説明

タッチセンサ及びタッチセンサシステム

【課題】タッチ位置の検出分解能を向上させることができるタッチセンサ及びタッチセンサシステムを提供する。
【解決手段】円形に等間隔で配置されるとともに同じ形状とされた8つの電極41〜48と、電極41〜48毎に静電容量の変化量に応じた電圧を生成するC/V変換器と、C/V変換器により生成された電圧に基づきタッチ位置を算出する演算回路70とを備える。演算回路70は、C/V変換器により生成される電圧に基づき、円形の中心を通り径方向に延びる基準線分に対して、円形の中心とタッチ位置とを結ぶ線分とのなす角である中心角を算出し、算出した中心角により円周方向におけるタッチ位置を算出するタッチセンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化を利用して、例えば人の指の近接を検出するタッチセンサ、及びこのタッチセンサを操作手段として備えたタッチセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるタッチセンサが知られている。特許文献1のタッチセンサは、5枚の電極と、静電容量の変化量を電圧に変換する5つの変換器とを備えている。5枚ある電極のうちの4枚は円環状に配置され、1枚は円環状に配置された4枚の電極の中央部に配置されている。5つの変換器は、5枚の電極のそれぞれに設けられている。5枚ある電極のうちいずれかに指が近づくと、その電極の静電容量が変化する。変換器は、電極の静電容量の変化量に応じた電圧を生成する。変換器により生成される電圧の大きさによって、指と電極との接触の有無を判断することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−18905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、タッチセンサを利用して、各種の表示画面、例えばナビゲーションシステムの地図画面をユーザの意図する方向へスクロールさせたいという要望がある。特許文献1では、5枚の電極のうちいずれがタッチされたか否かを検出することができる。このため、円環状に配置された4枚の電極により、4方向を検出することが可能である。中央部の電極は、タッチの有無のみ検出する。従って、特許文献1のタッチセンサによれば、表示画面を4方向へスクロールさせることができる。しかし、4方向を超える方向への表示画面のスクロールには対応困難である。そのため、円周方向におけるタッチ位置の検出分解能についてさらなる向上が望まれている。
【0005】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチ位置の検出分解能を向上させることができるタッチセンサ及びタッチセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、円形に等間隔で配置されるとともに同じ形状とされた少なくとも3つの電極と、前記電極毎に静電容量の変化量に応じた電圧を生成するC/V変換器と、前記C/V変換器により生成された電圧に基づきタッチ位置を算出する演算回路とを備え、前記演算回路は、前記C/V変換器により生成される電圧に基づき、前記円形の中心を通り径方向に延びる基準線分に対して、前記円形の中心と前記タッチ位置とを結ぶ線分とのなす角である中心角を算出し、算出した中心角により円周方向におけるタッチ位置を算出することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、円形に等間隔で配置されるとともに同じ形状とされた少なくとも3つの電極と、前記電極毎に静電容量の変化量に応じた電圧を生成するC/V変換器とを備えるタッチセンサと、前記C/V変換器により生成された電圧に基づきタッチ位置を算出する演算回路を備える制御手段とを備え、前記演算回路は、前記C/V変換器により生成される電圧に基づき、前記円形の中心を通り径方向に延びる基準線分に対して、前記円形の中心と前記タッチ位置とを結ぶ線分とのなす角である中心角を算出し、算出した中心角により円周方向におけるタッチ位置を算出することを要旨とする。
【0008】
従来のタッチセンサ及びタッチセンサシステムでは、導電体と電極との近接の有無しか判断できなかった。このため、電極の数しか制御対象の動作を切り替えることができない。これに対し、請求項1及び請求項2の構成によれば、演算回路は、タッチ位置の中心角を算出し、算出した中心角に応じて、円周方向におけるタッチ位置を算出することができる。算出できる中心角の数は、電極の数に依存しないので、円周方向におけるタッチ位置の検出分解能が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、タッチ位置の検出分解能を向上させることができるタッチセンサ及びタッチセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)は電極の配置を示す正面図、(b)は電極が裏面に貼付されるノブの正面図。
