発振器により決まる発振周波数に適応するように費用と労力が投じられている。タッチスクリーンの製造過程において期待される成果を実現するためには、アレイの緻密な配置設計、入手する原材料の供給プロセスの厳重な管理、および反射アレイの適正な電気テストを行う必要がある。さらに予期しない変化または変動があったとき、直ちにこれを是正する必要がある。たとえばアレイを再設計するか、新しいプリントマスクを作成する必要が生じる場合がある。タッチスクリーンの特性周波数を適正に維持するために必要な調整、管理およびテストを実施することにより、製造コストが増大し、さらに音響タッチスクリーンの製造の難しさに熟練した作業者を擁する工場であっても、その生産収量を低減することになる。これは、現在の音響タッチスクリーン業界における重要な解決課題である。
【0007】
一般に、周波数の不適応は、本質的に全体的か部分的かに分類できる。周波数不適応が全体的である場合、不適応の原因はタッチスクリーン全体に影響を及ぼす。たとえば、コントローラの基準発振器の振動がドリフト(変動)し、あるいは(たとえばガラス基板が異なるガラス業者によって製造されたために)ガラス基板が予想しない音速を有する場合、タッチスクリーン全体において、コントローラの発振周波数をタッチスクリーンの特定周波数に適応させることができる。これに対し、一方、周波数不適応が部分的である場合、タッチスクリーンの特定の領域においてのみ、コントローラとの不適応が生じる。
【0008】
全体的および部分的な周波数不適応はさまざまな原因に起因する。不適応のいくつかの原因は品質管理を十分に行うことにより排除することができるが、こうした品質管理に要するコストは、しばしば非常に高くつく場合がある。たとえば、タッチスクリーンのガラス基板のばらつきにより、音速が変動し、全体的な周波数不適応が生じる。ガラスの供給業者を管理し、製造プロセスを管理して、すべての基板の音速が所定の狭い範囲内に収まるようにすることは、経済的に不可能である。音響反射アレイが陰極線管(CRT)の表面プレートに直接的に印刷される場合、ガラス供給業者および製造プロセスを管理することは、より困難となる。ガラスの化学組成および熱履歴(アニ−ル時間およびアニ−ル温度等)を含む特定のガラス特性を管理して、全体的な周波数不適応を排除することは困難である。
【0009】
周波数不適応のもう1つの原因は、タッチスクリーンの基板上に印刷された反射アレイのばらつきにある。このばらつきは、たとえばアレイマスクがスクリーン印刷プロセス中に変形したことに起因する。プリントマスクの変形は、アレイがCRTの表面プレート上に直接的な印刷される場合に、特に問題となる。パッドプリント等の他のアレイ印刷技術は、印刷処理時に生じる位置合わせ誤差の影響を受け、さらなる周波数不適応の原因となる。周波数不適応のもう1つの原因は、平坦でない基板表面の球形の幾何学的影響を適正に較正しなかったことによる。
【0010】
当該技術分野において、コントローラの発振周波数を、特定のタッチスクリーンの動作周波数に適応させる方法および装置が必要とされている。本発明は、そのような方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コントローラの周波数を、反射アレイを含む特定のタッチスクリーンの基板の動作周波数条件に適応させる方法および装置を提供する。とりわけ本発明に係るコントローラは、バースト信号を、タッチスクリーンの送信トランスデューサに出力し、あるいはタッチスクリーンの受信トランスデューサからの信号を調整することにより、タッチスクリーンの基板の特定の動作周波数特性に対応するように構成される。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、まず特定のタッチスクリーンの1またはそれ以上の特性周波数が特定される。そしてこの基板とともに使用されるコントローラの周波数が、基板の測定された1またはそれ以上の特性周波数に適応するように調整され、2つの構成部品を適応したセット(組)として対をなす(カップリングまたはペアリングする)ことができる。別の態様によれば、2つの構成部品(タッチスクリーンの基板とコントローラ)の動作周波数を適応させる前に、基板とコントローラとをカップリングする。カップリングした後に、システムを初期化して、その間にタッチスクリーンの基板の周波数特性が特定される。その後に、コントローラの特性周波数が基板の周波数特性に適応するように調整される。システムは、基板の特性周波数を定期的に再テストし、必要に応じて、コントローラの出力を再調整してもよい。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、主として全体的な周波数不適応による誤差を解消しようとするとき、本発明に係る適応可能なコントローラは、アナログ信号処理技術および水晶基準発振器を採用する。デジタル乗算器を用いて基準発振器の出力を加工(変形)し、送信トランスデューサに送信される所望の周波数を有するトーンバーストを生成し、そして/または受信回路が用いる周波数に変えてベースバンド信号を生成する。バースト長は、バースト回路により決定される。所望の動作周波数は、デジタル乗算器の出力信号を受信トランスデューサの適当に調整された出力信号と比較するミキサ内蔵回路によって決定される。そしてミキサ内蔵回路からの出力信号を用いて所望の動作周波数を決定する。
【0014】
本発明の別の実施の形態において、全体的および部分的な周波数変動を較正するために、本発明に係る適応可能なコントローラは、デジタル信号処理技術および基準水晶発振器を用いる。この実施の形態において、デジタル信号プロセッサは、一対のミキサから、デジタル化され、かつフィルタ処理された出力を受信する。これらのミキサに対する入力信号は一対の基準信号であり、その一方は90度で位相シフトされ、適切にフィルタ処理され、かつ増幅された受信トランスデューサRF信号である。この実施形態は、受信信号の位相や振幅等の一式の数学的内容がデジタル化される位相敏感コントローラの使用例である。デジタル化された一式の情報がデジタル信号プロセッサのアルゴリズムにより処理できるとき、ソフトウェアで調整可能な周波数フィルタを受信信号に適用することができる。デジタル信号プロセッサは、メモリに格納された補正値に基づいて、周波数フィルタを、最後のバーストが送信された後、好適には遅延時間に応じて変動する特定の中心周波数に適応させる。すなわちこのシステムは、音波反射アレイの部分的な変動によって生じる変動に適応することができる。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態によれば、非水晶局部発振器を用いて、適応可能なコントローラにおける基準信号を得ることができる。そのような発振器を用いることにより、コントローラを十分に小型化して、タッチスクリーンの基板上に直接的に実装することができる。またフィードバックループを用いて、発振器のドリフトを補償することができる。この実施形態において、タッチスクリーンの受信トランスデューサからの調整されたRF信号が、局部発振器の出力信号と混合される。ミキサからのIF(中間周波数)出力信号は、電圧を生成する弁別回路に送信され、その符号は、周波数が所望の周波数よりも高いか低いかによって決まり、その振幅は、所望の周波数からのずれ(逸脱)の度合いによって決まる。弁別器からの出力信号を用いて、タッチスクリーンの周波数と合致するように、局部発振器の周波数を調整する。所望のバースト周波数を実現するために、局部発振器からの安定した出力信号は、中間周波数発振器からの出力と混合される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態において、バーストは、電圧制御の可変周波数帯域フィルタを用いて、受信回路を処理する回路の中心周波数のみを十分に調整する程度に十分に広帯域である。
【0017】
以下の明細書および図面を参照することにより、本発明の本質および利点について、さらに詳細に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術による音響タッチスクリーンの概略図である。
【図2】従来技術によるタッチスクリーンの1つの軸について、表面弾性波トランスデューサが受信する波形信号の時間に対する信号振幅を示すグラフである。
【図3】タッチスクリーン上をタッチすることにより波形が妨害されたときの図3と同様の波形の時間に対する信号振幅を示すグラフである。
【図4】図2および図3に示される波形に垂直な方向におけるタッチスクリーンの表面に渡って伝播する波形が妨害されたときのグラフである。
【図5】本発明に係る1つの方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る別の方法を示すフローチャートである。
【図7】全体的な変動を補正する、本発明によるコントローラを示す概略図である。
【図8】図7に示すデジタル乗算器の周波数を調整するために用いられる技術を説明するフローチャートである。
【図9】クアドラチャ・サム検知器を示す概略図である。
【図10】図11に示す別の実施形態の方法を説明するフローチャートである。
【図11】全体的変動および部分的変動を補正する、本発明による適応可能なコントローラを説明する概略図である。
【図12】図11および図15に示す適応可能コントローラで用いられるデジタルバーストプロセッサを説明する概略図である。
【図13】タッチスクリーン基板に直接的に実装できるコントローラを示す概略図である。
【図14】図15に示す別の実施形態による方法を説明する概略図である。
【図15】全体的変動および部分的変動を頻繁に補正する、本発明による適応可能なコントローラを説明する概略図である。
【図16】受信中心周波数のみが調整される本発明による適応可能なコントローラを示す概略図である。
【図17】タッチスクリーン特性に対し、1組の追加のトランスデューサを使用する音響タッチスクリーンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、従来技術による表面弾性波を用いたタッチスクリーン100を示す図である。この種のタッチスクリーンは、陰極線管(すなわちCRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(すなわちLCD)、または他の種類のディスプレイとともに利用することが好ましい。一般的な種類の音響タッチスクリーンは、レーリ波を採用する。本明細書において、レーリ波の用語は、準レーリ波を含むものとして使用される、レーリ波タッチスクリーンについて、Adlerらに付与された米国特許第4,642,423号、第4,645,870号、第4,700, 176号、第4,746,914号、第4,791,416号、および再発行特許第33,151号、Brennerらに付与された4,825,212号、第4,859,996号、第4,880,665号、Davis-Cannonらに付与された米国特許第4,644,100号、第5,739,479号、ならびにKentに付与された米国特許第5,708,461号、第5,854,450号に開示されている。ラム波や横波等の他の種類の音波、または(レーリ波を含む)他の種類の音波が組み合わされたものを採用する音響タッチスクリーンも知られている。こうした音響タッチスクリーンは、Kentに付与された米国特許第5,591,945号および第5,854,450号、Knowlesに付与された米国特許第5,072,427号、第5,162,618号、第5,177,327号、第5,243,148号、第5,329, 070号、第5,573,077号、およびKnowlesに付与された米国特許第5,260,521号に記載されている。本願明細書で引用された文書は、あらゆる目的において、ここに一体のものとして統合される。ここで表面弾性波タッチスクリーンについて簡潔に説明し、本発明をより詳細に理解することを支援する。
【0020】
タッチスクリーン100は、表面弾性波、たとえばレーリ波、ラブ波、および表面上のタッチ(接触)に敏感な他の波を伝播するのに適した基板101を有する。システムは、送信トランスデューサ105、受信トランスデューサ107、および一対の関連する反射アレイ109,111を有し、x軸103に沿ったタッチ座標軸を決定する。同様のシステムが、送信トランスデューサ115、受信トランスデューサ117、および関連する反射アレイ119,121を有し、y軸113に沿った座標軸を決定する。送信トランスデューサ105,115は、通常、プロセッサ125により制御されるコントローラ123に接続される。同様に、受信トランスデューサ107,117は、信号処理システム127を含むコントローラ123に接続される。トランスデューサ105,115に同時に信号を供給してもよいが、2つの座標検知チャネルの間のインタフェースおよびクロストークを低減するために、順次に信号を供給することが好ましい。順次に信号を検知する手法によれば、多くの必要とされる回路を交互に利用することができるので、重複した回路を設ける必要性を排除して、回路の煩雑さを低減することができる。また回路の複雑さをさらに低減するために、通常、両方の送信トランスデューサ105,115は、同一周波数を有するバーストを送信する。
【0021】
以下に、一方の検知チャネルについて詳細に説明する。以下のチャネルについての説明は、第2の検知チャネルに等しく適用される。基板101におけるx軸103に沿ったタッチ座標を決定するために、送信トランスデューサ105は、経路129に沿ったバースト音波(たとえば、約5マイクロ秒のバースト音波)を発する。このバースト音波が有するバンド幅が比較的広いため、周波数はあまり明確に限定されていない。反射アレイ109は、経路129に沿って配置される複数の反射素子131を有し、各反射素子は、経路129に対し約45度の角度で傾斜するように配置されている。各反射素子131は,経路129に沿って伝播する音波から、複数の波成分133を抽出し、その波成分133が好適にはy軸113に沿って基板101の表面に沿って伝播するように設計される。反射アレイ109のパターンは、個々の反射素子131により反射された個々の波成分がコヒーレントに足し合わされることにより、振幅が実質的に均一の直線的な波面を生成するように設計される。これらの波成分133は、反射アレイ111内の複数の反射素子135により再び結合され、各反射素子135により、経路137に沿って波成分を受信トランスデューサ107に仕向けられる。アレイの個々の反射素子135は、経路137に沿って配置され、経路に対して約45度の角度で傾斜する要に配置されている。受信トランスデューサ107は、送信トランスデューサ105から発せられた音波が、基板101に付随する音速によって変化する時間遅延に起因して、短いバーストというより、比較的に長期間の信号(たとえば約150マイクロ秒)を受信する。
【0022】
受信トランスデューサ107は、経路137に沿って受信される波信号を電気信号に変換する。この電気信号は、たとえば受信波の到着時間について解析される。図2は、そのような波の典型的な時間解析を示すグラフである。時間に対する、受信された波の振幅、すなわちRF(高周波)信号の包絡線が図示されている。時刻t1において、信号が信号源123からトランスデューサ105に提供される。時刻t2において、最初に波信号がトランスデューサ107により受信される。時刻t1とt2の間の遅延時間は、波がトランスデューサ105から発させられ、アレイ109の最初の反射素子139に到着し、パネル101の表面に渡って伝播し、アレイ11の最初の反射素子によって反射されるまでの遅延時間に対応する。時刻t3において、最後の波がトランスデューサ107に到達する。アレイの反射素子の間隔および設計に依存するが、波が遮られない場合、時刻t2から時刻t3までの包絡線の振幅は比較的一定である。
【0023】
図3は、トランスデューサ107によって受信される波形の2つ目のグラフである。時刻ttにおいて、波形の振幅は、くぼみ301を有することが図示されている。くぼみ301は、基板101上のある位置143における音波の減衰によるものである。信号プロセッサ127は、プロセッサ125と協働して、t1からttまでの遅延時間を解析することにより、タッチ143のx座標を計算することができる。同様に、プロセッサ125,127は、信号源123、トランスデューサ115,117および反射アレイ119,121と協働して、タッチ143のy軸を計算することができる。図4は、トランスデューサ117が受信した波形のグラフであり、タッチ143による減衰くぼみ401を示している。
【0024】
図5および図6は、本発明の適応可能なコントローラに関連した基本的な処理手順を示すフローチャートである。図5に示される方法は、ユーザサイド(ユーザの使用場所)で行ってもよいが、タッチスクリーンシステムの製造過程において行うことが最も好ましい。ステップ501において、特定のタッチスクリーンの1つまたはそれ以上の特性周波数が、既知の種々のテスト技術のうち任意のものを用いて決定される。たとえば製造現場でテストされる場合、タッチスクリーンは検査用治具内に配置され、音波が基板の表面を横断するように形成される。タッチスクリーンの1またはそれ以上の特性周波数が決定された後において、そのタッチスクリーンとともに用いられる予定のコントローラの周波数は、測定されたタッチスクリーンの周波数に適応するように調整される(ステップ503)。一般には、コントローラの周波数は、所望の周波数が得られるまで調整される。択一的には、コントローラは、得られた出力周波数に応じたコントローラ設定値を記録したルックアップテーブルを有していてもよい。好適には、ルックアップテーブルは個々のコントローラに固有のものであって、すなわち各コントローラはそれぞれのばらつきにより左右されるルックアップテーブルを有する。特定のタッチスクリーンの動作周波数が決定された後、そのタッチスクリーンとカップリングされるコントローラのルックアップテーブルを用いて、コントローラが適正に設定される。コントローラを調整する方法の如何によらず、一旦、コントローラが基板に適応されると、タッチスクリーンシステムをアセンブリすることができる(ステップ505)。