【図3】マイクロコンピュータのメモリに記憶されるスクロールデータとしてのエリアを示す正面図。
【図4】距離算出式及び中心角算出式を導出するためのベクトルを示す図。
【図5】距離算出式及び中心角算出式からタッチ位置が導出されることを示す図。
【図6】他の実施形態における電極の配置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるタッチセンサシステムをナビゲーションシステム具体化した一実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、ナビゲーションシステム1は、各種の情報を表示するディスプレイ10と、当該ディスプレイ10の表示を制御するマイクロコンピュータ20とを備えている。マイクロコンピュータ20には、不揮発性のメモリ21が設けられている。メモリ21には、地図情報が記憶されている。マイクロコンピュータ20は、メモリ21に記憶されている地図情報を読み込み、ディスプレイ10に表示する。
【0013】
<タッチセンサ>
マイクロコンピュータ20には、タッチセンサ30が接続されている。タッチセンサ30は、8枚の電極41〜48と、当該8枚の電極41〜48のそれぞれに接続される8つの発振回路51〜58と、当該8つの発振回路51〜58のそれぞれに接続される8つの変換回路61〜68と、8つの変換回路61〜68がそれぞれ接続される演算回路70とを備えている。演算回路70は、マイクロコンピュータ20に接続されている。なお、発振回路51〜58及び8つの変換回路61〜68は、C/V変換器として機能する。
【0014】
図2(a)に示すように、8枚の電極41〜48は、それぞれ半径2d、中心角40°の扇形から、要(中心O)が一致する半径d、中心角40°の扇側を取り除いた形状とされている。これら8枚の電極41〜48は、隣り合う電極との間に角度5°の隙間を有して円環状に配置されている。詳述すると、電極41は12時の位置、電極43は3時の位置、電極45は6時の位置、電極47は9時の位置、電極42は電極41と電極43との間、電極44は電極43と電極45との間、電極46は電極45と電極47との間、電極48は電極47と電極41との間とされている。これを中心Oを原点とする2次元の直交座標系にあてはめると、電極41は70°〜110°、電極42は25°〜65°、電極43は340°(−20°)〜20°、電極44は295°〜335°、電極45は250°〜290°、電極46は205°〜245°、電極47は160°〜200°、電極48は115°〜155°の範囲を占める。なお、図2(b)に示すように、これら8枚の電極41〜48は、それらの外側の弧が半径2dとされた円形のスイッチノブ80における外周と一致する態様で、当該スイッチノブ80の裏面に貼付されている。スイッチノブ80の表面は、ユーザの指によってタッチ可能とされている。スイッチノブ80は、非導電性の樹脂材料により形成され、その厚さは、距離d(半径2dの1/2)に対して無視できる程度に薄いものとされている。このため、スイッチノブ80の表面におけるいずれの位置をタッチしたときであれ、指と各電極41〜48との距離は、3d以内となる。なお、スイッチノブ80の表面には、半径dとなる円形の図柄と、当該円の外側における1時から12時までのそれぞれの位置に外側へ向かうに従って徐々に先鋭となる12個の二等辺三角形の図柄とがデザインされている。ここでは、12個の二等辺三角形の図柄は、スイッチノブ80の中心から距離3d/2だけ離れた位置に設けられている。
【0015】
スイッチノブ80に例えば人の指が接触する等、電極41〜48に導電体が近接すると、電極41〜48には、静電誘導により電荷が偏る分極が発生する。これにより、電極41〜48における静電容量が変化する。発振回路51〜58は、常時、発振信号を生成する。発振回路51〜58は、電極41〜48の静電容量が変化すると振幅を変化させた発振信号を生成する。本例の発振回路51〜58は、静電容量の変化量の大きさに反比例した大きさの振幅で発振する。発振回路51〜58から発振された発振信号(電気信号)は、変換回路61〜68に入力される。変換回路61〜68は、入力された電気信号の振幅の大きさに反比例した電圧V(スカラー)に変換する。すなわち、電圧Vは、指と電極41〜48との距離の近さに比例する。従って、指と電極41〜48との距離をx、発振回路51〜58が発振し始めるときの指と電極41〜48との距離をxl、発振回路51〜58が最高周波数で発振するときの電圧をVmaxとすると、電圧Vの大きさは、次の(式1)で表される。