【0025】
図6に示す方法によれば、コントローラとタッチスクリーンの2つの周波数を適応させようとする前に、コントローラとタッチスクリーンとをカップリングする(ステップ601)。その後、タッチスクリーンシステムとしてのインストールが完了し(ステップ603)、システムの初期化が開始される(ステップ605)。システムの初期化中、タッチスクリーンをテストして、1つまたはそれ以上の特性周波数を決定する(ステップ607)。好適には、このテスト過程において、単一のバーストテストモードで動作するタッチスクリーンの標準的な送信/受信トランスデューサ(105/107および/または、115/117など)を使用する。択一的には、一対の専用トランスデューサを用いてもよい。基板の1つまたそれ以上の特性周波数が決まると、コントローラの周波数を調整して(ステップ609)、システムを通常動作できるよう準備する(ステップ611)。
【0026】
上述の方法の図6に示す変形例において、タッチ動作中に、周期的にコントローラを調整するようシステム設計することにより、最適な周波数適応を保証することができる。ただし上述のシステムとは対照的に、タッチスクリーンを再テストし、コントローラを再調整するという周期的なテストシーケンスを実行する(ステップ613)。システムが起動シーケンスに入る毎に、または所定の期間が経過する毎に、コントローラを再調整するようにしてもよい。一般に、タッチスクリーンの基板またはコントローラが温度に起因して変動しやすい場合には、コントローラを周期的に調整することが好ましい。ポリマ製の基板が用いられた場合、基板における音波の速度は周囲温度の変化に伴い変動しやすい。同様に、コントローラが、水晶発振器を使用しない場合、基準周波数はドリフト(変動)しやすいので、コントローラを頻繁に適応させる必要がある。
【0027】
破壊行為等によるタッチスクリーン基板の故障またはコントローラの故障により、タッチスクリーンシステムがユーザサイドで故障した場合、上述の適応可能コントローラは、明らかな利点を有する。コントローラの周波数を適応させることが可能であるため、新しいタッチスクリーンまたは新しいコントローラを、現地にて容易にインストールすることができる。これは、製造業社が修理するためにタッチスクリーンシステム全体を返送し、あるいは現地で交換するために、適応させたタッチスクリーン/コントローラをユーザサイドに送ることに比べて好ましいものである。たとえば既存のタッチスクリーンシステムのタッチスクリーンを交換する必要があるとき、古いコントローラは新たに初期化テストを実行して、新しいタッチスクリーンの1つまたはそれ以上の特性周波数を特定し、コントローラの周波数をその新しい特性周波数に適応させるようにリセットすることができる。択一的には、新しいタッチスクリーンの識別コードを用いて、上述のルックアップテーブルを参照して、コントローラの周波数を設定することができる。同様に、新しいコントローラがユーザサイドで必要となった場合、その新しいコントローラを初期化テストにより既存のタッチスクリーンに適応させるか、あるいはルックアップテーブル、および古いタッチスクリーンの識別コードを参照して設定してもよい。後者の手法によれば、コントローラは、製造業者の工場またはユーザサイドのいずれでも設定することができる。
【0028】
本発明は数多くの実施形態を有し、各実施形態は、コントローラの周波数をタッチスクリーンの条件(周波数)に適応させる機能を提供する。これらの実施形態において、適応可能コントローラが調整する周波数不一致の発生原因が異なる。図7に示す実施形態は、「全体的な」周波数不適応エラー、すなわちコントローラとタッチスクリーンとの間の周波数適応性に全体的に影響を与えるエラーを課題とするシステムで利用されるものである。たとえば一片のガラスにおける音波の速度は、通常、まさにその組成に応じて変動する。すなわちガラスの組成が、ガラスの生産ロット間、またはガラス供給者間においてばらつきが生じるとき、周波数に影響を与えるファクタが十分に管理されているとしても、音波の速度がガラスの生産ロット間で変動するため、組成のばらつきによって生じるエラーが原因で、タッチスクリーンの全体の周波数特性が影響を受ける。特定の具体例によれば、タッチスクリーンの製造工程においてガラスの焼戻しステップがしばしば必要であるが、ガラスの焼戻しステップの時間および温度特性に依存して、個々のタッチスクリーン間で、特性周波数がばらつく場合がある。
【0029】
(ガラス組成のばらつきに起因する)時間によらない全体的な周波数不適応エラーを有するタッチスクリーンにおいて、本発明に係る適応可能コントローラは、単一の適応周波数アルゴリズムを用いることが好ましい。この場合、コントローラとタッチスクリーンとの間の不適応が時間により変化しないならば、複数回または連続して周波数を適応させる必要はない。むしろ、この実施形態の意図するところは、無作為に選択されたタッチスクリーンと、無作為に選択されたコントローラ(すなわち、ペアリングされていないタッチスクリーンとコントローラの組)を、最終的なシステムアセンブリの際、またはシステム回復の際に、首尾よくペアリングできるようにすることである。したがって、この適用周波数アルゴリズムは、ペアリングされたタッチスクリーンとコントローラの初期起動シーケンス中に実行されることが好ましい。
【0030】
図7に示される適応可能コントローラの実施形態は、アナログ信号処理技術を採用する。ただしデジタル信号処理も同様にこの実施の形態で採用できることを理解されたい。コントローラ700内には、所望の周波数に近い周波数で振動する水晶発振器701が設けられている。この基準発振器701からの出力は、コントローラ700内のマイクロプロセッサ705と、デジタル乗算器703(デジタル分周器ともいう。)に供給される。デジタル乗算器703は、マイクロプロセッサ705からデジタル乗算器703に送られる指令に基づいて、(たとえば水晶発振器の周波数に有理数A/Bを乗じることによって)水晶発振器からの出力を数学的に変更し、所望の周波数を生成する。すなわち水晶発振器701と協働するデジタル乗算器703は、タッチスクリーンに付随するアナログ部品のための主発振器704を構成する。
【0031】
デジタル乗算器703からの出力信号を用いてトーンバーストが生成され、トーンバーストは、アナログライン707に沿って、タッチスクリーンの送信トランスデューサ(たとえば図1のトランスデューサ105,115)に出力される。トーンバーストは、乗算器703によって出力される周波数を有し、マイクロプロセッサ705に接続されるバースト回路709によって決定されたバースト長を有する。トーンバーストは、通常、送信トランスデューサに送信される前に、バースト増幅器711により調整され、増幅される。
【0032】
所望の動作周波数を決定するために、受信トランスデューサ(図1の107,117)からの出力信号は、ライン713に介してミキサ内蔵回路715に送信される。好適には、トランスデューサからの出力信号は、まずバンドバスパスフィルタ717およびRF増幅器719を通過する。通常、固定型広帯域フィルタであるバンドバスフィルタ717を、主としてノイズ抑制回路として用いて、RF入力信号を調整する。RF増幅器719は、所望のレベルまで信号を増幅する。ミキサ内蔵回路715は、調整され、増幅された受信トランスデューサからの信号の周波数成分を、デジタル乗算器703からの出力信号と比較し、相当に緩やかに変動する実質的なDCベースバンド信号を出力する。ミキサ内蔵回路715からの出力信号は、ADコンバータ723によりデジタル化され,マイクロプロセッサ705に供給される。任意ではあるが、デジタル化の前に、ローパスフィルタ721がミキサ内蔵回路の出力信号を追加的に調整するが、通常ミキサ内蔵回路が制限的な狭帯域フィルタ処理を行う。
【0033】
上述のように、構成部品703は、好適にはA/Bデジタル乗算器である。ただし包括的には、構成部品703は単なる周波数変更回路であり、マイクロプロセッサ705からの制御信号に応答して水晶発振周波数を変更する任意のデジタル電子回路、アナログ電子回路、またはデジタル/アナログ混合電子回路であってもよい。
【0034】
用途によるが、バースト中心周波数または受信中心周波数を適応させるだけで足りる場合がある。バースト中心周波数を適応させるだけで足りる場合、回路715は、デジタル乗算器703からの入力信号を必要としない。したがって、このコントローラに一般にみられる、より標準的な検知器で置換してもよい。受信中心周波数を適応させるだけで足りる場合には、デジタル乗算器703とバースト回路709との間を接続する必要はない。
【0035】
図8は、デジタル乗算器703の周波数を調整して、これに接続されるタッチスクリーンの周波数を適応させるために使用される技術を説明するフローチャートである。上述したように、この実施形態は、起動時(ステップ801)に、コントローラの周波数をタッチスクリーンの周波数に適応させるものである。択一的には、このシステムは、周期的に、または最初の起動サイクル時にのみ、コントローラの周波数適応を実施するように設計してもよい。
【0036】
起動ステップ801の後、マイクロプロセッサ705は、所定の周波数範囲を通して、デジタル乗算器703の出力信号を掃引する(ステップ803)。コントローラは、好適には、まず大まかに(粗く)調整処理を実行した後、緻密に(細かく)調整処理を実行するが、これら2つの調整処理を組み合わせて、単一の走査シーケンスを行うことができる。したがってステップ803では、所定の周波数範囲が比較的大きい周波数ステップを用いて走査される。各周波数ステップに対するADコンバータ723の出力信号が収集され(ステップ805)、主発振器の出力信号とタッチスクリーンとの間の最も近い適応を示す最大信号振幅が選択される(ステップ806)。次に、より小さい周波数ステップを用いて、先に選択された周波数付近で主発振器の出力周波数を走査することにより、この走査/最適化処理を繰り返して行う(ステップ807−809)。そしてタッチスクリーンの特性周波数に最も近いものとしてステップ809で決定された周波数が、メモリに入力され(ステップ811)、主発振器回路の出力信号の周波数を所望の周波数に確実に維持することができる。
【0037】
図8は2段階の周波数走査方法を示すものであるが、所望の出力周波数を決定するために他の数多くの技術があることを当業者ならば理解されるところである。本発明は、たとえばディザ法または逐次近似法も採用することができる。
【0038】
図8の基本的なアルゴリズムは、ADコンバータの合計の使用を必要としない。一般に、ステップ805,808は、周波数不適応の程度を示唆する任意の測定可能量を収集することを表し、ステップ806,809は、許容範囲内の小さな周波数不適応に相当する測定可能量を選択することを表すものである。たとえば、マイクロプロセッサ705は、所定の時間間隔において、受信信号およびデジタル乗算器703の出力信号の両方のRFサイクル数をカウントしてもよい。RFサイクル数の差により周波数不適応を測定することができる。同じ目的を達成する他の回路および技術が当業者に広く知られている。
【0039】
図9は、ミキサ内蔵回路715の例示的な具体例として、クアドラチャ・サム(quadrature-sum)検知器を示す。調整されたRF入力信号901は、ミキサ903のデジタル乗算器703から出力された発振器と混合される。ミキサ903は、2つの入力周波数の和周波と、差周波を出力する。和周波は、約10MHzであり、ローパスフィルタ905を用いて除去される。残った周波数は、0に近い、即ちベースバンドである。上述の単一のミキサ回路を用いて、ベースバンド信号を出力するが、その出力信号は、発振器出力とRF入力信号の相対的位相に依存する。相対的な位相の独立性を達成するために、すなわちADコンバータ723によりデジタル化された波形のビートパターンを避けるために、クアドラチャ・サム検知器は、図9に示すように2つのチャネルを有する。図示のように、第2のミキサ907を用いて、発振器から入力される周波数の位相を90度で位相シフトする。第2のミキサ907の出力信号は、別のローパスフィルタ905を通過した後、クアドラチャ・サム回路909において第1のチャネルからの出力信号と合計される。回路909の出力信号は、ビートパターンのないベースバンド信号911であり、受信された信号の正確な位相から独立している。事実上、図9のクアドラチャ・サム検知器は、その中心周波数が調整可能で、デジタル乗算器703の出力の周波数によって制御される狭帯域バンドバスフィルタを提供する。
【0040】
図9に示すミキサ903,907は、他の利用可能なミキサ内蔵回路の構成部品であると同様に、クアドラチャ・サム検知器の必須の構成部品である。ミキサ903は、たとえばライン713からの信号とソース704の出力信号とを結合して、2つの入力信号の関数であり、それらの周波数の差の関数である所望の出力を得る。クアドラチャ・サム検知器全体を必要としない場合がある。たとえば、バースト周波数のみを調整する必要がある場合、必要とされる出力信号の値は、ライン713からの信号とソース704からの信号との差のビートである。そのような差周波信号は、ダイオードミキサにより容易に生成できる。もちろん、他のミキサデバイスが当業者に知られており、本発明の変形例において利用することができる。
【0041】
図10−12に示す本発明の別の実施形態において、コントローラは、全体的な変動、すなわちタッチスクリーン全体の特性周波数に一定の影響を与える周波数変動、および部分的な変動、すなわちタッチスクリーンの部分的な領域内における周波数変動の両方に適応できるようにプログラムすることが可能である。例示的な目的において、この実施形態はデジタル信号処理技術を用いる。ただし、この実施形態は、同様にアナログ信号処理技術を用いて実行できることを理解されたい。
【0042】
図10は、この実施形態に関連した手順を説明するフローチャートである。必要とされるアレイ堆積ステップ、およびガラス焼戻しステップを含むタッチスクリーン基板の製造が完了した後、アレイの部分的変形の影響を含むタッチスクリーンの特性周波数が測定される(ステップ1001)。好適には、これらの測定は、製造フロアテスト設備を用いて製造工場内で行われる。これらの測定に基づいて、通常、一連の周波数補正値がx軸座標およびy軸座標の両方に対する遅延時間の関数として計算される(ステップ1003)。その後、個々のタッチスクリーンに固有の補正値の組は、その後、この特定のタッチスクリーンとカップリングされる(ステップ1007)適応可能コントローラ1100のメモリにロードされる(ステップ1005)。ステップ1005およびステップ1007は、順番が逆になってよく、タッチスクリーン基板の周波数変動の測定ステップ1001は、補正値計算ステップ1003と組み合わせてもよいことが理解される。
【0043】
図10に示す方法を若干変更した変形例によれば、各タッチスクリーン基板に識別コードが付与される。好ましくは製造業社、販売者またはその両方により、識別コードと、各識別コードに付随する固有の補正値とに関するテーブルが記録される。すなわち、たとえば破損等によりコントローラを交換することが必要になった場合、ユーザは、必要な補正値を事前に読み込んだ新しいコントローラを入手するために、識別コードを通知するだけでよい。
【0044】
本発明に係る図11および図12の実施形態において、適応可能コントローラ1100は、基準用として、発振器1101を利用する。周波数ソースとして、安定した水晶発振器を利用することが好ましい。発振器1101からの出力信号は、分周器/位相シフタに送られる。その分周器/移相器は、約22Mhzの周波数から約5.53MHzの所望の周波数まで周波数を分周し、出力信号の一部を90度だけ位相をシフトする(移相する)。そして位相シフトされない発振周波数1105および位相シフトされた発振周波数1107は、ミキサ1109,1111内において、適当にフィルタ処理され、増幅された受信トランスデューサのRF信号と混合される。コントローラ700の場合と同様に、タッチスクリーン受信トランスデューサからのRF信号は、通常、固定型の広帯域フィルタである帯域フィルタ1113でフィルタ処理され、種々のノイズ成分を除去し、所望の信号レベルを達成するために増幅器1115により増幅される。
【0045】
ミキサ1109,1111の出力信号は、複素平面におけるx信号およびy信号の振幅を表す。すなわち一対のミキサと、一方が90度の位相シフトされた一対の基準信号とを用いることにより、位相と、位相とは無関係の複素表示の振幅を特定することができる。ミキサ1109,1111の出力信号はそれぞれ、一対のローパスフィルタ1117,1119を通過した後、ADコンバータ1121,1123でそれぞれデジタル化される。そして、これらの信号は、デジタル信号プロセッサ(すなわちDSP)1125に送信される。
【0046】
DSP1125は、中心周波数とバンド幅の両方を数学的に制御することができる周波数フィルタとして機能する。DSP1125を数学的に制御して、制御可能なバンド幅および中心周波数を得る方法は、当業者に広く知られているので、ここでは詳細に説明しない。メモリ1127がDSP1125に接続される。メモリ1127は、特定のタッチスクリーン(すなわちコントローラ1100とカップリングされたタッチスクリーン)の周波数特性を測定することによって得られる補正値を格納する。DSP1125は、メモリ1127内に格納された補正値に基づいて、特定の中心周波数に応答する。好適には、DSP1125は、遅延信号に応じて変化する中心周波数に応答し、音波反射アレイにおける部分的変動に起因する変動を参酌する。