【0016】
【数1】

なお、電極41〜48における静電容量の変化の大きさは、電極の厚さ、電極と導電体との距離、誘電体の比誘電率によって異なる。本例では、スイッチノブ80が人の指によりタッチ操作されることを想定し、電極41〜48は、人の指と電極41〜48との距離xが距離3dより近づいたときに、静電容量が変化する比誘電率及び厚さを有している。従って、距離xl=距離3dであるので、上述の(式1)は、次の(式2)に書き換えることができる。
【0017】
【数2】

なお、(式2)におけるkは、指と電極41〜48との近さを表す変数である。変数kは、1に近づくほど指と電極41〜48とが接近していることを、0に近づくほど指と電極41〜48とが離間していることを示す。
【0018】
演算回路70は、変換回路61〜68により生成される電圧Vを取り込み、この取り込んだ電圧Vに基づき、スイッチノブ80に対するタッチ位置を算出する。そして、演算回路70は、算出したタッチ位置を示す電気信号をマイクロコンピュータ20に出力する。
【0019】
<演算回路>
図1に示すように、演算回路70のメモリ71には、変換回路61〜68から入力される電圧Vと比較してスイッチノブ80へのタッチの有無を判断するための基準電圧V、電圧Vからタッチ位置Tを算出するための各種の算出式72が記憶されている。ここでは、基準電圧Vは0とされている。すなわち、演算回路70は、変換回路61〜68の全てから0より大きい電圧Vが入力された場合に、指がスイッチノブ80にタッチされたと判断する。算出式72としては、タッチ位置Tの中心Oからの距離Xtを算出する距離算出式73と、中心Oから3時の方向に延びる線分と線分OTとのなす角である中心角θを算出する中心角算出式74とが記憶されている。これら距離算出式73及び中心角算出式74から算出される距離Xt及び中心角θから、タッチ位置Tを特定することができる。これら距離算出式73及び中心角算出式74の導出については、後に詳細に説明する。
【0020】
演算回路70は、判断部76及び演算部77を備える。判断部76は、各変換回路61〜68から入力される電圧Vがメモリ21に記憶される基準電圧V(ここでは、0)より大きいか、すなわち、(式2)の変数kが0より大きいか否かを判断する。演算部77は、変換回路61〜68から入力される電圧Vからメモリ71に記憶される算出式72を使用してスイッチノブ80へのタッチ位置Tを算出する。
【0021】
<距離算出式及び中心角算出式の算出過程>
次に、距離算出式73及び中心角算出式74から算出される距離Xt及び中心角θが、タッチ位置Tを示すことについて、距離算出式73及び中心角算出式74の導出過程に従って説明する。なお、ここでは、中心Oから3時の方向に向かう線分と、中心Oからある点を結んだ線分とのなす角を、ある点の中心角として説明する。
【0022】
図4に示すように、各電極41〜48において、隣り合わない角同士を結んだ線分の交点を中心D1〜D8としたとき(図2(a)を参照)、中心Oから各中心D1〜D8までの距離をhとする。このとき、各中心D1〜D8の中心角は、中心D1で90°、中心D2で45°、中心D3で0°、中心D4で315°、中心D5で270°、中心D6で225°、中心D7で180°、中心D8で135°である。3時の方向に向かう大きさ1のベクトルを基準ベクトルX(式中では、Xの上に→を付す)、12時の方向に向かう大きさ1のベクトルを基準ベクトルY(式中では、Yの上に→を付す)とした場合、中心Oから各電極41〜48の中心D1〜D8に向かう各ベクトルは、次の(式3)〜(式10)で表される。
【0023】
【数3】

ここで、各電極41〜48における静電容量の変化量は、指と各電極41〜48との近さ、すなわち上述の変数kに比例する。上述の(式3)〜(式10)で表される各ベクトルに、指と各電極41〜48との近さを表す変数kを掛け合わせると、上述した(式3)〜(式10)は、次の(式11)〜(式18)に書き換えられる。なお、変数kは、各電極41〜48によって異なるので、これ以降、電極毎の変数kは、各電極各電極41〜48における一桁目の数値(例えば、電極41なら1)を下付にして表す。
【0024】
【数4】

さて、上述の(式11)〜(式18)で表される各ベクトルの大きさは、各電極41〜48における静電容量の変化量の大きさを示す。ユーザがスイッチノブ80をタッチするとき、指と各電極41〜48との距離は、3d以内であることから、中心Oからタッチ位置Tに向かうベクトルOT(式中では、OTの上に→を付す)は、上述した(式11)〜(式18)で表される各ベクトルを足し合わせることによって算出される。従って、ベクトルOTは、次の(式19)によって表される。
【0025】
【数5】