【0047】
図11のアイテム1125は、その一般的な用語の意味において、デジタル信号プロセッサ(すなわちDSP)である。デジタル信号処理とは、ADコンバータ1121,1123からのデジタル信号の数学的またはデジタル的な処理を意味する。DSP1125は数多くの方法で実現することができる。たとえば、DSP1125はマイクロプロセッサ1131により実行されるプログラムコードであってもよい。択一的には、DSP1125は音波タッチスクリーン用コントローラのためにカスタム設計されたデジタル回路であってもよい。さらに、デジタル信号処理は、それに限定されないが、電子エンジニアがしばしば引用する「DSPチップ」というパッケージ化されたシリコンチップで行ってもよい。
【0048】
送信トランスデューサバーストを発するために、水晶発振器1101からの出力信号がデジタルバースト回路1129に供給される。バースト回路1129は、マイクロプロセッサ1131から受信した指示に従って、この出力信号を処理し、その後、永久メモリ1127から所望の中心周波数に関する指示を受信する。必要ならば、ライン1135を介して送信トランスデューサに送信される前に、デジタルバースト回路1129の出力が、バースト増幅器1133により増幅される。
【0049】
図12は、デジタルバースト回路1129の具体例を示す概略図である。バースト回路1129は、マイクロプロセッサ1131に接続されたビットレジスタ1201(たとえば64×8ビットレジスタ)を内蔵する。マイクロプロセッサ1131は、所望のビットパターン(すなわち永久メモリ1127の出力信号に呼応して、マイクロプロセッサ1131により生成されたデジタルパターン)をレジスタ1201にロードする。そのビットパターンは、バースト中心周波数を決定する。各バーストについて、レジスタ1201にロードされたビットパターンは、バーストを生成するためにクロックアウトされるシフトレジスタ1203にラッチされる。理解されるように、異なるビットパターンを用いて、タッチスクリーンのx座標およびy座標についてバースト中心周波数を決定することにより、2つの軸の間の変動を参酌することができる。ビットパターンは、メモリ1127からの周波数補正データに呼応して、あるいはマイクロプロセッサ1131により計算されるか、あるいはメモリ1127に直接的に記録してもよいことに留意すべきである。
【0050】
この実施形態に係る適応可能コントローラを利用できる別の具体例において、タッチスクリーンは、回折格子トランスデューサを用いる。回折格子トランスデューサにおいて、圧電素子が基板の後面に配設され、回折格子が基板の前面に配設される。回折格子を用いて、圧電素子により生成された圧力波をコヒーレントに回折して、基板の表面に沿って伝播する音波を生成する。こうした回折格子トランスデューサは、動作周波数がガラス厚共鳴周波数と一致するとき、最も効率的であることが確認されている。基板のガラス厚共鳴周波数は、基板の厚さに依存するので、好適には、まずガラス厚さを測定した後、最適動作周波数を計算し、その最適動作周波数に対する適当な反射アレイおよび回折格子が設計される。そして本発明に係る適応可能コントローラ、たとえばコントローラ1100を用いて、コントローラの周波数をタッチスクリーンの特性周波数に適応させる。ただしこの実施形態のいくつかの応用例と異なり、この具体例においては、適応可能コントローラが基準発振器の周波数から10〜20%程度、バースト周波数を変動させる機能を有することが必要である。任意の受信帯域フィルタ、たとえばフィルタ1113は、調整可能であるか、または十分に広帯域バンドであり、タッチスクリーンの特性周波数の変動範囲を十分にカバーすることが必要である。
【0051】
図13は適用可能コントローラの別の実施形態を示す概略図であり、このコントローラは、タッチスクリーン基板に直接的に実装されるため、大きさと費用の両方の点で利点がある。この実施形態において、水晶発振器は、局部発振器1301と置換されるため、所望の大きさが得られる。局部発振器1301は、たとえばシリコンチップ上の回路部品だけで構成されるものであってもよい。水晶発振器に対して局部発振器1301にドリフトがあると、必要とされる周波数の安定を実現するために、フィードバックループが求められる。フィードバックループにより、コントローラ1300は、盛んに、すなわち反復して、発振周波数を所望の周波数に適応させる。
【0052】
上述の実施形態と同様、タッチスクリーンの受信トランスデューサからのRF信号は、まず帯域フィルタ1303および増幅器1305を通過することにより調整される。調整されたRF信号は、ミキサ1307において局部発振器1301の出力信号と混合される。発振器1301は、たとえば入力電圧により周波数が制御される可変周波数発振器である。コンデンサ1308と発振器1301との間の適当なバッファ回路を用いて、発振器1301は、電流等の他の種類の電気的な入力信号を提供することができる。この実施形態において、局部発振器または基準発振器は、タッチスクリーンの周波数よりも大きい周波数で作動する。たとえば名目上、5.5MHzのタッチスクリーン周波数に対して、発振器1301は、約6MHzの周波数で作動するものであってもよい。その後、ミキサ1307からの出力信号は約500kHzの中間周波数に設定される。
【0053】
ミキサ1307から出力される中間周波数信号は、弁別器1311に入力される前に、帯域フィルタ1309を通過する。弁別器1311は、中間周波数信号の周波数が弁別器1311の中心周波数よりも高いか低いかに依存する符号を有し、弁別器の中心周波数との差異の程度に依存する振幅を有する電圧を生成する。そして弁別器1311からの出力信号を用いて、バラクタダイオードにより、局部発振器1301の周波数を調整して、弁別器の出力信号の電圧をゼロ近くまで低減する。制御プロセッサ1314に接続されたスイッチ1313は、サンプルホールド回路の一部であり、これにより局部発振器1301をバーストサイクル/受信サイクルの間で先に特定された周波数で保持することができる。スイッチ1313は、受信サイクルの間閉じられる。
【0054】
システム起動中、局部発振器1301は、相当のマージンで所望の周波数から逸脱して、フィードバックループが発振器を有効に安定化させることを阻害する場合がある。このとき好適には、コントローラ1300は、フィードバックループが機能するまで、局部発振器1301の周波数を徐々に調整するランプ機能を有する。ある動作モードにおいて、起動中、スイッチ1313は開いており、第2のスイッチ1315は閉じている。デジタルアナログ変換器(すなわち、DAC)1317は、マイクロプロセッサ1314の制御下で、発振器1301の周波数を調整し、検知器1319でミキサ1307の出力信号を見ながら、その周波数を増大(または低減)させる。検知器1319は、ADコンバータ1321を介してマイクロプロセッサ1314に接続されている。検知器1319の出力信号が、所定のしきい値を超えて、局部発振器1301が所望の周波数に近似していることを示すとき、マイクロプロセッサ1314は、フィードバックループが局部発振周波数を微調整できるように、スイッチ1315を開き、スイッチ1313を閉じる。択一的には、起動中に、スイッチ1313およびスイッチ1315の両方を閉じてもよい。このモードにおいて、発振周波数が帯域フィルタ1303の帯域内に入ると、マイクロプロセッサ1314は、スイッチ1315を開いて、この時点により以降、フィードバックループが周波数を微調整できるようにする。
【0055】
上述の実施形態と対照的に、局部発振器1301の周波数は、所望のバースト周波数に調整されない。むしろ、局部発振器1301の周波数がタッチスクリーンの周波数に追随して、局部発振器の周波数とタッチスクリーンの周波数との間の差が一定となるように(この具体例では、500kHz)維持される。したがって、所望のバースト周波数を達成するために、局部発振器1301からの安定化させた出力信号は、第2のミキサ1323において中間周波数発振器1325からの出力信号と混合される。中間周波数発振器1325は、中間周波数帯域フィルタ1309と同じ周波数(この具体例では約500kHz)で作動する。ミキサ1323からの出力信号は、所望のバースト周波数(この具体例では約5.5MHz)を有する。帯域フィルタ(図示せず)は、ミキサ1323とバースト回路1327との間に挿入され、ミキサ1323からの所望の和周波または差周波のみを通過させる。上述の実施形態と同様、この周波数におけるトーンバーストの長さは、マイクロプロセッサ1314に接続されるバースト回路1327によって制御される。通常、トーンバーストは、タッチスクリーンの送信トランスデューサの1つに対するライン1331に沿って出力される前に、バースト増幅器1329により所望の振幅に増幅される。
【0056】
図13における回路は、受信信号のRF周波数をより低い周波数だけシフトする回路の具体例であるが、シフトさせる周波数は、必ずしも約500kHz等のベースバンドではない。これは、適応可能な周波数コントローラの設計者により広く利用される技術である。より低い周波数の選択は、RF周波数とベースバンドとの間であればどこでもよい。その最適値は、特定の回路、ノイズ源等の詳細に依存する。
【0057】
図14−15は、基板上の音波の速度が使用中に変動するタッチスクリーンに最も適した本発明の別の実施形態を示す。たとえば上述のように、ポリマ製基板上の音波の速度特性は温度に依存する場合がある。したがって、ポリマ製基板を有するタッチスクリーンは、使用中に(たとえば室温全体の変化に起因して)全体的変動、または(スクリーンの異なる部分により温度が異なることに起因して)部分的変動を生じる場合がある。図14および図15に示す実施形態は、こうした変動に適応できるように設計されている。
【0058】
図14は、実施形態の方法を示すフローチャートであって、コントローラ1500は、頻繁に適応させる必要があるタッチスクリーンに接続されている。この実施形態において、第1のステップは、タッチスクリーンがタッチ(接触)を検知したか否かを判断することである(ステップ1401)。タッチを検知しない場合、コントローラ1500は、タッチスクリーンの周波数特性を決定するテストシーケンス(テストルーチン)を実行する。好適には、その最初のステップは、テストルーチンを最後に行ってから経過した時間を判断することにある(ステップ1403)。あらかじめ設定された時間が経過していない場合(ステップ1405)、そのシステムループは開始点に戻る。あらかじめ設定された時間が経過していた場合、システムは、基板のx座標およびy座標に対し、基板の周波数特性を測定し(ステップ1407)、1組の補正値を決定する(ステップ1409)。これらの補正値はコントローラのメモリに記録され(ステップ1411)、システムループは開始点に戻る(ステップ1413)。そしてタッチを検知すると(ステップ1415)、システムは、タッチ座標を特定し(ステップ1417)、これらの座標を動作システムに送る(ステップ1419)。
【0059】
頻繁に適応可能なコントローラ1500を図15に示す。このコントローラは、いくつかの一部変更点を除き、基本的にコントローラ1100と同じのものである。たとえば、永久メモリ1127を一時メモリ1501で置換している。コントローラ1100と同様、メモリ1501は、タッチスクリーンの特性周波数の変動を補正するために必要な周波数補正値を記憶する。この実施形態に係る一時メモリは、上述のように、コントローラ1500が補正値を周期的に更新するときに必要となる。さらにメモリは、周期的に更新する必要があるので、マイクロプロセッサ1131に対して双方向に通信する。したがって、特性テストシーケンスの際、マイクロプロセッサ1131は、DSP1125の出力信号を用いて、所望の周波数補正値を決定し、メモリ1501に記憶する。
【0060】
図11に示す実施形態において、デジタルバーストプロセッサ1129は、所望のバースト周波数を有するバースト信号を出力する。さらに出力されたバースト信号の電力スペクトルは、一時メモリ1501に記憶された補正値に基づいて調整される。個々のRFパルスの位相の時間変調(たとえば、sin(x)/x曲線に基づくパルス位相)、バーストトレインの振幅変調(たとえば、異なる長さの一連のデジタルパルスの台形包絡線またはスタック)、またはRFサイクルのユニットにおける非積分バースト長を用いることなどを含む、さまざまな技術を用いて、バースト電力スペクトルを調整することができる。
【0061】
図16に示す実施形態によれば、処理される受信信号の中心周波数のみが調整され、バースト信号の周波数は調整されない。この実施形態は、バーストが極めて短く、たとえばRF信号の10サイクル未満の期間を有し、タッチスクリーンの特性周波数における予期される変動をカバーするほど十分に広帯域であるとき、バースト信号の周波数を調整する必要がない場合において適用することができる。
【0062】
図16に示すように、マイクロプロセッサ1601は、名目上のRF動作周波数を受信し、送信トランスデューサ(図示せず)を実行するバースト回路1603を起動する。上述の実施形態と同様に、バースト増幅器1605を用いて、バースト回路1603の出力信号を調整することができる。受信回路チェーンにおける狭帯域フィルタは可変帯域フィルタ1607である。可変帯域フィルタ1607の中心周波数はDA変換器1609により提供される電圧によって制御され、DA変換器1609はマイクロプロセッサ1601によって制御される。フィルタ1607等の可変帯域フィルタに関する適当な回路設計は、当業者により広く知られているので、さらに説明しない。受信トランスデューサ(図示せず)からの信号は、中心周波数を決定する可変帯域フィルタ1607を通過する前に、相対的に広い帯域フィルタ1611を通過し、増幅器1613により増幅してもよい。その信号は、検知器1615により、RF信号からベースバンド信号に変換され、ADコンバータ1617でデジタル化される。マイクロプロセッサ1601は、たとえば図8に示す処理を用いることにより、DA変換器1609に対する最適な設定を決定する。そして最適なDA変換器の設定はメモリ1619に記憶され、マイクロプロセッサ1601は通常のタッチ処理の間、記憶された値を用いる。x信号およびy信号に対して、個別のDA変換器の値を記憶してもよい。
【0063】
上述の各実施形態において、タッチ検知に用いられるトランスデューサ、たとえばトランスデューサ105,107,115および117を用いて、コントローラをタッチスクリーンに適応させることが好ましい。すなわち、たとえばトランスデューサ105が発し、トランスデューサ107が受けた音波から生じた受信信号を、本発明に係る適応可能なコントローラの基準周波数として用いるか、あるいは従来式のタッチスクリーンと同一または類似の手法によりタッチ情報を提供するものとして用いることができる。ただし、タッチスクリーンの特性周波数を決定して、コントローラを適応させるために用いられるトランスデューサは、タッチ検知および情報収集のために用いられるトランスデューサと同じである必要はない。たとえば、図17に示すように、1対のトランスデューサ1701,1703を遅延ラインフィードバック発振器(図示せず)において用いて、タッチスクリーンの特性周波数を決定するが、タッチ検知の際に用いられるトランスデューサ105,107,115,117を追加することができる。択一的には、個別の反射アレイを有する別個の変換器を、タッチスクリーン基板の背面に設けてもよい。好適には、追加したトランスデューサの入力信号および出力信号は、コントローラ700のライン707,713、またはコントローラ1100,1300または1500の相当するラインで多重化される。この方法は、タッチ検知音波経路の必要性と独立して、周波数基準信号の特性を最適化する自由度が得られる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態が、これまでに説明および図示されてきたが、本発明に係る適応方法を用いた他の実施形態が考えられることが理解されるべきである。加えて、上述の実施形態の種々の態様が、本発明から逸脱することなく変更できることを理解すべきである。たとえば、図13に示す実施形態で用いられる非水晶基準発振器およびフィードバックループは、図11および図12で示す実施形態で用いられる水晶発振器の代わりに用いてもよい。すなわち本発明は、その精神または必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化できる。したがって、ここでの開示および説明は、特許請求の範囲で示される本発明の範囲を説明するために例示するものであって、限定するためのものではない。
【符号の説明】
【0065】
100 タッチスクリーン
101 基板
105,115 送信トランスデューサ
107,117 受信トランスデューサ
109,111 反射アレイ
123 コントローラ
125 プロセッサ
127 信号プロセッサ
1701,1703 トランスデューサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波が伝播できる基板と、
基板に接続された少なくとも1つの送信トランスデューサであって、入力信号に呼応した第1のバースト長の音波を送信する少なくとも1つの送信トランスデューサと、
基板に接続された複数の音波反射部を有する反射アレイであって、第1のバースト長の音波を長くして、第2のバースト長の音波を形成する反射アレイと、
基板に接続された少なくとも1つの受信トランスデューサであって、第2のバースト長の音波を受ける受信トランスデューサと、
少なくとも1つの送信トランスデューサおよび少なくとも1つの受信トランスデューサに接続された適応可能コントローラとを備え、
適応可能コントローラは、
第1の周波数を生成する基準発振器と、