図5に示すように、タッチ位置Tの中心角をθとすると、ベクトルOTは、次の(式20)で表すこともできる。なお、(式20)におけるAは任意の定数である。
【0026】
【数6】

上述の(式20)に示すように、Acosθは基準ベクトルXの大きさ、Bsinθは基準ベクトルYの大きさを示すので、(式19)と(式20)との関係、及び三平方の定理から、中心Oからタッチ位置Tまでの距離をXtとすると、距離Xtは、次の(式21)によって表される。
【0027】
【数7】

また、cosθは基準ベクトルXとベクトルOTとのなす角である中心角のcos成分の値、sinθは基準ベクトルYとベクトルOTとのなす角である中心角のsin成分の値を示すので、(式19)と(式20)との関係から、中心角θは、次の(式22)によって表される。
【0028】
【数8】

このように、中心角θは、sin成分の値とcos成分の値との組み合わせ(一致する値)により求めることができる。ここで、hは定数である。また、(式2)から変数k=V/Vmaxであり、Vmaxは定数である。従って、上述の(式21)及び(式22)は次の(式23)及び(式24)ように書き換えることができる。
【0029】
【数9】

上述の(式23)、すなわち距離算出式73、及び(式24)、すなわち中心角算出式74に示すように、中心Oからタッチ位置Tまでの距離Xt、及びタッチ位置Tの中心角θは、電圧Vで示される関数であることから、演算回路70は、入力される電圧Vに基づきタッチ位置Tの中心Oからの距離Xtとその中心角θとを算出することができる。従って、演算回路70は、算出した距離Xtと中心角θからタッチ位置Tを算出することができる。
【0030】
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ20のメモリ21には、ディスプレイ10に表示する地図をタッチ位置Tの方向へスクロールするためのスクロールデータ22が記憶されている。スクロールデータ22は、電極41〜48の外周より内側における円形領域(電極41〜48を円形とみなした投影領域)を13のエリアE0〜E12に区画し、各エリアE0〜E12とディスプレイ10に表示される地図のスクロール方向とが対応付けられたものである。図3に示すように、エリアE0は、中心Oからの距離が距離d以内の円形の領域である。エリアE1〜E12は、中心Oからの距離が距離dよりも大きく距離2d以内の環状の領域を30°間隔に分けた領域である。ここでは、エリアE1は45°〜75°、エリアE2は15°〜45°、エリアE3は345°(−15°)〜15°、エリアE4は315°〜345°、エリアE5は285°〜315°、エリアE6は255°〜285°、エリアE7は225°〜255°、エリアE8は195°〜225°、エリアE9は165°〜195°、エリアE10は135°〜165°、エリアE11は105°〜135°、エリアE12は75°〜105°の範囲を占める。各エリアE0〜E12と対応付けられたスクロール方向は、エリアE1で1時(60°)の方向、エリアE2で2時(30°)の方向、エリアE3で3時(0°)の方向、エリアE4で4時(330°)の方向、エリアE5で5時(300°)の方向、エリアE6で6時(270°)の方向、エリアE7で7時(240°)の方向、エリアE8で8時(210°)の方向、エリアE9で9時(180°)の方向、エリアE10で10時(150°)の方向、エリアE11で11時(120°)の方向、エリアE12で12時(90°)の方向、とされている。なお、エリアE0には、スクロール方向が設定されていない。
【0031】
また、マイクロコンピュータ20は、特定部23及び表示部24を備えている。特定部23は、算出したタッチ位置Tがスクロールデータ22として記憶される13のエリアE0〜E12のうちどのエリアに該当するかを特定する。なお、特定部23は、算出したタッチ位置が隣り合うエリアの境界上である場合には、時計回り方向のエリアに該当すると特定する。すなわち、算出したタッチ位置TがエリアE1とエリアE2との境界上である45°とされた場合には、時計回り方向側のエリアE2と特定する。表示部24は、特定部23によって特定されたエリアE1〜E12に対応付けられたスクロール方向へディスプレイ10に表示する地図がスクロールするようにメモリ21から地図情報を読み込む。これにより、ディスプレイ10に表示される地図がスクロールする。なお、マイクロコンピュータ20は、一度地図のスクロールを開始すると、タッチ位置TがエリアE0とされるまで地図のスクロールを続ける。
【0032】
<ディスプレイに表示される地図のスクロール>
次に、スイッチノブ80がタッチされたときのディスプレイ10に表示される地図のスクロールについて説明する。
【0033】