基準発振器に接続されたマイクロプロセッサと、
マイクロプロセッサ、基準発振器、少なくとも1つの送信トランスデューサに接続されたデジタルバースト回路であって、バースト制御信号に呼応して少なくとも1つの送信トランスデューサに入力信号を出力するデジタルバースト回路と、
マイクロプロセッサに接続された、1組の周波数補正値を含むメモリとを有し、
マイクロプロセッサは、デジタルバースト回路にバースト制御信号を出力することを特徴とするタッチスクリーンシステム。
【請求項2】
基準発振器は、水晶発振器であることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項3】
バースト制御信号は、ビットパターンであることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項4】
1組の周波数補正値は、マイクロプロセッサによりメモリに伝達されることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項5】
基準発振器に接続された周波数分周器をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの送信トランスデューサが、回折格子トランスデューサであることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項7】
タッチスクリーンシステムを制御する方法であって、
メモリに1組の周波数補正値を格納する格納ステップと、
1組の周波数補正値をデジタル信号プロセッサに送信する第1の送信ステップと、
第1の波形信号を受信トランスデューサで受信する受信ステップと、
第1の波形信号および1組の周波数補正値から、デジタル信号プロセッサを用いて、第2の波形信号を計算する計算ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
1組の周波数補正値を、マイクロプロセッサを用いて生成する第1の生成ステップと、
1組の周波数補正値をメモリに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
受信トランスデューサにより受信された第1の波形信号を周期的に解析する解析ステップと、
解析に呼応して、1組の周波数補正値を生成する第2の生成ステップと、
1組の周波数補正値をメモリに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
特性周波数を有するタッチスクリーンを含むタッチスクリーンシステムを制御する方法であって、
調整可能な第1の周波数を有する信号を生成する生成ステップと、
受信トランスデューサからの出力信号と、第1の周波数を有する信号とを混合して、第2の周波数を有する信号を生成する混合ステップと、
第2の周波数を有する信号を、帯域フィルタに通すフィルタ処理ステップと、
フィルタ処理された信号の第2の周波数を、タッチスクリーンの特性周波数と比較する比較ステップと、
フィルタ処理された第2の周波数が、所望の周波数に実質的に等しくなるまで、第1の周波数を調整する調整ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
システム起動時に、第1の周波数を初期周波数に設定する設定ステップと、
周波数の範囲を通して、初期周波数から第1の周波数をランプするランプステップと
フィルタ処理された第2の周波数が、所望の周波数から所定の差異の範囲内にあるとき、ランプステップを中止する中止ステップとを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の周波数信号を、中間周波数発振器の出力信号と混合して、第3の周波数を有する信号を生成する混合ステップと、
第3の周波数を有する信号をバースト回路に送信する第1の送信ステップと、
バースト信号を生成する生成ステップと、
バースト信号を、タッチスクリーンシステムに接続された送信トランスデューサに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
タッチスクリーンを作動させる方法であって、
タッチスクリーン基板と、タッチスクリーン適応可能コントローラとを備えるタッチスクリーンシステムに電力を供給する供給ステップと、
タッチスクリーン基板の全体に音波を送信する送信ステップと、
音波を受信する受信ステップと、
音波を解析して、タッチスクリーン基板の特性周波数を決定する解析ステップと、
タッチスクリーン適応可能コントローラの周波数を、タッチスクリーン基板の特性周波数に実質的に適応するように調整する調整ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
調整ステップを自動的に行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
調整ステップが、コントローラの可変帯域フィルタの中心周波数を調整することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
送信ステップ、受信ステップ、解析ステップ、および調整ステップが、タッチスクリーン適応可能コントローラの周波数と,タッチスクリーン基板の特性周波数との間の最適な適応を得るために繰り返されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
タッチスクリーンシステムに電力が供給される毎に、解析ステップおよび調整ステップを行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
解析ステップおよび調整ステップを周期的に行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
タッチスクリーンシステムの最初の起動時に、解析ステップおよび調整ステップを行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
タッチスクリーンシステムを製造する方法であって、
特定のタッチスクリーンコントローラに複数の特性周波数を提供する提供ステップと、
特定のタッチスクリーン基板に、1組の動作周波数特性を測定する測定ステップと、
特定のタッチスクリーンコントローラを、特定のタッチスクリーン基板に接続する接続ステップと、
複数の受信特性周波数から、基板動作周波数に実質的に適応する少なくとも1つの特性周波数を選択する選択ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項21】
複数の特性周波数は制御可能であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の制御可能な周波数特性を、特定のタッチスクリーンコントローラに対する複数のタッチスクリーンコントローラの設定と関連付ける関連付けステップと、
関連付けられた制御可能な周波数特性とコントローラの設定に関するルックアップテーブルを記録する記録ステップとを有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
選択ステップが、特定のコントローラ設定を選択して、特性周波数を達成するステップを有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
複数の特性周波数が、複数の部分的受信特性周波数であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
選択ステップが、複数の部分的受信特性周波数から、1組の部分的受信特性周波数を選択することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項1】
音波が伝播できる基板と、
基板に接続された少なくとも1つの送信トランスデューサであって、入力信号に呼応した第1のバースト長の音波を送信する少なくとも1つの送信トランスデューサと、
基板に接続された複数の音波反射部を有する反射アレイであって、第1のバースト長の音波を長くして、第2のバースト長の音波を形成する反射アレイと、
基板に接続された少なくとも1つの受信トランスデューサであって、第2のバースト長の音波を受ける受信トランスデューサと、
少なくとも1つの送信トランスデューサおよび少なくとも1つの受信トランスデューサに接続された適応可能コントローラとを備え、
適応可能コントローラは、
第1の周波数を生成する基準発振器と、
基準発振器に接続されたマイクロプロセッサと、
マイクロプロセッサ、基準発振器、少なくとも1つの送信トランスデューサに接続されたデジタルバースト回路であって、バースト制御信号に呼応して少なくとも1つの送信トランスデューサに入力信号を出力するデジタルバースト回路と、
マイクロプロセッサに接続された、1組の周波数補正値を含むメモリとを有し、