指がスイッチノブ80表面にタッチすると、各電極41〜48における静電容量が変化する。すると、各発振回路51〜58は、静電容量の変化量に応じた周波数の電気信号を発振する。すると、各変換回路61〜68は、入力された電気信号の周波数の高さに比例した電圧V〜Vに変換する。そして、変換した電圧V〜Vを演算回路70に出力する。
【0034】
演算回路70の判断部76は、変換回路61〜68から入力された電圧V〜Vが、基準電圧V(ここでは、0)より大きいか否かを判断する。電圧V〜Vのうちいずれか1つでも基準電圧Vよりも小さい場合には、タッチ位置Tの算出は行わない。なお、本例のタッチセンサ30の構成では、スイッチノブ80がタッチ操作されるとき、指と各電極との距離は3d以内となる。従って、スイッチノブ80がタッチされれば、マイクロコンピュータ20には、変換回路61〜68から基準電圧V(ここでは、0)より大きい電圧Vが入力される。
【0035】
入力された電圧V〜Vが、基準電圧Vよりも大きいと判断される場合には、演算部77は、変換回路61〜68から入力される電圧V〜Vからメモリ21に記憶される距離算出式73及び中心角算出式74を使用してタッチ位置Tを算出する。すると、演算回路70は、算出したタッチ位置Tを示す電気信号をマイクロコンピュータ20に出力する。
【0036】
マイクロコンピュータ20の特定部23は、入力されるタッチ位置Tがメモリ21に記憶される13のエリアE0〜E12のうちどのエリアに該当するかを特定する。ここでは、エリアE2と特定される。すると、表示部24は、エリアE2に対応付けられたスクロール方向、ここでは2時の方向に向かってディスプレイ10に表示する地図がスクロールするようにメモリ21から地図情報を読み込む。これにより、ディスプレイ10に表示される地図が2時の方向に向かってスクロールする。なお、マイクロコンピュータ20は、スイッチノブ80がタッチされている間、すなわち、タッチ位置Tがメモリ21に記憶される13のエリアE1〜E12のうちいずれかのエリアに該当している間、ディスプレイ10に表示される地図のスクロールを継続する。また、指がスイッチノブ80から離れると、タッチ位置が算出(検出)されないので、マイクロコンピュータ20は地図のスクロールを停止する。なお、タッチ位置TがエリアE0に特定される場合、マイクロコンピュータ20は、例えば、ディスプレイ10に表示される機能の確定(決定)等に利用する。
【0037】
<タッチ位置の検出分解能が増加することについて>
タッチセンサ30に設けられる8つの電極41〜48に対して、マイクロコンピュータ20のメモリ21には、13のエリアE0〜E12が記憶されている。このため、マイクロコンピュータ20におけるタッチ位置Tの検出分解能は、電極の数である8よりも多い13である。すなわち、マイクロコンピュータ20におけるタッチ位置Tの検出分解能は、電極の数に依存しない。換言すれば、エリアの区画をもっと細かく設定すれば、検出分解能を増加させることができる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)演算回路70のメモリ71に、変換回路61〜68により生成される電圧に基づきスイッチノブ80の中心Oからタッチ位置Tの距離Xtを算出する距離算出式73と、中心Oと3時の方向の線分と中心Oとタッチ位置Tとの線分とのなす角である中心角θを算出する中心角算出式74とを記憶させた。これにより、演算回路70は、距離Xtと中心角θとにより、タッチ位置Tを算出することができる。演算回路70は、算出したタッチ位置Tを示す信号をマイクロコンピュータ20に出力する。
【0039】
マイクロコンピュータ20のメモリ21には、ディスプレイ10に表示する地図をタッチ位置Tの方向へスクロールするためのスクロールデータ22が記憶されている。スクロールデータ22は、電極41〜48の外周より内側における円形の領域を13のエリアE0〜E12に区画し、各エリアE0〜E12とディスプレイ10に表示される地図のスクロール方向とが対応付けられたものである。また、マイクロコンピュータ20は、特定部23及び表示部24を備えている。特定部23は、算出したタッチ位置Tがスクロールデータ22として記憶される13のエリアE0〜E12のうちどのエリアに該当するかを特定する。表示部24は、特定部23によって特定されたエリアに対応付けられたスクロール方向へディスプレイ10に表示する地図がスクロールするようにメモリ21から地図情報を読み込む。これにより、マイクロコンピュータ20は、タッチ位置Tに応じてディスプレイ10に表示する地図をスクロールさせることができる。
【0040】
(2)8枚の電極41〜48、スイッチノブ80の裏面に貼付した。これにより、電極41〜48と指とが直接的に接触することはない。すなわち、電極41〜48に、当該電極41〜48の静電容量を変化させる導電性を有するゴミ等が付着しない。このため、電極41〜48と導電性を有するゴミ等との近接が維持されることに起因するタッチセンサの検出信頼性、ひいては、ナビゲーションシステム1の操作性低下が回避される。
【0041】
(3)スイッチノブ80の表面に、地図のスクロール方向である12の方向をデザインした。これにより、ユーザは、スイッチノブ80の表面の視認を通じて、地図のスクロール方向を認識することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、電極は、8枚に限るものではなく、少なくとも3枚以上であればよい。例えば、電極が4枚である場合について説明する。図6に示すように、4枚の電極91〜94は、それぞれ半径2d、中心角80°の扇形から、要(中心O)が一致する半径d、中心角80°の扇側を取り除いた形状とされている。これら4枚の電極91〜94は、隣り合う電極との間に角度10°の隙間を有して円環状に配置されている。詳述すると、電極91は12時の位置、電極92は3時の位置、電極93は6時の位置、電極94は9時の位置とされている。これを中心Oにおける2次元の直交座標形にあてはめると、電極91は130°〜50°、電極92は40°〜320°(−40°)、電極93は310°〜230°、電極94は220°〜130°の範囲を占める。なお、各電極91〜94において、隣り合わない角同士を結んだ線分の交点を中心D11〜D14としたとき、各中心D11〜D14の中心角は、中心D11で90°、中心D12で0°、中心D13で270°、中心D4で180°とする。また、各電極91〜94における静電容量の変化量、この場合、上記実施形態における距離算出式73及び中心角算出式74は、次の距離算出式97及び中心角算出式98に書き換えることができる。なお、距離算出式97及び中心角算出式98における電圧Vの下付の数値は、電極91〜94における一桁目の数値(例えば、電極91なら1)と対応する。
【0043】
【数10】

このように、電極が4枚の場合であっても、これら距離算出式97及び中心角算出式98を使用して、タッチ位置Tを算出することができるので、上記実施形態における(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
・上記実施形態において、スイッチノブ80を省略してもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態における(1)の効果と同様の効果を得ることができる。
・上記実施形態において、スイッチノブ80の表面に記載されている円や12の二等辺三角形のデザインは省略してもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
・上記実施形態において、メモリ21に記憶される距離算出式73を省略してもよい。この場合、演算回路70は、中心角算出式74により、タッチ位置Tの中心角θのみ算出できる。マイクロコンピュータ20のメモリ21には、上記実施形態のエリアE0〜E12に変えて、角度のみで区画した複数のエリアを記憶させておく。複数のエリアには、それぞれスクロール方向が対応付けられている。このように構成すれば、マイクロコンピュータ20は、演算回路70にて算出された中心角θがメモリ21に記憶されている複数のエリアのうち、いずれのエリアに該当するか判断し、そのエリアに対応付けられているスクロール方向に地図をスクロールさせることができる。なお、演算回路70が、変換回路61〜68から入力される電圧Vをマイクロコンピュータ20に出力するようにすれば、マイクロコンピュータ20は、当該入力される各電圧Vの大きさによって、タッチ位置TがエリアE0に該当するか否かを判断することができる。
【0046】
・上記実施形態では、インバースsin(sin−1)とインバースcos(cos−1)との組み合わせにより、タッチ位置Tの中心角θを算出したが、他の方法により算出することもできる。例えば、インバースtan(tan−1)と、sin又はcosとを組み合わせてタッチ位置Tの中心角θを算出する。このようにしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・上記実施形態では、電極41〜48は、指との距離が距離3dよりも近づいた場合に、静電容量が変化するようにしたが、電極の厚さを変更する等して、静電容量に変化が生じる距離を、任意に変更してもよい。例えば、静電容量に変化が生じる距離を短くすれば短くするほど、指が電極に近づく必要があるため、指が意図せず電極に近づいた場合に地図がスクロールしてしまうことが抑制される。
【0048】