マイクロプロセッサは、デジタルバースト回路にバースト制御信号を出力することを特徴とするタッチスクリーンシステム。
【請求項2】
基準発振器は、水晶発振器であることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項3】
バースト制御信号は、ビットパターンであることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項4】
1組の周波数補正値は、マイクロプロセッサによりメモリに伝達されることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項5】
基準発振器に接続された周波数分周器をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの送信トランスデューサが、回折格子トランスデューサであることを特徴とする請求項1に記載のタッチスクリーンシステム。
【請求項7】
タッチスクリーンシステムを制御する方法であって、
メモリに1組の周波数補正値を格納する格納ステップと、
1組の周波数補正値をデジタル信号プロセッサに送信する第1の送信ステップと、
第1の波形信号を受信トランスデューサで受信する受信ステップと、
第1の波形信号および1組の周波数補正値から、デジタル信号プロセッサを用いて、第2の波形信号を計算する計算ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
1組の周波数補正値を、マイクロプロセッサを用いて生成する第1の生成ステップと、
1組の周波数補正値をメモリに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
受信トランスデューサにより受信された第1の波形信号を周期的に解析する解析ステップと、
解析に呼応して、1組の周波数補正値を生成する第2の生成ステップと、
1組の周波数補正値をメモリに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
特性周波数を有するタッチスクリーンを含むタッチスクリーンシステムを制御する方法であって、
調整可能な第1の周波数を有する信号を生成する生成ステップと、
受信トランスデューサからの出力信号と、第1の周波数を有する信号とを混合して、第2の周波数を有する信号を生成する混合ステップと、
第2の周波数を有する信号を、帯域フィルタに通すフィルタ処理ステップと、
フィルタ処理された信号の第2の周波数を、タッチスクリーンの特性周波数と比較する比較ステップと、
フィルタ処理された第2の周波数が、所望の周波数に実質的に等しくなるまで、第1の周波数を調整する調整ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
システム起動時に、第1の周波数を初期周波数に設定する設定ステップと、
周波数の範囲を通して、初期周波数から第1の周波数をランプするランプステップと
フィルタ処理された第2の周波数が、所望の周波数から所定の差異の範囲内にあるとき、ランプステップを中止する中止ステップとを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の周波数信号を、中間周波数発振器の出力信号と混合して、第3の周波数を有する信号を生成する混合ステップと、
第3の周波数を有する信号をバースト回路に送信する第1の送信ステップと、
バースト信号を生成する生成ステップと、
バースト信号を、タッチスクリーンシステムに接続された送信トランスデューサに送信する第2の送信ステップとを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
タッチスクリーンを作動させる方法であって、
タッチスクリーン基板と、タッチスクリーン適応可能コントローラとを備えるタッチスクリーンシステムに電力を供給する供給ステップと、
タッチスクリーン基板の全体に音波を送信する送信ステップと、
音波を受信する受信ステップと、
音波を解析して、タッチスクリーン基板の特性周波数を決定する解析ステップと、
タッチスクリーン適応可能コントローラの周波数を、タッチスクリーン基板の特性周波数に実質的に適応するように調整する調整ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項14】
調整ステップを自動的に行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
調整ステップが、コントローラの可変帯域フィルタの中心周波数を調整することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
送信ステップ、受信ステップ、解析ステップ、および調整ステップが、タッチスクリーン適応可能コントローラの周波数と,タッチスクリーン基板の特性周波数との間の最適な適応を得るために繰り返されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
タッチスクリーンシステムに電力が供給される毎に、解析ステップおよび調整ステップを行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
解析ステップおよび調整ステップを周期的に行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
タッチスクリーンシステムの最初の起動時に、解析ステップおよび調整ステップを行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
タッチスクリーンシステムを製造する方法であって、
特定のタッチスクリーンコントローラに複数の特性周波数を提供する提供ステップと、
特定のタッチスクリーン基板に、1組の動作周波数特性を測定する測定ステップと、
特定のタッチスクリーンコントローラを、特定のタッチスクリーン基板に接続する接続ステップと、
複数の受信特性周波数から、基板動作周波数に実質的に適応する少なくとも1つの特性周波数を選択する選択ステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項21】
複数の特性周波数は制御可能であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の制御可能な周波数特性を、特定のタッチスクリーンコントローラに対する複数のタッチスクリーンコントローラの設定と関連付ける関連付けステップと、
関連付けられた制御可能な周波数特性とコントローラの設定に関するルックアップテーブルを記録する記録ステップとを有することを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
選択ステップが、特定のコントローラ設定を選択して、特性周波数を達成するステップを有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
複数の特性周波数が、複数の部分的受信特性周波数であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
選択ステップが、複数の部分的受信特性周波数から、1組の部分的受信特性周波数を選択することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−277598(P2010−277598A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−158885(P2010−158885)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【分割の表示】特願2002−545440(P2002−545440)の分割
【原出願日】平成12年11月21日(2000.11.21)
【出願人】(399034633)イーロ・タッチシステムズ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Elo TouchSystems,Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158885(P2010−158885)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【分割の表示】特願2002−545440(P2002−545440)の分割
【原出願日】平成12年11月21日(2000.11.21)
【出願人】(399034633)イーロ・タッチシステムズ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Elo TouchSystems,Inc.
【Fターム(参考)】
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