・上記実施形態では、基準電圧Vを0としたが、0でなくてもよい。0でない、すなわち0よりも大きい場合、指との距離が3dよりも近づいても、マイクロコンピュータ20は、指と電極41〜48とが近接したと判断しない。すなわち、地図をスクロールさせるためには、指と電極41〜48とを更に近づける必要がある。従って、このように構成した場合、指が意図せず電極41〜48に近づいた場合に地図がスクロールしてしまうことが抑制される。
【0049】
・上記実施形態において、8枚の電極41〜48は、円形に配置されたが、楕円形に配置されてもよい。このように配置された場合は、中心Oからの各電極の距離に応じて、距離算出式73及び中心角算出式74の変数である電圧に重み付けを行う。このように構成すれば、電極41〜48が楕円形に配置された場合あれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
・上記実施形態において、電極41〜48の形状は、半径の大きい扇形から、要が一致する半径の小さい扇側を取り除いた形状とされていたが、これに限定されるものではない。例えば、円形や、四角形等の多角形であってもよい。この場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
・上記実施形態では、タッチセンサを、地図をスクロールするナビゲーションシステム1に適用した場合について説明したが、これ以外のシステムに適用してもよい。例えば、車載オーディオシステムに適用する場合には、タッチ位置Tによって、音量を変更したり、再生する曲目を変更したりする。このように構成した場合でも、タッチセンサ30のタッチ操作を通じて、マイクロコンピュータ20に様々な制御をさせることができる。また、車両以外のものに適用してもよい。
【0052】
・上記実施形態において、演算回路70の機能をマイクロコンピュータ20に設けてもよい。このように構成した場合であれ、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、上記実施形態及び上記別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0053】
(イ)前記演算手段は、前記C/V変換器により生成される各電圧に基づき、円形の中心から前記タッチ位置までの距離を算出し、算出した距離を、同じく算出した中心角に加味することよりタッチ位置を算出すること。
【0054】
同構成によれば、演算回路は、タッチ位置の中心角と円形の中心からの距離とを算出することができる。このため、算出した中心角と距離とを組み合わせることにより、タッチ位置を特定することができる。
【0055】
(ロ)前記カバーの表面には、前記制御手段の動作に対応したデザインが施されていること。
同構成によれば、カバーの表面の視認を通じて、制御対象の動作を認識することができる。
【符号の説明】
【0056】
θ…中心角、V…電圧、Xt…距離、1…タッチセンサシステムとしてのナビゲーションシステム、10…制御対象としてのディスプレイ、20…制御手段としてのマイクロコンピュータ、21,71…メモリ、22…スクロールデータ、23…特定部、24…表示部、30…操作手段としてのタッチセンサ、40〜48,71〜74…電極、50〜58…発振回路、60〜68…変換回路、70…演算手段としての演算回路、72…算出式、73,97…距離算出式、74,98…中心角算出式、76…判断部、77…演算部、80…カバーとしてのスイッチノブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形に等間隔で配置されるとともに同じ形状とされた少なくとも3つの電極と、前記電極毎に静電容量の変化量に応じた電圧を生成するC/V変換器と、前記C/V変換器により生成された電圧に基づきタッチ位置を算出する演算回路とを備え、
前記演算回路は、前記C/V変換器により生成される電圧に基づき、前記円形の中心を通り径方向に延びる基準線分に対して、前記円形の中心と前記タッチ位置とを結ぶ線分とのなす角である中心角を算出し、算出した中心角により円周方向におけるタッチ位置を算出するタッチセンサ。
【請求項2】
円形に等間隔で配置されるとともに同じ形状とされた少なくとも3つの電極と、前記電極毎に静電容量の変化量に応じた電圧を生成するC/V変換器とを備えるタッチセンサと、前記C/V変換器により生成された電圧に基づきタッチ位置を算出する演算回路を備える制御手段とを備え、
前記演算回路は、前記C/V変換器により生成される電圧に基づき、前記円形の中心を通り径方向に延びる基準線分に対して、前記円形の中心と前記タッチ位置とを結ぶ線分とのなす角である中心角を算出し、算出した中心角により円周方向におけるタッチ位置を算出するタッチセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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